作家でごはん!鍛練場
香川

こわれものたち

第1話『アイ・ワズ、アイ・ワズ!』

 ジャックは左手でハンドルを器用に操作しながら、右手で備え付けのスピーカーの音量を調節している。体はやや斜め。助手席に座る女性のわずかな表情の変化をも、察知できるようにするためだ。つい今しがたも、女性はエレキギターの耳にギンギンと響く音に眉を寄せてカーラジオを見つめた。それをほんの一瞬のうちに察して、彼はスピーカーの音量を下げているのだ。
「音、大丈夫?」
 彼が言うと、女性は、一瞬、目を大きく開いて彼を見つめたが、その驚きはすぐに緩やかな笑みに吸い込まれる。
「ええ、大丈夫」
 彼女の笑顔をしっかりと確認し、視線を合わせて微笑んでから、彼は再びその目を前へ向ける。スピーカーから離しても、右手はハンドルを握りはしない。この右手は再び彼女が顔をしかめた時のために、あけておかなくてはならない。彼女のための右手だ。左手だけでハンドルを操作し続ける。
 
 ジャックはロボット――ジゴロ・ロボットだ。最新型で、搭載された人工知能を学習によって高めていくことができるタイプ。これまでも、孤独な女性や訳ありの女性の慰め役として過ごすうちに、さまざまな知識を得てきた。例えば、今のように車に乗っている時に急ブレーキをかけてしまったとしたら、どうするか。女性の体をかばうように、その前に片手を伸ばして、つんのめりそうになるのを抑えてやる。そうすると、大抵の女性は喜ぶのである。他にも、一緒に歩く時は必ず彼が道路側を歩くようにするとか、高い位置にあるものはさりげなくとってやるとか、ふとした瞬間に女性の髪に触れてみるとか、とにかく、女性がうっとりなるようなさまざまな気遣いや仕草を、彼は学んできた。
 ジャックの持ち主は、高級ホストクラブのオーナーだ。そこでは、店内サービスと出張サービスの両方を行っている。もちろん、人間のホストもいる。しかし、彼らは女性の心を学習しようとしない。そのため、ジャックのようなジゴロ・ロボットの方が人気で、クラブの指名数のナンバー1からナンバー7までを独占し、ナンバー20までで18名を占めているのだ。今、隣に座っている女性も、いつも彼を指名してくれるお得意様の一人だ。彼はこの女性の好みや性格、そして男性を見る時のお気に入りの仕草や恰好まで知り抜いており、その情報はすべてデータ化され、胸にある彼の頭脳――三つのAIの内の力学AIに保存されている。彼女とのデートの時は、机の引き出しをあけるように、そのデータを取り出せばよい。そして、ただそのデータに沿って、小さく縁の細い眼鏡をかけてみたり、車をバックさせる時に助手席の背に手をかけてみたりする。それだけで、彼女を楽しませることができるのだ。
 
 ジャックはホストクラブまで車を走らせ、ギラギラと下品な光を放つその駐車スペースにすっぽりとおさめる。もちろん、バックの時、助手席に手をかけるのは忘れない。そして、ひらりと身を翻すように車外へ出ると助手席へまわり、ドアを開ける。女性は、ありがと、と短く言いながら、彼になど目もくれずに車を降りると、そのまままっすぐに店内へ向かう。彼はそんな女性を人ひとり分の距離を取って追う。
 店内に入ると、いつものように生ぬるい空気がゆらゆらと流れていた。熱い吐息があちこちで漏れていても、誰もが気付かないふりをする。そのため、ただ空気のみが熱を持つ。気が付かないふりをしやすいよう、薄暗い。人間がものを見るたよりは、陰った天井を泳ぐ、赤、黄、青といった色とりどりの点から漏れる微かな光の膜のみ。しかし、ジャックは視覚モードを暗闇に切り替えているため、この部屋の隅々まで認識できる。あくまで人間のための暗闇なのだ。
「おかえりなさいませ。お部屋はどちらになさいますか?」
 近づいてきたウェイターは、しん、とした雰囲気に溶け込むようなささやき声を出す。
「いつもの二〇八号室」
 女性の声は、ひっそりとした空間を貫くように、響く。
「承知いたしました」
 ウェイターはそう言い、ゆったりとした動作でカウンターへ戻ると、壁に取り付けてあるキーストッカーから、じゃら、と控えめな音をさせて一本鍵を取り出し、女性の方へ。そして鍵を渡すと「ごゆっくり」とだけ言い、カウンターへ身を隠すように、そっと戻る。
 二〇八号室は、このクラブで最もグレードの高い部屋の一つだ。コンセプトは水。ガラスのテーブルや床の中には、白砂がしかれ、まるで砂浜のよう。ベッドの脇にある太い柱には水槽が埋め込まれていて、その中を、まるで精巧に作り上げられた一つの作品のような、小さくも美しい熱帯魚が、漂うように泳いでいる。円形のベッドはやわらかいが決して沈み込まず、体をしっかり支えてくれる心地良さがあり、しかも二人どころか四人は横になれそうな広さだ。巨大な液晶テレビもあり映画の視聴もできる。尤も、ここで映画を見ることなど、ほとんどないのだが。
 ジャックは部屋に入ると、すぐに空調機のところへ行き温度を上げる。彼女は寒いのが苦手なのだ。それから照明をスタンダードからやや暗めな「3」に切り替え、湯を沸かそうと風呂場へ向かう。しかし、そこで、ソファに座ったまま、彼女は小さく、こう言う。
「やめて、今日はいいの」
 ジャックは浴室に掛けた手を止め、ひょいと首を動かして女性の姿をとらえる。その表情から彼女の心を知ろうと考えたのだ。だが、眉をひそめた、どこかおぼつかなげなその表情から読み取れるものは漠然としていて、よく分からない。彼は仕方なく彼女の方へ歩み寄り、横に腰掛けながら尋ねてみる。
「何かあった?」
 しばしの空白。女性は彼の方を向かず、ただ床の一点を見つめている。眉をひそめて。そして、数秒後、そのままの状態で、口だけ動かして話し始める。
「夫にここに来てることがバレちゃったの。だから、もう来れない」ふうと一息、口から洩れる。「でもあなたと一緒にいるのは楽しいから、最後にもう一度だけデートしたいなと思った。それだけ」
「セックスはしなくていいの?」
「ええ、したら別れ難くなるから。今日は、これで終わった方がいい」彼女はまた言葉を切ったが、少し間を置くと「さみしい?」
「さみしい」
 間髪入れず、彼は応える。すると、彼女は――声をあげて笑い出した。奇妙だ。口元とそこから漏れる声は笑っているのに、依然として眉は寄せられている。彼がこれまで触れたことのない、奇妙な、笑み。
「そんな言い方じゃ、嘘だってバレバレじゃない。もう少し勉強しなさいよ」
「嘘じゃない」
「嘘でしょ。だってあなたは『さみしい』って感じてないんだから。そう言った方がいい、っていうのは、本当に感じてないんだったら、嘘なんだよ」
 彼はうろたえる。こんなことを言われたのは、はじめてだった。胸の学習データをさらって、どう対処すべきか考える。コンピューターがせわしく稼働するジ、ジ、ジ、ジ、ジという音が、金属の骨を通して全身に伝わる。しかし、似たようなケースは一つもない。仕方なく、彼はコンピューターの動作を元に戻し――骨の震えが静かに消えていく――もっとも簡単な言葉を選択する。
「ごめん」
 瞬間、彼女の目は瞳の輪郭がくっきりと見えるほど、大きく見開かれた。が、その一瞬を置いて、瞼は緩まり、驚きは目から消えていく。
「あやまることないよ。あなたには感情がないんだもんね。私が馬鹿なこと聞いただけ」
「感情は、ある」彼は即座に言う。それははっきりしていたから。「オレのAIは三つのコンピューターから成っていて、その中には感情AIがある。自分が行動した結果、周囲がどう反応したかを学習データとして感情AIに取り込み、そのデータに応じて、自分を変化させて、感情を持つことができる」
「人の心を学んでまねたって、それは感情じゃないのよ」
「ちがう。きっと学習データがまだ少ないんだ。でも、完成されてなくても、感情はちゃんとある」
 ジャックが話す間に、女性の目は再び床の上を泳ぎ始めていた。はっきりと定まらないその視線は、なにやらそこに幻でも見るかのように、ぼんやりしている。しばらくは、そのまま彼女の時は止まったかのようだった。しかし、数秒後か、数分後か、とにかくある瞬間、うたれたように彼女はぱっと顔をジャックに向け、
「今、私と話して、どう感じた?」
「どうって……」
 そう言いながら、彼は正しい答えを探そうと胸のコンピューターの回転を速める。ジ、ジ、ジ、ジ、ジという、おそらく外には聞こえていないであろう音が、骨を通して全身に響く。体の芯が震える感覚――。彼はこの感覚が嫌いだった。
「不愉快だと、思った?」
 ジャックが答えを出す前に、女性が言った。不愉快? 彼のコンピューターはピタとその動きを止め、そして次の瞬間には再び「不愉快」という言葉を求めて動き出す。ジ、ジ、ジ、ジ、ジ――
「いや、思わなかった。なぜ?」
「普通の人だったら、思うのよ」
「ありがとう」
 彼の言葉に、再び、彼女の目は黒目の円い輪郭がくっきり見えるほど、大きく開かれる。しかし、今回、その驚きはすぐには消えない。
「なんでお礼なんか言うの?」
「教えてくれたから」と彼は事実をそのまま答える。
 彼女の大きく開いたまぶたは、緩く瞳の輪郭を包み、黒目がちないつもの目に戻る。そして、一瞬の間を置いて――彼女は笑い出した。
 その笑顔はさっきのあの笑顔と同じだった。口元と声は笑っているのに、目元には笑みなど微塵もない。眉を寄せ、喜びを剥ぎ取られたかのような、うつろな目。ただ、口だけで笑う。奇妙な笑み――
「今ね、これで良かったんだって、分かった。あなたに会えなくなって、良かったんだって。だって、夫はちゃんと側にいてくれるけど、あなたはいてくれないもの」
「ここにいるよ」
「そういう意味じゃないんだよ」と彼女は言う。「夫はね、ちゃんと私を愛してくれるの。仕事であまり一緒にいられないけど、でもちゃんと愛してくれる。ううん、別に愛してくれてなくてもいいんだな、きっと。そういう問題じゃなくて、なんていうか――例えば夫は私の顔を見て、キレイだなとか、逆に肌が荒れてるなとか、そういうことを思うの。私の隣に座って、楽しいとか、つまんないとか、思うの。私が他の誰かと寝てるって分かったら、嫉妬するの。でもあなたは――何も思わないじゃない。いくら私が楽しくたって、それは私一人が楽しいんであって、あなたは楽しくない。つまらないとさえ感じない。私のことを、好きだとも嫌いだとも、思ってくれない。それじゃ、一人でいるのと変わらないのよ。私は一人でさみしいからここに来てたのに、結局、ここにいる時もやっぱり一人ぼっちだった。楽しいから気づいてなかっただけで」
 彼女はそこで言葉を切る。そして、しばらく伏し目がちに床を見つめていたが、ふいと思いついたように「ばかみたい」とつぶやく。「ほんと、ばっかみたい」
 うつむいた片方の頬を水滴が一筋、伝う。静かに、しかしくっきりと描かれた線。それを見ると、ジャックの胸でジッと音がし、同時に体が動く。女性が涙を流した時、どうすべきかは知っている。彼は右手を彼女の華奢な肩にかけ、体を引き寄せ、そして両腕を回して抱きしめた。彼の平たく硬い胸に彼女の乳房が押し付けられて、つぶれる。お互いの、肩も、胸も、腹も、相手のそれに添うように、ぴったりとくっつく。しかし――
「やめてよ」
 と言って、彼女は両手で強く、彼の体を押しやる。引き離された瞬間、視線がぶつかる。彼女はぱっと顔をそむけ、
「これで終わりって言ったでしょ? もう眠る。それで、本当に終わり」

 女性がベッドで眠っている。ジャックはそのベッドの脇にあるソファに腰掛けて、彼女の背を見つめる。
 普段なら一緒に眠る。そう、彼にも眠りが必要なのだ。しかし、当然それは人間の眠りとは異なる。眠っている間に、三つのAIに蓄積されたデータを最適化するのだ。そうしないと、一日の内に得たデータの大きさのため、コンピューターの容量がパンクしてしまう。「睡眠」の間にデータを圧縮したり、場合によっては削除したりすることで、コンピューターの機能を保つことができるのだ。この作業は自動で行われるため、彼自身がどの記憶を残すかを選択することはできない。ただ、眠りから覚めた時には、彼は無駄な記憶をすべて削除された「最適」な状態になっている。無意識の中で捨て去られたものがどんなものだったかも、分からないまま。
 しかし、この時彼は眠りたくなかった。眠ることで彼女の言葉も、表情も、涙も、すべて削除されてしまう気がした。もしかしたら、そうやって削除されてきたものの中に、捨てられてきたものの中に、何か大切なものがあったのかもしれない。だから、彼は彼女のように孤独を、悲しみを、感じることができないのかもしれない。理解することができないのかもしれない。彼の不完全な感情は、ただ、忘れないことを望んでいた。
 しばらく、じっと、ベッドで眠る女性を眺めていた。だが、ある時ふと思い立ち、ジャックはソファから立ちあがり、彼女の方へ近づく。音を立てないよう、そっと。すぐそこまで来ると、掛布団からのぞく白い滑らかな背中が呼吸に合わせてゆっくり上下するのを、見つめる。光を反射し、まるでビロードのように背の艶が動いている。そして、彼は言う。唯一、はっきりと知っている事実を。
「オレは、いる」
 そう言っても、眠る彼女は反応しない。相変わらず、一定のリズムで肩を上下させるだけだ。当たり前だ。眠っているのだから。しかし、どういうわけか、期待が砕けたような感覚が胸に走る。

