作家でごはん!鍛練場
俊郎

敗北の向こう側に

 目を凝らすと、そこに広がっていたのはかつて修道院だったという異教徒の館だ。円錐形の建物は月の光で妖しく浮かび上がり、赤煉瓦を積み上げた壁も、無数の蛇に似たヒソップが絡みつき一層の妖気を醸しだしている。さらに鉄扉付近には、痩せて背の高い幽鬼のような門番が空ろな目で徘徊している。
「裏へまわりましょう」
 マルタがヴェールの内側で表情を曇らせる。ヨシュアとユダは肯き、壁伝いに走った。まばらに生える没薬に身を隠しながら息を殺して進んだ。ほどなく裏門へ着くと、マルタが身体を密着させて内側の気配を窺い、小刻みに板門を叩いた。するとぎいぃと軋んだ音がして、まだ骨格に幼さを残すマルタの末弟、ラザロが無垢な瞳を覗かせた。
「信徒たちはもういないよ。いるのは使用人だけさ」
 ヨシュアは周囲を見回し素早く入りこむ。ユダとマルタも続いた。
 と不意に、屋根の最上部に括り付けられていた鐘がヨシュアの到着を告げるかに揺れ、鳴った。みるみる冴えた星空が漆黒の闇に変わり、岩まじりの赤茶けた裏庭の土が妖気漂う濃紫色に染まっていく。
 ヨシュアは頭布を指で払い身構えた。怯えるように後ずさりするラザロをマルタが抱きすくめた。ユダは戸惑いを見せながら気配を探っている。
「迷うな、ユダ。肉を超越した敵だ」
「ああ、覚悟はできている」
 憮然と答えるユダを見て、マルタが思いつめた表情でヨシュアに向き直る。
「戻るのであれば、今しかありません」
 おそらくユダの返答を虚勢だと見抜いたのだろう。いや、もしかしたらユダと天敵の関わりを直感で気づき、最後には裏切ると思ったのかもしれない。だが、たとえそうだとしても逃げるわけにはいかない。兄が真のメシアになるためには、ユダの才覚と巫女である正統な伝授者が必要不可欠なのだ。
「案ずることはない。ユダと力を合わせ、必ずやマリアに取り憑いた悪霊を払って見せる」
 マルタはしばらくヨシュアを無言で見つめた後、膝をつき「そうであるなら、私にできることはここまで。ご武運を祈ります」と通路を指差した。
 
   
 正面の祭壇にマリアの姿があった。純金の燭台に灯された蝋燭の光を浴びて一心に祈りを捧げている。まわりには煙のようなオーラを纏った塊が七柱、ゆらゆらと強烈な視線をヨシュアへ向けて浮かんでいる。天敵のルシフェルは彼らと数キュビット離れた場所でヨシュアを睥睨していた。
「ついに来てしまったのですね。望んではいませんでした」
 意識をルシフェルと七柱の霊に向けていたら、マリアが思いもよらぬ言葉をかけてきた。白いヴェールから覗く瞳がどこか潤んで見える。惑いだろうか。
「下衆な勘ぐりはやめたほうがいいかと。私は、あなたが死と向き合っているのが偲びないだけです」
 マリアが凛とした所作で、ヨシュアの心を覗いたかに言った。
「下衆の勘ぐりは、あなたのほうだ。私は生と向き合っている」
「征服者の子は独占力の塊、口も達者なようですね」
「普段は寡黙だ。その代わり、相手が尊大だと雄弁になる」
「黙りなさい! 嘲弄は赦しませんぞ」マリアから瞳の潤みが消えた。
「嘲弄ではない、差し出がましいことを言うようだが懸念しているのだ。このままでは、いずれ七つの悪霊に取り憑かれた女と、未来永劫民から蔑まされることになる」
「残念ですが、口先だけで一方の理念を押しつけようとするのであれば問答は無用。これ以上話しても埒があきません。やはりあなたの相手はルシフェルに一任します」
「そのほうがいい。じつは、私もあなたが苦手だ」
 ヨシュアは一方的にマリアから視線を外すと、返す動きでルシフェルを見た。七柱の存在を横目で牽制しながら天敵へ近づいた。
 と、忙しく階段を上がる音が聞こえた。見ればラザロがヨシュアをすり抜け、青ざめた表情でマリアに駆け寄っていった。マルタもラザロを追いかけるようにして続いてくる。
「マリア、僕は自分に正直に生きることに決めた。ヨシュアが教えてくれたんだ」
「知っています。でもこれから、それが間違いだったと教えるつもりです」
 マリアは背筋を伸ばしたまま表情をくずさない。静かで、それでいて激しい瞳をラザロに当て、あべこべにたじろがせている。
「巫女の血筋のせいでしょうか、私たちの一族は女に限って特に霊感が強い。その重圧に押し潰されるのが嫌だったの。だからマリア、あなたに家督を譲った。でもイスラエルの女です、もう一度、イスラエルの神を信じようと決意しました。今こそ宿命に決着をつけるつもり」
 マルタが居ても立ってもいられない感じで、マリアの手を握る。
「マルタ、あなたまでもが……誑かされてしまったのですね」
 マリアが手を払いのけた。
   
