作家でごはん!鍛練場
十三

言葉を得た猫

『獣神様、獣神様。どうか私の願いを叶えて下さい』
草木も眠るような静かな夜。月の光も届かない深い森の中で闇に溶け込む黒猫が一匹、にゃーにゃーと鳴いていた。
黒猫は小さな祠に恐らく自分で採ってきたであろう果実などを備え、その前に礼儀正しく座って一生懸命に鳴き続ける。その声は夜の闇、そして周囲の木々に木霊して静かな森に響き渡った。
『我、獣神也、貴様は我に何を求める』
その響きに応えるかのように低く、ずっしりと重い声が小さな祭壇の奥の方から黒猫を襲う。
『?!……獣神様、どうか私に人の言葉をお与え下さい』
黒猫はその声にやや気圧されながらも深く頭を下げ、自身の願いを伝えた。黒猫の口から零れ落ちるにゃー、という言葉は切実で、必死さを帯びている。
しかし、彼にはなぜ人の言葉を得たいのか自分でもよく分かってはいななかった。町中で話しながら楽しげに歩いてる人間達を見てふと、「人間と話せるようになりたい」という衝動に駆られ、「話せるようにならねば」という使命感を得てしまったのだ。
『いいだろう。但し多少の犠牲が伴うぞ』
『構いません』
獣神の警告に即答した黒猫は闇を映す金の瞳を閉じ、獣神の次の言葉を聞くことなく疲労感と共に眠りに落ちた。
清々しい春の風が朝露とともに新緑の葉を揺らす。弥生の一大行事である桃の節句も終わりあと少しで夏だという時期なのだが、まだ肌寒く森の奥深くまで出歩く者はたった一人を除き誰も居なかった。
「うーん...なかなか居ないなぁ。」
白く滑らかな肌に鳥肌をたたせ、小さな体を震わせながら森の小道を何かを探しながらとぼとぼと歩く少女。その少女こそが先程言った例外であった。
その少女の名は雪。齢17程、長くのびた艶やかな黒い髪は昨日の夜の闇のようで、サラサラとそよ風にのって靡いていた。幾つもの花が描かれた薄紅色の着物からすらりと伸びた手は、靡く自身の黒髪を一房指に引っ掛け、困った顔で耳にかけている。その姿は美しく、また、儚くて一枚の絵の様だった。
「ねえアンタ。何探してるの?」
「実は……」
不意に雪の背後から自身に問いかける声が聞こえ、雪はその質問に答えながら振り向いて驚愕した。そこに居たのは一匹の黒い猫。
「えっ……猫が、喋ってる!?」
「え、ほんとに!僕の話した言葉がわかるの!?」
夢じゃなかったんだ。黒猫はそう呟くと、人の言葉を喋ってる、自分の声が伝わっているという事に感動を覚え目を輝かせた。
「猫ちゃんは最初から喋れたわけではないの?」
怪奇現象と言うに相応しい状況に思わず雪が問い返す。
「うん!昨日獣神様にお願いしたんだ。人の言葉を話せるようになりたいって」
「そしたら今日話せるようになっていたって事?」
「うん!」
猫は自分の言葉が通じる人間に、雪は目の前で喋る珍妙な黒猫に、しばらくの間キラキラとした目で見つめあっていた。
「そういえば君はなんて名前なの?」
しばらく無言で見つめ合う時間が続き、耐えられなくなった黒猫が話題を変えるように雪に訊く。
「名前?あ、自己紹介がまだだったね。私は井上 雪。猫ちゃんは?」
花が咲いたような笑顔で問い返す雪に黒猫もつられて笑う。
「雪か……いい名前だね!僕の名は……あ、そっか。僕は言葉が話せるようになっただけで名前は無いんだ」
黒猫の周りの温度が急激に下がる。春とは思えないほど周囲の空気は冷たかった。そして黒猫は悲しそうに目を伏せる。
「...じゃあ言葉を話すから〈言ノ葉〉は?
