作家でごはん!鍛練場
さつき

ホワイトクリスマスと黒猫

——2029年2月4日。
はじめまして。突然2029年から手紙をよこされても、どんな趣味の悪戯だと、君はこの手紙をゴミ箱に捨てることはせずとも、忘却の彼方へと捨ててしまうだろう。でも大丈夫。僕が手紙を君に送る度に、君は思い出してくれるだろうから。昨日は、これからも手紙を送ることの通達だよ。

——2029年2月18日。
やっほ、2通目を書いてみました。驚いているかな。まぁ、驚かない人間なんていないだろうね。そうそう、君は僕に手紙を書こうとしたよね。残念ながら、このやり取りは僕の方からの一方通行でね。君が僕に手紙をよこすことなんてできなんだ。なんでわかるのかと言うと……それは次の手紙にしようか。

——2029年3月4日。
やあ、お久しぶりだね。実はあれから多忙期に入ってしまってね。あんまり手紙を書く余裕がなかったんだ。だって、送る日にちは指定できるから急ぐ必要がないんだ。現に、君は三日連続で手紙を受かっていることだろう? 僕からしたらまるまる一月分、手紙を書いていなかったんだけどね(笑)
さて、前回の続きだけど、この手紙の差出人が君の10年後の君から送られてると言われたら、信じるかい? まぁ、信じたいよね。だってSF大好きだもんね。何故、10年後から手紙をわざわざ送ってくるかというと、君にやってもらいたいことがあるからさ。詳しいことは明日になればわかるさ。

——2029年3月18日。
こんばんは、10年後の君だよ。いや〜、最近は新作のゲームにどっぷりハマってしまってね。あんまり手紙を書くモチベーションが上がらなかったんだ。新作のゲームってのはドラゴンクエスト13だよ。君の時代にはまだ11までしか販売していないだろうから、楽しみにしているといいよ。さて、本題だけど、君がこの手紙を読んでいるであろう2019年12月23日から2日後の25日に、君の身近な人が死ぬことになる。それをどうにか阻止して欲しい。僕にとっても、君にとっても大切な人だ。頼んだよ。そうそう、明日は降水確率が2%だけど雨が降るよ。傘を持って行きな。

——2019年12月24日・クリスマスイブ。
目覚まし時計を止めて布団から這い出た。寒くて凍死しそうだった。清々しいのだろうけど、あんまり好きじゃない青空だ。
1人で朝食を頬張りながらテレビで天気予報をみる。母はすでに仕事に出かけたのだろう。今朝はトーストにした。降水確率は2%で絶好のお洗濯日和だそう。ポケットから手紙をとりだして未来の自分からの手紙を見る。降水確率は2%と書かれている。こうとドンピシャだと、怖いくらいである。
二階にある自室で制服に着替え、僕の遊戯室となっている地下一階の個室へと移動する。もともとは集中するためにオーダーメイドで作った仕事部屋らしいけれど、現在父は転勤しているので使っていない。代わりに僕が使っているのだ。狭くて暗くて居心地がいい。部屋の唯一の光源は黄色い光の電球であり、これも温かみを感じていい。父の転勤が終わるまでは自由に使ってやるつもりだ。
地下室は2畳分の狭さで、ボロい机の上に赤いマットが敷かれ、万年筆とカレンダーの様に破るタイプのメモ帳が置いてある。そして、すぐ横には文字の書かれた手紙が3通。2029年からの手紙だ。僕はそれらを手に取ると、透明なクリアファイルに先ほどポケットに入れていた手紙と一緒にしまい、カバンの中に入れると、ビニール傘を忘れずに家を飛び出した。

僕はこの手紙のことを信じている。未来の自分から手紙が届くなど、非現実的であるには違いないのだが、この手紙に書かれている通り僕はSFが好きなのである。それに、ミステリーも好きだ。だから、探偵気分で、僕の大切な友人が死んでしまうという未来を変えたかった。探偵ごっこか友人を守るためのどちらに意識が寄っているかと問われたら、もちろん友人を助けたい方に決まっている。だけど、ワクワクしてしまっているのも事実。だって、あんまり高難易度な事件というわけでもなさそうだからだ。
殺人事件なのか、はたまた事故死なのか置いておいて、この世から去ってしまう10年後も大切だと思える友人は1人しかいない。それはクラスメイトの山田トモミだ。つまり、僕は山田トモミを12月25日に家から一歩も出させなければ良いことだ。それか、僕と一緒にいれば安心だろう。だから、簡単な事件なのだ。

「おはよ」
「あ、山田さん。おはよ」
「今朝は寒いね。それにクリスマスイブだってのに学校あるとか、自称進学校は面倒臭いよね」
「学級委員がそんなこと言っていいの?」
「君にだけは言われなくないわ」
黒縁メガネを掛けた山田トモミは、僕がどうやって12月25日に山田トモミと一緒にいる口実を作ろうかと考えていたところにやってきた。
そして、不自然な光景を目の当たりにした山田トモミはすぐさま疑問に思ったらしい。
「どうして舟橋くんは傘を持ってきたの?」
「降水確率は2%らしいからね」
「だから不思議なんじゃない。ニュースを見たのに傘を持ってきたって、相当変わってるよ」
「残念、今日は雨になるハズだよ」
「もしかして、今日も届いたの? 10年後からの手紙」
「うん、そうじゃなきゃ、こんな目立つことしないよ」
僕は山田トモミに、昨日の夜届いた手紙について話した。でも、山田トモミが死ぬ可能性があることは伝えなかった。だって、彼女が臆病であることを知っていたからだ。

