作家でごはん!鍛練場
坂本マリヰ

花とレプリカ

花とレプリカ
 
 
 第一部 桜の章


   一
 
 
 見渡す限りの荒野だった。地平線に近いところで、落書きのような稜線の山が見えるだけで、あとは枯れ草しか生えていないような、何もない土地だった。正面の道路が、まるで世界をふたつに分けるみたいにまっすぐに伸びている。
 僕は車の後部座席に座っていて、ときどき、シートの隙間から前方の風景を盗み見る。しかし何回見ても、そこに変化はなかった。一度、運転をしている男に、景色が変わらないということを話題にしたけれど、男は短く、「そうだ」とそっけなく答えただけだった。
 男は真っ黒のスーツを着ていて、髪を整髪剤で固めていた。サングラスをしていればきっと似合うと思うのだけれど、それはしていない。おそろしく無口で、身体つきにも無駄がなく、僕は最初、彼はスタンロイドなのではないかと思った。だが、首の後ろにスタンロイドであることを示す金属プレートはついていなかったし、肌の質感も人間そのものだったから、たぶん、人間だろう。
 スタンロイドは、半導体メーカーのプレジャー社が商標登録しているロボットの商品名で、人型ロボットとしてほとんど一般名詞化している。人間のアシストを目的に開発された商用ロボットだが、自動車の運転ぐらいであれば、問題なくこなせる。僕が生まれる前の話だけれど、スタンロイドが登場してから、道交法が全面的に刷新され、スタンロイドの運転特性に合わせた形に作り変えられた。いまでは、人間が運転するよりも事故率が圧倒的に低いとされ、人間が運転する際には、人間が運転していることを示すマグネットを、ボンネットの上に貼らなければならない。
 スタンロイドは遠目から見れば人間に見えるが、ボディは特殊シリコンで出来ているので、近くで見ると、肌のテカリ具合で、人間ではないとすぐにわかる。また、首の後ろの金属プレートにシリアルナンバーが刻みこまれていて、サイバーリンクで照会すれば使用年数や所有者の氏名・連絡先がすぐにわかるようになっている。まだ人間と間違うほどのレベルではないが、意図的に『スタンロイドであること』がわかるような設計になっているらしい。
 今朝、病院を出るとき、また元のように「寮」に帰るものだとばかり思っていた。しかし、別の場所に連れていかれるのだと聞いて、内心、心が躍ったのは否定できない。少なくとも、病院では誰にも会うことが禁じられていて、できることも限られていた。治療らしい治療もなかったし、体のいい監獄のようなところだった。少なくともあそこから出られれそれでいい、そう思っていたのに、行けども行けども枯れ草しか生えていないような荒野しか広がっていないようでは、これから向かう場所での暮らしも、あまり期待がもてない。
 ふと顔をあげると、鉄のフェンスの中に車が入っていくのがわかった。荒野の中に、地平線まで続く長さでフェンスが続いていて、上には有刺鉄線までついている。車が一台やっと通れるほどのゲートがあり、車はそこをくぐって前進した。
 先ほどまでの何もない車道ではなく、そこから先は砂利道だった。鬱蒼と生い茂る林の中を車は進んでいく。
「座ってなさい」
 身を乗り出してフロントガラスを見ようとしている僕を、男は静かな声で制した。実際のところ、急にラフ・ロードに侵入したせいですごい振動があり、立ってはいられなかった。
 急に視界がひらけた。さっきまで同じ太陽の下にいたはずなのに、あまりの明るさに目を細める。横の窓から外を見て、僕は目を見開いた。
 そこは、海だった。さっきまでの荒野が嘘のように、紺碧の大海原が広がっていた。
 男の運転する車は、海に近いところで止まった。男は後ろを振り返り、目で、「降りろ」と命じた。もちろん異論はない。僕は後部座席に置いていたバッグを手にとって、外に出た。
 埃っぽい空気から一転して、海の匂いがした。僕は深呼吸をして、あたりを見渡す。海はビーチではなく磯のようなところだったが、車が止まっている少し先に、コンクリートで作られた桟橋のようなものがある。その先に、小型の船が止まっていた。
「あれに乗れ」
 僕がその船に見入っていると、男が背後から言った。僕は振り返り、男の顔を見る。
「一緒に行くの?」
「私は行かない。君をここに連れてくるまでが私の仕事だ。あれに乗って、着いた先で指示に従いなさい」
 感情のこもらない声で男は言う。船は一応屋根のついた小さな漁船のようなものだったが、大きさからみればボートに近かった。
 船尾にはすでに誰かがいた。近づくと、その人はスタンロイドだとわかった。
「ようこそ、はじめまして。ミドリと申します」
 その女性のスタンロイドは微笑んで、僕に明るく話しかけてくる。
「はじめまして。キミが運転してくれるの?」
 そう話しかけると、ミドリと名乗ったスタンロイドは微笑みを崩さずに、その通りです、どうぞお乗りください、と返事をした。
 僕は後ろを振り返り、男に行き先を聞こうとした。だが、すぐに、それは無駄だと思った。朝、『病院』で男が迎えに来たときに行き先を聞いたが、何も教えてくれなかったからだ。
 少し躊躇ったが、揺れている船に飛び乗ると、ミドリと名乗ったスタンロイドは手に持っていたリモコンのような機械を操作した。それが船の操縦桿らしい。あまり派手なエンジン音はしないが、波がかきわけられる音ですぐに何も聞こえなくなった。男はもともと立っていた場所からこちらをずっと見ていたが、やがてそれも遠く彼方へ消えて行ってしまった。
 僕は船尾の窪みになっているところに座った。ミドリと名乗ったスタンロイドは、僕の反対側に同じように座って、船の横から前方を見つめている。もうリモコンはその手に握られていない。
「操縦はしなくてもいいの?」
 僕がそう質問すると、ミドリは首をぐるんと回してこちらを見た。
「ご心配ありません。この船は、オートパイロットモードに入りました」
「あ……そうか」
 よくわからなかったが、知ったかぶりをした。本当はそんな質問はどうだってよかった。続けて、気になっていた質問をぶつけてみることにした。
「この船は、どこに向かっているの?」
「禁則事項です」
「え?」
「申し訳ございません、その質問にはお答えできません」
「どうして?」
「禁則事項だからです」
「どうして、禁則事項なわけ?」
 僕は少し意地悪な質問をしてみた。ミドリは少し困ったような顔になったあと、
「民間人に公開できる情報が制限されています」と言った。
 僕は少し角度を変えた質問をしてみることにした。
「じゃあ、目的地まではどれぐらいかかるの?」
「その質問に対する回答は可能です。あと、五十五分二十四秒で到着する見込みです」
「……そう。ありがとう。じゃあ、まだしばらくかかりそうだね」
「その通りです」
「喉が渇いたんだけど……」
「船内に、飲み物がございます。何がよろしいでしょうか」
「何があるの?」
「コーヒー、紅茶、緑茶、コカコーラのボトルがあります。いずれも冷蔵です」
「じゃあ、緑茶が飲みたいな」
「承知いたしました」
 ミドリは立ち上がると、船内に潜り込んだ。僕は水平線以外何も見えない風景を眺めていた。一分もしないうちに、ミドリが戻ってきて、「はい、どうぞ」と僕に緑茶のボトルを手渡してくれる。
 僕はボトルの蓋を開けながら、ミドリを観察した。スタンロイドは、基本的にボディはどれも共通で、女性型と男性型がある。もちろんミドリは女性型で、病院で僕の部屋を担当していたスタンロイドと基本的には同じだった。だが、ミドリの服装は迷彩柄のズボンとジャケットだ。所有者は、軍の関係なのだろうか。
 ペットボトルを持つ手が震えているのがわかった。それと同時に、喉のあたりも細かく震えている。それは船の振動のせいではなかった。ペットボトルの蓋を閉めようとしても、うまく手に力が入らなかったからだ。
 この船の先に何が待ち受けているのかわからない。しかし、良いことが待っているはずがない。僕の意思とは無関係に、この船が、目的地に向かって着実に前進しているということが、たまらなく恐怖だった。自分の意思とは全く関係なく動いているというところが!
 ミドリをこの船から突き落とし、オートパイロットモードというものを解除することを想像した。だが、うまくいくはずがない、とすぐに諦めた。スタンロイドのボディは小柄な女性型でも八十キロを超えるし、成人男性二人を抱えることができるぐらいの腕力がある。だいいち、オートパイロットモードを解除できるとは思えないし、解除したところで、操縦の技術がない。僕は仕方なく目をつぶった。カタカタと歯が小刻みに震えている。
 僕は奥歯にぎゅっと力を入れて、無理やり目をつぶった。

