作家でごはん!鍛練場
ゴイクン

昼下がりの料理店

 昼食時が終わって、眠くなるような午後のひととき、客は二人いるだけである。日本企業の駐在員が営業をさぼって、コーヒーを飲んでいる。常連客だ。手には日本の経済新聞が広げられていた。もう一人は中年の女性で、旅行者のようである。テーブルの横に大きなキャリーバッグがあるから、これからどこかの街に移動するのかもしれない。
 最近雇ったウェイトレスが一人、冷房のよくきいた店内の椅子に自堕落に座って、ぼんやり外を眺めている。店の制服である赤いハッピが、小柄な娘にそぐわない。
 私は昼食の洗い物を終え、カウンターの中の低い椅子に座り、換気扇を最大限にしてベトナム製の安煙草を一本くわえた。料理人が煙草を吸うのは褒められたことではないが、昔から自分のすることに甘く採点する癖が抜けない。外国で暮らす時に一番重要なのは、無理をしないこと、と体験的に心得ていた。だから気持ちよく一服する。
 煙草を一本吸い終わったとき、音たててドアが開き、ユンが入ってきた。自動ドアではないから、開閉が毎度にぎやかである。ユンはゆっくりカウンターに近づくと、私の目の前の椅子に座った。座る時、細い上半身をぴったり包んだ薄青いシャツが、間近で波のようにうねった。
「どうした? 学校、さぼったのか」 
 身を起こしてアイスティーを入れながら、からかう。
 ユンは背中まである黒髪をうしろに払って笑った。
「宿題をすんだら、あわてて学校に行った。休校だった。ひどい先生だな」
 ユンは勉強している日本語を使った。助詞がおかしい。発音やアクセントも、奇妙にきこえる。
「先生にもいろいろ事情があったのだろうさ」
「オヤジは、少し私に同情しなさいね。いつも日本人先生の味方です。急に休むのは、よくない。生徒、困りますね」
「同情してるさ。だから、今、おいしいアイスティーを作っているじゃないか。それにどうでもいいけど、オヤジはやめてほしいな」
「四十歳を二つすぎた時、皆、オヤジです。先生がそういいました。私はまだ二十二歳です。私はあなたをオヤジと呼ぶ権利があります」
 何の権利だ、と思いながら、アイスティーをカウンターに置く。
「ありがとう」
 ユンは照れたように笑顔をこぼした。
「四時までここにいるつもりか」
「そうです。でもジャマしません。私はジャマするの、嫌いですか」
「退屈だろう。バイトまで、まだ二時間ある」
「退屈じゃないです。だって、オヤジとお話します。それ、私のお勉強ですね。どうせ夕方までは、この店、お暇しますね」
「ユンのその日本語をきいていると、疲れるんだよな」
 といって、煙草を揉み消して、カウンターの隅からベトナムニューズという英字新聞を取りあげた。
 ユンは、くやしそうな顔を向けて、英語に切りかえた。
「少しは日本語の勉強、手伝ってくれてもいいじゃないですか。これでも一生懸命なんだから」
 新聞を開きながら、私も英語を使った。
「英語なら、ユンが勝手に話していても、疲れないからいいよ。英語はおれの母語じゃないから、変なニュアンスが耳障りということはない。でも、日本語だと、たどたどしくていけない」
 私の不平を無視して、ユンが首を伸ばす。
「何か面白い記事、ありますか」
 私はぱらぱらと新聞をめくって、
「何もない。毎日、同じことの繰り返しだ。遠い国で政治的ないさかいがあったり、物取りがいたり、新しい愛の歌や映画が生まれる。それだけのことだ」
 ユンはカウンター越しに新聞を覗きこんで、
「この前の火事の記事、もう載ってないですか」
「火事か。五日前のことだ。載ってるわけないさ」
 それでも、一応社会面に該当するページを開いたが、火事に関しては、小さな囲み記事さえなかった。交通事故と麻薬が紙面を占領していた。
 私は顔をあげてユンを見た。ちょっと気になって、逆に問いかける。
「火を出した電気工事の男は捕まったのか」
 ユンは首をふって、笑った。
「どこかに逃げてしまったみたい。のんきな国だね」
「のんきなのがいいさ」
 五日前の午後三時、ホーチミン市の六階建てビルの五階廊下から火花が上がり、同じ階のビジネスセンターにきていた三十人ほどの客が亡くなった。五階から飛びおりて死亡した者も多く、軽傷者を含めると百人以上が被災した。原因は電気工事中の放電らしいが、狭い廊下に積みあげられた書類に瞬く間に引火し、凶暴に燃えあがった炎がビジネスセンターの入り口を封鎖したという。そのうえ炎はセンター内に閉じこめられた客たちに襲いかかり、ソファや椅子、カーテンなどをなめまわして、猛毒ガスを発生させたようである。亡くなった者のほとんどは、焼死というよりは、それら有毒ガスによる中毒死のようであった。二人の工事人夫は、火のまわりの早さに恐れをなして逃げてしまった、と数日前の新聞にあった。
 消防車はきたが、ハシゴが四階までしか届かなかった。消火の水もわずか十数分で枯渇し、それで予想以上の被害をだしたのである。ただベトナムの建造物は基本的に煉瓦造りだから、燃えやすい物が山になっていない限り、延焼することは考えられない。今回も大火事だったが、全焼したのはそのビルの、その階だけだった。
 そんなことを思いだしていると、ふいにユンが真剣な顔を向けた。
「兄はこの火事の時、消防署に配属にならなくてよかったと、ほっとしていたよ」
 新聞から顔をあげる。
「お兄さんは公安(警察官)の学校を卒業したのだろう。消防署なんか最初から関係ないじゃないか」
 ユンは首を小さく動かしてアイスティーを一口飲んでから、大きな目で見すえた。その目が笑っている。ベトナムに関して無知なことを口走る時、特別に教えてあげるよ、という様子を、大仰に示すのだ。
「知らないでしょうけど、ベトナムには消防隊員の学校はないの。どちらも公安学校の出身。卒業時に、公安署か消防署のどちらかに配属されるのよ」
 私はあっけに取られた。それでは消防隊員になりたがる者は誰もいないだろう、という確信からだった。質問する前に、ユンはおかしそうに笑って、勝手に説明した。
「もちろん、消防署にまわりたい人は少ないよ。オヤジの考えている通りで、兄も卒業間近になると、絶対、消防署勤務は嫌だって祈っていた」
 私が同じ立場でも、もちろん公安の職を選ぶ。家を焼かれた人たちから、賄賂を取るわけにはいかないから、消防隊員に実際メリットはないのだ。
「だから兄は公安になれて、本当にうれしそうだった。でもね、昨日、兄がおかしなことをいったの。遺体がどうも一つ足りないのじゃないか、って。亡くなったのは正確にいうと二十八人で、焼けた遺体を病院に安置しておいたのね。遺族が毎日遺体の確認にきたのだけど、焼け爛れて、顔も何もわからない遺体がいくつかあったらしいよ。それでも焼け残った体の傷跡や特徴、それに持ち物などから、一人二人と身元が割れて、ほとんど数日中に引き取られたのですって。最後に引き取りにきたのが一昨日で、皆ほっとしていたら、急に昨日になって、まだ娘が帰ってこないので遺体を見せてくれって、頼みにきた人がいたらしいの」
「昨日きたとはのんきな親だな。それまで娘が焼けたとは考えなかったのか」
「地方にいたから情報が遅かったのよ。それにバスでやってきたから、時間がかかったんだね。病院の人はもうないと説明したらしいけど、その両親がしつこくてね。それで公安署に連れて行かれて、担当ではなかったけど、兄が応対したの。話をきくと、いかにもその火事の時にビジネスセンターにいたようなんだけど、でも、遺体がないからどうしようもないじゃない。兄は昨日の夜、それでいろいろ考えこんでいた」
 ユンが話している間に、駐在員は影のようにふわりと暑い中にでて行った。
 ウェイトレスはグラスを片づけると、つまらなさそうに椅子に座って、またガラス越しに目を外部に向けた。店の外ではバイク番の若い男が、英語の勉強をしながら、アイスコーヒーを啜っていた。
「遺体を引き取る時には、いろいろ面倒な手続きが必要なのか。それとも、これくださいって、鯖でも買うように持って帰れるのか」
 ユンが吹きだす。
「変なこといわないでよ。当然いろいろな書類がいるし、身元確認もきちんとするに決まってるじゃない。黒く焼けて美味しそうだからって、持って行ったりしないよ。今、ベトナムのこと、バカにしたでしょ」
 私はちょっと困って、
「バカになんかしてないよ。ただ、きいただけだ」
 とごまかした。実際はやはりバカにしていた。
「指紋が残っていればそれで判定するし、顔や手が焼けていれば、体の特徴などで識別するよ。それに引き取った人は、IDカードでその住所から何から確認を取られるから、死体を売りさばくことなんて、できやしない。すぐに見つかってしまうよ」
「勝手に持ち帰れないのなら、考えられることは一つしかない。死んだと両親が大騒ぎしている娘は、まだどこかでのんきに遊び惚けているのじゃないか。そんな若いやつは、日本でもどこでもたくさんいる」
「そうよね。いくらそそっかしくても、関係ない人が黒こげの遺体をもらい受けて、お葬式をだすなんて、しないよね」
「普通はしない。意味がないよ。人間は猿とちがって、意味のないことはあまりしない。もっとも猿がうろうろするのも、本当は哲学的な意味があるのかもしれないが、猿じゃないおれには、そこまでわからない」
 冗談をいったつもりだったが、オヤジギャグにもならなかったらしく、ユンは笑わなかった。
 するとユンの携帯電話が鳴った。ユンは店の外にでて携帯を耳にあてた。最初は仕事中でも、店内で電話を受けていたが、日本のかわいい子はそんな不作法はしないと教えると、外で電話するようになった。
 ユンはやがてこぼれるような笑みを浮かべてもどってきた。日本語でいう。
「お客さんがきますので、よろしくお願いします」
「お客さんって、誰だ」
「もうすぐきますから、あせらないで」
「別にあせりはしないよ。頼むから英語で話してくれないか。どうもユンの日本語をきいていると、今夜眠れないほど疲れる」
「眠れない時は寝ないでかまいません。私を思いだして、起きなさい」
「ますます疲れそうだな」
 といって、新しい煙草に火をつけた。
 旅行客らしき女はキャリーバッグを引きずって、灼熱の中に出て行った。他に客のくる気配はない。窓の外のタマリンドの細い葉が、風にくるくる舞い散っているのが見える。
 その時、公安のジープが午後の太陽にきらりと車体を光らせて、店の前で停車した。バイク番の若者があわてて立ちあがり、預けていたユンのホンダ・ドリームに手をかけ、そのバイクで今にもどこかに出かける振りをした。店の前の歩道にバイクを置くのは違法だったが、毎月公安にみかじめの賄賂を渡して大目に見てもらっていたのだ。それなのに公安がきた。
 バイトの女の子も意味なく立ち上がる。
 私は煙草を揉み消して、急いで外に出ようとした。ユンがシャツを引っ張る。
「オヤジ、大丈夫です。あの公安、私の兄です」
 足をとめて、怪訝にユンを見返した。ユンは椅子に座ったまま、片手でアイスティーを飲みながら、いたずらっぽい笑顔を投げる。
 さっきの電話はユンの兄からだったのだ。そう納得すると、ようやくほっとしてカウンターの中にもどった。毎度、公安の姿を見ると心臓に負担がかかる。
 緑の制服の公安が一人、ドアを開けて、厳めしい顔で入ってきた。もう一人はジープの運転席に背中を預けたが、バイトの娘のように自堕落な感じだった。
 ユンは椅子から飛びおりて、公安の手を取って、私に紹介した。
「兄のカンです。中央署にいます」
 私は無理に笑顔を作って、ベトナム語で、シンチャオ(よろしく)、といったが、カンはこわばらせた顔を緩めなかった。公安は人前で笑うことはない。常に険しい顔をしている。家でもそうなのか、と時々疑うほど、表情は固い。
 ユンがベトナム語で、威勢よくカンを叱った。それではっと気づいたように、笑顔を作った。二十代前半の若々しい顔になる。カンはカウンターの椅子に座って、
「カフェ・デン(ホットコーヒー)」
 といった。
 うなずいて、フィルターコーヒーをセットした。
 カフェ・デンをカウンターに置くと、カンは首をすくめて、フィルターから落ちる黒い液体を覗きこんだ。私はゆっくり英語でいった。
「私だけではないと思うが、どうも公安関係者は好きになれない。コーヒーを飲まれたら、すぐに帰ってほしい」
 カンが顔をあげる。
「どうして、そう公安を毛嫌いするのかな。ぼくにはわからない」
 聞き取りやすい英語を使った。発音はユンよりずっとアメリカ風で、熱に溶けたチーズのだらしなさを思わせた。
 さすがに答えあぐねた。賄賂を取るなどとは、やはりいえない。しかしカンは勝手に解説をはじめた。
「きっとあなたは、ぼくたち公安が賄賂を取ることをいっているのだと思うが、それが悪いことだろうか。賄賂は一種税金のようなものだと考えればよい。普通の人は税金を払わないから、ぼくたちが国の代わりに、税金の徴収をしているだけのことだ。あなたはバイクを持っているか」
 私は首を横に振る。賄賂を正当化する公安は、さすがに見たことがない。
「たとえば、バイクで一方通行侵入などの軽い違反を犯せば、十万ドン(約七百円)の罰金になる。これは庶民には大きい。しかし違反は違反だ。西洋の国のようにそのまま法律を運用すれば、ぼくたちは切符を切らなければならない。IDカードと免許証、車検証を携帯していない場合は、バイクをおさえることになるから、当然バイクタクシーか普通のタクシーで家に帰り、お金とそれらを取ってくることになる。運賃もかかるが、時間もムダになる。車検証などが行方不明になっていれば、バイクは没収されて、取りもどすのにさらに二十万ドンの罰金が必要になる。しかし、そこであなたの嫌いな賄賂を払えば、ぼくたちは見て見ぬふりをすることができる。庶民とのそういう約束が、まるで自然法のようにある。賄賂は五万ドンと相場が決まっている。外国人はもう少し高い。違反しなければ問題ないし、ぼくたちの出番はないが、万一違反した場合、どちらが歓迎できるだろうか。十万ドンの罰金の代わりに五万ドンの賄賂ですめば、庶民は結局五万ドンの得になる。ぼくたちも五万ドン儲かる。お互いに五万ドンの儲けではないか。違反した人にもぼくたちにも、両方にうれしい結論だ。賄賂を非難する人は、法を厳格に適用した方がよいと考えているのだろうか。知っているように、歩道にバイクを置いたり、路上で物を売るのは法律違反だ。当然、この店の前にバイクを置くことはできない。バイクを置けなければ、お客はこの店に気安く入れないだろう。どちらがよいかは、ぼくたちでなく、あなたが決めることだと思う」 
 そういってカンは、口にした言葉とは不似合いなほど無邪気な笑顔を浮かべた。
 落語の「三方一両損」のベトナム版を聞くとは思わなかった。正直呆れた。開き直った公安というのも、また笑わせる。
 カンの言葉を、ユンはおかしそうにきいていた。
「オヤジ、気にしなくていいよ。兄は本気じゃないから。こうやって人を煙に巻くのが、好きな性格なの。相手にしない方がいい」
 私はうなずいた。
「それぞれの意見はあるかもしれないが、どちらにしても、コーヒーを飲まれたら、早めに帰って頂いた方が、私の店は助かる。公安がいると、お客が入ってこない」
「まるでヤモリのような扱いだな」
 カンはユンに顔を向けて、苦笑した。
 私はカウンターの中の椅子に、身を縮めるようにして座り、新聞を広げた。すると、カンがカウンターの上から覗きこんで言う。
「今日きたのは、実は少し知恵を借りたいと思ったからだ。あなたのことは、ユンからいろいろきいていた。なかなか合理的な考え方をする人だと思う。おまけにこの生意気なユンを、ここで使ってもらっている。ひょっとしてあなたなら、何かヒントをくれるかもしれないと考えた」
 私は不機嫌を露わにして、カンに視線を向ける。
「公安が私のような者の知恵を借りたいとは、正直驚いている。私はただの料理人で魚のことには詳しいが、それ以外のことはあまり精通していない。人づきあいが悪いので、とりわけ人間に関してはわからない。あなたの妹のユンも、時に、いや、たいてい理解するのに苦労して、実際困っているよ」
 ユンは目を大きく開いてにらんだが、カンは幼い顔でまた苦笑した。
「ユンを理解できないのは、ぼくも同じだ。これまで二十数年、一緒に暮らしているが、どうしてユンがここで働きたいのかさえわからない。もしユンのことを理解できるといわれたら、そのまま帰ろうかと考えていた」
 そういって、カンは勝手に喋りはじめた。カンも人間だから親しい人の間では饒舌になることもあろうが、私には公安が普通に話すのさえ意外な気がした。そのうえ三分以上もカンは一人で話した。だから人間のことがよくわからないといったのである。
 カンが話したのは、火事の死体の数が合わない件である。先ほどユンからきいたことと大きくちがわない。一通り話し終えてから、つけ加えた。
「娘の遺体を探しにきた夫婦は、クァンガイ省に住むモン族だ」
「モン族というのは、わからない」
「いわゆる少数山岳民族だ。多くは山をおりて都会で暮らしている。彼らはぼくたちキン(京)族とちがって、肌が黒いんだ」
 ユンの肌を間近に見て、黒いと感じたことは一度もなかった。むしろ白いと思うことの方が多かったが、日本人客が横に並ぶとユンの肌の浅黒さは歴然とした。日に焼けているせいもあるが、カンは妹よりもさらに黒かった。モン族はそれより黒いという。
「その夫婦は、火事の前の夜に娘から電話をもらっている。娘はこちらの専門学校に通っているが、さびしがって何度も家に電話していたようだ。その日はビジネスセンターに行って、それから同級生の誕生パーティーに行く予定だったらしい。もちろん夕方のパーティーは欠席している。下宿先の大家に確認したら、火事のちょうど三十分前に家を出たという。部屋の様子を見ても、どこかに旅行に向かったという気配はない。あれから連絡がないのは、これまでの娘の行動から考えて納得できることではないと、両親はいうわけだ。あなたなら、この件をどう考えるか知りたい」
 私は自分のために午後のカフェ・デンを入れながら、答えた。
「さっきユンからおおよその話をきいている。ユンにもいったが、考えられることはそれほど多くないだろう。常識的には、娘が自発的に行方をくらましたという疑いが濃厚じゃないのか」
「両親の話を信じれば、その線は薄くなる」
「親は子供のことに、たいてい無知なものだ。死んだ私の両親もそうだった。娘が自分の意志で行方をくらましたのでないとすれば、遺体が一つまだ発見されずに、焼けたビルのどこかに残されている可能性もあるだろう」
「それはない。余分な遺体があっては困るので、消防隊員やぼくたちが何度も探した。念のため上や下の階も捜索した」
「そうなら、娘は確かに焼死して、その遺体を誰かが持ち帰ったという考えだって成り立つだろう。まちがって引き取ったのか、何か目的があってそうしたのか、それはわからない。まちがって持って行ったのなら、そろそろ誤解に気づいて返してくれてもよい頃だと思うよ」
 カンは私を見つめて、ゆっくり首を横にふった。公安に注視されるのは、やはり居心地よいものではない。
「まだ誰も遺体を返しにきていない。たとえ気づいても、今さらまちがいでしたとは、いえないのかもしれないが」
「それとも、誰かが安全な遺体を必要としたということも考えられる」
「安全な遺体?」
 私はフィルターを落ちたコーヒーにミルクを入れて、一口飲んだ。ダラット産のコーヒー豆は、苦みの中に舌先に染みこむ妙な甘味を含んでいる。
 カンに向き直った。
「人は時に安全な遺体がほしがるものだ。たとえば、何かごたごたがあって、どこかに逃亡したいと願う時、身代わりになる遺体があれば、ことは簡単にすむ。死んだことにしてしまえば、誰もあとを追ってはこないだろう。その何かは、公安の手配書に名前が載っているということでもよいし、他の何かでもかまわない」
「遺体の中にも、また引き取り人自身にも、公安が継続的に探している者はいなかった。もちろんその娘も、関係ない」
「これはただの例だ。自分を死んだことにしたい人間は、想像以上に多いのではないかと思っただけだ」
「日本人にもそう思う人はいるのだろうか」
「日本人? どういうことだ」
 カンはひと呼吸置いていった。
「実は焼死体の中に日本人女性も含まれていた。新婚旅行できていたそうだ」
初めてきく話だった。店に置いている日本の経済新聞には、当然のことかもしれないが、書かれていなかった。暇なので新聞は丁寧に読むが、今回の大火事の記事自体もなかった。
「ただの旅行者がどうしてビジネスセンターに行ったのだろう」
 首をひねると、カンは両肘をカウンターに突いた。
「夫の話では、一緒にベンタン市場で買い物していた時、お土産の件で友人に電話するといって、奥さんは引き返したらしい。旦那さんはホテルにもどったと考えていたようだが、実際は市場のそばのビジネスセンターに行ったわけだな。そこで何かの用事をすまそうとした、ということになるが、そこで被災した」
 カンがわざわざこの店に顔をだした理由を、ようやく納得した。
「その日本人は、奥さんの遺体を引き取った。検視の医師は、持ち帰った遺体を日本人と確認したのか」
「当然確認して、旦那に引き渡しているはずだ」
「はずだ、というのは?」
「ぼくは直接の担当ではないから、そこまでは知らない。しかし返したということは、何も問題なかったということだ」
「それでは悩むことなど何もない。モン族の娘は今ごろどこかほっつき歩いているか、さらわれたか、それが何であっても、今回の火事には関係ないだろう」
「そうはいっても、その娘の両親が納得しないんだ」
「それなら遺体を引き取った者をもう一度調べ直直すしかないな。わずか二十八遺体だ。それほど難しいことではなかろう」
「できないわけではないが、すっかり収まっている件を、担当でないぼくがほじくり返すのは、上司が嫌がる。やるとしたら、こっそり調査するしかないが、ぼくにはその日本人が、なんとなく怪しく思えてしかたないんだ」
「公安がそんなバイアスで物事を見てどうする?」
「バイアスじゃない。遺体は、話にきいたモン族の娘と体格好がとても似ていたんだよ」
 カンは独り言のようにつぶやいた。

