作家でごはん!鍛練場
月戸井

エリンの特別料理

●登場人物
楠 征男
熊谷昇治
エリン(征男の妻)
エリンの両親


○征男の家──全景(夜)
小さな一戸建。


○征男の家──書斎(夜)
征男がパソコンを使って仕事をしている。
征男のN「(以下、仕事をしながら)明日は初めての結婚記念日。エリンの両親が泊まりに来る。せっかくの夫婦の記念日に、どうして……?」
エリンが部屋に入って来る。
エリン「あなた。お食事よ」
征男「ああ。今行く」
言いながらも仕事を続ける。
エリン「早く来てね」
部屋から出て行く。
征男のN「(以下、仕事をしながら)彼女の料理は苦痛だ。あれは新婚旅行から帰って来た、その日の夜のことだった……」


○征男の家──リビング・一年前の回想(夜)
窓の外は夜。征男とエリンが向かい合って座っている。テーブルには豪華な料理。
征男「本当に君が作ったの? これ全部?」
エリン「(頷いてから)早く食べてみて!」
征男「じゃあ頂きます!」
料理に口をつける。
征男「ん……?」
エリン「どう? 美味しい?」
征男「(ほんの一瞬、ためらってから)う、うん! お、美味しい! こ、こんな味、は、初めてだよ!」
エリン「うわー、よかった! いっぱい食べてね!」


○征男の家──書斎(夜)
前の前の柱の続き。
征男のN「(以下、仕事をしながら)きっと味覚音痴なんだと思う。料理以外は、よく出来た妻だと思っている。でも、あんな不味い料理を食べさせられたら、さすがに彼女の両親も……」
再び、エリンが部屋に入って来る。
エリン「もう! 早くしてよ!」
征男「あ。ああ」
パソコンを閉じて椅子から立ち上がる。


○征男の家──玄関
征男が買い物を頼まれている。
エリン「じゃあ、お願いします」


○スーパーマーケット──食品売り場
カゴの中身は、玉ねぎ、ねぎ、じゃがいも。
征男「(持たされたメモを見ながら)玉ねぎ、ねぎ、じゃがいも、ごぼう、玉子、豆腐……。不思議だ……。あの不味さの要素が全く見当たらない……。──あ。肉がない」
携帯を出して妻にかける。
征男「今、途中なんだけど、肉、忘れてない?」
熊谷昇治が、カゴの中に焼き鳥を入れている。


○征男の家──風呂
風呂掃除の途中。
エリン「(携帯で)あら。お肉はあるから。あ。それから、お父さん達、もうそろそろ着くころなの。早くお願いね」
携帯を切り、風呂掃除を再開する。
エリン「(鼻歌で)みんなが笑ってるー。お日様も笑ってるー。ルールルルルルー」


○スーパーマーケット──食品売り場
征男N「ちぇっ。もう来るのか……。お義父さんの、あの猛禽類みたいな顔、好きになれないんだよな……」


○征男の家──玄関
タクシーが止まる。エリンの両親が到着。


○征男の家──玄関
買い物を済ませた征男が帰って来る。
征男「着いた?」
エリン「(荷物を受け取りながら)今、座敷よ」
征男「じゃあ挨拶してこようかな。それから料理を手伝うよ」
エリン「大丈夫。お母さんが手伝ってくれるから。お父さんも、今から一眠りするらしいし」
征男「それじゃ悪いじゃないか」
エリン「いいのよ。わたしの両親だもの。あなたは自由にしてて」


○征男の家──書斎(夕)
征男がパソコンを使って仕事をしている。
征男のN「(以下、仕事をしながら)一体、どんな料理が出来るんだろう……?」
エリンが部屋に入って来る。
エリン「ねえ。お風呂の調子がおかしいの。悪いけど、ちょっと見てくれない?」
征男「ああ。いいよ」
椅子から立ち上がる。


○征男の家──リビング(夜)
エリンと彼女の両親が料理を囲んでいる。征男はいない。各人に、ステーキとサラダとスープ。その他、二、三の肉料理がある。征男の席も用意されているが、食器は空。
エリン、父親、母親「(グラスを持って)乾杯!」
父親「(娘に)今回は完璧だな」
エリン「ありがとう!」
父親「よしよし。(切り分けたステーキの一切れを口にして)ん? 香辛料が少なくないか?」
エリン「ひどい! あんな不味いもの、すごく努力したんだから! 香辛料は、ちゃんと与えました! お父さんの方こそ素材を見誤ったんだわ!」
母親「ほらほら。せっかくの特別料理なのよ」
娘を、なだめる。
父親「(別の肉料理を口にして)ほう! これは、どこの肉だ?」
エリン「ふくらはぎ(まだ機嫌が悪い)」
父親「ふくらはぎか! こいつは絶品だ!」
母親「本当!」
エリン「(少し機嫌を直して、ちょっと自慢げに)でも征男さん、よく一年も我慢してくれたわ。前の人は二ヶ月と持たなかったのに」
母親「何事も最初が肝心よ」
父親「その通りだ! 生きてるうちから、わしの調合した香辛料を、一年間与え続けた肉でなければ、(“ドン”とテーブルを叩いて)特別料理とは言えん!」
エリン「でも、お風呂の後片づけが大変。せっかく綺麗にしたのに」


