作家でごはん!鍛練場
えんがわ

旅人

 照りつける太陽の元、サイダー瓶の中のオレンジの光はなおさら弱弱しく見えた。ふわりふわり、ふらりふらり、ビンの中で揺らいでいる。

 もうちょい、辛抱してな。

 膝頭まである一面の草をなぐように、歩いていく。草原はエメラルドに光り、そこに桜でんぷのような桃色の花々がところどころにこぼれている。腰に付けた携帯ラジオからは、スタッカートの歌が流れている。ピアノは田舎の小川のように流れるけれど、女の子の少しボーイッシュな声はそれをからかうように弾んでいる。でも、それが妙に馴染んでいる。この季節になると、良く聞く昔の流行り歌だ。

 君の横顔に恋した。
 いくつ春が巡っても。

 甘い言葉が通り抜けていく。喫茶店で季節の魚のスープを啜っている時、小さめのスプーンをしきりに動かしながら笑っている彼女の口元を思い出した。その時にかかっていた音楽ではないだろうけれど、なんとなく。なんとなく満員の羊車で横に座る彼女を。なんとなく詰まらない冗談に軽妙な相槌を打って笑いに変えるその手ぶりを。なんとなく別れを思った一緒に並んだ帰り道を。なんとなく。

 第三レベル警報!
 第三レベル警報!
 ブライアンがクシャミをしました!

 ラジオから女の声が、トンビのようなトーンで響いた。

 あー、あー、またかい。

 草の地面にしゃがみこむ。おしりを地面に付けて、両足も横にする。昨日の雨で少し湿っている。ジーンズがすっかり汚れてしまう。もともとヘロヘロだけど。

 第三レベル警報!
 第三レベル警報!
 ブライアンがクシャミをしました。

 ふわっと草が揺れて、それからぶわわっと草が風になぎ倒されていく。その草の流れと共に強く、ぬるい風が吹きつける。目をつむる。わかっていても、思わず目をつむってしまう。髪が後ろに引っ張られ、身体も引っ張られる感覚。草が激しく打ちつける。ごぅっ。ごぅごぅ。
 ブライアンのくしゃみが草原一杯を通り抜ける。余韻で草がふらふらお辞儀をくり返す。ふぅ。

 ブライアンが花粉症になって、何年だー。
 ほんと、はた迷惑な。

 ラジオは仕切り直しとばかりに、モッキンとオカリナの、陽気な歌を流している。

 はぁ。さて。
 行かなくちゃな。


  *

 チョモランカバが寝そべっている。風車小屋ほどはある巨体から、これでもかとシャンプーっぽい、いやリンスっぽいか、お風呂の香りが漂っている。桃色のチョモランカバを撫でながら、チョビ髭のおっさんが尋ねる。

 で、どこまで行くの?
 んっ、あそこくらい。
 へー、随分と奮発するねぇ。
 しゃあねぇさ。

 サイダー瓶のオレンジの光を見せる。光は更に淡いものになっている。ぎりぎり間に合った。間にあって良かった。

 へー、こりゃ珍しい。イエローやパープルは見たことはあるけれど、オレンジとはね。

 あー、珍しいのは良いんだけど、デリケートでね。すぐヘタッチマウ。良い栄養、与えないとな。

 うーん、わかる。なんとなく。なんならあっちまではどうだい? あそこならカシミア流星群があると思うよ。滋養豊富で健康に良し。

 んっ? ほんとかい。

 お客さんに、嘘ついてどうするよ。そん代わり、面白い花火、描いてくれよ。

 おう。飛びっきりの。描いてやるよ。

 その意気。その意気。

 チョビ髭おっさんがチョモランカバに大たらい一杯の白い液体を飲ませる。ごくごくごくごく、ずずっ、ずっ。チョモランなカバは最後の一滴まで飲み干し、ふうと耳をパタパタする。それからお腹を伸びをするように動かし、地面につけた顔からほうっと息を吐く。と共に、巨大なシャボン玉をぽかんと吹き出す。それに滑り台の高台のような、だけど滑る所のない、いや何と言ったらいいか、そんな台の上からシャボンに飛び乗る。思ったよりも弾力がある。いいカバだ。いいシャボンだ。チョビ髭さん、いい仕事をしている。