 アパートの部屋にいて、音を消したまま、中国のカンフードラマを眺めていた。カンフーの使い手たちが、大鷲のように空を飛んで、空中戦をやっていた。
 すると、ドアに小さなノックがあった。夜の十一時に人が訪ねてきたことは、これまでなかった。
 ドアに近づき、警戒するように、
「アイ(誰だ)?」
 ときくと、ユンの小さな声が耳に届いた。
 ドアを開けると、ユンは悪さをした子供のように、腰を屈めて忍びこんできた。
「ごめんなさい。こんな遅く」
「どうしたんだ」
「兄から伝言をもらってきたの」
「何の伝言だ」
 少し不機嫌な声をだして、テレビを消した。
 ユンは机の前の椅子に勝手に座り、
「想像した通り汚いね。今度、掃除しにきてあげてもかまいませんね」
「掃除はいい。それより伝言って、何だ」
 ユンはがっかりしたように、肩をすくめた。
「兄は伝言の依頼を私に頼みました」
「もうそろそろ寝ようと考えていたので、少し疲れている。頼むから、英語で話してくれないか」
 ユンはちっと歯の奥で舌打ちした。
「わかった。兄は次のことを伝えるようにって、私をここまで運んできたの。自分の口から直接いえばいいのにね。でも、きっとオヤジは会いたくないだろうと考えたみたいで、アパートの下で待っているけど、呼ぶ?」
「その必要はない。夜も遅すぎる」
「そうよね。例のビジネスセンターの火事の件だけど、兄はいわれた通り、二十八遺体の書類と写真などを調べ直したの。そのうち二十三遺体は顔にも体にもほとんど損傷がなくて、簡単に識別できたようよ。焼死ではなく、有毒ガスの窒息死だったから。この二十三遺体は問題ないと兄は考えたの。残りの五遺体は判別できないほど焼け爛れていたらしいの。でもその中の三遺体は、体の特徴や指紋などから身元はすぐに確認できた。一応地区の公安に調査を依頼したところ、それらはすでに葬式も終わって、埋葬されたみたいね」
「焼いたのか」
 煙草をくわえながら、きいた。
「いえ。政府の火葬の指示に逆らって、今でも土葬をする人が多いの。だから、疑問があればいつでも掘り起こせると思う。問題は残りの二遺体。どちらも女の人で、顔や上半身は熱でひどい状態になっていた。きっと窒息して床に倒れてから、炎に焼かれたのね。でも中の一体は、モン族の専門学校生とは身長がちがいすぎるの。これは最終的に、市内に住む政府関係者の家族が引き取りにきた。残りの一体は、兄がいっていた日本人女性。行方不明の学生と身長や体型がよく似ていたらしいよ。でも、モン族にしては肌が白いのね。でもそれは、検死医が撮影した時のフラッシュのせいだろう、と兄は考えたの」
 私はいぶかしい顔をユンに向けた。
「その日本人女性の身元確認だが、しっかりやられたのだろうな」
「残された資料によると、そこは、かなり曖昧みたい。とにかく顔と上半身は真っ赤に爛れて、下半身しか原形を留めていなかった。手がかりになったのは、旦那さんのいう身長と体型ぐらいかな。血液型は、旦那さんの申告と一致していたよ」
「身長など、遺体を見れば誰でもいえることじゃないか」
「そうかもしれないけど、旦那さんがきて遺体の前で泣いているのだから、検死医が信じたのは当然だと私は思うわ。それに検死医としても、その日本人の言葉がよく理解できないから、ことを面倒にしたくなかったのかもしれないしね。とにかく検視医はかなり自信を持っていたことは、確からしいわ。引き渡し時刻は五時過ぎ」
「五時というと?」
「三時の火事がおさまって、病院に遺体を運び終えた頃かな。旦那さんはすぐにやってきて、一体一体確認していったみたいね」
「すぐにきたのか」
「そうみたい」
 どこか腑に落ちないものがあった。行動が早すぎる気がした。たとえ火事の情報を耳にしても、奥さんはホテルにもどったと考えていたようだから、ビジネスセンターの火事は余所事だったろう。当然焼死の可能性など思いつかないはずだ。たとえ引き返してホテルで探せなくても、旅行にきているのだから、どこかで道に迷っているか、買い物でもしていると楽観しておかしくない。夕方になって、それでも消息がなければ、それからあわてて探しはじめればよい。しかし心配症の旦那なら、ありうることかもしれないと考え直した。
「それで、お兄さんはどうしてわざわざこのことを伝えようとしたのだ」
「兄はきっとその日本人が虚偽の申告をして、関係のない遺体を引き取ったのではないかと疑いはじめたようなの」
 旅行者が他人の遺体を引き取ってどうするのだろうか。その日本人のことを何一つ知らないから、遺体の用途は推測できなかった。
私は小さな欠伸を装った。
「わかった。ただこれだけの情報では何とも答えようがない。確かに聞いたと、お兄さんに伝えてくれ。おれは眠い。悪いが、ユン、もう帰ってくれないか」
 ユンはくやしそうな顔をして、突然日本語を使った。
「やっぱりオヤジだね。まだ十一時なのに、かわいい女の子の前で欠伸するし。私はこれからオヤジと呼ばないで、オカマと呼ぶ。いいか」
 オカマはすでにベトナム語になっていた。
「何でも好きなように呼べばいいさ。オヤジでもオカマでも」
「本当につまらないオヤジだな。わかった。帰るよ。でも、帰る前におやすみのキスしてあげる」
 いうが早いか、獣が襲いかかるようなすばやさで私の頬に唇をつけた。それからあわてて体を離し、逃げるようにドアに向かった。私はゆっくりあとを追い、立ち止まるユンの肩越しにドアを開けて、部屋からぐいっと押しだした。
「また明日な」
 ユンはドアの外で、兵士のように敬礼した。泣きべそかいた子供の顔に見えた。
 私はドアを閉めた。ユンの足音が遠くに消えるまで、そのまま立っていた。
「困った娘だ」
 そうつぶやいてベッドにもどり、腹這いになった。それからゆっくり頬に指をあてた。ユンの唇のぬくもりが残っていた。
 あわてて煙草を一本抜き取って、火をつけた。それから焼け爛れた遺体を持ち帰った男に、無理に思考を向けた。遺体は本当に奥さんだろうか。そんなことを、ベトナム煙草が一本灰になるまで考えた。

