作家でごはん!鍛練場
秋田寒男

ユミは哲学徒

私がユミに会ったのは、かれこれ数年前だ。あのときの君は本当に凛として美しかった。ユミ、あなたはいまどこで何をしていますか?

 僕がユミと出会ったのは電脳空間だった。その時は、SNSもなくて議論の場が出会いの場だった。私は今、30歳。もう10年前か。
 僕はとある哲学議論場的なサイトで人間のあり方、人間の知性の限界について話し合っていた。というか、相手の議論にささやかながらイチャモンを付けていた。決してアラシではなかったと思うが。カントを崇拝している輩や、キリストを崇拝していたり、ドストエフスキーでもって議論の本質を突く輩もいた。だが、ユミは学識が高く教養もあり哲学のエッセンスを持ち合わせていたので学者のような議論をしていた。しかし、女性は子宮で考える生物、時折ナイーブな文体を感じさせる風があった。しかし、哲学は死を学ぶ学問とも言われている。ユミは死をも恐れない真理を望む過激的な側面も持ち合わせていた。そうユミは大胆な女性だったのだ。
 私は昔、真理が欲しくて修行をしていた時がある。18才から24才にかけてだ。情報をシャットダウンしてこの世から隠れ、山に行き、旅に出て死ぬ気で戦った。だが、私は駄目だった。この世界の海岸にある砂粒同様、一般的な民衆の一人であった。そう自覚した時、私の精神は瓦解した。そう精神病にかかったのである。そのきっかけを作ったのはユミであった。

 ユミは博覧強記で、大変知能が高く。海外の著名な大学に通っている風だった。年齢は私と出会った時で恐らく20代。マンガ、アニメなどのカルチャーにも精通していた。自我が柔軟で、素直な面がある一方、陰湿で人を自殺に追い込む手法にも長けていて一歩間違えれば危険な人物だ。古今東西の書物を読み漁り、心理学、数学、物理学、哲学、文学が得意であり、広範囲な知的好奇心である。文学賞でも受ければいいのが、審査員の知性を超えている為、受賞には至っていないと思われる節があった。かと言って、ユミは相手のレベルに合わせるという必然性も皆無と思われるらしかった。

 秋田くんの事大好き作戦にまんまと嵌った。そう、ユミは私がユミの事に恋愛感情を抱いている事を見抜き、私をユミ依存体質に仕立て上げた。私は愚かだった。でも、ユミは知性的で美しい女性だった。私はそれでもいいと思った。溺れた、そう、私はビッグバンが始まる以前の空間に吹き飛ばされて精神が死んだ。例えようがないのだが、例えようがない例えを用いてみた。

 白隠の伝記で見た記憶がある。なんでも、信心深い村人が一日で悟ったそうだ。この世の美しさを理解したのだ。生きている美しさ、山や川、草花の美しさに。私もそのレベルまで悟った。ユミが生きている、その美しさに。この世界の美しさに。しかし、電脳空間ではその悟りは玩具の対象だった。私は憤慨した。この世界の嫌らしさに。また旅に出よう、そう思った時には私はもう精神は崩壊していた。ネットは情報過多と言われるが、やりようによっては情報収束させ、動物的な本能で生きる人間ならば簡単に洗脳させられる。しかし手強いのがいる、クリティカルシンキングする哲学徒だ。私も批判精神は優れていたが、ユミは恋愛感情で性的欲求をほのめかす文体を私の脳に体に染み込ませていった。

 私は、ますますユミに惚れた。ユミが夢に出てくるほどであった。顔も姿も見た事ないのに。電脳空間で文字だけのやりとりしているだけなのに。
 
 この世界は暗号で出来ていると思う事が増えていった。精神病の兆候がこのあたりからでてきた。それを高知能のユミは見逃さなかった。ユミは最終的な仕上げにかかった。私を殺すために。

ユミは哲学徒

執筆の狙い

作者 秋田寒男
134.180.3.131

私の過去のネット恋愛を書いてみました。

ご感想、よろしくお願いします。

コメント

加茂ミイル
60.34.120.58

哲学者の中では誰が好きですか?