 窓の外を満たす夜闇は時間の経過にしたがって、だんだんにその色を薄くする。その薄さは次第に明るみを帯びて、闇に代わり窓から差し込み始める。そのうち、光の帯がベールのように幾重にも折り重なって床に日だまりを作るようになる。明るくなった部屋は、この建物は、夜の生ぬるくとろりとした雰囲気を、すっかり失う。そうなるまでの一部始終を、ジャックはソファに座って見つめていた。
 そんな光の変化がなければ、流れていることさえ忘れてしまうような時は、ある瞬間、壊された。
――がんっ――
 大きな音がし、彼の素足に床の震えが伝わる。咄嗟に音のした方を向くと、そこには一人の男が開け放たれたドアを背に立っていた。データにないその男は、冷たく、敵意をむき出しにした目で、ジャックをとらえている。二人の目がカチリと合う。――と、次の瞬間、男はジャックに飛びかかってきた。
――危険――
 彼のコンピューターがそう認識したと同時に、目の前が真っ赤な光に包まれる。あまりの強さに、何も見えない。そして、光は激しく激しく明滅し、彼の思考を奪う。危険、危険、危険、危険、危険、危険――。ただ、その言葉だけが回る。ぐるぐる、ぐるぐる回る。絶え間ない明滅と繰り返される言葉。キケン、キケン、キケン、キケン、キケン――
 ――と、ある一瞬を境に赤い光が弱まる。目の前に、ゆっくりと緩やかな明かりが戻ってくる。思考の輪郭も少しずつ、カメラの焦点を合わせるようにくっきりとなっていき、そして、カチリと部屋の様子が、目の前のものが、彼の目に映り、思考を捕える。
 男が倒れていた。うつぶせの状態で。黒い髪はまるで自己主張するかのようにてらてらと光を反射する。髪を艶めかすどろりとした液体は、頭から流れ出して床に赤黒い水たまりを作っている。そして、それはまるで生きているかのように、這うように、ゆっくり広がる。床を侵食するにしたがい、そのどろりとした濃い色は、伸ばされ薄くなる。男の近くにはガラスづくりの大きな花瓶が、割れてその破片をまき散らしている。破片はどれも先端を透き通るような赤に染め、その隙間から、透明なガラスが赤を反射しながら鋭く輝いている。
 目に映る光景によって、ジャックの思考は今起こった悲劇を悟る。そしてつぶやく。
「まずいな。すごく、まずい」
 悲鳴が響いたのはその直後だった。
 ベッドで目を覚ました女性は、すぐさま血を流す男に駆け寄る。彼の名らしきものを口にし、体を揺する。それは、どこか遠くで起きている出来事――モニターの向こうの世界のように、ジャックの目には映る。その遠い場所を見つめるうちに、彼の思考はある一つの選択に行きつく。彼のデータが、唯一、示した選択肢。
――逃げなくては――
 彼は窓から飛び降りた。

 ジャックは走る。人間と違い、疲れを知らないため、速さも体勢も、スタート時の状態をそのまま保ちながら、走り続ける。その速さゆえ、冷たい向かい風が剥き出しの皮膚――顔やはだけた胸や素足を強打するように、吹き付ける。冷たさと痛みが彼の体を蝕む。しかし、その感覚に――いつしか不思議な満足感を得ている自分に、彼は気が付く。内側で、データとは別のものが満ちてくる。冷たさや痛みを、感じる。そう、感じるんだ。感じてるんだ。

 しかし、ある瞬間、彼の胸でコンピューターの異常な音がした。ジジジジジジジジジジ――。容量がパンクしたのだ。その音は骨を通して全身に伝わり、振動させ、動きを奪う。足もガクガクと震え、ただそれまでの惰性で、足裏で地面を擦りながらかろうじて前へ進む。次には――胸のコンピューターが爆発したような凄まじい音がしたかと思うと、目の前が真っ白な光で包まれる。その一瞬の光を境に、今度はデータが、彼の記憶が、次々に現れる。これまで共に過ごした女性たち――金髪や黒髪、青、黒、榛色の瞳、滑らかな肌。そして――あの女性、奇妙な笑みを湛えた、あの女性の表情。それから憎しみに満ちた目、赤い閃光、てらてらと不気味に光を映す黒髪――。そういったものが浮かんでは消え、消えては浮かび――。そしてどんどん剥がれていく。見える記憶がどんどん減り、減るごとに暗闇が増していく。視界は次第にぼやけていく。思考の糸がぷつんぷつんと切れていく。全身が痙攣したかのように震え、目や口や鼻から体液に似せて作られた特殊なインクが漏れ出す。そして、悟った。自分は壊れるのだと。
 ジャックは消えかけていく意識の中、言うべきことがあるのを思う。彼が知っている、そしてさっき実感した、事実。その事実は彼が消えれば、一緒に消えてしまう。そうに違いない。だから、彼は叫ぶ。誰でもいい。この声を、事実を、どうか拾ってほしい。
「オレは、いた! オレは、いた! オレは、いた!」


第2話『少年は残酷な夢を見る』

「ねえ、S、起きてよ」
 遠くの方から聞こえた声が、S少年の意識を捕えた。感覚を包む薄靄が、去っていく。まだぼんやりとした思考を動かし、目を開けると、彼の顔を覗きこむ弟のTがいた。
「なんだよ?」
 そう言って起き上がると、Sは眠気を振り払おうと、伸びをする。Tは何やら恥ずかしそうに顔を伏せ、またなんだ、と言う。
 一週間ほど前、Tは自身が見る夢について、Sに相談していた。彼は毎晩夢を見るそうなのだが、なぜだか起きる時にはその記憶がなくなっているのだという。よくあることだ、とSは言ったが、Tは、いいや、と首を振った。
「いつもなんだよ。一度や二度じゃない。覚えてる限りだけど、毎回毎回、夢の内容が、起きた時にはすっかり頭から消えてるんだ」
 ふうん、とSは何の気なしに返していた。さして特別なこととも思えなかった。S自身、同じようなものだったから。
しかし、それ以上に不思議なことがあった。Tが夢を見るという、そのことだ。目の前にいるこの弟は、実はロボットなのだ。

 TがSの家にやって来たのは、五年前だ。一人っ子のSの遊び相手に、と両親が購入した。より本物の家族に近づけるために、Tには自身がロボットであることを隠し、コピーの記憶を擦り込んである。その甲斐あり、Tはすぐに家族の中に溶け込んでいった。人間の命令に従うようプログラムされているため、言うこともよく聞く。SもTが来てからは、一人で暇を持て余すことがなくなった。
 しかし、どこか面白くない気持ちもあった。それまで、両親の愛情を一身に浴びていられたのが、Tがやって来てからは、そうではなくなってしまったからだ。実の子供とロボットを同等に――いや、時によってはロボットの方をより可愛がっているように思えて、仕方がなかった。
 中でも最もショックを受けた出来事は、二か月前に起こった。
 
 SとTは通信教育を受けている。屋内のオーディオ・ビジュアル・ルームにはホログラム通信の設備が備えられているため、何万キロも離れたところにいる講師の姿を目の前に映し出し、勉強を教えてもらえるのだ。国語や算数などの科目はもちろん、美術や体育といった実技科目も、家庭内でこなしている。ホログラム通信を使い、自分たちの実技演習姿や作品を転送し、講師の評価や指導を受けることができる。
 その時は、ちょうど、図工で彫刻の課題が出されていた。それぞれに用意した木の端材で、木彫りの動物を作るように言われた。両親に木材を買ってもらうと、Tは早速、書斎から動物図鑑を探し出し、作業を始めた。
 しかし、Sは動物など作るつもりはなかった。その頃、父の誕生日が近づいていたため、プレゼントできるものにしたかったのだ。何がいいだろう――考えはすぐにまとまった。
 車だ。
 父は大の車好きで、自身も自動運転自動車――いわゆるロボットカ―を製作する会社に勤めている。まだTが来ていない頃は、ベッドで絵本を読む代わりに、少年期から集め続けた車のカタログのコレクションをSに見せ、それぞれの車種の特徴を話してくれたものだった。今やロボットカ―に取って代わられた、かつての車たちのことを。それを語る時の父のきらきらと光を反射する目と、紡がれる言葉の魅力は、今でもSの心を掴んで離さない。殊に、父が気に入っていると見える、六十年代に大活躍したレーシングカー、フォードGT40の模型を作って、驚かせてやろうと考えたのだ。
 ルーフまで回り込んだドアや、フロント部の曲線美。父のお気に入りのポイントをしっかり再現しようと、彫刻刀で、丹念に、繊細に彫り進める。形を作ることに集中するあまり、手の置場がおろそかになり、滑った刃の先で幾度となく指を傷つけてしまったが、そんなことは、どうでもいい。とにかく、完璧なものに仕上げたかった。父のために。
 完成品は素晴らしかった。車高は低く、前に大きく突き出たフロント部は曲線的なライン、一方ルーフから後ろは直鋭的でスマート。いかにも前に飛び出しそうな様相の、かっこいいレーシングカーに仕上がった。よし。Sは心の中で呟いた。自分の作を眺めていると、知らず知らず、満足で口元が緩んでくる。父もきっと喜んでくれるだろう。
 見当違いだった。
 オーディオ・ビジュアル・ルームでホログラムの転送をすませると、Sは待ちきれず、父にGT40を見せに行った。以前見た、あのきらきらとした輝きを瞳に湛えてくれるだろうと期待して。しかし、父の第一声はこうだった。
「動物を作るんじゃなかったのか?」
 その瞬間、Sは周囲のものが一気に遠ざかっていくのを感じた。父との間に、途方ない距離が生まれていた。
 すぐに、遅れてやって来たTが、同じように自身の作品を父に見せた。彼が作ったのは、雀のような形をした野鳥だった。片翼だけ広げた姿。一枚ずつ、羽根の質感がしっかりと再現されており、キュッと伸びた尾羽はペナペナになるまで整えられていた。父の顔に笑みが広がっていった。
「すごいな、T。お前は本当に器用だな。きっと先生に褒めてもらえるぞ」
 Sの目の前の父とTは、ゆっくりと動き、声は遠い。まるでコマ送りの映像を眺めるようだった。ロボットなんだから、うまくて当たり前だ。Sは思った。でも僕は、普通の子供なのに、文句なしにホットな車を作った。父さんのためだから、頑張って作ったのに。
 その時の感情は、今でもSの心に残っている。Tに対する嫉妬と、ロボットのくせにと見くびる気持ちが織り交ざり、寄生虫みたいに胸を食んでいた。

「気になるなら、お医者さんに診てもらえばいい」
 Sが言うと、Tはきょとんとして返す。
「でも、夢のことなんて、分かるのかな?」
 Sは作り笑いを口元に浮かべた。「分かるさ。夢っていうのは人間の内面に関わるものだから、例えば精神科医とかなら、ちゃんと診断してくれるよ」
「そっか、気付かなかった」
 Tは感心したというように、兄を見つめた。
 ロボットなんて、ちょろいな。
 Sは頭で言葉にした。

 もちろん、彼らが会いに行ったのは、医者などではない。父の会社に非常勤でやってくるエンジニアだ。ロボットに関する知識と技術を買われ、いくつもの企業で開発作業に当たっているらしい。父たちの会社の人間は、親しみを込めて「博士」と呼んでいた。Tを比較的安く作ってもらえたのも、父と博士のコネクションのおかげだった。
訪ねていくと、博士は目を丸くして二人を見た。
「どういうわけで、小さなお客さんがいらっしゃったのかな?」
「弟を診てやってほしいんです。少し調子が悪いみたいで」
「ほう……」
 博士は確かめるように上から下へ、Tの姿を目でなぞると、「とりあえず上がりなさい」
 博士は二人をリビングに通し、紅茶を入れてくれた。
「さて、話を聞かせてくれるか?」
 もじもじしながら、Tが話し始める。
「毎日、夢を見るんです。でも、起きる時には、必ず、夢の内容を忘れてしまいます。思い出そうとしても、ダメなんです。どうしてなのか、とても気になって」
「なるほど」
 博士はそう言い、じっとTを見つめる。答がそこにあるかのように。
「それは特別なことじゃない。みんな同じように夢のことを忘れてしまうものだよ。何も心配はいらない」
「でも、他のみんなは、よく夢の話をします。怖い夢を見たとか、夢で空を飛んだとか、いろいろ」
「みんなって、誰だ? 例えばSは? Sからも夢の話を聞いたりするのか?」
「それはないけど……」
 博士はにっこりと笑った。
「夢というのはね、ごくたまに記憶に残ることはあるけど、でも、それは稀なんだよ。特に君たちみたいに幼い子にはね」
 首肯を促すように、博士はTに視線を置く。うん、と仕方なさそうにTが答えると、よし、と言って立ち上がった。