   *

 肩を軽く揺すられて、目を覚ました。
「あと五分で到着いたします。降りる準備をしてください」
 僕は立ち上がり、あたりを見渡す。後方は何も見えなかったが、前方に、深緑色の島が見えた。
「あれが目的地?」
「その通りです」
「着いたら何をしたらいいわけ?」
「その命令は、到着してから説明することになっています」
 ミドリはふたたびリモコンを手にすると、それを器用に操作して、島のほうに船を寄せていった。僕も、身を乗り出して、前方の島を見る。近づいてくるにつれ、とても大きい島だということがわかった。向かって左側は家や建物が見えるが、島全体は森と山に覆われている。平地と思えるところが島の左部分にしかなく、ほとんどが山だった。
 船は、思ったとおり、島の左部分にある桟橋に向けて移動している。やがて完全に桟橋に横付けした。見ると、他にも似たような形の船がたくさんある。だが、誰も乗っていない。
「こちらへどうぞ」
 ミドリが先に降りて、僕に声をかけた。ミドリが手を差し出したので、その手をつかんで、僕は桟橋のうえに立つ。
「この道をまっすぐに行ってください。突き当たりを左に曲がると、学校があります。その校舎の中に入ってください。その次の指示は、そこで受けてください」
「学校?」
「はい、学校です。みなさんはすでにお待ちです。イズミさん、あなたは最後の生徒になります」
「みなさんって?」
「行けばおわかりになります」
 ミドリは微笑んだ顔のまま動かない。一度答えなかった質問は、いくら質問をしても無駄だろう。
 僕はカバンを持って、木でできた桟橋を歩く。つい最近作られたものなのか、ずいぶんと新しいもののように感じる。桟橋は長いものではなく、じきに終わった。正面には、古い民家が並んで立っている。道路はアスファルトで舗装されてはいるが、車道はなかった。異様な雰囲気を感じた。なにせ、人が誰もいないのだ。
 短い坂をのぼる。坂の上に、野球ができるぐらいの広さの校庭があり、まわりを高いフェンスが囲っている。フェンスの向こう側には、桜が満開に咲いていて、さらにその先は海だった。高低差があるから、おそらく崖のようになっているはずだ。
 校舎はさらに高いところにあった。ずいぶんと古い鉄筋コンクリート製のものだが、窓枠が新しく、ところどころ補修した跡がある。校舎に行くためには、校庭の脇にある坂を登らなければならない。僕は重いカバンを持ったまま、さらに坂を登っていった。
 校舎の入り口はひとつしかないので、迷うことはない。入り口の下駄箱を抜けて、さらに奥へと入っていく。教室がたくさんあるが、どこに行けばいいのだろう。各教室のドアには、中の様子が覗ける窓がついているから、ひとつひとつを見ていけば、人がいる教室にたどり着くだろう。
 僕は廊下の正面の大窓からの風景を見て、思わず息をのんだ。さっき見た桜が、何本も海岸に満開に咲いているのが見え、その背後には大海原が広がっていたからだ。さっきまで船に乗っていたわけだが、少し高台から見下ろすそのコバルトブルーの風景は、まさに絶景だった。文字通り、僕は言葉を失った。
 窓を少し開けてみる。強い風が潮騒の音とともに流れこんできて、桜の花びらが幾枚か、廊下に入り込んできた。
 いつまでもここから動きたくない、と思った。何せ、これから何があるかも全くわからないのだ。風と波の音だけを聴いていれば、そのままいつまでも過ごせそうだ、と思った。
 ふと、キラリと光るものを目の端に捉えた。最初、海に反射した太陽の光かと思ったが、少し違う。窓から身を乗り出して、下を見ると、窓枠の下部分のところに人が一人乗れるぐらいの縁があり、そこに、何か機械が置いてあるのが見えた。その機械の表面に光が当たって、キラキラと光っているのだ。
 僕はそれがなんなのかわからなかった。銀色で、大きさは、カードぐらいの大きさだ。僕は自分では使ったことがないが、『寮』では、それと似たようなものを使っている人を見かけたことがある。そう、数世代前に流行った、音楽プレイヤーと呼ばれる機械だ。大昔、人々はもっと大きな、レコードと呼ばれる円盤や、CDと呼ばれる記憶ディスクを使って音楽を聴いていたらしい。その後、インターネットを介して音楽を聴く手法が主流になったが、インターネットが法律で禁止され、サイバーリンクシステムに切り替わってからは、聴ける音楽は限定されたこともあり、むしろそうした記憶媒体の需要が増した。特に、そのインターネットに切り替わる直前に流行った音楽プレイヤーは希少性が高く、さまざまな音楽が入っているプレイヤーは、天文学的な値段で取引されていると聞いたことがある。
 そこにあるものがそうだという確証はないし、なぜそんなところに落ちているのかは不明だが、とにかく見てみようと思って、僕は窓枠から外に降りようとした。そのすぐ下が崖になっていて、そこから落ちたらただではすまないだろうが、とにかく、その縁の部分に向かって、そっと降りた。下を見ないように窓枠をしっかり掴んで、バランスを崩さないようにしながら、左手で「それ」を拾い上げる。
 薄い銀色の、カードのようなものだった。ディスプレイがついているが、電源は入っていない。『寮』で誰かが持っていた音楽プレイヤーは、こんな形のものではなかった。ボタンはなく、どのように操作すればいいのかわからない。適当にそれをいじっていると、本体の背面カバーがスライドし、ワイヤレスのイヤホンが出てきた。イヤホンとはいっても、耳の穴の中に入れるものではなく、ボタンぐらいの大きさのシート状のもので、耳たぶのあたりに貼り付けると聞こえるタイプのもののようだ。色も半透明で、実際に貼り付けるとほぼ同化する。僕はこの存在は知ってはいたが、実際に目にするのははじめてだった。