僕と山田トモミが出会ったのは4月の入学式。同じクラスだから当たり前だろう。僕が通う高校には、クラスから男女1名ずつ、学級委員を選出しなければならない。メガネをかけた彼女が立候補したのをみて、僕も続けて立候補した。山田トモミに一目惚れしたからというわけではなく、彼女が真面目そうだったからだ。真面目な人と同じなら、僕がサボり気味でもなんとかなるはずだろう。そう思った。
案の定、彼女は真面目で仕事熱心だった。でも、熱心すぎた。僕が少しでもサボろうとすると、狼の様に睨みつけては威嚇する。僕はそれに逆らうことなく仕事をする羽目になっていた。弱点さえ、発見できたら立場が逆転するはずだとあれこれ模索した結果、彼女が怪談や血が出る系のドラマやアニメを苦手とすることがわかった。それからは、定期的にサボれている。
「ふーん。じゃあ、10年後の舟橋くんが今の舟橋くんに伝えたかったことは、今日は雨が降るから傘を持っていけってこと?」
「そうなんじゃないかな。それか、また明日に手紙が届くかも」
「きっと届くよ。だって、そんなことくらいで手紙をよこしたりしないでしょ」
山田トモミが臆病だと知った矢先、僕の元へ10年後の僕から手紙だ届いたのだ。僕はどうせ母の悪戯だろうと思ったが、ちょうどその日は学級委員の仕事があったので、これを都合に仕事をサボってやろうと思ったのだ。すると意外にも、山田トモミは怖がらず、それどころか興味を示し始めた。どうやら、山田トモミもSFやファンタジーを少々嗜むようだ。それから、山田トモミには手紙のことを教えている。その度に、山田トモミは楽しそうに僕の話を聞いてくれるのだ。女子と交流のない僕にとって少し嬉しい反面、僕の元へ手紙が届く地下室を、エンターテイメントが飛び出す箱かなにかと思っている節があるのでやめていただきたい。
「そうだといいな」
手紙が書かれた時期は不定期と言えど、届いた時期は定期的である。毎晩、地下室のメモ帳に書かれているのだ。ポストに封をされて入れられているわけではなく、僕の家の地下室に届く。初めは、母が悪戯心で書いたものかと疑ったが、母の様子からして違う様だ。父は単身赴任でいないし、僕に兄弟はいない。つまり、あれらの手紙は本当に未来から来たのだ。
「そういえば舟橋くん、目立つのが嫌ならなんで置き傘にしなかったの?」
……盲点だった。

放課後、僕と山田トモミは教室に残っていた。雨が本当に降るのか確かめるためだ。現在時刻は午後4時。雨が降る気配はない。
「舟橋くん、本当に雨が降るの?」
「手紙によれば降るはずだよ」
「降らなかったら、どうするつもりなの?」
「決まってるさ。今度は手紙の差出人を探すんだよ。悪戯にしては出来がいいって、耳にタコができるほど褒めちぎってやるんだ」
僕は本当に未来から手紙が来ていてほしいと思う反面、手紙は何者かによる悪戯であってほしいと思っていた。この手紙が嘘であるなら、山田トモミが死ぬことはなくなる。そちらの方が、ハッピーエンドだ。
「そういえばさ、今年のクリスマスはホワイトクリスマスになるんだって」
「ホワイトクリスマスって何?」
「え、雪が降るクリスマスのことだよ。それくらい知ってないと。一般教養だよ、これくらい」
「雪が降るクリスマスなんて、なにがいいの? 寒いだけだよ。それに、自転車登校の生徒が、冬は地面が凍って滑るからいつもより早めに家を出なくてはいけなくなるから嫌だと言ってたし。いいことなんて1つもないよ」
「舟橋くんはモテないタイプだね」
「そんなこと、重々承知だよ」
それから、僕達は他愛もない話をしていた。サンタは今年から来なくなるとか、お年玉は2万円もいかないよねとか、そういえばクラスメイトのとある女子が猫の里親を探しているとか、実は私は置き傘を教室に常備しているとか。
そんなことを話しているうちに時計の針は5時を指そうとしていた。
すると、雲行きが怪しくなった。黒っぽい雲が空を隠し始めたと思うと、勢いよく雨が降り注いだ。
「うっわ、こりゃ土砂降りだね」
目を見開いて外を眺める山田トモミの後ろで、僕は未来からの手紙を見ていた。降水確率2%という、当てずっぽでは当てられない数字に、この土砂降り。気が重くなり始めた。
「本当に未来から来たんだね!」
そう興奮した様子で山田トモミは外を眺める。なにも楽しくなんかない。僕はこの時になって、ようやく事の重大さに気がついた。なんで僕に手紙をよこしたんだ。そんな責任重大なことを、過去の自分に押し付ける自分が嫌になった。そもそも、未来から僕へ手紙を送っている僕の世界では、山田トモミは死んでいる。だから、僕にそれを阻止して欲しくて手紙を書いた。ならば、未来は変わらないのではないか。10年後の僕も、当時は10年後の僕から手紙をもらっていたことになる。つまり、僕は抜け出せないループの中にいるはずだ。
「みてみて舟橋くん。みんな鞄を傘がわりにしてるよ。傘を持ってきてるのって、私達だけだよきっと。ね!」
山田トモミは笑顔で僕の方をみた。
いまから「君はこの手紙よると25日に死ぬことになる」と伝えるのは簡単だ。でも、山田トモミはきっと嫌な顔をするだろう。もしかしたら泣いてしまうかもしれない。恐怖のあまり明日から学校に来なくなってしまうかも知れない。僕は山田トモミの笑顔を守りたかった。守りたくなった。僕は手紙を握りしめてポケットにしまった。そのまま席を立ち、戸締りをしながらこう言った。
「急いで帰ろう。この様子だときっと通り雨さ。雨が降ってる最中に帰らないと、僕が恥ずかしい思いをして傘を持ってきた意味がない。鞄を傘代わりにしている奴らの横をドヤ顔で通り過ぎてやろうよ」
山田トモミは「うん」と言って僕と一緒に僕と一緒に戸締りをし始めた。
きっと大丈夫だ。他殺にしても事故死にしても、彼女を守ってやれるのは未来を知っている僕だけ。それなら、最善の努力をするまでだ。答えが分かっている試験なんて手の体操だ。
山田トモミと僕は学級日誌を職員室にいる担任に渡してから昇降口へと向かった。下駄箱で靴を履き替えながら外をみると、何人かの生徒達は通り雨だと予想して雨宿りをしていた。室内部活の生徒だろう。帰宅部はとっくに帰宅している時間帯だし、運動部はまだきっと外で運動に励んでいるはずだ。
僕達は堂々と傘をさして校門を後にした。
山田トモミはバス通学だ。自宅からバスで学校周辺のバス停で降り、それから徒歩で学校へと向かう。その途中に、僕とよく遭遇するらしい。よく遭遇すると言っても、かなり遭遇している方だ。先週なんて4回も山田トモミとばったり出会ったのだ。山田トモミが僕と一緒になるために時間を調節しているのではないかと思い過ごしたことがあったが、バスの到着時刻と僕の学校へ向かっている時の時刻が一致することが多かったので、本当にたまたまだろう。
バス停に到着すると、山田トモミと同じくバスの到着を待ち望む生徒が4、5人いたが、全員が鞄を頭の上に持ち上げていた。
山田トモミは偉そうな顔で4、5人の生徒をみた後、僕に言った。
「ばいばい舟橋くん、また明日。それと、手紙が届いたらちゃんと私に教えること。わかった?」
「わかったよ。でも、どうせくだらない事しか書かれていないよ」
「そうかしら。ドラクエの最新作なんて興味深いじゃないの」
「ああ分かったよ。くだらないことでも教えるさ」
「そ、ありがとう。じゃあね」
僕はバス停を後にした。

