作家でごはん!鍛練場
hayakawa

ニヒルな天才の末路

 天才と幼いころから言われ続けた彼は一人ベンチにたたずんでいた。二十歳という年になり、彼はようやく自分は大人というくくりに入ったんだなと思った。
 一流の国立大学に進学した彼は心に虚無感を抱え込んでいた。
 何をしても楽しくない。
 友達がいる教室を避けて、一人誰もいない放課後の教室へ向かった。
 教室の席に座ると幼少期からの思い出がよみがえってくる。
 幼少期から勉強、スポーツに才能を発揮し、高校時代にはバスケットボールで全国大会に出場し、大学でもバスケットボールをプレーし、プロからもスカウトが来ていた。
 そんな二十歳の彼は人生の虚無感に悩んでいた。
 このまま幸せになれるのだろうか。満たされているはずの人生がなぜか無機質に感じてしまう。
 そんなことを考えながら時間をつぶしていた。いつの間にか窓の外は暗くなっていて、夜になっていた。
 帰り道に恋人の明子と出会った。
「早川君」
「なんだよ」
 明子は美人だったが、人を好きになったことがない彼にとってはどうでもいい存在だった。
「明日暇?」
「あーバイト」
「いっつもそうね」
 明子はすねたように見せた。
「じゃあこの後ごはんいかない?」
「別にいいけど」
 彼は明子について行った。イタリアンのレストランに彼と明子は入る。
 こいつ絶対俺のことを顔で選んだなと思った。
 レストランで注文をした。彼は高身長で顔はよく何不自由ない生活を送っていた。
「ねえ、この間あなたの試合見に行ったのよ」
「へえー」
「つれないわねえ。あなた将来プロになるんでしょう?」
「わからないよ。あいにく俺にはやりたいことがないもんでね」
「残念ねえ。あなたもう少し素直になればいいのに」
「素直? 俺はいつだって素直さ」
「嘘よ。あなたいつも自分なんてって思っているでしょ」
「あいにく俺にはやりたいことも夢もないもんで」
 彼は頼んだスープパスタのパスタを雑にからめとり、口に運んだ。
「ああ。世の中にある学問もスポーツもくだらない」
「くだらなくなんかないわ。学問は生きていく上で大切よ」
「そこが、僕らの才能の違いなのさ。ワイン一つ」
 彼はワインを頼んだ。明子はぼーっと彼のことを見つめていた。
「早川君はいっつもそうね。私に共感してくれたことなんかないじゃない」
「俺は君が好きだ。それ以外に何がある?」
「もう」
 明子は頬を赤らめた。頼まれていたワインのボトルがグラス二つと共にやってくる。
「全くよくわからん世の中だ。どうして俺のように何も欲しがらないやつが成功するのか」
「あなた調子に乗っていると、そのうち落ちるわよ」
「落ちる? どこにだ?」
「人生の沼よ」
「沼なんかないさ。あるのは地面だ。もちろん他人が不条理な劣等感にさらされることはあるだろう。それを沼というなら沼だ」
「あなたは劣等感を感じたことはないの?」
「うん」
 彼はスープパスタのスープを飲み干した。
「ワインは素晴らしい」
 彼はグラスに高級ワインを注いだ。
 帰り道、酔った彼はふらつきながら歩いていた。
「あなた酔いすぎよ」
「うるさい。ほっておいてくれ」
 彼はふらふらしながら交差点へ行った。一瞬だった。彼は道路に足を踏み外した。車線を通るトラックが彼を跳ねた。

ニヒルな天才の末路

執筆の狙い

作者 hayakawa
27.83.171.50

とにかく読者が読んでおもしろいと思うような小説を目指しました。

コメント

和田
220.219.181.62

ちょっと違うんだなあ。

偏差値45
219.182.80.182

うーん、オチが甘いと思いましたね。

>彼はふらふらしながら交差点へ行った。一瞬だった。彼は道路に足を踏み外した。車線を通るトラックが彼を跳ねた。

「沼」という言葉が折角あるので、事故があったとしても「沼」に落ちた方が、
面白かったかもね。

hayakawa
27.83.171.50

和田さん
コメントありがとうございます。
次回からモチーフを変えてみるつもりです。

偏差値45さん
コメントありがとうございます。
オチがやはり雑でした。反省します。

吉岡ニッケル
126.224.140.19

面白いよ。

でも「虚無感を抱いていた」はダメや。厭世観を抱いているこた、読者には分かる。
俺の、尊敬はしとらんが、センセの芥川賞作家・三田誠広は言った。

「嬉しかった。にっこりと笑った。こういう記述はアウトです」

せっかくの短編なんやから、ワインとか、レストランとか、架空でもええ、固有名詞にすべきやと俺は思う。俺が偏愛する、アーネスト・ヘミングウェイがごとく。

吉岡ニッケル
126.224.140.19

あと、演劇芝居を見るとええ。
こないな(否定はせんけど)直接的描写は、戯曲にならへん。
某ジャニーズの若手にも、首を捻られる。

hayakawa
27.83.171.50

吉岡ニッケルさん
コメントありがとうございます。
直接的描写はまずかったですね。
次回では工夫しようと思います。

ぷーでる
157.65.82.154

シュールな天才?かな?ニヒルだけど。

hayakawa
27.83.171.50

ぷーでるさん
コメントありがとうございます。
シュールな天才……
確かにそうなってしまったかもしれません。

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