     *

「なにしてるの?」
 急に頭上から誰かの声がして、僕は音楽プレイヤーを落としそうになり、バランスを崩して落下しそうになった。気を取り直して、頭上を見上げると、窓枠に肘を乗せて、身を乗り出すようにして、黒い髪の少女がこちらを見下ろしているのが見えた。本当にこの島に人間がいると思っていなかった僕は驚いて、とっさに声が出せなかったが、少ししてから小さな声で返事をした。
「え、なに? 聞こえない」
 少女は続ける。僕は下に落ちないように注意しながら、ゆっくりと立ち上がり、少女に向き直った。少女は僕が立ち上がるのを珍しそうな顔で見ているだけで、肘をついたままの姿勢を崩さなかった。
「……誰?」
 そう問いかけると、少しだけ目をまるくしたあと、小馬鹿にしたように笑った。
「誰って、こっちのセリフなんですけど。教室にもはいらないで、こんなところで何してるわけ? って聞いてるの」
 僕はとっさに拾ったばかりの銀色のカードをポケットに仕舞い、あらためて少女の方を見た。少女は黒目がちの大きな目をしていて、顔立ちは整っている。しかし、その口元は挑戦的に歪んでいた。
「なんだよ、関係ないだろ、そんなこと」
「関係あるよ。なんだかあやしいことをしてる人がいました、って報告しないと」
「なんでだよ」
「キミがテロリストで、この学校に爆弾を仕掛けた、という可能性がないとは言えないしね」
「そんなわけ……」
「キミ、いまポケットに何か隠したでしょ?」
 ぞくりとした。うまく隠したつもりだったが、見ていたのだ。何かを隠すときは、視線をそちらに動かさないのがコツで、問題なくやれたつもりだったのだが、油断していたようだ。
「何を隠したの? 見せて」
「なんの権限があって、アンタにそんなの見せなきゃいけないわけ?」
「だから、キミがテロリストで……」
「そんなわけないだろ」
 僕はそう言いながら、ズボンのポケットを引っ張り上げ、中身を引っ張り出してみせた。人差し指と中指の先に、一枚のカードを挟んでいた。
「なんのカード? それ」
 少女が身を乗り出して、こちらを見る。
「……ただの、ジュースのポイントカードだよ」
 そう言って、少女に渡す。音楽プレイヤーは、手の平のところに挟み込んで、うまく隠していた。この形状をしていて本当によかった。
 少女は、ふうん、とつまらなそうに鼻を鳴らして、「これがそこに落ちてたっていうの?」と言った。
「そう」
「あ、そう。ま、どうでもいいけど」
 急速に興味をなくしたようにそう言って、窓枠から身体を離した。僕はまた、わからないように音楽プレイヤーをポケットに戻し、窓枠に手をかけて、廊下に立った。
「キミは一人だけなの? 他に人は?」
 そう問いかけると、少女は肩をすくめる動作をした。
「あたし、たぶん数時間前からここに来てるんだけど、自分よりあとから来る人のことを、物陰からずっと観察してたの。みんな、二階の教室に行ったみたい」
「なんでそんなことを?」
「当たり前じゃない。こんな得体の知れないところに連れてこられてさ。言われたことをそのまま、なんの疑問もなく従うほうが、どうかしてるよ……」
「そうかな」
「あと何人ぐらい、来るかもわからないし」
「僕が最後だって、言ってたよ」
「誰が?」
「僕をここまで案内してくれたスタンロイドが」
 信用できない、とでも言わんばかりに、少女は腕組みをして、宙を見た。僕は、さっさと、その教室に行ってしまいたかった。僕が最後ということは、みんな、僕のことを待っているかもしれないからだ。その「みんな」というのが、どういう集団をさすのかは、現時点では何もわからないけれど。
「じゃあ、僕は行くから……」
 僕が二階の階段のほうに向かって歩き出すと、少女がすぐに制止した。「待ってよ。あたしのほうが先にここに来たんだから、あたしが先に行かなきゃでしょ」
「いや、知らないよ、そんなの」
「わかった。じゃあ、あたしが行くから、ちょっと時間を空けてから来て。……ところでさ、気になってることがあるんだけど」
「なに?」
「あんた、日本人じゃないの?」
 予想していなかった一言に、僕が本当に驚いて、絶句していると、少女はさらに続けた。「日本人じゃないの? どうなの?」
「……僕は日本人だよ」
「国籍的にはってことでしょ? 純粋日本人なの?」
「……そうだよ」
「あたしの勘違いだったら、謝るけど。ただ、目の色とか、髪とか、肌の感じで、ひょっとしたらなー、って思っただけ」
 僕の両親は日本人で、それを疑ったりしたこともない。僕は髪も黒いし、目の色も、焦げ茶色というか、日本人としておさまる範囲だ。正直、少女が何を言っているのかがよくわからなかった。
「キミ、名前は?」と少女が聞いた。僕は、自分の名前を名乗る。
「あたし、サクラっていうの。じゃ、もう行くから。ちょっとだけ時間を遅らせてきてね」
 有無を言わせない口ぶりで、少女は廊下を歩いていく。
 僕は呆気に取られたまま、サクラと名乗った少女を見送っていた。ポケットの中には、まだあの音楽プレイヤーが入っている。取り出してそれを眺めたが、ディスプレイのついたただのカードのようで、どこを押しても起動しない。ひょっとしたら壊れているのかもしれない。僕はため息をつき、ポケットにそれをしまい直すと、しばらくしてから、少女の向かった先を歩いて、階段をあがった。

     *

 階段をあがってすぐの教室の後ろの引き戸が開いていた。勇気を振り絞って中を覗き込むと、中に生徒が二十人ほど、座っていた。教室の黒板横の窓際にはスーツを着た成人女性が座っており、その傍らに、男性が立っているのが見えた。女性と目が合うと、女性はこちらへ手招きした。
 教室の中へと入る。さっき会話をした少女も、すでに教室の後ろのほうに座っているのが見える。頬杖をついたまま前を見ていて、こちらにはまったく視線を向けようとしない。
「何をしている。席につきなさい」
 妙に高圧的な態度で、教壇の椅子に座っていた女性は言った。僕は教室を見回したが、窓側の、さっき話した少女の席の前しか空いていない。仕方なく、そこに腰かけた。
 女性は立ち上がり、教壇の前までゆっくりと歩いてきた。
「全員揃ったな。それでは自己紹介をする。私の名前はクロサキ・ミスズと言う」
 クロサキと名乗った女性はチョークを手に取ると、黒板に、『黒崎美鈴」と書いた。
「今日から君たちの担任になる。君たちは今後一年間、この島で、共同生活を送ることになる。学校はここで、勉強は私と、そこにいる、男性のコイズミが主に担当する。その他、科目に応じて曜日ごとに別々の教員がくる。君たちは、この近くの民宿で寝泊まりをしてもらう。以上だ。何か質問はあるか?」
 教室はシーンと静まりかえった。最初から、みんな、おそらくは僕と同じように、なぜこんな島に連れてこられたのかも理解できずにいるはずだ。何か質問をしなければ、と思うのだが、突然のことで、何も言葉になって浮かんではこない。手をあげようかと悩んでいると、突然、隣に座っていた女子が手をあげた。
「はい」
「じゃあ、そこのお前」クロサキは指差す。その長身の女子は立ち上がった。
「あの……」
「先に名前を名乗れ」
「鴻島……」
「下の名前は」
「アカネです」
「この島では、下の名前だけで名乗れ。アカネ、質問はなんだ」
「あの……なぜ……私たちはここに連れてこられたんでしょうか?」
 クロサキは座れ、と短く言った。アカネと名乗った女子は、スカートのおしりの部分に手を当てて、あわてたように素早く座る。
「いい質問だ。少し抽象的だが、この状況を理解するための第一歩の質問としては悪くない。では説明する」
 クロサキはまたチョークを手に取ると、黒板に大きく、「8・22」と書いた。
「この数字の意味がわかる者は。そこのお前」
 クロサキは最前列に座っている長髪の男子にチョークを向けた。指名された男子は一瞬びくっと身体を震わせたが、すぐに立ち上がり、直立不動で、叫ぶように言った。
「タツキです」
「なんだ、この数字は?」
「『横浜ディストラクション』です」
「『横浜ディストラクション』とは?」とクロサキが畳み掛ける。
「五年前にあった、原因不明の、横浜駅を中心とした、同時多発の、大規模なガス爆発事件です」
「ガス爆発だけか?」
「は……」
 タツキは言葉に詰まる。その先を話してもいいのかどうかを迷っているようだった。いい、座れ、とクロサキは言った。
「半分正解だ。数字は『横浜ディストラクション』の日付で合っている。一般に公開されている情報も、大規模な爆発事件ということになっているから、それも正解だ。だが、さっきタツキが一瞬、迷ったように、ガス爆発事件というのはダミーだ。実際には、某国による自爆テロだった。それと同時に、爆弾には細菌による生物兵器も搭載されていて、それが飛散し、横浜市民および都民に、合計して十万人を超える死者が出た。そうだな?」
 タツキと名乗った男子は、どう答えたらいいものか、考えあぐねているような、曖昧な返事をした。
「先のとおり、テロの影響で、多数の人間が亡くなった。だが、生物兵器については、耐性があったのか、それが効かない人間も大勢いた。君たちもそのタイミングで飛散した生物兵器を浴び、生き残った『耐性のある人間』だ。その後の調べで、生物兵器の細菌に感染して死ぬか、耐性があって細菌そのものが効かないか、のふたつのパターンがあることがわかった。細菌自体の寿命は短く、散布から数週間で完全に死滅したと推察される。しかし、最近になって、感染してはいるものの、死に至ることなく、かつ体内で細菌がまだ生存しているケースの症例があることが確認された。……それが君たちだ。君たちは保護対象であると同時に、存在自体が最高レベルの国家機密となり、国防軍の管理下に入った。そこで、隔離施設で生活してもらうことになった」
 クロサキの言葉が終わらないうちに、僕は頭を抱えた。話が僕の理解を完全に超えていた。そう考えていると、また、タツキが手をあげるのが見えた。
「質問してもいいですか」
「許可する」
「僕たちは、あの、……『感染』してるんでしょうか?」
「……話を聞いていたのか? そうだと言っただろう?」
「じゃあ、明日にでも、突然死んでしまうこともあるのでしょうか?」
「それはわからない。だが、君たちの健康状態は常にモニタリングする。仮に発症したとしても、症状をやわらげるための措置は研究されているから、すぐに死に至る可能性は低い。だがもちろん、絶対という保証はない」
「わかりました」
 タツキはそう言って、席に座った。いまのでわかったのか、と僕は信じられない思いでタツキを見た。だが、だからといって、自分ではどうすることもできない。おそらく、この教室にいる全員が同じ気持ちだろう。
 『横浜ディストラクション』は、日常風景を一変させた。それまで当たり前だと思っていた日常が、一瞬にして、違う景色へと変わった。僕や、僕の家族は、直接の被害を受けてはいないが、学校にはその影響で死んだ同級生が何人かいたし、移住を余儀なくされた人もいた。そしてなにより、その日を境に、日本は非常事態に入った。戦争まで一触即発の状態になり、右傾化が加速した。全国で自衛隊の解散と、国防軍の設立を求める大規模なデモがあり、それはすぐに臨時国会で可決されてしまった。
 また手があがる。今度は、窓側に座っていたメガネをかけた細身の少女で、カエデと名乗った。
「先ほど、私たちの存在自体が国家機密だとおっしゃいました。だから、隔離施設で生活をするのだと。たとえ国家機密だとしても、こんな隔離施設に押し込む道理がありません。第一、基本的な人権が保障されていません。私たち、自分たちがたとえ『感染』していたとしても、それを誰にも言いません。いくら国防軍とはいえ、なんの権限があって……」
 カエデと名乗った少女はそこまで言って、言葉を発することを辞めた。クロサキが制止したわけではない。むしろ、クロサキは、無表情で少女を見て、じっとしているだけだった。
「ふたつ、情報として、付け加えておく」とクロサキは言った。「君たちの中には生物兵器が残存している。それは検査で確認しているから、間違いない。だから、耐性のない人間と接触すると、触れられた人間に感染することが確認されている。もちろん、耐性のある人間ならば、問題はない。たとえば私やそこのコイズミは、耐性があるので、接触しても死なない。ただ、耐性のない人間であれば、皮膚接触でも死に至るケースがある。遅効性で、すぐに死ぬことはないようだが……。それもあって、隔離する必要があった」
 クラスじゅうがどよめいた。なかには、口を手で覆っている女子もいる。まさか、身に覚えがあるのだろうか?
「それともうひとつ。国家の前には、人権だとか、権限だとかに優先順位はない。お前に罪状を着せて、合法に受刑者として取り扱うことも簡単にできる。テロ幇助、国家叛逆、罪状はなんでもいい。少しの時間があれば、お前を終身刑にできる。だから、二度とそのようなくだらない質問をするな」
 教室は今度は完全に静まりかえった。
 誰も、物音を立てなかった。
「もちろん、とはいえ、日本が法治国家である以上、人権に配慮はする。君たちの年齢に応じた高等教育も行う。ただし、君たちは本日をもって国防軍の管理下に入ること、最低でも今後一年間はこの島を出られないこと、それは決定だ」
 クロサキはそこまで言うと、信じられないことに、少しだけ微笑んだ。冷笑とか、嘲笑といった冷たい笑みではなく、かすかではあるが暖かさのこもった微笑みだった。
「細かいルールや、ここでの生活については、後ほど説明する。とりあえず、ここの生徒のチームをふたつに分ける」
 クロサキは教壇から降りると、床にかがんで、チョークを当てた。そしてそのままチョークの線を教室の後ろまで引っ張っていく。みんな呆気にとられて、その様子を見ていた。
「このチョークが境界線だ。ここでの生活においては、窓側と、廊下側のチームに分かれてもらう。成績、素行、ここでの生活すべてはポイントで管理し、成績の優劣を競う」
 また教室がざわめいた。僕は驚いたが、すぐに、僕の席の前に座っていたサクラと目があった。サクラはなぜか、真っ先にこちらを見たのだった。