あれから少し歩いたが、雨がやむ気配はない。なにがお洗濯物日和だ。家では母が大急ぎで服を取り込んでいるところだろう。そしてこの雨からして、ネコ橋は大荒れだろう。
僕の家は学校から徒歩10分の距離にある。ルートは家を出てネコ橋を渡ってバス停を横目に学校へ向かう。殆ど一本道である。その通りにあるのがネコ橋。正式名称はなんだったか忘れたが、きっとありふれた名前である。そんなことよりも何故、ネコ橋と呼ばれるようになったかと言うと、何年もの間、ネコ橋の下にはネコが捨てられるようになったからだ。産みすぎてしまった、飼えなくなってしまった、病気を患わってしまった等の理由だろう。たしか母親が近所の人から聞いた話によると、二ヶ月前もネコが捨てられているのを発見した人が居たらしく、保健所に連絡したそうだ。ネコのその後はお察しだが、里親が見つかった等の良い知らせを聞いたことがない。その殆どは、二ヶ月前のネコと同様に保健所に連れていかれたり、食べ物にありつけなくて餓死したり、今日のように強い雨の日に川へ転落してそのまま溺死する等の悲惨な最期を迎えている。
僕はその日、なにを思ったのかネコ橋の下を確認してみることにした。もしネコが捨てられていたとしても、母が猫アレルギーな時点で、保健所に連絡するしか対応ができないことも理解していた。それでも、自慢できない小さな正義感が僕を動かしたのだった。

