作家でごはん!鍛練場
やひろ

振り向きざまに走る(78枚)

   1


 来月、十八歳になるイチタカがうちのチャイムを鳴らしたのは、映画を見ながらソファでうたた寝をしていた、ある師走の日曜日の午後のことだった。ピンポーン、と聞き慣れた電子音が聞こえたとき、目を開けたが、部屋を暗くしてあるせいで、とっさにいまが何時だかわからなかった。映画はちょうどラストシーン、エンディングのスタッフロールが流れはじめるところだった。
 おれは首を横に向けて、玄関のカメラ映像のディスプレイを見る。魚眼レンズの歪んだ映像は、顔の半分近くをマフラーに埋めた、ショートカットの女の子を映し出していた。
 おれは立ち上がり、ディスプレイ下の通話ボタンを押して、「開いてるよ」とだけ短く言った。レンズ越しに、女の子が小さく頷くのが見え、すぐに画面から消えた。
 あいつがこの家に来るのはいつぶりかな、とふたりがけのソファに座り直しながら考えた。一年ぶりということはないだろうが、半年は経っているかもしれない。いつのまにか大人になってしまったんだな、と思った。
 ほどなくして、玄関のドアが開く音がして、イチタカが家の中に入ってくる。リビングに繋がるドアを少し覗くように開けて、「こんにちは、おじさん」と声をかけ、遠慮がちに入ってきた。
 さっき、玄関に備え付けられたカメラで確認した通り、ごわごわの青と白のストライプのマフラーが顔の半分を覆っている。薄茶色のダッフルコートの下は高校の制服で、スカートの下に紺のジャージを履いていた。綺麗に短く切りそろえられた髪はまるで少年のようで、冬だというのに長年の日焼けのあとが肌にうっすらと沈んでいる。
 リビングの入り口に佇むイチタカは、おれがイメージしている背たけよりも、ひとまわりもふたまわりも、大きかった。もともととても痩せていたが、いまは手足が少し長くなって、上にぴょこんと身長が突き抜けているような感じだ。
「映画見てたの」
 イチタカは部屋の中央まで来ると、八〇インチのテレビ画面を食い入るように見ながら、ぼそっと言った。画面からはもの悲しいギターの音色が響いている。
「ああ」
「なに?」
「『レオン』」
「知らない」
「ナタリー・ポートマンがブレイクするきっかけになった映画だよ」
「それ、誰?」
 イチタカはそう言うと、やっとグルグルに巻きつけてあったマフラーを解いて、持っていた大きなスポーツバッグを床に置き、ダッフルコートも近くのカウチに脱ぎ捨てた。寒かったのか、とがった鼻先が、ほんの少し赤くなっている。
「学校はもう終わったのか? 家じゃなくて、直接こっちに来るなんて、珍しいな」
「今日は日曜だよ。ちょっと部活で、行く用事あったから」
 イチタカはおれのことをおじさんと呼んでくれるが、血縁関係があるわけじゃない。ただの隣人だ。十年前、おれの妻が亡くなるまで、イチタカの家とは家族ぐるみの付き合いがあった。今だって、夏のバーベキュー、クリスマスはおれも呼ばれて、顔を出している。この、男の子のような名前をした女の子は、それでも名前負けしないように、すくすくと、少年のように育った。
 イチタカはテレビの画面を見たまま動かない。何か言いたいことがあるのかな、とおれは思った。そういえば、今は十二月だ。昔、音楽プレイヤーが欲しいと、直接ねだられたことがある。しかし、イチタカと、その妹のフウカのためのクリスマスプレゼントはもう既に買ってあって、寝室のクローゼットの奥に仕舞ってあった。
「今日は日差しがぽかぽかしてるから、サンルームに行こう。いっちゃん、ココア飲むか?」
「ココア?」
「そう。寒いだろ」
「いい」
「うち、あとはコーヒーと紅茶ぐらいしかないぞ」
「……じゃあ、ココアでいい」
 そう言って、勝手に廊下をぱたぱたと歩いて行ってしまった。おれは重い腰をあげて、キッチンに行って湯沸かし器に水を入れ、電源を入れる。映画はもう終わっていた。おれはダイニングテーブルの上に置いてあるリモコンを取ってテレビの電源を切り、テレビに接続してあったノートパソコンのスイッチも切った。ふたり分のココアを入れながら、賞味期限は大丈夫だろうか、と気になった。
 ぎこちない手つきでマグカップを運んで廊下を歩くと、つきあたりに十畳ぐらいの広さのサンルームがある。もともとあったものではなく増築したものだが、妻が生きていた頃には色とりどりの、名前も知らない可憐な花たちで埋めつくされていた。いまは、観葉植物がメインの、おれの書斎のひとつになっている。
 イチタカはカウチの端っこのほうに座って、窓の外を眺めている。そんなところを眺めても、せいぜい隣の家の塀ぐらいしか見れないというのに。
「ほれ、熱いぞ」
 ガラスのテーブルにマグカップをじかに置き、向かいのカウチに座る。普段、人と会うときに使う応接室でもあるのだが、その中にイチタカがいるというのは少し違和感があるし、大きくなったとはいえ、見慣れたその空間にいると彼女の小ささがより際立つようだった。
「ありがとう」
 真顔で言われ、おれは黙って頷いた。そのまま、マグカップに口をつけ、黒い液体をすする。ふだん全く淹れないからか、うまい云々よりも、その蕩けるような甘さがまず、気になった。
 少し気まずい静寂があった。
 イチタカが、すうっと息を吸い込む。そして、言った。
「おじさん、お願いがあるの」
「なんだ」
「お金を、貸して欲しくて」
 なんとなく予想していたことではあったので、隙を入れずに、言葉を重ねる。
「いくら?」
 イチタカは一瞬黙って、言った。
「三十万円」
 これには、少し驚いた。とっさに、次の質問をしようと頭が回転をはじめたが、押しとどめた。はたから見れば、おれの表情は全く動いているように見えないはずだ。 
 とっさに、学費かな、と思った。だが、すぐに頭の中で打ち消す。イチタカは進学せずに地元の会社に就職することを早々に決めていたはずだ。それとも、気が変わったというのだろうか。
 なんにせよ、こういうときは、よけいな口をはさまずに相手に最後まで語らせるのが礼儀だ。そう思って、おれはイチタカの言葉のつづきを待った。だが、いつまで経ってもそのさきがないので、おれはテーブルの上のマグカップをもう一度手に取り、取手の部分を指ですこしなぞった。もちろん、そんな行動にはなんの意味もない。
「駄目?」
 イチタカが静寂が打ち破って出し抜けにそう言ったので、おれは少し吹き出してしまった。だが、目の前の、まっすぐにこちらを見つめる瞳は、寸分も動かない。いつになく真剣な表情で、こちらを見据えている。おれは緩んだ表情を打ち消し、マグカップをテーブルの上に置くと、ゆっくり立ち上がり、サンルームの正面の引き扉を開けた。気温は低いが、風がないので、さほど寒くはない。それに、イチタカの座っている位置は、入り口に置いた石油ストーブに近いから、そこまでは冷えないはずだ。
「タバコ吸ってもいいか?」
 そう訊くと、イチタカは静かに頷いた。おれは自分が座っていたソファの後ろにあるデスクの引き出しからタバコを取り出し、火をつけた。
 タバコの煙を吸い込み、窓の外の風景を眺めて、目を細める。都心のベッドタウンの一角にあり、建て売りで買ったこの家の庭はもともと狭かったが、どうせなら有効活用しようと、リフォームのときに増築して、このサンルームを作ったおかげで、庭はほぼ消滅し、ちょっとした家庭菜園をつくるぐらいの余裕しかない。幸運なことに、隣が公園なので日当たりは悪くはないが、庭の先にある低いブロック塀が視界の半分を遮っている。
 おれは煙を吸い込みながら、まだらな雲のあいまいな冬空を見上げ、三十万か、と思った。もちろん大金だが、二階にあるおれの書斎の金庫には、たぶん現金で二百万は入っているはずだ。そういえば、会社をつくった時にはじめてした借金も、たしか三十万だった。まだ大学を中退したての二十歳で、親戚の叔父に頼み込んで金を借りたのだ。だが、そんな金はひと月もしないうちに溶かしてしまい、また叔父に土下座して追加の五十万円を借りる羽目になったのだった。
「駄目かどうかじゃなくって、どういう目的なのか言わないと、貸せないよ、いっちゃん」
 おれは外を見つめたまま、当たり前のように言った。そしてそれはほんとうに、当たり前のことだった。
 振り返ると、イチタカはさっきと同じ表情をして、こちらを見ている。目が合うと、口を真一文字に結んで、少しだけ目を伏せた。
「駄目なの?」
 そんな表情をしたイチタカを見やってから、おれはまた外の風景に視線を戻した。
 簡単には言えないようなことなのか。まさか、いじめってことはないよな。いじめで三十万円を巻き上げるなんて話は、さすがに聞いたことがない。
 おれは覚悟を決めて、タバコを机の上の灰皿に押し付け、イチタカの前のカウチに座った。膝のあたりで手を組むと、イチタカは俯いていた顔を少しだけあげて、上目遣いでこちらを見た。
「いいか、いっちゃん。お金を貸すには、まず理由が必要なんだ。理由を言わないで貸すことはできないよ。それは相手がいっちゃんだからじゃない、誰だってそうだ。大金を何も言わずに貸すなんてことはない」
「じゃあ、理由を言ったら貸してくれるの」
「それは理由を聞いたあとで決める。返せるかどうかは、そのさらにあとの話だ」
「そんなのおかしい。お金を返せるかどうか、それがまず重要なわけじゃん」
「いや、理由のほうが大切だ」
「でも」
「『借りる理由』が必要なのは、ちゃんと意味があるんだ。お金を借りる気持ちにどれだけ真剣な気持ちが詰まってるか。その理由が、本当に真剣なものだったら、返済なんてどうにでもなるんだよ。そこはたいして重要じゃない」
 イチタカはまだ何か言いたそうに口を開いたが、少し頬をふくらませて、下を向いた。
「笑わない?」
「笑わないよ」
「ほんとに?」
「ほんとに」
「ウユニに、行きたいの」
「は?」
 おれが思わずそう反応すると、イチタカはしかめっ面をして、横を向いてしまう。おれはイチタカが言った言葉を、そのまま舌の上で転がしてみる。ウユニ? いま、ウユニと言ったのか?
 それが何を意味するのかは、とっさにはわからなかった。だが、数秒考えて、もしかしたらウユニ塩湖のことか、と思い至った。
 いつからかはよくわからないが、ネット等で有名になった、南米の観光地だ。チリだかペルーだか忘れたが、とにかくそのあたりの山の、浅い塩分濃度の濃い湖で、風がなく凪いだ日には、一面が鏡張りのようになる。よく、ウユニ塩湖で、まるで宙に浮いたような写真がインターネットにアップロードされている。最近は、ウユニ塩湖で撮影したミュージックビデオなども話題になり、人気を博している。実際のところ、ただの塩分濃度が濃いだけの浅い湖でしかないのだが、少なくとも日本では、いまや有名な観光地のひとつだ。
 おれはそれを聞くと、急に脱力してしまった。びっくりしたとか、呆れたとか、そういう感情ではなく、想定していた悪いほうの予感が外れて、肩の力が抜けた感じだ。思わず、ふっと吐息を漏らしてしまった。
「いま、笑った」
 目の前のイチタカがこちらを睨む。冗談っぽいいつもの睨みかたではなくて、本気で怒っているようだ。おれは顔の前で手を振る。
「いや、笑ってないよ」
「笑ったじゃん」
「ほんとに、笑ってない」
「…………」
 おれは反射的に立ち上がって、そうだ、お菓子持ってくるから、と言ってキッチンのほうに戻った。戸棚を漁ったが、普段は菓子なんて食べないから、数ヶ月前に酒のあてに買った柿の種と、手土産にもらったバウムウーヘンしかない。それを手早く皿に乗せてから、またサンルームのほうに戻った。
 イチタカはスマートフォンを出して、それをいじっていた。せわしなく指を動かしているから、ゲームでもしているのだろうか。おれが戻ってきて、テーブルの上に皿を置いても、そちらを見ようともしない。小さく音をつけているせいで、静かな昼下がりのサンルームに、ピコンピコンというかすかな電子音が響く。
 はじめて人に金を貸したのはいくつのときだったろうか。もちろん、学生のときに、ちょっとしたジュース代、カラオケ代を建て替えるぐらいのことはあった。だが、ある程度まとまった金をはじめて人に貸したのは、起業してそれなりに会社が軌道にのってきた頃に、知り合いが独立するというので貸した百万円が最初だ。たしか、二十代後半だったと思う。
 よく知っているやつだったし、周りからの信頼も厚く、事業プランも当時のおれが見る限りではちゃんとしたものだった。しかし、その数年後にあっけなく会社は潰れ、そいつは自己破産したのちに行方知れずとなった。それからもう二十年近く連絡をとっていない。これからもとることはないだろう。