 
「痛ましい光景だ。ヨシュアよ、二人を篭絡させたことについては素直に評価しよう。だが、そんな茶番じみた芝居では、人間の観客を騙せても存在たちの心は動かせぬ。どうする、思いきって床をなめ平伏してみるか。それとも抹殺されてみるか」
 壁にもたれていたルシフェルが、足を半歩前へ進ませ、意味深に投げかけてきた。
「笑止! それほど深淵に徘徊する仲間を鼓舞したいのか。しかし忘れていることがある。生きている限り私は無力だが、死して魂の本質に戻ったとき、力はお前を凌駕する」
 朗々と言った。しかしルシフェルは揺るがない。
「それこそ痩せ犬の遠吠えにしかすぎん。我らは感情にまかれて怒りを爆発させることはしない。逆だ、力を制御する能力に優れているのだ。だから命をとらずに狂人にすることも、再起不能にすることも思いのままだ。それを踏まえて対決するがよい」
 ヨシュアを余裕であしらうと、七柱の霊へ向かって呼びかけた。「それでは、出でよ多神たち――」
 煙のように輪郭をぼかせていた存在が、ルシフェルの言葉に呼応する。俄かに妖気が厳かな霊気に変わった。漂っていた重苦しさは消え、七柱の霊から不可思議な光が洩れる。幾筋もの光の帯が、部屋中の壁に反射して飛び散った。
「おお……」
 ユダが驚嘆の声を上げる。ラザロが慌てて、ヨシュアの後ろに身を隠した。一人、マルタだけが手を広げ七霊の前に立ちはだかっている。
「彼らは古代よりこの地に土着する豊壌神です。正統な巫女の血筋を引くマリアの聖婚を支配しようとしています」
「たぶんそうなのだろう。彼らを知っている……そんな記憶もある」
 ヨシュアは呟くように言った。
「ヤハウェの子よ、今夜限りで消滅する身でありながら、我らを覚えてくれていたとは身にあまる光栄です」
 冴え渡る声とともに、見るからに美しい女神が姿を見せた。
「そなたはフェニキアの女神アスタルテ、そこにいるバアル神の妻。なら残りの五神はマンモンの神モロク、ペリシテの海神ダゴン、竜神ヤム・ナハムに、女神アナト、そして最高神イルであろう」
「ほう。さすが神の子と呼ばれる人間よ。心を折ったくせに、しっかり名前だけは覚えているのだな」
 くぐもる声を轟かせ、颯爽とイルが姿を見せた。いかにも最高神らしく堂々たる勇姿だ。
 律法学者らによって幾千年も苛まれていたはずなのに、尊厳は失わせていない。いまだ多くの民に崇められているのか強烈な崇高さが保持されている。部分、部分に、聖なる威厳がとても強く感じられる。
 だがヨシュアは、ルシフェルに向き直り言った。
「こそこそとやたら気配を感じると思ったら、どこへ行き、友を連れてきたのか。天の目を盗んでの冒険、さぞかし楽しめたと思う。が、真意はどこにある。多神と私を対峙させ、何を望む」
「理由はすでに伝えてあるはずだ、そんなに怖れなくともいいだろう。私は場を設定し、双方の真価を見とどけたいだけだ。ナザレのイエスは、すでに試した――」
 かっと頭を熱くさせたが、逆に心は鎮まっていく。兄への揺るぐことのない信頼感、それが根底にあった。
「なら試させてあげよう。金輪際二度と、私と兄の前へ、恥ずかしくて顔を出せぬほどに!」
「神々よ、この男は何も分かっておらぬ。兄、兄とほざくが、その兄を、なぜ私らが封印したのか説明する必要がある。誰か、言って打ちのめしてはくれぬだろうか」
 ルシフェルが周囲に呼びかける。すると、すぐさま金色と黄色の入り混じる霊気が反応した。女神だてらに気性の激しいアナトだ。
「ヨシュアよ、きさまはナザレのイエスを清らかな男と勘違いしているが、あ奴こそ正真正銘の偽善者だった。そればかりか底知れぬ能力を秘めた魔術師でもある」
「兄が、偽善者だと。どこからそんな言葉が吐き出されるのだ。アナトよ。そなたこそ病を癒す女神でありながら戦いに明け暮れ、守護する力は少しも民に及んでいないのを知れ。それに横にいる竜神ヤムから、姉妹ともども奴隷まがいの扱いを受けて、復讐することしか念頭になかったのではないか。憎悪と復讐、神に縁遠い行動だが、これをいかに説明するのか」
 ヨシュアは七神すべてを見渡すと、語気を強めアナトへにじり寄った。
 しかし戦いの神アナトは、これっぽっちも怯まない。逆に「まったく説得力に欠ける言葉だ。今でこそヤハウェは善き神として民の上に君臨しているが、元々は戦いの悪魔ではないか。いったいどれほどの人間を殺めた、どれだけ自然を破壊したというのだ。この地域の乱れの元凶は、すべてヤハウェにあるのを知らぬか。我らは人間を殺めてもいなければ自然も破壊していない」
 と、凛とした精気を双眸に漲らせた。「大地の修復は、我らが人間と手をたずさえて行ったのだ」
 アナトの言うように、神は地上に災害をもたらし多くの人間を殺した。また蹂躙される民を憂えて、戦いに導いた。
「イスラエルの民を救うとはいえ無意味な行為であったかもしれない。けれど自然については破壊したのではなく再生したと心得よ。我が神は、ついで人間の心も再生した。そして地域に固執せず、至高の奥深くで全世界を俯瞰している」
「ばかめ、負け惜しみにしか聞こえぬわ。我らは、ヤハウェをイスラエルの殺戮の神と呼んでいた。だが、きさまが非を認めたことに関しては評価してもよい。四の五を言ったら、斬りつけてしまおうかとも本気で考えていた。ま、ナザレのイエスのことは別として、痛み分けで良しとしてくれるわ」
 アナトが白い歯を覗かせる。やけに小気味よさが残った。一方での潔さ、それが戦いの女神といわれる所以なのかもしれない。けれど肝心の兄のことに関しては話をはぐらかされた。封印? いったい多神と兄の間に何があったのだ。
 刹那、ルシフェルから不可解な笑みがこぼれた。嘲笑でもなく同情でもない、どちらかというと値踏みするような笑みに思えた。この場を画策しておいて何を意味するのか理解しかねたが、釈然としない。
   
 
「ふ、口の達者な小僧だ。だが他所は見えても、自分の足もとは見えぬようだ。では私がアブラハムの子孫とヤハウェの節操のなさを教えよう。心して聞け」
 バアルの誰よりも低く、そのうえ張りのある声が部屋中に響く。嵐と慈雨の神、大地に豊穣をもたらす存在だ。それだけに纏うオーラも力強い金色に輝き、見るからに相応しい威容を誇っている。
「今でこそ砂漠となってしまった大地も、遥か昔は肥沃な一面緑の大自然だった。そこで私は人間たちに農業を教え豊穣をもたらせた。そのせいもあり、人間たちの暮らしは日増しによくなっていった。しかし流浪の民を率いる僻地の神ヤハウェが羨んだ。なぜか? 理由は言うまでもない。それはイスラエル人が、ヤハウェの提唱する戦いが無意味だと知ったからだ。アブラハムの子孫は次々と見切りをつけ私を崇め出したのだ。彼らは遊牧をやめ農耕を選択した。つまりヤハウェをすて私を選んだ――」
 バアルが満足げに話すと「それだけではないぞ。大地の恵みを捧げるカインを拒絶して、弟殺しの罪を着せると残酷な生贄を奨励した。ヤハウェはとことん血が好きなのだ。大地を血で呪いたいらしい」
 生贄のことをいうなら、バアルは人身御供を望んだ神として有名である。イスラエルでもつい五百年ぐらい前までは、バアルと、バアルの後ろに控えるモロクのために、子供を生贄として捧げ火で焼きつくしていた。しかし聖地の祭壇に、子羊の血を振り撒く儀式が今も続いているのは事実だった。父アッバスはそれを嫌い、穀物を捧げていた。
「バアルよ、なぜそれほどまで小さな主観の中でものを言うのか。私に足もとを見よといったが、あなたこそ空でも見上げてみたらどうなのだ。ルシフェルと違い我が神の創造物でないことは認める。だがだ、あなたらは神の創った大地から生まれた精霊であって、聖霊ではないのだ」
「我ら神々が聖霊ではないだと? ふざけるな! 黙って聞いていれば、よくも抜け抜けと。たかが十六、七年、地上で生きて何が分かる」
 バアルを押しのけ、それまで静かに情勢を見つめていた竜神ヤムが激怒した。とつぜん両手を胸の前で広げ、熱い息を吹きかけると指を弾いた。
 弾かれた二つの空気は小さな炎の塊となって、凄まじい勢いで飛んできた。まるで至近距離から放たれた火矢のようであった。避けるまもなくヨシュアの両肩で炸裂した。
 気がつけば肩に激痛が走っていた。ヨシュアは膝を落とした。身体から肉の焦げた臭いが、ぷーんと鼻を衝く。両肩は焼けただれていた。
   