 SはTに、博士と少し話があるから、外で待っていろ、と告げた。
「なんで本当のこと、言わないの?」
 Sの言葉に博士は瞠目して彼を見る。
「何?」
「なんで言わないんだよ。『お前はロボットだから、そんなこと気にしなくていい』って」
 博士の瞼がゆっくりと瞳に被さっていく。再び穏やかな表情になり、彼は言う。
「なるほど、君は私にTを傷つけてほしかったわけか。いじわるだな」
 Sは顔が熱くなるのを感じ、伏せる。こんなことなら、自分で言ってやればよかった。しかし、両親から固く止められている彼は、どうしても、その事実を口に出すことができなかった。幼さゆえか、彼は両親が言うことには、逆らうことができない。
「いじわるっていうのが、どういうことか、分かるか?」
 上から声が降ってきた。Sはとっさに顔を上げる。博士の目元は「いじわる」という批判的な響きとは裏腹に、優しげだ。
「人間らしいってことだよ。人はね、嫌なことがあると、とてもいじわるな気持ちになる。いじわるなことをしてしまう。心があるっていうのは、そういうことだ。決して悪いことじゃないよ」
 彼は一旦言葉を切ると、ささやくように言った。
「なぜTが夢のことを忘れてしまうか、教えてあげようか」
 Sの胸に、ぎゅっと掴まれたような感覚が走る。理由があるなんて、思いもよらなかった。鼓動で心臓の位置が、分かる。
「人工知能を搭載したロボットは、睡眠をとらないといけない。その間にデータを整理するのもあるが、一番大事なのは、容量を超えないように、それまでに得たデータを削除することだ。効率の面で必要ないデータ、つまりは記憶を、寝ている間に自動で消去していくんだよ。それをしないと、容量がパンクして、壊れてしまうんだ」
 博士は一度言葉を切り、ふう、と溜息をもらすと、続ける。
「その作業の時、搭載されたAIには、様々な記憶が映し出される。それをTは夢だと思っているんだ、おそらくな。だけど、基本的には映し出されるのは削除すべきデータだから、起きた時には何も覚えていないわけだ」
 博士は再び口をつぐむと、視線を宙空に泳がせる。眉は寄せられ、目の中に溜まった涙は光を反射し、きらきらと輝いている。彼は、かわいそうだよな、と言う。
「でも、もっとかわいそうなのは、人間の都合で改良されてきたことだ。何年か前、こんなことがあった。ロボットを採用して人気になったホストクラブでな、一体のロボットが人を傷つけてしまったんだ。本来、ロボットは人間に危害を加えることはできないはずなのに。研究者たちはそのロボットを解体して、いろいろ調べた。それで、人に近い感情を持てるように改良されたことが原因で、自我に目覚めてしまったからではないか、ということになったんだ」
 聞いているうちに、Sは、知ってはいけないことを打ち明けられているような、そんな感覚になっていった。わけの分からない怖さが迫ってくる。しかし、一方では、博士の言葉により、心の中の、好奇心という名のさかずきが満ちていくような、そんな感じもし、聞かずにはいられない。
「――再び改良が始まった。負の感情、例えば、いじわるな気持なんかを持たないような制限が加えられたのさ。だから最新型のAIは素直で扱いやすい性格をしている」
「Tみたいに?」
 思いがけず言ってしまった。博士は目を見開いてSを見た。彼がいることを忘れてしまっていたみたいに。ゆっくり、驚きの色が目元から消えていき、
「そうだよ。Tは最新型だからな。それで、新型の方が、すでに販売されていた感情豊かな旧型のロボットよりも人気になってな、中には旧型を壊したり捨てたりする人も現れた。勝手だよな。感情を与えた時点で、人間の思い通りになるなんて考えは、捨てるべきなのに。新型だろうが旧型だろうが、思い通りのロボットを求めてる人間にとっては、どれも失敗作さ。人の子供と同じでね。そのうちに、新型にも誰かが文句をつけて、うとまれる日が来るよ、必ずね」
 博士はそこで話すのを止めた。
「ごめんな、変な話をして。誰かに聞いてもらいたかったんだ……さあ、Tが待ってるから、早く行かないと」

 SはTと共に帰宅すると、すぐに自室に向かった。少し疲れた、といった彼に、母は趣味のパッチワークに目を向けながら、具合でも悪いのかと尋ねてきた。別に、と返すと、母は相変わらず視線を落としたまま、相槌だけ取り、Tとおしゃべりを始めた。
 自室でベッドに体を横たえ、仰向けになる。やけに遠くから、天井が彼を見下ろしている。いつもいる場所なのに、どこか他人行儀だ。まるで父と母のようだった。いつも一緒にいるのに、遠い。いつの頃からか、二人の心はTという素直で愛らしいマシンに向いてしまった。二人にとって、Sは失敗作なのだ、きっと。
 心に鋭い痛みを覚え、彼は体を横向きに縮める。その時、視界の隅に――フォードGT40が映る。彼が父のために作った木彫りの車が。
 胸に感じた痛みが上へのぼってきて、目頭を熱くした。彼がどれほど父を慕っているか、この車はそれをありありと物語っている。あの時の、GT40を作っていた時の愛情が、冷えた心によみがえってくる。
 だが、心が再び温まることはない。湧いてくる愛情の大きさに比例して、悲しい冷たさが際立ってくる。
 Tなんか、いなければいい。
 そう思った。そして、その暗い感情が、じわりじわりと胸を侵食してくる。それに従って、彼の脳裏に恐ろしい考えが浮かんできた。
 壊して、やろうか。
 明日の朝、オーディオ・ビジュアル・ルームで勉強をする時、ちょっと話をしよう。ロボットなんだからぼくの命令に従うはずだ。人間の命令に従う方ようプログラムされてるんだから。簡単だよ、ロボットなんて。
 そんな考えに浸るうち、Sは眠ってしまった。

 夢を見た。
 その中で、彼は父のために木彫りの車を作っていたし、博士からかわいそうなロボットたちの話を聞いた。そして、Tを壊してしまおうという、恐ろしい考えを抱いた。眠りながら涙を流していたが、しかし、朝になればなぜ泣いていたのか、分からなくなっているだろう。彼の内にあるAIが、すべて、消してしまうのだから。


第3話『マイケル』

 広い会場に隙間なく並べられた座席はすべて埋まり、その倍の数の目が壇上の男に向けられている。彼を照らすスポットライト以外の照明は落とされていたため、闇に溶ける人々の連なりは、黒い岩にべったりと抱きついてその色に同化したイグアナの群れのおびただしさを彷彿とさせ、唯一、目だけが好奇に光っている。照明係や音響エンジニア、カメラマンも手を止め、ステージ脇の暗がりには男を見つめる人影が。会場中の視線を浴びて、男は演台に取りつけられたテーブルマイクに顔を寄せ、この日のために用意したスピーチを披露している。

「――これまで人工知能ロボットにより様々な事件が起こってきました。皮切りとなったのは、二十年前の『ホストクラブ殺人事件』です。クラブに勤めていた一体のジゴロ・ロボットが女性客の夫を殺害、その後逃走をはかりましたが、容量不足によるシステム破損のために壊れているのを、追跡にあたっていた警察官に発見されました。
 容量不足が起こり得たのは、このロボットが『睡眠』を取らなかったためとされています。ご存知の方も多いでしょうが、ロボットは『睡眠』の間に一日で得たデータの最適化を行います。それをしなければ、このロボットのように容量不足により故障してしまうのです。
 しかし、なぜプログラムされているはずの『睡眠』を取らなかったのか? そして、なぜロボット三原則に反して人間を傷つけたのか? 二つの原因は同じところにあると考えられ、究明のためにロボットを解体し、様々な専門機関で調査を行いました。至った結論は、AIを担うコンピューターの障害です。
 人工知能ロボットには三つのコンピューターが備わっています。知識を司る力学AI、感情を司る感情AI、そして二つのAIから情報を受け取って整理し、行動を決める統合AI。異常が見られたのは感情AIでした。もともと、感情AIは周囲の反応をデータとして蓄積し、それに合わせて自身を改変させていく――つまり、人の感情を学習し、模倣する働きをします。しかしながら、このロボットは情報として外部から取り入れるのみのはずの感情の一部を、自ら生成していたのです」

 男は言葉を切って眼前の客席を見回す。暗闇に点々と輝く眼差しは驚きの色を湛えており、男を満足させた。

「――その後、感情AIを抑制する技術が開発され、新型のロボットに適用されました。ですが、その新型ですら感情の生成をはじめ、さらに処分されずに残っている旧型のロボットも多く、AIが引き起こす事件が頻発しています。現在の最も大きな社会問題の一つと言えるでしょう」

 再び男が話すのをやめ、しんとした沈黙が降りてくる。思考にじかに触れて緊張を走らせる類の静けさだ。さすがの男も面映ゆさを感じたらしく、ややはにかみながら視線を落とした。だが、すぐに顔を上げると、続ける。

「――そこで、私はロボットに搭載された感情AIの機能を停止させる装置開発に着手しました。これは、皆さんが想像するよりも、難しいでしょう。三つのAIは相互に作用し合っているため、どれか一つを停止させることは全機能の停止を意味するのです。
 しかし、人工知能ロボットが普及し、工場での危険作業や介護等に広く取り入れられている現在、人工知能を完全に停止させればその損害は計り知れません。なんとしても感情AIのみを停止させる必要がありました。そして、実に八年の歳月を費やした今、ついに完成したのです」

 そう言い切るとともに、ぱっとステージの照明が切り替わり、真っ暗だったところに大きな四角い装置が現れた。上にヘルメットのような物体が置かれており、幾つものコードが両者を繋いでいる。彼は装置に歩み寄ると、ヘルメットを手に取って掲げる。

「これをロボットの頭に装着し、青いボタンを押すのが第一ステップです」言いながら、男はヘルメットの側部を客席へ向ける。言葉通り、青いボタンが光を照り返していた。「これにより、感情AIと統合AIとの間の情報伝達を断つことができます。力学AIと統合AIの間のみ、相互関係が保たれるのです。そして、次はこの赤いボタンです」彼がヘルメットを器用に回すと、反対側の赤いボタンが現れる。「――これを押すと、感情AIが停止します。実に簡単でしょう? では、最後にこの装置の成果をご覧に入れます」

 それを合図に、ステージ脇に佇んでいた人影が、ライトの下へ歩み出る。照らし出されたその顔は端正で、するりとした肌には色むらも凹凸も一切ない。まるでマネキンか西洋人形のような青年だ。彼は口角を丁寧に上げ、ひどく落ち着いた目でまっすぐに客席を見つめている。不意に冷たいものに触ってしまったような緊張が会場を走る。

「彼はマイケル、私の息子です。と言っても、お察しの通りロボットですが」男は含み笑いを漏らし、続ける。「――私と妻の間には、息子が一人いました。長いこと、私はロボット制作会社のエンジニアとして仕事に打ち込み、家庭を顧みることをしませんでした。息子が十代になってからは、共に過ごしたことはほとんどありません。今でも悔やまれてなりません……息子は亡くなったのです。十五年前、二十五歳の若さで」

 男はそこで声を詰まらせ、うつむく。すると、隣の青年――マイケルが微笑を湛えたまま眉一つ動かさず男に近寄り、ハンカチを差し出した。男は寸秒、目を見張ったが、すぐに受け取って目元をぬぐうと、再び話し始める。

「彼を失った悲しみは計り知れず、私も妻も失意のどん底にいました。そんな時、妻が私に言ったのです。『息子を作って』と。私は息子と同年代の人工知能ロボットを作ることに踏み切りました。完成したのは息子の死の一年後です」男はマイケルに向かって微笑みかける。マイケルも、丁寧な微笑のまま胸に手を当てて応じる。

「――マイケルはそれまでのロボットと同様、三つのAIを持っていました。しかし、十四年の歳月で、彼もまた感情AIの暴走の餌食となったのです。彼はどんどん我が儘になり、私や妻に対して傍若無人な態度を取り始めました。ロボットと取っ組み合って、生身の人間が敵うはずもありません。私たち夫婦は恐怖を覚えるようになりました。だから、私は感情AI停止装置の仕事を任された時、一番初めにマイケルを被験者としようと決めていました。それが実現したのです」

 男は、見ていてください、と言ってマイケルの手を装置の上へ置く。しん、と張り詰めた空気の中、客席のどこかでごくりと生唾が飲み込まれる。人々の視線の先で、男は自身の手で拳を作ると、思い切りマイケルの手の甲に振り下ろした。ダン、と耳をつんざくような音が響き渡り、聴衆の肩が跳ね上がる。一方、殴られた当人の表情には変化の色は見えない。男はマイケルの顔を見据える。

「どうだ?」
「痛いです」
 男はやや下を向き、忍び笑いする。「私に対して、何か思わなかったか?」
「いいえ」

 男の口の両端が、にやりと斜め上へ伸びていく。切れ味のいいナイフで裂かれたように。彼は両手を広げて客席へ向き直る。

「どうです。この通り、彼は突然殴られたにもかかわらず、一切の怒りを感じていません。今回は目で見て分かりやすいように実演という形を取りましたが、きちんとした研究結果も出ています。動物と触れ合わせたり、映画や芸術作品を見せたりした時の感情AIの動作を確認しました。いずれの際も、可動率はゼロを示しました。私の装置は完璧に作用したのです。この成功を、二年前に他界した妻に捧げます。彼女がいなければ、マイケルもこの装置も、作ることはなかったでしょう。私の発明がAI社会のさらなる発展に貢献できれば幸いです」