言ノ葉ってかいて〈ことのは〉って読むの!ぴったりでしょ」
見かねた雪が明るい声で提案する。
「言ノ葉...僕なんかが貰っていいの?」
「当たり前だよ!私、丁度一緒に暮らしてくれる猫を探していたの。だから私達はもう家族だよ。言ノ葉!」
あ、そっちさえ良ければだけど……とか細い声で付け足すが黒猫は喜びを噛み締めるように目を細める。
「言ノ葉、井上 言ノ葉...うん!僕達はもう家族だね!よろしく。」そして、雪は言ノ葉を抱え、深い森の中から雪の住む活気がある訳では無い、賑わう町から少し離れた小さな村へと帰っていった。
手入れの行き届いていない小さな雪の家に着いた言ノ葉はある違和感に気づいた。
「あれ、雪の家族は?」
脇に揃えられた下駄は埃がかかっており、何人かの人間が生活していた痕跡はあれど、人の気配はひとつも無かったのだ。
「少し前にね、亡くなってしまったの。流行り病でね……」
言ノ葉の何気無い疑問に雪の空気が沈む。
「ごめん、そうとは知らず。大丈夫だよ、これからは僕がいるから!」
慌てて言葉を紡ぎ雪の気を浮上させようとする言ノ葉に雪は笑顔でありがとうと言った。しかしその笑顔は無理やり作った為歪んでおり、言ノ葉は耐えきれず俯いてしまった。
「私貧乏だから言ノ葉に贅沢なんてさせてあげれないの。なのに連れてきてしまってごめんね。」
雪は言ノ葉に聞こえるか聞こえないかくらいの小さな声で呟いく。その言葉には「無責任に貴方の命を預かってごめんなさい」という雪の心情が隠れていた。
(大丈夫だよ。僕の方こそありがとうなんだから)
言ノ葉はその真意を知ってか知らずかはわからないが、何も言わずに頭を雪の足に擦り付け、本来の猫のようにゴロゴロと喉を鳴らした。雪もさっきまでの歪な笑顔ではなく、本心から嬉しそうに笑う。
こうして、会話ができる一人と一匹の奇妙な生活が始まったのだ。
雪がご飯を用意してくれている間に言ノ葉は家を探検していた。何もかもが真新しく、野良猫として森で生活しては知る事が出来なかった世界が広がっていた。
「ん?何これ?」
その中でも言ノ葉は机の上に置いてある物に興味を持った。それが何かわからないが、何故か物凄く惹かれるのだ。初めて人間達が話しているのを見た時のように。
「ご飯できたよ」
しかし、手を伸ばした丁度その時、雪の声が聞こえ疑問を一度胸にしまい走っていった。
自分の好奇心よりも食欲の方が勝ってしまった。そこはやはり獣としての本能が働いたのであろう。
「ごちそうさまでした、そういえばあっちの机に乗っていたのってなに?」
ご飯を食べ終わり、言ノ葉は一旦しまった疑問を今度は雪に問うた。一度気になったものは何がなんでも知りたくなる性分なのかもしれない。言ノ葉の中には再びあの時の好奇心が湧き上がっていた。
「ああ、あそこに乗ってるの?あれは小説だよ」
「小説?」
聞いたことの無い単語に言ノ葉は首を傾げる。そんな言葉は盗み聞きしてた人間達の会話に1度もでたことが無かった為、どんなものか想像すらつかない。
「そう、東海道中膝栗毛っていって十返舎一九って人が書いた物語なの。昔、父が一冊だけ買ってきてくれてんだ。読んでみる?」
「うん!」
言ノ葉は勢いよくそう答え、雪は表紙をめくった。
「なんて書いてあるの?」
これが一枚目を見た言ノ葉の感想だ。そこには様々な文字が文となり物語を綴っている。しかし、言ノ葉の目にはよく分からない記号がたくさん映っているだけに見えたのだ。
「言ノ葉は言葉が使えても文字は読めないんだね。意味は分かってるのに……
そうだ!私が文字を教えてあげる!これでも少しの間だけ寺子屋に通っていた事があったんだ」