 
「ヤム、ひどいぞ!」
 ラザロが叫んだ。「それでも神なの、恥ずかしくないの。今の行為には少しも愛が感じられない。僕には核心を突かれて動揺しただけに思える。ほんらい怒りというのは、愛が備わっていない限り出すべきではないんだ。傲慢すぎる。謝って、ヨシュアに詫びを入れて!」
 さして強くも思えぬラザロが、竜神に対して堂々と言ってのけた。ある意味、多神との完全な決別と思える言葉だった。ヨシュアは痛みを忘れ、胸を熱くした。
 それのみかマルタまでもが駆けより、流れる血に布を当ててきた。誰はばかることなく、必死に血止めをする姿は清廉そのものだった。
 ああ……こんな私に。たまらなく目頭が熱い。
 ふと横を見ると、ユダが、ルシフェルとヨシュアを交互に見つめ戸惑いを見せている。目覚めたといっても契約寸前の影響なのだろうか、懸命に殻を打ち破ろうと悶えているようでもあった。
 ヨシュアは、マルタとラザロに目で感謝すると「離れたほうがいい」と促し、ゆっくり立ち上がった。
「ヤムよ、一つだけ約束してほしい。私に攻撃を加えるのは、いっこうに構わない。しかしマルタとラザロだけには手を出すな。たとえ虫に喰われた程度の損傷でも決して与えてはならない」
「あたり前だ。言っておくが、我らの中にヤハウェみたいに大洪水を起こしたり、空から硫黄の雨を降らす者などいない。それに我らは一民族だけを導く偏った考えを持っていないのだ。大地と人間を心から愛している」
「果たしてそうだろうか。そこまで人間を愛しているというなら、どうして地上の支配者争いに終始し、なぜマリアに取り憑いているのだ」
 ずきずきと襲う両肩の傷の痛みに顔をしかめ、再度核心を突いた。横でマリアが小さく肩を震わせる。ヨシュアは続けた。
「マリア、あなたは邪悪により拘束されていることに気がつくべきだ。いくらイスラエルの表層を見て失望しようとも、バアルのような外的権威を受け入れてはいけない。自らの内に真理を見つけるのだ。それは偶像からの解放でしかない」
「偶像? ヨシュア、あなたは何を持って偶像と言わしめるの。なら聖地エルサレムはどうです。私には契約の箱に収められた石版も、箱に描かれた絵も立派な偶像に思えます。それに呪われた町ではありませんか。豊穣神を追放したからだけではありません。一目瞭然です。大神殿に裕福な律法者たちと祭司、信仰を指導している人たちは心の貧しい者ばかりです。本質から理解すれば戦いの神ヤハウェなど、一般市民の生活とは無用なもの。単に階層的な貴族のための信仰でしかありません。神殿こそが律法者こそが、偶像にほかならないのです」
 返答が毅然というより刺々しい態度に思えた。ただ、律法者に関しては的を射ている。
 それは税も払わぬのに税を搾り取り、贅を尽くした祭司たちの生活ぶりを目の当たりにしているからだ。ヨシュア自身も強い反発を覚えていた。だからといって、答をすり替えてはいけないとも感じた。
「マリアよ、なぜエルサレムの塵に気づきながら、自分の中にある棘に気がつかない。あなたに憑いた者は悪霊であって、純真な心を貪る者たちだ」
「愚かな――」
 マリアが苦笑して言い返す。「あの一同に星が集結したベツレヘムの夜。ガリラヤでは明星とともにアスタルテ、アナトなどをはじめとした多くの女神が降臨し、星々がマグダラを祝福していました。理由が分かるでしょうか。私は女神の意志を引き継ぐ母性なのです。だから救世主にとって私は道であり、私を通ってでなければ、たとえ選ばれし者でも大願を成就することは叶いません。メシアは私のもとで目を覚まし、バアルら神々の定めた道を歩くのです」
「違う、メシアの母は農婦だが一人しかいない」
 冷淡に別れを告げたが、母と子の絆が消えるわけがない。ヨシュアは母の顔を思い出しながら反論した。
「ああ言えば、こう言う。どこまでも口が達者ですね。それだけにヨシュア、あなたの惨めな末路がはっきりと見えるのです。最終的にあなたは、あなたの神から見放され大いに嘆くでしょう。それは真実を知らぬままに生き、最後の最後に真実を知るからです」
 マリアの口調はもの静かで溶け入るようにやわらかい。それなのに言葉が胸に突き刺さる。
 重苦しい沈黙が生まれた。
「減らず口を閉じるのだ。真実を知りもせず巫女を惑わせてはいけない」
 七柱の中、ひときわ澄んだ輝きが沈黙を破った。最高神イルだ。眼差しは激しくない、むしろ湖の底のような深い静けさを湛えていた。
「そなたは我ら七神を排除し、ヤハウェのみを正しいと主張しようとする。それは間違いである。なぜなら矛盾だらけだからだ」
 イルは間を置くと続ける。「では説明しよう。ヤハウェはダビデのような戦いに能力を発揮するものだけを好んで優遇した。また愚かにも信じる者には永遠の救済を約束し、異教徒には地獄の苦しみを与えると断言した。差別好きのヤハウェは一切を救済する思慮に欠けているのだ。なのに唯一神と自ら名乗り、この先ヤハウェの子が真理を悟れば三位一体と言い直すであろう。それは本末転倒であり私の真似事でしかすぎないのだ。その真理も然りだ。理解できぬのなら予見を見せる、しかと見るがよい」
 イルは言葉をそこで切ると、皆を見渡しておもむろに両手を広げた。
 そこに、墨色の空を背景に三本の柱が立っていた。所々から雷雨のはじまりを告げる光が破裂しかかっている。
 これは……よもや霊視で見たゴルゴダか。なら自身の絵姿であろう。ヨシュアは言葉を失いかけた。
 イルが「目を背けてはならぬ、耳も澄ませよ」と小さな声で囁いてくる。やけに間延びした声なのに、いつまでも頭に残った。それだけにユダもラザロも、マリアまでもが吸い込まれるよう耳をそばだてた。
   