 これならいける。そんじゃいってくるよ。

旅人

執筆の狙い

作者 えんがわ
165.100.179.26

よろしくお願いします。

コメント

偏差値45
219.182.80.182

独特の世界観を持つファンタジーということですね。
ボヤけてはいるけど、ほのぼのするものを感じました。
その点はセンスが光るのですが、、、。
世界観が先行していて、ストーリーがまったくついて来ないので
面白味に欠けますね。
表現上でも、いくつか問題点があるように思えます。

>サイダー瓶の中のオレンジの光
曖昧。冒頭での曖昧さは作品の命とりになりかねないです。
つまり、読者としては、なにこれ?⇒わからん⇒挫折となるからです。
で、このサイダー。どんなサイダーなのか見えない。
三ツ矢サイダーなのかな? そうではない。ではなに? ということですね。
ここで興味のそそる、なに? ならば良いのですが、この場合は違います。
単純に脳に負荷を与えるだけなので、意味がありません。

>もうちょい、辛抱してな。
主語がすぐに分からないのは問題。
読者としては主語を探す、という仕事をしないといけないわけです。
それは苦痛につがなります。したがって、ここで、挫折ということもありえます。

>草原はエメラルドに光り
これは問題がありますね。言葉だけで、具体的に色の指定をしていません。
エメラルドは、一つの色ではないです。

>桜でんぷのような桃色
桜でんぶって和の文化ですよね。個人的には小説全体は洋のイメージがあるので、
違和感が強いです。

>スタッカートの歌
個人的には、知識がないので意味がないかな。


>君の横顔に恋した。
>いくつ春が巡っても。

歌詞の内容ですか? ちょっとボリュームが足りない気がしますね。
反則かもしれないけど、文末に「♪」をつけてもいいかも。

つづく。

偏差値45
219.182.80.182

>喫茶店で季節の魚のスープを啜っている時、
どんなスープなのか、分からないかな。
季節はたぶん、夏、、夏の魚?
あまり美味しそうには感じないですね。

>小さめのスプーンをしきりに動かしながら笑っている彼女の口元を思い出した。
視点が定まっていない気がしますね。読みにくい。

>第三レベル警報!
>第三レベル警報!
>ブライアンがクシャミをしました!

独特の世界観なんですけど、超大型巨人でも存在するのでしょうか。
ブライアンって?
ここで謎ができると同時に、読者に負荷を与えているので、挫折してしまうことも
あり得ますね。

>トンビのようなトーンで響いた。
ちょっと分からない。

>草の地面にしゃがみこむ。おしりを地面に付けて、両足も横にする。
妙に説明が細かいですね。

全体的にはしんどいかな。
一度読んだだけではよく分からない。
短いからまだ良いけれど、この調子で長々と展開されると思うと
読みたくなくなりますね。
「?」が多すぎるのは、問題ですね。

文緒
126.224.186.183

拝読。

んで、私は何を読んだんだろう?
とんでもなくオソロシイ世界の「ある日の風景」なのかな。

わかったフリはできないので、ごめんなさい、頑なになる一方の頭と心に倦ねている私には理解不能でした。

申し訳のないことです。

えんがわ
165.100.179.26

>偏差値さん

ありがとうございます。
はい。
置いてけぼりしてしまったようで。

しんどい、という言葉を受け止めて、どうにかしていきたいです。
ある程度、イメージを膨らませてほしかったんですけど、そういう読みを強要するのは書き手のエゴなんだろなって。反省。
「?」の数は減らした方が、すっきりするよね。なんだろうな。

ご指摘の数々、わかりやすく説明するというよりも描写でもう少し説得力を持って伝えたかったと思いました。
ラフスケッチ過ぎて、輪郭がぼやけ過ぎて、伝わらかなったのかな。

ここから膨らませたり、長いのを書く時は、書き方を変えなきゃですね。甘えてしまいました。

なにかしら雰囲気を感じていただき、嬉し、です。この雰囲気がそういう欠点をカバーできるだけの力を持つまでに至るには。
まだまだ遠いな。入り口にも立ってないな。がんばらなくちゃ。