昼食時の忙しさが一段落し、客が一人もいなくなると、私はカウンターの中の低い椅子に座り、換気扇をつけて煙草に火をつけた。ウェイトレスは客席に座って、背中を丸めて日本のファッション雑誌を眺めていた。やはり赤いハッピの制服は似合わない。普通の料理店のように、アオザイにでもかえた方がよいかもしれない。
 そんなことを考えていると、日本人客がにぎやかにドアを開けて入ってきて、カウンターの椅子に身を預けるように座った。県庁を早期退職し、ベトナムに移住してきて、嫁探しをしている五十六歳の男だった。長野という。長野は丸い顔に脂っこい笑みを浮かべて、すっかり癖になった天気報告を大声で口にした。
「暑いねえ。日本は豪雪で飛行機も飛ばないというのに、おれの部屋は西向きだから、午後はうだるようだ。雨季がくるまで、これからますます暑くなるのかね」
 長野は差しだしたおしぼりで、首筋だけでなく、シャツを広げて胸の中までていねいにぬぐった。見た目が汚くていけない。
 いつものアイスコーヒーをカウンターに置くと、長野がいった。
「レロイ公園のそばの西洋レストランに入ったら、おれくらいの年齢のオヤジが、朝からぶ厚いステーキを食べていたよ。どこかで見た顔だなと思ったら、奥さんを火事で亡くした旦那さんだった。あの火事で日本人が亡くなったのは知ってるな?」
 驚いて丸い顔を見つめた。
「昨日きいたばかりだが、旦那さんって、長野さんの年齢なのか」
 長野は、尻ポケットからタブロイド版のベトナム新聞を抜き出して、カウンターに置いた。「公安」という名前の新聞である。
「ああ、新婚旅行たって、再婚旅行なんだか、再々婚旅行なんだかわかりゃしないぜ」
 といいながら、あちこちめくって社会面と思えるページを開いた。
覗きこむと、左側に三段抜きの記事があり、号泣する夫の写真が大きく掲載されていた。
「この男か」
「ああ」
「てっきり若い男だと考えていた」
 手に取って見つめる。男の泣き叫ぶ様子に、私はなぜか不快な印象を受けた。長野のいう通り、熟年の大柄な男だった。博多在住のノムラ・ヤスジとある。おそらく野村でいいだろう。ベトナム語はあやしげものだが、それでもひと通り目を通す。亡くなった妻は三十二歳で、夫の野村は五十四歳。それで新婚旅行である。
 私は混乱した。三十二歳と五十四歳の組み合わせがいけない、というのではない。現に目の前の長野も、二十代のベトナム娘を嫁にもらおうとじたばたしている。ユンと私の間にも、二十歳の開きがある。少しばかり不自然に映るとしても、あっておかしくない。しかし妻が焼死したとなると、妙な想像が羽ばたくのは仕方なかった。
 長野はアイスコーヒーをストローで一口啜ってから、
「何かにおうよな。いかにも胡散くさそうなオヤジだった。まあ、人のことはいえないけどな」
「この男はまだ帰国してなかったのか」
「ああ、おれも暇だったから、ちょっと声をかけてみた。御愁傷様、ってなもんだよ。そしたら、飛行機は安売りのフィックスだから、明後日まで帰れなくて困っているといった。それで仕方ないから、あちこち市内見物しているらしい。新婚旅行は一週間の予定だったらしいな」
「のんきな話だな」
 とのんきなコメントを返したが、内心やはりひっかかるものがあった。
「どこか変だと思わないか」
 長野が首を伸ばしていった。
「奥さんが亡くなったのなら、普通はそんな安売り切符なんか捨てて、新しく片道切符を買って、遺骨を抱いて帰国するもんだよな。別に貧乏臭くも見えなかったしな。それをのんびり市内見物して、朝からステーキだ。とんだ食欲だよ。新聞の号泣写真とちがって、どこにも悲しそうな様子はなかった。引き取った黒こげの遺体を、ホテルの一室でぽりぽりかじっていたとしても、あの男ならまるで違和感がない印象だ。まあ、奥さんをかじろうと、個人の嗜好といわれれば、おれにはいう言葉はないがね。好きな奥さんの遺体を食うのは、ベトナムでも法的に罪になるものかね」
「それはなるだろう。遺体損壊罪くらいはあるさ」
「そうか。やはりまずいか。おれも遺体をかじりたいと思うほど、誰かを好きになってみたい気がするよ。だからベトナム娘を一生懸命探しているんだが、かじってから、口をもぐもぐさせて刑務所暮らしをするのも、妙なものかもしれんな」
 カウンターの椅子にしゃがみこみ、また煙草を一本取りだした。
 カウンター越しにガラス窓を見やると、ユンがバイク番の若者にドリームを預けているところだった。あふれる光の中で、ユンのシャツがまぶしいほど白く見える。
 にぎやかにドアを開閉させて、ユンが入ってきた。欠伸をしていたウェイトレスに何か声をかけてから、カウンターにひらりと腰をおろした。昨夜のことがあるせいか、私を見る目に一瞬の羞恥がうかがえた。しかしすぐにふんっと鼻で笑って、小馬鹿にしたように肩をすくめた。
「この店もそろそろつぶれますね。お客さんがオジサン一人ですね」
「大丈夫だよ。最低あと一年は持つ。一年たったら、おれも若い奥さんをもらって、帰国するかもしれないけどな。まあ、それまでは大丈夫だよ」
 と、長野が挨拶代わりに馬鹿なことをいう。
 苦笑しながら、私はアイスティーを作る。
「昨夜は、あれからすぐに寝ましたか」
「ああ、寝たが、悪い夢にうなされた」
 と嘘を洩らした。
「どうしてですか。不思議ですね。私は変なオヤジの夢も見ないで、安らかに眠りましたよ。だから今日はさっぱりですね」
 長野が首を二度ほど振って、
「何か怪しい会話だな。昨日の夜、お二人さんはデートかな」
「はい。このオヤジのお部屋でデートしました」
 私はあわてて、
「誤解しないでくれよ、長野さん。ユンは兄貴の用事を伝えにきただけだよ」
ユンは子供がするように、いいっときれいな歯を見せた。それから急に真剣な顔をして、バッグから一枚の紙を取りだした。メールをコピーしたものだ。
「何が書いてあるか教えてください。さっきまで辞書を調べましたけど、最初の『ツヨイて』が、わかりません。オヤジにきいた方が簡単ですと思って、やってきました」
 私はその紙を取りあげて驚いた。日本有数の繊維会社の博多支店長からのものだった。文面は日本語である。
「最初は『ツヨイて』じゃなくて、『しいて』と読むんだが、これ、どうしたんだ」
「兄が総領事館に頼んで、死体を取った日本人の調査を頼みました。でもダメですと断られました。それで旦那さんと仕事で関係のある、サイゴンにある会社の所長さんに、調査を依頼しました。渋々引き受けてくれました」
「渋々ってことは、従わなければ営業停止処分にするとかいって、脅したのだろう。公安がよくやる手だ」
 ユンはむっとした。
「それは知りません。これがそのお返事です」
「どうして英文の返事を要求しなかったのだ」
「英語がほしい時は、日本人はきっと英語ができないから、返事は遅いです。だから兄は私を信じて、日本語を請求しました」
「ユンのおかしな日本語でも、不思議なことに兄さんの評価は高いのだな」
 からかってから、文面に視線を落とした。次のように書かれていた。

 ……強いて英語に直す必要がないというので、日本語でご返事します。このままコピーを取って、依頼の公安に渡して頂いてかまいません。
 お尋ねの野村康次ですが、博多では名の通った人物ですから、承知しています。今月十日に結婚式を挙げています。これまで二度の結婚歴がありますが、いずれも配偶者は事故死しています。最初の配偶者は、トルコを旅行中に地震に遭遇し、現地で亡くなっています。二度目の配偶者は、中国高速道で多重衝突に巻きこまれて死亡しています。どちらも警察の調査では、不幸な事故への遭遇で、そこに何らかの意思が働いているとは思えないとのことです。
 今回結婚した相手は、旧姓田中道代といいます。三十二歳です。こちらは初婚ですが、係累はありません。不動産関連の資産が、それなりにあるように思われます。
 野村は建築会社を経営していましたが、バブル崩壊後の昨今、思わしくない噂が聞こえてきます。銀行からの融資の返済も滞りがちだという、同業の声もありました。経済的には苦境にいると想像できます。
 生命保険に関してですが、充分な調査はできなかったのですが、両者とも結婚前から高額の物に加入していたようです。焼死の場合も、もちろん適用される保険です。
 お尋ねの件は以上ですが、さらに詳しいことをお望みでしたら、ご一報ください。本腰入れて、調査してみます。今回の件、公安関係者以外にはくれぐれもマル秘ということで、取り扱い方、よろしくお願いします。
                         博多支店長 ×××××

 読み終えて、顔を覗かせている長野にコピーを渡した。長野は癖なのか、遠視が強いのか、目を細めて真剣な顔で読み始めた。
 煙草に火をつける。最近、吸いすぎで胸が痛い。パッケージに書かれた、健康のため吸いすぎに注意しましょう、というベトナム語を眺めた。他の単語はあやしいものだが、これだけはすっかり暗記していた。
 長野はコピーをカウンターに置くと、混乱したように目をぱちぱちさせた。
「こういう個人情報をこっそり盗み読みすると、どきどきするな」
「個人情報といっても、たいしたことが書かれているわけじゃない。近所に行って、ちょっと噂をきいてきただけのことだ。それより、一度ユンの兄さんに頼んで、長野さんのことを日本に問い合わせてみるか。いろいろおもしろいことがでてくるかもしれないな」
「よせやい。おれは叩いても、どんなホコリもでないぞ」
 長野は大げさに笑った。
「ねえ、ねえ、何て書いてあるの。この日本語、難しくてわからない」
 ユンがせかすから、要点を英語で教えた。ユンはききながらメモを取った。話し終えると、顔をあげて、
「それじゃあ、まるでこの日本人は、何か悪いことを企画するみたいじゃない」
 と、呆れたようにいった。
 長野が両肘を突いて、頭の中を整理するようにぶつぶついった。
「確かにユンさんのいう通り、この野村という男はいかがわしい。まず金に困っている。その奥さんが焼死した。もらい受けた遺体には、当然きちんとした死亡証明書までついている。生命保険金もおりる。どうも高額らしい。そのうえ、奥さんの資産はすべて野村の物になる。これで奥さんを死ぬほど愛していればつらい話になるが、今朝会った様子では、そんな気配はない。人生、最高に幸福な事態が発生した、という感じだ」
 ユンが悩ましい顔をする。
「でもね、大事なことって、そんなに都合よく起きるのかな。火事なんて予測できることじゃないよね。もし火事がなかったら、仲良く日本に帰って行ったわけ? つまりね、その人は、顔は怖くても、何も悪いことしたわけじゃないから、私たちって、空騒ぎしているだけじゃないのかな」
「ユンのいうように、焼死したのが本当に奥さんだったら、おれたちがとやかくいうことはない。確かに空騒ぎだ」
 私がいうと、長野が眉根に皺を寄せた。 
「しかし、仮にだけど、仮に引き取った遺体が奥さんでないとすればどうなる? 生きていようと死んでいようと、奥さんが二人いることになって、それは困るよな。そうなら、本当の奥さんは今、どこにいるんだよ」
 長野は、何にでも口を挟みたがるが、その口に笑みを浮かべた。
「何か、おもしろくなってきたな。あの遺体は野村の奥さんでないと考えれば、これは事件になるな。なあ、奥さんは実は生きている、というのはどうだい。奥さん名義の遺体はちゃんと手に入れたわけだから、あの男は保険金を受け取り、落ち目の会社を建て直すことができるわけだ。ほとぼりの醒めるまで奥さんはどっかに、たとえばベトナムなどに隠れていればいいわけだ。つまり奥さんとの共謀という考えだ。もっともそうなったら、パスポートの関係で、日本に帰れなくなるけど、まあこれは何とかなるだろう」
 といって、長野は宙を探るように目を厳めしく動かした。それから口調に熱を含ませて続けた。
「しかし、またこうも考えられないか。野村の奥さんは別の理由ですでに死んでいると。その死が故意か偶然か知らないが、あの男の顔を思いだすと、何となく故意のような気がする。それで野村は奥さんの死体をどこかに始末した。マングローブの森か、サイゴン川沿いの湿地帯のような、容易に発見できない場所。しかし奥さんが消えてしまうと、警察が動きだす。だから野村はあわてて焼けた遺体を手に入れた。ひょっとしたら、遺体を手に入れてから、奥さんを殺したのかもしれない。どちらであっても、新婚旅行の最中に、火事で新妻を失ったかわいそうな夫の演技をしばらく続ければ、そのうち警察も世間も忘れてくれる。こっちだと、生命保険金だけじゃなく、奥さんの資産も独り占めにできる。うん、この筋書きの方が迫力あるな」
 ユンが大きくうなずいた。
「そうか。それがオヤジのいった『安全な遺体』の意味か。つまりね、奥さんはベトナムのどこかで消滅した。でも、その日本人は疑われない。なぜなら、奥さんは火事で亡くなりましたから」
 私は煙草を揉み消して、
「どんなことだって想像できるさ。でも、その遺体は、検死医などのチェックを受けて旦那さんに引き渡されたわけだから、奥さんで間違いないと思うよ。いくらベトナムでも、その辺りはちゃんとやるだろう」
「でも、あの男の顔を見ていたら、そんな風には思えないんだよな。あれは、どっか悪いやつだ」
 私は長野の頑固な思考に笑った。すっかり決めつけている。
 私は長野の途方もない推理には組するつもりはないが、それでも野村はなぜいつまでもホーチミン市でぐずぐずしているのかは、充分に気になった。
 ユンが腰を浮かせて、カウンターの中を覗きこんだ。
「でさ。結局、何よ。オヤジの忠告はないの? 兄はオヤジのこと、尊敬していますね。そのオヤジからの伝言はないの?」
 顔をあげてユンを見つめる。
「伝言か。そうだな。カンボジアとの国境を調べて見るのはどうかな」
「どうして?」
「別にはっきりした話じゃない。ただそう思っただけだ」
 ユンはちっと舌打ちして、携帯電話を手に出て行った。兄のカンに電話するのだろう。ドアの向こうの、光を煮こんだような通りを、バイクがまばらに走っていた。午後の暑
い時刻、人の動きは少ない。ユンの白いシャツだけが、目にまぶしかった。