 
 衣を剥ぎとられ、全身無数の鞭跡だらけの痩せた男が、雷光に向かって叫んでいた。でも、よく聞きとれない。
「ふ、遠すぎて、よく聞こえぬか。ならば――」
 イルが、もう一方の手から波動を送った。と、とつぜん臨場感溢れる声が迫ってきた。
 ――エリ、エリ、レマ、サバクタニ!
 (神よ、神よ、なぜ私を見すてるのでしょうか!)
 痩せた男が目力を弱め、どんよりした空に向かって吼えている。
 これは、まさか兄なのか……ならば兄までもが、我が神に見すてられたことになる。
「どちらとは言わぬが、そなたの推察どおり、ヤハウェに呪われた子であるのは間違いない。しかし私が言いたいのはこの後のことだ。男は復活する。民衆は奇跡だと大騒ぎをする。復活、そんなことが奇跡であるならば我が息子バアルは、とんでもなく奇跡の神である。バアルは死して必ず三日後には復活したのだから――」
 ヨシュアの身体から力が抜けていく。イルの言葉ではなく、絵の重みに耐えきれず首をうなだれた。
 すると、それまで黙っていたルシフェルが見透かしたよう話題を変えた。
「ヨシュアよ、真実の入口に差しかかったついでに、私が反逆を起こした理由を説明しよう」
 と足を進めてきた。「征服者は、唯一神の論理に拘りすぎて我が子を見すてた。いや、それ以前に多神を見すて、人間を見すて悪魔となったのだ。真実を人間に知られるのを畏れ、禁断の木の実をあえて設定した。だが私には耐えられなかった。そのため蛇を唆してまでも、エバに目を見開くのだと囁いた。なぜなら知識の実など大嘘で、どうしても隠しておきたい別の真実があったからだ」
「その真実とは?」
 ユダとラザロの切迫した声が聞こえてくる。ヨシュアは伏し目がちに首を上げた。
 見ると、ほぼ全員がルシフェルを凝視していた。だが、すぐには答えない。
「何を躊躇するか。早く言って、ヤハウェの子を二度と立ち上がれぬぐらい叩きのめすのだ」
「お願いです、ルシフェル。私もその答を、ぜひ聞きたい……」
 マリアも、潤ませた瞳をルシフェルへ向ける。
「もとより隠すつもりはない!」
 ルシフェルは、何か踏んぎりをつけようとしているのかヨシュアを睨みつけ、めずらしく言葉尻を荒げた。
 真実を思い出すということは、忘れていた記憶を甦らせることでもある。記憶の入口に差しかかり、なぜかルシフェルに対し懐かしい哀愁じみたものを感じた。それが何であるかまでは思い出せないが、まぎれもなく約束に起因するものなのだろう。
   
 
「遥か昔、まだ人間がいないころの地上。私は大地をこよなく愛する豊穣の神バアルを見て、土から人間を創ろうと、まだ神と認めていた征服者に持ちかけた。『よかろう、ならば、わたしの似姿に合わせて創ろう。その代わり、わたしと同じように敬わなければならない』と言った。反発する天使もいたが、抑えて私は同意した。なぜかといえば、私はこれから生まれるであろう人間の肉を見ずに魂だけを見ていたからだ。魂に境涯の違いがあっても、どこに偏見があろうか」
 ルシフェルにしては穏やかな目だった。しかし衝撃的だ。
「バアルはエデンの東で、アダムとエバに豊穣の喜びを教え、アスタルテは愛の大切さを知らしめた。エデンには竜神ヤムもいるからして、緑と水、愛に溢れた大地となった。だがアダムとエバは、征服者からバアルもアスタルテもヤムもすべて神々だとは知らされていなかった。理由はいうまでもなく、征服者が封印していたにほかならない。そのことについては、ラザロもマルタもバアル信徒であったから知っているはずだ。しかし真実を見せずして、このままでいいのか、私はしだいに心を揺らせた。で、ついに真実を告げた。神はヤハウェ一体ではない、大勢いるのだと――」
 マルタとラザロの息づかいが急に激しくなる。
「そしたら、神は……」
 ラザロがルシフェルへ純真な目を向けた。
「征服者は烈火の如く怒った。アダムとエバから、よりよい関係であったバアルやアスタルテなど神々の記憶をすべて奪い、一本の林檎の木に隠してしまった。神が堕して征服者となった瞬間だった。私は、そのとき初めて怒りを感じた。真の三位一体とは神を含めた神々と、天使、人間の魂が心を通わせることだと思っていたからだ。根底から、ずたずたに裏切られてしまった。だからこそ私は悪魔と堕した征服者に弓を引いた!」
 ばかな、嘘だ。三位一体とは無限の我が神と、有限の天にいる聖霊と、地上で肉を持った兄であることが前提なのだ。精霊でしかない有限の多神とは、あきらかに本質が違う。精霊とは万物に宿る崇高な霊のことだ。無限に行くこともできないのだ。
 だが根も葉もない戯言だと否定しようにも、衝撃が強すぎて言葉を返す気力がない。いたずらに首を横に振ることしかできなかった。知っているつもりでも知らないことが多すぎたからだ。
 仮に六面体の大きな箱があり、それぞれに真実の色がついていたとする。正面から見れば一色しか見えない。でも斜めから見れば二面二色に見える。ヨシュアには斜め上から、さらに上面の色まで見えていた。
 しかしそれは、あくまでも全体の半分でしかない。残りの三面は未知のままだった。今、一方の存在から反対側の色を知らされ、ルシフェルから地の底からしか見えぬ色を聞かされた。
 我が神は、人間に無限の愛を知らしめた。だが反発する者には必ず怒りとも試練ともとれる罰を与えた。悪に向く人の心を覚ますためである。ルシフェルよ。お前は無知な策略を持って我が神の計りごとを覆うつもりか。
「無限である神から、何より最初に祝福された大天使ルシフェル、光の伝授者よ。お前は明けの明星でありながら、この地上に光ではなく闇をもたらすのか」
「ヨシュア、お前はそのように嘆くが、私の翼がどれだけ黒く澱んでいるだろうか。この見事なまで純白な衣はどうなのだ。眼差しもそうである。人間に対する思いは、枯れることのない泉のよう絶えず潤いに濡れている。断言しよう。我、征服者を呪い、袂を分かったことに一点の迷いもない!」
 なぜか反論できなかった。力量不足だ、あのルシフェルが切々と胸の内を見せているというのに、心を無下に隠すことなどできるはずもない。
   