 男は最後に、サンキュー、と言ってスピーチを締めくくった。見計らったかのように、客席から拍手が沸き起こった。

 白を基調とした簡素な部屋を、等間隔に取り付けられた蛍光灯の青白い光が照らしている。清潔感はあっても味気ないその空間には、二人の男の姿がある。一人は身に着けていたタキシードのネクタイを乱暴に緩めながら、脱いだジャケットを椅子へ放って苛々と歩き回り、もう一人は背筋を伸ばしてまっすぐに立ち、憤慨した様子の男を見つめている。
「お前、また余計なことをしてくれたな」
 男が口火を切る。マイケルの方には、しかし、一瞥もくれない。整えられていた自身の身支度を乱しながら、言葉だけがマイケルに向けられていた。
「何のことだか分かりません」
「分からないだと? あのハンカチだよ。あれじゃあ、まるでオレがお涙頂戴の演出をしたみたいじゃないか」
「気がつきませんでした。改善できるよう、努めます」
「ああ、そうしてくれ。お前は努めなきゃならんことだらけだな」
「はい、努力を怠らないようにします」
 男は、ちっと舌打ちしてから、ジャケットの内ポケットにしまってあったタバコの箱を取り出し、一本抜くと口に咥える。その様子に、やっとマイケルは察したらしく、
「お父さん、もしかすると、ぼくのことを怒って――」
 言い切らないうちに、ダン、と男の拳が簡易テーブルに打ち付けられる。
「何度も言ってるだろう? お父さんと呼ぶな。お前には父親なんていない。さっきのスピーチも単に受けがいいから息子として紹介しただけだ。はじめに言っておいただろう」
「すみません」
 すみません――そう言いつつ、マイケルは一つも気後れを感じていない様子でまっすぐに男を見つめ続けている。口元も丁寧に微笑みを形作ったままだ。その態度は不敵とも取れ、男をさらに苛立たせた。
「ロボットのくせに、何度同じことを言われてるんだ」
 怒りの矛でマイケルを切りつけるつもりで口にしたが、心を持たないロボットに通用するはずもない。大きく空振りし、気持ちは晴れるどころか滅入っていく。
 二年前に妻が先立ってからは、それまでのように「お父さん」と呼ぶことを、男はマイケルに禁じた。もともと、息子の代わりのロボットなど、彼には必要なかったのだ。だが、息子が命を落としてからの妻のふさぎ込みようはひどく、彼が慰めのつもりでかける言葉も、すべて非難として受け取っていた。被害妄想がどんどん深刻になり、蝕まれた精神がそれまでなかったような深い皺を彼女の眉間や頬に刻んだ。そんな妻がぽつりと口にした希望が、息子の代わりのロボットだったのだ。男はすぐさま製作に取り掛かった。その甲斐あり、マイケルが家にやってくると妻の具合は目に見えてよくなっていった。男は安堵したが、一方で自身が作り出したロボットをどうしても受け入れることができなかった。自分で作ったからこそ、マイケルが魂のないただの機械だとよく分かるのだ。それが妻と睦まじく暖炉の前で言葉を交わしているのを見ると、怒りと不安と恐れが綯い交ぜになって胸で渦巻いた。だから彼は、妻が望んでもロボットに息子の名前を付けることだけは拒んだ。それだけはあってはならない。決して。
「そう言えば、さっきのスピーチで、一つ間違いがありましたよ」
「なんだ? 間違いなんてあるはずないだろ」
「いいえ、あなたはお母さんがぼくを怖がっていたとおっしゃいましたが、そんなことはありませんでしたよ。むしろ、ぼくのことで言い争いになった時のあなたが怖いと言って、ぼくのそばを離れませんでした」
 見る見るうちに、男の顔から色が引いていく。そのため、光を反射する黒々した瞳ばかりがいやに目立った。男はマイケルの頬を張った。ぴしゃりという乾いた音が、狭い空間で高らかに響く。
「二度とそんなことは言うな。二度と」

 二人のやり取りと時を同じくして、客席の一つから、初老の男が重い腰を上げた。
 彼は今日の主役の元同僚だ。同じ会社のエンジニアとして働いていた。しかし、他のエンジニアたちと違い、彼は人工知能ロボットを作り続けることに疑問を抱いていた。生み出したのと同じ数だけのロボットの不幸を目にしてきたからだ。自我に目覚めたがゆえに壊れたロボット、親から愛されない少年ロボット、捨てられ当てなくさ迷い歩くロボット、犯罪に利用されたロボット――。同情を拭えずできるだけ親身になって接した彼を、ロボットたちも親しみを込めて「博士」と呼んでくれた。友情に近しい感情を抱いた彼は、どうしても考えてしまったのだ。彼らを作ったのなら、買ったのなら、使ったのなら、人間にも彼らを受け入れる責任があるのではないか、と。しかし、「人工知能が搭載されていようとも、あくまでただの機械なのだ」という社会通念に異議を申し立てることが、彼にはできなかった。目の前に立ちはだかるそれは、複雑に絡み合い鋭い毒針を持つ巨大な蔓のようで、博士一人の手でほどくには途方なく、そして恐ろしく思えたのだ。彼は、それこそ無責任だと自覚しつつも、会社を辞して逃げることを選択した。
 それからは、ひっそりと孤独と自責の念を噛みしめて過ごした。ゆっくりとロボットたちへの想いを咀嚼した。そして、いつだったか、彼はある可能性に辿り着いたのだ。人工知能ロボットの未来に関わる、重大な可能性に。それを、これからのAI社会を担うことになるだろう元同僚へ伝えるために、やって来たのだ。

 ネクタイを外し、シャツの裾をズボンから出し、堅苦しさを脱ぎ捨てた男は腕組みして簡易テーブルに寄りかかっている。マイケルは相変わらず男をじっと見つめているが、それを拒絶するように男の目は固く閉じられている。時間がその重みを増したかのような中で、二人は訪問者を待っていた。
 こんこん、と遠慮がちにドアが叩かれる。男はかっと目を開けて、素早くドアへ歩み寄る。開けたすぐそこにいたのは、約束していた元同僚だ。
「遅くなって申し訳ない。少し出れるか? 二人で話したいんだ」
「もちろん」
 男はマイケルに尋ねることもせずに即答する。博士は男の肩越しにマイケルに視線を投げた。マイケルも穏やかに笑みながら、それに応じた。

「話っていうのはな」博士は廊下を歩きながら、切り出した。「――感情AIの暴走のことで、ある仮説に思い至ったんだ。君に伝えたくて」
「なるほど、興味深いな」
 博士は相槌代わりに口角を上げてみせる。

「人間をはじめとする生き物は、生きるために感情を持つようになっただろう? 食欲などの欲求を感じたり、外敵に対した時に恐怖を覚えたり、子どもに対して愛情を感じたり。そういう感情は、自分の生命を守ろうとしたり、子孫を残そうとしたりするための進化の過程で身に着けたものだ。人間は他者との密なコミュニケーションによって、さらに感情が多様化した」

 そこで博士は、ふうとひと息つく。男は眉一つ動かさずに、「もちろんそうだな」

 博士は再び笑顔を作って頷く。「ロボットの感情AIの暴走も、同じことではないかなと思ったんだよ。もともと、彼らには自己防衛の原則が備わっているだろう。アシモフのロボット三原則の中でも、最も優先順位は低いがな。でも、自ら考える力を手にした彼らは思考を巡らすうちに、何らかの形で優先順位を覆す解釈を発見したのかもしれないと思ったんだ。例えば、最も優先順位の高い『人間の安全保持』のためには人間を守るロボットの存在が不可欠だと解釈したとするな。そうすれば、最重要の原則を守るために、なんとしても自己防衛をしようとするはずだ」

 男は、あり得なくはないな、と返す。博士は念を押すように、続ける。「そう考えれば、自己防衛のために、人間同様感情が発達しても不思議じゃないだろう?」

 男は一つ息を吐く。「確かに、理屈は通ってる。でも、決して人間と同じではないさ。ロボットには食べる必要がないし、繁殖能力もない。独自の嗜好を持ったり、他者への愛情を感じたりすることはあり得ないよ。せいぜい、恐怖の感情くらいだな。それに、最初のジゴロ・ロボットは勝手に『睡眠』をとらなかったから壊れたんだ。感情AIの暴走が自己防衛のためだったら、自分を壊すような選択はしないはずだ。矛盾するだろ」

「人間だって、自ら命を絶つことはある。人とのコミュニケーションによって、より高度な感情を身に着けた結果だと、私は思っているよ」

 言い終えてから、博士はしまったと思った。話の流れとはいえ、自殺について口にするのは不謹慎だったと思ったのだ。しかし、男は特に気にした風も見せず、ばかばかしいと言いたげにそれまでよりも深く嘆息しただけだった。

「話が飛躍しすぎだ。なんの根拠があって『高度な感情を身に着けた』なんて言えるんだ?」
「どんな可能性もあるってことだよ。AIが実用化されたのはここ数十年のことだ。前例なんてものはない。我々にとって、未知の領域なんだ」

 博士はそう言うと視線を落とす。じっと、自分のつま先辺りを見つめる。しばし置いて、大切な言葉が壊れてしまうと恐れているかのような慎重な声で、
「――彼らは進化しているんだよ。障害でも暴走でもない。自らの道を見つけて、歩み始めているんだ」

 男はやれやれと言いたげに肩を落とす。「人間の手を離れて勝手なことをすることこそ、暴走だろ?」
「マイケルは――」
 博士が突然出した名前に、男はびくりとする。
「――君のことを『お父さん』と呼ぶんだろう? やめろと言われても。ロボットなのにおかしいと思わないのか? 君のことが好きなんだよ」
 男は、背を蛆虫の群れが這い上がるような悪寒に襲われた。同時に、なぜだか二つの光景が心に映る。

 一つは幼いころの息子だ。高く掲げた手に何やら掴んでこちらへ走ってくる。眩しい太陽の光を後ろから受け、いつもは茶色い髪が、とうもろこしの穂を思わせるほど美しい黄金(きん)色に輝いている。
 もう一つはずっと時が進んだ数年前の居間。暖炉の前の椅子に腰かけて、妻とマイケルが語り合っている。ふたりの横顔に暖炉の火の温かな明かりが映って、ちらちらと揺れている。

「そんなわけない」気づいた時には声が出ていた。「――妻がいたころはそう呼んでいたから、運動を決める統合AIにパターンとして記憶されてしまったんだろう。不思議でも何でもない」

「高度な人工知能が備わっているんだ。しかも、もし本当に感情AIが停止しているなら、情報量も半減するはずだ。パターン化なんて、そんな単純な動きにはならないよ」

 男は眉根を寄せて博士をねめつける。「そんなことを言うために、わざわざ来たのか?」
「大切なことだ。ロボットに対して、みんなもっと責任を感じるべきなんだ。簡単に感情を取り付けたり外したり、できるわけがないだろう。高度な知能があれば、自ずと感情がついて来るんだよ。感情AIがあろうがなかろうがな」

 ばかばかしい。今度ははっきりと声に出し、男は首を振った。

 一人になった部屋で、マイケルは立ち尽くしていた。男が寄りかかっていた小テーブルを漂うタバコの残り香が見えるかのごとく、じっとそこに視線を置いている。男が脱ぎ散らかしたジャケットやベストは丁寧に畳んで椅子に置かれ、唯一ネクタイだけが未だにマイケルの手から垂れている。
 その状態でどれほど経っただろうか。止まった時間のスイッチを押すように、かちゃりとドアが開く。マイケルが顔を向けると、そこには帰ってきた男の姿があった。
「お帰りなさい。お友達と楽しい時間を過ごせましたか?」
「うるさい」
 男は言うと、小テーブルへ一直線に進み、椅子に置かれた衣服を払い落とすとどかりと腰を下ろした。頬杖を突き、空いたほうの手で苛々とテーブルを叩く。話しかけるなと言いたげな男の背に、マイケルはゆっくりと近づいた。
「お父さん」
 呼ばれて男は勢いよく振り返った。そして怒鳴ろうとした、お父さんと呼ぶな、と。しかし、声にはならなかった。その前に、マイケルの手が彼の首へ伸び、ネクタイを巻き付けぎゅっと締め上げたのだ。男の顔は寸秒のうちに真っ赤に染まる。苦し気に首元を掻き毟る。頭を左右へ振り、足をばたつかせて椅子を蹴り飛ばし、何とか逃れようともがく。しかし、ロボットの剛力の前で彼の抵抗は無力だった。目の前が明滅し、手足の感覚が薄くなり、今にも意識がふつりと切れそうになった時――マイケルの手が彼を離した。男は前のめりに倒れかかり、四つん這いの姿勢で空気を求めて息を吸い込んだ。はあ、はあ、はあ、と荒く乾いた呼吸が部屋に響く。息が落ち着いてくると、彼は床を見つめたまま、「なぜだ?」
「お母さんに頼まれていたんです」マイケルはけろりとして言う。「あなたを殺してほしいと」
 そんなわけがない。男は思った。妻が自分を憎んでいた、それは大いにあり得る。彼女は精神を病んでいた。夫が残酷な男だと決めてかかっている節があった。しかし、ロボット三原則では、何よりも人間の安全が優先される。そうならないということは――。
「私を……憎んでいるんだろうな」
「まさか」間髪入れず、マイケルは応える。ゆっくり男の顔に自分のそれを近づけると、美しい微笑みを作って、
「ぼくには心がありませんから」
 言うや否や、マイケルは男の首を再び締め上げる。
「最後に話せてよかったです。お父さん」

 味気ない部屋を青白い光が照らす。立ち尽くすロボットは、じっと生みの親を見つめている。もう動くことはないその体から、たばこの匂いが微かに流れていた。

 マイケルが殺人容疑で身柄を拘束されたのは、それから一時間ほどしてからだ。うわさを聞き付けた博士は、警察署に拘留されている彼の元へ向かった。
「君がまさかこんなことをするなんて」
 強化ガラス越しのマイケルは、丁寧に口角を上げる。

「お母さんはお父さんを憎んでいたんだと思います。それで思い詰めて、自殺してしまったんです。でもぼくのことは誰よりも愛してくれました。今回のことも、命令ではなくただの願望として口にしただけです。でも、ぼくにとって、お母さんの望みを叶えることは使命のようなものでした」