ネコ橋は横幅5m・縦幅10mと、とても小さなものだった。僕等の住んでいる町は田舎だから、ネコ橋の周りには住宅しかない。それに、住宅もネコ橋に隣接しているわけではなく、川を縁取るような形で生えている並木林を挟んで建っている。春になると桜が満開になり、土手でお花見をすると凄く綺麗だと母が言っていたが、今は冬なので寂しげである。
僕は傍にある階段から土手を降り、橋の下へと足を進める。傘をさしていても、足元は濡れる。歩いてここまで来る途中に何度も水溜りに足を入れたし、今も川が荒れているせいでコンクリートの地面はベタべタだ。ネコなんていたら凍え死んでしまうのではないかと、ネコに詳しくない知識で想像していると、目の中に信じたくない光景が飛び込んできた。
「ニャー」
ネコだった。小さなミカン箱のダンボールに寝転がっていた。僕は思わず後ずさった。本当にいるなんて思っても見なかったからだ。
真っ黒な毛のネコは、両手に収まってしまうのではないかと思うくらい小さく、腹を鳴らしながら小刻みに震えていた。
まったく、この日本にはろくな人間がいない。神に似せて作られた人間よりも可愛らしい生き物を捨てるなど、あってはならない。しかし、今の僕には何もしてやれない。空腹を満たしてやろうにも食べ物がない。温めてやろうにも毛布がない。ただ、気休めにもなりはしないだろうが、撫でてやるしかできなかった。すると、パシャパシャと水を弾く音が聞こえた。上からだ。橋を誰かが渡っているのだろうか。すると、寝転がっていたネコはおもむろに立ち上がった。足音が遠くなったかと思えば、近づいて水を弾く音が小刻みになった。階段を降りているのだ。僕はさっきまで使っていた階段の方をみる。すると、クラスメイトの女子が傘もささずにそこにはいた。
「え?」
クラスメイトの女子は、僕が橋の下にいるのがそんなにも不思議なのか、おもわず疑問しか浮かんでいなさそうだ。
僕はクラスメイトの名前は、ほとんど覚えていない。学級委員なのに。そもそも、僕は友達が少ない部類の人間であるから、名前を知らない人間がいてもおかしくはないのだ。当然、向こうも僕の名前を知らないはずだ。それならば、何の問題もない。いちいち、見たことある人間の名前を覚えるのは面倒な話だ。
「舟橋くん?」
しかし、彼女の場合は異例だ。僕も彼女の名前は知っている。何故かというと、彼女はクラス単位を超えて学年単位でも有名だからだ。
「平沢さん?」
平沢ノゾミ、彼女の名前はそういった。たしか、ネコの里親を探しているはずだ。一週間ほど前に、里親募集のチラシを校内に貼っていいかと、僕に許可を得ようと話しかけてきたから覚えている。そして僕は担任に言えと、平沢ノゾミを突き返したのも覚えている。
「舟橋くんじゃん、どうしてここに?」
平沢ノゾミはリュックサックを背負っており、中から重い金属音が聞こえた。そのまま彼女は橋の下へと小走りで入ると、黒猫が生きていることを確認した。
「たまたまだよ」
そのまま、リュックサックからバスタオルと暖かそうな赤色をした毛布をとりだすと、毛布を僕に押し付けてきた。
「たまたまじゃこんなところには来ないよ」
僕がおとなしく受け取ると、平沢ノゾミはバスタオルで猫についた水滴を丁寧に拭き取ると、僕の持っている毛布と交換にバスタオルを押し付けてきた。そのまま僕はおとなしく受け取った。
「たまたま、橋の下が気になったのさ」
「そんな風に、隠したりしなくてもいいよ。普通に嬉しかったし」
平沢ノゾミは、まるで僕が平沢ノゾミに何か隠し事をしていて、それを彼女が知っているという風に言った。僕はその話し方が気になったのだが、当然図星というわけではない。本当に、僕は何も知らない。
そんなことを考えていると、平沢ノゾミも、僕が何も隠そうとしていないことを察したらしい。
「え、舟橋くんが猫ちゃんの世話をこっそりしてたんじゃないの?」
何の話かさっぱりわからなかった。たしかに僕は猫派ではあるが、それほど猫が好きというわけではない。聞く話によると、猫派の中でもモフリストと呼ばれる狂愛者は、猫を見た途端に撫でたくなるそうだ。しかし僕は違う。擦り寄るものなら撫でてやらんこともないが、自分から好き好んで撫でようとはしない。今回は、たまたまこの黒猫が可哀想だと思ったから撫でたが、普段ならそうはしない。そんな僕がネコ橋の下までわざわざやってきて、こっそりと餌を与えているわけがないのだ。夢遊病だとしたら完全否定はできないが。
僕が首を振って違うことを訴えると、平沢ノゾミも首を傾げて考え事を始めた。
「じゃあ誰だろう、猫ちゃんの世話をしてくれてた人」
「平沢さんだって世話をしているんじゃないの?」
「ああ、私も勿論世話をしてるよ。缶詰を持ってきたりね!」
平沢ノゾミは笑顔でリュックの中身を見せてきた。なるほど、意外にも響かない金属がリュックサックの中に入っているんだなと思ったら、ネコの缶詰だったのか。たしかに、ネコの缶詰同士が接触しても大きな音はならない。
「けどね、私が缶詰を置き忘れる日には、絶対にシーチキンの缶詰が置いてあるんだよ。私はマグロ味しか持ってこないから私じゃないのは確実なの。だから、いつも缶詰を持っていく時間より少し遅い今日、ネコ橋の下にいた舟橋くんが、猫ちゃんにこっそり餌をあげてたのかなーと」
「残念ながら違うよ」
「そーなのかー」
最後まで聞いてみた感じ、特におかしな点はない。ちゃんとした筋の元、成り立っている話であるから、僕を『黒猫に餌を与える人物』と間違えた理由は把握できる。しかし、僕ではないのは確かだ。それに、この橋の下に猫が捨てられるのは、この街に住んでいれば誰もが知っていることである。自宅では飼えないものの、情の心からこっそりと餌を与えている人間がいても不思議ではない。
「それにしても、このサイズの猫が食べるには少し多いんじゃない?」
平沢ノゾミのリュックサックの中にあった缶詰の数は4。缶詰を食べられるようになった猫が食べるにしては、少し多い気がした。でも、もしかしたら、猫という生き物はこのくらい食べるのが自然なのかもしれない。僕が知らないだけで。
「うん、少し多いよ。多めに持ってきたの」
「どういうこと?」
「今夜はこの子にご飯を持って行ってやれないから」
なるほど、平沢ノゾミにはなにやら事情があって、その事情故に多めに缶詰を持ってきていたのか。
そう考えながら黒猫を見てみると、よほどお腹が空いていたのかシーチキン味の缶詰を貪り尽くしていた。その必死さ故に口元には食べカスがこびりついていて、それを平沢ノゾミが拭き取ってあげていた。不良が雨の中、捨て犬を拾っている瞬間をヒロインが目撃して恋に落ちる展開があるが、よく分かる気がする。
そんなことを思っていると、平沢ノゾミが僕に言ってきた。
「あのさあのさ、舟橋くんがこの猫ちゃん貰ってくれない?」
「僕は無理だ」
即答した。
「どうして?」
「母親が猫アレルギーなんだ」
「そっか、残念」
平沢ノゾミ肩を落としてしまった。
「でもさでもさ、こっそり飼うとか庭で飼うとかできたりしないの?」
しかし、平沢ノゾミは負けじと僕にネコの里親になることを押し付けてくる。勢いのある頼み方に、母に頼んでみようかな。という気持ちに少しだけなったが、我に帰るとどうやって拒否しようか考えることにした。
「こっそり飼うにしてもそれは平沢さんでも出来ることだし、庭で飼うのもネコ橋の下で飼うのも変わらないでしょ」
「そっか、残念」
平沢さんは先程以上に肩を落としてしまった。
こっそり飼えないこともない。母から隠す場所もあるのだが、それよりも何故僕が母から隠すようにして、平沢ノゾミのためにしてやらねばならんのだと思ってしまった。あまり話したことのない間柄だったからより一層、その思いが強かった。好きな女の子に頼まれたりしたら別だが。
「じゃあさじゃあさ!」
「もういい。これ以上、どんなに頼まれても家では飼えない」
「わかったよ。おとなしく引き下がる」
最初に断られた時点でそうするべきだ。
直接言ってやろうかと思ったが、流石に女の子にそんなことはできない。平沢ノゾミはきっと落ち込んでしまうだろう。気まずくなっても明日から困るのは僕の方だ。
「じゃあ最後に。舟橋くんの方でも、里親を探してくれないかな? 仲良い友達とかに」
僕には仲の良い友達が少ない、というか殆ど1に近いくらい居ないのだが、その微かな希望が僕の頭に浮かんだ。
「わかった。明日にでも連れてくるよ」
「え、ほんと? それってホントにホント?」
「うん、1人だけアテがいそうなんだ。前に、平沢さんが猫の里親を探していることを気にかけていたし、多分飼ってくれるんじゃないかな」
そう。今日の放課後、山田トモミが里親探しで町中を走り回っているという平沢ノゾミの件について話してくれた。あれから1週間経つけど里親は見つかっていないそうだとか、近所の人に保健所に連絡される前に里親を見つけなければとか等。必要以上に、ネコの里親を探しているようだった。
山田トモミならきっと、平沢ノゾミの力になってくれるだろうと思った。
「ありがとう! さすが学級委員だね! これからは困ったことがあればすぐに舟橋くんに相談することにするよ!」
「それはそれで困るんだけど。それにまだ里親が決まったわけじゃないし」
「まーたそんなこと言っちゃって! 希望が高いから紹介してくれるんでしょ?」
間違ってはいない。だが、平沢ノゾミにことを進められるのが少し癪なだけだ。
「明日、ここに待ち合わせしないか?」
「明日? 明日ってクリスマスだよね」
「そうなるね」
クリスマスに誘うのは少し違っていただろうか。
「舟橋くん、私という女の子をクリスマスに誘うなんて、なかなか大胆なことをするじゃないの。私に彼氏がいなくて良かったわね!」
たしかに平沢ノゾミに恋人がいなかったから良かったが、それを自白したのには何も傷つかないものなんだな、女子って。
それとも、能天気そうな平沢ノゾミだからだろうか。山田トモミのような真面目で繊細そうな女の子だと、クリスマスに予定がないことが苦になるのだろうか。そうなると、明日一緒に過ごさないかと誘ったとしても、強がりで予定があると答えてくるかもしれない。そうなると、未来の僕のような結末になってしまうのだろうか。
ならば、どうにかして山田トモミとクリスマスを過ごすための誘い方を考えなければならなくなる。
「ああ、わかったよ。それと、傘がないなら入っていく? 僕はそろそろ帰ろうかと思ってるんだけど」
「え、ナチュラルに相合傘とは隅に置けない男子だね舟橋くんって。でも、そんなこと言ってられないくらい寒いので入らせてもらいます。変な噂とかになったら、舟橋くんのせいだからね」
「はいはい」
僕はそう告げると、橋の外へでた。猫が心配そうな平沢ノゾミは、雨漏りをしておらず、知っていなければ猫を発見できなさそうな橋の隅に隠した。そして、僕の傘の下まで来るとこう言った。
「明日まで絶対に見つかっちゃいけないから隠しておいた!」
そうかいそうかい。
僕は少しの遠回りになったが、平沢ノゾミを家の前まで送った。もしかして、遠回りさせちゃった? と、余計な心配をしてきたので、僕は通り道だから気にしなくてもいいと、愛想よく伝えた。

