作家でごはん!鍛練場
ニカ

ターシャの花

じわじわと、暑い日差しが肌を焼く。私は病気になりそうな蒸し暑い空気を吸い込んで、ぐっと首を持ち上げた。それから、まだまだ続く山の傾斜を見上げて、げんなりとする。
いま向かっているインドの奥地のバラスー村、その山岳地帯の奥地には、ほとんど人が住んでいないそうだ。辛うじて踏みならされた細い道が一本つながっているが、三時間前いた街の舗装路に比べて、牛や羊に道を譲らなければいけないことも随分減った。この先にあるのは山一帯を所有している神聖な寺一軒だけだから、元々の通行人が少ないのだろう。
チャングム寺。私は少し足を止めて息を細く吐くと、また歩き出した。

「はっ、チャングム寺に行く? おまえさん、本気かね」

寺に向かう前に少し現地の人に話を聞いてみようと、朝食を買うついでに尋ねた時だ。屋台のおじさんは、流れるように、忙しなく動かしていた手を一瞬止めて、ぎょっとこちらを見た。
「おそらくあそこに新種の植物がいくつかあって、それが気になるんです。私は学生で、日本の生物資源科学部で学んでいて」
「せいぶシゲ?」
「生物資源科学部です。……とにかく学生で、植物の研究をしています。日本で、めずらしい黒い花があると聞いて、それが今までない種類のものらしいんですよ」
タターン、とヘラが落ちる音がした。驚いておじさんを見ると、彼は口をあんぐりと開けてこちらを見ていた。

聞くところによるとその花は、ターシャの花、と呼ばれる、とても神聖なものらしい。
私が行こうとしている山は本来近づいてはいけない場所だということ。その花を取るなんてもってのほかだということ。敬意に欠ける行いをすれば天罰が下ること。彼は早口でそんな内容の話をまくし立てた。
だから私は、この山を所有しているチャングム寺に向かっている。採取の許可をもらうためだった。その為に、こんな山道をかれこれ三時間は歩いている。普段運動不足の私にはあまりに過酷な状況だった。重い疲労に、束の間、瞳を閉じる。

しばらく経つと、ゆるゆると瞼を開けて、眩しい日差しに目を細めた。それから立ち上がろうと膝に力を込め、リュックに手を伸ばす。私はふと動きを止めた。ぐいっと視線が一点に引き戻される。
目を見開いた。
道を外れた傾斜の二、三歩下に、黒い花をつけた見たことのない植物が揺れている。
どくん、と心臓が跳ね上がった。リュックを放り出して道を飛び出すと、膝まで雑草が茂った傾斜へ向かう。
一見すると何の変哲も無い植物だったが、ただ、私が見たどんな資料の植物とも似ていない。うんと小さくした紫陽花のような細かい花の集まりが、葉の先で揺れている。鼻を寄せると、ふわり、と甘い香りがした。まだ年若い少女のつける香水のような香りだった。
たぶんこれが、ターシャの花だ。肩にのしかかった疲労の重みが消し飛ぶような心地がした。
「あー……」
けれど私は、手をぐっと握ると、首を振った。許可なしにこの花を採取するなんて、不躾なことだ。他の植物ならまだしも、神聖なものだと言うなら、話が違ってくるだろう。
「えっ」
諦めて立ち上がろうとしたとき、私は思わず声をあげた。
私のすぐ手の先にある地面の上に、ひとつ、折れた茎ごとその花が落ちていた。
「これ、そこの人」
「うつっ」
突然後ろからかけられた声に、私は一瞬息を詰めた。跳ね上がった心臓を抑えながら、ぎこちない動きで振り返ると、道の上で背の低いおばあさんがこちらを見つめていた。
彼女は人差し指を唇に当てると、頷いて、私の後ろを指差した。つられて前を見て、目を凝らす。しばらく経って眉を寄せた。ここと同じで、鬱蒼と膝まで茂る雑草と、乾いた幹の木がいくつか生えているだけだった。
「あっ」
私は悲鳴をあげそうになった口を慌てて塞いだ。
狐をふた回り大きくしたような精悍な動物が、木陰に隠れてじっとこちらを伺っていた。私は硬直しながら、またおばあさんを振り返った。髪の毛から滴る汗が、ぽたりと、瞳に染みる。
「そのままゆっくりお下がりなさい。慌てないように」
私は口に手を当てたまま頷いて、ゆっくりと彼女の方へ後ずさった。その動物は少し頭を振って、また動きを止めた。私がやっとのことで四歩ほど歩いたところで、それはごく気軽な仕草で、ふいっとどこかへ行ってしまった。
尻餅をついて、知らず知らずのうちに止めていた息を吐いた。
「大丈夫ですか」
顔を上げると、おばあさんがこちらを見下ろしていた。
「すみません、ありがとうございます」
彼女は柔和に微笑んだ。少し口角を上げるだけで、もともと多かった皺がくしゃっと増えた。おそらくはかなりの高齢なのだろう、曲がった腰のせいで背は低く見え、声はもう嗄れている。着古した茶色い布の服の形と剃られた髪。私は真っ先に尼さんを想像した。
「……あの、この先のチャングム寺に行きたいのですが、もしかして」
彼女は頷いて、くるりと私に背を向けた。
「ええ、私はあすこの者です。……寺に行くのならついておいでなさい、ここからだともうだいぶ近い」