○征男の家──風呂(夜)
タイルが血で染まっている。(ほんの一瞬だけ映す)


○征男の家──リビング(夜)
父親「なに。そっちは、わしに任せなさい。それから、不要な食器(征男の食器)を並べるのはやめなさい。わしの娘は計算も出来んのかと考えてしまうぞ」
カメラが料理を映す。よく見ると、料理の中に人間の指や耳が。
エリン「(微笑みながら)お母さんスープも飲んでみて!」
カメラに向かってスープを差し出す。溶き玉子に混じって眼球が浮かんでいる。
                    了

エリンの特別料理

執筆の狙い

作者 月戸井
126.161.173.246

よろしくお願いします。ホラーです。

コメント

のべたん。
49.104.31.193

読ませていただきました。
シナリオは読んだことがないので、いまから述べる感想が的外れであればスルーしてください。

前の前の話の続きと言われても、読み手は混乱するのではないでしょうか?
戻って読み返せよ。と言われればそれまでなんですけど。

あと、熊谷はどういう役割なんですか?
焼き鳥を入れるという描写だけでは、その人がどういうキャラクターなのか分からないと思うのですが。


以上、気になった点をあげさせてもらいました。

夜の雨
60.41.130.119

こ、怖ぁあ!
短い中に、ネタを上手いこと書きましたね。

ここでいう「ネタ」とは。

A>征男のN「(以下、仕事をしながら)彼女の料理は苦痛だ。あれは新婚旅行から帰って来た、その日の夜のことだった……」<

Aなのですが、「彼女の料理は苦痛だ」この意味が、あと「B」でわかりました。
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――


エリン「(少し機嫌を直して、ちょっと自慢げに)でも征男さん、よく一年も我慢してくれたわ。前の人は二ヶ月と持たなかったのに」
母親「何事も最初が肝心よ」
父親「その通りだ! 生きてるうちから、わしの調合した香辛料を、一年間与え続けた肉でなければ、(“ドン”とテーブルを叩いて)特別料理とは言えん!」
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
結婚当時から妻(エリン)の父親が調合した香辛料を使った料理を食べさせられていたので、征男の肉体はエリン家族の好みの味に仕上がっていたのですね。
怖い話だ。
―――――――――――――――――――――――――――――――
「熊谷昇治」は、必要なかったと思いますが。
「スーパの客」で充分で、名前はいりませんね。エピソード自体が必要ないかも。
―――――――――――――――――――――――――――――――――――
作品はホラーになっていました。

御作はシナリオですが。

台詞や描写(ト書き)などでは、夫を尻に敷いています。

>エリン「もう! 早くしてよ!」

>征男が買い物を頼まれている。

●エリンは肉感的に描いたほうが、映像的には成功すると思いますが。
御作だとエリンの身体の表現がされていません。
ト書きで肉感的に描写する(官能的)ことでエリンがパワーアップします。
ホラーのカニバリズムはSとMの関係です。
エリンがSで、夫の征男がMになります。カニバリズムということで、食べられるのだから。

征男はエリンの尻の下に敷かれるような雰囲気で描くと効果的です。御作の方向性はそうなっています。

食事を食べる風景はむさぼるように、血をしたたらせる描写が、よいですね、ホラーなので。

●シーンには番号を振るとわかりやすいです。
――――――――――――――――――――――――――――――――
シナリオ自体は映画の一部です。
シナリオがあり、演出が施されて映像になります。
だから映像がしやすいように、シナリオで方向づけます。


以上です。

ゴイクン
121.92.248.155

短いので拝読しました。
シナリオですが、作者さんは映画とか見ますか。台詞とかを意識して見ますか。
この書き方は。テレビのホームドラマの感じですね。つまり、視聴者は台所仕事か何かをしながら適当に見ている。だから、台詞で解説する必要がある、という感じの。