大丘 忍
220.219.181.62

これ、本当の男と女の恋愛ですかね。観念上の恋愛と思ってるだけではないの? つまり、これをネット恋愛と言うのですか。
私の恋愛経験からは、読んでもさっぱりわからない。

偏差値45
219.182.80.182

電脳空間、実際の相手の容姿が分からない世界ですよね。
それはまさに老若男女は関係ない世界でもあるわけです。
それゆえ、恋愛や精神崩壊はしないかな。
とはいえ、それは個人的な論理的な思考の内です。

現実的には、恋愛は存在します。
私の妹は、そのような電脳空間をきっかけにお付き合いをして、結婚までしているのですから
否定は出来ません。しかし、それはあくまで「きっかけ」ですね。
で、もう一つ。
電脳空間とは面白いもので、現実の世界とはまったく違うか?
と言えば、そうではなくて、密接にリンクしている人がいる、ということです。
逆に言えば、リンクしていない人もいるわけです。

私は後者の人間になります。
分かりやすく言えば、偏差値45というHM(ハンドルネーム)は、
本来の私と分離された状態にあります。
だから、「馬鹿だ」「阿保だ」などと悪口を言われてもなんとも思わないのです。
感じないのです。
ところが、現実の自分と電脳空間の自分がリンクしている人も存在するのです。
それはこの作品の主人公のタイプですよね。

で、この両者は水と油なのです。互いの思考が理解されていないので、
時折、衝突します。簡単に言えば、ケンカのようなものです。
そういう光景を端から見るぶんにはとても面白いです。

さて、感想です。
精神崩壊は少々、話が盛っているかな、とは思いましたが、
電脳空間に中で傷心することはありえる話ですよね。
そのように考えると面白く読めますね。

秋田寒男
134.180.3.131

加茂ミイル様

好きな哲学者いないんですよね。
シオランって人の崩壊概論が俺と同じこと考えていると本のタイトル見たとき思いましたが、
内容は読めなかった。

秋田寒男
134.180.3.131

大丘 忍様

恋はもっと複雑だと思う寒男なのでした。
観念上といえばそうかも知れません。しかし、ネットで恋して今でも恋い慕うその思いを知らないと心が崩壊してしった人間の意識、いや、あらゆる作者の意図を知ることはできないと思う寒男なのです。

秋田寒男
134.180.3.131

偏差値45様

>電脳空間とは面白いもので、現実の世界とはまったく違うか?
と言えば、そうではなくて、密接にリンクしている人がいる、ということです。
逆に言えば、リンクしていない人もいるわけです。

うーん、鋭い意見。自分は思いっきり前者ですね。見事にリンクしてしまう。

春名
14.12.134.32

読んでいてこう、イメージの世界にぐいっと引き込まれるような、いや、ふわふわと浮かんでいるようなそんな不思議な感じがしました。回想でこの雰囲気を出すのは意外と難しいのでちゃんと“小説”として機能しているものと思います。悪くないです。
ですが、作者としての軸みたいなものを感じさせる分、この作品は勿体ないとも思わざるを得ないです。
ユミと出会った10年前、20歳の時にあなたはちょうど俗世を離れて旅に出ていることになっているのですが、まあこれはただのミスですし数字を変えればいいだけなので不問としておきます。
加えて、前半に「〜、そう、〇〇」という文体が多いです。それと何度も何度もユミのスペックを書く必要はないですね。一回で十分ですし、これに何らかの意図をこじつけるとすれば、作者がまだユミにベタ惚れでユミのことしか考えられないというくらいしか私は思いつきませんが、ユミが持っていた悪意というかユミの奥でキーボードを叩いている人を知覚している現在の主人公と合わないので却下ですね。というかユミと出会ったのは数年前、と何年前という数え方をしているはずなのに20歳というのを覚えている矛盾があったりするのでそこまで考えてはいないでしょう。

ユミは完璧すぎるというか、設定が行き過ぎているのは、おそらくネット上で相手、この場合ユミの向こう側の人がユミのスペックを膨らましているわけですが、これに経験の浅い主人公が一切気づけていないのはなかなかネット恋愛を風刺しているようでいいですね。
精神の弱った時に現れた完璧な女性に惹かれ、彼女に次第に溺れていく未熟な頃の自分の心情の移り変わりであったり、荒んだ心に彼女の言葉が温かく響いたか、いやこの作品の場合は目覚ましの目薬のように刺激的に染みたか、こういったものをどのように表現すればいいかは作者にとっては大いに悩みものだと思います。
私なら哲学についての書き込みを会話調にでもしてユミの性格を表したりしますかね。そこそこ筋の通った意見を書いてみてそれをユミに意外な側面から論破させてみたりしたいですね。

それと消化不良で終わっているのも少し気になります。起承転結でいえば転の入り口がちょっと見えたくらいですかね。最後まで書いても全然良かったと思います。

続きを投稿されるのを勝手に楽しみにしています。

ゴイクン
121.92.248.202

拝読しました。

そして、小説って何だろう、と思いました。

御作には、具体的なものがありません。この話がダメというのではなく、具体的ではないので、何ひとつイメージできないのです。イメージできるとしたら、御作に関係ないイメージです。つまり、何も伝わってこないのです。