 夜、客の大きな波がおさまった頃、縁なし目鏡をかけた五十代の日本人が、背筋をきちんと伸ばして入ってきた。若い時期に、何か重量級のスポーツをやっていた名残りか、上半身が頑強だ。すぐに野村とわかった。新聞の写真で想像したより大柄で、たくましく見えた。
 赤いハッピを着たユンが、注文を取りに行った。野村はほほ笑みながら、ビールと焼肉定食を頼んだ。
 オーダーを通す時、ユンに小声で教えた。念のため英語を使った。
「ユン、あの男が奥さんを亡くした日本人だ」
 ユンは目を丸くして驚いたが、露骨に視線を送ることはしなかった。うなずいてから、生ビールを自分で作り、野村の席に運んだ。
 ユンの小さな声が、店内の客の声に混じって聞こえた。
「お客さんとは、どこかで前にお会いしましたか」
 野村はいぶかしそうにユンを見あげた。しかしすぐに、日に焼けた顔に渋い笑顔を乗せた。
「私はただの旅行者だから、会ったことはないと思いますよ。しかしベトナムの娘さんは、みなさん、同じようにきれいだから、私が区別がつかないだけかもしれない」
「でも、変ですね。どこかでお会いしてますよ」
 野村が太い首を横にふった。
「それはないが、ここの店は何時までやっているのですか」
「九時までです」
「お近づきのしるしに、店が終わってから、一緒にどこかに飲みに行きませんか。日本語の上手な、ベトナムの若い娘さんと飲めれば、私はうれしい」
 ユンは驚いて、顔の前で手をひらひらさせた。
「だめです。あなたの奥さんが叱ります」
 野村は目を細めた。
「奥さんは亡くなりました。だから今の私は独身です。恋人募集中でね」
 そういって、にんまり笑った。気味悪いものを底に埋めこんだような、湿った笑いだった。
 ユンはまだがんばっていた。
「奥さん、どうして亡くなったのですか」
「事故でね。考えもしない事故だった。人生、何が起こるかわからない。あなたはまだ若いが、気をつけなさいよ」
 ユンが何かいおうとした時、電話が鳴った。野村に頭をさげて、あわてて入口の受話器を取った。ベトナム語で短く応答して、すぐに切った。
 怪訝な顔をする私を無視して、ユンは追加の料理を隅の席に運んだ。体格のよいインド人夫婦が、顔をくっつけるようにして、楽しげに話していた。最近よく顔をだす。ユンを気にいったらしくて、勝手に綽名をつけて、ユンのことを「カーカン(熱帯魚)」と呼んでいた。
 その時、稲妻の直撃を受けたように、ガラスドアに大きな白い光がはじけた。車を歩道に乗りあげてとめたのだ。光が消えるとすぐに、緑の制服を着たカンがもう一人の公安を連れて入ってきた。
 カンは私を見るなり、
「すまないが、通訳してくれないか」
 と一方的に申しでて、返事もきかずに野村の席に向かった。ユンが兄に目で合図を送ったのがわかった。さっきの電話はカンからにちがいない。
 野村を見おろすように突っ立つと、カンは英語できいた。
「あなたは野村康次か」
 野村は驚いて顔をあげた。公安の制服をとらえて、目の奥にほんの一瞬、狼狽の色が走った。ゆっくりうなずく。
「申し訳ないが、一緒に公安署にきてほしい」
 前掛けをしたままそばに立つ私に、野村は怪訝な顔を向けた。英語が理解できないらしい。私は同じことを日本語で伝えた。
 野村はカンをにらみつけて、
「食事中に失礼じゃないか。どうして私が警察署に行かなければならない」
 急に声を荒らげた。震え声の向こうに、虚勢がむくむくと身を起こした。
 カンは厳粛な表情でいった。
「先日の火事で亡くなったベトナム人の遺体を返してほしい。あの遺体はまちがってあなたに渡されたことが判明した」
 野村は私の通訳に、言葉を失った。そして口ごもるように、
「そんなはずはない。家内はあの火事で亡くなった。受け取った遺体は、まちがいなく家内のものだ」
 カンはゆっくり答えた。
「あなたの奥さんは生きている。おそらく今頃はカンボジアにいるはずだ」
 野村は何もいわなかった。縁なし目鏡の奥で、鋭い目が凶暴に動いた。

 そのまま拉致されるようにジープに乗せられ、私は市の中心部にある公安署に連れて行かれた。野村と同様の扱いに少し腹を立てたが、カンに通訳が必要なことはわかっていた。ユンではまだ役に立たないし、署に日本語が達者な公安がいるとは思えない。
 野村は狭くて汚い取り調べ室に入れられた。たった一つだけある高い窓には、錆びて黒ずんだ鉄格子がはめられている。熱気が厚くこもって、息苦しい。野村は憤然と椅子に腰をおろした。
 カンは天井の扇風機のスイッチを入れてから、公安の顔を作って質問した。私はそれを通訳した。
「カンボジア国境の出国審査所に連絡して調べてみた。するとあなたの奥さんが、火事のあった日の夕方六時頃、つまり火事の三時間ほどあとに、国境を越えてカンボジアに入った記録が見つかった。これはどういうことだ」
 通訳すると、野村は即座に否定した。
「そんなはずはない。家内はビジネスセンターで焼死した。検死医も、あの黒焦げの遺体を妻だと確認してくれた。死んだ妻が国境を越えるはずはない」
 カンは厳しい顔をもっと厳しくして、
「では、誰が奥さんのパスポートを使って、カンボジアに入ったのだ」
「そんなことは知らないし、おれには関係ないことだ」
 野村はいらつくように首をふる。
 カンの表情は、二十歳も年上の公安のように落ちついていた。
「火事の発生を知って、あなたは奥さんと共謀して奥さんの偽装焼死計画を立てた。奥さんが亡くなれば、高額の生命保険金が手に入る。だから火事が起こるとすぐに、あなたは遺体の安置された病院に出向き、できるだけ見分けのつかない遺体を探した。幸運なことに、それにふさわしい遺体があった。おまけに、検死の医師を納得させることにも成功した。奥さんは死んだのだから、奥さんの生きている姿を、他の日本人に見られては困る。だから火事のすぐあとに、国外にだすことに決めたのだろう。急なことだから飛行機というわけにはいかない。いや、死んだ人間が飛行機に乗るわけにはいかない。それでバスかタクシーで、カンボジアとの国境に向かわせたのだろう。国境まで、車で二時間ほどだ。やがて、あなたは奥さんを亡くしたふりをして帰国し、奥さんの生命保険金を受け取るつもりなのだろう」
 野村は鼻でせせら笑った。
「私のことをいろいろ調べたようだな。しかし、根本的にまちがっている。火事は三時頃のことだ。それから三時間後に国境にいるのは、難しい」
「不可能ではない」
「遺体検案書に載っているだろうが、遺体を引き取ったのは、火事から明らかに二時間はたっていた。およそ五時のことだ。それから家内を国境に向かわせれば、カンボジアに入るのは、どんなに早くても七時をすぎる。六時に出国審査所にいるのは、無理な話だ」
 カンはひるまなかった。
「あの火事のひどさを見れば、焼け爛れた遺体があることは誰でも予想できる。鎮火した頃、あなたは病院に向かい、奥さんは国境に向かった。遺体引き取り時刻まで、待っていたわけではない。それであれば、ぎりぎり間に合うはずだ」
「理論上は可能かもしれないが、それを実際に行動に移すのは別問題だ。焼け爛れた遺体が発見できないことも考えられるし、市内を抜ける道路が大渋滞する場合もある。それに何より、そうまで焦って出国する必要はないだろう。誰に追われていたわけでもない。そういうのを、日本では机上の空論というが、ベトナムにそんな言葉はないのか。焼け死んだのは、家内だ。何度もいわせるな。きさまはベトナム人なのに、同じベトナム人検死医が作成した遺体検案書が信じられないのか」
 野村は大きな体を反らすようにして、自信たっぷりに悪態ついた。
 カンは野村の視線を冷静に受けとめて、続けた。
「検案書は見たが、身長、体型、血液型程度のことしか記載されていない。上半身が焼けた遺体からは手の指紋も採取できなかった。あなたが申告した内容を、検死医はなぞったにすぎない」
「私は盲腸の手術痕があることも伝えた。下半身に火傷はなかったから、それははっきりわかったことだ。あの時は、ただ家内の遺体を返してもらうのが目的だったから、それ以上詳しいことをいう必要がなかった」
「それも見ればわかる。見たことを、あなたは告げただけではないか」
 野村はじっとりした目でカンを見つめる。目の奥に悪意があった。
「それに、家内はベトナム人のように、肌が浅黒くなかった。西洋人ほどではないにしても、白い肌をしていた。日本人の女の中でさえ、白い。私はそこが好きだった。遺体を検案した検死医も、肌を一目見て、ハナから外国人女性と考えていたはずだ。だから私が申しでた時に、何のこだわりもなく遺体の引き渡しを許可してくれた。それに、記載があるかどうか知らないが、家内の臀部には薄い黒子が三つあり、三角形のような形をしていた。安置された遺体をひっくり返さない限り、それはわからない。もちろん野次馬でにぎわう安置所で、焼け焦げたスカートを剥いで、遺体の臀部を見ることなどできるわけはない。きさまは、遺体に関して担当の検死医に確認しなかったのか。ベトナムの警察は、やることがそこまで杜撰なのか」
 私の通訳をきいて、カンの顔に戸惑いが生じた。
「検死医に確認済みだが、肌の色や黒子のことまでは話題にしなかった。検死医は、遺体はあなたの奥さんだという意見だったが、その根拠が曖昧に思えたのだ。だから私はベトナム人女性だと疑った」
「そうなら、ぐずぐずいってないで、もう一度きいてこい。そうすれば、こんな所に引っ張りこんだことがいかに愚かか、すぐにわかる」
 カンは難しい表情で私を見つめた。視線の奥に、当惑が揺れて乱れていた。それからいぶかし気に首を傾げて、蒸し暑い部屋を出て行った。検死医に確認を取りに行ったのだろう。
 野村は背中を丸めて、くぐもった笑いを洩らした。
 カンはなかなかもどってこなかった。若い公安が部屋の隅の椅子に座って、困ったような顔で野村を見つめていた。
 野村がふいに背筋を伸ばして、私に顔を向けた。
「君はあの料理店の板前か」
「そうだ」
「君もやはり、妻を亡くした男は朝から番まで泣きわめいていなくてはならない、と思うのか。朝からがつがつとビフテキにかじりつくのは、許されないことだと考えるのか」
「妻というのが、どの女性のことをいっているのかわからない」
 野村はぎらりと、きつい目で私をにらんだ。
 カンがもどってきた。顔色が暗い。
「あなたのいった通りだった。検死医も肌の白さから、外国人、特に白いアジア人だと確信を持っていた。ぼくの考えていたモン族の娘ではなかったようだ。それに三つの黒子のことも、検死医は記憶していた。どうせ日本人であることに間違いないから、手抜きして書き落としたようだ」
 野村が再びせせら笑った。
 カンは一度深く息を吸ってから、問い直した。声が沈んでいた。
「それでは、奥さんのパスポートを使って、国境を越えたのは誰なのだ」
「おれの知ったことではない」
 カンは顔から険しい公安の表情を落として、バイクごと川に飛びこんでずぶ濡れになった若者の顔をした。助けを求めるように、私にこっそり視線を送った。カンが眉をひそめると、その若い顔にユンの顔立ちが重なった。
 座ったまま野村に声をかけた。
「あなたは幸運な男だ。奥さんを殺さずにすんだ」
 野村は急激に怒りで顔を赤くした。
「きさまは、突然何をいいだすのだ」
「怒ることはない。私はただ自分の推測を述べているにすぎない」
「おれを疑っているのか」
「疑うも疑わないも、あなたは最初から奥さんを殺す目的でこの国にやってきた。遺体が奥さんだと判明した今、そう確信している。ただ強運が味方して、あなたは奥さんに手をくだす必要がなくなった」
「きさまのいうことは、何一つ理解できない」
 私は身を乗りだした。
「ではもう一度きくが、どうして奥さんと思われる女性が、火事の起こった三時間後に国境にいたのだ。遺体を確認してから国境に向かったのでは、あなたのいうように確かに間に合わない。その女性はおそらく火事のことを知らずに、のんびり出国したのだと思う。そうであれば、奥さんのパスポートがカンボジアに移動することは、最初から計画されていたことになる」
「それはおれには関係ないことだと、いわなかったか」
「じゃあ、どうして関係のない人間が、奥さんのパスポートを持っていたのだ。奥さんのパスポートを、あなたは今、所持しているのか」
「パスポートは火事で焼けた」
 野村は吐き棄てるようにいって、小さな椅子にふんぞりかえった。
「同じパスポートが二つないとすれば、奥さんはパスポートを持たずにビジネスセンターに行ったことになる。仮に奥さんが身につけていれば、半焼けのパスポートがでてきて、身元確認はもっと容易にできただろう。国境を越えたのは、明らかに奥さんのパスポートを渡された別の女性なのだ」
 野村は湿った目をぎろりと剥いた。
「それは誰だというのだ」
「奥さんでないとすれば、あなたの姉妹かもしれない」
「おれには姉も妹もいない」
「では愛人だろう。あなたが一度でも奥さんを好きになったことがあるとすれば、おそらく愛人は奥さんと似た雰囲気を持つ、肌の白い人だろう。女性の場合はもとの顔立ちが似ていれば、髪型をかえたり化粧するだけで、外国人の出入国審査官など簡単にだませる。特に日本人には甘い上に、カンボジアの審査官は自堕落だ」
 野村は顔を歪めた。
「何の証拠もなく、よくそこまでぺらぺら人を糾弾するものだ。きさまはベトナム警察のまわし者か」
 私は首をふった。死体を背負うように背中に疲労がきた。
「私は通訳として、むりやりこの件に引きずりこまれて、迷惑している日本人だ。断っておくが、奥さんの焼死体をもらい受けたことが罪になるわけではない。他人のパスポートで国境を抜けたことは旅券法違反にはなろうが、ベトナムの公安はそれで外国人を刑務所に入れたりはしない。あなたは何も隠すことはない」
 野村は一瞬言葉を失って、じっとりした目で私をにらみ返した。
「殺人未遂とでも、いいたいのか」
「未遂にもならない。まだ計画段階だった」
 野村は再び虚勢を張るように鼻で笑った。
「バカバカしくて話にならん」
 無視して続けた。
「火事の噂が広がる前に、愛人が奥さんを装ってカンボジアに向かったというのなら、奥さんにはもうパスポートが必要ないと、考えていたことになる。ぐずぐずしていると、奥さんがその紛失を騒ぎたてることになるから、おそらく火事のあった夜にでも殺害を決行する予定でいたにちがいない」
 野村は卑しい笑いを浮かべた。
「きさまの想像力はたいしたものだ。魚を三枚におろしながら、いつもそんなくだらないことを考えているのか」
 かまわず続けた。
「言葉の通じないベトナムで、奥さんをどうやって始末しようとしたのか、私にはわからない。いずれにしても、新婚旅行の最中に奥さんが失踪するのは困る。失踪がわかれば、警察はあなたに疑惑の目を向けるだろう。奥さんは生存していることにしなければならない。それで愛人をカンボジアに向かわせたのだ。奥さんを殺した翌日にでも、あなた方はカンボジアで落ち合って、ベトナムから遠い国で偽装した新婚旅行を継続するつもりだったのかもしれない。そしてきっと外国のどこかで、ほとぼりが冷めるまで、愛人は奥さんを装って暮らすことになろう。十年ものと思われるパスポートが二つもあるはずだから、奥さんの遺体が発見されない限り、時に奥さんに扮しながら愛人はどこにでも行ける。奥さんの資産はいつでも売却できるはずだ。きっと会社を建て直すことが可能なほど、その資産は大きいにちがいない。それにひょっとしたらその間に、愛人は奥さんの名前のまま、都合よく事故死してくれるかもしれない」
 野村は狂暴な顔を赤くして、大きな体をぐいっと前に突きだした。
「きさま、いわせておけば……」
 カンと若い公安が、すばやく野村の両手を抑えた。
 煙草を吸いたかったが我慢した。全身が重く感じられた。
「どちらにしても突然の火事で殺人計画は不要になった。しかし、日本の携帯電話が使えないベトナムでは、国境に向かう愛人をとめることができなかった。愛人は火事を知らずに、そのままカンボジアに入った。あなたが今もこの街にのんびり滞在しているのを見れば、おそらく連絡が取れて、愛人がもどるのを待っているのだろう。どうやってベトナムに再入国するのか知らないが、愛人はもう奥さんのふりをする必要はない」
 野村は両手を抑えられたまま、歯を強く噛んで、血走った目で私をにらんだ。
「板前風情が……たわごとを!」
 野村は唸るような声をあげた。