 
「憔悴しているところに鞭打つようだが、今宵、そなたを呼んだ理由を伝えよう」
 ルシフェルと入れ替わり、バアルが駄目押しとも取れる言葉を浴びせてくる。「もはや万端手筈は整えて、残る邪魔者は取るに足らないヤハウェの子そなたと、守護する生意気な小僧ヨハネだけだった」
「私とヨハネだけ? それは、どういう意味だ……」
 いきなりヨハネの名前が飛び出して、かっと胸を熱くさせられる。
「分からぬか。どうして我らがルシフェルといるのか、なぜ天上でそなたと戦ったことがあるのか、もう一度よく考えて見ることだ」
 バアルが愉悦の表情を浮かべて見下してきた。ヨシュアは少なからず皮肉をこめて言い返す。
「まどろっこしいことを言わずに、正直に話したらどうなのだ。ルシフェルと一緒に深淵に堕して、這い上がってきたと――」
「ふ、蝿の王と言いたいのだろうが、それはヤハウェに洗脳された人間が真実を歪めて伝承したものだ。がだ、確かに我らはルシフェルの呼びかけに応じて天上で戦った。砂漠の神ヤハウェが砂漠だけに飽き足らず、近隣へ触手を伸ばし、秘かに全土支配を目論んでいたからだ。しかし敗者とは惨めなものだ。その後ヤハウェはイスラエル人を操って戦いに明け暮れ、我らが補佐する民族を次々と滅ぼしていった」
 たぶん彼らは怖れている。補佐するペリシテ人やカナン人、フェニキア人らがいなくなってしまえば、彼ら自体の居場所がなくなり存在が無になってしまうからだ。そうなれば自ら消滅させるか、未開の土地へ行って一からやり直す以外にない。
 現に消えかかっている民族だからこそ、マリアが最後の砦となる。マリアがどう動くかで存続が決まる。なら、そのための邪魔者がヨシュアとヨハネなのだろう。
「そなたを消滅させてしまえば、ヨハネなど論外」
「そうはいかない、それが甘い謀略だということを思い知る。俺が死んでも兄がいることを忘れたか――」
「兄だと? よくよく世間知らずだ」
 バアルが冷笑する。「もう少し思慮深く敏感だと思っていたが、やはり愚か者であったようだ。もっと言葉の裏を探るべきではないのか。ナザレのイエスが、そなたの考え通りに動くとは限らないのだ」
「世迷言を言うな」
 肉として破壊の道へ進むのも、ここで殺されるのも、ひとえに兄こそが救世主と信じていたからだ。それを異教に屈するなどと、そんなふざけたことがあってたまるか。露骨に否定した。
 生まれて以来、一度たりとも会っていない。しかし兄こそが心の支え、唯一の誇れる牙城なのである。その存在があったればこそ、破壊の道を歩くことになっても後悔しないと決めたのだ。しかし封印、今になってその言葉が重く圧し掛かる。ヨシュアは、ルシフェルへ向き直った。
「どこまで汚い奴だ。多神と密談を重ね、まだ聖霊と繋がっていない兄を、組やすしと判断して誑かせたのか」
「お前は放っておいても自滅するだろうし、能力もたかが知れている。契約の対象外だ。それにマリアがいれば聖婚によってバアルと繋がるのだ。そうすれば手なづける手間が省ける、この先ヨハネが洗礼を編み出しても脅威ではない。選択肢は聖霊と繋がっていないもう一人のイエスしかいなかった」
「よくも!」
 ヨシュアは痛む両腕を前方にかかげ、手のひらに波動を蓄えた。すぐにそれは金色の光となった。雷ずちである。
 皆が息を呑んだ。
「見苦しいぞ、ヨシュア。腐った怒りによる雷ずちなど我らに効かぬ」
 たじろぎもせず、泰然とかまえるルシフェルの態度に、創り出した雷ずちの行き場を失わせた。目的なき雷体は、手のひらの中でぐるぐる旋回しながら勢いを緩やかに鎮めていく。
 腐った怒り、その言葉が迷った風となって胸の中を吹き抜けた。
 ルシフェルは悪略をもって大切なものを奪い、人々の救済の道を塞いだ。卑怯すぎるぞ。後から続く正義が立ち上がらなくては、人に道はないも同然。
 ヨシュアは激しく首を振り、手のひらで暴れる雷ずちをルシフェルへ向けてかざした。
   
 
「き、きさま、それを我らに向けて放つのか!」
 気配を察知したヤムがルシフェルを押しのけ、すかさず、いくつもの炎の球を創った。間髪を入れず指を弾く。まったく躊躇いが感じられない、唸りを上げ立て続けに飛んできた。ぐわっと燃えながら迫ってくる。
 気丈なマルタが甲高い悲鳴を上げる。ラザロを懐に抱え込んで蹲った。
 それを見て手のひらの波動は突如熱り立ち、ついに雷ずちを放った。閃光が館内に走った。薄暗い室内が白昼の輝きを見せる。
 だが心境は絶望的なまでに耐え難い。究極の破壊力、その殺傷能力はヤムの炎の比ではないからだ。
 雷ずちは、凄まじい力でヤムの炎を弾き飛ばした。弾かれた炎が、瞬時に痕跡も残さず消える。光の藻屑となって霧消した。
 勢いを増した鋭角の光は、仄暗い空間をそのままルシフェルに向かって突っ込んでいく。精霊たちが俊敏に身を翻した。
 そのとき、時がとまった。機敏な精霊の動きも静止し、ルシフェルとヨシュアだけが同じ時間の中にいた。
 ルシフェルは悠然として逃げようともしない、眼差しに強い意志を漲らせて堂々と立っていた。気配から塵ほどの畏れも感じられなかった。
「なぜ、なぜだ……」
 逃げろ、逃げて卑しい醜態を晒すのだ。
 いくら霊的天使といっても、しょせん被造物、滅亡の可能性だって大いにある。雷ずちをまともに受ければ全組織が一挙に死滅し、再生させることは不可能となる。存在自体が魂ごと消滅してしまうのだ。
 それを知っているはず、なのになぜ逃げぬ。まさか、死ぬ気なのか。ヨシュアの背中に冷たい汗が走る。
 そのとき、時が動き出した。
 ヨシュアは、突き出す手のひらを咄嗟に上へ向けた。
 雷ずちはルシフェルのわずか手前で大きく光の弧を描く。天窓を粉々に打ち砕くと、大音響を残して虚空へ消えていった。ばらばらと砕かれた屋根の残骸が舞い落ち、辺り一面埃が降り注ぐ。それでもルシフェルは微動だにしない。眉一つ動かさなかった。
 ヨシュアは悄然と立ちつくした。
「よくも、小癪な真似を――」
 打ちひしがれるヨシュアの心情を無視して、ヤムが歩をつめてきた。もう反応する気力がない。今頃になって両肩の痛みが増した。
「よせ、来るな!」
 近くにいたラザロが手を広げ、勇敢に立ちはだかる。
「退け、小僧」
 何をしようとするのか、ヤムが、ふっと小さく息を吹きかけた。息は旋風となり、ラザロの身体をふわりと持ち上げる。次の瞬間、ぐしゃっと骨が砕けるような音と同時に、ラザロが壁へ叩きつけられた。
 背中を強く打ち、声が出せないようだ。ラザロは気丈に睨みつけたものの、すぐに目を閉じ悶絶した。
「手を出さぬと約束したのに、まだ懲りないのか!」
「心配するな、手加減はしておいた。人間に殴られた程度の衝撃しか与えていない。すぐに気がつくだろう」
 ヨシュアが嗜めると、ヤムが悪びれずに言った。
「手加減? 何を言うのです。たとえ神といえども、していいことと悪いことがあります。あなたの行為は神格を疑わせます」
 マルタが堪えきれずに噛みつく。とても信じられないと何度も首を横に振った。
「我らを裏切り、異教に走った女だな。その言葉、聞きずてならぬ。ヤハウェがどれだけ人間を殺戮したかを考えよ。奴こそ神格がない。それに、お前が慕うこの殺人鬼、この後――命が尽きるまでに何人の人間を殺すか知っているのか」
「数など分かりません。けれど大きな正義のための行為、あくまでも人の子として戦い、人に対し御業など使わないはずです。ルシフェルの言っていることも口先だけでした。あれほど神々は感情にまかせて怒りを爆発させない、制御能力に優れているといったのに興醒めです。ヤム、あなたは口から息を吹いてラザロを傷つけました。これは失望以上の何ものでもありません」
 マルタが瞳をたじろがせることなく、きっぱり言い切った。
 勇気づけられた。雷ずちを当てずに虚空へ向けて正解だった。マルタの揺らぐことのない信頼に、無性に熱いものが込み上げてくる。
   