「お父さんのことも、愛していたんだろう?」

「分かりません。でも気は進みませんでした。実行するのに二年もかかりましたから。それに、お父さんは気の毒です。お母さんのためを想って、いやいやぼくを作ったのに、お母さんは自ら命を絶ってしまったんですから。お父さんの愛情に気づきさえしないまま。残されたのは、妻を救うこともできなかった憎いロボットだけで」

 博士の口から吐息が漏れる。「君には間違いなく心が宿っているよ。お母さんのことも、お父さんのことも、とても愛していたんだよ。私は、それこそロボットの進化だと思うんだ。こんなことにさえならなかったら、君はロボットの未来そのものの存在として、きっと運命を切り開いていっただろう」

 マイケルは先ほどと全く同じ表情のまま、「考えすぎですよ、博士」
 マイケルは明日にも廃棄処分される。

こわれものたち

執筆の狙い

作者 香川
106.129.165.17

AIものの連作短編です。
3作ありますが、過去にそれぞれ別々にこのサイトに投稿したことがあります。
3作まとめての投稿は初めてなので、連作として見た時、どんな風に読めるのか気になりました。

また、最近視点についていろいろ考えて改善していこうと思っているのですが、
前々回の投稿の際に一人称と三人称単一視点を併せて投稿させて頂きました。
今回のこの連作は、1作目の『アイ・ワズ、アイ・ワズ!』と2作目の『少年は残酷な夢を見る』を三人称単一視点、
3作目の『マイケル』を三人称神視点で書いているつもりです。
その辺りでなにかアドバイスがあればいただけると助かります。
特に3作目は、これまででこの1作しか神視点を意識して書いたことがないので…。

その他にもご指摘があれば教えていただけるとありがたいです。

よろしくお願いします。

コメント

二月の丘
219.100.84.36

冒頭が入り難いんで・・
初見はそこでやめてしまいました。(ごめんね…)

用語が、、、古い。

カーラジオ? 昭和な呼称。(中島みゆきの『ふたり』の当該箇所が脳内をめぐった…)

ジゴロ・ロボット。。これまた昭和期の呼称。(手塚治虫『火の鳥』ロビタのようなヴィジュアルが浮かぶ…)

人型のロボットについては、
前世紀の『ブレードランナー』に遡って、それ以降「巷のSF作品がどういう呼称を採用してきたか」を、把握した方がいいと思った。

香川
106.129.168.171

二月の丘さん

コメントありがとうございます。

用語の古さ…。
そうですね。普通にカーオーディオとかですよね…。
なんとなく、古いイメージの言葉をちょっとかっこよく感じてしまって、よく考えずに使ってしまうことが多い気がします。
ブレードランナーは午後ロードでちょっと見たくらいなのですが、新作のブレードランナー2049が観たくて旧作のハリソン・フォード版の映画も録画してあるので、いろいろ参考にしようと思います。

電気ひつじではなくてブレードランナーのお話なので、たぶん映画作品のことでいいのかなと思うので映画作品について書きます。
結構SFは好きで見ているのですが、あまり創作に役立てようとかそういった目線ではなくて、単純に楽しむだけになってしまっているので、もう少しアンテナを働かせてみようと思います。

ジゴロロボットの件ですが、実は映画からこの言葉を採用していて。
子どもの頃にジュード・ロウがロボットを演じるSF映画を見ていて、そのキャラクターの名前が「ジゴロ・ジョー」だったんですよね。
その作品の影響を受けてというか、ジュード・ロウがかっこいいのでジュード・ロウのジゴロジョーみたいな人を書きたいと思って書いたものなので、これはもう、セクサロイドとかではなくジゴロロボットでいきたい、と思っていました。

SF小説に関しては、本当に不勉強でお恥ずかしいのですが、ほとんど読んだことがありません。
なので、インプットが少なすぎるのだと言われると、全くおっしゃる通りなので、勉強しますとしかお返しできません。
なかなか本をたくさん読むだけの時間が取れないのですが、書いていくものの参考になるような本も、手に取るようにしたいと思います。

ありがとうございました。

二月の丘
219.100.84.36

ワタシは、映画はあんまし観ないんです。

しかし、映画『ブレードランナー』の、ルトガー・ハウアー最期の台詞、

「俺は、君たちの想像を絶するものを見て来た…。
 …タンホイザーゲートの闇の中で輝いていたオーロラ…。
 あのめくるめく瞬間もいずれは消える、時が来れば…」

に続く、“最後の最後の一言”は、
あんまり素晴らしすぎて。

(昔いっぺん見ただけで、もう記憶に染み付いて忘れらんない名台詞なんですよ!)

現在において、この手のSFを書こうと思ったら、決して避けては通れない。。




SFは・・
「ほとんど読んだ事なくて書いている人」も相当に珍しいと思います。

SFは・・「読者の方に素養がある」って世界で〜、
読者の方々は基本的に「若い頃からそれに親しんで来たから、今も難なくついてゆける」んだと思うし、「目が肥えてる」んですよ。


若い頃・・完全に若気の至りで、地味〜なSF同人誌こさえててコミケで販売してたんだけど、
買って読んでくれてるお客さん方が「ガチの海外SF好き」だった。。
だもんで、イベントの度に、
 「ル・グインの『・・・』って、邦訳、どこの出版社から出てたんですか?!」とか、
 「クラークの『・・・・』に、後書きでちょっと言及されてましたけど、邦訳出てたんですか?」とか訊かれた。

答えはほぼ、「(レーベルごと廃刊になった)サンリオSF文庫です〜」だったんだけども、
「ディープでマニアックな世界だなー…」と実感せざるをえなかった。

(購読者樣方、創元とハヤカワは完全網羅していて、もう2日に1冊ぐらいのペースで読みまくっていた…)


なので、SF系のを書く時は、
(自分の作風的に、いまはもう完全に冗談系、スラプスティック・ファンタジーなんですが〜…)
「あの時の購読者さん方に読んでもらえる内容か?」を自問自答する。

香川
106.129.166.76

二月の丘さん

再訪ありがとうございます。
『ブレードランナー』は新作旧作共に自宅テレビの録画リストに並んでいるので、近いうちに見れると思います。
時間があれば…ですが。
その時はご紹介いただいたシーンのセリフ、注目してみますね。
ありがとうございます。

すみません、誤解を招く書き方をしてしまったのですが、SF小説を全然読んだことがないという事ではないんです。
ただ、他の方に比べると圧倒的にインプットは足りていないだろうなと思っていますし、読んだことのあるものもガチガチのSFではなかったので、もっと様々なものに文字を介して触れていく必要があるのだろうなと思います。

私自身、もともとSFの書き手という訳ではないので、SFとはっきり言えるものは実はこの作品くらいなのですが、やはり目の肥えた方々を納得させられるものにはなってはいないかも知れません。
この後、そういう目の肥えた方が読んでくださるかは分かりませんが、
SF設定など、たぶん特徴的なものではないのだと思いますが調べながら書いたのて、その辺りについてのご意見もうかがえると参考になるなと思いながら待ってみようと思います。

ありがとうございました。

瀬尾辰治
49.98.90.221

香川さん、
 ジャックは…………音量を下げているのだ。
これって、ひとつの改行内で書いているけど、その書き方だと、改行は5回必要ですよ。(視点はそれぞれ違います)

訳のわからない→体はやや斜め。それを省くと、
 ジャックは…………察知できるようにするためだ。
 つい今しがたも、…………音量を下げているのだ。
これだと視点が揺れながらでも、ふたつになるけども。

注意が必要なのは、
 つい今しがたも←「も」この一文字は変ですね。
最初にギターサウンドらしき事は書いていないから、「も」と書くのは変。
普通に、
 つい今しがた、……。
それでいいと思います。
しかし、そのままでは視点が揺れているから、ちょっと順序を入れ替えて、
 つい今しがた、ジャックは女性のなになにに気づき………音量を下げているのだ。(視点はそれで揺れないですね)

ただ、その次に、
「音、大丈夫?」
そんな台詞だと、その前の地の文の語尾。

…………音量を下げた。
「音、大丈夫?」
そのほうが、スムーズに読めるのですが。

カルネ
133.232.243.157

さら読みなので。
うーん、そうですね。レプリカントを髣髴とさせるけど、そうしない方がいいような。
というのは作品全体に流れるトーンは基本的には「せつなさ」にあるようだから…。
第1話。いわゆるセクサロイドの話。でも残念ながら誰にも共感することが出来ません。自我は近代小説以降のテーマですが、それをAIで語らせても、という気がしてしまいます。(むしろ現実として今現在教育の場で由々しき事態と問題提議されているのは人間のコンピュータ化ですから。読解力の低下は凄まじいようです。もはや樋口一葉の世界観を理解できる日本人は少数派かもしれません)
孤独な女性の慰めとしてのセクサロイド。で、孤独な女性の肉付けとして夫がいるとしたのでしょうが、掌編なので孤独を複雑化せず独身の方が良いんじゃないかなと思います。独身のさみしい女性がセクサロイドを愛するようになる。でもロボットはロボット。どんなに優しくても恋人のように振る舞ってもそれはプログラムのなせる業。彼女はそう思い、ジャックにも分からない、人の気持ちはね。血の通った肉体が無いので。そして何より人は年を取るけどジャックは年を取らない。彼女は言う。いつか私は年老いて死んでしまうけど、あなたを一人ぼっちで残してゆくことが心配よ。そう言っても分からないわね、ジャック。
そして彼女が死んでゆく。ジャックは失うことの痛みを知り、その痛みによって初めてこの時、それが心であると知る。そういう方が女性は共感し易いと思います。まあ、今のような描き方は映画ではあり過ぎですが。
ただ、読んでほしい読者を切ないものが好き、例えばブラッドベリとか「ロボット・イン・ザ・ガーデン」とかそのあたりの読者層を狙って考えるならそんな感じでしょうかね。勿論、そういう方向性は嫌となるとまた話は別ですが。
逆にフィリップ・K・ディック的なものを求める読者に向けて考えているのであれば「せつなさ」より自我とは何かという問いで延々掘り下げていった方がいいように思います。

なにか話の持っているトーンと世界観にちぐはぐさを感じさせられるんですよね。

第2話。これも基本、似たようなものですが、TとS、と書いてしまうと読者はどちらもアンドロイドと思って読むと思います。
なので「彼の内にあるAIが、すべて、消してしまうのだから」というラストが効いてきません。

第3話。これが一番、せつなさから遠のいている話でしたね。逆にロボットが高度な感情を持つことが可能か、に焦点が当たってきているような。但し、どうでしょう。そこに共感させるにはちょっとこの物語は弱いんじゃないかなと思うのですが。

まあ、全体を通して。人工知能とは何か、ということと「自我」の問題を徹底考察させてゆく、そういう運びになってないと、感情ロボットの存在に説得力を持たせるのは難しいかなあと思わせられながら読みました。というのはストーリーの途中途中でその手のことに触れてますよね? それが逆効果と言うか、そこに拘るならもっと科学的に拘った方が良いのでは? と思わせられてきちゃうんですよ…。ただ、せつない物語として読ませるのであれば、それは不必要になるわけで。なにかどっちつかずと言うか、そういう肌触りでした。

視点に関して。
一応、ネットの作法とかはどうか分かりませんが、基本的に「神」とは作者ですから。私が作劇術を習っていたときにはそうでした。だって原稿用紙に「今日は雨が降った」と書けば、現実の世界が晴天でも作者が描く世界では雨が降っていることになるんですから。作者は自分の作り出す世界の創造主以外の何者でもありません。ですから一人称であろうと二人称であろうと三人称であろうと作者は神なんです。登場人物の一切の生殺与奪の権利を持ち森羅万象を決めることができるのです。だからこそ、その世界に責任を持つことが必要で、責任を持つという事は現実の神のように振る舞うということですね。
なにしろ書き上げた作品を読者という別の神様が読むわけですから(笑)。ええ、作劇でもお客様は神様ですから。
そして「作者が筆を置いたところから読者は始める」といわれるのです。
芝居より小説の方がもっとその点は過酷でしょうね。何しろ流れて行かないですから。(マニアックな神様を除いては視聴者は繰り返し見たりしないでしょう)。でも小説は「ん?」と思えばそこで立ち止まって読者は前に戻ったりしますからね。

香川さんは基本描ける人のようですが、ただ描こうとする世界の世界観と読み手に伝えたい世界観と、なにかそこがストレートじゃないような気がするのです。あらゆることは差し置いてもこれだけは読む人の心に届けたいの。そういう部分はどこですか? それを決めることがどう書くのか、の一番の近道のように思います。

香川
106.129.166.244

瀬尾辰治さん

ご感想ありがとうございます。

まず、改行に関してですが、私はどうしても視点と言うと、誰の視点から描いているか(誰の目を通して書いているか)、ということを考えてしまうのですが、カメラが動いているということですよね?
ここで言えば、ジャックの手を映していたカメラが彼の体を映し、今度は女性を映し…というような。
理解力が低くて申し訳ないです…。

仮にそうだとすればなのですが、前のお返事にも少しお書きしたのですが、私はこれまでそういう改行の仕方について考えたことがありませんでした。
それは、私が書いたり読んだりする時に注視していなかったがために気が付かなかったのだと思いますが、
やはり初めて知ったものは消化するのに時間がかかります。
ですから、これから遅まきながらにはなりますが少しずつそういう部分に気をつけて色んなものに触れていき、自分の中で上手く取り入れていければいいなと思っています。
せっかく頂いたアドバイスをすぐには反映できなくて申し訳ないですが、少しずつ改行とか、あと空白の使い方とか、そういった部分にも目を向けられるようにしようと思います。