文字が読めない。その事に逸早く気づいた雪はそんな提案をする。この本は雪のお気に入りだった為、どうしても言ノ葉にも読んで欲しい、知って欲しいと思ったのだ。
「ほんとに?」
「ほんとほんと」
「やった!じゃあこれはなんて読むの?」
こうして、雪による言ノ葉の文字教育が始まった。
それから言ノ葉は3日ほどで平仮名を読めるようになった。漢字は流石に全てとは言わないが、小説に出てくるものだけは読むことが出来た。どれもこれも雪が熱心に教え、言ノ葉も必死に理解しようとした結果である。
「ゴホッゴホッ」
「最近咳多いよね。大丈夫?」
しかし、雪が体調を崩してしまったのだ。ただでさえ雪のように白かった肌はさらに青白くなり、言ノ葉を見つめる目も以前のような輝きは無かった。
「風邪ひいちゃって」
「熱もあるし、風邪も拗らすと大変なんだから今日は寝てて」
そんな雪を心配して言ノ葉は雪を寝かせようとする。
「でもご飯……」
「僕が作るから」
「猫じゃ無理でしょ。それに煮干無くなっちゃったから手に入れに行かなきゃ」
しかし、雪はなかなか横になろうとはしなかった。それどころか外に出掛ける用意まで始める始末。
「うっ……じゃあ今日は雪自分の分だけ作って食べて!僕は自分で捕りに行くから」
「でも……」
「大丈夫!雪に会う前は他の猫と協力して自足自給してたんだから。雪は自分の心配して!」
「……分かった」
どちらも納得した、という表情では無かったが、妥協案という事で言ノ葉は雪を家に残し、三日前まで過ごしていた森へと向かった。
「誰か居ない?」
久しぶりと言っても3日ぶりなのだが、懐かしい森にやって来た言ノ葉は早速現在の森の状況を把握するべく仲間の猫を探していた。狩りをするにおいて、状況把握は欠かせないし、手柄を分かち合わなければならなくなるが、頭数が揃っていた方が効率もいいのだ。
「あ!あそこにいるのって」
何かを見つけたらしい言ノ葉はそちらに向かって走っていった。そこには言ノ葉と同じ位の体格の猫が二匹並んでいた。
「久しぶりだね!祠の南西の方を住処にしてる白い猫に茶と白の猫!」
『何?この黒い猫』
言ノ葉の姿をみた白い猫がにゃぁと茶と白の猫の方を見て言った。
『見てくれは三日位前に消えた、祠を住処にしてた黒い猫と一緒なんだけどな』
茶と白の猫もにゃーにゃーと答える。
「どうしたの?ちょっと前まで一緒に狩りしてたじゃないか」
『何言ってるのか分かる?』
『わかんない。同じ猫なのに言葉が通じないとか初めて。気味悪い』
「えっ」
白猫と茶白猫の会話を聴いていた言ノ葉の頭には、どうして?ちょっと前まで一緒に喋っていたのに、気味悪いなんて、と色々な想いが駆け巡る。しかし、どれも言葉になることは無かった。動揺し、その場に立ち竦む事しか出来なかったのだ。まあ、例え口に出したとしても彼らに伝わる事は無かっただろうが。
『気持ち悪い。行きましょ』
去っていく2匹の猫の背を言ノ葉は呆然と見つめていた。彼らの姿が見えなくなる、その瞬間まで 結局独りで狩りを終えた言ノ葉。他の猫にも何度か遭遇したが言葉が通じることがなく、一狩り終えた満足感も、食事のあとの満腹感も溢れ出る虚無感に飲み込まれて感じること事ができなかった。
「ただいま」
「ゴホッ、お帰り」
気をおとして帰ってきた言ノ葉を雪は満面の笑みで出迎えた。
「言ノ葉、ご飯食べれた?」
「……うん、雪は?」
言ノ葉は雪に心配をかけまいと出来るだけ元気を装って問い返した。安静にしてなきゃいけない雪に無駄な心労をかけさせたくない。ただその一心で。
「食べたよ」
「じゃあ寝てなきゃ!」
「あ、ごめん。……言ノ葉、何かあった?」