 
「小賢しいぞ女、ならば我も炎を使わぬ。地上にいる雄々しき者を呼び出して、どう対処するか見てくれるわ。みごと雷ずちを使わずに退けたら、そのとき我らは静かに退散する。神々よ、異存はないか」
「まさか、ヤム。あなたは、この半死半生の男に、あの者を召喚して戦わせるのですか」
 アスタルテが絶句した。アナトを見つめバアルの表情を探る。しかしバアルは無言で答えを返さない。
「バアルよ、たとえ無傷であっても、能力を使わぬヤハウェの子のどこに勝ち目があろうか。有り得ぬことだが、万が一、魔獣を退けたとしよう。それでも我らに不利を生じるものなど何一つない。巫女とナザレのイエスの契約はすでに成立しているのだ」
「うむ――」
 バアルが眉間に皺をよせると決断を避け、イルに答えを委ねた。
「いいだろう。だが、このままでは神々として我らの名折れ。能力を使わぬのなら、せめて傷を癒し、正常の状態で戦わせる」
 イルが唇を強く結ぶと、きらめく金色の光をヨシュアへ投げつけてきた。と、両肩の傷が光に絡み合い見る間に癒えていく。わずか一瞬のできごとだった。
 ユダ、マリア、マルタ、ラザロと、四人が同時に感嘆のどよめきを上げた。
「私は最高神イル。まさに神はヤハウェだけでない証明である。さあ、ヤム。すぐにも召喚させるのだ!」
 叫びに、どよめいていた皆の顔が急に強張った。みしみしと張りつめた緊張が走る。それぞれ互いが顔を見合わせ、ヨシュアの背後、壁側に寄り添った。
「我らは、あの者の勇気と素の能力を見たいだけだ。魔獣ではなく獅子を出すがよいであろう」
「獅子と? なぜだ、獅子と戦った人間は他にもたくさんいる。ヤハウェの子にはパズズを召喚させねば意味がないと思うが――」
「黙れ、ヤム。それこそ真偽を問われることになる。獅子に勝った人間は、その後、英雄の称号を与えられた。我らもヤハウェの子に英雄の称号を与えようとした。それなのに――奴は喰い殺された。落ち度はないし理にも適っている。誰も無謀な行為とは思わぬはずだ。逆に、水と緑に嫉妬した滅ぶべき砂漠と山岳の神であることを、子が自ら証明したといえよう」
「うむ、分かった。ならば獅子を呼ぶ」
 ヤムが渋々承知する。
「草原の覇者、疾風する百獣の王よ。我の呼びかけに応え、すみやかに姿を現せ!」
 木窓の方角へ独り進むと、虚空に向かって俄かに呪文を唱えた。
   
 
 すぐさま叫びに呼応して、どこからともなく尋常と思えぬ唸り声がした。
 虚空から雄叫びとともに獅子が姿を見せる。想像よりも遥かに大きい若獅子だった。顔の周りの毛は憤怒にすべて逆立ち、鬣までも闘気に尖っていた。動くたびに盛り上がった筋肉を上下に躍動させる。
 壁に床にと咆哮をまきちらしながら、前後左右をずっしずっしと練り歩く。戦う相手を捜し、牙を剥き出しにして誰彼となく威嚇している。
「野獣の王よ、お前の敵は、あ奴だ!」
 ヤムがヨシュアを指さし、声を張り上げた。
 すると獅子の動きに反応が起きた。目をヨシュアに当て爛々と凄ませてくる。向き直って足をとめた。
 瞬間、戦いのはじまりに音が消え、凍りつくような静寂が訪れた。ヨシュアは壮絶な格闘、その先に見える死を覚悟した。
 すでに全身を凶器に変えた獅子は、低い姿勢で跳躍の気配を窺わせている。鋭い爪を床に密着させ冷酷に口を閉じた。もはや唸らない、それがいよいよ息をつまらせる。
 果たして丸腰で戦えるのか。比べれば感覚は頼りなく、喩えようもない理不尽さに憤りだけが胸を支配している。雷ずちも使えず、かといって武器もなく、与えられた使命を何一つしないまま朽ち果てるのか。無念さだけが沸騰した。
「ヨシュア、俺も一緒に戦うぞ!」
 と、そのとき、これまで敵であるがごとく素っ気なかったユダが横へやってきた。衣から短剣を取り出して構えた。忘れかけていた友情に勇気が湧いた。何より今、ユダが味方であることが嬉しかった。
 だが、助太刀など無用! と逆に追い払った。「気持ちと短剣だけを、ありがたく受けとる」
 これさえあれば、互角とはいわぬまでも獅子に少なからず手傷を与えられる。獅子、恐るに足らず。直ちに切っ先を獅子に向けた。
 しかし獅子は怯む様子も見せず、摺り足で床を這い早くも襲いかかってくる。低い姿勢から跳躍して、一気にヨシュアの喉笛を狙ってきた。
 獅子の巨体が空を跳んだ。
 咽喉もとに冷気が走る。だが怯まない。反射的に身を低くして仰向けになると、獅子と床の隙間、一キュビットあまりの幅に素早くもぐり込み、腹部に切っ先を立てた。
 強烈すぎる跳躍が災いしたのか、獅子は勢いをあまらせる。ヨシュアの変化にすぐ反応ができない。斬り裂かれ、腹から血飛沫を散らして頭上を勢いよくいきすぎた。
 が傷もなんのその、着地すると直ちに反転し、唸りながら再度襲いかかってくる。
 今度はヨシュアの反応が遅れた。振り返ったときには獅子の爪と牙が目の前にあった。咄嗟に左腕で咽喉を守るのが精一杯だった。無残にも、その庇った左腕を強く噛み砕かれた。
 激痛に大声を上げた。
 マルタとラザロの悲鳴も耳にとどくが、獅子の唸りに消された。
 ぎしぎしと牙が肉奥深く食い込んでくる。すでに牙は骨に達し、その骨さえも喰いちぎられているのだろう。左腕はまったく無感覚で力が入らない状態と化した。
 ぐいぐいと獅子はなおも牙で腕を引っ張り、前足に全体重を乗せて、胸と肩を押さえつけてくる。あくまでも殺す気なのだ。咽喉笛を狙っていた。
「させるか!」
 気力を振り絞り、右手に持っていた短剣で獅子の耳を突いた。何度も、何度も突いた。渾身の力で突いた。
 血が飛び、返り血が顔にかかる。目にも入った。それでも獅子は牙を離さない、反対に力をこめてくる。ヨシュアは負けじと、また剣を突いた。
 その一瞬、勝利を確信していた獅子に戸惑いが見えた。動揺を隠せぬのか、苦痛に顔を歪ませ牙を離して数歩退いた。といっても戦意は失くしていない。腹と耳から大量の血を流しながら猛々しくヨシュアを射すくめていた。
 血などいくら流れても、それほどの深傷と思っていないようだ。ますます形相を爛々とさせた。狂気を感じるほどに。
   