それからしばらく歩いた後に着いたチャングム寺は、話に聞いた神聖な印象に反して、色の少ない、古びた建物だった。けれど、寺の中はインドに来てから見る建物の中で一番と言っていいほどに清潔だった。街のあの雑然とした様子ばかり見た後だと、艶々した木の床は見ていていかにも気持ちが良い。ありがたいことに、おばあさんは私にお茶を淹れてくれた。
馥郁な茶葉の香りに、ほうっと肩の力が抜ける。
「さて、こんな辺鄙なところになぜわざわざいらしたのです」
ギャザのクッションに座ったおばあさんは、私に向かって柔らかに問いかけた。
「あっ、あの、私は日本で植物の研究をしている者です。この山の花で、新種のものがあると小耳に挟んで、ここまで来たのですが」
「ほう、それはどのような」
おばあさんは目を伏せて、僅かに微笑みながらお茶を啜った。
「黒の、花です。時々青の混じった……」
外で鳥が、ピューイ、ロイロイと長細い声で鳴いているのが聞こえる。しばらく経って、おばあさんは口を開いた。
「あなたが言っている花は、おそらくターシャの花でしょう」
彼女は言った。
「ターシャの花を見るようになったのは、ほんの六十年ほど前のことですよ。私がその花について知っていることは多くないが、少しならお聞かせできるでしょう。長くなりますがよろしいか」
私はターシャの花を取る許可が欲しかっただけだった。が、せっかくの申し出を断るのも憚られる。
「…………お願いします」
彼女は頷いた。
「よろしい。と言っても少し昔話をするだけですがね。