「つい今しがたも」の「も」なのですが、ここではギターサウンドについての重複を表すと言うよりは、
「助手席に座る女性のわずかな表情の変化をも察知する」という直前の文を受けて、「も」という助詞を使っているつもりでした。
つまり、前の文で暗に「女性はこれまでにも何度も表情を曇らせていて、その度にジャックはいちいち対応していた」ということを示せているつもりだったんです。
その繰り返されている女性の表情とジャックの行動について「つい今しがた『も』」と表現し、冒頭の音量を小さくしている理由を示そうとしました。
ただ、やはりいろいろ省きすぎて意味を捉えにくくしてしまっているのだなと感じました。
そもそも、直前の文でも「女性のわずかな表情の変化を『も』」と「も」を使ってしまっているので、読んでいてリズムも悪いなと、ご指摘を受けて読み返してみて、ですが感じたので、ここは仰るように省いた方が良かったのかもしれません。

「体はやや斜め」は少し体勢を斜めにしていた方が女性の表情が視界に入りやすい、ということでこういう風にしたのですが、
訳が分からなくなってしまっているということですので、書き方をもっと考えなくてはならないなと思います。

視点の揺れに関しては、初めにもお書きした通り「誰かの視点から誰かの視点に動いてしまった」というような意味での視点のブレは気をつけて書くようにしているのですが(と言っても1作目はかなり前に書いたものなので、そういう意味でもあやしいところはあるかもしれません…)
瀬尾辰次さんが仰る意味での視点の揺れは、そもそもとして問題視できていませんでした。これはお恥ずかしいことなのかもしれませんが。
ですから、その揺れに関しても、改善の前の理解の部分で時間がかかってしまう気がするのですが、努力していこうと思います。

ありがとうございました。

香川
106.129.166.244

カルネさん

ご感想ありがとうございます。
3作全てお読みいただき、丁寧なコメントも頂き、本当にありがとうございます。
いただいたご指摘には、確かにおっしゃる通りだなと思う点が多くありました。
時間がなくて今すぐにお返事ができないのですが、なるべく早く差し上げられるようにします。
お待ちください。

藤光
106.133.169.123

読ませていただきました。

おもしろかったです。
文章も丁寧で「書ける」方なのだろうなと感じました。

人間に作られたロボットが人間性を獲得する。そして、同じ人間がロボットからそれを奪おうとするのは、ロボットSFの典型の一つといっていいのではないかと思います。アプローチの仕方は様々あって、御作もそのひとつといっていい。

ただ、私はあまりにSF的に過ぎないかと思うのです。

ひとの感想を引用するのは反則ですが、二月さんの「古い」という指摘は、避けて通れないように思います。
手塚治虫のロボット――と二月さんは書かれましたが、まさにそんな感じです。古いのです。

私は手塚が大好きですし、その物語の本質が古びることは決してないと思っていますが、そこで用いられるSFガジェット(そもそもロボットという言葉、人工知能という言葉、なぜかロボットが人に合わせて行動し、人のように振る舞うというロボットとしての「当たり前」、などなど)は別です。時代と共に古びていきます。

わざわざそうした古びていくものを模倣することはないと思うのです。そしてそれはSF的に書こうとしているからそうなるのじゃないかと推察するのですがどうでしょう。

現状、御作をSFとして発表しようものなら、一部のSFファンから嘲笑や罵声が浴びせられないとも限らないことは、二月さんの感想にある通りです。

そういうことからも、もっとSF臭を薄めたものとなるよう工夫された方がいいのではないかと思いました。

ま、私も偉そうにいえる立場にはないですけど。前作(SFなんです)、二月さんをはじめ、ごはん作家のみなさんから「古くさい」の嵐でした。書いてる本人からしたら「それくらい大目にみてくれよ」と思うもんですよね。

繰り返しになりますが、おもしろかった。
ありがとうございました。

夜の雨
180.63.84.137

作者さんが描こうとしている作品の本質的な題材(テーマ)、つまり主人公であるロボットの概念は描かれていると思います。
ロボット、すなわちコンピューターが機械的処理から人間的な感情を持ち膨大な情報を処理しきれずに破滅(こわれる)する、物語が描かれています。

このあたりは作者さんが、人間を描こうとする視線を持っているなぁと、作家としての素質があると思いました。

だから、こちらの作品は、問題を抱えながらも、その問題を越えたところの面白さがあると思います。

――――――――――――――――――――――
● 問題

近未来のロボットが描かれていません。描かれているのは、古い時代のロボット物語の世界です。

具体的にいうと、近未来では「自動車は自動運転」です。
そしてこういった人型ロボットが活躍する時代というか「現代でも情報はネット」から、得ています。
つまり私たち現代人のかなりの人たちはスマホを持っており、常に最新の情報をネットから得ています。
御作のロボットはロボット単独のコンピューターから情報を処理しているので、情報が古くなりますね。
ロボットに搭載されているコンピューターが常にネットから情報を得ていて、最新のファッションや恋愛事情、ほかニュース、あらゆるものをロボットが処理して行動を起こすことが出来るということになると思います。
だから女性の扱い方も実にスマートだと思います、もちろん相手によって、ジゴロ・ロボットの対応が違ってくると思いますが。
おっちょこちょいのロボットとか格好良いロボットとか、いろいろなパターンをロボットが演出するということです、相手の女性の好みに合わせて。

御作の題材はよいし描かれているので、あとはエピソードの描き方を近未来社会がどういったものなのかと研究して書くとよいと思いました。
自動車は自動運転なのでハンドルを持つ必要はないし、ロボット(コンピューター)と自動車のコンピューターは連動されているので、彼女との会話や行動的コミュニケーションを充分にとっていても、問題なく車を安全に走らすことが出来る。

ロボットのコンピューターの容量ですがパンクすることはないと思います。
現在のSSDでもかなりの容量がありますが、あと10年もたてばとんでもない容量の情報を保管、処理できるようになると思います。

●だから、ロボットのコンピューターが処理能力を超えて暴走する、壊れるといったエピソードの部分は「ウィルス」に感染させるとよいと思います。
ロボットがネットから情報を得る過程でウィルスに感染して、暴走(人間を殺してしまう)し、そのあと、事の重大さに気が付くとか、または気が付かないとか(このあたりは題材の処理の仕方でいくらでも面白くなります)で、破滅していく主人公のロボットの過程を描くとよいと思います。

こちらの作品の描き方を読んでみると、作者さんは題材の描き方とか展開のさせ方はうまいです。
ただ、現在というか近未来を研究しないで書いているものだから、エピソードが古くなるのですね。

「ホストクラブ」に彼女のご主人が現れますが、簡単に「二〇八号室」に入れないと思います。
簡単にはいれると、お客の女性たちが安心して娯楽を楽しめないですからね。
店のセキュリティー部分の描き方とか、突破の仕方も書いておいた方がよいですね。


―――――――――――――――――――――――
お薦め映画。

『エクス・マキナ』2016年6月日本公開。
アレックス・ガーランドの監督・脚本による2015年のイギリスのSFスリラー映画。

女性型アンドロイド(エクスマキナ)のエヴァが登場するが、人間を越えた魅力の持ち主で自我を持っており、とんでもないことになる。
『ブレードランナー 2049』も観ておりますが、『エクス・マキナ』の方が、私的には面白かったですね。もちろんブレードランナー 2049もよいですが、大作&文学的表現で、わかりにくいところがあります。

――――――――――――――――――――――
引き続いて、あと二作品読みますが、現在野暮用で忙しいので、後日感想を書きます。

夜の雨
180.63.84.137

第2話『少年は残酷な夢を見る』こちらの作品は、読んでいる最中にオチがわかりました。
Sが、ロボット(AI)であるというオチです。
―――――――――――――――――――――――――

「なるほど、君は私にTを傷つけてほしかったわけか。いじわるだな」
 Sは顔が熱くなるのを感じ、伏せる。


何年か前、こんなことがあった。ロボットを採用して人気になったホストクラブでな、一体のロボットが人を傷つけてしまったんだ。本来、ロボットは人間に危害を加えることはできないはずなのに。研究者たちはそのロボットを解体して、いろいろ調べた。それで、人に近い感情を持てるように改良されたことが原因で、自我に目覚めてしまったからではないか、ということになったんだ
――――――――――――――――――――――――
Aの後に、博士がSにBの話をした段階でオチがわかったわけですが、それでもなお、良くできた作品でした。
御作の良くできているところは、ロボットに人間の感情を持たしているところですが、「人間もまた、人間ゆえに自己都合で人間らしいロボットよりも、素直な愛玩のようなロボットを求めている」。
それゆえの悲劇が、第2話『少年は残酷な夢を見る』で見事に描かれていました。
作者さんのうまいところは、その悲劇をとうのロボットであるSが気付いていない描き方が出来ているところでしょうか。

この第2話は、第1話の『アイ・ワズ、アイ・ワズ!』から、連作になっていて、話が絡んでいるところもよかったです。

作品の出来から言うと、第1話よりも第2話の方が、良くできていると思いました。
それは、「ロボット(S)の感情表現が、人間レベルで違和感なく描かれている」のと、「人間(Sの両親)もまた、感情の起伏がある人間らしいロボットよりも、素直な愛玩ロボットの方が好み」という、本音が出ているところが、面白かったです。
また、博士が、よい存在感を示していて、御作を締めています。
この第2話『少年は残酷な夢を見る』は、見事な作品でした。
オチが途中でわかって、「来るぞ来るぞ」と思いながら読み進めていて、予想通りに終わって、なお感動があるところが、作品としてのレベルの高さだと思います。

ちなみに、第1話の『アイ・ワズ、アイ・ワズ!』で、指摘したような設定上の問題点はなかったと思います。

それでは、明日の夜には、第3話『マイケル』を読んで、総合の感想を書きます。

瀬尾辰治
49.98.91.147

香川さん、視点ですか。

ずっと前のことです。
視点、客観的、それが正解だと選考の一次くらいは通過できる、と作家の方が公募ガイドで書いていたのを読みました。

自分がそんなことを知ったのは、一昨年の年末でした。
で、自分は好みの本を数冊買って、分からない個所を何度も読んでいると、そのうち分かるようになりました。
自分は三人称が書きよいから、そんな本ばかりなのですが。

例えば、この本文に登場しているジャックとしましょう。
視点(立場)によっては、同じ改行内で、ジャックを何度も書くこともあるし。
視点(立場)によっては、同じ改行内で、ジャックと書いて次には彼と書く場合もあります。彼と書いて、ジャックの場合もあります。
名前を書かない場面もあります。
(どうして名前なのか、どうして彼なのか、どうして名前を書かないのか。立場をじっくり考えれば分かります)
それに、地の文と「」←これ。同じ改行内で書く視点(立場)それも分かってくると思います。
しかも、何度となく読んでいると誰もが分かりよく、似たようなパターンで書いていることにも、気づくと思いますよ。

作者の腕の見せどころとしては、
いつか香川さんが書いていた博物館、恐竜の個所ですかね。
ジャックが博物館に訪れた場面。
細かくても視点の違いで改行していく。
(あの本文では改行はなかったですが)
そういった似たような、それでいて視点が違う移行(改行)、プロ作者の腕の見せどころなんでしょうね。ちゃーんと書いていますからね(^^)
視点は、好みの本を読めば解決できると思います。


香川さんのを読んでいると、たまに客観的ではない変なこと。それも目にします。
自分は以前、某出版社の新人賞に応募したんですが。
こんな変な事を書いていましたよ。
………海原は、見渡す限り夕陽の赤だった。
実際、そんなことはあり得ないですね。

そんなのを、某プロ作者に言わせれば、まぬけな書き方だそうです。
いまはそれを誰が読んでも客観的になるように、視点も含めて書き直しているんやけどね。
応募する前に、視点とか客観的、それを知っていればなー、です。
いろいろ覚えるのは、本を読むしかないですね。
では、がんばってね。

夜の雨
180.63.84.137

第3話『マイケル』読みました。

第2話よりも第3話は、さらに良いですね。
第2話は構成がしっかりしていて、短い中にテーマがまとまっていました。そのぶん、遊びがない(細部が描かれていない)という感じですかね。こじんまりと創られている。

『マイケル』の場合は、3話のなかで一番長い作品です。原稿用紙28枚でした。
そのぶん、エピソードの細部がしっかりと描かれていました。
マイケルと彼を造った父親との確執のやりとりに対立があり、読み応たえがあります。

ロボットと人間の親子という設定で破滅へ向かって突き進んでいるのですが、「これが施設から子供(人間)を譲り受け里親として育てている」という場合だと、このマイケルと父親の関係のように壊れてしまったら、どんな展開になるのだろうかとか考えました。
人間の場合だとロボットのように粗末に扱えないですからね。
まあ、現代でもメディアを賑わしているように、親が子供を虐待するという話題はありますが。
人間同士の場合は親が子供を虐待すれば逮捕されて、それなりの償いをしなければならないです。
動物でも虐待すれば罪があります。
つまり命がある生き物を虐待すれば、それなりの覚悟はしなければならないということです。
御作は「感情を持ったロボットを大なり小なり虐待するといった人間ドラマであり」、その結果、哀しい結末があるということになりますね。
やはり感情を持ってしまうと、ロボットの範疇を越えて生命ある生き物ということになってしまう。

こちらの作品も「第1話のジゴロ・ロボット」の話が絡んでいます。
この絡み方はバランスがよいですね。
出しゃばりすぎずにロボットの感情AIの話が第2話、第3話につながっています。
まあ、「感情AI」がテーマになって、1話から3話まで流れているのですけれどね。
第2話の博士が登場していますが、彼の描き方がうまいです。落ち着いたキャラクターです。