 おれは三十代のときに会社を十億で業界最大手の企業に売却すると、その売却益を共同出資者と分け、エンジェル投資家として独立した。エンジェル投資家、略してエンジェルなどというが、ビジネスに関しては極めてドライにやっているので、名前だけが浮いている感じだ。具体的には、大学などの医療分野で先進性のある研究を見極め、出資して法人化し、新興市場に上場させて株式の売却益を得る。その繰り返しだ。もちろん数多くの失敗をしたが、幸運も味方してなんとか最初の資産を何倍かに増やすことができた。
 最初に人に金を貸したときはあっけなく失敗したが、それ以降、おれが主にやってきたのは投資だ。融資ではない。いかに社長が優秀だろうが、あくまでも出資なので、結果として会社が潰れればおれの持っている株式は紙くずになる。だが、本当に事業がスタートするところから、二人三脚で出資をしていくので、出資する金額と比較するとリターンは大きい。
 出資を決めるポイントはいくつかあるが、「人を見る」のがもっとも大事なのは、どんな投資でも同じだ。どんなに優秀であっても、情熱が感じられない経営者は信頼できないし、逆に情熱だけが空回りしていてもダメだ。いろんな指標を当てにはするものの、最終的な決め手は、「個人的に気にいるかどうか」にかかっている。逆説的だが、「株式が紙くずになってもいい」と思える相手にしか、おれは出資をしないのだ。
「いっちゃん」
 おれは目の前にいるイチタカに呼びかける。イチタカは目をスマートフォンから離さない。もちろん指も止めない。
 こうしてみると、本当にまだまだ子どもだな、とおれは思った。決して疎ましいわけではない。むしろ、微笑ましい気持ちのほうが強かった。
 正直なところ、三十万円というのは大した金額ではない。そりゃあドブに捨てるわけにはいかないが、イチタカのためなら、喜んであげられる金額だ。おそらく、イチタカに卒業祝いとしてあげた場合、その妹のフウカにも同じぐらいの金額をあげなければならないが、それにしたって合計して六十万円だ。卒業祝いとして、自分として許容できる金額ではあった。
 いや、おれは何を考えてるんだ、とかぶりを振る。そういう問題ではない。高校生にとっては、三十万円は、それこそ天文学的な金額のはずだ。それを、出せ、ではなく、貸してくれ、ということで、ここに来ている。貸してくれという金を、そのままあげるのは、いくら相手がイチタカとはいえ、失礼というものだろう。だいいち、ふたりの母親の圭子が、そんなことを許すはずがない。
「学校出たら、就職するんだろう? 社会人になって、お金を貯めてから、行けばいいじゃないか」
 イチタカはスマートフォンの電源ボタンを器用に人指し指をひねって押すと、テーブルの上に置いた。そして、おれから視線を外したまま、言う。
「お金はあっても、時間がないから。……こないだ、先輩にも聞いたけど、たぶん就職したら、そんな数週間とかの休みは、なかなか取れないと思う」
「パスポートは? 海外なんて行ったことあったか?」
「ない。これから取る」
「その金は?」
「三十万の中に入ってる」
「ひとりで行くのか?」
「もちろん」
 おれは小さくため息をついた。まあ、きっとここに来るまでのあいだ、さまざまな逡巡があり、いろんなことを考えてここまで来たのだろう。
「お母さんにこのことは話したか?」
 おれは静かに聞いた。イチタカは、黙って、こくんと頷いた。
「お母さんに話したのか?」
 おれは驚いて言った。イチタカはまた、黙ったまま頷いた。
 嘘だ、ととっさに思った。イチタカの母親、圭子がそんなこと、認めるはずがない。ましてや、おれから借金をして、まだ未成年のイチタカひとりで海外、それも南米に旅行させるなんてことを。
「お母さん、いま家にいるのか? 少し話がしたい」
「いまは家にいないよ」
「仕事か?」
「仕事っちゃ、仕事だけど。箱根に行ってる、社員旅行で」
「社員旅行?」
「ちょっと山奥にある旅館だから、携帯の電波も入らないって言ってた」
 こともなげにイチタカは言った。そしてまた視線をそらし、ソファ脇においてある観葉植物を指でなぞっている。
 母親を説得する前に、まずおれから金を借りて、味方につけようということか。金を借りる算段が整えば、母親を説得しやすくなるだろうし、両方いっぺんに相手をするよりはひとりずつ説得したほうが成功率は高い。一応、イチタカなりに考えてるんだな、とおれは少し感心した。
 だが、もちろん、そんなのは子どもの浅知恵で、ほとんどなんの意味もない。いずれにしても、いくら親しい間柄とはいえ、常識的に考えて、女子高生の旅費を、おれが保護者に無断で貸し出すなんてことはない。
 おれは自分のスマートフォンを取り出すと、圭子の電話番号を呼び出し、電話をかけてみた。だが、呼び出し音は鳴らず、聞き慣れた機械音が、かけた番号の先が電波の届かない場所にいるということを告げただけだった。
「いっちゃん」
「なに」
「なんで、ウユニに行ってみたいんだ?」
「なんでって……」
「友達とディズニーランドでも行けばいいじゃないか」
「もう何度も行ってる。それに、そういうことじゃない」
「そういうことじゃないって?」
「わからないなら、いい」
 イチタカは会話を打ち切ると、今度は短い自分の前髪をいじりはじめた。ショートボブというのだろうか、女の子にしてはかなり短い髪型だ。イチタカは、床の一点を見つめながら、短い自分の髪を人差し指と親指でゆっくりとねじっている。
 おれは自分の机の横にある本棚から、ある本を手に取った。それは風景の写真集で、何年か前に、書店で購入したものだ。一時期、仕事が立て込んでいたときに、活字を読むのが億劫になった時期があって、昔からの習慣で書店に足は向くのだが、本を買う気にはなれず、仕方なく写真集や画集を一冊ずつ買っていた時期があった。その頃に購入したものだ。
 書店の入り口付近にはたいてい売れ筋の本、特に自己啓発書のような本や、仕事術みたいなことを書いた本が平積みされていて、その奥には文庫本をはじめとした小説を売っているコーナー。参考書や実用書の棚がその後ろにあって、写真集や画集は、そのさらに奥まったところにある。いまどき、インターネットでどんな写真はイラストも見ることができる。わざわざ写真集や画集という形で購入する人間は、それぐらい奇特な存在なのだろう。
 おれはパラパラと記憶を頼りにページを繰っていく。水面をテーマにしたその写真集に、確か載っていたはずだ。
「ほら」
 目当てのページを引き当て、イチタカの前のテーブルの上に、写真集を広げて置いた。それまでつまらなそうにしていたイチタカが、身を乗り出すようにしてそれを見た。
 その写真は、確かに綺麗だった。夕暮れ時の時間帯なのだが、空の赤い部分と、まだ青い部分が混在している。入道雲のように立ち上る雲が立体的にオレンジ色に染まり、そのすべてが水面に反射している。あまりにも反射している度合いが強いので、そこに水があるようには見えない。とても幻想的な風景だった。たとえば、夢の中の世界で見る風景が、こんな風景だろう。
「すごい、おじさん、こんなの持ってたんだ。ウユニ好きなんじゃん」
 イチタカは嬉しそうに言う。笑うと、小さくえくぼが浮かんで、まる母親のようだ、とおれは思った。そういえば、こんな笑顔で笑うところを見るのは、小学生ぶりかもしれない。
「たまたま持ってる写真集に載ってるのを思い出しただけだよ」
 おれはぶっきらぼうに言う。事実、それはそのとおりだった。
「すごく綺麗」
 イチタカはじっとその写真を見ている。さっきの笑顔とはちがって、真剣な表情だった。
 たしかに綺麗だ。実際に見たら、これはどれほど綺麗なのだろう。しかし、その風景は、安っぽい絵葉書の写真みたいに、どこかありきたりで、チープなものでもあった。
 なんというのか、現実感がない。その写真は、まるで鏡の世界の迷い込んだみたいな世界観だったが、実際にそのような場所があるとはどうしても信じられなかった。
「いっちゃん」
「なに?」
「ここに、行ってみたいんだろ?」
「行ってみたい」
「でもなあ、こんなところ、実際にはないんだよ」
「は?」
「実際にはないんだ、こんな場所は」
「でも、写真には写ってるじゃん」
 イチタカは何を言っているのかわからない、というように、唇をとがらせる。
「写真はな、いっちゃん。いくらでも加工できるんだ。こんな綺麗な風景は実際にはなくて、ぜんぶ、この写真家に作られたものなんだよ」
「……意味わかんない」
「それに、いつでもこんなに綺麗な風景がみられるとは限らない。風がない、凪いだ日じゃないとこんなに綺麗な鏡張りの状態はみられないっていうしな。もちろん雨が降っていてもダメだ。これだけの理想的なコンディション、整うまで待つには何日もかかるらしい。カメラマンはプロだから、そういう理想的なコンディションが整うまで根気強く待って、やっと撮影ができるんだ」
 イチタカは、おれが言い終わるのを待って、パタンと写真集を閉じた。
「行ったこと、あるの?」
「え?」
「だから、行ったことあるの? おじさん」
「行ったことはないよ」
「だったら、それって、おじさんの、妄想ってことじゃん」
「妄想じゃ……」
「じゃ、仮に本当だとしてもさ。それって、行かない理由には、ならなくない?」
「だから、行っても無駄足になるかもって……」
「いいの」きっぱりとした口調でイチタカは言った。「行ってみたいんだから」
 まっすぐなその顔が、眩しくなかったといえば嘘になる。しかし、それだけまっすぐな気持ちが、できれば、もっと違うほうへと向いていてほしかった。
「返済はどうするんだ? 実家から会社に通うにしても、最初は返せて月に一、二万ってとこだろ。いきなり三十万も借金して、大丈夫なのか?」
 そこで、イチタカは口の端を持ち上げるようにして、笑った。
「おじさん、それ、おかしい」
「何が?」
「だって、返済できるのか訊くのは、貸すことを決めたあとだって、言ったじゃん」
「それは……」
「それに、理由が真剣だったら、返済はなんとでもなるんでしょ」
「…………」
「あたし、真剣だよ」
 やっぱりまっすぐな目でこちらを見る。
 おれは自分が簡単なミスを犯したことに気づいたが、イチタカと正面から向き合うために、ソファに座り直した。
 未成年が、ひとりで海外に行けるのかどうか、ツアーに入るのか、それはわからない。だが、問題はそこではない。ウユニ塩湖は、日本ではすでに観光地として有名になり、いろんな人がそこに行っている。写真集はもちろん、SNSにも、そういった写真で溢れている。いわば、手垢のついた観光地で、かつ、ひどくバーチャルな存在に思える。現実感がないというか、スマホ越しの世界に思えるのだ。まだ就職もしていないイチタカが、おれから借金をして、そんな作られた観光地もどきの場所に行って、本当に有意義な体験がもてるのか、おれは確信しかねるのだった。
 仕事柄、世界中のいろんな都市に行く機会がある。たいてい、仕事の前後にオフの日を入れていて、その気になれば、あちこちに観光に行くことができる。実際、海外出張に行きはじめた頃は、時間を見つけては観光地に出かけた。だが、そこで見られる風景は、日本の絵葉書やインターネットの画像で見られるものとほとんど同じだったので、実際に観光地に行っても、そこに自分が知っているものと同じものがある、それをただ確認しにいくだけの作業にすぎず、やがて虚しくなって、ホテルの部屋に閉じこもっていることが多くなった。実際のところ、投資家として起業家の話を聞くほうがよっぽど刺激的で、ただの「絵葉書の世界」でしかない観光地に行くことに、意義を見出せなかったのだ。
「いっちゃん……」
 おれはその先の言葉を紡げなかった。金を貸すのは簡単だ。なんだったら、そのままあげてもいい。しかし、それはどう考えたって、正しいことではなかった。
「もういいや」
 イチタカは言って、顔の前で手をひらひら振った。
「え?」
「もういいや。どうしたって、おじさん、お金貸してくれないみたいだし。よくよく考えてみれば、ただ家が隣だっていうだけなのに、お金を借りにくるなんて、さすがにちょっと図々しいよね。もう帰るよ」
 イチタカはそう言うと、ソファにつけていた身体を起こし、勢いをつけて立ち上がった。おれはそんなイチタカを見上げる。イチタカは立ち止まらずにサンルームの入り口まで歩いて行った。
「いっちゃん」
「なに」
 イチタカはピタリと足を止める。
「寒いから、風邪引くなよ」
 そう言ってやると、「……おじさんこそ」とイチタカは良い、廊下を走って行ってしまった。
 しばらくすると、また廊下を駆け戻ってくる足音がして、イチタカが顔だけドアの影から突き出すと、舌を突き出してあっかんべーをして、また廊下を駆け戻っていった。