 
 ヨシュアは片手をぶらりとさせ立ち上がった。その腕から、ぼたぼたと血が滴り落ちる。足もとは血の海になっていた。獅子を睨みながら、ヤムや神々に怒りをぶつけていた。
 こんな戦いに何の意義がある。答を見つけ出せぬまま、やり切れない怒りを溜めていく。
 したりとヤムが、ほくそ笑んでいるのが見えた。それがまた、さらに怒りを増幅させる。気がつくと、手のひらに雷ずちをつくっていた。
 何を思ったか、ラザロがするすると近づいてくる。
「いけないヨシュア、怒りを鎮めるんだ」
「ラザロ。来るな、来てはいけない」
 心を読めず慌てた。
「怒りを鎮めないなら、僕も、ヨシュアと一緒に戦う――」
 ラザロが唇を噛み締め、悲壮な決意を瞳に浮かべる。
「なりません! ラザロ、どきなさい」
 獅子の後ろから、マリアの上ずった声が飛ぶ。しかし制止も空しく、ラザロは横に来た。
「なぜ、なぜだ、ラザロ……」
「ヨシュアの本質、癒しで戦わないからさ」
 緊迫感の中、ラザロが飄々と応えた。
「癒しだと? だめだ、そんな気持ちで、この獰猛な獅子と戦えるわけがない」
「そうじゃなきゃ、ヨシュアは消滅させられる……」
 気勢が一瞬だが削がれた。はからずも対峙する獅子から目を離したときだった。
 隙を見計らっていた獅子が、その絶好機を逃すべくもない。敢然と突っ込んできた。
「ラザロ、どけ!」
 懸命に右手でラザロを庇う。左手はぶらりとして動かない、喉が無防備になった。獅子は猛然と咽喉笛に喰らいついてきた。
 マルタの悲鳴とユダの叫びが、一瞬にして重苦しく交錯する。
 全身に痺れが走った。頭の中が真っ白になった、徐々に意識も遠のいていく。
 これが、お前らの望みか……。
 七神の姿がぼんやり浮かび上がる。もう睨み返す気力も残っていなかった。
 薄らいでいく意識の中に、ラザロの泣き顔だけが見えた。目に一杯の涙を溜めて獅子の顔を殴っていた。前足で払われ、床に転がされても這いつくばって戻り、そのたびに殴り返す力を強くしていた。
 側らにマルタもいた。咽喉笛に喰らいつく牙を外そうと、危険を顧みず、手を血だらけにして必死に抉じ開けようとしていた。
 よせ……もういいのだ。離れろ、誰も道連れにするつもりはない。
 と、身体を動かそうとするのだが、言葉にもならず力も入らない。
 すべて幻覚だ、そう思えば楽になる。ヨシュアは静かに目を瞑り、それ以上は考えることをやめた。すると耳が澄み渡っていく。
「離せ、離せ、この獅子め!」
 幻覚を消し去ると、幻聴が耳に入り込んできたらしい。ユダの、必死に獅子を蹴飛ばす音が聞こえてきた。人間は死ぬ間際、頭の中にいろんな絵が浮かぶともいう。とうぜん音も聞こえるのだろう。
 だったら、死はすぐそこだ。
 すべてを受け入れ、覚悟を決めた。わずかな意識を残したまま、身体の力を緩めた。
 感知された。
 瞬間、獅子に抵抗するユダ、ラザロ、マルタ、三人の感情が激しく揺れた。
「死ぬな!」
 泣きながら叫ぶユダの言葉が、もの悲しく空気を切り裂いた。
 薄目を開けると、あまりの哀哭に獅子が牙を自ら離した。数歩後ろへ離れ、動かなくなった。
 見ると斬り裂かれた腹から臓物が飛び出している。おそらくヨシュア同様、獅子も体力が限界だったのだ。勝負がついた時点で自らの死が目前に迫っているのを把握した。
 召喚される野獣というのは、勝つことが義務づけられているといっても過言ではない。この獅子も過去に何度か召喚され、その都度勝ち続けてきたのだろう。支えてきたのはいうまでもなく誇りだ。さもなくば反発であったのかもしれない。
 いつからヤムに見出され、召喚獣として名を連ねているのかは分からない。しかしはぐれ獅子であったのは間違いないだろう。それも群れに対して桁外れの反発を秘めた――はぐれ獅子。とりわけ異彩を放つ眼差しが、獅子の歩んできた凄惨な過去を炙り出す。
 それが今では、哀愁に満ちた瞳でヨシュアを凝視していた。お前のおかげで最高の死に場所を得た。と表情は、そんな満足感に溢れているような気がした。
 不思議な感覚だった。そのせいか獅子に対しても召喚したヤムに対しても、これっぽっちの恨みが湧いてこない。それよりもユダへの友情と、ラザロとマルタ、二人の献身に対する感謝の気持ちに満ちていた。慕情さえ感じられた。
 父アッバスの愛情も甦る。天上にない究極の至福、ヨシュアに関わった誰もが情に厚く、何より深かった。
 情け?
 ああ、我が神は、このために人間を敬えと言ったのか。ひたすら相手を思いやる、天使にない人間の資質。肉になってこそ分かる人間の素晴らしさ。ヨシュアは死にたくないと、初めて願った。
 神よ、私は神の子としてでなく、一人の人間として生を全うしたかった。愛を見つけ、愛のために生きたかった。
 心の奥から叫んだ。同時に死を悟り、静かに身体を横たえた。そしてミカと、秘かに想いを寄せる女性の名を呼んだ。
 が、どうしたわけか離魂しない。逆に引き戻される。なぜなら懸命にヨシュアの身体を揺すり、三人の無垢な魂が涙ながらに押しとどめていたからだ。
 絶対に死なせてなるものか! ユダ、ラザロ、マルタの思いがひしひしと伝わってくる。
 そこへいつの間にか、ミカとサラ、レビとシモンが駆け寄ってきた。さらに階下から、見知らぬ十二才前後の少年少女もやってきた。一人集まり、二人集まり、真剣にヨシュアの名を叫び、死ぬなとを惜しむ。
 一人の少年はヨシュアの背後で咽び、一人の少女も衣を掴んで泣き伏し、また別の少年は床に突っ伏していた。広い館内は、少年少女らの嗚咽で嵐のようにうねり返っている。皆それぞれに「死んではなりませぬ!」と号泣していた。
 なぜ階下に、これほどの少年少女がいたのか理由が分からなかった。けれどヨシュアに情けをかけ、この身を惜しんでくれる彼らに、尽くし難い感謝を知覚した。
 ……すまない。
 絞りきった言葉を洩らすと、ユダ、ラザロ、マルタらが、堰を切ったように泣いた。燭台に灯る蝋燭が切なそうに揺れる。
「ふ、手間をかけたが、どうやらそれも終わりのようだ――」
 ヤムの、吐きすてる言葉が聞こえた。
 それが我慢の限界だったのか、とうとうユダが叫んだ。
「神々と、ルシフェルに告ぐ。なぜあなたらは、そのようにしか感じないのか。確かに人間の生なんか取るに足らないものかもしれない。けど、この少年少女らを見てみろ。想定外だが、まさしく崇高な霊性が死の間際に顕した事象。この感情のうねりこそが、人間たる所以なのだ。上から目線で人間を見下すな。はっきり言ってやる、あなたたちの言葉、行動には血が通っていない。おそらく心を切り刻んでも、血も涙も出やしない。なら金輪際、情けも知らずに愛を唱えるな! 今宵限りで我イスカリオテのユダは、愚劣な神々と薄情なルシフェルと決別する!」
 聞き終えると、ヨシュアの意識は消えた。
 