 公安署前の暗い歩道で、白いシャツのユンがバイクに腰をおろして待っていた。驚いて、ユンに近寄った。
「どうしたんだ。兄さんの出迎えか」
 ユンは子供のように口を尖らせた。
「本当に鈍感なオヤジだね。店はあのまま閉めて、迎えにきたんじゃない。どうせ兄は家まで送って行きませんと思いましたから。うしろに乗って。アパートに連れて行くよ」
「疲れていたから、ありがたい」
 ホンダ・ドリームの後部座席にまたがると、ユンは私がのけぞるほど乱暴にバイクを発進させた。
 夜の十時をすぎていたが、通りはあいかわらずバイクや車で渋滞していた。数えきれないほどのテールランプが、赤い火の玉となって淡い街灯の下で揺れていた。その火の玉を蹴散らすように、ユンは光の川を暴走した。
「おい、もう少しゆっくり走ってくれないか。少し怖い」
 ユンがちらりと顔を向けた。黒髪がユンの色白の顔にもつれて、また一段と怖さを増した。
「だらしないオヤジだな。怖いかったら、腰につかまればいいじゃない。遠慮しなくていいじゃないか。もうベトナムに何年もいるのだから、バイクをセー・オム(抱き車)と呼ぶのは知ってるだろ」
「知ってるが、中年男が若い娘の腰に抱きつくのは、みっともない」
「かっこつけても、オヤジを好きになる女の子は、私の他にいないよ」
 ユンの長い髪が風にもつれて、顔にからまってきた。シャボンのにおいがした。
 にぎやかな通りを横にそれて、薄暗い小路にもぐりこんだ。もぐりこんだと思ったら、突然コーヒーを売る露店にバイクを突っこんでとめた。隣の花売りのおばさんがびっくりして、尻もちついた。黒いペラペラのベトナムズボンの尻の汚れを手で払いながら、おばさんは乱暴なユンに文句をつけた。
 三度ほど頭をさげて謝ってから、ユンは勝手にプラスチックの小さな椅子を二つ取った。
「ちょっとここでコーヒーなど、飲もうか」
 結果をききたくて仕方ないのだろう。疲れていたが、ユンの差し出す椅子に素直に座った。ユンは体をくっつけるように椅子を寄せて、カフェ・デンとコーラを注文した。夜風が道路を走って、肌に粘っこくまつわりついた。
「で、あの男は捕まったのか」
 私はうなずいた。
「捕まるといっても、別に人を殺したわけではないから、事情をきくために一晩泊まるだけだ。お兄さんは今頃、愛人の居場所などを確認しているはずだ。しかし、あの男はカタコト英語しかできないから、大変だろうな」
「アイジンって何だ」
 だされたカフェ・デンがフィルターを落ちるのを待ちながら、おおまかなことを英語で説明した。きき終えて、ユンは驚いたように瞬きした。
「遺体はあの男の奥さんだったのか。最初からそう考えていた?」
 首を横にふった。
「そうじゃない。やはり疑っていた。だから実際に奥さんが焼死したと知った時は、自分でも戸惑った」
「じゃあ、カンボジアの国境を調べろ、って兄に伝言したのは、どういう意味?」
「あくまでも仮定の話だ。あの遺体が奥さんなら何もすることはない。しかしそうでないと仮定した場合、本当の奥さんはどうなったのだろう、そう考えた。野村の写真も奥さんの写真もこっちの新聞に大きく出て、長野さんでも簡単にわかるくらいだから、奥さんがホーチミン市にそのままいるのは都合が悪い。何しろこの街には、暇を持て余した日本人が多すぎる。焼死したはずの奥さんが自分のパスポートで出国するのは変だから、当然、偽造した物を使うことになろう。そうなると、何度もチェックを受ける飛行機は危険すぎる。その点、カンボジアの国境は近くにあり、しかも抜けるのはたやすいと思われた。それで国境の出国審査所を、お兄さんに調べてほしかった。もし国境を越えた一人旅の日本人女性、それも三十代の女性がいれば、パスポート上の名義はどうでも、おそらくそれは奥さんだろう。いなければ、生死に関係なく、奥さんはまだこの街のどこかにひそんでいる。つまりあの遺体は、奥さんの可能性が高くなる。そう考えたのだ」
ユンはグラスの中の氷をストローでこんこんつつきながら、変な顔をした。
「一つだけわからないことがあるよ。どうして愛人は、先にカンボジアに向かったのだろう。奥さんを殺してから、一緒に行けばいいじゃない」
「それはわからない。ただ愛人とは見ず知らずの他人として、別々に旅行にきていたはずだから、すべてが終わるまで行動を共にするのはまずいだろう。一緒にいるところを見られたら、奥さんの遺体が万一発見された時に困るはずだ。だから愛人はパスポートをこっそり受け取り、赤いパラソルでもひらひらさせながら、先にカンボジアに向かったのだと思う。いつ出国するか、あの男は案外知らなかったのかもしれない。それに愛人にパスポートを握られれば、あの男も奥さん殺しをためらうわけにはいかなくなる。そう考えれば、愛人が主導的立場でこの計画は練られ、野村という男は尻を叩かれて、奥さんの首に手を伸ばそうとした可能性さえある」
 ユンは腹立たしそうにいった。
「そうか。どっちにしても、ひどい男だな。野村というやつは。最初の奥さんも二番目の奥さんも、ひょっとして事故に見せかけて、殺したのじゃないか。トルコで地震に会ったり、交通事故に巻きこまれるなんて、都合がよすぎない?」
「それらは事故としてすでに決着がついている」
 ユンはコーラを一口飲んでから、目の前を走りまわるバイクに視線を置いて、
「まるでコン・マ(ベトナムの幽鬼)みたいなやつだね」
 とつぶやいた。
「そんなコン・マは、経済的に発展した国では珍しくない。ベトナムにも、やがてそういうやつがぞろぞろ生まれてくるさ。」
「お金のことばかり考えていると、人間の命なんて、羽のように軽くなってしまうね」
 ユンは小路の風で乱れる髪を、白い髪留めでうしろに束ねた。
「それにしても、奥さんはかわいそうだったな。こんな暑い国にきて、もっと熱い火で焼かれることないよね。それとも、オヤジも新婚旅行の最中に私を焼きたいと考えることあるかな」
 私は笑った。ユンは炎に包まれても、そう簡単に焼けそうに思えなかった。
「心配するな。真っ黒に焼けたら、魚の骨をかじるようにぽりぽりかじってやるよ。よく焼けたユンはうまいかもしれない」
「バカ!」
 ユンは日本語で叫んで、私をにらんだ。それから急に表情を緩めた。かわいい顔になる。
「今のバカは、親しみの言い方です。本気にしたらだめですね」
「ああ。本気にしないが、ユン、テトが終わったら、日本語、もう少し気合を入れて勉強しろよな。やはりユンの発音をきいていると、疲れる」
 ユンはじれったそうに体をよじった。
「だからさ、もう少しまじめに先生してくれよ。そしたら、もうオヤジといわないで、大先生と呼ぶから」
 私は煙草に火をつけながら、うなずいた。
 花売りのおばさんがすっかり機嫌を直して、セロファンで包んだ赤いバラを目の前に突きだした。苦笑して、手をふって断った。
 ユンはそんな私を横目でにらんで、ちっと舌打ちした。それから何がうれしいのか、急に鼻歌を歌いだした。鼻唄に風の唸りが混じって、耳に快く響いた。
ユンの鼻歌をききながら、バラの花を買ってやろうかと、ほんの一瞬だけ考えた。 (了)

昼下がりの料理店

執筆の狙い

作者 ゴイクン
121.92.248.76

タイトルは仮題です。枚数は80枚ほどです。
これは手直し作です。
火事は実際にあったことです。私も数日後前を通りましたが、無惨なものでした。亡くなった人の数なども実際の通りです。
一応はミステリーで、犯人捜しのつもりです。
うまくオチているか、どきどきしながら投稿します。
長いですが、よろしくお願いいたします。ぺこっ。

コメント

吉岡ニッケル
126.224.185.42

文章、ダイアログはやっぱし群を抜いとるなあ。
俺のバカ小説はいつも「読みづらい」と相手にされへんのに、ゴイクンさんのは面白い。不公平や!w

ヴェトナムでは「公安」が堂々と闊歩してるんや。へえ。
日本では身分を徹底的に隠すけどな。警察手帳も持ってないし、ニセ名刺もぎょうさん持っとる。
そのくせエリートづらしよってからに、この野郎!

日本では「チヨダ」だったっけ、それとも「サクラ」だったっけ、俗称は。

ともかく、警察は敵や!

面白かったです。

ゴイクン
121.92.248.76

吉岡ニッケル さま

早速のご感想、ありがとうございます。
面白かったと、一応いってもらって、まずは安心です。

ベトナムの公安はいばっていますよ。というか、共産党の国ですから、当然です。

税金がないので、公務員に出す、まともな給料がない。で、あるとき時の書記長が、まあ、中国の習さんみたいな人が、石を投げればアタルほど膨大な公務員に呼びかけたんです。

給料はチョー安いけん、みんな、副業に頑張って、自分の金を稼ごう、って。

で、公安は賄賂しか儲かる方法を思いつかないので、すぐ賄賂です。

学校の先生は、塾を開いて、翌日のテストとそっくりなのをその塾でやる、とかね。

まあ、塾に関しては、観光で行ったときにベトナム人ガイドが笑いを取るためにたいていいいますね。
でも、実際はこんな可愛いものじゃないです。

それに、公務員の医者たちも手術中に、患者が貧乏人と知ると、ナイフもフォークもさしたまま、帰ってしまいます。私の知り合いの場合は、奥さんがその場で、うちの旦那は貧乏に見えるが大金持ちなんです、何ぼでも金は払いますから、手術を再開してください、と叫び狂って、医者は戸口でちょっとためらってから、またナイフを手にとり、無事に生き返りました。
その男は、小さな子を連れてセンターにぼんやり立っていたら、貧しそうなベトナム人が1000ドン紙幣、まあ、10円弱かな、を置いて行ったそうです。それほどかっこにかまわないわけで、私は医者の判断は、きっと間違っていなかった、と思いました。

ついでに書けば、共産党の国は、選挙投票ほぼ100パーですが、うちの大家連中は反政府なので、今回はパス、と考えていたら、午後3時頃、来ましたね。その区域の共産党青年団みたいなのが。
真っ青になってバイクでふっ飛んでいきました。

100パーでない場合は、重篤な病人を抜かしているのでしょうね。

私はバイクでつかまったことはないですが、何度かちょっとそこのガイジンさん、とはいわれました。言葉わからんふりして逃げたけど、でも、拙作の中で書いた公安の提案、賄賂肯定論?は、あの国においては、私は完全同意です。実に現実的です。

何かで読んだけど、フランス人に賄賂についてきいたら、確か7割だかが、肯定論だったようです。もっとも個人の小さな賄賂ですよ。ゴーンとかの話じゃない。

 今日も天気がいいので、これから畑仕事です。トマトが真っ赤になっています。
 それじゃあ、どうもありがとうございました。

u
183.176.51.134

ゴイクン様。面白く読ませていただきました。

狙いで>一応はミステリーで、犯人捜しのつもりです>とのことなので、ミステリ好物の私は細心の注意を払って読んだのです(笑)。

前半―ベトナムの(裏?)事情をさりげなく説明しつつ、事件の提示があり、お話を読者に飽きさせることなく引っ張る。ウマイネ
主人公の(オヤジ)、なんだかかわゆいユンちゃん、兄ちゃんのカン。何の違和感もなく登場。
なかなかのこうせいりょくだと思いますよ。

誉めるだけでは駄目なんで、私が思った難点。ただし、ミステリーに対する私自身の願望?的なもんなんで、お気になさらずスルーでもおk。

オヤジが事件にかかわる発端――焼死体数が合わないモン族の女の子。―――作者さんこれ最終的に回収してないのでは?。(スミマセン。1回読みなので見逃したかも?)

火事の原因の電気工事士は逃げ出した。まだ捕まっていない。―――私はゴイクン様早い段階で伏線仕掛けたなーと思ったんですが?(何分ミステリなんで)。
本筋に関係ない描写は読者(私)勘ぐるのでイラン(笑)。火災原因だけの記述でいいのでは?

探偵役(おやじ)の過去設定欲しいなー。元捜査員・探偵とか。そうすればキャラたつし、ユンちゃんの淡い恋心も物語的に深くなるのじゃなかろうか?