     *

『……騙されるな……』
 誰かの声が聞こえた。少し低い、男性の声だ。大人の声に聞こえた。誰の声か、聞き覚えがない。
 僕はあたりを見回して、声の主を探した。
『……騙されるな……』
 また声が聞こえる。他の人間には聞こえていないようだ。声は妙に大きく聞こえたが、音に反響がないのがおかしい。まるで、頭のなかに直接、語りかけられているようだ。
『……あの女の言っていることは間違っている……君たちは、生物兵器に感染などしていない……』
 僕はとっさに耳を触った。その瞬間、仕組みがわかった。さっき拾った音楽プレイヤー、あのイヤホンから音が聞こえるのだ。装着したままだったのをすっかり忘れていた。
『君たちは一年間、サンプルとしていいように監視される……チーム分けしたのは、君たちの競争本能を刺激するためだ……明言することは決してないが、成績不良のチームは、やがて抹殺される……』
 僕はポケットから音楽プレイヤーを取り出したい衝動に駆られた。だが、不自然な動きをすれば、このプレイヤーの存在がバレてしまうかもしれない。しかし、これは通信なのか、それとも、録音がそのまま聞こえているだけなのか?
『君が拾った『これ』……この存在は、誰にも言わないほうがいい……私なら、君に適切な助言ができる……』
 僕はなるべく視線を動かさないようにして、その声を聞き続ける。
『よく来た、イズミ……私はお前の、味方だ……』
 窓の外から、潮騒の音が響き続けている。

花とレプリカ

執筆の狙い

作者 坂本マリヰ
126.123.47.7

長いお話を書いており、これはその冒頭部分になります。冒頭ですので、続きが読みたいか、その一点が気になります。ご感想頂けるととても嬉しいです。

コメント

匿名
180.36.120.112

最後まで読んだ感想を書きますね。

結論から言うと、続きを読みたいなと思いました。
文章を見ると、小説を書き慣れてるように感じます。

綺麗な情景が思い浮かぶ文章は久々に読んだ気がしました。
続きはもう既にあるのでしょうか、もしあればぜひ見に行きたいです。

夜の雨
60.41.130.119

なかなか本格的ですね。
御作には主人公が置かれている世界の背景が冒頭(長編の導入部)ながら書かれています。
自動自立ロボットが活躍するような近未来の話で、テロが起きて日本は重大な局面に達している。
自衛隊は解散して国防軍なるものが成立されている。
主人公はこの国防軍の管轄である島にほかの少年少女たちと共に隔離された。
テロで使われた生物兵器を浴び、生き残った『耐性のある人間』が主人公たちでこの島に集められたというのが、国防軍の「黒崎美鈴」という女性の話だった。
ちなみに集められた彼らに黒崎美鈴が話していることは、どこまでが事実なのかはわからない。
主人公がこの島で拾った電子カード(音楽プレイヤー)は、黒崎美鈴の話していることに「騙されるな」と言っている。
――――――――――――――――――――――――――――――――――――
内容は、上のような感じです。
御作の良いところは世界観がちゃち(薄い、希薄)ではなくて本格的なのですよね。
たぶん作者さんは現代という世の中というものを観察している方だと思います。
だから、自衛隊が解散とか国防軍とかテロとか、そういった背景を黒崎美鈴にしゃべらせながら、御作の土台部分の設定を創り上げているのだと思います。
少年、少女たちが主人公になるようなSF作品でも本格的なものは、たいがい背景がしっかりと描かれています。
そうでなくては、読んでいて面白くありません。
――――――――――――――――――――――――――――――――
御作に書かれている冒頭を読んだところ、ミステリーのような先の見えない入り方で、読み手をいざなっています。
このあたりがかなりお上手で、つい、先を読んでしまいます。

>長い話を書いており、これはその冒頭部分になります。冒頭ですので、続きが読みたいか、その一点が気になります。ご感想頂けるととても嬉しいです。<

続きを知りたいというような創りになっていますね。
完成すれば、長編になりそうですが、どこかの出版社の公募に送るのでしょうか、そういったレベルだと思います。
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
気が付いた点。

「僕」という主人公の一人称で書かれていますので、文章が多少粗くても、これは主人公のキャラクターから来ているのかと思ったりします。

>地平線に近いところで、落書きのような稜線の山が見えるだけで<
「落書きのような」 ←三人称ならこの文は「幼い」ので、浮いてしまいます。ところが少年である主人公の一人称なので浮いていません。
これって、作者さんが主人公の個性で表現するために書いているのか、それとも知らずに書いているのか、と思いました。
狙って書いているのなら良いのですが、気が付かないで書いているのだったら、「三人称」でも、地の文章で、こういった表現をする可能性があるので、気をつけてください。

>スタンロイドは遠目から見れば人間に見えるが、ボディは特殊シリコンで出来ているので、近くで見ると、肌のテカリ具合で、人間ではないとすぐにわかる。<

「テカリ具合」 ←この文なども三人称なら違和感がありますが、一人称なので主人公の個性になる。まあ、出来たら、もう少しそれらしい表現をしてほしいところです。
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――

どの程度の近未来か、わかりませんが、「車」は、自動運転ではないのですね。
船は、オートパイロットモードになっています。まあ、海の方が車道よりも安全だから、すでに現代でも、自動運転になっていますが。
―――――――――――――――――――――――――――――――――
島の桟橋についた主人公を迎えに来ている者はいないのですね。
「車」「船」と、相手がいたので。
島の桟橋にも、迎えがいると思うのですが。

