作家でごはん!鍛練場

ある初恋

 わたしは、彼女に恋をしたようだ。彼女が初めてわたしの元へやってきたのは一週間ほど前のことで、その日は暖かい春の風が吹いていた。穏やかに時間が流れ、のんびり散歩でもしてみたくなるような日だった。
 彼女はわたしの元へ来ると、他の人がするように小銭を入れ、ボタンを押し、ガコンと出てきた缶コーヒーを取り出し口から取り出す。何も言わず歩いて行くその背中を見ながら、綺麗な人だな、とわたしは思った。
 わたしの元へは、一日に何人もの、のどを乾かした人が訪れる。それぞれが自分の飲みたいものを買い、去って行く。一回来ただけの人など普段ならすぐに忘れてしまうのだが、彼女のことだけは、なぜだかわたしの頭から離れなかった。
 次の日も、だいたい同じ時間に彼女がきた。昨日と同じように缶コーヒーを買っていく。その次の日も、わたしの元へとやってきた。スーツを着ているので、どうやら仕事へ行く前に、わたしで缶コーヒーを買うというのが、彼女の日課になったらしい。転勤か何かで、最近この近くに引っ越してきたのだろうか。それとも、ずっと近くには住んでいたが、たまたま毎朝わたしで缶コーヒーを買おう、と急に思いついたのだろうか。彼女が目の前にやってくるたび、わたしはドキドキした。
 これまでに数えきれない程の人がわたしのところへやってきたが、一人の人のことをずっと思い続けたのは初めてのことだった。彼女の姿や服装、缶コーヒーを取り出す動作など全てが、段々と魅力的に思えるようになっていき、それは味わったことのない感情を生んだ。他の人とどこがどう違うのかはわからないが、彼女はわたしにとって特別な存在となった。
 彼女は、季節が夏に変わっても、変わらずわたしのところへ来た。蝉が喧しく鳴き、強い日差しが降り注ぐ。暑い日が続いていた。
 名前や年齢、職業など、彼女のことを、わたしは何一つ知らなかった。また、知る術もなかった。それに、こちらから彼女に何かを伝えるということも、わたしには不可能であり、何か困った時に助けることもできないし、喜びを分かち合うこともできない。ただ、黙って彼女の缶コーヒーを買う姿を見守るしかなかった。
 吹く風が冷たくなる秋になると、彼女が今まで買っていた缶コーヒーが、アイスからホットへ変わる。寒い日でも、彼女は毎日来てくれた。
 冬になると、雪が降り、さらに寒くなった。彼女は首に赤いマフラーを巻き、寒そうに身を縮こませながら近づいてくる。ホットコーヒーを買い、冷えた手を温めるようにしてそれを握り、わたしから遠ざかって行く。
 そして、彼女と出会って季節が一周した頃、ある日を境に、彼女はわたしの元へ来なくなった。
 何か理由があって来ていないだけだろう。きっとまた来るようになる。そう思っていたが、ずっと彼女は来なかった。どこか遠い地にでも行ってしまったのかもしれない。
 それから何年経っても、頭から彼女のことは離れず、昨日のことのように彼女の姿を思い出せた。彼女との日々は、わたしの宝物になっている。わたしにできることは、彼女が再びわたしの前に現れるのを、ここでずっと待つことだと思った。待つことしか、わたしにはできない。

ある初恋

執筆の狙い

作者
123.1.4.178

 自動販売機が人に恋をするという一つのアイディアだけで作りましたが、難しい。全然ダメでした。ちょっと切ない感じで終わりたいのですが、ギャグに徹した方がいい気もしてきたし、よくわからなくなってきたので、未完成ですが投稿しました。何かアドバイス頂けたら幸いです。

コメント

夜の雨
60.41.130.119

アイデア提供します。
御作は自動販売機が人間の女性に恋をするというお話です。
普通はありえない話ですが、小説ですので、可能になります。
御作を読んだところ、常識にとらわれ過ぎていて「話が展開していません」。

こうすれば、話は展開する。

まず、自動販売機が恋をする女性ですが、「魅力的なキャラクターに描かれていません」。
御作では単純に自動販売機が「きれいな女性」だといっているだけです、それで恋をするというのは「話に説得力がありません」。
まず、女性を魅力的にする。
たとえば彼女が缶コーヒーを買うにしてもキャラクターの個性がわかるようにする。
鼻歌を口ずさみながら、しかし目は真剣で購入する品物を選んでいる(最初の一回目)。
二回目の時は「このあいだの缶コーヒーおいしかったなぁ、とか言い。これこれ」と、選んで購入する。
どちらにしろ、彼女の個性がわかるようにする、それも魅力的だとなおよい。工夫次第で、いくらでも彼女を個性的で魅力的に描けるはずです。
自動販売機が彼女をその他大勢の人間と区別するきっかけを「設定(彼女の魅力的なキャラがわかるように)」する。