しかし、雪も言ノ葉の異変に気がついていた。雪の言葉に言ノ葉は時が止まった様な気がした。静寂が、雪の目が、言ノ葉に襲いかかる。何も無かった、なんて言えない雰囲気。ましてや雪の純粋な目に嘘をつくことは憚られた。誤魔化す事の罪悪感に耐えきれず、言ノ葉は諦めて口を開いた。
「……みんな言葉が通じなかった。僕には皆がなんて言ったか分かったのに向こうには伝わらなかった。気味悪いって...気持ち悪いって」
「雪は分かるよね?僕の言葉」
今にも泣きそうな目で雪を見つめる。猫は感情で涙を流すことは無いが、その目には確かに寂しさ、孤独感、懇願など様々な想いが渦巻いていた。
「当たり前だよ。気を落とさないで、ゴホッ」
雪は言ノ葉のそんな感情を知ってか知らずか、そう答え言ノ葉を抱き抱える。慈しむように、不安を忘れられるように、優しく、でもしっかりと抱きしめた。
「ありがとう...ごめんね風邪辛いのに。寝ていいよ」
「そうだね、寝てよっかな。風邪うつっちゃうかもだけど言ノ葉さえよければ、一緒に寝よ」
「うん!」
言ノ葉は先刻あった事など忘れ、その日一番の笑顔で雪に抱えられたまま一緒に眠った。
言ノ葉が猫と話せないと知ってから5日。雪の容態は悪くなる一方だった。
「ゴホッゴホッ」
「雪、やっぱり僕お医者様を連れてくるよ」
「ゴホッ、ごめんね、大丈夫だから、ゴホッ」
咳の回数は増え、熱も下がらず、少し動いただけで息切れをしてしまう。また、雪は隠しているがよく喀血しているのも知っていた。ただの風邪にしては症状が重すぎる。やはり医者に見てもらうべきだと判断した言ノ葉はそっと家を抜け出し、町へと走った。皮肉にも、太陽は明るく元気に輝いていた。
言ノ葉が町中の小さな診療所につくと運良く患者がいなかったようで、医者はお茶を飲んで休憩していた。
「お願いします!雪が、家族が病気なんです!見てあげてください!」
言ノ葉は精一杯の声で医者に向かい叫んだ。それはもう、空に照り輝く元気な太陽にも届くほど大きな声で。
「黒い猫?こりゃあ縁起がいいな。もしくは俺が肺を患っているのか?」
しかし、医者にその声は届かなかった。医者の耳には言ノ葉の言葉が鳴き声にしか聞こえなかったのだ。
「は?何言ってるの?そんな事より雪を治してよ」
「にしてもよく鳴く猫だな。黒猫は労咳を治すとはいうが生憎俺に労咳の症状は出てないんだよな。そういえば1週間ほど前に労咳で両親を亡くした娘が居たっけな。確かその娘も労咳を患っていたな……」
医者は独り言を言いながら思案し、「お前の主人になってくれるかもしれない人の所に行くぞ」と、言ノ葉の頭を撫でる。しかし、言ノ葉の頭の中には混乱の言葉しか出てきてはいなかった。労咳の症状は何時ぞやの旅人達が話していたのを聞いていたから覚えている。最初は風邪に似ているがいつまでたっても良くならずに命を落とす。治療法もない最悪の流行り病だ。医者に抱えられたまま進んでいくと辿り着いたのは案の定雪の家だった。
(どうして、雪は労咳?黒猫が労咳を治すってどういうこと?)
様々な疑問が人間よりもだいぶ小さい言ノ葉の脳内に過ぎる。信じ難い、が、しかし医者の言葉と着いた先から導かれる事実は一つ。言ノ葉の脳味噌がたとえ米粒位しか無かったとしても分かってしまっただろう。よくよく思い出せば出会いの日、雪は何かを探していた。一緒に暮してくれる動物……出来れば労咳を治すと言われている黒猫……
(雪は労咳を治したくて僕を飼ってたんだ)
言ノ葉がそう思った時、来客で目を覚ました雪がゆっくりと出てきた。
寝てなきゃダメだよ!
少し前なら言ってただろう事をも言わずに言ノ葉は町医者の腕から抜け降りて駆けて行った。どこに向かうわけでもなく、ただひたすらに走る。利用されただけだった?騙されてた?「家族」だって言ってくれたのは嘘だった?