それにしてもユンちゃん可愛い!
作者様の手練手管からいえば、ちいちゃな子供、小動物的なキャスチングで、ある意味上手いです(笑)。

最後は嫌味になりましたが面白かったです。御健筆を。
 

ゴイクン
121.92.248.76

U さま

長いのを読んで頂き、ありがとうございます。
褒めて頂いて(ですよね?)、うれしいです。
しかも、うちのユンをかわいいといって頂いて、これは何よりうれしいです。

ご指摘の点ですが、モン族の娘のこと、書いたつもりでどうも忘れてしまったようです。といっても、どっかで遊んでいるかもしれない、とか、別の事件かもしれない、とかその程度のことですけど。

そして、電気工事士ですが、これは全く考えませんでした。ご指摘を受けて、おお、という感じです。
実は、この電気屋さん、確か二人いたかと思うのですが、そのまましばらく行方不明で、警察が探していました。現れたのは、10日かそこら後だったはずです。
この火事のことは事実に則っていますし、この火事のことを聞いて、遺体が足りなければどうなるか、と考えて作ったものです。もちろん、水上勉の飢餓海峡を思いだしたからですけどね。函館海峡で沈没した連絡船から遺体が一人分多く、だったか、少なかっただったか、それが元になっています。

おっしゃる通り、火災原因だけを書いておけばよかったですね。でも、書きたかったわけで・笑

ノンプロットで始めたので、この推理に齟齬がないか不安だったのですが、まあ、そこそこだったようで^^
私も板前さんと一緒に推理したわけです。

なお、この板前さん、このシリーズを続けるとすれば、実は日本から逃げて来ているという設定にしようと考えています。警察に追われているという感じでしょうか。でも、どうなりますか。

>それにしてもユンちゃん可愛い!

ほんとうれしいですよ。自分の書いたキャラ、モデルも何もない女の子をかわいいといって頂けるなんて。この一言で、今夜は安眠です。

ありがとうございました。

夜の雨
114.184.205.149

ゴイクンさん「昼下がりの料理店」読了しました。
なかなか面白かったです。

ユンはすごく可愛い女性ですね、魅力的に描かれています。
それにしても主人公のオヤジですけれど、ユンにこれほどまでに好かれる理由がわかりません。この好かれる理由は作者の願望でしょう。
ユンの兄の描き方もよかったですし、ほかの脇役も問題ありませんでした。
なかなかキャラクターの盛り方がうまいです。
―――――――――――――――――――――――――――――――――――
推理部分ですが。

穴があります。
御作で当初問題になっていたベトナムの行方不明女性の顛末が書かれていません。
この女性がきっかけになり推理部分の話が展開しているので、顛末は書く必要があります。
まあ、親に隠れて彼との時間をエンジョイしていたと書いておけば事足りると思いますが。

本題の推理部分について。
これはラストで野村の愛人が火事で亡くなっていたというオチにしたらいかがですか。
ほんとうの奥さんはカンボジアへ出ていた。
要するに野村は愛人を妻の代わりに殺す予定だったが、省けたという展開です。
野村の妻がカンボジアの日本大使館に駆け込んで野村の悪事を洗いざらい述べたというオチです。
当初は野村に協力するつもりだったが、自分の存在がなくなるということに馬鹿くさくなった。
得をするのは野村だけですからね。

―――――――――――――――――――――――――――――――――――
全体では

キャラクターはうまく描かれています。
ベトナムの雰囲気は出ていました。

導入部のユンの日本語のへたくそさには閉口しましたが。もうちょっとで読むのをやめるところでした。
ということで、話の引っ張り方なども上手いですね。

ミステリーの部分はいまいちという感じです。
スパッと切れ味よく展開してほしいです。
御作だと野村の妻は火事で亡くなっているということですよね。
これだと野村は丸儲けということになります。
それ以前にも野村の二人の妻は、夫に多額の保険金を残して亡くなっているし、なんか、尺全としません。御作の終わり方では。

あと野村の妻はどうして彼と結婚したのですか、年齢も離れていますし、妻には財産もある、二人が結婚する理由に説得力がほしいです。

御作の面白さは主人公のオヤジとユンとの絶妙なコミュニケーションだと思いました。
それにしてもなぁこのオヤジ、どうしてユンみたいなかわいい娘に気にいられているのだろうか。


それでは、次の作品たのしみにしています。

夜の雨
114.184.205.149

再訪。

読み終わって時間が経ち、御作の違和感がどこからくるのか見えてきました。

野村が怪しい行動をとっている、それは妻に多額の保険金をかけておいて、他人を妻の身代わりの焼死体と読み手に勘違いさせるような展開(構成にして)に持っていき、最終的には妻が火事で亡くなっていた。
したがって、野村は何の罪にも問われないし、保険金と妻の財産がまるまる入ってくる、というような終わり方になっています。
おまけに野村は以前の妻だった二人とも多額の保険金をかけていて、その妻が亡くなっている。

つまり野村は限りなく黒いが白になっている、という人物です。


主人公のオヤジは推理を展開させるが野村は今回の火事で妻が実際に亡くなっていたので、読み手からするとアウトでした、ということになります。

従いまして「昼下がりの料理店」というミステリーは名作にはならずに迷作になった。

と、御作のミステリーという部分から判断するとこけてしまったという展開だと思いますね。
――――――――――――――――――――――――――――――――――――

御作のミステリーと違う部分、登場人物とかベトナムの雰囲気とかはよかったです。
文体というか文章もこなれていました。

――――――――――――――――――――――――――――――――――

野村の限りなく黒いが白だったという展開のオチづけを「もう一歩突っ込んだ深いところに持っていけば、御作は成功するのではないかと感じました」。
すなわち野村はオヤジやベトナムの公安の思っていた悪事の展開には持っていけなくて白になってしまったが、「野村の思うように、何もかもうまくいかなかった」という展開へとラストを持っていけばよいと思います。

A>たとえば、野村自身が日本に帰ってからでもよいので、事故か事件に遭い亡くなったので、もちろん妻の保険金や財産を使うことはできなかった。<

Aの結果をオヤジとユンが知り、ラストでそのことを「昼下がりの料理店」で雑談する、ベトナムのコーヒーでも飲みながら、というような感じです。
オヤジにしてみれば、そのコーヒーは苦いものだと思います。

九丸(ひさまる)
126.193.150.236

拝読しました。

僕が感じた疑問等は先の方々がご指摘されているので割愛します。
それを抜きにして、とても面白かったです。キャラと文章が作り出す雰囲気がとても好きでした。
オヤジの背景とユンとのこれからが気になります。
これは個人的なケチみたいな願望ですが、タバコの銘柄と店の名前欲しかったです。
拙い感想失礼しました。

ゴイクン
121.92.248.76

夜の雨 さま

土日の昼間は畑をほっぽり出して、嘶く動物の観察に出かけますので、返信遅くなりました。申し訳ありませんでした。

いろいろあるにしても、面白かったといって頂き、ほっとしています。
特にユンのキャラとか、気に行って頂いたようで、これもうれしいことです。

>それにしても主人公のオヤジですけれど、ユンにこれほどまでに好かれる理由がわかりません。この好かれる理由は作者の願望でしょう。

 (笑)。はい、私の願望です(笑)
 ユンみたいな子がそばにいれば、毎日が楽しいだろうなと素直に思っています。

 でも、私のいる村には、だいたいこの年齢の女の子がいないもので、だから風邪ひいて病院に行くのが楽しみなんです。ひょっとしたら、可愛い看護師さんがいるかと、思って^^;
 でも、なぜか怖そうなおばさん、いや、おばあさん看護師さんが多く、なので風邪をひかないようにしています。
 山の畑で出会う人間の女性といえば、90近いお婆さんばかりです。でも、先日はスモモを袋にいっぱいくれましたので、愛想よくしています。

 なので、小説の中だけでも、ユンみたいな子に憧れて^^;;;
 寂しいですね、ポロッ!
 すみません、関係ないことを。

>御作で当初問題になっていたベトナムの行方不明女性の顛末が書かれていません。

おっしゃる通り、「この女性がきっかけになり推理部分の話が展開しているので」顛末は必要ですね。で、自分ではどっかに書いたはずだと思っていたのですが、載せるときに確認の手直しをしているうちに、行く不明になったみたいなのです。消しちゃったのでしょうか。

書いて板のは、ご指摘のように「親に隠れて彼との時間をエンジョイしていた」という感じでしたが。こういう基本的な失敗は恥ずかしいです。

さて、絵に描いたような悪人の野村に関してですが、二度に渡っていろいろ考えて頂いて恐縮です。
再訪の方で書いていただいた、

>野村自身が日本に帰ってからでもよいので、事故か事件に遭い亡くなったので、もちろん妻の保険金や財産を使うことはできなかった。<

というオチは惹かれました。これなら、読まれた方も嫌な気分で終わらなくていいかもしれないですね。

書いている本人はあまり気にしていなかったのですが、いわれてみれば野村は、丸儲けです。奥さんも死んで、お金も入って、愛人も無事で、幸せ幸せ、という感じになります。

映画によく出る泥棒など、たとえばオーシャンズ11でしたっけ、昔の映画、泥棒に成功して、どっかの浜辺で優雅に暮らしている、映画にはよくあるラストですが、あれには観客は不満が生まれません。というのも、その泥棒たちは本物の泥棒ではない、というか、納得できる理由のある泥棒なので、観客もすっきり感があるのですね。

でも、拙作の犯人?は、ただの欲深い悪人です。なので、すっきり感がないのですね。

これは考えもしませんでした。推理を進めていけば、こうなった、というだけのことで、そこに探偵役の善悪の感情は入れるとは最初から、いや、書きながら頭にありませんでした。

ハードボイルド探偵みたいな設定だったので、しっかり考えたわけじゃないですが。まあ、よそのことにはクールに、無関心で過ごす。いらんことに首を突っこまない、そういう主義にしてしまったのは、外国にいるという前提があったからだと、今にして納得しています。

上の方への返信でも書いたのですが、これをシリーズ化するのなら、板前さんは何かわるいことをして日本から逃げてきた、という設定にするかな、と何となく考えたのは、無意識に無関心さに気づいていたということかもしれないですね。逃亡者はハードボイルドになるしかないですから。

ただ、本作では、どっちかといえば本格風なミステリーのつもり、あくまでつもりなので、やはりこの結末しかなかったかな、とは思います。

奥さんと共謀で愛人を殺すつもりで、ベトナムに来て、うまく火事で死んでくれた、では、普通の話とはやっぱり逆かな、と思うのです。

愛人がストーカー並になったという場合は、これも当たるでしょうが、でも、愛人のことなので、割と堂々と警察に相談に行けるのではないでしょうか。本人は無理でも、奥さんなら行けるわけで、わざわざ殺人の計画に加わらなくてもすむことですね。

なので、読まれて犯人にすっきりとはならないにしても、やはりこれはこれで仕方ないなあ、と私は思っています。
せっかくいろいろ考えて頂いたのですけど。ただ、

>野村の妻はどうして彼と結婚したのですか、年齢も離れていますし、妻には財産もある、二人が結婚する理由に説得力がほしいです。

この部分は耳に痛いです。考えもしなかったことです。
二人のことなので(笑)、他人の私にはわからないというしかないでしょうが、でも、世間を眺めれば、なんで、という夫婦は多いように思います。
ちょっとは、野村の魅力を考えてみるべきでした。やはり最初から、私は野村をただの悪人としてしか、まあ、ミステリーパズルのピースとしてしか見ていなかったということでしょうね。これはまずいです。反省です。

 あと、

>導入部のユンの日本語のへたくそさには閉口しましたが。もうちょっとで読むのをやめるところでした。

はははっ!! やめないで最後まで読んでもらって、よかったです。
確かにおかしな日本語を聞かされると、嫌になりますね。
単語のぶっちぎりならさほど嫌でもないのでしょうが、勉強している場合は、接続詞を使ってみたくなりますね。そしたら、すぐにおかしな日本語になる。
なので、実はベトナム人のよくやる間違い日本語なんかを思いだしたりしたのですが、よくわかりませんでした。

>それにしてもなぁこのオヤジ、どうしてユンみたいなかわいい娘に気にいられているのだろうか。

私も同じことを思っています。どうして、って。やはり願望小説なのでしょうね。今書いているのもそんな感じかな・涙

 本当にありがとうございました。
 いろいろ参考になりました。これからも、ぼちぼち頑張りたいと思います^^

ゴイクン
121.92.248.76

九丸(ひさまる) さま

読んで頂き、ありがとうございました。

>僕が感じた疑問等は先の方々がご指摘されているので割愛します。

ミステリーなのに、ノンプロットで書き始めるものですから、いろいろボロが出てきます。書いているときは、私も板前さんと同じように探偵になります。安楽椅子探偵ですが。

今回は、まあまあ、事件を解決できたかなと思っているのですが、現在4本の未解決のミステリー長編があります・笑

犯人がわからないのです。なので、迷宮入りですね。

また一番困るのが冤罪問題です。
何度か解決して探偵役ともども喜んでいたら、どうも冤罪みたいで。
推理をし直して新犯人を見つけたときは、カイカンでした。

アホです^^;

>キャラと文章が作り出す雰囲気がとても好きでした。

ありがとうございます。
でも、こういうコンビって、実はミステリーには多いですね。赤川次郎さんの受賞作、幽霊列車もそんな設定でした。他にもいっぱい。
男の願望かも、ですね。

なお、煙草ですが、私が吸っていたのは英国煙草のCraven Aというやつです。不思議なことに「腰抜け」とかいうような意味だと思うのですが、ベトナムのどこかで作ったやつです。でも、ベトナム人にCraven Aといっても、まず通じません。その煙草に猫の絵が描いてあるので、ベトナム人は、con meo(コン・メオ)といっています。A catの意味です。

一応外国煙草もどきなので、100円くらいしました。時給100円の仕事をしていたので、煙草は贅沢品でしたね。

ちなみに、私のHNのゴイクンは、生春巻きの意味です。
でも、日本人がベトナムでゴイクンといっても、99パー通じません。通じるとすれば、観光客を相手にして、変なベトナム語に慣れている人たちだけですね。

私は、最初のうちは指を使って煙草を買っていました。あとになると、顔を見たとたんに露店のおばさんが即、一箱用意してくれるようになりました。
感謝のしるしだといって、年末に花瓶をもらいました。困りました。

とにかく、読んで頂いてありがとうございました。それでは。

うりぱぱ
218.227.96.7

ゴイクン様

 拝読いたしました。面白い、あとで書く二点を除いては流れも構成もすごく納得しました。描写も独特な味があって思わず唸ってしまいました。

 さて内容ですが、気になる点は、遺体の数の件。そのあと娘は戻ってきていた一文を加えるだけでよいと思うのです。
 もう一点は亡くなった奥様がビジネスセンターへ行った正当な理由を作って欲しかったという事です。(読み漏れではないと思うのですが)
 なんとなれば、途中に書いてあるように、火事即遺体確認に行く野村の理由がありません。記載されているように迷子や買い物などで遅くなるとふつうは考えるでしょう。
ここがミスリードであるならばその解消方法は作中に残しておくべきではないでしょうか? 初めからそこに奥様がそこに行く理由を知っている理由が必要でしょう。(それは取り調べの時に判ればいいことだと思いますが、本当は奥様がそこへ行く理由位は、どこかにちりばめておくとか)