あれはもう六十、いや七十年ほど前のことです。私はその時まだ子供でね、ここで沙弥尼をしていた。幼かったので、ここの寺のものも私がふざけ遊ぶのも甘く見てくれていました。私には同い年の従兄弟がいましてね、内気だが、私の前ではよく話す子でした。要領が悪く、大人達には叱られてばかり、いつも困ったように笑っているおなごです。大切な友達だと思いながらも、私は少しだけその子のことを見下しておりましたよ、本当のはなし。意気地なしなのだから私に頼って生きて行けばよいといつも思っていた。抱きしめるとね、すこし甘い、春の風のような香りがする子でした。
その子の名前がターシャでした。ターシャはいつも私と一緒でした。ある時、私たちは、大人達に街まで一緒に使いに出るよう言いつけられ、珍しく二人で外出をしました。日が暮れるまでに帰っておいでと言われて、けれど帰ってきたのは昼頃でした。思ったよりも早く済んだのです。しかし、このまま帰ったら、私たちは早く済んだ分、大人の仕事を手伝わされるだけです、そこで少し悪知恵を働かせました。いつも幼い頃二人で遊んでいた、ままごとにぴったりの場所で時間を潰すことにしたのです。林の中の、昔使われていた刈った木を置いておくところですね、そこで二人、色々と遊びました。その日は冬の始め、すこしひんやりと肌寒かったような。
太陽が少し傾き始めた頃、ターシャが突然立ち上がりました。彼女らしくない、勢いのある動作でした。少し見てくるからここで待っていて、ターシャはそう言って、ぱたぱたと森の奥へ駆けていきました。私は呆然と彼女の後ろ姿を見ていました。見てくるって何を見てくるのかしら。何をしに行くのかしらん。私はすぐに彼女を追わなければならないと思いました。森はターシャが一人で入るには、あまりに、危ない。しかし入れ違いになっても困ります。もしあと二時間ほどして帰ってこなかったら大人達を呼びに行こう、私はそう決意して芝生の上で待ちました。
けれど、十分経っても、二十分経っても、彼女は戻ってきませんでした」
ターシャと言うからには、きっと花と関係のある話なのだろう。私はちらりとおばあさんの表情を伺ってから、また視線を床に戻した。
「もう大人を呼びに行こう。私が立ち上がったのは、日も暮れかけたころでした。夕焼けが綺麗だった。あの日の空の鮮やかな赤さは、まだ昨日のことのように思い出せます。私は立ち上がって、それから林を見回しました。ターシャはどこにもいません。その場所を出て、寺まで続く長い坂を登り始めました。はやる気持ちを抑えて、私は歩きました。走ると後の方で休憩を挟むことになりますから、そちらのほうが時間を食う。とにかくターシャが心配でした。
けれどね、私は道半ばではたと立ち止まった。そして何か大切な忘れ物をしたような気になって、しばらくそこに突っ立っていました。胸のざわめきに耐えかねた私は、来た道を戻り始めました。坂を駆け下り、あの場所へ走り込んだ。見回してもターシャはいなかった。自分は何をしているのだろうと思いましたよ。良かったこととえいば、肝心の大人から頼まれた使いの品まで置いていっていたのに気づいたことでしょうか。私はそれを拾い上げて、それからふと、林を見た。
そうしたら、そこにターシャがいた。夕焼け時に伸びる長い影のように、木の陰に溶けて立っていた。私のことをじぃっと見つめていましたよ。私は驚いて荷物を取り落としました。
駆け寄ってどこにいたのか私が聞くと、ターシャは不思議そうに言いました。ずっとここにいたよ、と。 私はいよいよおかしいと思いました。 林の奥に行っていたじゃないかと言うと、そんなことしてないと彼女は言いました。呆気にとられている私に、ターシャはいつものように笑って言いました。帰ろう、と。言いたいことはたくさんありましたが、私たちはとりあえずもう帰ることにしました。遅くなれば叱られる。私は寺に帰って、ターシャも自分の家に帰りました」
私は黙って彼女の話を聞いていた。
「それからね、私とターシャはずっといつものように二人で過ごしました。はっきりと、『おかしい』と思い始めたのは、一ヶ月ほど経った頃でしょうかね。
ターシャに水汲みを頼んだ時のことです。彼女は私を振り向いて、井戸の方へ駆けていきました。そのちらと私にくれた流し目に、じり、と違和感を覚えました。言葉にできないほどの小さなものだったので、夜になる頃には消えていましたが。
けれど、それからなんどもそんなことが起こりました。例えば、私の髪のほつれを直した時の手指の動きが違う。私を見上げる瞳の視線が違う。彼女は要領が悪い分人一倍きちんと仕事をこなしていたけれど、ある日、水が飛び散るくらいの勢いで雑巾を甕に浸したのです。それからまた掃除を始めた。彼女らしくない乱暴さ。小さな小さな違和感が、だんだん私の中で降り積もって行きました。
……その中でも一番決定的だったのは、瞳です」
「瞳……?」
おばあさんは一旦言葉を切ると、頷いた。
「彼女は遠い北国の血が僅かに混じっていてね、黒髪は私たちと同じだったが、よく見ると黒目がちな瞳に青が散っていた。私と、彼女の母親くらいしか気づいた人はいなかったとターシャは照れくさそうに言っておりました。その瞳がなんとも綺麗で、私は覗き込むようにしてよく見ていたものです。
その日、ふと隣にいるターシャの瞳を見ると、それもまた変わっていたのです。
柔らかさのような、私が好きだったターシャの視線の感触が消えていました。代わりにあったのは、独特の、引き込まれるような生命力だけでした。鰐や魚、それから野犬に共通するような虹彩の眼球がそこにはありました。じっと見つめていると、ターシャがこちらを向きました。なぁに、と聞かれて、なんでもない、と私は笑って答えました。ターシャは頷きました。その頷き方もターシャではありませんでした。その時、違和感がちりちりと脳を焼きました。
増え続けるそれは、積もりに積もって、だんだんと私を焦がし始めました。そのたびに何度叫び出しそうになったでしょう。頭を抱えて蹲りたくなりました。
そして二年ほど経った時、とうとう私は確信しました。隣にいるこれは、ターシャではない、と。そう、二年間耐えましたが、もう限界でした。
ある夜、私は彼女を、とっておきのお肉を手に入れたから大人に内緒で食べようと呼び出しました。夜、寺の裏に。あとで見ればわかるでしょうが、あすこは崖になっているのですよ」
「お肉……」
尼さんなのにいいのだろうか。思わず呟くと、おばあさんは溜息をつくように笑った。
「私はもう沙弥尼ではありません。尼でもない。十戒を破ったからです。……十戒とは何か知っておられますか」
「ええと……」
「不殺生・不偸盗、不淫・不妄語・不飲酒……。まだありますが、このうち私が破ってしまったのは、不殺生です。……ええ」
おばあさんは薄く目を開いた。
「人を殺したのです」