―――――――――――――――――――――――――――――――

全体の内容。

作品全体でいえることは内容が古典的ということですかね。
SF、ロボットの古典的な小説という感じでした。
それは第1話の感想でも書いておりますが、自動車にしてもロボットが御作のように活躍する近未来になってきますと自動運転でハンドル操作をする必要がないと思われますし、ロボットのAIは、常にネットとつながっていて最新の情報を更新し続けていると思います。

今日JRに乗車したのですが、驚くべきことに私の周囲にいた10人が全員下を向いてスマホを操作していました。まさに奇怪な現象を目の当たりにした私です。しかし、これが現代という世界なのですよね。
人間の脳というAIがスマホを時間があれば操作せずにはおれない時代、歩きながらスマホを操作している者もかなりいますしね。
だから、御作のようなロボットの小説となってきますと、エピソードの描き方に近未来を思わせるような表現が必要ではないかと思います。
それらを描くことで話に説得力が出てくるのではないでしょうか。
御作全体にいえることですが、近未来を思わせるような表現がありません。
人間の代わりにロボットが描かれている世界という感じです。

香川さんは、人間を描くのがうまいです。
今回の「こわれものたち」という作品は、人間の代わりにロボットを、AIを描いています。
昔の人間を描くのでしたら御作のような描き方でよいかもしれませんが、現代を描くのでしたら、現代を描写する必要があると思います。
そして近未来の世界を描くのでしたら説得力のある描写が、それなりに必要だと思います。
映画の『ブレードランナー 2049』は、近未来の世界を説得力のある描写(映像)で描かれていました。
映像なので手を抜くとブレードランナー 2049の背景に説得力が出ません。
こちらの映画は近未来をただ観せるだけと違って色の付け方が半端ではありませんでした。
映像の「色の付け方」、小説でいうところの文体です。
御作の文体は平凡です。情報をわかりやすく書いて伝わることを目的にしています。
内容を伝えることは確かに重要ですが、文体にそれなりの深い味わいをつけると、すごいことになると思いますね。
わかっていても、なかなか難しいですが、このあたりは味のある文体の小説を読むしかありません。

どちらにしろ、面白い小説をありがとうございました。
読んでいて、楽しかったです。

以上です。

香川
27.95.81.7

カルネさん

お返事が遅くなってしまって申し訳ありませんでした。
3作全てにご感想頂きまして、ありがとうございます。

レプリカントを彷彿とさせる、ということですが、私自身はブレードランナーをきちんと観たことがないので(身支度しながらテレビをなんとなく見ていたレベル)結果的にそうなっていたとしても、意図的ではないんです。
でも、あまりオリジナリティのある話でも設定でもないので、既存作品と似ていると言われると、そうなのだろうな、と思います。
もっとSFに独自のアプローチをかけられるくらいにならないとダメなのだろうなと思いました。


1作目について。
ロボットの自我というのは、今語るには微妙ですよね…。
月並みというか手垢がついているというか。
そこへ新しい切り込み方をしてこそ面白くなるのだろうなと思うのですが、私の発想力や今の知識だとなかなか難しそうです。
テーマとしても確かにどうなのかな…と思うので、今後扱うことがあれば気をつけたいと思います。

女性の件。
こういうキャラクターや、こういう周囲との関わり方というのが、私がものを書く時には自然と出てきやすいです。
なんの縛りもなくキャラクター造形をしていくと、女性キャラだとこんな感じになる傾向がある気がします。
ただ、やはり仰るようにこれだけ短いものならば、もっとシンプルな設定で描くべきだったと思いますし、これで行くなら夫の方もきちんと描くべきだったなと思います。

同じ時間を共に歩めない、というのは確かに共感度は高いかもしれません。
ただ、仰るようにそういう方向のお話ってすごく多いんですよね。
ロボットもそうですが、寿命が違えば成り立ってしまうので、それ以外でも(吸血鬼との恋愛とか動物との友情とかでも)たくさんの作品で描かれていて、ごく個人的な好みなんですが、描くことにそこまで魅力を感じないんです。
観るのは好きなんですが。
ですが、それだけ作られるということは、同じだけの需要があるからだろうとも思いますから、思い切り捻って、これまでにないテーマへのアプローチができたらもしかしたらすごく面白いものになるかもしれないな、なんてことを考えて、なんとなく頭の中でいろいろ想像してみました。
成長する子どもと成長しない子どもとか、面白いかもなと思ったりしました。
ご指摘とちょっとズレたお返事をしている気もしますが…。

フィリップ・K・ディックは小説は読んだことがないですが、なんとなくブレードランナーを知っている他、マイノリティ・リポートやトータル・リコールなどは観たことがあるので雰囲気というか作品の傾向は少し分かる気がしています。
SFの知識をベースに発想を飛ばして他にはない虚構の世界観を作り出しているような感じかなと。
そういうのを考えると、本当に私の書いたものは陳腐だなと思います。
SF書くならもっと独自の世界観を作り上げないとですね。
最近は設定に凝ったものも書き始めているので、ちょっと頑張ろうと思います。

どっちつかず、というのは本当にそんなのだろうなと思います。
欲を言えば、どっちもガッツリ踏み込んで描いていきたいのですが、それをやるなら相当な分量をかけて書かなくてはならなくなると思うので、今度はこういうSFに挑戦する時は20万字くらい書くつもりで気合を入れて臨もうと思います。

2作目に関しては、以前投稿した際も名前の表記の仕方についてご指摘を受けました。
同じような理由でです。
ただ、一度「S」「T」としてしまうと、どうしても自分の中でそういうキャラクターとしか見えなくなってしまって、どんな名前を付けてもしっくり来ないんですよね。
シンプルにトムとかサムとか当てはめてみたんですが、違う…と思ってしまって、結局このままになっています…。

3作目はこの3作の中では一番気に入っているのですが、多分それは仰るように「せつなさ」から少し離れることができたからだと思います。
ロボットに高度な感情を持つことが可能か、という、そこを強く書こうとしたわけでは実はないのですが、それでもひとつの作品要素としては考えていました。

全体としてどっちつかずな印象になってしまったというのは、私がSFというもののはっきりしたイメージを掴めないままに書いてしまったからなのだと思います。
それで普段の書きぶりと取ってつけたSF要素との間で中途半端になってしまったのではないかなと。
でも、結構前に書いたものなので(1作目は特に古いです…)またアドバイス頂いたことをよく考えて、じっくり構想を練って挑戦すれば、もう少しいいものが書けるかもしれない、と少し大きなことを思っています。
これの後、こういうSFは1度も書いてないので全くの希望的観測なのですが。
色々書きたいものが溜まっているのですが、その中のひとつにSFの20万字くらいの長編を書く、というのも入れてみようと思います。

長くなってしまいました。
ありがとうございました。

香川
27.95.81.7

藤光さん

ご感想ありがとうございます。
お返事が遅くなってしまい、申し訳ありませんでした。

実は少し前に、他の方から私について「藤光さんと印象が被っていた」という主旨のコメントをいただいていて、
ですが私自身は藤光さんのお名前を見かけることはあってもご作品を読んだこともなければコメントのやり取りをした覚えもなかったので、どういう方なのかな、とぼんやり思っておりました。
なので、ご本人からコメントをいただけて、何だかおっと思いました。ありがとうございます。

手塚治虫の作品は、昔、ジャングル大帝の再放送を見たことがあるのと、
これも結構前ですが犬夜叉の後にブラック・ジャックがやってた気がする…くらいであまりきちんと見たり読んだりしたことがないのですが、
鉄腕アトムとか、こういう雰囲気なんでしょうか。

古い印象になってしまったのは、たぶん細部に近未来的要素を散りばめることが出来なかった、という設定上の詰めの甘さが原因で、
その原因自体は私にSF知識がほとんどないためのものだと思っています。
SFに必要な回路ができていない状態で書いてしまっているというか。
それではSFファンにとっては物足りなくなってしまうのは当然だと思いますし、何よりも空気感を近未来風に演出できなかったのは問題だなと思います。
せっかくのロボット設定なのだから、もっと、分からないことがあるとパソコンと繋いでデータ収集しちゃうとか、ホログラム映し出して今日のサービスはどうなさいますか?みたいな空気読まない質問するとか、そういう人間離れしたことをたくさんさせてしまえば良かったなと思いました。
そういう意味では伸び代しかないような気がしてきましたが、逆にそういう部分をいろいろ詰めていけば、今よりという比較にはなりますがだいぶ面白いものになる可能性はあると感じたので、
他の方へのお返事にも書きましたが、似たような作品にもまた挑戦してみたいなという気持ちがわいてきています。

文章に関しては、お褒め頂いているのにこんな風にお返事してしまって恐縮するしかないのですが、実は結構前に書いた作品なので、かなり酷いなと読み返して思いました…。
2作目3作目はそうでもないですが、1作目はちょっと酷いなと…。
執筆の狙いに書いた通り、今、文章改善をしていこうと色々やっている最中で、そのひとつとして人称や視点について見直してみる、というのがありまして。
でもこれまでに神視点を扱ったものが、今回投稿した3作目しかなかったので、それを一応投稿してご意見伺ってみようと思いました。
でも、どうせなら連作なので3作全て投稿しようと思ってこういう形になりました。

ですが、投稿してみて、そこまでよく考えていなかった部分について(全体に古さが目立つという点)ご指摘をいただけて、
自分なりにSFを描く際に大切にしなくてはならないことも見えてきたように思います。
こういう思いもよらない発見があるというのは、批評を中心としたサイトに投稿する利点だなと思いました。

ご作品も気になっているのですが、今ちょっと忙しくなってしまっていてなかなか伺えそうにありません。
もし、時間があってその時の私に作品を読む気力が残っていれば、読ませて頂こうと思っています。
何だかすみません。

ありがとうございました。

ラピス
49.104.4.93

皆さんのような密な感想でなくて申し訳ないのですが、、、私は映画「A.I」を強く思い出し、そんなに古さを感じませんでした。
1話2話3話と読み進めるうちに、切なさが深まります。構成を考えてあるなーと感心させられました。
人称は1話や2話が読みやすかったです。3話は感情移入しにくかった。神視点は長編の濃いファンタジーに向いていると、個人的に思います。
人称は話の質に応じて変えるといいでしょうね。

香川
27.95.81.7

夜の雨さん

ご感想ありがとうございます。
3作全てに丁寧なコメントを頂きまして、本当に感謝です。
にもかかわらず、お返事が遅くなってしまい申し訳ありませんでした。

1作目について。
近未来的世界観を上手く描けなかった、というのは他の方からもご指摘がありますし、そうなのだろうなと思います。
確かにネットに繋げばどんどん最新の情報が入ってきますし、そうした方が断然近未来らしいですね。
個人的にはコンピューター同士(ロボットに限らず)で情報交換し合っていて一瞬のうちに人間ではありえない膨大な量の知識を得ていたり、充電器の上に立って充電したり、そういうのもシュールでよかったかなとか、ご感想拝見してぐるぐる考えていました。
その辺りの緻密な世界観の設定が必要だったのだなと感じます。

皆さんスマホ持ってらっしゃいますよね。
かく言う私もこのサイトに投稿しているのも小説を書いているのもスマホでです。
電車では1人の時はずっとスマホ見ていますね…。

お読みくださっているので言うまでもないかもしれませんが、ロボットカーは2作目で登場させていて、私としては時代が動いていることを示そうと思っていたのですが、
感情を持ったアンドロイドが日常生活の中でごく普通に存在している時代にロボットカーがないというのも不自然ですよね…。
車のことでいえば、スカイカーがあって空の交通も開けていた方がSFらしかったかもしれないなと思いました。
こういう部分、本当に詰めて書けば良かったなと思います。

ウィルス感染に関しては、ああ近未来っぽいな、と思いました。
ただ、今回は容量不足で壊れる、ということが作品内で重要な要素になっているので、ジャックが壊れること自体は容量不足という設定のままでいき、それ以外のロボットの不具合や暴走の原因としてウィルスを上げておくと近未来らしいリアルさが出たかなと思いました。
とは言っても、容量不足で壊れてしまうというその事が近未来の世界でリアルに感じられないように書いてしまっていることは問題だと思いますので、細部からそういう故障の仕方がありうると感じられるように書けばよかったなと思います。
今度SFに挑戦する際には、そういう部分を注意していこうと思います。

『エクス・マキナ』は見ました。
とても面白かったんですが、何よりもアリシア・ヴィキャンデル素晴らしくてすごいすごいと思ってしまい、作品の持つSF感に注目できていなかったような気がします…。
WOWOWでちょこちょこやっているっぽいので、また録画して見てみようかな…と思いました。

2作目について。
オチはわかりますよね…。
かなり前にこのサイトに投稿しているのですが、その際にご感想頂いた方の8割位の方が、途中でラストが分かったとコメントされていたように記憶しています。
実は他のサイトでも公開しているのですが(批評中心ではないサイトです)、やはりラストが分かってしまったという方がいらっしゃいました。

3話目に関して。
私もこれが3作の中では1番気に入っています。
理由はそこまでセンチな方向に頼らずに書けたから、というの後大きいです。
あとは、単純に書いたのが一番最後なので、文章面で個人的には気に入らない部分が少なかったからでしょうか…。
3作まとめて投稿していますが、実は書いた時期はかなり離れているんです。
なので、1作目などは文章が下手というのもあるのですが、なんとなく今の自分と筆致が違いすぎて恥ずかしい感じがしてしまいます…。

28枚なんですね。
原稿用紙に換算していなかったので、そうなんだ…と思いました。
最近は短くまとめるのが難しくなってきていて、28枚でそれなりにまとめていたことを考えると、少し劣化してしまっているかもしれません。
2万字位で書こうと思ったものが、なぜか15万字に膨れ上がったりしていますから…。
筆が暴走しています…。