無駄な台詞が多いと思います。

映画のシナリオなら、俳優さんの顔や仕草があるのだから、その表情なりに任せる部分があってもいいのじゃないでしょうか。

たとえば、

>お義父さんの、あの猛禽類みたいな顔、好きになれないんだよな……」

>○征男の家──玄関
タクシーが止まる。エリンの両親が到着。

 この場面、猛禽類っていわれても、観客が同じ感想を持つとは思えないですしね。しかも、すぐ次にはタクシーが停まって、父親の顔がみえる。わざわざいわなくても、その役者さんが猛禽類の顔をしていれば、いいわけで。

ただわざわざ猛禽類と言う必要がある場合もあって、それは何かそのイメージをずっと続ける必要がある場合ですね。
そんなのあるかな。というか、おとなしい顔の方が、もっと怖くなると思いますけど。

ラストの食事風景も、場繋ぎの会話にしか思えないのですが。というか、このラストはホラー好きな人には誰でも予測できるオチで、そうなれば何か独特なもの、そうきたか、と思わせるものを付け加える必要があると思うのですけどね。それがあるようには思えなかったです。

何かすごいオチを考えてから、書かれた方がいいかと思います。

それと、短い話なので、台詞は声に出して読んでみるのもいいですよ。そうしたら、

>父親「その通りだ! 生きてるうちから、わしの調合した香辛料を、一年間与え続けた肉でなければ、(“ドン”とテーブルを叩いて)特別料理とは言えん!」

は、二つか三つに分けたほうがよいと気づかれるかと。こんな長いのは演劇の台詞ですね。映画ではないです。
私もシナリオライターを目指したことがあるので、ちょっときつめな感想になりましたが、頑張ってください。それでは。

月戸井
126.161.188.142

のべたん。さん。
読んで下さって、ありがとう。
シナリオというのは、行ったり来たり、飛んだり跳ねたりするもので、これは仕方がないと思っています。
済みません。
熊谷は個人的なお遊びです。

月戸井
126.161.188.142

夜の雨さん。
読んで下さって、ありがとう。

エリンは肉感的に、そして、食事を食べる風景はむさぼるように、血をしたたらせる。

その方向性では考えてなかったので可能性を探ってみたいと思います。

済みません。
熊谷は個人的なお遊びです。

作品を探してみましたが見付かりませんでした。もう一度、探してみます。これからでも投稿されることがあるのでしたら、後学のため、是非、読ませて頂きたいと思っています。

月戸井
126.161.188.142

ゴイクンさん。
読んで下さって、ありがとう。

●「ちぇっ。もう来るのか……。お義父さんの、あの猛禽類みたいな顔、好きになれないんだよな……」
の台詞。あってもなかってもいい台詞であるとは思いました。

●このラストはホラー好きな人には誰でも予測できるオチ
オチは最初から明かしています。よかったら題名を検索してみて下さい。しかし、香辛料のアイデアは他にはないと思っています。

●父親「その通りだ! 生きてるうちから、わしの調合した香辛料を、一年間与え続けた肉でなければ、(“ドン”とテーブルを叩いて)特別料理とは言えん!」
仮に演劇風であったとしても、それが悪いとは思えません。個人的には面白い台詞だと思っています。

作品を探してみましたが見付かりませんでした。もう一度、探してみます。これからでも投稿されることがあるのでしたら、後学のため、是非、読ませて頂きたいと思っています。

グリーン
210.138.176.33

 ホラーとあったので興味を持ち拝読しました。おもしろく読ませて頂きました。しっかりとホラーになっているのとお話としてまとまっていると感じました。
 タイトルに特別料理、狙いにホラーとなると、すでにネタバレしているようなものなのでタイトルを変えたほうがよいのではとは感じましたが、他の方への返信によると作者さんとしてはそれは承知の上でタイトルを付けておられるようでしたので、こんなふうに感じた者もいるのだな程度で読まれてください。本文を最後まで読みましてタイトルから予想させられた通りの展開だったなと感じてしまいました。香辛料のアイデアはなるほどと思います、しかし今一つインパクトに欠けるといいますか、先に書いたとおりおどろきがなかった。何か一つだけでも衝撃がほしかった感じでしょうか。全体としておもしろかったです。次作もぜひ読みたいと思いました。

月戸井
126.161.177.223

グリーンさん。
読んで下さって、ありがとう。

●衝撃がほしかった感じ
衝撃か……。
でも、この作品には難しいと思う……。

ちなみに僕自身が衝撃を受けたホラー作品を思い出してみると、
・シックスセンス(M・ナイト・シャマラン監督作品)
・降霊(黒沢清監督作品)
・キューブ(ヴィンチェンゾ・ナタリ監督作品)
・リング(鈴木光司著)
これが全部ではないけど、結構少ない。

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