——2029年3月18日。
やあ、お勤めご苦労様。君は捨てられている黒猫に出会ったんじゃないかな? 出会っているとしたら、猫の里親に当てがあると思っているのではないだろうか。そうなると、君は里親候補の彼女をどうやってクリスマスに誘おうか迷っているね。大丈夫、こう電話すればいいんだ。君に伝えたいことがあるから明日の予定は開けておいてほしい。集合場所はネコ橋の上なんてどうかな。時間はお昼の1時で。ってね。ああ、そうそう、今すぐ電話するんだよ。時間は待ってくれないんだから。明日の夜にまた、手紙を送るよ。

——2019年12月25日。クリスマス。
さて、ついにクリスマス。外は雪が降っていて寒い。今朝早くから降り始めたようで、雪も積もっている。早く山田トモミにはネコ橋に来てほしいものだ。

昨日、平沢ノゾミを家に送り届けた後に家に帰り、指先が悴んでいたので、そのままシャワーを浴びた。それから録画していた番組を見てひと息ついたところで、僕の遊戯室である地下室の小部屋へと向かった。案の定、メモ帳には新たに文字が残されていた。内容は山田トモミとクリスマスを過ごす方法。なかなかハードルの高い方法だったけど、僕の行動が事細かく記されていたので、疑いもせずに電話した。僕の仮説が正しければ、このままメモ帳通りにことを進めればいい。
電話した結果はOKだ。山田トモミは異様に慌てた様子でカタコトだったけど、なにか用事があったのかもしれない。それは悪いことをしたと思いつつ、僕はメモ帳を破ってファイルに入れたのだった。

現在時刻は12時45分。少し早めに出すぎてしまったようだ。とても寒い。マフラーとコートだけでは今年の寒波を防げそうにない。新しいモコモコのインナーでも母にねだってみたいところである。
そわそわしているとはこのことだろう。何度も腕時計を見ては秒針の行方を目で追う。遅い、遅すぎるぞ秒針よ。もっと早く走れないのか。
そんなことを考えていると、時刻は12時50分になった。そのタイミングで、山田トモミは小走りでやってきた。その意外な服装に、思わず見惚れてしまった。
黒いヒールにチェックのスカート。白い服の上に茶色のチェスターコートを羽織っている。頭には黒のニット帽を被っており、肩には高そうで収納性の低そうなバッグを掛けている。髪もなにやらセットしているようだ。いつもの黒眼鏡も忘れずに。
僕が顔を赤くして山田トモミの服と顔を交互に見ていると、それが気になったようだ。
「どうしたの?」
「いや、少し意外でさ」
「なにがよ。私だってお洒落くらいします」
「だ、だよね。ちょっと普段より可愛かったからびっくりしただけ」
「そ、そ、それならいいんだけど」
僕と山田トモミはお互い、目を合わせられないまま地面の雪を眺めていた。
すると、一台の車が通り過ぎたところで我に帰る。本来の目的を見失うな。僕にはやらねばならないことがある。僕の推測が殆ど正しいことはメモ帳が示してくれている。あとは僕の力次第だ。
そう考えていると、山田トモミの顔が曇っていることに気がついた。僕とクリスマスを過ごすのが嫌なのだろうかとも思ったが、もっと別の理由があるだろうと理解した。僕の推測……というかもう殆ど僕の推測が真実なのだろうが、それによれば山田トモミはきっとあの子と繋がっているはずだ。何も心配することはない。
「そういえば、昨日平沢さんと相合傘してたでしょ」
何故それを知っていると言い返そうとしようとしたが、いまの山田トモミの言葉で僕の推測が確信へと変わったのでそんな気は起きなかった。
嬉しさのあまり、ふふふと笑いが溢れてしまっていると、山田トモミは「なによ」と不満気だ。
現在時刻は12時55分。そろそろ約束の時間になっていた。ここで立ち話をしていても進展しないので、僕は先を急ぐことにした。
「じゃあ、いこうか」
僕が歩き出したところで、山田トモミは驚いた様子で言った。
「手は繋がないの?」
「え?」
「え……」
思わず聞き返してしまったが、考えてみると手を繋いでいた方が成功率が高い。それに、向こうから誘われたからには乗ってあげるのが同じ学級委員の使命だ。
「いや、別に嫌ならいいんだけどそういうことかなと」
変に弁解をする山田トモミの手を握る。冷たい。山田トモミが普段使うバス停からネコ橋までそれなりに距離がある。先ほど見せたペースでこれば少しは早くたどり着くのだろうが、女の子は冷えやすいとどこかの本で読んだから、おそらくそうなのだろう。
僕はずっとコートのポケットに手を突っ込んでいたから、少なくとも山田トモミよりは暖かい。どちらにせよ、ここで手を繋いでおいて損はない。
「行こうか」
僕はそのまま山田トモミを引っ張るように歩いた。山田トモミがヒールを履いているので、普段よりは少し遅めに歩くことにした。
僕が橋の下へと向かっているのを理解した山田トモミは、意外そうな感じでこう言った。
「ネコ橋に行くの?」
「ああ、君に見せたいものがあるんだ」
「何、もしかしてサプライズ?」
「まぁ、そうとも言えるかな」
ゆっくりと階段を降り、橋の下にスタンバイしているであろう平沢ノゾミの元へゆく。事前に約束した通り、平沢ノゾミは猫の入ったみかん箱の段ボールを持って立っていた。それをみた山田トモミは、どういうことだと僕の方を見る。僕はそっぽを向いて頬を掻く。
すると山田トモミは、小走りで平沢ノゾミの抱える猫の元へ駆け寄ろうとした。僕は反射的に後を追った。
しかし、山田トモミは次の瞬間、命を失う危機に直面する。山田トモミはネコに向かうのに夢中で、彼女に迫る危機に気づかなかったのだ。普段の冷静な彼女なら、あんな落とし穴に気付かないはずなのだが、大好きなネコを前にして落ち着いていられるほど、彼女は劣等なモフリストではなかった。
山田トモミが小走りで猫の元へ向かう途中、走るのには不向きなヒールが地面から大きく離れた。彼女の足は、昨日の大雨にできた水たまりが今朝凍ってできた結氷で滑ったのだ。そのまま山田トモミの体は頭を下にするように宙に浮かんだ。平沢ノゾミは両手をダンボールに塞がれているから、片手を伸ばすしかできない。そう、この場に山田トモミを救える人間は僕しかいないのだ。
僕は反射的に後を追ったおかげで、彼女の体を両手で抱えることに成功した。の、だが、僕は命を失う危機に直面する。
山田トモミを救う事に夢中で、僕は自分に迫る危機に気づかなかったのだ。普段の冷静な僕なら、あんな落とし穴に気づかないはずがない。僕は山田トモミが滑った結氷に足を滑らせてしまった。しかし、不幸中の幸いというべきか、後頭部を硬く吸水性の低いコンスリートぶつけることもなく、僕と山田トモミは川へダイブした。