夜の雨
60.41.130.119

一度読んだだけではわからない、ただ「なんとなくのふわふわ感」は、あります。

御作の文字を目で追いながら再度読むと、やっと何の話かということがわかりました。

主人公が「サイダー瓶の中にオレンジの光」を飼っていて、「オレンジの光」がくたばらないように希望の地を目指して旅するという話を、絵本的な描き方で書いたものです。

話が抽象的なので、かなりわかりにくい創りになっていますね。

御作の途中で彼女の想い出の話なども出てきており、時間の概念の世界をも旅しているという感じです。

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えんがわさん、の頭の中は抽象的な絵本の世界が広がっているのだと思います。
その絵本の世界を旅しているわけなのですが、今回は主人公がサイダー瓶のなかにいるオレンジ色の光が弱弱しくなっていくので、希望の地を目指すというような話です。
希望の地といえば大事のようですが、要するにたっぷりの睡眠と滋養が与えられるところということになります。
チョモランカバの作ったシャボン玉に乗り、カシミア流星群がある希望の地に行くというところで、終わっています。
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話はメルヘンチックですが、何しろ短いのでエピソードを抽象化してごまかしているという感じですね。
色鉛筆で色彩豊かに描いた絵本の世界ですかね。
エピソードを具体化すると、わかりやすくなるのではないかと思います。

情報を詰め込み過ぎているのでは。文章も荒いです。御作は絵本的な世界なので、もっとゆったりと書いたほうがよいのではありませんか。一段落にいろいろな情報を詰め込み過ぎていて「⇩」読んでも頭に入りにくい状態になっている。
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 膝頭まである一面の草をなぐように、歩いていく。草原はエメラルドに光り、そこに桜でんぷのような桃色の花々がところどころにこぼれている。腰に付けた携帯ラジオからは、スタッカートの歌が流れている。ピアノは田舎の小川のように流れるけれど、女の子の少しボーイッシュな声はそれをからかうように弾んでいる。でも、それが妙に馴染んでいる。この季節になると、良く聞く昔の流行り歌だ。
―――――――――――――――――――――――――――――――――
まあ、いろいろと書かせていただきましたが、「えんがわ」さんは世界を持っていると思います。
あとは、こういった世界を描く完成度を高めればよいのではありませんかね。

創作の参考になればと思います。

えんがわ
165.100.179.26

>文緒さん

ああ……。わかりにくいのは自分の力不足です。
ただ、今回の文章のゴールは「わかってもらう」んじゃなくて、何かしら「感じて欲しい」だったので。

>とんでもなくオソロシイ世界の「ある日の風景」なのかな。

と思っていただいて、そこで印象が終わって自分では「よし」と思うのです。
自分の意図から大きく外れていないし。


そこから、なにか変なものを読んだ、という感覚の「変な」に、もっと味わいや奥行きを作りたいと思ってます。
ここはまだまだなんだなとコメントから実感しました。

えんがわ
165.100.179.26

>夜の雨さん

>情報を詰め込み過ぎているのでは。文章も荒いです。御作は絵本的な世界なので、もっとゆったりと書いたほうがよいのではありませんか。

あー。うん。あー。ずばり。
なんか慌てて書いてしまった感じです。
今思えば、じっくりと取り組みたかった素材でした。

こういうの絵本と言うか、そういうの連想していただいてありがたいです。そんな感じをもうちょっと伝えたいです。

>「なんとなくのふわふわ感」
あっ。はい。そうゆーのを感じていただいて嬉しいです。嬉しいです。
このふわふわ感を、抽象的なぼんやりとした書き方以外で、もちっと具体的なエピソードに広げて書けるのが理想なんだろな。
ただ、どうなんだろう、この感じを出しつつ、具象的に書いていく、というのは今の自分のスキルでは手に負えないです。きっと。
根本の文章力やイメージ力を鍛えつつ、こういうのでワンエピソードを読んだなって言う満足感のある文章にまで届くように、ぐぐっと踏ん張って跳べるようになりたい。でも、怠惰な自分にはなかなかムズカシイ。うー。でも。跳びたい。

ARAKI
126.233.96.117

読ませていただきました。

雰囲気は好きです。
ただ今の状態は素材なのかなと感じました。


>甘い言葉が通り抜けていく。喫茶店で季節の魚のスープを啜っている時、小さめのスプーンをしきりに動かしながら笑っている彼女の口元を思い出した。その時にかかっていた音楽ではないだろうけれど、なんとなく。なんとなく満員の羊車で横に座る彼女を。なんとなく詰まらない冗談に軽妙な相槌を打って笑いに変えるその手ぶりを。なんとなく別れを思った一緒に並んだ帰り道を。なんとなく。