ユミのことをもっと具体的に妄想する場面があれば、ユミのイメージもつかめるかもしれないですが、これほど抽象的では、ただのあらすじ紹介でしかありません。

ユミは凛として美しい、といわれても、そうなんだ、じゃあ、というしかないですね。本当は、凛として美しい、なんて説明の言葉はいらないのです。何とか頑張って、それを具体的なイメージにして、ああ、ユミは凛として美しいのだな、と読者に思わせることが大事じゃないでしょうか。プロの作家さんはそうしているはずです。

ただ文字を書けば小説になるわけじゃないですね。

作者さんがどのような人か具体的にみんなが知っているのなら、エッセイとしては通用するかもしれませんが、ここのみんなはきっと作者さんのことをよく知らない。擦れ違うだけの人です。

そうなら、ちょっと手を伸ばして、おいおい、ちょっと見てくれ、エミのことを聞いてくれ、という感じで、客観的にエミのことがわかるように、具体的な言葉で描写すればいいと思うのです。
でも、そうなってはない。
そこが残念でした。
何かのお役に立てばうれしいです。それでは。

秋田寒男
134.180.3.80

春名樣

感想、ありがとうございます。
僕は唐橋ユミが好きなので、いつもユミとか唐橋という名前をつけてしまうんですよね。
あと、ネット恋愛した彼女も未だに忘れられないですね。いい思い出ですね。

でもネット恋愛した彼女のせいで精神病院送りにされた過去があるから本当に文字って怖いよ。てか哲学徒は。脳内を分析させられるからね。

秋田寒男
134.180.3.80

ゴイクン樣

感想ありがとうございます。
ただ、文字を書けばではダメなんですね。
そうですよね。
親切に手とり足取り赤ちゃんのおしりを拭くように優しく傷つかないようにいざなう親切心が作家には必要なのかしらね。

僕には才能がないのかしら。

夜の雨
60.41.130.119

ユミは人間とは限りませんね。
どこかの大学の人間工学研究の一端で、AIによる電脳空間での人間との対話をさせていたのではありませんか。
こう考えると、御作は一挙に近未来SF小説(現実には既に可能な話)になります。
すなわちあなたのネット恋愛の相手は、人間の女性ではなくてAIであった。
AIに哲学や文学、絵画の情報、政治経済、日常生活から科学に至るまでのあらゆる分野の情報をインプットしておき、「哲学議論場的なサイトで人間のあり方、人間の知性の限界について話し合わせた」。
「教授、ユミに恋愛感情を持っている者がいますが」
「ほう……、面白くなってきたではないか、これで我々の研究もはかどるぞ」
「大丈夫ですかね、相手はかなりのめり込んでいる様子ですが」
「そりゃあ、ユミにのめりこむだろう、何しろ、古今東西の官能文学もユミにはインプットしてあるからな。谷崎純一郎の文学はかなり効くぞ」
「哲学で相手の思想、信条をコントロールしておいて、そこに文学による精神のコントロールとなれば、相手はユミに恋をしてしまいますが、この研究が終わると、どうなるのですかね?」
「どうなるって、ユミにおける人間対応能力が実証されれば、これを企業に売り込むだけだよ。それで我々は、報酬をいただく」
「それでは相手は失恋ということですか」

御作を読んでイメージがわきましたので、それを上のように形にしてみました。
形と言ってもたたき台みたいなものですけれど。
作者さんは、文章はお上手ですね、普通に読むと電脳空間の向こう側には人間が居ると考えがちですが、AIの研究のためにユミは存在していた、と考えても違和感はありません。

作者さんは充分書ける方だと思いますので、発想を膨らまして、それを形に変えてみてはいかがでしょうか。

秋田寒男
110.165.129.28

夜の雨様

感想ありがとうございます。
文章も、ありがとう。

ユミはAIですか、、、
その発想もいいですね。
ユミは超人的人間だったのでその可能性もあります。

かじ・リン坊
124.110.104.4

 同じことが繰り返し書かれているだけで、話が前に進まない感じでした。

秋田寒男
110.165.212.199

かじ様

感想ありがとうございます。

前進してないですか?
次回作はもう少し話を進めてから投稿します。
ユミの素晴らしさを強調するあまりからかな?

ご利用のブラウザの言語モードを「日本語(ja, ja-JP)」に設定して頂くことで書き込みが可能です。

テクニカルサポート

3,000字以内