考えれば考えるほど思考は悪化していく。それでも考えずにはいられなかった。記憶の中で微笑む雪が、1週間程しかない思い出が全て偽りだったかのように感じた。
雪も医者も追いかけてこれないくらいどこか遠くに。いや、そもそも追いかけてくることさえしないかもしれない。気がつけば森の奥深く、獣神様の声を聴いた祠にやって来ていた。
言ノ葉は獣神様なら何か知っているのではないか。そんな淡い期待を抱いて再び獣神様に呼びかけた。
(雪は黒猫を探していたの?)
(別に僕じゃ無くても良かったの?)
(言葉を喋る僕じゃ無くても、黒い猫なら誰でも良かったの?)
聴きたいことは山ほどあった。でも、今言ノ葉が一番知りたいと思ったのは、(なんで他の猫や雪以外の人間に僕の声が届かないの?)という疑問だった。
気を失ってあまりよく聞いてなかったけどこれが獣神様の言っていた『犠牲』なのか。その事についてだけはどうしても知りたかったのだ 。それ以外の疑問は、雪本人に聞けば分かることなのだから。
「獣神様、獣神様。どうか我に再び御声をお聞かせください」
どれだけ祈っても、願っても獣神の声は聞こえてこなかった。やはり儀式には供物が必要なのだろうか。しかし今は供物を探す時間が惜しいし、狩りをする元気すらも無かった。言ノ葉の声は碧く茂った深い森の中に吸い込まれていく。力尽きた言ノ葉はその場で倒れこみ、気がつけば夜が更けていた。
暗い暗い森の中、ふと、獣神様の声が聞こえた気がした。眠っていたはずの言ノ葉は飛び起きた。
『我、獣神也。我を呼んだのは貴様か。昼寝を邪魔しおって』
低く、重くのしかかる獣神様の声は、その雰囲気にそぐわないその言葉で相殺された。それにしても、言ノ葉が気を失ってからどれだけ時間が経ったか正確にはわからないが、日が沈んでいる為最低でも6時間は過ぎている。邪魔どころかばっちり昼寝できただろうというツッコミが言ノ葉の頭の中を過ったが、いちいち構っていられるか!と、なんの前触れも無く本題に入った。
「獣神様。どうして僕の声は他のみんなに届かないのですか?雪には伝わったのに!」
言ノ葉が必死の形相で獣神様に問う。また再び獣神様が消えてしまう前に、自分が力尽きる前に言ノ葉は精一杯の声を張り上げた。
静寂が場を支配した。他の猫達と同じ様に言葉が伝わらないのではと、言ノ葉は一瞬戸惑ったが長い間を開けて漸く獣神様が言葉を発した。
『最初に説明しただろう。』
「へ?」
言ノ葉の腑抜けた声が落ちる。獣神様は聴いていなかったのか?と呆れ声であの夜の契約を語り出した。
──あの夜、たしかに言ノ葉と獣神様はある契約を交わした。
『獣神様、獣神様。どうか私の願いを叶えて下さい。』
『我、獣神也、貴様は我に何を求める。』
『?!...獣神様、どうか私に人の言葉をお与え下さい。』
『いいだろう。但し犠牲が伴うぞ。』
『構いません。』
言ノ葉の意識はここで途絶えてしまっていたが、この契約には続きがあったのだ。
『ならば貴様に言葉を与えよう。ただ、人の言葉は特殊で我々猫の声帯では言葉にするのは難しい。我の加護では初めにあった人間1人と意思疎通させるのが精一杯だ。しかも、貴様の全てを代償にしても、だ。つまり、貴様が最初に出会った人間にしか言葉が伝えられなくなる。当然、今の仲間と話せなくなるぞ。良いんだな』
獣神様の何度目かの念押しも気を失っている言ノ葉には届かない。
『……無言は肯定と受け取るぞ。後悔しないことを願っておる。』
しかし、獣神様はお構い無しに無言を肯定と捉え契約は成立した──
これがあの夜の出来事だと聞かされ、言ノ葉は激怒した。そりゃあそうだろう。そんな大事な所を勝手に決められたのだから。確かに疲れて眠ってしまった言ノ葉にも非はあるだろう。然し、一生を左右するような契約なのに軽い。軽すぎる。しかも当の本人返事してないのに勝手に肯定と捉えられている。巫山戯るなよ……と言ノ葉が怒るのも仕方が無いだろう。
