作家でごはん!鍛練場
あずま

桃太郎の葛藤

庭の草花が月の明かりで照らされていた。桃太郎は縁側に座り、庭をじっと見つめている。
静寂をやぶるように襖が開く音がした。振り返ると、そこには参謀の猿山が立っていた。
「犬川から連絡がありました。犬川の部隊100人が鬼ヶ浦の屋敷に着いたとのことです」
「そうか」
猿山の言葉に、桃太郎は大きくうなずく。
「予定通り、明日の午の刻に鬼ヶ島に突入できます。鬼たちはまさか流れのきつい鬼ヶ浦から攻めてくるとは思いもしないでしょう」
「そうだろうな。犬川の奇襲が成功すれば、難なく鬼たちをやっつけられるだろう。お前の頭脳にはいつも助けてもらってるな。恩にきるよ」
「いえいえ。ただの猿知恵ですよ」
「ははっ」
桃太郎の乾いた笑いが部屋に響いた。
二人はしばらく無言のままだった。海から吹く風の音だけが、沈黙の中で響いていた。
「険しい顔してどうしたんですか」
「うん?」
桃太郎が猿山の方を向き、首をひねる。
「明日は決戦だ。険しい顔にもなるよ」
「行きたくないんですか」
「行きたくないわけないだろ。村人の期待がかかってんだ」
「名誉が欲しいんですか」
「名誉? そんなわけないだろ。村の平和のためだ。村を襲う鬼を退治しなきゃ平和は訪れない」
「でも、最初に鬼を追い出したのは、村人たちでしょう。あんな何もない島に追いやらなければ、鬼たちも村人を襲わなかった」
桃太郎は鋭い目で猿山をにらむ。猿山はそれに怯みもせず、キキッと笑い声をあげる。
「お前は鬼の味方か村人の味方かどっちなんだ」
「もちろん善良な村人ですよ。俺は犬川と違って忠実じゃないんでね。意地悪を言っただけですよ」
桃太郎は、はあっと大きなため息をつく。
「俺は苦しめられる村人を見捨てられない。だから鬼を退治する。それだけだ」
「そうですか」
また二人の間に沈黙が続く。
「桃太郎さんは、本当に自分が桃から産まれたと思ってるんですか」
猿山の急な質問に、桃太郎は眉をひそめる。
「当たり前だろう。お爺さまが言ってるんだ」
「桃から産まれるなんてお伽話の世界ですよ」
「お前はお爺さまの言うことを疑ってるのか」
二人は黙ったまま見つめ合っていた。
「雉谷はずっと気づいてましたよ。桃太郎さんの生まれのこと」
その言葉に、桃太郎の目が丸くなった。
「あなたの人並み外れた怪力、馬にも負けない脚力、そして……」
猿山はしばらく天井を仰ぎ見てから、ゆっくり口を開く。
「おでこにある、鬼と同じ紋章」
桃太郎は頭に巻かれた鉢巻きに手を当てる。その表情が一段と険しくなった。
「もし鬼退治をやめるなら今ですよ」
猿山は桃太郎に背を向け、襖の方に歩み出す。桃太郎は口を開いたが、言葉は出なかった。
猿山が部屋から出ていき、静寂が戻る。
桃太郎は視線を庭の方に向ける。高い空に満月が輝いている。桃太郎は目を細めてじっと見つめていた。

桃太郎の葛藤

執筆の狙い

作者 あずま
49.97.109.48

桃太郎の話を少しアレンジしました。空白が上手くできなくて、読みにくかったらすみません……。
葛藤を描けているか、ストーリーに無理はないか、良いところや悪いところなど、何でもご意見お願いします。

コメント

偏差値45
219.182.80.182

>桃太郎の話を少しアレンジしました。
「少し」ではない気がしましたね。

猿山、犬川、雉谷、と擬人化しているわけですね。
しかし、鬼は鬼のまま。


「笑い」としての狙いはなんとく分かりました。
流石に爆笑は無理ですが、個人的にはにっこりする程度の楽しさはありました。

>空白が上手くできなくて、読みにくかったらすみません……。
お笑いの「間」のこと指摘しているのでしょうか。
個人的には、それは脳内でうまく変換されているので、
状況は思い浮かべることは出来ました。

>「おでこにある、鬼と同じ紋章」
オリジナル設定かな。これはやめた方がいいかもしれない。
ちょっと無理筋な気がしましたね。

>葛藤を描けているか、
これは感じませんでしたね。
個人的には三の線で理解しているので。
葛藤と言えば、シリアスですからね。

あずま
49.104.10.10

偏差値45様

感想ありがとうございます!
シリアスを意識したんですが、お笑い強めになってたんですかね。
にっこりしていただけたなら良かったです。

空白は段落が変わった際のスペースのことです。携帯電話を変えて使い方が分からなかったもので。

貴重なご意見ありがとうございました!

跳ね鳥
153.248.34.224

拝読しました。

シリアスなのに、くすりと笑えるパロディだなと、面白く読みました。

鬼の紋章のアイデアはなかなか良いと思います。桃太郎の中で鬼の血が騒ぐというのは、闘いの時に発動したりしそうですね。

短い中なので、物足りないといえば、登場人物の表情の描写がなく、イメージが浮かびにくいところです。描写に丈を使って、もう少し長くても良いかもしれません。

「鬼灯の冷徹」という、鬼が主役の漫画があって、それに桃太郎周辺動物が活躍してたな、などと連想しました。

感想短くてすみません。失礼します。

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