   2


 機内の通路で、キャビンアテンダントがコップンカーと言いながら笑顔で胸の前で手を合わせている。その前を抜けるようにして、足早にボーディング・ブリッジに移った。その瞬間、埃っぽいような、粘着性のある熱気がおれを包みこむ。この瞬間が、最も「異国」を実感する瞬間だ。とにかく、日本を出ると空気が違うんだということを思い出させてくれる。
 ミャンマーのヤンゴン国際空港は思ったよりも綺麗なんだなとはじめて来たときに思った。長年にわたり軍事政権下におかれ、外国の門戸を閉ざしていたが、このところ急速に民主化がすすみ、あらゆるものが近代的になった。ODAで日本の金が入り、建設会社や土木関係の会社が、「アジアのラストフロンティア」を合言葉にこぞって進出してきているが、その実、現地に根付いてビジネスをしている日系企業はほとんどいない。日本企業といえば、大半は受注を取りまとめる商社、実際に施工を手がけるゼネコン、その日本人を相手に商売をする日本食店、それぐらいなものだ。せっかく郊外につくった日系主導の工業団地も、意外にかさむコストに採算が取れず、閑古鳥が鳴いている。
 おれはこの国に不釣り合いな黒いジャケットを脱いで腕に巻きつけ、入国審査を終えると、手早く預け荷物を受け取った。
「あ、大澤さーん、こっちです!」
 出国ゲートをくぐると、正面のフェンスの向こうに、健太郎が笑顔で手を振っていた。緑色のポロシャツを着て、真っ黒に日焼けしている。もちろんズボンは短パンで、足元はサンダルだった。これで、民族衣装のロンジーなんかを身につけていたら、現地人だと見間違えてしまうかもしれない。
「バンコクでトランジットでしたか? スムーズに来れました?」
「さすがにタイで遅延はないよ。中国じゃないんだから」
「そうですよね、大澤さん、上海から帰国するとき、二十四時間遅延したって話、いまでも覚えてます。あ、荷物持ちますよ、貸してください」
「いいよ、自分で持つから。車で来てるのか」
「当たり前じゃないですか。ちょっと待ってください、いま呼びますので」
 健太郎はポケットから無造作にスマートフォンを取り出すと、何やら外国語で話しはじめた。英語じゃないから、おそらくミャンマー語だろう。おれは英語は話し慣れてはいるがブロークンで、ビジネス上は特に問題がないが、会食となると話題によっては、少し言い足りないときがある。
 健太郎は電話で少し怒鳴りながら話すと、電話を切った。こっちです、と手招きするのでついていくと、埃まみれのトヨタのハイエースのところまで来て、健太郎はトランクを開け、おれのスーツケースをなかに押し込んだ。
「汚い車ですみません、後ろどうぞ」
 健太郎は快活に言い、後部座席のドアを開けるとおれをうながし、自分は助手席に座った。運転手は若いミャンマー人で、おれを見ると、軽く会釈をしてくれた。おそらく、現地で雇用しているスタッフだろう。
「暑くないですか? 先にホテル行きましょうか?」
 エアコンをガンガンにかけながら健太郎は叫ぶように言う。おれはそうしてくれと返し、シートに深く腰掛けた。仕事用に使っている車両だからか、車内はさまざまな機材、衣服などで溢れかえっていた。おれはそのうちのひとつを手にとり、表面をなでるように触った。
 健太郎は大学の後輩の弟で、十五年ほど前から知っている。当時、サッカー部に所属している高校生だったが、おれと後輩が飲んでいると必ず顔を出して、当時学校で流行っていた一発芸を披露してくれた。健太郎が大学に進学するとき、真剣な表情で、いつか必ず起業するので、そのときは相談させて欲しいと言われたのだった。
 おれはそのときは酒の席だということもあり、真剣に取り合わなかったのだが、数年後に大学を中退したという短い知らせが入り、健太郎が起業したことを知った。東大発のベンチャー企業で、東南アジアの貧困地域の健康診断を安価でおこなうことを目的に設立したらしい。はじめは補助金などをうまく活用してなんとかスタートを切ったようだが、事業を拡大するときにもっとまとまった資金が必要になり、それでおれに連絡が入ったのだった。
 おれは事業計画書を丹念に読み込み、投資の決断をした。だが、健太郎は情熱だけは人一倍あるものの、その時点で経営能力についてはからっきしだった。そこでおれは、健太郎が帰国するたびに、健太郎の会社の共同経営者ともども自宅に呼びつけ、みっちりと経営の講義をした。はじめは財務諸表もろくに読めないようなありさまだったが、健太郎はセンスはあったのか、なんとか事業を軌道にのせ、いまでは現地のフリーペーパーなどにもよく記事が載るという。こういう感覚はジジくさいと笑われるかもしれないが、おれは送られてくるそれらの記事を切り抜いては、自分のノートに貼り付け、折に触れてそれを友人に見せて自慢していた。
 いつの間にかうとうとしていたようで、着きましたよ、と言う健太郎の声で目を覚ました。おれが身体を起こすと、ホテルのボーイがスライドドアを開けてくれた。
「じゃあ、大澤さん、しばらくホテルで休んでください。七時ぐらいに来ますから。飯でも食いに行きましょう」
 助手席から窓を開けて健太郎はそう言うと、すぐに車とともに去っていってしまった。おれはスーツケースを先に引いていったボーイについていって、チェックインの手続きに入った。

 しばらくまどろんでいたようだ。ベッドに横になっていたおれは、電話の鳴る音で目が覚めた。
「大澤さん、ロビーで待ってます」
「わかった、すぐ行く」
 おれは手早くスーツケースを開けて着替えると、ロビーに戻った。さっきとは色違いの真っ黒なポロシャツを着た健太郎が、こちらに近寄ってくる。
「何かリクエストはあります?」
「任せるよ」
 おれが力なく言うと、どうしようかな、中華街でも行きますか、と独り言のように言い、ホテルを出た。おれはそのあとをついていく。
 外で飯を食うならここが一番気持ちがいいと健太郎が断言する、ヤンゴン市内の中心部にある中華街は、確かに路地に無数にテーブルが並び、現地人のみならず、中華系、タイ系などの人種が闊歩し、欧米人もたくさんいた。おれと健太郎は適当な席に座って、まずはビールを注文した。
「乾杯」
 おれがグラスを掲げながらそう言うと、健太郎はおれより少しだけ低い位置でグラスを重ね、一気に飲み干した。
「大澤さん、ここ最近、全然来てくれないんですもん。待ちくたびれましたよ」
「まあ、そう言うなよ。お前にならもう任せても安心だと思ったんだよ」
「またまたぁ。そんなこと言って、ほんとは来たくないだけのくせに」
 健太郎はそう言うが、昼間の厳しい顔つきから一変して、だらしない笑顔を浮かべている。高校生に戻ったかのようだ。
 おれの立場としては、あくまでも投資家だから、投資した会社に対してそこまで面倒を見る義務はない。実際、健太郎以外の他の案件については、金を投資しただけで、ほとんど足を運ばず、財務諸表だけをチェックしているところもある。しかし、おれはベンチャーキャピタルのように、経営判断だけで投資をしているわけではないから、健太郎のように、気になる案件については、積極的に口を出すようにしている。これは、個人的な感情が多分に入っているかもしれない。

「健太郎、一番最初に行った海外って、どこだったっけ?」
 ひとしきり仕事の話をしたあと、話題が途切れたタイミングで、おれはそう訊いた。健太郎は、呆けたような目で遠くを眺めている。おれは後ろを振り返り、視線の先を確認すると、胸の大きな中華系の娘が、露出度の高い格好でビールジョッキを両手に掲げ、忙しく立ち働いていた。
「はい? 何か言いました?」
「いや、だから、最初に行った海外はどこだ、って訊いてるんだよ」
「ケニアですね。確か、十九のときだったかな」
「ケニア?」
「そうです。まあ、期間としては、夏休みだけだったから、一ヶ月もなかったかな。確か、JICAの募集を大学で見かけて、それで行ったんだと思いますけど」
「それ、本当にはじめての海外だったのか?」
「そうですよ。大学の総務課に、パスポートどうやって取るんだって聞きに行って、笑われましたからね」
 懐かしそうに健太郎は言った。
「パスポート取るのに金かかるのも最初わかんなくて。結局、航空券代も貯金だけじゃ足りなくて、親父に頭下げて借りたなぁ。思えば、あれが俺のはじめての借金でしたね。大澤さんは?」
「おれは、バリに行ったのが最初かな。確か、三十手前だったと思う」
「へえー、意外ですね。奥さんとですか?」
「いや、違う女」
 はは、と軽い声で健太郎は笑ったが、すぐに真顔に戻った。健太郎は、亡くなったおれの妻とも面識がある。おれの妻がもういないことを、思い出したのかもしれなかった。
「楽しかったか? ケニアは」
「まあまあでしたね。行ってたのがすごい田舎だったんで、あまりにも何もないんでびっくりしましたけど。でもすぐ慣れて、なんとかやってました」
 エンジェル投資家なんてのをやってると、バックパッカーや、海外ボランティアに関心の高い学生と話す機会も多いが、基本的におれ自身にはそんなメンタリティはない。もちろん絵画旅行事情は現在とは違うが、仮にいま学生だったとしても、たぶん海外には行かずに学生生活を終えるような気がした。
「その後は?」
「そこから海外にはまって、バックパッカーやってましたよ。大澤さんも知ってのとおりですけど」
「ボリビアは?」
「え?」
「だから、ボリビアは?」
「ボリビアはないっすね。パナマ運河が見たくて、コスタリカとか、ニカラグアとかは行きましたけど。なんでです?」
「知り合いが、行きたいって言ってるんだよ」
 おれは少し言葉を濁していった。健太郎は、ただの世間話だと思っているのか、ちょっとトーンを落としたおれの声に気づかない。
「何しに行くんですか? ボリビアって何かありましたっけ?」
「あれだよ、ウユニ塩湖ってやつ」
 ちょうどそのタイミングで、さっき健太郎が視線を注いでいた中華娘が炒め物を運んでくる。健太郎は、中国語で「シェイシェイ」と呟いた。
「ウユニですか?」
「そう」
「ああ、ボリビアでしたっけ。ウユニかぁ。行ったことはないですけど、有名っちゃ有名ですよね。でもわざわざ地球の裏側まで行って見るほどかっていうと、ちょっと微妙な感じしますけど。それなら、まだ中国の四川省とかのほうがいいんじゃないかなぁ」
「だよな」
「大澤さん、次は南米ねらってるんですか?」
「は?」
「だって、大澤さんが行くって話でしょ?」
 いつの間にか話がすりかわっていて、おれは飲んでいたビールが少し気管支に入り、むせこんだ。健太郎が、手近にあったティッシュを手渡してくれる。
「違う違う、言ったろ、知り合いって行くって話」
「誰っすか? その知り合いって」
「誰でもいいだろ」
 おれが言葉を濁すと、健太郎は、理解不能、とばかりに首をかしげた。
「ちょっと話が見えないんですけど。女ですか?」
「性別で言うと、女だよ」
「なんですか、性別で言うとって。性別で女じゃない女っているんですか」
 健太郎がまたわけのわからないことを言って混ぜ返しそうだったので、おれは面倒になり、「わかったよ、じつはな、高校生なんだよ、その子」と言った。
「女子高生!」健太郎は目を丸くした。「大澤さん、娘さんいましたっけ? まさか、隠し子?」
「バカ。違うよ、家が隣だってだけだよ」
 おれは照れ臭さを隠すためだけにビールを思いっきり角度をつけてあおると、さっきの中華娘にジェスチャーでもう一杯のビールを頼んだ。笑顔も素敵なその子は、ハーイ、と快活に応じてくれる。
「別に、いいんじゃないですか。行きたければ」
「は?」
「いや、だから、行きたければ、別に行けばいいんじゃないですかね。そんなの、大人がどうこう言うことでもないでしょう?」
「でもお前、南米だぞ。そんなところに、日本人が一人だけでなんて……」
「スペイン語話せるんですか、その子」
「話せるわけないだろ」
「じゃ、たぶん大丈夫ですよ。変な日本語使ってくる人についてっちゃダメ、とだけ言っといたら。現地語ができないんだったら、そもそもそんなに無茶なことできないですもん。たいてい、南米でひどい目にあう日本人って、自称スペイン語の中級者ですからね。向こうから話しかけてくるやつにはついていかない。旅の安全の基本ですよ」
 言っているうちに、また別の料理が出てきた。似たようなタイプの炒め物だ。外国にくるたびに感じることだが、口にあうあわない以前に、油分が多すぎる。こういうときに、いかに日本の料理がヘルシーかということを実感できる。
「おれはそうは思えないけどな」
 おれが箸でそれらをつつきながら言うと、健太郎は何も言わず、ただニヤニヤと笑っていた。なんだよ、とおれが言うと、いや、なんか意外な一面を見たなと思って、と健太郎は言った。
「僕の知ってる大澤さんだったら、行きたきゃ行けばいい、で終わりですよ。大事な女の子だから、過保護になってるんですかね?」
「バカ」
「まあ確かにわかりますよ、よく知ってる子だったらそりゃ心配ですよね。でも、ウユニみたいな観光地だったら、しっかりしたツアーもあるし、そもそも現地に日本人だっていないわけじゃないから、案外なんとでもなると思いますけどね。高山病とか、そのへんのリスクはあるみたいだけど、それはまたちょっと別の話ですし。どっちにしても、若いんだから、なんとでもなりますよ、そんなの」
「お前と一緒にするなよ」
「でも本当になんとかなるんですって。僕だって、一回、中国の内モンゴルのあたりで、バス間違っちゃって、二日ぐらい途方に暮れたことありますよ。でも、なんとかなるんです、そういうとき。困ったら、なんとかするじゃないですか、人間」
 それは確かにそうかもな、とおれは口を動かしながら思った。いま自分がいるのがなんだかよくわからない国のよくわからない中華街で、中国人やらミャンマー人やら欧米人に囲まれているという状況になるのも一因かもしれないが、本当に、外国に行ってもなんとかなるのかもしれない、と思った。
「おれに借金して行くっていうんだよ」
「いくらですか?」
「三十万」
「三十万か、うまくやればなんとかなりますね。十万円で世界を旅する企画の本、知ってます?」
「意味あると思うか?」
「え?」
「いや、だから、三十万の価値があると思うかって訊いてるんだよ」
 健太郎もビールをあおりながら言った。「バカなこと言わないでくださいよ。あるに決まってるじゃないですか、そんなの」
「行く先が手垢がついた観光地だったとしても?」
「当たり前ですよ。三十万払って、絵葉書みたいなとこに行くのも経験ですよ、そりゃ」
 はやくも酔っ払ってきているのか、健太郎は歌うように言った。
「ひょっとしたら大澤さん、その子が大人になってきてるの、受け入れられてないだけなんじゃないですか」

