作家でごはん!鍛練場
うるずや たかしぃ

三語お題『うさぎ』『電話』『本』

書評SNSの『本読メ~ル!』は、今日もにぎわっている。
とはいえ、常駐組は五人程で、僕はもっぱら読む専だ。
サイトのデザインは、白っぽいピンクの背景に、朱色のスレッド枠。文字は白色だ。
一番上に、『本読メ~ル!』のロゴが光る。
その下、左側がスレッド列で、右側がランキング列になっている。
ランキング列に並ぶHN。その下から二番目に輝く『うさぎ』の文字。
僕は、その文字を目に焼き付けるように見つめた。

メッセージ欄を開ける。
送信箱に並ぶ『うさぎ』のHN。
一昨日と昨日、続けて送ったメッセージに返信はない。
受信箱をクリックした瞬間、『新しいメッセージが届きました!』という文字が出た。
慌てて、メッセージを確認する。
たった一つ、光る『うさぎ』のHNに僕は興奮した。
開いたメッセージに書かれていた内容は……。


話を僕の過去に変えよう。
僕の部屋の勉強机の上には、うさぎの電話がある。
小学一年生の時に近所のフリーマーケットで買ったものだ。
新品だった。
500円だったと記憶する。
その電話は、白いうさぎの顔で、両耳が左側右側に直角に曲がっている。
その上に、金色の受話器が厳(おごそ)かに乗っている。
見つめると、しん、という音が聞こえてきそうだ。

このうさぎの電話を見た女性陣は、たいてい、「なに、これ?」と言った。
二人っきりになった時など、あからさまに、気持ち悪い、という表情をした。
「こういうの、好きなの?」
という問いかけに、いつでも、
「君よりね」
と答えた。

翌日から、彼女(ら)は、僕を見ようとはしなかった。
話しかけてきても、どこかよそよそしかった。


さて、『うさぎ』。
彼女、と思われるHNを二分ほど見つめた。
何度見ても、名前は消えない。
白色の文字は太い明朝体で、ゆっくりとそこにカーソルを持って行く。
『こんにちは。
メッセージありがとうございました。
お返事が遅くなってしまい、ごめんなさいね。
貴方のメッセージを読ませて頂いて、感動していたんです。
あの本の感想は、私もとても近くて、嬉しいです。
また、何かあったらメッセージ下さいね。』

僕は、思わずにやにやした。
メッセージを二度も三度も読み返す。
はあ、うさぎさんも僕と同じ感想を抱かれていたなんて、僕たちは運命じゃないか。
まあ、それは大袈裟だとしても、彼女もまんざら僕に悪い感情は持っていないのではないか。

そうして、勉強机の上のうさぎの電話を見つめた。
うさぎさんも、今までの女性と同じように、嫌悪感を示されるだろうか。
いや、彼女の『うさぎ』というHN、それこそが運命の証ではないか。


次のメッセージ。
僕は思いきって、連絡先を聞いてみた。

メッセージを待つこと三日間。
そうして、ついに、彼女からの返信が届いた。

『お返事ありがとうございました。
私の連絡先は、
06-6×××-××××
です。』

飛び上がりそうになった。
実際、勉強机の椅子から5cmぐらい浮いた程だ。
本当は、腰を浮かしただけだが。
僕はうさぎの電話の受話器に手をのばす。
久しぶりに持ったそれは、意外と軽く、自分が大人になったことを実感した気がした。

うさぎの顔のダイヤルを回す。
じいこ、じいこ、とダイヤルは回り、そのゆっくりさが僕を苛立たせた。

呼び出し音は二回。
電話がつながった。

「あ、あの!『本読メ~ル!』でメッセージを頂きました、嬉しかったです!
うさぎさんとお話ししたくて……」
「ああん?」
「え? うさぎさんって、そんなお声、あ、お父様……」
「あん? お前、誰だ。冗談なら、ただじゃ済ませねえぞ」
「えっと、えっと、うさぎさんはお兄さんと暮らされてる……」
「だから、うさぎって誰よ。だいたい、お前、ここがどこか分かって掛けてんのか」
「えっと、えっと、『うさぎ』さん、ですよね……」
「ああ、もういい!『うさぎ』? ちょっと待てよ。あ、お嬢!……」
「ハロー、はじめまして。勇敢なライオンさん」
「え、うさぎさん、ですか……」
「そうよ。貴方の『オズの魔法使い』の感想、とっても素敵だったわ」
「え、え、本当ですか! 嬉しいなあ、僕はうさぎさんの書評のファンなんです!」
「イグザクトリイ。貴方、よく志馬田(しめだ)と話せたわね。たいていの人は怖がって切っちゃうのに」
「ええ、ええ、僕は勇敢なライオンですから、ドロシーさん」

彼女はそこで一時、無言になった。
「またね、今日は楽しかったわ」
「あ!」
通話は切れてしまった。


それから、彼女に再び電話を掛ける勇気がなかなか持てず、もんもんとした日々を送った。

りりりいん。

電話が鳴った。
うさぎの耳に飛び付いた。
受話器から聞こえてくるのは、懐かしい彼女の声。
「ねえ、ねえ、ドロシーはどうして、オズの国に飛ばされたんだと思う」
「え、ええと、それは、夢だったのかなあ」
「ふうん、大人みたいなこと言うのね」
「僕は……」
「あたしはね、きっと、彼女の願望だったと思うの。賢くなりたい、ってね」
「牧場の子ですよね?」
「そう、私とは違うけどね……」
「うさぎさん……」
「ねえ、あなた、どんな電話でお話ししているの。聞きたいわ」
「え! 本当に? それはそれは、素敵な電話なんだ。うさぎの形をしていてね。折れた耳の上に受話器が乗っているんだ。君にも見せたいなあ」
「へえ、素敵ね! でも、見には行けないの……」
「え、なんで?」
一瞬、沈黙。
「ぷ、ふふっ! 変な人。私は……。まあいいわ、また、掛けてくるつもり?」
「え、ええ? どうしよう」
「ふふ、『勇気』があるのは結構だけど、『慎重』さもお忘れなく、ライオンさん」

そうして、通話は終わった。

僕には一つだけ解せないことがあった。
どうして、うさぎさんは僕の電話番号を知ったのだろう。

お教えしてないのになあ。

そうか。
きっと、ナンバーなんたらという物だな。

もう一度、彼女に掛けようかしらん。

こうして、僕の運命は大きく動き始めたのだった……。


(了)

三語お題『うさぎ』『電話』『本』

執筆の狙い

作者 うるずや たかしぃ
49.106.210.144

終わらせ方がわかりません。
どこまで書くべきか。
いきなりな気もするし、これ以上書いたら野暮な気もします。
ジャ○プの打ち切り作品か……!

始まり方も気になります。
引き込む力が少ないのではないでしょうか?

どこまで読めたかも教えて頂けると嬉しいです!

コメント

ぷーでる
157.65.82.154

終わらせ方がわかりません。
> 永遠に終わらなそうです。僕という主人公が、うさぎさんに愛想が尽きない限り。

うるずや たかしぃ
49.104.12.37

ぷーでる様

そうですかぁ。
ここからが、本編でしょうか?

ありがとうございます!

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