自動販売機が改良される。

売上を伸ばすために「自動販売機」が「声を出せるように改良されました」。
商品を購入すると「ありがとうございました」という、自動販売機はよくあります。
もう一歩突っ込んだ改良型の自動販売機にする。(おしゃべりのパターンがいくつかある)。
突然、自動販売機が彼女に向かって「今日のあなたの運勢は大吉です」とか、しゃべりだすので、彼女が驚く。
会話のパターンはランダムでいくつかあるので、彼女はそれを楽しみにしているようで、自動販売機に声をかけるようになった。
そのうち、彼女が悩みを打ち明けるようになる。
仕事がつらいとか、または、楽しいとか。転勤してきた男性が格好いいとか。
それを聴いて、自動販売機は心が痛む(彼女のことを好きになりかけていたので、男性のことを言われると)。
しかし、自動販売機にはどうすることもできない、おしゃべりする言葉の数は限られているので。
ところが、自動販売機にネット機能が付くことになりました。
商品を購入するお客さんに対してサービスでニュースとか天気予報とか、その他情報をリアルタイムで教えることが出来るようになった。
これで、自動販売機の売り上げが増えるとオーナーは踏んでいる。
彼女は自動販売機がいろいろな情報をおしゃべりするので最初のうちは喜んでいたが、「私の悩みを聴いてくれたら、アドバイスしてくれたらよいのに……」とか無理なことを言う。
もちろん自動販売機が彼女の悩みにアドバイスするようなことは無理なわけですが、何しろネットとつながっているので、ウイルスに感染して第三者が彼女にアドバイスしてしまう。
もちろん、自動販売機の音声で。
それで、彼女の恋が成就してしまう。
こうして自動販売機は失恋してしまう。
めでたし、めでたし(笑)。
――――――――――――――――――――
そのあとどうなるのかというと、自動販売機を改良してお金をかけた割には売り上げが伸びず採算が取れないので、別の自動販売機に場所をとられてしまう。

失恋した自動販売機はトラックに積まれて解体されに工場に運ばれていくのだが、その途中で信号待ちしていると、彼女を見かける。
自動販売機はトラックの上から彼女に声をかける。
だが、電源が入っていないから声は出せない。
ところが彼女が彼に「おしゃべりする自動販売機が私たちの恋のキューピットなの」と自分(自動販売機)のことを言っているのを聴いて、出ないはずの声が出る。
半泣きの声で「さようなら」と。
彼女が驚いたように、トラックに積まれている自動販売機を見つめて「あっ!」と、声をあげる。
信号が変わり、自動販売機を積んだトラックは解体工場に向かって走り出す。
――――――――――――――――――――――――――――――――――――

こんな感じの展開と、ラストです。

ほかのパターンでは「彼女が自動販売機製造の会社に勤める(開発者)ために缶コーヒーを毎日飲んでいたとか」。それで後日、彼女によってこの自動販売機が改良されて、音声が出るようになり、自動販売機が彼女に仰天の告白をする。


お疲れさまでした。

.
1.20.99.218

仮にも作家希望者が集まるサイトでアイデア提供しますってどんだけ無礼なんだ!?

123.1.4.178

夜の雨様

シンプルで大したオチのない物語した考えていなかったので、大変参考になりました。確かに女を魅力的に描いたり、話しをもっと展開させたりした方が、面白く読んでもらえそうですね。頭が固かったです。これからは一つのアイディアでも、もっと飛躍させてみようと思いました。長文ありがとうございました。

大丘 忍
180.45.166.96

>自動販売機が人に恋をするという一つのアイディア

ですが、これは安易なストーリー形成の典型ですね。初恋を取り上げるなら、ちゃんとした男女の初恋を取り上げるべきで、自販機と女の恋なんて奇を衒った偽ものにすぎません。
小説にはストーリーが大切ですが、ストリーを考える能力のない作者はこのようなありえない設定を用いようとします。これではいつまで経っても小説が書けるようにはならないと思います。きつい言葉ですが……

藤光
119.104.10.184

読ませていただきました。

アイデア一発勝負の小説ですね。
アイデアは面白いと思います。
「奇を衒う」のは小説のある種スタンダードなので、私は全然ありだと思います。

ただ、現状物語としてはぜんぜんおもしろくない。
それは、

>なぜだかわたしの頭から離れなかった。
>他の人とどこがどう違うのかはわからないが、

と御作にある部分です。

このアイデアなら、読み手はそこの部分にまず興味がいくわけだし、「なぜ彼女を好きになったのか」「自販機なりの好きになった理由」を抜きにこのアイデアというか企みは成功しないのではないでしょうか。

面白い設定はよく思いつくことができますが、それを小説内での必然にするのは、結構難しく、知恵を絞らないと完成させられないものだなと改めて感じました。

ありがとうございました。

nekot-a
121.6.158.213

私たち(ごく一部の物好き)が物語を欲してやまないのは、みずからが知り得た現実のその先に、もうひとつの現実が存在するというたしかな手応えと期待からであって、現実的な語り口であったためしはない。語りはもっと荒々しくても受け容れられるようにおもいます。むしろぎこちないくらいがちょうどいいのかもしれない。読み手にとって機械らしさが感じられ、好もしさが生じるようになる可能性だってないとはいえない。

数年前にラーメンをこよなく愛する女子高校生のマンガが流行りましたが、自販機に恋する女子高校生という話があるとはいまだ耳にしたことがありません。こうした線もあるいはばかばかしいと棄てきれるものではないのかもしれません。

江戸時代の落語に、米俵に恋されてしまう男の噺がありました。なんでも男は米屋の娘を相手にトカゲの黒焼き(当時の惚れ薬)をふりかけるのですが、折からの風で、娘ではなくて米俵にかかってしまったのだとか。まずいことに惚れ薬の効き目はてきめんで、男がどこへ逃げてもどすんどすん追いかけて来るというものです。種をこえた恋愛につきまとうのは困惑と障碍の数々にちがいなく、こうした素材にどうやって肉付けしていくかが、これからの辻さんに課せられた問題ではないでしょうか。

あり得ない物語であるにもかかわらず読者がそれを受け容れてしまう、『見えざる境界線』が、頁をひらけば物語のいたるところにあるのだけれど、さがそうと努めない限り境界線は目に入ってこないようです。素敵な物語が書けますように。

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