 ホテルに着いたのは、それでも十一時すぎだった。健太郎も普段から遊び歩いているわけではなく、夜遊びできるところもそんなにないので、中華街の店をはしごして飲んだだけだった。
 うまく寝付けそうにないので、部屋の冷蔵庫にあるブランデーを出して、コーラで割った。もう少し若かったら、ホテルのバーにでも行くのだろうが、いまはそんな気力はなかった。
 今回の旅の予定はスカスカで、きょう健太郎と打ち合わせした内容がほとんどすべてだ。明日、健太郎らが運営している診察所を視察したら、もうそれで仕事のほとんどが終わる予定だった。そもそも、おれは投資をする立場なので、実際に経営をしているわけじゃない。ビジネスの主導権を握っているのは健太郎であって、おれはその動きを見守るだけでよかった。もし経営的にまずいことが起きているのなら、株主として助言をしたり、色々とアクションを起こすことができるのだが、いまミャンマーで何が起こっているのかを正確に把握しているのは健太郎なので、この状態でおれが何か言っても、ビジネスを加速させるという点においては足枷になる可能性のほうが高い。そうなると、ミャンマーに来る用事もほとんどないわけで、また日本から、定期的にメールやスカイプでやり取りするだけになるだろう。事実、ここしばらくはずっとそういう状態だった。今回の出張は、それを自分の目で確認しにきただけだ。
 少し早いがもう寝ることにして、おれはグラスをテーブルに置くと、部屋のあかりを消した。


   3


 成田空港は少し雪がぱらついていた。今回の旅では邪魔になると思って、コートを持ってきていなかったので、おれは足早に高速バス乗り場に向かった。バスの運転手にスーツケースを預け、車内に乗り込む。
 たったの半日の移動時間のあいだに、メールが山ほど溜まっていた。バスが動き始めると車酔いするので、発車までのあいだに見れるだけ見てしまおうと、重要なメールだけ返信しようとした。
 喫緊の案件のメールが来ていたので、どう返事をしようか、考えあぐねていると、不意にメッセンジャーアプリに通知が入った。おれはSNSはほとんどやらないが、メールアドレスを持っていない友人のために、一応アカウントだけは取得してある。
 通知をスライドして開いてみると、イチタカの母親の、圭子からだった。
『大澤さん、出張ご苦労様です。秘書さんに聞いたら、また海外に出張に出られているということだったので、メッセンジャーでご連絡しますね。明日の夜は、ささやかながら我が家でクリスマスパーティをやりますので、大澤さんもぜひぜひ遊びに来てください。イチタカも、フウカも、楽しみにしています』
 ちょうどそのタイミングでバスのドアが閉まり、ゆっくりとバスが動き始めた。まだバスの混み具合はまだらだが、もうひとつのターミナルにも寄るので、おそらく座席はいっぱいになるだろう。おれは急いで、『わかりました。いつもお誘いありがとうございます』とだけ返した。いまはじめてするようなやり取りだが、このイベント自体は毎年恒例だし、今年も三ヶ月も前から予告されていた。
 案の定、次のターミナルに着くと、わらわらといろんな人が車内に乗り込んできた。おれは座席に深く座り直し、荷物を膝の上に置く。たちまち座席が埋まって、満員になった。
 なんとなく、イチタカに会うのが気恥ずかしいような、気まずいような感じがするが、本当に楽しみにしてくれているのだろうか。
 バスは東京駅に向かって走り出す。その心地いい振動に身を任せながら、おれはいつの間にか、眠ってしまった。
 目を覚ますと、あたりは一面の雪景色だった。道路に積もるほどではないが、東京駅の八重洲口はすっかり雪化粧をして、様変わりしていた。雪が音を吸収するからだろうか、いつもよりも格段に静かだ。外に出ると、おれはコートを着ていないことを思い出し、ちょうどタイミングよく横を通りがかったタクシーを捕まえて、行き先を告げた。初老の人のよさそうな運転手に、いやぁ雪ですねと話しかけると、明日まで止まないそうですよ、と静かに答えた。

 たとえ雪でも、よほどのことがない限り、予定をずらすことはできない。明日の天気なんてどうなるのか誰にもわからないのに、問題がない前提で予定は組まれている。おれは翌日は朝からミーティングが入っていて、駅ビルの会議室にこもっていた。窓はあるがブラインドが閉まっていて、外の様子がまったくわからなかった。ミーティングを終えて、一階のロビーから外を見やると、一面の雪景色だった。人々は傘をさして、長靴などを履いているものの、いかんせん慣れていなくて、おそるおそる足を動かしている。
 雪を踏みしめるように歩いて、駅構内に入った。改札を抜けた瞬間からいやな予感がしていたが、ホームにあがると、予感は確信に変わった。電車が遅れて、ホームの上はひとでごった返していた。もはや、どこからどこまでが列なのかすら判然としない。電子ボードを見ると、電車は止まっているわけではないようだが、時間は表示されておらず、遅れているせいで乗れない人々が大量にホームに取り残されているのだった。おれは階段付近に立って、次の電車の様子を伺ったが、せっかく待ってもほんの数人しか乗りこめず、ここにいる全員が車両に乗り込むまでにはまだ相当な時間がかかりそうだった。
 歩こうかな、と時計を見ながら思った。ここから自宅まではたったのふた駅だ。いつまで来るかわからない、しかも乗り込めるのがいつになるかわからない電車を待つよりは、歩いて帰ったほうが早いような気がした。長靴のような気の利いたものは持っていないが、なんとかなるような気がした。

 おれは人混みをかき分け、濡れた階段を降りる。駅員に事情を説明して、改札の外に出たとき、ケーキはどうするのかな、と思った。確か、去年は、この駅ビルの中に入っているケーキ屋のものを予約していたはずだ。おれはスマートフォンを取り出し、圭子に電話をかけた。
「もしもし、大澤ですが」
「あ、大澤さん。大丈夫ですか、雪」
「思ったよりも降ってますね。これから帰るんですけど、ちょっと電車が止まってて、遅れるかもしれません」
「ああ、そうなんですね。こちらはゆっくり準備して待ってますから、くれぐれもお気をつけて」
「圭子さん、ケーキ、買ってあります?」
「ケーキですか?」
「ええ」
「一応……買ってあります。じつは、まだ取りに行ってないんですけど……。イチタカが持ってくる予定になっていて……」
「いっちゃんが?」
「そうなんですよ、あの子、せっかく大澤さんがいらっしゃるっていうのに、午後から用事があるって言って。たぶん、いま、その駅のそばにいると思います。ケーキ屋で、ケーキ受け取ってから帰るって言ってたので……」
「じゃあ、状況は同じだな。じつは、電車がなかなか来ないから、歩いて帰ろうかと思ってたんです。ちょっといっちゃんに連絡とって、二人で帰ります」
「すみません、お願いします。お気をつけて」
 おれはスマートフォンの画面をタップして通話を終了し、建物の外に出た。そこは二階の高さの広場になっていて、近くの百貨店に繋がる歩道橋になっている。地面に接触していないせいか、ひときわ雪が積もっているような感じがする。道行く人も、時折、バランスを崩しているようだ。そこここで鳴っているクリスマスソングが、雪の隙間からかすかに耳に届いた。
 おれはまたスマートフォンの画面をつけ、イチタカに電話する。だが、出ない。アナウンスによれば、どうやら電波が届かない場所にいるか、電源が入っていないらしい。いったん通話を切って、もう一度かけてみるが、それでも繋がらない。おれはスマホの画面を凝視しながら、大丈夫かな、と不安になった。
 だが、考えてみれば、いくら毎年恒例の行事で、圭子に誘われたとはいえ、クリスマスの夜に家族行事なんてのはさすがにちょっと悪いことをしたかな、とも思う。イチタカだって高校生で、しかも間も無く卒業しようとする歳だ。もう家族でクリスマスを過ごすなんていう状況でもないだろう。もしかしたら、いまごろ、ボーイフレンドと遊びに行ってるのかもしれない。
 圭子は、イチタカがこの駅のそばにいるかもしれない、と言った。だとすれば、電話なんかかけなくても、おれと鉢合わせになる可能性はある。気づけば、周囲はカップルだらけだった。おれは足早にケーキ屋へと向かった。

「いらっしゃいませー」
 当たり前だが、店内は人でごった返していた。ショーケースの前はほんの畳二、三枚分ぐらいの空間しかなく、いろんな人がひっきりなしに出入りしている。店員も、狭い空間に三人もいるので、かえって効率が悪いのでは、と思えるほどだった。
 おれは立っている人を搔きわけるようにしてレジに近づき、ポケットから財布を取り出す。すると、正面のレジで接客をしていた店員が顔をあげた。
 顔を合わせて、お互い、固まった。
 そこにいた店員は、イチタカだったからだ。
 他のどの店員もそうしているが、赤いサンタクロースの帽子をかぶって、服装も、サンタのコスプレのような服装だった。
 イチタカの少し日焼けた顔が、はたからみてもわかるぐらい、赤くなった。
 おれはすぐに真顔に近い状態の顔に戻し、「高瀬と申しますが」と、イチタカの名字を言った。イチタカは、「あ、はい」と珍しく動揺して裏返った声で言う。
「ケーキ、取りにきたんだけど」
 おれが言うと、「あたしが持ってくから」とイチタカは小さな声で言った。
「え?」
「だから、もうすこしであがるから。あたしが持ってくから」
「だったら、そこのドーナツ屋で、コーヒー飲んでまってるよ」
 客なのかどうなのかわからないおれとイチタカの会話に、横にいた男があからさまに顔をしかめるのがわかった。おれはそれだけ言うと、右手をあげ、店をあとにした。
 少し外に出ただけなのに、もう顔が冷たくなっていた。おれはほんとうにドーナツ屋でコーヒーを飲みながら、窓の外の、ライトに照らされた雪景色を眺め、いつまでもエンドレスで流し続けるクリスマスソングをぼんやりと聴いた。毎年毎年、同じ曲を延々と流し続けて、もちろん食傷ぎみではあったのだが、じっくりと腰が落ち着いた状態で聞くと、そんなに悪いものでもなかった。歌詞の内容をじっくり聞いてみると、ほとんどが待ち人が来ないという内容なので、なんとなく微笑ましくはあったが。

 コーヒーを飲み切らないうちに、店のドアのベルが鳴る音がして、厚めのダウンジャケットに身を包んだイチタカが店の中に入ってきた。手袋をして、靴は長靴ではないが、ブーツを履いている。おれよりはずっと重装備と言っていい。
「なんだ、早かったな」
「……ん」
 イチタカは短く返事をして、白い箱が入った透明の硬いビニールの袋を、丸テーブルの上に置いた。クリスマスケーキだろう。
「電車がだいぶ遅れてるんだ。歩いて帰ろう」
「……うん」
 今度は少しはっきりした声でイチタカは言った。ダウンジャケットの下にネックウォーマーをしていて、顔の三分の一が隠れている。おれは立ち上がり、イチタカの頭のうえに少し積もっている雪をはらってやった。イチタカは目をつぶって、されるがままにしている。
 ガラスのドアの外は、完全な銀世界だった。さっきまでの粉雪がぼたん雪に変わり、空からまっすぐにアスファルトに降り注いでいる。風はもうほとんど吹いてなかった。歩いて帰ろうと提案したのはおれだが、あまりの雪の積もり具合に気押されて、軒下からの一歩を踏み出せなかった。イチタカはダウンジャケットについていたフードをかぶると、雪の中を歩き始めた。イチタカのブーツの靴底のギザギザしたデザインが、新雪のうえに足跡として残った。
 おれは持っていた傘をさし、あわててあとを追いかけたが、地面がツルツル滑って、危うく転びそうになった。イチタカは振り返って、そんなおれの様子を見て、歯を見せていたずらっぽく笑った。
「笑うなよ」
 おれが言うと、「だって、バカみたい」とイチタカは言った。
「バカってことないだろ」
 おれが唇をとがらせると、「だってさ、今朝の天気予報でも言ってたよ。今日は雪だって。なのに、おじさん、ぜんぜん準備もしてないし」とイチタカは得意そうに言った。確かに、今日は雪だというのは今朝のテレビでもやってはいたが、どうせたいしたことはないだろうとたかをくくっていて、普段通りの服装で出てきたのだった。
 イチタカは少し小走りでおれの前を歩いていた。おれは右手に持ったケーキが崩れないように、そしてもちろん転ばないように、注意しながら歩いた。このぶんだと、家まではたぶん三十分以上はかかるだろう。イチタカだけで帰ったのなら、そんなにかからないかもしれないが。
 雪のおかげで、あたりはかなり静かだった。さんさんと降り注ぐ雪は、あたりの雑踏も、まるごと覆い隠してしまった。
「お母さんには、バイトのこと、言ってなかったのか?」
 少し落ち着いた様子のイチタカに問いかけた。イチタカは黙っている。
「お母さんには内緒にしたほうがいいだろ?」
「うん」とイチタカは短く言った。駅から少し離れ、ひと気がなくなった住宅街をおれとイチタカは歩き続ける。
「バイト、楽しいか?」
 どうしてバイトをしてるんだ? という質問を飲み込んで、おれは訊いた。
「楽しいよ」
 雇われの店員アルバイトなんて楽しいわけがない、とおれは思ったが、「どういうところが?」と聞き返した。
「うーん、よくわかんない」
「わかんないか」
「なんか、人の役に立ってる感じがするとことか」
 月並みな答えだと思ったが、けっこう素直な答えかもしれない、とおれは思った。だが厳密には、人の必要とされない仕事なんてないのだ。人に必要とされない仕事は、仕事として成り立たないから、やがて淘汰されていってしまう。
 ウユニに行くための旅費を稼ぐためにバイトをしているのだろうか。もしそうだとしたら、悪いことをしたなという気持ちがなくはないし、全然違う目的でバイトをしてるのなら、それはそれで残念な感じもする。だが、どうしてイチタカがバイトをしているのか、そんなことはおれにはもちろん関与できないことだった。
「おじさんも、バイト、してたの?」
「学生のときな」
「うそ、想像できない」
「これでもけっこう真面目にやってたんだ」
「なんのバイト?」
「マクドナルド」
「ほんとに?」
「こんなつまんない冗談言わないよ。いまもかもしれないけど、当時は人気のバイト先だったんだ」
「接客とかしてたの?」
「いや、夜間の、掃除係だった。時給もそっちのほうがよかったから……」
 おれはふと足を止めた。方向を見失ったような気がしたからだ。あたりは雪が降り積もっているので、いつもとはぜんぜん景色が違う。道を知ってはいるが、普段歩くわけでもないから、いつのまにか、道をはずれてしまったらしかった。
「どうしたの?」
 イチタカが振り向いて、不思議そうな顔でこちらを見る。
「……いや、道を間違えたな、と思って」
「別に間違ってないよ、こっちのほうがショートカットなんだよ」
「……そうか」
 おれはそう呟きながら、得意げに先導するイチタカの後ろ姿を見やる。イチタカのブーツのすぐあとに、新しい雪が積もっていく。おれの靴はもうグショグショで、足の指の先の感覚はすでにないが、それでも転ばないようにゆっくりと足を動かして、イチタカのあとをついていく。