現在時刻は1時30分。場所は我が家。
リビングには、10年後の僕から届いた手紙をソファーでくつろぎながら不思議そうに眺める僕の部屋着を着た風呂上がりの平沢ノゾミと、バスタオルで体を拭いて後に部屋着へと着替えた僕がいる。山田トモミは現在、我が家のバスルームを使用中だ。いまから覗きに行こうにも平沢ノゾミが行く手を阻むであろう。
「それにしても、本当に迷惑な人だね。なにが『命が失われると書けば本気になると思った』よ」
「我ながらこんな大人にはなりなくないと思ったよ」
「まぁ、なるんだろうけどね」
そんな嫌味混じりの言葉を投げかけられた。
家に帰り、玄関で山田トモミと平沢ノゾミに待ってもらっておき、バスタオルで体を拭いている最中、なんとなく地下室が気になった。部屋着に着替えた後、地下室のメモ帳を覗いてみると、普段は1日に1通で夜にしか届かないはずの手紙が届いていたのだ。
内容はこうだった。

——2029年3月18日。
作戦成功、おめでとう。君のおかげで尊い命が救われた。まぁ、冗談なんだけどね、命が失われるって話。もし、あそこで君が山田トモミさんを助けようとして川へ落ちなくとも、山田トモミさんは死にはしなかったんだ。山田トモミさんの後頭部がコンクリートから衝撃を受け、その影響で生きるのに不便な後遺症を残す事を引き換えにね。それなら、寒い思いをしたことを割り切れるだろう? なら、万々歳さ。そうそう、なんで死ぬって書いたかというと、僕にもそう書かれてたから真似したってのが一番いい理由かな。僕も君と同じように10年後の僕から手紙が届いていたんだ。不思議だよね。それと、いまの君なら死ぬ可能性があるって書いた理由がわかるんじゃないかな。そう、命が失われると書けば本気にすると思ったからだよ。嫌な話だよね。では、今回の事件はこれにて終幕。また会えたら地下室で会おう。

——2019年12月25日。
僕と平沢ノゾミは、リビングのソファーでくつろぎながらお昼に放送することで有名な番組をみていた。ホワイトクリスマスにロケをしている芸能人が食べている御当地グルメを見ながら山田トモミの風呂上がりを待った。
「それにしても、私が助けに川へ飛び込まなかったらどうしてたのかな、舟橋くん。私がカナヅチなら3人とも死んでるよ」
「僕がカナヅチで悪かったね」
平沢ノゾミは嫌味混じりに僕のコンプレックスである泳げないことをいじってきた。
僕と山田トモミが川へダイブした時、平沢ノゾミが僕達を助けようと後を追うように川へ飛び込んだのだ。体力賞をもらっていた平沢ノゾミは運動神経が抜群であるので、僕達2人を土手へ引きずりあげることくらい簡単だったのであろう。まったく、どこにそんな力があるのか不思議で仕方がなかった。僕よりも男をやっている女だ。
「残念だけど私はカナヅチじゃなわよ」
お風呂あがりの山田トモミだ。僕の部屋着を着てリビングに顔を出したのであった。なんだか、女の子が僕の部屋着を着ていると思うと、なんだか不思議な気持ちになる。これが興奮というやつか。犯罪者予備軍だな。
「シャワーを借りている最中に思ったけど、私に黙っていた部分が手紙に書かれていたなんてね。それはいいとしても、そもそも舟橋くんが仮説を立てていて、それが殆ど真実だとわかっていたなら、どうして私をネコ橋に連れ込んだのよ。それを避ければクリスマスに3人で寒中水泳せずに済んだのよ」
……盲点だった。

あれから僕は山田トモミの勧めでシャワーを浴びることにした。彼女曰く、見ていると寒気がするくらい手がふやけているからシャワーでもありたほうがいいとのことだ。まったく、気が効く真面目な学級委員だこと。それに、平沢ノゾミが探していた里親も見つかったみたいだし、これにてクリスマスに起きた事件は解決だろう。
平沢ノゾミが言っていた『黒猫に餌を与える人物』とは山田トモミの事であったのだ。彼女は平沢ノゾミが里親を探しているというチラシをみて、もしかしたらネコ橋に匿っているのではないかと思った。平沢ノゾミは誰がみてもおっちょこちょいな女子であるから、うっかり餌を与え忘れるのではないかと、こっそりマグロの缶詰を与えていたのであった。
そしてあの日、予想外の土砂降りの日にも、僕と別れてバスに乗ったフリをしてネコ橋へと向かった。すると、土手から相合傘をして歩く僕と平沢ノゾミを目撃。それだけならよかったのだが、相合傘をする間柄の女がいるくせに、僕は山田トモミをクリスマスに誘ってしまった。僕に対して少しの苛立ちを覚えた彼女は、相合傘をしていたのを目撃したことを打ち明けたのだった。