謎の少女の登場とか、教室での黒崎美鈴と生徒体のやり取りなどはよかったです。
主人公や謎の少女以外の生徒が黒崎美鈴にまっとうな質問をしているところが、よかったですね。
これで主人公やヒロイン以外の少年、少女も存在感が出てきます。
小説や映画など、本格的な作品は活躍するのが主人公やヒロインだけではありませんからね。
複数の者が存在感を示すことにより作品は厚みを増して、奥行きが出て面白くなると思います。
彼らが、亡くなるようなことになれば、存在感があるエピソードを描いておけば、読んでいて心に響きますからね。
うまく敵を倒した時は一緒に喜べます。そういったことが、読み手に伝わると思います。
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
ほか。

●主人公の名前がまだ出ていないようですが、早い段階でわかるようにしたほうがよいですね。

●主人公が島で拾った音楽プレイヤーを隠したことに気が付いて、少女が「それは何か」と、尋ねてきます。返答しない主人公に対して。
A>>「関係あるよ。なんだかあやしいことをしてる人がいました、って報告しないと」
「なんでだよ」
「キミがテロリストで、この学校に爆弾を仕掛けた、という可能性がないとは言えないしね」<<

この時点では少女はまだ、島がどういった物なのか、自分がなぜ、島に連れてこられたのかを知らないはずです。
したがって、Aの発言はできないですね。
少女が島のことを、これから教室で黒崎美鈴が話す事を知っていれば別ですが、そういったことになっていません。
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

全体では、御作は期待が持てそうです。
文章もなかなか味わいがありますし、エピソードの展開とか、構成などもよかったです。

それでは、頑張ってください。

弥々丸朗
106.161.232.117

何しろまたしても中途半端作についての感想ということだから、目的に対して言うも返すも期待感薄いことは覚悟の上なんですけど、今のところいいのはタイトルなんじゃないですか、なんて個人的には。
世界観ありつつ言い訳臭くもありつつ、でも何かしら想像できる脈絡のようなものは感じないでもないから、あたしは考えの一つとして意識には置くことにします。

ジャンル的にはおハナシするおハナシらしいと受取っているのでおハナシのスジのことを言ってもそれは他人の捜索に対するとんまやらお節介でしかないはずなので特に言うつもりはないです。
ちゃんと読ませて欲しいタチの者として思ったのは、意味はわかるけどイマイチ日本語が下手っぽいというか、曖昧な文章が多い気がして読み進めるに当たって信頼度が低い気がしました。


>正面の道路が、まるで世界をふたつに分けるみたいにまっすぐに伸びている。

書き出しからさっそくなんですけど、あたしは何となく足りない気がしました。上下に分けてるんですか? それとも左右? タテなの? ヨコなの? ってことなんですけど、このおハナシってつまり、おハナシを読ませるおハナシなんですよねたぶん。だとしたら読まされるあたしは出来れば正確な景色を思いつかせて欲しいので、エンタメ嫌いのあたしがめずらしく気になったくらいですからたぶん、書き出しの風景から不親切ではないかと。タテに伸びる道か、ヨコに見渡す道なのか。これから始まる世界の入り口としてその示唆として、案外馬鹿に出来たことでもないような気がしてしまいます。
うるさいこと言ってすみません。


冒頭まもなくスタンロイドの説明がドンと現れますけど、一人称としてあたしはダサいと思いました、でもこれって何度も言って申しわけないですけど、おハナシを読ませるおハナシらしいので、単に世界観の説明としてはまるきり不適切なことでもないはずなんですけど、ちゃんと読みたいタチのものとしてはSFのナレーションそのままの感じがして何だろ? 映像的な視点が先行したらしい一人称というのは時に視点音痴のようで、表現的にはお世辞にもスマートとは思えないなあ、なんて思ったりもします。
誰が何をいつどこで誰に向けてはなしてるんですか? っていうつまりおハナシの聞かせ方の頓珍漢みたいな感触をついつい思いついてしまいます。個人的には。


> 身を乗り出してフロントガラスを見ようとしている僕を、男は静かな声で制した。実際のところ、急にラフ・ロードに侵入したせいですごい振動があり、立ってはいられなかった。
 急に視界がひらけた。さっきまで同じ太陽の下にいたはずなのに、あまりの明るさに目を細める。横の窓から外を見て、僕は目を見開いた。

感じる人は感じるし、感じない人にはどうでもいいことなんですけど、後学やもしれないつもりで、気が向いたら慎重に読んでみてもいいかもしれないです。
微妙に気持ち悪い時差が入り込んでないですか。
こういうのって、文章の問題ですか? でも、やっぱり世界を思い浮かべておハナシの世界を進んで欲しいものなら、出来るだけ躓きたくないとはやっぱり思ってしまう。そういうことは編集さんにお任せできることなんですかね。


> ペットボトルを持つ手が震えているのがわかった。それと同時に、喉のあたりも細かく震えている。それは船の振動のせいではなかった。ペットボトルの蓋を閉めようとしても、うまく手に力が入らなかったからだ。

これも言いたいことはわかるけど、文章ヘンだから文脈捩れてるのかと思って読み返す手間がありました。推敲の目線が甘い気がします。わかれば特に問題はないという目的のカタチもたぶんあるんでしょうけど、拙さはしょせん拙さでしかない気もするので個人的には心地良くない気がします。

>僕の意思とは無関係に、この船が、目的地に向かって着実に前進しているということが、たまらなく恐怖だった。自分の意思とは全く関係なく動いているというところが!

テンション上がってたんでしょうか、ここも日本語がおかしい気がします。活用とか表現という意味での単純な違和だから、感じないならそれでもいいです。




三千文字とかってつっぱねられたんだけど、書いちゃったから分けます。
すみません。

弥々丸朗
106.161.232.117

続きです


次の章からはわりと日本語が安定してきてあまり気にせず読み進められた気がしています。
読み進めれば先は気になるものですし、途中のものにあれこれいっても伏線なり設定なりをこじつけられれば今の時点での不具合なんて言うだけ無駄とは思うんですよね。
ちゃんとしてると思うし先があればたぶん読んでみたと思います。
世界の設定があたしたち読み手の時代をたぶん大昔と呼ばわる設定らしいと受け止めたのですが、有刺鉄線、木で出来た桟橋、古い鉄筋コンクリートの校舎、桜がきれいとか、ロボットが一般的に受け容れられている世界にあたしたちも見慣れたような古びたディティールも共存していて、何だか不安定のような、時代を隔てるようなまだ語られていない重要な出来事があったらしいことをあえて勘ぐらなければならない手間のような、つまり中途半端をなげられた不便を噛み殺して終えることは案外不親切で書き手は何とでも言えようものとさえ意地悪だけど思ってしまうのだし、やっぱりこういうのは見せ方としてフェアじゃない気がしてしまいます。近頃そんなのばっかだから今さらなんでしょうけど。

読ませてもらって思ったのは、たぶんこういったおハナシとしては要素の一つ一つに新しそうなことはあまりないらしいことで、でもそれはたぶん問題じゃないはずだしジョブズさんがiphoneのこと言ってたアレと同じこととは思うんですけど、問題なのはこれって便利なデバイスのことなんかじゃなくてただの小説ってことだと思うんですよ。
いちいち読むってこと。
新しくないことをいちいち読者に読ませるために必要なことって一体何だと考えると、この中途半端の状態に対してせめて言えることといったらたぶん、キャラクターとか、そんなもんが思いつかせる牽引力のようなことくらいしかないような気がするんですね。
ちなみにあたしは読み進めながらけっこういい頃までこの語り手、二十代くらいのサラリーマンとか想像してました。今現在もそれほど明確ではなさそうなんですけど、教室につっこまれて生徒呼ばわりしてサラリーマンはねえだろ、とは思ってます。
第9地区から人狼ゲーム、ガンツでもなんでもいいです、いくらでもスジはありそうなんだし3A的閉じこもり譚だって書きたければ書けばいいんですけど、印象的には先に言った通り設定に新しさはなさそうだし何より出張るキャラが押並べて類型的らしく弱いから、作為としてはむしろどこかバラついているような印象を個人的には受けています。

教室での質疑応答。
病院からのエピソードを配慮してもつまりかなり手間と規模を費やして拉致した国家機密とまでぶち上げられた保菌者たちについて、管理者がそのパーソナルデータもろくに把握してない一方的高圧的組織って、なんか杜撰な気がしないでもないんですけどどうなんですか。
それも後ほど明らかになる、と言われてしまえば現段階で読む価値も感想思いつく手間も何にも意味なくなるじゃないですか、やっぱり。

狙いにある以外のことばかり長々とすみません。

坂本マリヰ
126.161.72.246

匿名 様


ご感想いただきありがとうございます!
続きを読みたいと言っていただけて、とても嬉しいです!