「ターシャを呼び出して、崖の淵に二人で並んで座りました。私の手にはもちろんそんな肉などありません。ターシャは不思議そうな顔をしました。私はターシャの方を向くと、ぽつりと、“ターシャを返せ” と言いました。言った途端めらめらと腹の奥から憎悪が湧いてきました。私は目の前の女にターシャを奪われたのです。あの優しい笑顔が私に向けられることはないのです。私は立ち上がると、ターシャの胸ぐらを掴みました。私の方が背は高かったし、腕力では絶対に負けない自信があった。ターシャを返せ! と私は彼女を怒鳴りつけました。ターシャはしばらく凍ったような瞳で私を見ていましたが、数秒後です。彼女は、ニィーーーッと、笑いました。口角を釣り上げて、歯をむき出して、目を見開いて笑いました。そのおぞましさときたら、もう人間のものではなかった。あれは絶対にいのちではない。今でも私はそうはっきりと言うことができます。私はもう一度、ターシャを返せと言いました。ターシャはもっと口角を釣り上げて笑いました。私は彼女を崖の方へ突き出しました。きろりとターシャの瞳が私に向きました。嘲笑うようでした。私は彼女の胸ぐらから手を離し、それから崖の方へとんっと押しました。彼女の靴が崖から離れて、それからゆっくりと、下の方へと落ちて行きました。何秒か後に、砂袋が落ちるような音がして、崖の下を見下ろしました。そのまま私はそこに座り込んで、しばらく夜空を見上げておりました。星が綺麗な夜だった。
しばらくして、獣の遠吠えが聞こえました。見おろすと、血の匂いに連れられた獣たちが蠢いているのが見えました。あなたもさっき見たでしょう、あの尾の長い獣です。あれがターシャを食っていました。私はくるりと踵を返し、部屋に戻りました」
私は何も言わなかった。
「一週間ほど経って、私の部屋の前に、小さな花が咲いていました。見ない花だった。私は屈みこんでその花を見下ろしました。青が散った黒の花びらは、ええ、どこかで見たような色でした。ふわりと香ったその匂いに、私ははっとしました。甘い涼やかな匂いでした。記憶を探ると、すぐに思い当たった。ターシャの匂いでした。あの幼い頃ころ、森から帰ってきた時以来、ターシャからこの春風のような香りがなくなっていたことに、私はその時始めて気づきました。私は泣きました。ターシャのことで泣いたのは、それが初めてでした。その花を自分の花壇に植え替えて、我が子のように大切に育てました。私とターシャが遊んだところや、彼女のお気に入りの場所に、ターシャの花はぽつぽつと咲いていました。私はターシャの花を見ながらよく一人で泣きました。あの花は私の涙で育っているのです。
じつは私が殺したのはターシャだけではないのですよ。町から私の叔母の息子が来た時に、彼はターシャの花に興味を示しました。見たことない花で美しく、しかも一年中咲いている。仕方ないことだったのかもしれません。なんの花だと聞かれて、私は知らないと言いました。譲ってくれと彼は言いましたが、もちろん断りました。彼は困った顔で頷きました。しかし、彼が村から去る日の朝、花壇を見ると、一輪花が減っていた。あれほど大切に育てていたのです、気づかないわけがありません。子供だからと見くびられたのでしょう。根ごと引き抜かれていて、大方街で増やして売る気だったのでしょうね。返してと言っても彼はしらを切るばかりでした。私はすぐに裏の家畜小屋に行くと鶏を一匹絞め殺し、血と肉を袋に詰めて、彼を追いかけました。それから土手の滑りやすいところで彼を道の外れに突き落とし、頭を思い切り鍬で殴りました。ターシャのことを考えると、怖くはありませんでした。けれど簡単に気絶はしてくれませんでした。私はもう一度彼を殴りました。意識はあったようですが、足をくじいたのか歩けないようでした。私は持ってきた鳥の死体と血を彼にぶちまけ、放り出された彼の鞄を持って逃げました。その時の彼の怒鳴り声は、きっと一生耳から消えないでしょう。けれど彼の通った道は、たいてい夜は人が通らないと、私は知っていた。私は自分でも不思議に思いました。
さて、どうしてあんなことができたのでしょうか。
もしかしたら、私もターシャのように、私ではなくなってしまったのかもしれません。ターシャがターシャでなくなったように思えたのは、私が私でなくなったからか。 もしかすると、あの森の中で自分を落っことしてきたのは、ターシャではなく、私だったのやもしれません。なんにせよ、私はあの花をとても気に入っているのですよ、お客人」
ぽたり、と私の汗が地面に落ちた。私はおばあさんの話を途中から聞けなくなった。私は行きがけに見つけたターシャの花のことだけを考えていた。あの尾の長い狐のような動物に追われた時、あれに驚いたせいで、その前後の記憶があやふやだ。私はあの時ターシャの花を地面に戻してからきたのか、上着のポケットに入れてきたのか、どちらだろうか。もし私が茎ごと折れた花をいま、持っていたら……。
脂汗が額を伝い、顎から滴った。うまく頭が働かない。なぜこんな時に。自分の手が震えていることに気づいた。私は怖いのだ、目の前のおばあさんが。彼女は柔和に微笑んでいた。
しばらく、部屋に沈黙が降りる。深い湖の底から引っ張ってきたような沈黙だった。
「どうされました、顔色が悪いようですが」
おばあさんは私の顔を覗き込んだ。
「あっ……え、と」
「こんなもてなししか出来ず、申し訳ない。そろそろお帰りなさい、日が暮れる」
おばあさんは私に立ち上がるように促すと、荷物を渡してきた。私はよろよろと扉まで歩くと、彼女に頼りないお辞儀をした。自分がそのとき何といったのかは、よく思い出せない。
おばあさんはくしゃりと微笑んだ。
「いえいえ、とんでもない。けれどそうそう、こんな山奥に一人で来るものではありません。寺なら他に、ごまんとある。もうむやみにここには来られぬように」
私は彼女に背を向けると、逃げるように寺を後にした。ポケットに手を入れると、そこは空っぽだった。