再びバスタオルで体を拭いて部屋着に着替え直していると、山田トモミと平沢ノゾミが僕の遊戯室である地下室を見てみたいと言い出した。僕は重い足取りで地下室へと向かうが、2人は興味津々だった。まったく、僕は山田トモミにとんでもない任務を遣わされてしまった。それを考えると朝も起きれない。
地下室へと扉を開けると、そこには可愛らしい顔の黒猫がいた。まったく、僕がこれから猫アレルギーの母からどうやって黒猫を隠しきればいいのだ。そう、黒猫の里親は僕になってしまった。山田トモミがこっそり餌を与えていたのは、飼いたくても飼えない環境にいたからだ。2人が2畳の狭い空間にいる間、僕は上から猫に戯れる少女を眺めるしかなかった。
ふとメモ帳の置かれている机を見てみると、そこには見慣れた時で『Merry Christmas.』と書かれていた。

ホワイトクリスマスと黒猫

執筆の狙い

作者 さつき
119.82.162.183

短編として大賞に応募しようと思っている高校二年生です。拙いながらも一生懸命書いたので、良い点と悪い点を添えて感想を書いてくださると嬉しいです。

コメント

朱漣
210.170.105.157

 さつき様

 拝読しました。
 すごく良いと思います。僕の高校生の頃と比べたら雲泥の差でレベル高いです。
 伏線の張り方もうまいし、きちんと回収してあるし。

 ただ、所々、説明的になってしまってる箇所が見受けられる点と、平沢ノゾミと山田トモミにもう少し個性を付けてあげると良かったかな、と思います。
 あと、現在と未来を年月日を記載することで切り替えてますけど、ちょっと分かりづらいので、未来からの手紙の口調をもう少し特徴的に(例えば、へらんめぇ調とか^^;)したらどうかなと思いました。
 応募予定ということですので、枚数制限があるのかもしれませんが、ストーリーそのものは魅力的なので、もう少し細部のディテールとか心理描写とかを書き込んだら、もっと素敵な作品になると思いました。

さつき
119.82.162.183

朱漣さん、ありがとうございます!
そうな事言ってもらったのは初めてだったので嬉しくて朝も起きれません!
伏線は何回か読み返しながら張ったので、それなりにできていると思ったので、地震の場所を褒めてもらったので自信にしたいと思います!

確かに説明口調になってました汗
ヒロインの個性も、読み返してみれば驚くほどありませんでしたね……。
口調に関してですが、主人公が親近感を覚える口調にしないと未来の自分だとは思わないのかなあと思ったりもしました。だから、構成を見直したいと思います。
これからも頑張ります!

阿南沙希
126.209.27.220

読ませていただきました。個人的な考えですが、物語は主張(伝えたい大事なこと)とあらすじの二つがうまく組み合わさった時に面白さが生まれます。このお話は主張よりストーリーラインが前面に出されているので、お話として読めたのは良い点だと思います。あまり主張が強すぎてしまうと、お話を読んでいても映像が思い浮かぶというよりお経を聞いているような気持ちになってしまうので。

しかし、そのストーリーラインが面白かったかというと、イマイチでした。理由は、「ただ完結させただけだから」です。
未来の主人公が手紙を出した経緯、二人のヒロイン、猫のエピソード…どれもスイッチ一つ押す程度の無難な範囲に収まっていて、オチを踏まえた読後感として、失礼ながら作中ほどの時間かけて解き明かすような出来事ではないと思いました。

里親探しはSNSを駆使してもいいですし、死ぬ発言は最終的にはウソにしても主人公の行動で未来がわからなくなった、としてもいい。結局何も起こらず妥当な選択をして誰も傷つかず苦労もしなかった、というのが一番つまらないです。作者も登場人物も若いのだし、若さならではの勢いを行動や発想に出して、ストーリーはもっとでっかく出ていいと思います。

公募の中には高校生向けの募集もありますが、10代の今しか組めない勢いある筋書きや感性も見られていると思うので、その点からも小さくまとまる、確実かもしれないけど安易な方法に落ち着く、というのは良くないです。
どこに比重を置くかは分かりませんが、ポイントを絞って主人公たちに本気で取り組ませてみると収穫があるのでは。

とはいえ、お若いなら書きたいことにこれから出会えたりしますし、少しずつ蓄積を増やしていかれるのがいいと思います。公募は何百人の中から選ばれるもので、その時の状況もあるので、必ずしも結果が出るとは限らないですが(こないだ知り合いの国語の先生が零していたのは高校生俳句コンクールでも私立の御三家とか名門の文芸部がバンバン応募してくるのでなかなか部員たちの句が選に入れなくなってきた…ということでした)、同人誌でも文芸部でも、人目につく形で継続していくといいかと思います。

あと、お節介だったらすみませんが、公募準備作は仕上げたら運営さんに連絡してこのサイトから削除しないと規定に引っかかる可能性があります。
また、公募のために用意しているネタは公募以外に事前に掲載しない方がいいかもしれません。迷うことあれば完全な習作にするか、多少荒くなるのは承知の上で同じテーマで別内容を書いた方が無難です。
あまりしたくない想定ですが、誰でも見られる場所はそれこそ色んな人が見るので、自分が見せたネタがどうなるかはわからないというリスクは常にあります。

これは同じ作家志望の友達の話ですが、彼はブログで自分の夢や読書記録、小話のネタを書いていました。が、それを見ていた友達が、自分の連載に行き詰まって彼のネタをパクってしまったんですね。多少アレンジしてはいましたが…どちらもアマチュアかつ小さな話だし、ことさら権利を主張していなかったのもあって、彼は友達に盗作のことを指摘しませんでした。しかし、ブログは閉じ、二人の友人関係は破綻しました。
もちろん剽窃した人が悪いのですが、ネット掲載に対する意識が低かったのも同じくらい良くなかったと思います。拝借されたら怒りにつながるような大事なことは自分でしっかり守っておくのが大前提ですよね。って、その友達が私にこのことを話した時に言ってたことですが、、、こんなこともあるんだ程度に心に留めてくださったら幸いです。

(ネット掲載する上に皆さん見られる場所で不穏なことを書いて、お気を悪くされた方がいたらすみません。読み流してください)

ちょびひげ
203.104.112.217

最初の印象は、高校生らしくない文章だなぁということ。
高校生ならいわゆるラノベにみられるような自意識満載の文章だという先入観が自分にあったことに恥じ入ります。
読み進めるのが苦にならないちゃんとした文章だと思いました。
一方、感情を抑えすぎなのではとも思います。
若い人の文章で評価されるのは、過ぎ去ってから気が付く種類の感情の起伏だと思います。
それこそ多少の文章の乱れなど吹き飛ばすくらいの勢いが欲しい。
公募などで賞を取るためには、上手になろうとするより、今の自分にしか書けないものを探す方が早いかもしれません。