   4


 クリスマスのあとから風邪を引いてしまい、寝正月となりそうだった。体調が悪いなと感じること自体は年をとるにつれて増えたが、そうなるたびにむしろ仕事量を増やして忘れようとするところがあった。熱が出るような本格的な風邪を引いたのは数年振りだ。クリスマスのとき、イチタカと雪の中を歩いたことが原因かどうかはわからない。だが、あの日を起点に体調が崩れたことは事実だ。
 十年前にとつぜん終焉を迎えた結婚生活がもたらした成果のひとつが、病人を看護すること、そして、病人として看護される経験、だろう。ひとりになったいまは、当然、ひとりでそのふた役をこなすことになる。おれは秘書のマツオカさんに買ってきてもらったポカリスエットで水分補給をし、梅干しが入ったおかゆをつくった。病院には行かなかったし、薬すら飲まなかった。身体のふしぶしは痛いし、熱が出て気分も悪かったが、この身体にさらに何かをいれて治す気にはなれなかった。どうせ年末に投資案件があるはずがないし、株式市場だって動きが止まる。心ゆくまで眠ってやるつもりだった。
「ほんとにいいんですか? 看病しなくて。知りませんよ」
 玄関先で、おれが頼んだ大きな買い物が詰まったビニール袋を渡しながら、明らかに大丈夫ではないおれを見て、マツオカさんは心配そうに言った。頼んだら、きっと彼女はつきっきりで看病してくれるだろうが、もしそんなことになったら、結婚したばかりの彼女の夫はなんていうだろう。
「ほんとに大丈夫だから。仕事はほとんどないんだから、ゆっくり寝てるから」
「でも先生、ウェブマガジンのコラムは、締め切りがあるので、ちゃんと書いてくださいね」
「わかったわかった」
 結局、年越しは、年越しそばどころか紅白を見ることもなく、ベッドで寝ていたらいつの間にか新年を迎えていた。イチタカの家は、年末から、福岡にある祖父母の家に帰省している。けっきょく、バイトをしている理由は聞けずじまいだったが、まあ、そんなことはどうだっていい。きっといまごろ、おじいちゃんおばあちゃんから、お年玉でももらっていることだろう。

 二日の朝、十時近くに目覚めたおれは、甚平を羽織って玄関先に出た。クリスマスのときの雪はまだ大部分が残っていて、道路の脇に固められたまま氷塊となっている。おれは凝り固まった肩をまわしながら、昨日取りそびれた郵便ポストに入っている年賀状の束を手に取った。
 昔と比べるとずいぶんと減ったが、それでもかなりのボリュームがある。年賀状のやりとりをしているのは古い友人がほとんどで、最近になって知り合った人は住所を知らないことが多いから、自然と電子メールになる。おれは今年は去年に比べるとずいぶん減ったな、と年々減り続ける年賀状を見ながらそう思った。
 リビングで年賀状の仕分けをした。ほとんどの年賀状には家族写真がついているが、おれに家族はいないので、おれからの年賀状はそっけない、干支のイラストだけの図柄だ。年賀状をめくっていくと、かつての共同経営者からのものも混じっていた。
 サイトウというのがそいつの名前だが、おれと設立した会社を売却したあとに、ひとりで自分の名前を冠した会社を興し、いまも社長として経営している。何度か会社にも遊びに行ったことがあるが、バリバリのワンマン会社で、社員はサイトウを見てあきらかに緊張しており、相変わらずだな、と思った記憶がある。
 非上場の会社なので、税金対策のためにありとあらゆる高級品を取り揃えていて、見た目は典型的な成金だ。まだ独身で通しているはずだが、フェイスブックを見るかぎり、いろんなタイプの女性と交流があるようだから、まだ人生を謳歌している最中なのだろう。
 客観的にみれば、投資家としておれは成功している部類に入るはずだ。だが、自分に投資の才能があるなどと過信したことは一度もない。おれの成功はほとんどが運によるものだと思っているし、そしてそれは、ほぼ間違いなく当たっている。何か投資家としての資質としておれが長けているものがあるかというと、期待をしない、ということかもしれない。必ず、投資をするときは、失敗してもいいと思って、やる。人に金を貸すときも、返ってこないことを前提に貸しているから、ガッカリしたり、怒りが湧いたりすることもない。
 だから、おれが投資家としてある程度成功しているように見えるのは、投資した対象が頑張ったからにすぎず、おれが特別に何かをしたということではない。もちろん、この投資をやるにあたっての元となる資金は、自分が経営していた会社の売却益だから、起業した直後は死に物狂いで働いて、それだけの価値をつくりあげた。しかし、それを売り払って、金にしたとたん、おれはからっぽになった。投資家というと聞こえはいいが、実際のところ、手にした金を見込みのありそうなところに、適当に理由をつけてばら撒いているだけで、おれ自身がなにかをしたということはなく、空虚なことに変わりはなかった。
 おれはテーブルのうえの灰皿を自分のほうに寄せると、ライターを手に取り、サイトウの年賀状をその上で燃やした。もちろん、そんなことにはなんの意味もないが、それを手元に置いておく気分にはなれなかった。
 
 ピンポーン、と聞き慣れたインターホンの電子音がして、おれは反射的に振り向いた。誰か来たようだ。こんな正月に来客の予定はないから、きっと宅急便だろう、おれはそう思い、棚の上に置いてある三文判を持って玄関へと向かった。もしかしたら秘書のマツオカさんかもしれないな、と考えながらスリッパを履き、ドアを開けると、そこに立っていたのは、クリスマスのときと色違いのダウンジャケットを着たイチタカだった。
「え?」
 意外な人物の来訪におれが目を白黒させていると、ガサッと音を立てながら、イチタカが白い大きなビニール袋を黙って差し出した。
「なに、これ」
 それを受け取り、中身を確認すると、ポカリスエット、熱冷まシート、タオル、その他こまごまとしたものが入っていた。ビニール袋は、近くのドラッグストアのロゴが入った、厚手のものだった。
「買ってきてくれたのか?」
 そう言うと、イチタカは首を振り、「そこに置いてあったよ」と玄関の横を指差した。おれはドアを抑えていた手を離して足を抑えて、袋の中を漁った。短い便箋がでてきた。やはり、秘書のマツオカさんからの追加の差し入れだった。おれが寝ていると思って、玄関脇に置いていくと書いてあった。
「さっき、家出るときに見えたから、一応知らせといたほうがいいかなって。じゃ、そういうことだから」
 イチタカは軽く手をあげて、門のほうへと歩いていく。
「イチタカ」
「え?」
「あけましておめでとう」
 おれがそう言うと、イチタカは少し驚いたような顔になり、「おめでとうございます」と小さくお辞儀をした。
「もう福岡から帰ってきたのか?」
 おれが聞くと、イチタカはこちらに向き直った。
「ちがうよ。ずっと家にいたよ、あたし」
「え? ほんとに?」
「うん。春からの内定先の会社、年中無休だから、バイトとして入れてほしいって頼んだら、いいってことになった」
「へえ」
「お母さんとは、相当、もめたけど」
 イチタカはそう言うと、少し顔をしかめた。おそらく年末にあったであろう、やり取りを思い出しているのかもしれなかった。
「大丈夫なのか? ひとりで」
「うん、当たり前じゃん」
「そうだ、いっちゃん、ちょっと待って」
 おれがそう言うと、あたし、もう行かないといけないんだよ、遅刻しそうで、とイチタカは言った。
「すぐ戻るから」
 おれは慌てて家の中に入ると、三文判の横に置いてあったポチ袋を持って、また玄関に戻った。イチタカは、玄関の中に入って、不思議そうな顔でこちらを見ていた。
「ほら、お年玉」
 それを手渡すと、イチタカは嬉しそうな表情をしたが、すぐに顔を赤くして、照れ隠しのためか、ふくれっ面をした。
「子どもみたい」
「いらないのか?」
「……いるけど。でも、来年から、学生じゃないから。もういいから」
 イチタカはくるりと背を向けて、「でも、ありがとう」と言った。
「……欲しい金額には、届きそうなのか?」
 イチタカは背を向けたまま、「ウユニのこと?」と言った。
「ああ」イチタカには見えないが、おれはうなづく。
「エアチケット代は、おこづかいの貯金と、バイト代でなんとかした。あと、パスポートのお金とかも。でも、向こうのホテル代とか、ぜんぜん足りないから」
「じゃあ、お年玉は臨時収入だ」
「……それは、うん。だから、ありがと。でも、なんとかしてみる」
 イチタカは玄関を開けて門へと歩いていく。
 おれは、イチタカの背中を見ながら、自分が投資を決めるときの大原則を思い出した。口先だけじゃなくて、本当に走り出した人間は、まず失敗しないし、失敗したとしても、すぐに立ち上げれるのだ。
 おれは腕組みをしながらイチタカを見送り、「本当に困ったら、声かけろよ!」と強めの口調で言った。
 イチタカは門を閉めながら、一瞬こちらを振り向き、「なんとかするから!」と叫んだ。そして、そのまま、勢いよく走り出した。


(完)

振り向きざまに走る(78枚)

執筆の狙い

作者 やひろ
153.157.116.165

お世話になります、やひろと申します。短編を書いてみましたので、投稿させていただきます。

内容としては、投資家の男性と女子高生の話です。テーマとしては、「自分探し」「自立」あたりになるかと思います。

本作品の課題:
1.自分と年齢の離れた人物を、なるべく違和感なく描く。50代と10代の人物のお話です(当方、31歳)。
2.地の文と会話のバランス。とくに、独白を入れすぎる傾向にあるので、少し調整してます(これでも多いかもしれません)
3.わかりやすい情景描写。違和感なく、流れを阻害しない程度に、しかし綺麗に描写できているか。

ご意見、ご指摘いただければ幸いです。よろしくお願いします。

コメント

四月は君の嘘
219.100.84.36

書き出しっから、「 、」の位置がマズいのと、

記載順がオカシイと思う。



   (原文ママ)

来月、十八歳になるイチタカがうちのチャイムを鳴らしたのは、映画を見ながらソファでうたた寝をしていた、ある師走の日曜日の午後のことだった。ピンポーン、と聞き慣れた電子音が聞こえたとき、目を開けたが、部屋を暗くしてあるせいで、とっさにいまが何時だかわからなかった。映画はちょうどラストシーン、エンディングのスタッフロールが流れはじめるところだった。


   (問題箇所指摘をかるく検証……)

・来月、十八歳になるイチタカがうちのチャイムを鳴らしたのは、映画を見ながらソファでうたた寝をしていた、ある師走の日曜日の午後のことだった。

最初の「 、」からしてヘンテコ。。
そんで、「文章内の時制」がおかしすぎる。。
「来月」は未来だし「だった」は過去。混在はできない。


・ピンポーン、と聞き慣れた電子音が聞こえたとき、目を開けたが、部屋を暗くしてあるせいで、とっさにいまが何時だかわからなかった。映画はちょうどラストシーン、エンディングのスタッフロールが流れはじめるところだった。