まだ執筆中ですので、完結したらまた投稿させていただきたいです!
ありがとうございました。

坂本マリヰ
126.161.72.246

夜の雨 様


ご感想ありがとうございます!
細かいご感想をいただけて、感激いたしました。

世界観や設定について、お褒めの言葉をいただき、大変恐縮です。
そうですね、やっぱりSFといえども、現実世界をベースに、ifの世界を描くことを心がけています。
公募はどうするかはまだわかりませんが、ゆくゆくは挑戦してみたいなと考えています。

>地平線に近いところで、落書きのような稜線の山が見えるだけで<
>スタンロイドは遠目から見れば人間に見えるが、ボディは特殊シリコンで出来ているので、近くで見ると、肌のテカリ具合で、人間ではないとすぐにわかる。<

この部分ですが、執筆中は主人公の目になってものを考えていますので、やはり主人公が感じたままに書いている、という感じです。
「落書きのような稜線」「テカリ具合」このふたつはまさに、「ちょっとどうかな」と感じていた部分でしたが、このほうがわかりやすいかなと、現段階ではこの表現を採用しています。
特に「テカリ具合」の部分は、たとえば「肌の質感」と書くのとは違い、生々しい感じでいいかな、と考えています(イメージとしては、現代の人間に模した気持ち悪いアンドロイドの延長線、という感じです)。

>どの程度の近未来か、わかりませんが、「車」は、自動運転ではないのですね。

車は、技術的には全自動運転が可能ですが、運転手の姿が見えないと心理的に怖いので一般的に普及せず、代わりにスタンロイドがその役割を担うように発達した、という設定です。

>主人公の名前がまだ出ていないようですが、早い段階でわかるようにしたほうがよいですね。

そうですね。最後に出てきますが「イズミ」というのが名前です。サクラが名乗ったタイミングで書くべきでしたね。
あと、年齢もまだ出てきてませんので、どこかでさりげなく入れたいと思います。

>島の桟橋についた主人公を迎えに来ている者はいないのですね。
>島の桟橋にも、迎えがいると思うのですが。

ここはすみません、物語の仕掛けになっている部分ですので、のちほど終盤で理由がわかるようになっています。

>主人公が島で拾った音楽プレイヤーを隠したことに気が付いて、少女が「それは何か」と、尋ねてきます。返答しない主人公に対して。
A>>「関係あるよ。なんだかあやしいことをしてる人がいました、って報告しないと」
「なんでだよ」
「キミがテロリストで、この学校に爆弾を仕掛けた、という可能性がないとは言えないしね」<<

これは、『横浜ディストラクション』のとき、テロリストが破壊工作をしたというのが暗黙的な常識になっていて、サクラは冗談でそれを言っている、というシーンです。
サクラは、まさかそんなことはないだろう、と思いつつ、不自然だった主人公の行動をいぶかしんでいるシーンです。

ご丁寧な感想をありがとうございました。
最後まで書き上げられるように、頑張りたいと思います。

坂本マリヰ
126.161.72.246

弥々丸朗 様


ご感想ありがとうございます!
長文でのご感想だったのでちょっと驚きました。

文章の細かい部分、ご指摘いただき大変恐縮です。
まだ特に前半については、じゅうぶんな推敲ができていないのが現状です。

>正面の道路が、まるで世界をふたつに分けるみたいにまっすぐに伸びている。

これは、正面の道路がまっすぐに伸びている、ということから、一直線の道路が前方に伸びていて、それが境界線のように見える、という風景です。
わかりにくかったですね。
同じ描写が、後半の、チョークで床に線を引く、というところでも出てきます。

ほかの日本語についても、まだ甘いところが多いので、改善します。
一人称の独白についても、ですね。

>世界の設定があたしたち読み手の時代をたぶん大昔と呼ばわる設定らしいと受け止めたのですが、有刺鉄線、木で出来た桟橋、古い鉄筋コンクリートの校舎、桜がきれいとか、ロボットが一般的に受け容れられている世界にあたしたちも見慣れたような古びたディティールも共存していて、

「古いもの」については、「あえて」入れた部分もあります。そのほうがリアリティがあると考えています。
いくらテクノロジーが進歩しても、コストの兼ね合いもあり、最新のものが常に導入されるとは限らない、と考えています。
有刺鉄線、校舎などは現代で使われているものをそのまま使い続けている、という設定です。
桜は、未来でも美しさは変わらないと思います……。

年齢については、いまだにどこでどう入れればいいのか、考えあぐねてます。
現時点では、確かにわからないので、このままではいけないと思っています。

ご丁寧な感想ありがとうございました!

夜の雨
60.41.130.119

再訪。

主人公の個性的な表現について。(一人称の地の文章)。
個性的な表現で読み手が作者さんが狙って書いているのか、それとも三人称でもこういった書き方をしているのかと疑問に思う場合があります。(特に、公募とかに応募した場合、下読みさんや選考委員は応募作品として読んでいるので。作者さんが狙って書いているのか、気が付かないで書いているのかわかりません。これが出版された本になりますと、読者が読んだ場合は完成品として読むので主人公の個性と思います)。

こういった「一人称の個性的な表現を読み手に作者が狙って書いていると、自然に思わせる方法があります」。
やり方は主人公がヒロイン(または、ほかの登場人物)と会話する場面で、個性的な表現をして、ヒロインにそれを指摘させるエピソードを一度入れておけば、御作の一人称の個性的な表現方法はすべて「作者さんが狙って書いている」と、下読みさんや選考委員、またはこういった投稿サイトの読み手は思います。

また、そういった個性的なエピソード自体が面白くなり、作品(主人公たち)に人間味を与えます。

要するに、つじつまが合うように「伏線」を張っておく。というような、書き方をしておけば万事うまくいくと思うのです。

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
>どの程度の近未来か、わかりませんが、「車」は、自動運転ではないのですね。

車は、技術的には全自動運転が可能ですが、運転手の姿が見えないと心理的に怖いので一般的に普及せず、代わりにスタンロイドがその役割を担うように発達した、という設定です。
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
A>車は、技術的には全自動運転が可能ですが、運転手の姿が見えないと心理的に怖いので一般的に普及せず、代わりにスタンロイドがその役割を担うように発達した、という設定です。<

この件「A」についても、良い方法があります。

返答はごもっともです、まさにその通りだと思うのですよね。
それを「説明ではなく」自然に読み手に伝えればよいと思います。
やり方は「さりげなく」第三者の会話等のエピソードにより、「A」の説明を伏線として書きこめばよいと思います。
主人公に直接言わせるとわざとらしいので、第三者の会話文で語らせるかラジオとか、または歴史ミュージアムというような自動車の自動運転展示コーナなどで、そういった情報が流れてきたということにすれば、自然な雰囲気でAが、伝わります。
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

これらは御作での感想と返信のやりとりで、こうすればよいのではないかと考えたので、もちろんもっと良い方法があるかもしれません。

ちくわ
125.204.49.183

こんばんは、拝読いたしました。

>続きが読みたいか、その一点が気になります。

これからどうなるのか、或いはここから作者がどう料理するのか、ちょっと見てみたい気になりました。



ところでじゃね、読んでて気になったのは主人公の性格かな。
最初の移動中から、なにやら達観した投げやりな感じが漂いますな。
だからというか、今のところ彼は何もしていません、音楽プレーヤーを隠そうとするくらいかな。
そのくらいしか能動的な意思を感じさせてくれませんな。
舟を奪おうと「思ってみたり」はするんだけど、否定的な想像と理知的な制御から行動することをためらうわけじゃ。
小説内では扱いに困りそうなキャラじゃな。厄介そうなやつを主人公にしましたな。

それでいて少女とのセリフはやね、意外に普通だったりします。

>「なんだよ、関係ないだろ、そんなこと」じゃものね。

たとえばなんだけれど、もう少しコミュニケーションにおいて内省的なほうが「らしく」あるような気がしたりします。(これはあくまでもイメージだけどね)丁寧な言い方するだけで、最初からのイメージは保持されたと思うんじゃな。
もちろんフィクションの世界で整合性を云々言うつもりはないのだけれど、より早くキャラの性格を出すならば地の文とセリフは釣り合わせた方が良いと思う。(全然別の性格であろうとじゃな)