だが結んでしまったのも仕方が無い。もう死ぬまで外れることのない契約に気を落としつつも向き合うしかないと言ノ葉は悟ったような顔つきであっそうと呟き獣神様を放置して森を抜けた。言葉が伝わらない理由は知った。雪にのみ言葉が伝わる理由も知った。そして言ノ葉はある一つの結論を導き出した。
「帰ろう」
雪に連れられ、雪と過ごしたあの家へ。勢いのまま飛び出してきてしまったあの家へ。雪がどんな理由で言ノ葉を拾ったかなんてわからない。たしかにきっかけは町で聴いたあの噂からかもしれない。けど、一緒に過ごした時間は変わらない。ほんの少しの間だったが、確かに雪の隣は暖かかった。
それに言ノ葉はもう雪以外とは話せないのだ。つまり、頼れるのは、寂しさを感じさせないのは、帰る場所は雪しかいないのだ。帰って、飛び出て行ったこと謝って、仲直りして、又いつも通りに戻ろう。病気だとかそんな事関係ない、居たいから一緒にいるし、それで雪の病気を治せるかもしれないならそれでいいじゃないか。いや、寧ろそれが一番良いじゃないか。言ノ葉はそう思うと、自身の内に蔓延っていた黒いナニカがスーッと消えて楽になったような気がした。そして、それに比例する様に自身の脚も速くなっていくように感じた。
言ノ葉は全力疾走であの家に向かった。日が落ちかけてだんだんと暗くなってきた森の小道を風の様に駆け抜けた。誰よりも、何よりも疾く。言ノ葉が雪の家に着いた時にはもう日は落ちていて、雲一つない暗い闇の空には綺麗な星とお月様が輝いていていた。
「雪...勝手に飛び出てってごめん、ただいま」
そっと入口の扉を開けて1歩家に入ってから言ノ葉は俯いたままそう放った。灯が点っていない家の玄関で放たれたその言葉は、開いたままの扉から吹き込んだ冷たい風に攫われた。
「あれ?誰も居ないの?」
言ノ葉の問いかけに返答は無かった。あるのは未だ開け放たれた玄関からの風の音だけ。雪も、昼間いた医者もいなかった。ビュービューとなる風の音に、言ノ葉はどことなく嫌な予感がした。
「雪?……雪!」
言ノ葉は急いで雪の部屋に向かう。言ノ葉が家を飛び出すまで雪が寝ていた部屋だ。寝てるだけ。ただ寝てて返事が出来ないだけ。そう頭で思っていてもどうしても嫌な予感が拭えなかった。
そして、その嫌な予感は的中した。
雪の部屋には寝ているはずの雪はおらず、布団も綺麗に畳まれていた。そして枕もとには1枚の白い紙が落ちていた。紙には筆圧の薄い、黒くふわふわとした文字で文が綴られていた。
《言ノ葉へ
お手紙でごめんね
言ノ葉がかえってきたら読んでくれるとしんじて、せんせいにたのんでまくらにこの手紙をおいてもらったの。
私はたしかにあのひ、くろねこをさがしていたんだ父も母も「ろうがい」っていう病にかかってしんじゃってわたしも「ろうがい」にかかってるっていわれていて、ああ、わたししぬんだなーっておもってたの。まっきって言ってね、初めて喀血してからもう一年ぐらいたってるんだ。だから私は、もう長くないんだしあとはのんびり生きてたい。そうおもってたの。
そしたら、まちで黒猫がはいの病をなおすっていうめいしんをきいて、わらにもすがるおもいで黒猫をさがしにあの森までいった。
そこで言ノ葉にであったんだ
わたしはすごい運がいいやっておもって、しかもしゃべるねこなんてはじめてで、すごいびっくりしたけどどうじにすごくうれしかった。
だって、あのめいしんにもすがれて、いっしょに話もできて、ひとりじゃない、さみしくないっておもえたんだ。
だから「家族」っていったんだ。
たしかにさいしょは黒猫なら、さいあくねこならどんなこでもいいやっておもってた。