 
 
           了

敗北の向こう側に

執筆の狙い

作者 俊郎
153.170.144.37

去年書きあぐねていたので、今年は公募に挑戦しようと手始めにここへ投稿させていただきました。
中途半端で読みづらいとは思いますが、物語の芯を感じとれるか教えて頂けると嬉しいです。
また、それ以外の問題点も指摘してもらえると助かります。
宜しくお願いします。

コメント

一陽来復
219.100.84.36

『魔界王子』的な、近代が舞台で、神々と悪魔とのバトルが展開されているものなのか、
2000年前のシナイ半島でリアタイで繰り広げられているハナシなのかが、
まず分からない書きよう。。


画面傍観した感じだと、「説明に次ぐ説明」で、詰め込みすぎてて、ほぼ説明。
まとめの台詞なんか、「モロ説明台詞」であるし。。


『魔界王子』(ソロモンの生まれ変わりが主人公)や『ノリ・メ・タンゲレ』(イスカリオテのユダがいい役もらってる、シナイ半島舞台SF)を漫画で読んでる層だと、理解はおっつけそうだけど、
そうした読者層が求めているのは、「説明に次ぐ説明ではない」ので。。

説明を減らして、「描写」と「エピ」をだいぶ増量して、
キャラ立てをしっかりして、キャラを生き生き動かしてくれないと、ついてゆくのは至難・・かなー。
(興味が持続しない…)

俊郎
153.170.144.37

一陽来復さん、感想ありがとうございます。

休日には必ずこのサイトを覗いていたので一陽さんの名前は知っていました。
下読みさんみたい、と最初に興味を持ったのは夏前だったと思います。たぶんですが、一度に3桁の応募作品を読まなくてはいけない下読みさんは、冒頭の数枚を読んでその作品の質と作者の力量を見極めてしまうんでしょうね。ですので、もしこれが公募作品であれば一次落選確定です。
 
>興味が持続しない。
・とても参考になりました。なぜ持続しないのか、きちんと理由も書いてあるのでそれを頭に叩き込んで今後の創作に励もうと思います。
そして一陽さんに最後まで読んでもらえそうな作品、そんな原稿が仕上がったら応募してみます。
ありがとうございました。

弥々丸朗
106.161.226.90

その昔、ここには鈴村なんとかっていう宗教と芸術とクラシックばっか似非にのたまう監禁王子みたいなド変態がいたんですけど、それとよく似てるなあ、っていうか多分そうでしょくらいのことしか思ってないんですけどまあそんなことはどうでもいいです。
興味とニーズが乖離してる悲劇っていうのはこういうことなんだなっていうか、執念っていう時代錯誤っていうか、単に運ないだけってことでもいいんですけど、要するに電柱にぶつぶつ言ってる系だなと。
これを今どきに小説と呼びたがるなら、作中作ってことであきらめとけ、ってことに感想もへったくれもないと思うんだし、そんな客観のニブさっていう自惚れ程度はブログで自慰完了しとけってことだと思うんですよ個人的には。
別段読みにくい文章でもないんだし書くことには馴れてるんでしょうけど、その用い方こそに自覚的になれないなら才能ないのと何にも変わらないんじゃないですか? って思うんですよね個人的には。
何だかすごく馬鹿っぽいです。
存在としてシンプルにヘタクソだなあと。

ひけらかすことが小説のつもりなら、そんなもんこっちから願い下げなんですよ。
誰がこれにお金払いたがるんですか?
とりあえずクソダサいです。

俊郎
153.170.144.37

弥々丸朗さん、感想ありがとうございます。
 
下手くそを自覚していただけにずしりときました。重たい言葉です。
職場に上手な人がいるんですけど、比べるとつくづく才能ないなと痛感しています。
でも小説を書こうと決めた以上、いくらヘタクソ、ダサイ、と言われても書き続けようと思っています。やめるのは簡単ですから。
 
>興味とニブサが乖離している。
>電柱にぶつぶつ言ってる系。
・おそらくここでしょうね、私の欠点は。
そうだとして思いついたのは、興味ない人をいかに興味持たせるか。そこです。
だってテーマは不変だと思うから。暮らしはよくなっても人間の本質は何も変わっていないんです。
 
弥々丸朗さんに頂いた言葉を叱咤にして、より創作に励みます。たぶん上手くならないと思いますけど、それでもいいかなと感じつつ。
ありがとうございました。

瀬尾りん
58.3.187.34

こんばんわ!全部読もうとしたんですが、途中で断念してしまいました…
物語の芯として、全部読めてないので間違ってる可能性大アリですが人間と神の戦いなんですかね?始終神様と人間が言い合いしてるもんですから、無心スクロールになってしまう浅学ですいません。
これ、宗教に詳しい人が見たらなんの戦いなのかわかるのかなぁ。私にはわからんかったんですよね。
文章とても上手で重厚さとかもあると思うんです。でも肝心のこれは一体なんの物語なのか、何を作者が伝えたいのかがわかりにくかったです。
特に神の名前をほぼソシャゲで覚えたような人間(私です)には特に笑
私がこういう宗教色が強い作品で面白かったなーって思ったのはバチカン奇跡調査団くらいなので、参考にはならないと思いますが。
書き続けるのは大事ですよね!お互い頑張りましょう〜!

俊郎
153.170.144.37

瀬尾りんさん、感想ありがとうございます。
やはり最後まで読める作品ではなかったようですね。これは先様から頂いた感想で半ば納得していたことでした。
 
>これ、宗教に詳しい人が見たらなんの戦いなのかわかるのかなぁ。
・マグダラのマリアに取り憑いた七つの悪霊と、オリジナルの主人公ヨシュアの戦いです。その戦いを通して古代の神に足りないもの、人間であるからこそ尊いものを物語の中に組み入れました。
でも実際は長編の中の一部を抜粋して、説明しながら創作したものです。だから背景を探るのが難しい中途半端な作品になってしまいました。
 
>書き続けるのは大事ですよね!お互い頑張りましょう〜!
・投稿して少しモチベーションが下がってしまったのですが、書き続けますよ。
私生活では地味で控えめ、それこそ平凡の王道を歩く私が、まったく違う非凡な人間の生き様を書けるのって、やはり小説ならではの醍醐味だと思うから。
 
瀬尾さんの作品を見つけました。さらっと読んでみました。とても爽やかで読後感のよい物語でしたね。
でも気になった所がありましたので、辛口でもよかったら寄らせてもらおうと思っています。辛口がお嫌でしたら遠慮します。
 
励みになる感想をありがとうございました。
心から感謝しています。

瀬尾りん
58.3.187.34

なるほど、人間は弱くて醜いし間違うけどそれこそ、人間らしいみたいな感じですかね……どうにも、場面が一つに固定されてる感があって途中で息切れする要因になってる気がする!
私も辛口!申し訳ない!!
もともとごはんはそういう、罵倒とは違う忌憚ない意見もらえる場所だと思ってるので辛口でも歓迎です!!というより作家って生粋のドMだろ……とすら思っている人間なので笑
モチベなんて、いつも上がってたらそれこそ変態ですよ。下がってなんぼ、また上げたらいいだけです!

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