読んでいて一カ所だけ「ん?」と思った部分。
途中でシーチキン味の猫缶が出てきて、その後にマグロ味の猫缶という描写がありました。
両方ともツナなのになんで書き分けるのだろうと思いました。
上辺を取り繕いがちなノゾミと、純朴で思ったことをそのまま口にするトモミのメタファーだとしたら末恐ろしい。
まさかとは思いますが、体の震えが止まりません。

さつき
119.82.162.183

阿南沙希さんへ、コメントありがとうございます。
沙希さんが言いたいのは、伏線やキャラが弱いということですかね。樹形図のような構成ではなく、ただ枝分かれしたような独立したもの……という解釈でよろしいでしょうか。だとしたら、そうかもしれません、
というかそうでしょう。それに、単純化してストーリーを他人に伝えようとすると、たしかに「え?そんだけ?」って感じですよね……。里親探しにSNSを使うっていう発想がありませんでした。それは僕の構成ミスです。
他の方からも勢いがない等の年齢の割にというコメントをいただきました。やはり、誰もが口を揃えて言うということは勢いが足りないのかな……。ちょっと不安になりました。テニス部なので文芸部に入部し直しですかね汗
盗撮については大丈夫です。ここに投稿する前に自身のホームページに投稿したので、時間がわかると思うので大丈夫だと思います。
ありがとうございました。

さつき
119.82.162.183

ちょびひげさん、感想ありがとうございます。
いえいえ、僕も「高校生が書いたって書けば大人が『どれどれ、ちょっと叩いてやろう』と思って読んでくれるかな?」と思ってたので(汗
自分にしか書けないもの、ですか。それがこの纏まったお手本(個性がないという意味です)のような作品だと思ってました。でも、丁寧に仕上げるというよりぶっとんだ方が良いのでしょうか……。まだ、公募で挫折した経験がないのでわからないですが、きっとわかる時が来るのでしょうね。その時に、勢いは学ぶとします。今は、これくらいバカ丁寧に作品を完成させないと不安で仕方がないです。

缶詰の件ですが、買い被りすぎですね笑
僕がツナを分けて書いた理由としては
①味を分けないと作品上成立しないから
②シーチキンとマグロがパッと浮かんだから
③猫といえばシーチキンとマグロだから
です。
それと、上辺を取り繕いがちなのはトモミで、素朴に思ったことを言うのはノゾミのつもりで書いたのですが、伝わってなかったですね。もっとがんばります。

幡 京
121.3.235.25

高校二年生でこのうまさ。
ちょいと「アルジャーノンに花束を」と村上春樹を思い浮かべましたが、
デブーするのでは?

幡 京
121.3.235.25

って、高校二年生と云う「色眼鏡」で見ればですが。
齢は関係なくブレてもなく、ケチつけようがない小説、だと思いました。

さつき
119.82.162.183

幡 京さんへ。
コメントありがとうございます。
お褒めの言葉、嬉しかったです!
失礼ですが、デブーってなんですか?
それと、つまり色眼鏡でみたら村上春樹さんで、なければそれなりに文句をつけない作品っていう解釈でいいですかね?

幡 京
121.3.235.25

いえいえ。
「デブー」=デビューです。
「高校二年生」と云う若さであすこまでの作品を書かれた驚きです。
別にそれがダニエル・キースや村上春樹に似てようか、こりゃ美味い生ける、と
思ったわけです。気にせずに、こんな酔っ払いの戯言を。

ちなみに小生の母校は、村上春樹を生んだところなので全國から何千人の
ハルキ・フリークがゼミを受けますが、真面目なしとはけっこうポカな
描写をして、ゼミ生から袋叩きにあっておりました。

思い出すのは「街一番の国立大學に入学して・・・」・・・はあ?
ま、そんな思ひで「。

三月は深き紅の淵を
219.100.84.36

画面見ただけで、レスっててナンですけども・・

“10年後の自分から手紙が届く〜”系は、
3年ぐらい前?に巷で大流行りして、何作もアニメ化〜映画化〜実写ドラマ化になったもんで、
後発で書いても悪くはないんだろうけど、新鮮味がない。

(そうした映像化作品の中でも、初回から矛盾に目がいってしまい、そんで脱落したのが、『オレンジ』…)


話自体は、この紙幅で「プチ歴史改変を伴う」ってなると、
短編書き慣れた人じゃない限り、
「エピソードの書き込みが浅くなり、余計な説明に終始して、そこで行数とられて、全部が薄くなる」
のが分かるので・・ まだ読んではいない。



すんげぇ気になるのは、冒頭。

「手紙のくせに、日付から」って、どうなん?? 「それだと日記〜」と突っ込んでしまった。

「書簡で進行してゆく」タイプの小説って、ぱっと出て来るのは、
長野まゆみ『東京少年』とか、
ジャック・フィニイ『ゲイルズバーグの春を愛す』収録の短編(タイトル何だっけ?『愛の手紙』だか『三つの手紙』だか…)
なんだけど、
どっちの作品も、【挿入されている手紙文は、きちんとその形式にのっとった手紙文だった】んで・・

公募への投稿考えてるなら、【そこから】でしょう。

漫画だってそう。
「投稿する場合は、投稿サイズにしっかり描く」んですよ。
同人誌サイズの原稿で、出版社に送りつける人はいないわ。。



あと・・タイトルはよくない。
投稿作、タイトルはとても大事で、「まずタイトル勝負」だから。
こんなんつけるんなら、潔くシンプルに『ホワイトクリスマス』の方がいいような気がする。

三月は深き紅の淵を
219.100.84.36

あと、まあ、
この内容で投稿するとして、
「手紙文を挿入している部分の、原稿用紙上の正しい処理」が必須。
(ネット画面じゃなくて、「原稿用紙の使い方」ね)



前後に上がってる、別の高校生の欄にも書きましたけど、
「四百字詰め原稿用紙における、引用部分の正しい記載法」がちゃんとあって、
それは『高校国語便覧』に載ってるんで、要確認。



基本はシンプルなんで、ここで教えてもいいんだけど・・
“それだと右から左で身に付かない”から・・と他の人にも書いたばっかし! なんで、
ここでも割愛する。

くきげんずい
218.221.116.235

書いた物をあれこれ批判しながらてめえが何書いたか教えね奴、多くね?

さつき
103.5.140.149

くきげんずいさんへ。

べつにいいのでは?

ご利用のブラウザの言語モードを「日本語(ja, ja-JP)」に設定して頂くことで書き込みが可能です。

テクニカルサポート

3,000字以内