作家でごはん!鍛練場
すももりんご

奈しの界

長く細い一本道が続いている。
私は歩いた。
どこへ行くのかわからない。
遠くの前の方に彼がいた。
見知らぬ大勢の人と歩いている。
待って、待ってよ、大声で呼んでも顔をこちらに向けるだけで返事がない。
速足で歩いても追いつかない。
更に道を歩くと一本のつり橋があるところまで来た。
橋は峡谷の断崖絶壁を結んで渡る唯一の手段である。
私は二本のロープで繋がっているだけの橋を渡る勇気がなく不安が募っていた。
足元の木の板は二本のロープから下がっている細い紐で一枚、一枚、固定されているだけだ。
どう見ても頑丈そうでないので風が吹くと揺れそうで怖い。
彼が渡っているので心配したが風はなく無風状態で安心した。
時々、彼がこちらを向いて手招きをしている。
私も渡ろうと決心して足を進めた。
橋は風がなくても大勢の人が渡っているので上下に揺れている。
私は恐怖で足が震えるのを感じた。
断崖絶壁の下を見ると川が流れている。
川の傍には無数に黒い塊のようなものが見える。
時々、黒い塊から赤く長い棒のようなものが出てくる。
雨が降ってきた。
滑りやすいのでもう進めない。
まだ渡り始めたばかりなので戻ろうとロープにつかまり足を方向転換した。
後ろからきた大勢の人は戻れないぞ、早く渡れと怒鳴っている。
仕方がなく、また歩いて進んだ。
いつ落ちても不思議でない。
彼の姿も見失っていた。
下を見ると橋から落ちた人が川の岸で泣き叫んでいる。
まだ生きているようだ。
その落ちた人に獣のような黒い塊達が集まってきた。
黒い塊は赤い舌を人にからみつけた。
人は断末のような唸り声をあげた。
と同時に赤い舌が外れ、人が川に放り出される。
溺れないように手をバタバタと揺らして川面に浮きながら流されていく。
流れる先の川下を見た。
川は途切れている。
川の水はどこに消えると思ったら大きな穴に吸い込まれていた。
流された人も穴に吸い込まれている。
穴の奥は川の水をいくら吸い込んでも溢れない奈落の底だ。
後ろから来た人に急かされた私は落ちる不安の恐怖と戦いながらやっと橋を渡った。
渡った所は峡谷の中間で狭いながら寺が建っていた。
向こう側に行くには寺を抜けてもう一本のつり橋を渡るしかない。
門がある。
線香の匂いがする。
門を通り抜けようとした。
門の前には大きくて鬼のような形相をしている僧が二人いた。
一人は左手を拳にして、へその辺りにかまえ、右手は開いて遮るようなかまえだ。
もう一人の僧は真逆の手の格好だ。
私はそちらの橋わたりたいので通してくださいと頼んだ。
僧は雷が落ちてくるような激しい声でお前は通れないと言った。
怖くなって立ち竦むと他の大勢の人も集まってきた。
皆は通せと叫んでいる。
僧は益々大声で怒鳴っている。
雨が激しく降ってくる。
門の前は人で混雑してきた。
怒鳴あいの押し問答が続くが誰一人、門を通れない。
二人の僧が両手を天に向けて挙げると強烈な音がして雷が落ちた
橋は崩れ寺も消えた。
僧はいない。
門だけがある。
大勢の人が門を通り抜けた。
その時、峡谷の間にある足元の岩が揺れた。
雷で岩に亀裂が入り崩れ落ちようとしている。
そしてついに崩れた。
大勢の人が悲鳴をあげ川に落ちて流され底のない穴に吸い込まれていく。
私は恐怖で目をつぶる。
暫くして目を開けた。
悲鳴も普通の会話も聞こえなくなった。
周りの景色もなく霧のような雲の上に立っていた。
何か音が聞こえるような気がして耳に手を当てた。
耳がない。
私は夢中になって霧のような雲を払いのけた。
あるはずの足もなく体が浮かんでいる。
雲の下に小さな家の部屋が見える。
中央に青白い顔をした人が寝ていた。
微かに胸が動いて呼吸をしているようだ。
体は石のように硬直しているが生きている。
周りを囲むように数人が立っている。
声は聞こえないが泣いているようだ。
私は瞬きをした。
一滴の涙がでた。
石のように寝ている人も一滴の涙を浮かべていた。
胸の僅かな動きが止まった。
私の体も消えてきた。
別れの時が来たようだ。
ありがとうの言葉が心に浮かんだ時にすべてが見えなくなる。
やがて考えることもできなくなった。
、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、

奈しの界

執筆の狙い

作者 すももりんご
116.65.235.105

初めて短編に挑戦します。誰もが一度は直面する事を書きました。でも、事実は逃れられないが真実はわからないままです。私の偏見の憶測になってしまったようです。真実を知っている人がいたら教えてほしいと思います。

コメント

月野 夜
219.102.246.215

執筆お疲れ様でした。
内容に関して言うと、自分は無宗教なのでなんとも言えません。
本当に真実が知りたいのであればお寺に出向かれた方が良いかとは、思います。

小説は一人称で書かれていますが、この手のものなら三人称の方がいいかも知れませんね。
試しに、私を女、彼を男に置換えて見てください。三人称の方が自由が効くので、表現も大胆に描けると思います。

後、ちょっと引っかかったのが書き出しです。

長く細い一本道、と書かれていますが
細く長い一本道、と書いた方が読者には認識しやすくなります。
一つ一つの単語で考えると、長いから始まる文章では、幅は判然としませんがどうやら長いらしい、そして細いという単語が現れるとイメージしていた道が急に狭まる感覚です。
細いを先に置いておけば奥行は判然としませんが、その後に長いと続けばぐぐぐっと道が伸びていくように頭の中でイメージしやすいです。

単語の入れ替えなども試行錯誤して読者がイメージしやすい小説を書いてみてください。

もし純文学を書かれるのであれば、今書いたことは全て無視してください。

失礼しました。

偏差値45
219.182.80.182

>誰もが一度は直面する事を書きました。

うーん、ちょっと分からないかな。
悪夢を描いたような感じですね。

>でも、事実は逃れられないが真実はわからないままです。私の偏見の憶測になってしまったようです。真実を知っている人がいたら教えてほしいと思います。

先ず、〇〇の状況にありますと設定しないといけないかな。

つかさ
163.49.213.46

 改行し過ぎです。行頭は一字下げましょう。
 怒鳴あいとなってますが、怒鳴り合いまたは怒鳴りあいです。

すももりんご
116.65.235.105

月野夜様お読みいただきありがとうございました。ご指摘ありがとうございます。なるほどと思いました。道の表現は月様の方が良いと思います。私も無宗教ですが、たまたま葬儀屋の社長さんとお話をしたらと幽霊はいるらしいです。不思議ですね。

すももりんご
116.65.235.105

偏差値45様いつも読んでくれてありがとうございます。ご指摘感謝します。

すももりんご
116.65.235.105

つかさ様ご指摘ありがとうございます。改行の事は感情を表すので、このままでよいと思います。

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