説明があんまりまだるっこしくて、くどくどしいし、
やっぱり【時制】が一々ヘンテコ。。

 “聞こえたとき” “とっさに“ “何時だか” “映画はちょうど” “はじめるところだった”

↑ 時間に関する記載が、とにかく団子になって羅列されすぎてて、違和感ばりばり。

そんで「時系列」からすると、ここの部分の記載の方が「前の文章(書き出しの一文)より、前に発生していること」だし。。
そんで、これが「同じ段落に混在しちゃってる」あたりが、頂けない。。



冒頭は大事なんですよー。
「読者をすっと引き込む」ように、ねじれなく・すんなり書いた方が 得。

かけうどん
49.98.131.184

独白はたしかにくどいと感じました。たとえば写真集を買っていた理由などはイチタカに訊かせるとかで済ませられると思います。1だけしか読んでないので全体の感想はまた書きます。

やひろ
119.104.20.211

四月は君の嘘 様

お世話になります。コメントありがとうございます。


>・来月、十八歳になるイチタカがうちのチャイムを鳴らしたのは、映画を見ながらソファでうたた寝をしていた、ある師走の日曜日の午後のことだった。
>最初の「 、」からしてヘンテコ。。
>そんで、「文章内の時制」がおかしすぎる。。
>「来月」は未来だし「だった」は過去。混在はできない。
>・ピンポーン、と聞き慣れた電子音が聞こえたとき、目を開けたが、部屋を暗くしてあるせいで、とっさにいまが何時だかわからなかった。映画はちょうどラストシーン、エンディングのスタッフロールが流れはじめるところだった。
>説明があんまりまだるっこしくて、くどくどしいし、
>やっぱり【時制】が一々ヘンテコ。。
>そんで「時系列」からすると、ここの部分の記載の方が「前の文章(書き出しの一文)より、前に発生していること」だし。。
>そんで、これが「同じ段落に混在しちゃってる」あたりが、頂けない。。

冒頭部分について、ご指摘ありがとうございます。最初の「来月」は「十八歳になるイチタカ」にかかっているため、いま現在の部分にかかってはいません。
このあたり、リズム重視で、自分としてはしっくりくる流れだったんですが、やはり文法的におかしいのですね。時制についてあまり考えていなかったので、是正します。

ご指摘ありがとうございました。

やひろ
119.104.20.211

かけうどん 様


お世話になります。コメントいただきありがとうございます。

>独白はたしかにくどいと感じました。たとえば写真集を買っていた理由などはイチタカに訊かせるとかで済ませられると思います。1だけしか読んでないので全体の感想はまた書きます。

そうですね、読み返してみて、写真集のところは少し削れるかなと思いました。この短編の作風として、独白がメインになるのは避けられないのですが、もうすこし読みやすくできるように文章を削って、工夫します。

ありがとうございました。

夜の雨
60.41.130.119

「振り向きざまに走る」タイトルはラストからとったようですね。ヒロインの照れ隠し、まあ、仕事に遅れそうだし、というのもあるけれど。ほかにタイトルがありそうにも思いますが。

作品全体では主人公「大澤」の「投資に絡んだ仕事」の話が中心ですね。かなり詳しく書いてありました。
ヒロインのイチタカについてですが、「自立」に向けた行動は書かれていたように思いますが、「自分探し」が書かれていないと思いました。
「1」の「ウユニ」に「自分探し」の内容が書かれるべきだと思いますが、核心に入らないまま、終わっています。
むしろ「2」のミャンマーでの大澤と健太郎の話に、「自分探し」の話題があったように思います。
「思います」というのは、健太郎の話も「自分探し」の話を、深くしているわけではないとうことです。
ちなみに大澤がイチタカのことを気にかけて、健太郎に海外の旅(自分探し)の話を尋ねたということだと思います。

●御作で一番大事なことを書いておきますが「大澤」の「自分探し」のことをどうして書かなかったのですか。
こういったテーマの場合はヒロインのイチタカの「自立」と「自分探し」と見せかけておいて、主人公である「大澤」の「自分探し」そして「自立」を書けばよいと思います。
「自分探し」←「投資に絡んだ仕事」の話で、大澤の「自分探し」を書く。人間性を書くということ。

「自立」 ←妻が亡くなっているので、私生活の面で自立できないでいるかもしれないので、妻の面影を描きつつ、大澤の自立をさりげなく書く。


1.自分と年齢の離れた人物を、なるべく違和感なく描く。50代と10代の人物のお話です(当方、31歳)。

「大澤」(主人公)50代
こんなものですかね、というのは、話の内容だと『「大澤」(主人公)50代』といわれると、ああ、そうですか、と言った感じです。
作者さんが大澤を50代に描きたいのだったら、50代が特定できる話の内容を書く必要があります。作品の時代を書いて、50代だと20代のときにどんな歌が流行っていたとか当時の話を織り込むとか。
ほか、話の中で年齢の会話(エピソード)をするとか。
外見描写とかも必要かも。

イチタカ(高校生、卒業)
「イチタカ」は、10代でもちろん違和感がありませんでした。
話の中で高校生とかそれに絡む話がよく出ていました。
クリスマスのバイトとか、お年玉とか。

2.地の文と会話のバランス。とくに、独白を入れすぎる傾向にあるので、少し調整してます(これでも多いかもしれません)

あまり気が付きませんでした。「イチタカ」というややこしい名前に気が取られていたので。
カタカナでも結構ですが、わかりやすい名前でお願いします。

3.わかりやすい情景描写。違和感なく、流れを阻害しない程度に、しかし綺麗に描写できているか。
雪の描写などがよく描かれていたと思うけれど、「インパクト」のある描写がなかったように思いました。普通に読めました。

―――――――――――――――――――――――――――――
イチタカの家でクリスマスということなのですが、徒歩ではなくて、どうして、駅からタクシーに乗らなかったのですか。

―――――――――――――――――

>おれは首を横に向けて、玄関のカメラ映像のディスプレイを見る。魚眼レンズの歪んだ映像は、顔の半分近くをマフラーに埋めた、ショートカットの女の子を映し出していた。<


 >ピンポーン、と聞き慣れたインターホンの電子音がして、おれは反射的に振り向いた。誰か来たようだ。こんな正月に来客の予定はないから、きっと宅急便だろう、おれはそう思い、棚の上に置いてある三文判を持って玄関へと向かった。<
――――――――――――――――――
「1」ではインターホンが鳴った時に「玄関のカメラ映像のディスプレイ」で、確認しているのに、「4」では確認していないというか、「玄関のカメラ映像のディスプレイ」が、ないみたいな表現ですね。

―――――――――――――――――――――――――――――――――――

「1」を読んだときに思ったのですが、ラストで作品が閉じている(終わった)ように感じました。2、3、4へと続くような感じがしなかった。
それで、読むのを一日中断しました。
中断後、読み始めると、すらすらと読めましたけれど。

御作、主人公である大澤の「投資に絡んだ仕事」の話、かなり書き込んでありました。
これだけの内容、簡単に書けないと思います。
作品の背景として読みましたが、ある意味「投資に絡んだ仕事」が、題材ではないかと思ったくらいです。
だから、これに大澤の「自分探し」に絡んで人間性を書いたらどうかと思いました。
昔の大澤との共同経営者の男から年賀状が届いていましたが、それを大澤は燃やしました。
このあたりに大澤の人間性が現れていますので、こういったエピソードの積み重ねから「自分探し」が、書けると思います。

お疲れさまでした。

やひろ
119.104.32.232

夜の雨 様


お世話になります。ご丁寧なコメント頂き、誠にありがとうございます!

>「振り向きざまに走る」タイトルはラストからとったようですね。ヒロインの照れ隠し、まあ、仕事に遅れそうだし、というのもあるけれど。ほかにタイトルがありそうにも思いますが。

この作品はまずタイトルを思いつき、それにあわせて物語をつくっていきました。振り向きざまに走っていったのは、照れ隠しというよりは、風邪をひいている大澤のことを気にかけはするものの、それを気にせず前に向かって走っていく、的な意味合いのタイトルになっています。

>作品全体では主人公「大澤」の「投資に絡んだ仕事」の話が中心ですね。かなり詳しく書いてありました。
>ヒロインのイチタカについてですが、「自立」に向けた行動は書かれていたように思いますが、「自分探し」が書かれていないと思いました。
>「1」の「ウユニ」に「自分探し」の内容が書かれるべきだと思いますが、核心に入らないまま、終わっています。

ここらは確かに弱い部分です。しかし、書きながら思ったのですが、10代の女の子だったら、いくら親しい相手とはいえ自分の胸のうちを大人の男に話すかな、と感じたので、このような形になりました。ちょっとこういう投げ出し方をするのはアレかもしれませんが、10代の子を50代の男が完全に理解するのは無理なんじゃないかと……。とはいえ、大澤も遠慮しすぎだと思うので、もう少し突っ込んだ感じにしたほうが話として起伏があるかもしれません。再考します。

>●御作で一番大事なことを書いておきますが「大澤」の「自分探し」のことをどうして書かなかったのですか。
>こういったテーマの場合はヒロインのイチタカの「自立」と「自分探し」と見せかけておいて、主人公である「大澤」の「自分探し」そして「自立」を書けばよいと思います。
>「自分探し」←「投資に絡んだ仕事」の話で、大澤の「自分探し」を書く。人間性を書くということ。
>「自立」 ←妻が亡くなっているので、私生活の面で自立できないでいるかもしれないので、妻の面影を描きつつ、大澤の自立をさりげなく書く。

投資の仕事というのは、「自分では何もしないけど、何かをする人を見極めてお金を出す」ことだと思います。大澤は二十代の後半で会社を売却し、ある意味「余生」がそこからはじまり、人生の大半を「からっぽ」なまま過ごしてきてしまった、要するに「自分」がない、という状態なんだと思います。それが、健太郎やイチタカと接するときに、ある種の劣等感のようながにじみ出てしまうのかなと。でも、「本来こういう自分になりたかった」とか、そういう要素は入れるべきかもしれませんし、自立うんぬんについても書く。そのほうが物語としてメリハリが出るかもしれません。

>作者さんが大澤を50代に描きたいのだったら、50代が特定できる話の内容を書く必要があります。作品の時代を書いて、50代だと20代のときにどんな歌が流行っていたとか当時の話を織り込むとか。

そうですね、ここは弱いです。追加できる部分だと思いますので、追加したいと思います。モデルというか、ぼんやりイメージした感じでは、作家の橘玲を想定していましたので、そこらへんの年代が特定できるピンポイントな要素を盛り込みたいです。

>「イチタカ」というややこしい名前に気が取られていたので。
>カタカナでも結構ですが、わかりやすい名前でお願いします。

すみません、なんでこんな名前なんでしょうね(笑)。普通な名前じゃつまらないと思ったからだと思うんですが……

>雪の描写などがよく描かれていたと思うけれど、「インパクト」のある描写がなかったように思いました。普通に読めました。

「インパクトある描写」は、小説だとどう表現できるのか、僕はあまり引き出しがありません。少し研究してみます。

>イチタカの家でクリスマスということなのですが、徒歩ではなくて、どうして、駅からタクシーに乗らなかったのですか。

大雪だから、タクシーは動かないか、あっても混雑してるかな……と。これは、混雑してる描写をひとつ入れれば解決しそうですね。

>「1」ではインターホンが鳴った時に「玄関のカメラ映像のディスプレイ」で、確認しているのに、「4」では確認していないというか、「玄関のカメラ映像のディスプレイ」が、ないみたいな表現ですね。

書いているときに気付いたのですが、「まあ見ないこともあるかな」と流してしまいました。演出的には、4のほうが大事なので、1においてカメラのディスプレイ描写を削ったほうがいいかもしれません。ご指摘ありがとうございます。

>「1」を読んだときに思ったのですが、ラストで作品が閉じている(終わった)ように感じました。2、3、4へと続くような感じがしなかった。
>それで、読むのを一日中断しました。
>中断後、読み始めると、すらすらと読めましたけれど。

いきなり場面も外国に変わりますし、たしかに閉じてる感じがあるかもしれません。もっと続きが気になる=宙に浮いてるような感じにして、「続きどうなるんだろう」思わせられるようにしたいです。1の最後の会話を工夫する必要があるかもしれません。イチタカがあっかんべーするところが書きたいのは変更できないんですが(笑)

>御作、主人公である大澤の「投資に絡んだ仕事」の話、かなり書き込んでありました。
>作品の背景として読みましたが、ある意味「投資に絡んだ仕事」が、題材ではないかと思ったくらいです。
>だから、これに大澤の「自分探し」に絡んで人間性を書いたらどうかと思いました。
>昔の大澤との共同経営者の男から年賀状が届いていましたが、それを大澤は燃やしました。
>このあたりに大澤の人間性が現れていますので、こういったエピソードの積み重ねから「自分探し」が、書けると思います。

大澤的には「大金を払ってウユニに行く」というのは「無駄な行為」でしかないんですが、イチタカはそれに価値を感じて、まっすぐに進んでいる。なので、大澤はどうしても投資としての費用対効果を考えて生きるくせがついているんだと思います。長年の自然な思考回路というか、そういうものが出来上がっているのかなと。だけど、「まっすぐに生きる」こと自体が、価値あることなんだ、そういうのをこの作品で表現したいと思いました。

エピソードの積み重ねで人間性を表現する。当たり前のことなんですが、感情の動きとかだけで書いても、動きがなくて面白くはないですね。

すみません、あまりまとまってないんですが、丁寧に読んで感想いただけてとても嬉しいです。ありがとうございました!