また、上でも書かれていますが風景描写や心理描写の文が、ちょっとうまくいっていない。
疎と密のバランスが悪いし、語順の配分がおかしい。書かれた情報が頭の中で像を浮かばせにくい。

重点を置いた部分とじゃな、ひとこと描けば済むのに書かれていない部分の、対比が目立ちすぎなんじゃな。
しかし、ちゃんと読めるのでじゃね、そこいらにもっと注意すれば、ずっと良くなると感じました。
要らないものまで丁寧に書く必要はないんだけど、ある程度のリズムは保持した方が読みやすい。

細かいこと言うようじゃけれどじゃな、

>先ほどまでの何もない車道ではなく、そこから先は砂利道だった。鬱蒼と生い茂る林の中を車は進んでいく。

であれば、フェンスよりも先に見えるのは生い茂る森のグリーンベルトじゃろうし、

>船は一応屋根のついた小さな漁船のようなものだったが、大きさからみればボートに近かった。

この文の引き起こすイメージの不確かさに気が付かねばなるまい。
あなたの描く世界はあなたにしか見えていない、それをじゃな読者に親切に伝えなければならない。見えるように。
小さな子供に言い聞かせるのではなく、おとなに説明するようにじゃ。
おかしくはないか? 書き落した情報は無いか? 絶えず振り返らねばなるまいよ。
その辺気にするだけで、ずっと瑞々しくなるんじゃなかろうかね。

きちんとした世界を描こうとする作者の心意気を高く評価したいと思います。
だからこそ、うまいこと伝えてほしいなと思いました。

えらそうに書いて申し訳ないのじゃけど、鍛錬場じゃものね、どうかお許しあれ。

坂本マリヰ
126.161.72.246

夜の雨 様


再訪ありがとうございます!
色々教えていただいて、大変感激しております。

おっしゃる通り、一人称で書かれた小説だから……と、描写が多少甘くても許される、的な緩んだ部分が残っていると思いますが、下読みの方などが読んだ場合には、そこらへんの判断はつかないですよね。
そういった違和感を、あえて会話に混ぜ込む手法というのはとても面白いですね。
以前、別の小説で、主人公視点で「あえて」間違ったことを地の分で言わせたものを人に読ませたら、作者である私自身も間違っていると誤解されて、指摘されたことがあります。
そのときも、別のキャラクターに、セリフで突っ込みを入れてもらうことで、「作者はわかってるんだ」と読者に思わせることに成功したことがあります。
それと似たようなものですね。

自動運転の件もそうですね。
うまい手が思いつかない場合、私は地の文に埋め込んで説明してしまいそうですが、サラッとそういう背景がわかるものが入っていると、世界観にリアリティがでそうです。
色々試してみたいと思います。

考えるきっかけになりました。
ありがとうございました!

坂本マリヰ
126.161.72.246

ちくわ 様


ご感想ありがとうございます!
色々と丁寧なご指摘を頂いて嬉しいです。

主人公の性格は、そうですね、内省的で、どこか達観したような、そんなキャラクターになっています。
でも、この小説は少年漫画のように、成長する物語にしたいと思っていますし、(まだ執筆中なのですが)少年がなにかに「目覚めていく」話にしたいと考えています。
たとえていうなら、エヴァンゲリオンの碇シンジ少年というか……。
もちろん、冒頭の「つかみ」は、世界観だけで引っ張っている感があるので、もっとキャラを立たせて、好感をもってもらわないとダメですね。
物語の最終的な絵は見えているので、その風景にたどり着けるように、航海していきたいと思います。

描写のご指摘はごもっともです。
いま読んでも、なんかヘンだな、と自分でも思います。

小説を人に読んでもらうたび、自分の見ている風景と読んだ人の見ている風景は違うのだな……ということを痛感します。
小説でいちばん大事なのは「おもしろさ」「読みやすさ」「テンポ」だと個人的には思っているのですが、説明的になりすぎるとおもしろさ、テンポが損なわれるのが難しいところです。
無駄なものをどんどん削って、長い表現を短い表現に切り替えたり、重要なところは微細に描写したりと、「メリハリ」がもっと必要ですね。
漫画でたとえるなら、コマのサイズがバラバラというか。
そういうことをもっと意識して、推敲したいと思います。

中途半端な状態で出してしまって恐縮です。
とにかく最後まで駆け抜けて、ゆっくりと推敲したいと思います。
ありがとうございました!

グリーン
210.138.176.33

 冒頭一段落目の文章がとても印象的でそれに惹かれて拝読しました。おもしろかった。スタンロイドというのが何となく森博嗣っぽいなと感じました。登場人物の名前がすべてカタカナなのは未来感を出すため? ですか? ――続きが読みたいか、その一点が気になります。――読みたいと思いました。

ゴイクン
121.92.248.155

こんばんは。
拝読しました。

続きが読みたいかと問われれば、そこまでは、という印象です。

ある地域が汚染される。テロとか核兵器とか。そこで何かのウイルスが蔓延して、いわゆるパンデミック。しかしそのウイルスに平気なものたちがいた。

というのは、最近、ありすぎですね。映画のタイトルは上げませんが、ハリウッド物に多い気がします。猿からの感染とか、ゾンビ感染、また視力や聴力などを失うウイルスへの感染。

それからそれら感染者をモニターする国家組織というのも多いですね。国家ではないけれど、早い話バイオハザードシリーズもそんなものだし、素敵だったのがキャビンなんていう怪獣のモニターかな。

なお、distraction って、こういう意味でしたっけ。

まあ、このようなよくある話で新作を書かれている。それ自体は何の問題もありません。これまでの作品よりもっと面白いのができればいいだけのことで、過去作は参考程度でいいかもですね。

オリジナルを尊重する人は、若い恋人同士の悲劇であるロミオとジュリエットを思いだすだけでいいですね。何百、何千と模倣されたわけです。というか、元の有名なロミオだって、パクリですからね。

そして、自分の作品が真似されるように頑張ればいいだけです、って話は大きいですが。

で、そうなるためには、ちゃんとした作品を書かなくてはいけないのですが、今ふっと考えて、よくできた作品って、こんな所がしっかりしているかな、と思ったわけです。早い話、よくできていなければ面白いと思えないですしね。
つまり、

●視線に乱れがない
●描写が具体的である
●心理や話の運びがロジカルである。
 かな。いや、文章が上手も入りますか。

最低、上をちゃんとクリアしていればよい作品になると思います。
と、書いて夕食タイムです・笑
すみません。

ゴイクン
121.92.248.155

で、続きです。

 文章ですが、まだ推敲途上ということなので、先走りかもしれないですが、私の感覚では総体的に上手とはいえません。無邪気すぎる気がします。
 特に前半は、あちこち蹴躓いて、何度も挫折しようとしました。

ある意味、素直すぎるのかもしれないですが、ちゃんとした作家さんの作品を、ヒマなときにでも、盗むような気持ちで読まれることが大事かと思います。

サンプルをあげますと、

>いまでは、人間が運転するよりも事故率が圧倒的に低いとされ、人間が運転する際には、人間が運転していることを示すマグネットを、ボンネットの上に貼らなければならない。

たったこれだけに「運転」という言葉が三回もあります。
読者は、文章上の繰り返しを特に嫌います。まだるっこしく見えるからです。
誰の小説でもいいですが、ちょっと読んでみれば、日本の作家さんは、できるだけ同じ言葉を使わないように工夫されるのがわかると思います。
西村京太郎さんの「と、いった」は別として。

仮に似た表現をしつこく使われているとしたら、特別な意味を持たせて、それが後でなるほど、となる場合だけ可能ではないでしょうか。この繰り返し不可には、もう少し神経を払ってほしかったです。

>少なくともあそこから出られたらそれでいい、そう思っていたのに、行けども行けども枯れ草しか生えていないような荒野しか広がっていないようでは、これから向かう場所での暮らしも、あまり期待がもてない。

一文に二つも「ようだ」があれば、印象は薄まって、???になってしまうことがほとんです。

で、視点に乱れがないというのは、御作の場合、一人称ですね。すべて「僕」が語っています。

すると、語るには語る意味が必要です。
たとえば、

>男の運転する車は、海に近いところで止まった。男は後ろを振り返り、目で、「降りろ」と命じた。もちろん異論はない。

異論はない、とくれば予想していた感じですし、ハードボイルド調になりますが、次を読んでみても、ただ降りるよ、と同意しただけのことのようです。
ちっともハードボイルドじゃなかった。