私はターシャの花をあそこに置いてきたのだ。あれからもう五年が経つ。兎にも角にも、私がその寺を訪れることはもう、二度となかった。

ターシャの花

執筆の狙い

作者 ニカ
14.3.79.49

高校のコンテストに出す小説です。改稿にあたっての意見が欲しくて投稿しました。よろしくお願いします。

コメント

ニカ
14.3.79.49

余談ですがこの前に投稿したエッセイを読んでくださった方いらっしゃいますか。エッセイと同じ賞に投稿しようと思っています。今回もよろしくお願いします。

ニカ
14.3.79.49

(エッセイの賞ではなく、エッセイ部門の賞と並列で設けられている小説部門の賞に投稿します。訂正です。すいません)

一陽来復
219.100.84.36

画面だけ ざざーっと傍観して・・
「ターシャ」とか「チャングム」とかゆー、既視感バリバリのネーミングは、変えた方がいいよ。。


そんでもって、
現地の一般人に「日本語の生物化学部が曲がりなりにも通じている」状態が、どうしたってヘンテコすぎるんで・・そういう無駄な遊びは、ただ邪魔。


こういう「作中で出会った人物が、長々述懐するタイプの短編」っつーと、
真っ先に思い浮かぶのは、やっぱ、中島敦『山月記』。

 >虎は、既に白く光を失った月を仰いで、二声三声咆哮したかと思うと、又、元の叢に躍り入って、再びその姿を見なかった。
っつー終わり。

中島敦はそれを「三人称で書いている」んで、この原稿も三人称にすれば、「老婆述懐中の“私”と、語り手である私」の区別が明確で、すっきりするかも。

似たようなテイスト(不思議体験を物語るのがメインな短編)で、夢野久作の場合は「一人称、全編語り口調」で書いてますが、その方が難度は高い・・と思う。



話は・・終始淡々としていて、平板。そんで、予定調和的。

ど〜〜も、高校時代の自分が書いてたような原稿&作風に近くて、、、こっぱずかしくて直視出来ねぇんですよ。

偏差値45
219.182.80.182

一読してみました。二、三度読まないと正しく理解できないかな。
おそらく表現力が拙いのだ、と思います。
日常で使用している言葉、、、それでも良いの時もあれば、良くない時もあります。
また、会話文の言葉、地の言葉、その点の違いを注意した方がいいかな。
ストーリーとしては面白味の狙いが分からないので、なんとも言えないですね。

加茂ミイル
58.89.136.15

とても高校生とは思えないような作品でした。

文章がとても上手だと思います。

ご利用のブラウザの言語モードを「日本語(ja, ja-JP)」に設定して頂くことで書き込みが可能です。

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