この文章は、なんとなくあたりからなんだか歌の歌詞のような感じですね。最初読んだときは違和感も含めて面白いと思いました。

脱線したので話を戻すと、携帯ラジオの音楽とかは和風な感じなのに世界観はファンタジー色が強いです。
ですので書き足して、現実から不思議な世界に行く銀河鉄道みたいな感じの話にするか、もう少しだけ統一感を持たせてファンタジー色を強めるのがいいのかなと思いました。

チョモランカバとか面白そうな素材が多かったので、もっと全体的に詳しく書いたものが見たいと思いました。

えんがわ
165.100.179.26

>ARAKIさん

どうもです。ありがとです。
雰囲気かー。確かにこの雰囲気を出そうと注意を全振りして、他の部分が疎かになったように思います。
雰囲気を味わっていただいのは嬉しいし、そこで目的は達せられたのですけど、そこから進むにはもう一つ研鑽が必要なんだろう。

イメージしている世界は。桜でんぷとか花火とか、何となく西洋と日本の混合みたいなのを作りたいと思ってたんですけど、この短さじゃ、全く伝えられてないですよね。あー、でも、意外と西洋ファンタジーの方をイメージしてくれているようで、そういう感じなのかなって、コメントから気づきました。うん、もうちょっとそっち方面のたしなみを身に着けたいです。

はい。もっと濃く書かなきゃですよね。淡いイメージを作りたいのですけど、それはエピソードの濃さも両立して描けるはずで。でもそれだけのスキルは今の自分には無いよなー、うー、むずかしー。

アフリカ
49.104.14.125

拝読しました

https://youtu.be/gs-7v6NNOmU

アニメなんですけど
独特な世界観で哲学的な後味を感じる映画だったんですよね。

それと、御作の雰囲気と言うか立ち位置がなんとなくいや勝手に寄せて感じたと言うか。とにかく、それを思い出したのでした。

んでも、あの映画は冒頭で全ての仕組みをさらけ出すので、観客は自然に、物語上で孤立する主人公を応援してしまう。
頑張れと連呼してしまう。

御作はどうでしょ?

マジック(手品)では剰りにも不思議な現象は観客を騙せないそうです。

つまり、全く想像できない世界観は観客を惹き付けられない。
ギリギリのラインにある世界に僕も惹かれるのですが作者さんはどうでしょ?

少しだけ。頑張り過ぎてるような気がしました。

ありがとうございました。

えんがわ
165.100.179.26

>アフリカさん

紹介してくださった予告映像を観ました。
CG全開のアニメで意外でした。夜の雨さんは色鉛筆の絵本を例えに出してくれたのですけど、それと対照的で。
自分はなんだろう、もうちょっと淡い曖昧なものを書こうとしてたので、それを伝えきれなかったかなっていう反省を感じました。もちろん、映画の中身を観ればそれは変わるのでしょうけれど。

はい。このお言葉が心に響きました。

>マジック(手品)では剰りにも不思議な現象は観客を騙せないそうです。

騙すという言葉には抵抗があるのですけれど、エンタメとして実感を伴うファンタジーだからこそ感情移入できるのかなって受け止めました。
そゆの足りませんでした。
ブライアンはいかんかったかー。いや、いかんだろう。

力を抜こうと力を入れすぎたような。そこらへん自然体で書かなきゃですよね。それで生きたモノにできる筋力とかつけないといかんですよね。頑張ります。いや、それがダメってことで。うーん。程ほどに深呼吸して歩いていこー。

地獄極楽丸
58.183.6.199

お久しぶりです。
少し作風が変わったんですかね。

登場人物がはっきりしないし、思い付きの叙事詩みたいなものか、なんらかの意図が含まれているのか
わからない限り、読んでて不安になります。

えんがわ
165.100.179.26

>地獄極楽丸さん

お久しぶりです。
極楽丸さんが歌を中心とした作品を書いていたことを、うっすらと覚えてます。人違いだったらごめんなさい。

作風はよくわかりません。書きたいことに合わせて、書くタッチを変えれたらと思っています。

不安ですか。なかなかに文章の表現は難しいです。
どきどき、わくわくへと導けるように、もっとしっかりしたものを書きたいー。たいー。

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