弥々丸朗
106.161.218.48

感想らしくほのめかしたところで所詮聞く耳持つタイプの人ではなさそうだし、前作もナナメに読んではみたけれど半分で挫折した太宰一次落ちが言うことなので何の当てにもならないことなんですけど、それ言ったらこんなとこ何の価値もへったくれもなくて当たり前だと思うので個人的に不服らしきことを少しばかり。

上の人の指摘が有用でありがたいなら、書き手の視座とか表現方法からそもそも書き手自身の意図を扱い損ねてる気がしてしまうし、そもそも客観の利かない人なのかなあ、なんて疑わしさを思いつきたくなります。
地と台詞のバランス、情景描写、ってことですけど、前作でもそう、”どこから読んでも大丈夫”みたいなことで無駄も許容する的なことをおっしゃられていた記憶でいるんですけど違っていたならすみません、でも所詮無駄ごと多すぎてまともに読み込みたい気がしないです個人的には。
繰り返してしまうんですけど、上の人の指摘が本当にありがたいつもりならちゃんとおハナシに傾注してもっとシンプルに書けないとたぶんエンタメとして不案内のような気がしてしまうし書き手のエゴ臭さは言うまでもないんですけど、つまり筆致が平坦かつ粘質でサービス感じないですよね、個人的には。
そんなこと言われるのが不愉快なら不愉快らしく、持ち前の自分語り好きらしく語りの精度をもっと上げないと何だか見栄が念仏らしくダダ流れてるだけみたいで退屈だし、上の指摘に”ありがとう”とか嘘も大概でひねくれすぎな気がするし、書き足すって、そういうことではないと思うんですよね個人的には。

つまり、中途半端だよな、この人。

って、あたしは思ってます。
詳細に事態を眺めて表したがる人らしいことは感じるんですけど、あたしはあなたが見通すらしい人物像のようなものが逐一信用ならない気がしています。
前のやつも、ああいう手前都合で転がるおハナシになるのは書き方とか構成とかそんな大層な理由なんかではなくて、もっとシンプルに、たぶん人を眺めるとか感じるとか、単純には興味ってことでも全然いいはずのような気がするんですけど、そういうところが良くも悪くも軽薄だよな、っていう印象を個人的にはもっています。

アーリーリタイアの有能ナイスミドルが自嘲こそ惜しまず、っていう人物像らしいんですけど、それにしても所詮JKの夢見がちなお悩みに対する逡巡にまったく貫禄感じさせなさ過ぎな気がするし、それがリアリティと言い張りたいならただの普通でいちいち読みたがる価値なんてないから端折っちまえと思うし、同僚とのいきさつとか世界情勢へったくれ、長々とそんな手はずもないと格好つかないようなナイスミドルなんて、所詮キャバクラでじゃぶじゃぶ遊ばれて甲斐性肥やした気がしてるだけの守銭奴ほっかむり愛車アルファロメオとか、なんか努めてちっさいっていうかむしろ見栄坊臭いっていうか、ちょっと言い過ぎか、つまり何だかようするにキャラ以前にただの不出来でしかないっていうか、単純に魅力ないからおハナシそのものも信用して読む気になれないんですよね、個人的には。

それって、前作にも共通した印象だからこんな口悪く言ってるんですけど、たぶん、書き方平坦なわりにその実、書くことそのものには結構落ち着きがないっていうか、浅く忙しく、見通し甘いような印象がなんかしてるんですよね、個人的には。

あなたのハナシは基本都合が良くてたぶんつまらないんですよ。
整うことばかりが気持ちいいなら勝手にしたらいい、っていうかそんな言い方ないか、それがつまりあなたっていう書き手の欲求に違いないんだから励んだらいいんですけど、あたしはそんなものいちいち読みたがる趣味ないのでどうなのって単純に思ってしまうんですけど、たぶんあなたこそそんなものを冷静に大切に眺めてなくないですか、ということを言ってるつもりなんですけど口悪いから伝わらないですよねすみません。
自分ではそんなつもりはない、とか言われてもそんなことこそ知るか、なので読んでそんな気がしてしまったっていう失礼なハナシです。


作品は書き手のものなのか、読み手のものなのか、みたいなまじなハナシで近頃アタマ割れそうになって尖ってます。
失礼だったら謝ります。


でもあたしはやっぱりつまんないといつも思ってます。
実績ある人に何言ってんの、って自分でも思うんですけど、信じることはお互い様だから、そうやって辿るしかないですもんねたぶん。
言うだけの馬鹿は勝手に情けなく吼えてろ、って普通に思ってます。


あたしも自分の主義にはうるさいですから、気持ちはわかります。
書き方教室程度にうなづいてるようなやつなんか所詮アホだよな、ってつい思ってしまったもので。

やひろ
153.249.26.217

弥々丸郎様

.コメントありがとうございます。読解力が低く、おっしゃっている主旨がよくわからなかったので何回か読ませて頂きました。

作品の内容については、確かに無駄は多いしすっきりしない内容にはなってます。もちろん、自分では「これでいい」と思って書いてます。というか、自分で直すべき箇所を自覚しながら小説なんて発表しませんよね? もちろん、結果として「これじゃダメだな」と思うことは何百回もあるんですけど、少なくともここに投稿する前に何回か推敲してますし、「これでいこう」と思って投稿してます。むろん、執筆段階ではここに投稿するものより数段ひどいですし、これでもよくなったほうだと自分では思ってます。

ただ至らない点というか、客観的に見てどうなのか、という部分については、人の目をくぐらせないとわからないものだし、「この部分が浅い」「軽薄だ」と言われれば「そうなのかな」と思います。感想にいちいち「ありがとう」というのが気に障ったようですが、少なくとも私はなんの賞もとってないアマチュアなので、少なくとも読んでもらって、指摘もらっただけで「ありがとう」と感謝はします。

ただ、ここで主義主張をしたり反論したりして自分の正当性を主張しても「鍛錬場」という場所の性質上、無意味だと思うので、とりあえずそういう意見があると「受け止め」て、「感謝」はします。そのうえで直すかどうかは別の話で、反映させるときもあるし、しないときもあります。物書きなんだからそれは当然です。他人の意見をそのまま反映させるわけがないでしょう?でも、前作も、前々作も、ここに投稿して指摘してもらって「そうかもな」と思った部分は直してます。無料でアドバイスもらってるのですから、皆様には感謝しています。

作品がつまらない、ということについては、そうですか、としか言いようがないです。わざとつまらなくしてるわけではなく、自分としてはいちばん「面白い」と思って書いてるので、単に力量が不足してるんでしょう。友人などにも読ませてますが、「面白い」と言ってくれる人もいるので、中には刺さる人もいるみたいです、としか。

なにを言われようが私は書きます。書くことをやめません。うまい人、面白い人のものを読んで、自分でも書いて、他人に読んでもらって、少しずつ成長したいと思います。

お互いがんばりましょう。

夜の雨
60.41.130.119

再訪

作品がつまらないかどうかという問題なのですが、私的には、つまらなくはなかったですね。

つまりこういうことです。

ドラマチックでなく、主人公たちの日常が書かれていた。
その日常が、ある程度読み物として成立していた。
主人公にはドラマチックになる背景があったが、物語としてはドラマチックに書かなかった。


>主人公にはドラマチックになる背景があったが、物語としてはドラマチックに書かなかった。<

主人公は企業に投資して、投資資金を回収する投資家であり、そのあたりのことがかなり詳しく書いてあったので、ドラマチックになる背景はあった。

しかし作者は主人公が生活している背景として、投資家という生活の場を詳しく書いた(提供した)だけであり、物語そのものは日常の延長線上を描いた。

そして主人公目線で、『イチタカという女子高生の自立と「自分探し」を軽く描いた物語になった』。
それに「説得力をもたせるために情景描写に力を入れた」。

情景描写を書きこむと、いかにも主人公たちが「そこにいる」ような、説得力が出てくる。

御作はドラマ度を低くして描いたので、エンターテインメント作品として読めば「つまらなくなった」が、「日常の延長という物語」としては、読めるものになっていた。
文学作品というほどに味わいがあるものでもなかった。
つまり御作はエンターテインメント作品ではなく、日常の延長を描いた話になった。
だから、私は御作(原稿用紙78枚)を読めた、ということになります。

作者さんが御作を描くにあたり、どのあたりの物語を描こうとしたのか、ということで、作者さんの狙いが成功したのか外れたのかということになると思います。

まあ、一般受けするには文学的に描くのかエンターテインメントとして描くのか、ということになると思いますが、御作の場合はそのどちらにも入らなかった。
背景はエンターテインメントであったが、「日常の延長という物語」を書いた。

こんなところですかね。

かけうどん
49.97.105.14

既視感があると思ったら前作にも感想をつけていてお互いの趣向の違いが明らかになったのでしたね、今回も似たような感想になるので返信は不要です。

やひろ
119.104.25.26

夜の雨 様

お世話になります。
遅くなりましたが、再訪のコメントありがとうございます。

文学性とエンターテイメント性が中途半端で、その間をいっている、というご指摘は確かにそのとおりかもしれません。
私の趣向ですが、エンターテイメント性バリバリの小説はあまり好きではないですし、かといって文学性の高いものも、それほど好きではないので、この作品においては自分の「好きだ」と思うものを突き詰めた結果になります。
サラリと読めて、ドライに、写実的に描写するものが好きですね。

彼らの日常を書きたかったわけではないので、その点においては失敗しているといえます。
投資家という職業を選択したのも、投資家の目線で(しかし身内に対する甘さをこめて)この話を進めたかったからですし、すでに青年実業家として成功しつつある健太郎と自分との対比、費用対効果など考えずただストレートに自分の気持ちに正直なイチタカと自分の対比などを描きたかったのです。
日常はただの舞台にすぎず、メインパートではありません。

あからさまに書くとつまらないというか、底が浅く見えてしまうというところがあります。
自分は隠して書くのが好きですし、そういう作品を面白いと思うので、そう書いてみたのです。

ありがとうございました。

やひろ
119.104.25.26

かけうどん 様

わざわざありがとうございます。

弥々丸朗
106.161.229.6

やっぱ聞く耳持たない人じゃん、って思われてますよ。
面倒な作家気質で結構なことです(←褒めてる)


>投資家という職業を選択したのも、投資家の目線で(しかし身内に対する甘さをこめて)この話を進めたかったからですし、すでに青年実業家として成功しつつある健太郎と自分との対比、費用対効果など考えずただストレートに自分の気持ちに正直なイチタカと自分の対比などを描きたかったのです。
日常はただの舞台にすぎず、メインパートではありません。
  ↑
注)このカンケイ
  ↓
あからさまに書くとつまらないというか、底が浅く見えてしまうというところがあります。
自分は隠して書くのが好きですし、そういう作品を面白いと思うので、そう書いてみたのです。


自分でちゃんと意味わかって言ってるんですか? とてもそうは思えないんですけど。
あんまりズレた感じ醸しちゃうと疑いばっか先走っていよいよちゃんと読んでもらえなくなりますよお節介かもしれないですけど。
狙いとその魂胆、ということなんだと勝手に思うんですけど、それが思い通りに書かれていないからたぶんつまんないとかクドいなんて印象を持たれてしまうんだろうと個人的には思うのだし、そのつもりはない、って言い返されるのはわかってるから言わないし結論しか言わないんですけど、あなたはおしゃべりなくせに肝心な言葉は足りないから感じ悪いんですよ、たぶん。
だから人気ないでしょ?
長ったらしいばっかのくせに、感想にはそのつもりなくてもお鼻高ちゃんな印象こもっちゃう悪癖持ち。
つまり、カンジワルイ奴。まともに読む気しねえ。ってさ?


人のこと言えねえだろ、って?
もちろんわかってますってば。
でもたぶん少なくともあなたにはないもの、あたし持ってますよ。


わかりますか?

つまり、こんなクソくだらないばっかのトコでアンチも生えない似非お上品程度に理想吹かれても威力感じねえよ、ってことなんですけど感じ悪くてすみません。
そういうのって、文章の出来不出来には関係ないと思ってるでしょ?
特にあなたみたいなタイプの人は。

その通り、全然関係ないらしいんだよね。


じゃあ、上等らしいの書いたなら黙っていてもお客付きますか?
上等らしいのに、何で人気ないんですか?
少しくらい、燃えてみたらどうなんですか?
ちょっと前に余計なこと書いて自ら着火させてるゆかいな人もいたけども。


なんて。
いじわるなこと言ってごめんだよね。


でも、何書いたって、投げとくだけでお客付くなんて所詮自惚れ臭いんですよ。所詮。
あなただけのことじゃないですよ? だから必要以上にムカつかれたって、馬鹿だなこの人、くらいにしか思わないので勝手にしろなんですけど、あたしなりに思うにはですね、書くだけなら言葉なんて所詮言葉でしかないんですよ。
つまり、ただの”共通言語”

”共通言語”って、そういう無価値のことだとあたしは思うんですよね創作において。
だから、ただ押し並べたって何にも珍しくないんです。
上等だろうが秀逸だろうが達人だろうが、奇特な人くらいしかいちいち付き合ってくれないですよ、高が知れてる。
奇特な人って、もちろんあたしのことなんですけど。
ね? 災難なだけでしょ?