 それと主人公の事件への推理、これも刑事のようですね。前職刑事にしてもいいかも。

 で、残念なのは最終的に野村がシロになってしまう点です。単なる勘違いでこれほどの物語を終わらせるのは惜しい気がします。何かもう一つ加えて野村を犯人となるならば読み手としても溜飲が下がるのですけれど。
 加えてこの件なら保険会社は支払い拒否しますね。多分簡単には支払いしないでしょう。裁判を待つほうが会社としても有利ですし。前妻二人が亡くなっていることから、支払わない理由はいくらでも作れますし。日本の警察も黙っていませんしね。
 もっと簡単に保険金を受け取る方法があります。ゴールドカードに二人して加入しておくのです。奥様だけなら怪しまれます。海外保険が適用されます。死亡時三千万だったかな? こちらは比較的簡単に支払いされます。プラチナならもっと良いですよ。相続は基礎控除分三千六百万はもらえますね。残りには税金がかかりますけど。


蛇足ですが、私自身も仕事の関係で海外へは十ヶ国くらい行っています。そのなかで一番カルチャーショックを受けたのがベルギーとデュセルドルフで、自分の気質に合ったのがタイでした。タイも別の意味でのカルチャーショックがありましたけどね。
ヴィェトナムにはいきかけた事があるのですが、機会を逃してしまったので行ってませんけども、10万ドンが700円ってすごいインフレなんですね。昔のカンボジアみたい。タイには都合一〇回くらい行きました。あちら方面の国では白いヤモリが沢山いるんですね。で、それを殺す殺虫剤(虫じゃないけど)も売ってるんですね。ヴェトナムにも奴らはいると思うのですが。(作中に出てたような……)

今作はヴィェトナムというか東南アジアの雰囲気が良く出ていました。光の使い方がお上手でした。でももうちょっとあの美しい街並みや広い道路の事も書いて欲しかったかな。でも参考にさせていただきます。蛇足ついでにもう一言、あのアオザイが魅力的なんですよね。柄にもよりますが、あれスコールなんかでぬれると中身まではっきりと見えてしまうんですよね。

ありがとうございました。

香川
27.95.81.7

読ませていただきました。
 
文章からベトナムの気配が感じられて、とてもいいなと思いました。
そこで生活する人々の姿もリアルに想像できますし、そこで営まれているだろう生活も見えるような気がしました。
こういったリアルさは、そう描けるものではないので、素晴らしいと思います。
 
ストーリーは前半、カンとのやり取りやその晩にユンが訪ねてくる辺りまではとてもよく描かれていたと思います。
ミステリなので、提示される情報に知的好奇心をくすぐられましたし、これからの展開に非常に期待しながら読み進めることができました。
この辺りも、書き方の上手さがあってのことだと思います。
堂々とした文体もとてもいいなと思います。
 
一番気になったのは、推理モノにしては推理そのものがやや粗いのではないかな、というところです。
こういうジャンルの作品の面白さというのは、緻密に張られた伏線が謎解きの場面で見事につながっていくことによるカタルシスではないかなと思うのですが、ちょっとご作品ではそういう味わいが少なかったように思います。
最初は偽装焼死計画も推測に過ぎないよな…と思っていたのですが、それが間違いで遺体は確かに奥さんのものだった、となった時、なるほどここから主人公がきちんと根拠ありの推理を披露していくのか、となり期待して読み進めたのですが、それも推測の域を出ていないように私には読めました。
もし、主人公の推理がが何かしらの伏線を回収し、明らかな証拠を提示したら、最初は脇役のダメな推理、けれど読者もそれと同じことを予期していたから違うとなってあっと驚き、
次に主人公が鮮やかに伏線を回収しながら推理を述べていき、最後の最後にバーンと証拠を叩きつける、という感じの、ミステリの王道の展開を踏襲していてワクワクするものになったように思いますが、
現状だとちょっと私は主人公の推理に首を捻ってしまいました。
愛人の存在すら判明していないし(読み落としていたらすみません)、パスポートの件もほかの可能性も十分に考えられてしまうので、ちょっと説得力がないかなと。

主人公がほとんど動かないのに、関係者や情報を持った人が勝手に店に現れていくのも、ちょっと現実的ではなかったかなと思います。
長野や容疑者である野村などです。
もしこういう風に作るのだったら、この店をすごく繁盛した、地元のベトナム人も多く訪れるし、日本人観光客なら必ず立ち寄る場所だ、みたいにしていれば、長野がこのタイミングで入ってくることも、野村がやってくることもそこまで不自然ではなかったかなと思います。
それなら、長野に新聞を見せられた時に「この男は前に店に来ていた」みたいにして連れの女も登場させれば伏線にもなったかな、と思いました。
そうなると、他のベトナム人の客や日本人観光客についてもいろいろと描かなくてはならなくなると思いますが、そうやって人が増えて群像劇化した方がミステリとしては面白くなるかなと思います。
小説ではほとんど読んだことがないのですが(お恥ずかしいですが…)例えばクリスティの作品などはそうやって多くの人の思惑が錯綜していますよね。
すごく難しいことを要求していると思いますが、お上手な方ですからできなくはないと思うんですよね。
そうなると、ちょっとノンプロットでは難しくなる気がしますが…。
ただ、そもそもミステリというジャンル自体がノンプロットはかなり難しいと思うので、もしこういったジャンルにまた挑戦されるのであれば、プロットありで書かれてみてもいいのではないかなと思いました。
 
あとは、行方不明のモン族の女性はどうなったんだろう…というのはやはり気になりました。
ビジネスセンターに行ったのも偶然としてしまうと、ちょっと納得いかないような。
もし、これを偶然で押し通すなら、野村と愛人の殺人計画の方をもっと明確に緻密にしていかないといけないのかなという気がします。
そちらが上手く展開されていれば、他方の偶然はそこまで気にならないかなと。
 
と、色々書いてしまいましたが、上にも書いたように堂々とした文体が細かなことを気にさせないようなところもあって、そこはさすがだなと言うか、こういうどっしりとした自信に充ちた文体というのは、やはりそれだけでひとつの説得力を持っているのだな、という気がしました。
 
ありがとうございました。

ゴイクン
121.92.248.76

うりぱぱ さま

読んで頂き、ありがとうございました。
面白いといって頂き、うれしいです。
エンタメですから、特に面白いというお言葉は、ありがたいですね。

問題としてご指摘頂いたうちのまず最初の点ですが、

>遺体の数の件。そのあと娘は戻ってきていた一文を加えるだけでよいと思うのです。

他の方からのご指摘もあったのですが、これ、確か書いたはずなのですが、コピペした際にすっ飛んでしまったみたいです。
IKKOさんの、まぼろし~、という感じで自分でも不思議です。

>もう一点は亡くなった奥様がビジネスセンターへ行った正当な理由を作って欲しかったという事です。

ここは一応、「夫の話では、一緒にベンタン市場で買い物していた時、お土産の件で友人に電話するといって、奥さんは引き返したらしい。」とは書いておいたのですが、おそらく多くの人が見落とされるのじゃないかと思います。

一応は、これは火事当時のベトナムでは正当な理由になったと思うのですが、現在の日本人の感覚ではやはり正当とはいえませんね。

当時は日本の携帯が使えなかったので、ホテルやビジネスセンターで電話を借りるしかなかったのですね。外国人にも共産党政府の目は光っていましたから。
なので、ラストも愛人とのコンタクトがちゃんと取れなくて、男は待っているという設定にしています。

ただそれはそれとして、

>なんとなれば、途中に書いてあるように、火事即遺体確認に行く野村の理由がありません。記載されているように迷子や買い物などで遅くなるとふつうは考えるでしょう。

ああ、やっちまいましたね^^;
確かにそうです。焦って行く理由がないですね。しかし焦って行くように書いた。ここは、もうちょっとちゃんと考えるべきでした。

ミスリードじゃないです、残念ながら。ノンプロットなので、私もこの辺りでは、犯人は野村だ、というように思って書いていたので、その調子がそのまま残ってしまったのですね。
これは恥ずかしいです。
野次馬で火事現場を見に行くのはアリですが、わざわざ確認には行かない。きちんと落ちていないですね。ありがたいご指摘です。ふ~っ、

>残念なのは最終的に野村がシロになってしまう点です。
>何かもう一つ加えて野村を犯人となるならば読み手としても溜飲が下がるのですけれど。

このご指摘は他の方からも頂きましたが、上に書きましたようにノンプロットで書きますので、私も犯人がわからない。でも、野村を犯人にするしかない。
でも、それじゃ、あまりに話がストレートすぎて、オチがない、そう考えていたときに、まあ、このような空騒ぎ風なオチが浮かんできたのです。一応はどんでん返しにはなる、と・笑

なので、書いているときは、おっしゃるような考えは全くありませんでした。
なので、このご指摘には正直驚いています。

でも、コロンボだったかに、こういうのなかったでしょうか。
最近は古畑任三郎をユーチューブで見ていますが、なんか、空騒ぎ風なオチがありそうな。
そういう意味でも、逆に野村は犯人じゃなかった、というのもオチとしてあってもいいのでは、と思ったのです。ただ読まれてスッキリしない、という心配は思いつきませんでした。

ミステリーって、いろいろな面があるので、難しいですね。本当に読んで頂いてありがたいです。

なお、保険金の件、私は全く無知ですので、コピーして、今回は無理としても、いつか使わせてもらいたいと思います。
だいたいゴールドカード、見たことないですし、プラチナカードって初めて聞きました。なんせ、貧乏なので^^それでいて、土日は生き物の走る姿を観察しにウインズに行っています。

持っているのは、VISAカードだけですが、それがこの町では使えないのです。一応は市なんですけどね。どんだけ田舎なんだ、っていいたい。
あるとき、ボロ負けして、一文無しになって、それで煙草も買えなくて、おかげで日に三箱吸っていた煙草を止めることができました。田舎の利点ですね。

でもまあ、野村なら当然プラチナカードのことなど、知っているはずです。勉強不足でした。

>そのなかで一番カルチャーショックを受けたのがベルギーとデュセルドルフで、自分の気質に合ったのがタイでした。

なぜか隣り村にベルギー人のアンちゃんがいます。偶然会って立ち話をしたときに映画の話になって、アホな私は、ベルギーの「ボーイセブン」って映画はよかったよ、なんていったのですが、そのアンちゃん、ポケッとしてました。
後で調べたら、オランダ映画でした・笑。後で、ベルギーといえばポアロだね、といえばよかったのか、と反省。でも、ベルギー人としては、ポアロといわれてどう思うのか。
デュセルドルフはどうしても、殺人鬼の印象が強いです。その犯人をモデルにして、「M」という映画がありましたが、そっちの印象が強くて。私は映画フリークなので、何でも映画です。すみません。

タイは私も何度も行きました。というか、たいてい大韓を使うので、トランジットの関係で毎回一泊か二泊していたものです。バンコックです。

行くと、メナムチャオプラヤで普通の船に乗るのですが、ワットアルンは常に左手にあって結局まだ行っていないです。三島の暁の寺の舞台ですが、私は、ワットアルンは川から見るのが一番美しい、ということにしています。

ヤモリはどこでもいます。私の部屋にも何匹かいて、リノリウムタイルの上を這っていました。子供のヤモリは、透き通っている感じで、かわいいですよ。
私の友だちでした^^;寂しい^^;

 ベトナム、おいでになれなくて残念でした。きれいな街並みですよ。プチパリです。
 しかもなんと、食べ物がおいしい。だって、中国とフランスの占領下にあった国ですよ。二国の食のいいところを盗んでいるわけですから、不味いわけないです^^
ぜひぜひ^^

>今作はヴィェトナムというか東南アジアの雰囲気が良く出ていました。光の使い方がお上手でした。でももうちょっとあの美しい街並みや広い道路の事も書いて欲しかったかな。

ありがとうございます。光と風の国ですね。中島敦の作品のタイトルじゃないですが、ホントに南方は光と風が心地よいです。

>あのアオザイが魅力的なんですよね。柄にもよりますが、あれスコールなんかでぬれると中身まではっきりと見えてしまうんですよね。

あっはっは^^
確かに確かに。
こっからは18禁ですが、高校生の制服は白いアオザイなのですね。下にはブラとパンティーだけ。それがスコールに会うと、つまり水に濡れると透ける。
仰る通りです。でも、誰も嫌がっている様子はなかったですね。男連中も特に気にはしている風でもなくて。
何の話をしているんだか^^

今回は本当にありがとうございました。それでは。

ゴイクン
121.92.248.76

香川 さん

読んで頂き、申し訳ありません。
御作に、何だか偉そうなこと書いてすみませんでした。
すぐにバチがあたりますね^^
 
>一番気になったのは、推理モノにしては推理そのものがやや粗いのではないかな、というところです。

これをいわれるのじゃないかとびくびくしてアップしたのですが、やっぱり、でした。

>こういうジャンルの作品の面白さというのは、緻密に張られた伏線が謎解きの場面で見事につながっていくことによるカタルシスではないかなと思うのですが、ちょっとご作品ではそういう味わいが少なかったように思います。

つまり、はらはら読んでいっての先にある、OHHHH!! ですね。
それがない。ないとすれば、ミステリーとしてはほぼダメということでしょうね。

伏線もない、証拠もない、なのに、探偵は推測し、断定している。ミステリーとしては、そう思わせてしまったのであれば、それでお終わりですね。同感です。

ただ私が書きながら考えていたのは、アームチェア型の探偵でした。本人は動かない、ただ話を聞いて可能性を推測する、というやつ。「隅の老人」というのが有名です。コーヒー店だかの隅にいるだけで、

>主人公がほとんど動かないのに、関係者や情報を持った人が勝手に店に現れていく

という形になっているのです。なので、私はそれは気にしなかったのですが、確かに現実的ではなかったかですね。

アームチェアの名作に「時の娘」というのがあります。警部が骨折して入院して、病床で謎を解く。その謎の結論は、リチャード3世は実はいい人だった、ということなんですが、とてもスリリングでした。
動かない、昔の人の話だ、証拠もない、けれど、読者は納得してしまう。

そんなのを狙ったのですが、そこがちゃんとできなかったわけですね。

でも、私は証拠の一つとして、一応犯人?の男の態度を書きました。その態度で推測は間違っていなかった、と思って頂きたかったのですが、それは物的証拠になりませんから、やはり中途半端なのでしょう。