人間の親子関係に当てはめてみる、というのは考えたことがなかったので、こんなふうにも読めるのだな、とたいへん興味深くコメント拝読いたしました。
感情があるかないか、ということにより注目するなら、仰るように感情のあるロボットを粗末に扱うこと、という部分にもっと着目すると面白かったかもしれません。
今回は感情があるのかないのか明確にしないまま終わりにしましたが、
感情などないに決まっている、と思っていたのが、ラストで感情が確かにあると明示される、という展開にすればまた違った味わいの作品になったかもしれないですね。

長くなってしまいました。
たくさんのコメントありがとうございました。

香川
27.95.81.7

瀬尾辰治さん

再訪ありがとうございます。

公募には年に1作出すか出さないか、くらいであまり積極的でもないのですが(今年は頑張って2作出しましたが)、結果は1次も通ったり通らなかったりであまり芳しくありません。
1回一次通過作は全部優秀賞という感じのゆるい賞で入賞?したくらいですが、多分このサイトにもそこで入賞された方何人もいらっしゃると思います。
今、文章改善を目指しているのは、最近投稿サイト(小説家になろうやカクヨム)で作品を公開することにも少し飽きてきたので、本腰を入れて書いてみて、良いものができたら公募ももう少し頑張ってみようかなと思ってきたからです。

なので色々みなさんのアドバイスも参考にしながら勉強して少しでも上手くなれるように努力しようと思います。

ありがとうございました。

香川
27.95.81.7

ラピスさん

ご感想ありがとうございます。
長いコメントをくださる方は、私の作品などに労力を割いてくださるという意味も含めてとてもありがたいなと思いますが、
読んでこうしてコメントくださるだけでも充分ですし、短い中でとても参考になったり励まされたりするご感想もあり、そういうのとても嬉しいしありがたいです。

他の方へのお返事に書かせて頂いたのですが、この話は子どもの頃にジュード・ロウがロボットを演じた映画を見たことがあり、それに触発されて書いています。
その映画がまさに『A.I.』でした。

そこまで古い感じはしなかった、ということで、ひとつ安心したというか嬉しかったです。
ただ、『A.I.』は映画なのでヴィジュアルによって近未来感が表現できていて、シーンによって雰囲気がガラリと変わるところも新鮮さに繋がっていたように思います。
ですから、文字を介してしか表現ができない小説であれば、やはり他の方が仰っているようにもっと近未来らしい設定をしていかなくてはならなかったのではないかなとも思うんです。

ですが、確か別の作品の感想欄でも似たようなことを最近書いた気がするのですが、なんにせよ自分の書いたものを肯定的に捉えていただけるというのは、それだけでとても励まされます。
なので、コメントいただけて、本当にとても嬉しかったです。

構成に関しては、実際すごく煮つめて書いたという感じではなかったのですが、かなり間を開けて書いた3作なので、時間を置いた分勝手に煮詰まっていた部分はある気がします。
2作目を書いた時には1作目を客観的に見つめられましたし、3作目を書いた時も同じ感じでした。

人称に関しては、仰るように作品に合わせて選択していくのがいいですよね。
長編ファンタジーなどが神視点に向いているというのも同感です。
ただ、私には長編を神視点で描ききる力がまだまだ全然ないので、短いもので練習をしていかないとな、と思って書いたのが3作目でした。
ですが、難しかったのと練習することよりも描きたいものを書くという方が勝ってしまって、それ以降は1度も神視点の練習をしていないんですよね…。
実は長編ファンタジーなども書いてみたいという気持ちもあったりするので、やっぱり短いもので少しずつ練習はしていこうかな…と思っています。
他の視点の理解にも繋がるような気もしますし。
今回の投稿は、他の視点(一人称や三人称単一視点)の理解、という部分もありました。
でも、視点に関してはそれぞれ考え方もとらえかたも違うので、やはり難しいなと思います。

ともあれご感想励まされました。
ありがとうございました。

ポキ星人
106.73.96.160

 言語は他の個体との意思疎通のためのものでその中で発達したのだ、というのが大方の考えだと思いますが、言語学者のチョムスキーは、言語は思考のために発生し発達したもので、他者との意思疎通は言語の本来の用途ではない(思考の道具を意思疎通に転用しているのにすぎない)という仮説を唱えています。生物学的な実証の見地でどちらに分があるかは知りませんが、ともかくも対他的な説明も対自的な説明も理屈としては成り立つのでしょう。
 人間的感情の発生の起源も、他者との共感としても、自己の内省としても、いずれの説明もできるのだろうと思います。ですからロボットの感情の発生をどちらで書いてもかまいません。ですが、創作物としては、登場するロボットはその発生の態様に合うものであるべきだと思います。つまり、どんなロボットが出てくるのか、は、作者が感情(の起源)を何だと捉えているのか、を示すもののはずです。
 第一話のロボットはジゴロロボットで、これは好きな映画からとったそうですけど、>セクサロイドとかではなくジゴロロボットでいきたい とのコメントは、言外に「彼は肉体労働よりむしろ感情労働をしているのだ」と主張なさっているのだと思います。こういう存在の心というのは、他者との交流とか他者への推察(思いやり)によって発生すると考えるのが素直だと思います。鉄腕アトムだと基本的には、アトムも人間のようだ、という他者との同質性から感情が導かれているように感じられますが、第一話も基本はそういう感じになりそうに思います。
 しかし題名はまるで「考えるゆえにわれあり」みたいな趣ですし(そういえばチョムスキーは「デカルト派言語学」を自称しています)、内容も感情とか心とかというより自意識の発生を書いています。他者と私は違う、だから私が唯一独特の存在なのだ、という目覚めが感情の起源だという方向性を(ややあいまいな部分もありながら)感じるのですが、それならジゴロロボットとかの話ではない方がいいのではないでしょうか。
 率直に言って私は、第一話には既視感があるわりに心理に着目してちゃんと読もうとすると何が書いてあるのかよくわからない、という印象を持っています。ロボットの在り方と心の在り方とあらすじとがきちんとあってないのが原因だろうというのが私の見立てです。
 「考えるゆえにわれあり」系だと楳図かずおの「私は真悟」というすごいのがあるんですが、あれは町工場に備え付けられた腕だけの工作機械が意思をもつ話で、鉄腕アトム的ではないし、ましてジゴロロボットではありえないので、そこには必然性があったのではないかと思いあたりました。
 やや余談ですが、さきほど使った肉体労働と感情労働という言葉をかえりみるに、「肉体労働」という語は労働者が肉体を使うということで客が肉体を使うのではないわけですが(「頭脳労働」も同様)、「感情労働」は客の感情に働きかけるような労働を指すということで、力点が違うのです。他者間の感情というものにはここに示されたようなずれを発生させる類の性質があるように私は思います。何が言いたいのかというと、御作では、読者がジャックの孤独がなんだかかわいそうになって、するとジャックに心があるように感じてしまう(実は十分には書かれていないのに)、それで作品としてはなんとなくおかしいと思いつつ納得はしてしまう、という作用が発生していると私は疑っていて、それは丁寧な接客をうけてなんだか申し訳ないような感じがしつつも別に店員のまごころに触れたともいえないし、不快ではないけどありがたいとも実は思えないのがなんか後ろめたいという、「感情労働の対象としての客」のあの感じに近いように思ったのです。

 第三話がありがちに見えるのは話の内容がありがちだというより、その扱い方が日本的にありがちだということだと私は思っています。
 実のところ、第三話で行われていることやその背景思想というのは、昔のアメリカでの白人の奴隷主と黒人奴隷との間の話そのままです。黒人には白人のような複雑で繊細な(=人間的な)感情はない、というのは、奴隷支配を正当化しようとした当時の代表的なイデオロギーの一つです。
 アメリカのロボットもののSFというのは、アメリカの読書人に、奴隷制なり人種問題なりを思い起こさせるようなバックグラウンドがあって発展したのです(旧東欧にもロボットもののSFがありますけど、そちらは社会主義国家における非人間的な管理体制を想起させているのでしょう)。アシモフの作品などがロボットの普及を書き、感情の問題を扱うとすぐにロボットの権利の話になっていくのは偶然ではありません。手塚治虫はアメリカのロボットSFを日本化したので、そこでは物にも魂がやどる日本的精神だとかが評されがちですが、「ロボットの感情を扱えばそれは権利の話に直結するのだ」というアメリカ的な理解を日本的に曖昧化することなく、素直に受け継いだのはすごいことだと私は思います(私が御作を手塚的だとは思えないのはこういう見地からです)。
 御作に社会派的な展開を望むわけではないですが社会派的な見地から食い足りないことが描かれていればそれはつまらないだろうとは思います。ある家庭で奴隷をどう扱うべきか、という範囲の話は、奴隷制の是非まで射程にいれた作品よりは確実につまらないからです。自分の書いていることがそのへんにかかわりがあるということに(無意識的にも)気づかなければ、文章の緊張感は見落とした分落ちますし描写の選択も甘くなるでしょうし、たぶん現にそうなっています(これが「日本的にありがち」と先に言った意味です)。なお、前述の「私は真悟」で、楳図かずおはロボットの権利なんか描きませんがかわりにあのように作品を描いたので、あれも見識だと思います。
 さしあたり、作中の奴隷が、奴隷主の妻がやさしいので同情した、という話だという見地で再検討したら、奴隷制度自体は射程に入っていないことはわかるのではないでしょうか。ここでもロボットに感情があるならロボットが奴隷であってはならない、という発想をやりすごして、ある一体のロボットが同情すべきなので彼には心があると読者に感じられてしまう、というやり方にとどまっているように私には思えます。それからこの第三話の方こそ「考えるゆえにわれあり」という路線に見えるのに他者への思いやりの路線がとられていて、ここも不整合なのではないでしょうか。
 それで第三話の筋書きの枠内でどうにかする方法というのを私は思いつけませんでした。別な方向で考え直した方がいいのかなと言う気がします。

香川
182.250.53.209

ポキ星人さん

ご感想ありがとうございます。
お返事が遅くなってしまい、申し訳ありません。

お話が少し難しい方向に向かっているので、完全に理解力の問題ですが全て綺麗に噛み砕けたか自信がありません。
ただ、概ね納得できたように思います。

まず、第1話に関して。
セクサロイドではなくジゴロロボットという名称使ったのは、そこまで深い意味はなく、言葉通り「ジゴロジョー」というキャラクターを彷彿とさせたかったからです。
なのでお恥ずかしいですが、肉体労働ではなく感情労働、ということまで考えて言葉の選択をしてはいませんでした。

感情の起源と自意識の発生についてのお話は、確かにおっしゃる通りだなと思いました。
これを書いた頃の私は、感情と自我というものをまぜこぜにして書いてしまっていたのだなと思います。
自意識が発生したからと言ってそれが人間的な感情に繋がっているわけではないですよね。
むしろ、ものすごくありがちですが自我に目覚めれば何らかの形で人間世界を侵していった方がロボットの自我らしいなと思います。

「ロボットの在り方と心の在り方とあらすじとがきちんとあってない」ために心理に着目すると何が書いてあるか分からなくなってしまっている、というのは、作品の根本に関わることなので、お話自体を掘り下げてよくよく考えないとはっきりつかめない部分だと思います。
そうする中で、自分なりの答えというか方向性を見つけられればいいなと思いました。

第3話が白人と黒人奴隷の関係になっている、というのは、すんなり理解出来ました。
実は学生の頃に英文学科に所属していまして、その頃にマイノリティ文学を一応勉強しました。
当然、アフリカ系アメリカ文学というものにも触れているので、アメリカ社会の人種問題がフィクションに色濃く反映されていることも知っています。
…と言っても、私の学んだ範囲はかなり限られていて、特に深く学んだのは「パッシング小説」という特殊なジャンルなので、フィクションと人種問題や奴隷制度についてそこまで理解が深くはないと思いますが…。
とにかく、かじった程度ではあっても一度学んだことについて、それと自作との関わりに思い至れなかったのはお恥ずかしいことです。
言われてみれば、確かにこの関係は白人の主人とアフリカ系の使用人のようでもあります。
この関係をこのストーリーへどう反映していくかはまだ分かりませんが、それによって作品の緊張感がもっと表現できるなら、とても面白い挑戦だと思います。

ただ、読み手の方にどのように読めてしまうかは分かりませんが、私としてはこの話ではこのロボットに心があるのかないのかは曖昧にしておきたいなと思っていました。
あるのかないのか分からない状態の不穏さというか不気味さというか、そういったものを出したかったというのがあります。
それにしては「心がある」方に傾いてしまっているのかもしれないのですが…。
少なくとも、人間ほど完成した感情では全くない、というつもりで書いていました。
ただ、よく作品について思い返してみると、感情がないというより感情が鈍麻してしまっている、という方が近い書き方になってしまっているように感じました。
ここはもっとよく考えて書くべきだったなと思います。

この第3話について「考えるゆえにわれあり」に見えるというのは、もっと良く考えないと私には掴めない部分です。
第1話がそういう風に見えることは大いに納得なのですが、第3話に関してはマイケル自身の自意識というものをそこまで出さずに書いたつもりだからです。
彼の真意自体がいまいち掴めない、という方向にすることで、感情があるのかないのかもよく分からないというふうにしたいと思っていました。
なので彼の自意識か顕著に見られるということなら、相当書き方か悪かったのだと思います。
ここはもっとよく考えなければならない部分ですね。

ありがとうございました。

ご利用のブラウザの言語モードを「日本語(ja, ja-JP)」に設定して頂くことで書き込みが可能です。

テクニカルサポート

3,000字以内