てめえばっかのことしか出来ないやつなんて、所詮”共通言語”でしかないんですよ。
事実なんて関係ない。所詮魅力感じないって勘だけで左右されて十分なんですたぶん。
いちいちスレ開く興味感じない。魅力感じない。
”面白いって言ってくれる友人もいる”とかマヌケなこと言ってんなあ、って普通に思うんですけど、意欲としておかしなこと言ってますかあたしは。
自覚ないから言ってるんですけど。


あなただけじゃなくて、ここにいるほとんどの人に共通してあたしは思っているんですけど、てめえがナニモノか、どれほどのモンか、くらいのことも示せないでてめえのことばっか知って欲しがるばっかなんて、所詮自惚れてると思うんですよ。
SNSばっか鵜呑みにしてマヌケに人間腐らせすぎなんですよ普通に。

感想書かない奴、書けない奴なんて百パーへたくそ。
これ常識、っていうかモロ真理。って思ってるんです個人的には。
他人のヘタクソなもんにかかずらわってるヒマなんてないですか、文豪として。
やりもしないで何言ってんだ、ってヒマな凡人としてあたしは嗤うんですけど。


ケチのせいで備えるもん備えてないから言葉が退屈なんだし、言質暗いんですよたぶん。
あたしは勝手にそう決め付けるんですけど。
上手下手とか、そういうハナシではないんじゃないですか? って思ってます個人的には普通に。


あなたが書く、っていうことの意味わかりますか?
”誰が言ってんの?”って、あたしずっと言い続けてものすっごい嫌われてるんですけど。

アンチもろくに生えないようなあなた的には、どう思いますか?
あたしは”魅力”っていう大切な要素のハナシしてるつもりなんですけど、ムカついてますか?
だったら別にいいです。


どっちつかずってわかってるなら、あなたはエンタメに傾いたほうがいい気がするんですよ勝手に。
人間を面白く書くのはおハナシばっかではないけど、面白いおハナシは設計する才能みたいので出来るとこあるじゃないですか? 執念で何とかなりそうな気、しないですか? 
ご立派にセックスのことしか考えてないような動物脳もちらほらであたしはエンタメとか無理ですけど。
勝手にムカついてろですけど。
エデン面白くした方がいいんじゃないですか。

やひろ
119.104.25.26

弥々丸朗 さま

再訪ありがとうございます。相変わらず飛ばしてますね。
結局、けなしたいのか鼓舞したいのかよくわからないです。
ちょいちょい褒めてるような部分が見え隠れするところがなんとも面白い批判だなあと思っております。

>自分でちゃんと意味わかって言ってるんですか? とてもそうは思えないんですけど。
>あんまりズレた感じ醸しちゃうと疑いばっか先走っていよいよちゃんと読んでもらえなくなりますよお節介かもしれないですけど。
>上等だろうが秀逸だろうが達人だろうが、奇特な人くらいしかいちいち付き合ってくれないですよ、高が知れてる。

このへんは、そのままお返ししたいと思います。

あなたにとって、ここのサイトが世界のすべてなんですか?
読まれないとか、人気がでないとか、いちいち気にしてたら表現なんてできませんよ。

>上等らしいのに、何で人気ないんですか?

上等ではないからでしょう。僕が自分で「上等だ」っていつ言いましたか? 未熟で技術が足りてないからアマチュアなんです。
ここで「人気」っていうのがいわゆるどういう状態なのかわかりませんが、そのレベルに達してないんでしょう。
もし仮に賞をとったら、ここには投稿しませんし。

ところで、あなたは、僕がここに投稿することを辞めさせたいんですか?
作品が未熟なのはともかく、真摯に書いて、ルールを守って、投稿してるつもりなんですがね……。

別に、ここに投稿する意味は、「指摘がもらえてためになるから」にすぎません。
おそらく大多数の人がそうだと思うんですけどね。
だから、メリットがなくなれば投稿しません。

佐藤
36.11.225.158

読ませていただきました。

隣の家の高校生に年甲斐もなく揺さぶられる壮年男性の構図、人間いつまでも学びだよなー、などといった陳腐な感想を抱いてしまいましたが、それはさておき。

なんのエクスキューズもない段階では、主人公の年齢を三十代半ば〜後半くらいと認識しました。これはあまりストーリーの本筋とは関係のないこととは思いますが、現状として、語り口がやひろさんの世代に引きずられた印象は否めません。

また、この点は最近自分が必要以上に意識しているから気になった点なのかもしれませんが、「書くまでもなくわかること」が節々に存在していたかな、と感じました。

例えば、以下のあたりです。

 ピンポーンと、「聞き慣れた電子音」

 テーブルのうえの灰皿を「自分のほうに」寄せる

最も前者については序盤、終盤でのリフレインがありますし、表現意図を自分が汲み漏らしているだけかもしれません。また、改めて告白しますと、「面白いなぁ」を基本として読ませていただいていたため、指摘がどうしても些細なものになってしまうようです笑


物語全体の構造としては、イチタカに「お年玉」として最後に渡すのであれば、途中の部分ではイチタカにあげてやってもいいくらいだ、とは大澤に語らせなかったほうが良かったのかな、と思います。意外性、とまでは行かないでしょうけれど、物語の展開を丁寧に読者に提示しすぎているかもしれません。

逐次的感想につき、とりとめのない内容になってしまいました。申し訳ありません。改めて申し上げます、面白く読ませていただきました。

弥々丸朗
106.161.233.85

お返しなんてしてくれなくていいですよ、あなたのことなんだし性質全然違うからそんなこと言ってると笑われますよ。
もらったもの突き返そうだなんて、そんな田舎臭いようなアレルギー思いついたらダメです。精神的なハナシですけどねもちろん。


>あなたにとって、ここのサイトが世界のすべてなんですか?

ヤバいヤバい。
そういうの、アンチの口癖だからメンタリティヤバいですよ。落ち着いてください。
ちゃんと読んでくださいよ、>こんなクソくだらないばっかのトコでアンチも生えない似非お上品程度に理想吹かれても威力感じねえよ って、言ってるじゃないですか、わざわざ。
>こんなクソくだらないばっかのトコ って、ちゃんと堕してるじゃないですか。(←丁寧
あなたの言い方こそどこに軸足置いてるのかわからない感じになってる気がするけど、大丈夫なんですか?
案外わからない人らしいならいちいち言っておきますけど、こんな程度のトコですら興味も存在感も読む人に思いつかせられないようなことで一体どこで何出来るつもりでいるんですか? っていう当たり前のこと話したかっただけなんですけど、一体何の拒絶反応なんですか?
とりあえずはまじめな人かとは思っていたので残念なことですよね。まいっけど。


>読まれないとか、人気がでないとか、いちいち気にしてたら表現なんてできませんよ。

道端で念仏唱えるつもりですか?
投げ銭でまじで生きていけると思ってるタイプの人なんですか?
ショボい嘘つくもんじゃないです。かっこうわるい。


>ここに投稿する意味は、「指摘がもらえてためになるから」にすぎません。
おそらく大多数の人がそうだと思うんですけどね。
だから、メリットがなくなれば投稿しません。

あたしも”指摘”したつもりなんです、ちゃんと読んでください。傷付いてしまうなあ。
>だから、メリットがなくなれば投稿しません。 って、ちゃんと読んでくださいよ、やっぱり。
てめえのことばっかだって、まんまと白状してどうするんですか。
やっぱ透けるんですよ、そういうのって。だから人気ないんじゃないんですか? ってことを言ってるんです。
上手下手のハナシなんかじゃないんじゃないですか? って言ってるだけなんですよ。

5G1Tって、わかりますか?
投げ銭好きなら知ってるかもなんですけど、やりたいこと系の人にはもはや常識みたいな脅迫概念じゃないですか?
っていうか、むしろ人間古来からの良かれな精神で良識の基礎のようなことでしかないと思うんですけど、わかりますか?
何か欲しいならまずは自分から与えろ、ってことなんですけど。
GはGive、TはTakeってことなんですけど。いちいち言っておくんですけど。
五つあげて、やっと一つ手に入れる。
そのくらいで、あたしも丁度いいと思うんですよ、個人的には。

欲しがるばっかって、恥ずかしくないですか?
>だから、メリットがなくなれば投稿しません。 って、こんなことしゃあしゃあ言い切っちゃうような人の言葉、興味持てますか? 面白い、なんて思えますか?
あたし、上の人馬鹿だと思うんですよ。
前提抜きで目的優先できるなんて、そんなもんレイプ擁護のキチガイと変わんないっつうの。
>おそらく大多数の人がそうだと思うんですけどね。 って、どんな卑小さだっつうの。あなたのことで言い切ってくれなきゃ、それこそ何目的なんですか? 何で、書きたがるんですか? って、一番面倒臭いこと疑われていよいよ当たり前みたいになっちゃうじゃないですか。

あたし、ただ因縁つけてるだけですか?
それならすみませんって言っとくんですけど、所詮透けちゃうもんに噛み付かれてるだけって自覚持つことも少し考えたほうがいいと思うんですよ。これでも親切のつもりなんですから、徒に世の中生きづらいばっかに思えるのも何だかなあ、じゃないですか?

あたし当たり前のこと言ってるつもりなので、無理ですよ。
あなたの返信、普通に間違ってると思ってるし、書きたがる立場を取る人として損だと思うんですよね。
それって、あたしのだいっきらいなロジカルな意味でも通るハナシだと柄にもなく思ってますから、何かヤバいと思いますよ、あなたの考え方。

やひろ
119.104.34.237

佐藤 様


大変お世話になります。コメントいただきありがとうございます!

>なんのエクスキューズもない段階では、主人公の年齢を三十代半ば〜後半くらいと認識しました。これはあまりストーリーの本筋とは関係のないこととは思いますが、現状として、語り口がやひろさんの世代に引きずられた印象は否めません。

このあたりは、やっぱりなかなか難しいですね……。先に、他の方のコメントで、「50代だとわからせたいなら年代を特定できるようなことを書くといい」とありましたが、そういうののみならず、もっと50代っぽい「考え方」が必要ってことですよね。現時点ではこんなものなので、あんまり背伸びしないようにしたいと思います……。

>また、この点は最近自分が必要以上に意識しているから気になった点なのかもしれませんが、「書くまでもなくわかること」が節々に存在していたかな、と感じました。

なるほど……。よく自分の文章は「くどい」と言われることがあるんですが、削れるところはもっと削って軽量化したほうがよさそうですね。

>物語全体の構造としては、イチタカに「お年玉」として最後に渡すのであれば、途中の部分ではイチタカにあげてやってもいいくらいだ、とは大澤に語らせなかったほうが良かったのかな、と思います。意外性、とまでは行かないでしょうけれど、物語の展開を丁寧に読者に提示しすぎているかもしれません。

この部分、自分では気付きませんでした。1章のあの三十万円あげる云々のくだりは、まるごと削ってもよさそうですね。確かに、そのほうがどうなるか読者に「わからせない」ことにつながるかも。まあ、大澤もすべてを援助するつもりはなく、あげたお年玉も、普段あげている額+αぐらいの金額だとは思うんですけども(笑)。

コメントありがとうございました! 少し作品を寝かせて、次に書き直すときにご指摘箇所に注意しながら書き直してみます!!

改めて、ありがとうございました。

やひろ
119.104.34.237

弥々丸朗 様

再訪ありがとうございます。

私は、このサイトの規約・ルールと、場のルールの両方を守って、このサイトを利用したいと考えています。
したがって、私が上記のものを破ってこのサイトを利用しているとお考えならば、善処いたしますので具体的にご指摘願います。

もし私の行動・言動がサイトの規約・ルールおよび場のルールから逸脱していないのであれば、あなたの価値観に私が従う筋合いはありません。
また、作品に対してのご指摘、サイト利用に際しての違反事項などのご指摘は謹んで頂戴いたしますが、作者自身の人格に対しての批判および誹謗中傷はご遠慮ください。

弥々丸朗
106.161.229.112

↑くっそダサい



>あなたにとって、ここのサイトが世界のすべてなんですか?

なあんて、体よく他人ディスっといて、言い方なくなったら体よくタテマエにお助け申請ですかと(笑
ダブスタうるせえなんですよ、余計なこと言ってないでその調子で素直にあちこちウロウロしてみなっつうのこの根暗
ほんと素直じゃないよね

でしょ
103.75.118.111

↑くっそダサい
>体良くタテマエにお助け申請ですかと(笑
ダブスタうるせえなんですよ、余計なこと言ってないでその調子で素直にあちこちウロウロしてみなっつうのこの根暗

自分が言われたらやな言葉あつめてみました気取って余計に不自由拗らせてるって事は私ばっかな確信てわけではないはずなんだしまんまとあぶり出された火元に集る虫さんよろしく毎度のこと燃え上がるのは全然構わないんですが、つまり感度おかしくないですか?

やひろ
153.147.76.123

弥々丸朗様

再訪ありがとうございます。
もはや議論にすらなってないですよ。
思ったこと、感じたことをそのまま書きなぐるのは結構なんですが、それでは小学生低学年の作文レベルです。
あいにく、私は小学校の教師ではなく、一介の会社員ですので、ご添削できかねます。

やひろ
153.147.76.123

でしょ様

コメントありがとうございます。
申し訳ありませんが、書かれている内容が判読不能ですのでご返信は割愛させていただきます。悪しからず。

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