主人公がこういえば、何か深い意味を読者は探します。それだけ、異論はない、という書き方は強いです。

{長くなったので、分けます}

ゴイクン
121.92.248.155

そして、以下の二つの説明、いや、解説は誰のために、主人公が書いて、いや思っているのでしょうか。

>スタンロイドは、半導体メーカーのプレジャー社が商標登録しているロボットの商品名で、人型ロボットとしてほとんど一般名詞化している。人間のアシストを目的に開発された商用ロボットだが、自動車の運転ぐらいであれば、問題なくこなせる。僕が生まれる前の話だけれど、スタンロイドが登場してから、道交法が全面的に刷新され、スタンロイドの運転特性に合わせた形に作り変えられた。いまでは、人間が運転するよりも事故率が圧倒的に低いとされ、人間が運転する際には、人間が運転していることを示すマグネットを、ボンネットの上に貼らなければならない。

>僕や、僕の家族は、直接の被害を受けてはいないが、学校にはその影響で死んだ同級生が何人かいたし、移住を余儀なくされた人もいた。そしてなにより、その日を境に、日本は非常事態に入った。戦争まで一触即発の状態になり、右傾化が加速した。全国で自衛隊の解散と、国防軍の設立を求める大規模なデモがあり、それはすぐに臨時国会で可決されてしまった。
 
当然こういう設定説明はいるでしょうけど、このままでよいかどうか。
情報を会話の中に細切れにいれるか、回想にするか、そうでないと、ここで話が停滞してしまうのです。
読んでいても、退屈です。
あるかどうか知りませんが、きっとないでしょうが、車にたとえば新聞の切れ端なんかが車内に残っていれば、その見出しで、思いだすこともできるはず。

何でもいいですが、こういうべたっとした説明でOKなら、小説は簡単です。というか、あらすじでよいことになってしまいますね。
細部に神は宿るといいますが、解説にはどのような神も宿りません。
というのはあくまで私の考えで、そうじゃないという人も多いかもしれませんが、そういう場合は以下は無視してください。
そうですね、もう一点にします。

読者は主人公の真理を追っていきます。なので、その心理がすっと心に入れば、絵もヴィヴィッドに浮かび、物語に入りやすいです。

確か、主人公は同行者がスタンロイドかどうか考えてよくわかないという部分があったと思いますが、

>「私は行かない。君をここに連れてくるまでが私の仕事だ。あれに乗って、着いた先で指示に従いなさい」
 感情のこもらない声で男は言う。

ときて、スタンロイドと気づくわけですね。そしたら、気づいたときの、やっぱり感を文字にすべきじゃないでしょうか。それがロジカルな心理と、私は思うわけです。

もっとも、感情のこもらない声で、それは表現しているし、そういう心理は出している、といわれるかもしれないですが、さっと読んだときに、それが読者に伝わるかどうかですね。
やはり、そうか。丁寧に対応して損した、とか、やはりそうか、急に腹が立ってきた、とか。何でもいいので、反応が入れがわかりやすいですが、語り手はすでにそんなことは忘れてしまっているように思えました。


あと、一つ書くとすれば、船なのかボートなのか、ちゃんと調べてください、ということです。主人公はどうでも、その調査は作者さんの仕事です。

ボートの大きさの船に、船底はないですし、船尾のくぼみって何でしょうか。きっと名前があるはずです。主人公が知っているはずないとすれば、別のやつに喋らせればすむことです。

××に座れ! ××? そこのくぼみのことだ。とか。

書くよりも調べることに時間がかかる、とは作家さんがよくいわれることです。
今はネットがあるので、簡単にわかります。
私は先日、カーテンの色とか、家の鉄骨と鉄筋の違いとか、家の建て方などをネットであちこち調べました。

「平屋建ての二階に」なんて昔書いて大恥かいたことがありますし、「耳にかける首飾り」と書いたこともあります。調べればすむことですけどね。

すみません、ながながと。途中ですが、さすがにもうやめます。
きちんとした物語を書こうとされている、その意気込み。ブラボー! です。
頑張ってください。
追伸:子どもたちが監視されている設定は、カズオイシグロの私を離さないでも同じですね。汚染じゃないですが。というついで、でした。すみません。

坂本マリヰ
126.212.200.133

グリーン様

ご感想ありがとうございます!書き出しは、ちょっとどうなのかなぁと思っていたので、お褒めいただいてとてもうれしいです。

スタンロイドのネーミングは、「Standalone Android」の略なので、森博嗣先生の「Walk alone」とネーミングの根本は同じです。ウォーカロン、のほうがずっとスマートですけれど。
登場人物がカタカナなのは、学校という設定もあり、人物がたくさん出てくるので、漢字だとごちゃごちゃしちゃうかなと思ったからです。

ありがとうございました。

坂本マリヰ
126.212.200.133

ゴイクン様


細かで丁寧なコメントありがとうございます! ここまで読み込んでいただき、感激しています。

物語の道具立てとしてのパンデミックを使ったのですが、あまりここは主題ではなく、このパンデミックの話の嘘をあばいていき、大人たちの正体や、本当の目的を追う、というのが物語の展開となります。ご承知のとおり、ここにオリジナリティはまったくなく、完全に「ベタな」展開です。物語の「つかみ」として有効かなと思って、最初はこのような展開にしました。でも、一応「感染していない」という情報も流すことで、「え、どういうことだろう?」と読者に思わせるのがねらいです。

そういうのを抜きにしても、ベタな設定って、けっこう好きです。「お約束」というか。そういうのを織り込んで、はじめて「作家性」というのが出てくるような気もしています。いま、「余命が少ない病弱ヒロインもの」を片っ端から集めて、パターン分析したいと思っているぐらいです(笑)


「ディストラクション」は、distractionではなく、destructionですね。発音は同じですが。


同じ言葉の繰り返し、視点の動きについては、確かに基本で、いま読み返してみてあまりうまくないな、と自分でも恥ずかしくなりました。推敲のとき、単語を削ったり増やしたりするだけでなく、文章そのものをガサッと書き直すぐらいの勇気というか、手間をかけることも必要ですね。最近あまりしていないのですが、一度音読して、推敲してみたいと思います。完結後になると思いますが。

視点は、どうしても作者が見ている目と読者の目は違うということもありますが、なかなか読者目線になるのは難しいです。一時的に作品に関する記憶を消去する装置でもあると推敲しやすいと思うんですけれども、そのうち出ますかね(笑)。いったん、心をまっさらにして、ゆっくりと音読しながら推敲したいと思います。

特に冒頭は書き手も探り探りなので、つい無駄が増えてしまいます。いったん完結させてから、物語全体として意味のあるところは残す、そうでないところは削る、などの判断がしやすいのですが、途中だとなかなか……です。


物語背景の説明も、ちょっと説明過剰かもしれませんね。なにかそれを思うきっかけでも作ればいいんでしょうけど。このあたりは、説明のナレーションを入れることができない映画あたりの手法が参考になるかな、とは思います。いろいろ考えてみます。

調査不足については、お恥ずかしいですが、特に何も見ずにここは書きました。なので、たぶん全然わかってないです。とりあえず書いてしまうと、そんなに重要な要素がある部分でもなさそうだったので、必要最小限のことは調べます。前に書いていた作品のとき、警察の取り調べシーンを書いたのですが、とにかくわからなくて大変でした。実際に取り調べを受けた作家さんの本を読んだり、弁護士のウェブサイトで勉強したりして。でも、これもまずは想像で一回書いちゃってから検証したほうが、効率がいいかな、と最近では思ってます。実験するときに仮説を先に立てるのと同じで。

いまのところはあまりオリジナリティないですが、ここ数年、遺伝学や人工知能に関心があり、それらを読み漁っていたので、それらを読んだ上での一考察として、新しい感じは出せるかもしれません。

あと、「わたしを離さないで」は、積極的に意識しており、森博嗣先生のように冒頭で本文を引用したいな、と思っているぐらいです。あちらがイギリス風ならばこっちは和風で、ぐらいの気持ちです(笑)。

丁寧な感想、ありがとうございました。

ゴイクン
121.92.248.155

再訪は恥ずかしくてしないのですが、つまり一度で言いたいことがいえないアホな私、ということで。
でも、余命わずかなヒロイン物。ということでしたら、、

Sendan bana kalan

というトルコ映画がお薦めです。ユーチューブにあります。
返信の雰囲気から、きっと大丈夫と思いますので。
それでは。

坂本マリヰ
126.212.200.133

ゴイクン様


再訪ありがとうございます!
トルコ映画なのですね、すみません、映画はわりとうといもので……。

検索して、冒頭を拝見しました。
落ち着いた雰囲気の映画ですね。

ありがとうございます!

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