説得力のないミステリーでは話になりません。

伏線をもっと張るなり、証拠をもう少しそろえるなりすべきでしたが、やはりノンプロでは無理だったのでしょう。

といいつつ、じゃあ、ご提案のようにプロットをこれから先、作るかといえば、私には無理です。何度かやろうとしたのですが、どのような話も絶対に最初と大きく変わってしまうのです。年齢も性別も。これって、癖と言う以前に、アホということなんでしょうね。

でも、ノンプロットのせいでうまくいった場合もあります。ミステリーでも。なので、自分としてはすっかり諦めています。プロットが書ける人が奇跡に見えます。

>現状だとちょっと私は主人公の推理に首を捻ってしまいました。
>愛人の存在すら判明していないし(読み落としていたらすみません)、パスポートの件もほかの可能性も十分に考えられてしまうので、ちょっと説得力がないかなと。

だからこそ、突然の愛人説にOHHHHH! といってほしかったのですが、無理筋でした^^;

>この店をすごく繁盛した、地元のベトナム人も多く訪れるし、日本人観光客なら必ず立ち寄る場所だ、みたいにしていれば、長野がこのタイミングで入ってくることも、野村がやってくることもそこまで不自然ではなかったかなと思います。

う~ん、これは現場を知っているので、難しいですね。
誰かが、これは実際にあったことなので、なんてことをいって、つまらないと思えることに拘る場合がありますが、そんな場合、私はいつも、事実かどうかはドキュメントでない限り関係ない、小説的に必要かを考えろ、というのですが、やはり自分でもやってしまいます。恥ずかしいですね。

仕事もなく外国に一人で暮らしている人って、実はヒマんなんです。することがないのです。なので、案外早く消えてしまいます。挨拶したと思ったら、翌週からもう見ないこともありましたね。

なので、長野というおじさんは、毎日ヒマつぶしに顔を出しているという設定でした。また、ベトナム人は、よほどの金持ちでない限り、日本料理店などには入れません。ラーメンが500円するのですから。私の日本語教師の時給が100円でしたから、ほぼ一日働いてラーメン一杯でした。今はどちらももう少し高いでしょうけどね。時給100円はベトナム人が羨む高さでした。

なので、こういう店は外国人の租界みたいなものなのです。

なんていっても、そう書いていないのですから、ダメですね。だからたいてい店は閑散としています。
異国を舞台にする場合、わかる人だけわかる、ではダメなので、特に注意はしていたのですけど、やっぱりやってしまいますね。
まあ、私の村も異国同然で、説明いっぱいしないと通じないですけど。

なお、ちょっと書かれたクリスティーの件ですが、ひょっとして想定されていたのは、オリエントでしょうか。私は、クリスティーはほとんど読んでいます。勉強のためにちょうどよいので。

で、実は御作に感想入れて、風景描写云々と書いたときに私の頭にあったのも、クリスティーなのです。クリスティーは登場人物はたいして重要でない人でも、その骨相を丁寧に書いていますね。Determined mouthとか何とか。目がどったらとか。
でも、他はこんな感じです。

ポアロは、シャーロット家の門を抜けて、庭に出た。それから館の中に消えた。

上は適当に書いただけですけど、どんな門か、どんな庭か、どんな館か、それに風は吹いていたのか^^、なんてことはまず書きません。話には関係ないからですね。西欧人の書き方です。
そういうことをいいたかったので、再度ここに書いておきます。

今回はどうもありがとうございました。お互いに頑張りましょう。

吉岡ニッケル
126.224.148.76

フリッツ・ラングですかのう?

ゴイクン
121.92.248.188

吉岡ニッケル さん

おお、びっくりした!

>フリッツ・ラングですかのう?

Mはそうです。フリッツラングのサイレントです。ベートーベンの何番かを聞くと、おかしくなる殺人鬼の話です。
主役はピーター・ローレで、キャプラの毒薬と老女などに出ています。
ラングはハリウッドに行ってから、つまらなくなりました。当時の映画をユーチューブでせっせと見ています。

吉岡ニッケル
126.224.148.76

おはようさんです。今日も取材や。

ピーター・ローレ。ハンフリー・ボガートと共演した時はええ演技しとったと思う。
イライジャ・クック・ジュニア然り。

ま、ゴイクンさんは、ここで映画の話をするとヒンシュク喰らうとお書きになったけど、
阿部和重だって日本映画学校出身。かまへんと思うんやけどな。

あと前にあなたはんが天本英世、とお書きになったことがあるやろ。
実はね、俺のバカ犯罪小説にQちゅう年金暮らしの殺し屋が出てくるんやが、
そいつが天本英世そっくりなんや。グレート・ストーン・スマイルだかフェイス。
バスター・キートンもモデルやねん。勘が鋭すぎて恐ろしいわw。

吉岡ニッケル
126.224.148.76

あ、もひとこと。

今はどうか知らんが、ハリウッド時代のラング、ソフトは殆ど出ておらんで忘れられた存在やったらしい。

そんで、俺が嫌いな蓮實重彦が評価したのでまた表に出た、となんかの本に書いてあったわ。
俺はサミュエル・フラーのソフトが欲しいけどね。

ほな。

ゴイクン
121.92.248.188

吉岡ニッケル さん

サミュエルフラー!!

何十年ぶりに聞いたわ。目が覚めた。前に「ショック集団」は見たけど、覚えとらん。
今日は天気ようて畑仕事もはかどったので、晩飯食ってからユーチューブで探したら、いくつかあった。
早速見た。 Pick up on south street.
ウイッドマークがスリ^^
めっちゃよかった。フラー冴えてる。
明日は別のフラー見るけど、最近、50年代のアメリカ映画が、こんなのいかがでっか、って顔を出すのでたくさん見ている。
この頃のモノクロは雰囲気よくって、最近に好きになっていた。そこへフラーや。この映画知らんかった。あんがと。

といいつつ、ほんともう映画はやめようよ^^
マジで。お願いしまっせ。

吉岡ニッケル
126.224.175.113

じゃ、そしよか。
最後に他の諸氏へ。

元・東大総長にして映画評論家、蓮實重彦は「伯爵夫人」で三島由紀夫賞を最高齢でとった。

以上や。 ほなさいなら。

ドキドキ胸キュン
220.98.89.98

最初から最後まで読みました。面白かったですね。感想欄では自分語りばかりして気持ち悪い奴だなと思っていましたが小説はそうではなかったです。
出版されている市販の小説になんら引けを取らない素晴らしい作品だと思います。
ですがたくさんの方が書かれている通りモン族の少女を伏線として回収してない点でモヤモヤが残ります。

ここでドキドキ胸キュン流のオチと伏線の回収を例に上げてみます。

モン族の娘が親と連絡が取れていない理由は、単純に携帯電話をなくしたからです。
娘は火事の三十分前に家を出て、街中で携帯電話を落としてしまいます。
そしてそのことにビジネスセンターに入る前に気づき、無我夢中で携帯電話を探し回るようになります。
そこまで携帯電話に執着する理由は、既に述べてある通り単身で専門学校に通ってはいるが、寂しさを感じているからです。
娘は家族に電話をかけることが出来ない状態にパニックになり、一日中携帯を探し回ります。

そして連絡の取れない日が続き、親は心配のあまり新聞の広告欄にありったけのお金をつぎ込んで顔写真付きの広告を載せます。
ですが、貧乏だった親が払った額が小さかったため事件に関わる一部の人間しか、モン族の娘の顔を知りません。
勿論、ユンやカン、オヤジは娘の顔を新聞で知ることになります。

事件が終わって最後に二人はバイクで疾走し、あるコーヒーを売る露店のようなところでプラスチックの椅子に腰を掛け二人は雑談している部分があると思いますがそこに少し手を加えます。

バイクでユンと走っていると、道中で泣きながら歩いている少女を発見します。泣いているので顔がシワクチャになりこの時点ではオヤジがモン族の娘に気づくことはありません。
その後、ユンとオヤジは作者さんのオチの通りコーヒーを飲もうって言う流れになり、ユンの無茶な駐車のせいでコーヒーを売る露店の所にバイクが少しぶつかったことにします。
そして、おばあちゃんは怒りながら少しずれた屋台を直そうとしたところ、偶然地面に落ちている携帯を見つけます。
そこに先ほどの少女が通り過ぎ、オヤジは携帯を拾い上げた時の少女の顔を見て、すべてを悟った後少し微笑んだ後カンに電話をかけて物語は終わると。

ハッピーエンドです。私ならこういう結末にしていたと思います。作者さんのオチもいいと思いますが、モン族の娘を伏線として回収するならこういうやり方も一つ参考にしてみてはどうでしょうか。

とても楽しかったです、読み応えがありました。またの小説楽しみにしております。

ゴイクン
121.92.248.216

ドキドキ胸キュン さま

初めまして。読んで頂きありがとうございます。

>感想欄では自分語りばかりして気持ち悪い奴だなと思っていましたが

あははっ^^
そうなんです。気持ち悪いやつなんです。
自分でも薄々感じていて、そろそろ余計なことは書かないようにしようか、と思い始めていたのですが、なかなか。やっぱり、

〇今日畑で仕事をしていたら、赤とんぼがぎょうさん飛んでいましたで。

と書きたくなってしまうのです。うちの村はもう秋なのかな。

というのもですね、拙い作品、しかも長い、そんなのを読んでもらったのに、

●ありがとうございます。精進します。

なんてそっけない返信はよう書かんのです。何か土産でも持って帰ってもらいたい。といって、手もとには何もない。
それで、秘境の話なんかを書いてしまうのです。
すみません。友だちがいないもので。自主的、ムラ八分状態で、二分のつきあいしかないので、なんて、また長くなりそうなので、真面目に返信します。

やはりモン族の件は回収失敗なわけですね、って、もう真面目ですよ。

そこで私の代わりにいろいろ考えて頂いてありがとうございます。

問題とされているのは、なぜ家に電話しなかったのか、ということですね。そして確かにそれが問題なのです。

そこで、携帯を落としたという線。それはアリですが、ただそれで何日も家に電話しないとなると、どうでしょうか。

そういう娘もいるかもしれないですが、あっちでは携帯は高いですから、考えられないわけじゃないですが、でも、何日も黙って一人で探すのなら、一応別の方法で連絡しないものでしょうか。
これはできるはずです。

専門学校の友だちだっているはずなので、その子の携帯を借りてもいいですし、もし友だちが携帯を持っていなかったら、学校の事務の電話を借りることだってできるはずです。

と、私は考えましたので、どなたかが書かれたように、何かあって街をほっつき歩いている、という方を取りました。
 物語とはいえ、モン族の娘さんには悪いのですけどね。

>親は心配のあまり新聞の広告欄にありったけのお金をつぎ込んで顔写真付きの広告を載せます。

モン族に関しては、後で親がバスを使ってホーチミン市に来ていますので、広告の必要はないと思うのですが。

確かに物語の締め方はハッピーじゃないので、どっかにハッピーエンドな感じがほしい、という考えは大いにあると思うのですが、それがこの娘には、やはり当てはまらないように思いました。

なお、お土産のつもりで関係ないことを書きますが、ベトナムの新聞には、写真つきの、まるで履歴書のようなものが毎日たくさん載っています。学歴とか何とか。
またインドの新聞にも、毎日小さい写真付きの個人広告が一面全部を埋めていましたね。こちらは主に結婚相手求むで、みんないいことばかり書いています。
カーストはバラモンで、肌の色は男女ともに白くて、学歴もよい、というように。
そこだけ見れば、インド人はみんな白人みたいです。
昔の結婚は親が決めていたのですが、最近は若い人も頑張っていますね。
映画の影響大でしょうね。

なんて、雑談でした。すみません。

ということで、申し訳なかったですが、読んで頂き、いろいろ考えて頂き、ありがとうございました。
特に、オヤジとユンを気に行って頂いたように感じましたので、なおのこと感謝です。
それでは、失礼します。

吉岡ニッケル
126.224.143.62

また映画の話になるんやけど、先日、でえっ嫌いな池袋で今村昌平「神々の深き欲望」をみた。

あれは世界映画史に残る名画や。

俺にもインスピレーション湧いたわ。

ARAKI
126.224.127.52

読ませて頂きました。

主人公とユンの最初のやり取りが好きでした。ユンは日本語の少し違和感のあるきつめの喋り方から、英語に切り替わった時のギャップが良かったです。英語だと年相応か、少し若い感じの女の子の喋り方になるんですね。

ベトナムの文化を知ることができてそこが魅力的でした。
カンの賄賂に対する考え方も面白かったです。

犯人探しは意外とあっさり終わったと感じました。
野村に目に見える形で罰が降ればよりすっきりしたかもしれません。

最後のシーンやはりユンは日本語の方が可愛く感じますね。

電気工事でスパークは見たことがありますが、本当に恐ろしいです。
養生や3Sは大事ですね。

読みやすくてすっきり終われた気がします。
ありがとうございました。

ゴイクン
121.92.248.172

ARAKI さま

遅くなってすみませんでした。
読んで頂きありがとうございます。

>ユンは日本語の少し違和感のあるきつめの喋り方から、英語に切り替わった時のギャップが良かったです。

 英語のときは、普通に、まあ、日本人が日本語を話す感じに書きました。本当はユンの英語もおかしいはずなんですが、私にはわかりませんので。
 ただ変な日本語を話す場合、これは実は少しは苦労しています。一応ベトナム人らしい間違いにしたかったので。でも、ギャップがよかったといって頂き、発見でした。

>ベトナムの文化を知ることができてそこが魅力的でした。
カンの賄賂に対する考え方も面白かったです。

 まあ、これは外国物の場合は必要じゃないかと思って、必死にネタを探すことになります。お兄さんの賄賂への考え、これは私は妥当だと思っていますけどね。
 交通公安に笛を吹かれたら、ベトナム人は身分証を出します。指紋つきのIDカードです。顔写真と共に、顔の特徴、右目の上2センチの所にほくろあり、というのも書いてありますよ。まあ、死体の確認には使えそうですね。
で、笛を吹かれた人は、そのカードの下に5万ドン札を重ねて渡します。公安は検査する振りをして、5万ドン札をそっと抜き取り、カードだけを返して、行け、と顎をしゃくります。
 お互いに手品師みたいでしたよ^^私は面白がって見ていたので、笛を吹かれましたけど^^;

>犯人探しは意外とあっさり終わったと感じました。
野村に目に見える形で罰が降ればよりすっきりしたかもしれません。

 ここは自分では全く気付けなかった点でした。バチがあたるべきだった、というのも想像の外でした。
 他の方の意見は聞いてみるものですね。出してよかったです。

 お互いにぼちぼち頑張りましょう。
 今回はありがとうございました。

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