たぶん言ノ葉はそれがいやだったんだよね?でもね、言ノ葉にあったあの時から私は言ノ葉じゃなきゃだめだ!言ノ葉じゃなきゃいやだ!っておもったんだ。
黒猫だからじゃない、しゃべるからじゃない、言ノ葉だからわたしはかぞくになりたいっておもったんだ。
きっかけはどうであれ、このきもちにうそはないだからしんじてほしい。さいごになったけど、たぶんわたしはもうおむかえがきちゃうから……
だいすきだよ ありがとう》
言ノ葉がわかる文字だけで書かれた手紙はとても読みづらく、でも言ノ葉が雪と一緒に一生懸命勉強した記憶が思い起こされた。3日かけて覚えた「あ」から「ん」までの50音に簡単な漢字。それを組み合わせて意味のある文として紡がれたその手紙の意味を汲み取るのは容易であって、残酷だった。
猫は感情で涙を流す事が出来ない。それでも言ノ葉は泣いているようだった。嘘だと叫びたくても、声を押し殺し、心の底から後悔をし、自責の念に囚われながらも必死で現実を受け止める言ノ葉の姿はまさに、ヒトだった。
言ノ葉にも、思考や感情はあり、その全てが今の彼を責める。
(なぜ、どうして?)
(なんであの時逃げ出したんだ?)
(どうして雪の元に最後までいられなかった?)
(最後の会話ってなんだっけ?)
(最後に顔合わせたのはあの最悪な瞬間?)
(誰が悪いの?何が悪いの?)
労咳という病気?僕を連れてきた医者?猫が病を治すといった人?病気にかかった雪や雪の両親?なかなか出て来なかった獣神様?
……ちがう、ボクだ。怖くなって、勝手に家を飛び出して、森の奥まで逃げ込んだ僕だ。雪が病なのに無理をさせてしまった僕だ。雪の事を信じられなかった僕だ。雪の病を治すことが出来なかった僕だ。僕が悪いんだ。
言ノ葉は泣くことの出来ない自身の目を何度も擦り、ふらふらとした足取りで開けてあった扉から外へ出た。
まだ風はビュービューと吹いていて、闇色の空には苦しい位に綺麗な星がひとつ、優しげに言ノ葉の方を向いているだけだった。
誰とも会話が出来なくなった者の末路は残酷だ。人と話せないのはまだいい。寂しいが「以前」に戻っただけだから。しかし、同族と話せないことによって気味悪がられ、とうとう森の中にさへ居場所はなくなっていった。人の町だって「この黒猫は労咳の子の家に居たらしい。近づくと伝染っちまう」という噂が流れて追い出された。きっと、生きていくための食料ですら満足にとれず、日に日に憔悴していき、最後には誰にも看取られることなく一人で死んでゆくのだろう。猫は本来自分の死体を誰かに見せることはしない。弱っているところを狙われないよう誰にも気づかれない場所に身を隠すが、その間ご飯も食べれずそのまま憔悴しきって死んでしまうのだ。猫の死は本質的に孤独なのである。
「寂しいなぁ」
誰にも伝わる事の無い声が言ノ葉の口から漏れる。もう自分が猫の言葉を話しているのか人の言葉を話しているのかもわからない。でも、誰でもいいから自分の声が届く人がいないかと淡い希望を抱きながら静かに鳴いた。一度温もりを知ってしまったらもう孤独には耐えられないのだ。どうしても一緒に居てくれる誰かを求めてしまう。たとえそれが猫として異端と分かっていても。
雪の葬儀は知らぬ間に終わっていた。いや、もしかしたら行われてすらいないのかもしれない。しかし、町人達の話を盗み聞きなんとか雪が眠っている場所を割り出せた。近くの集合墓地に雪や雪の家族が眠っているらしい。痩せこけた体を引き摺りながら言ノ葉は井上家之墓と彫られた墓石の前に辿り着いた。
「雪、ありがとう。最後まで信じてあげられなくてごめん。きっかけはどんなでも今まで過ごした時間は変わらないっていう簡単なことに気づけなくてごめん。他の猫と話せないって知った時あんなに慰めてくれたのに、あんなに一生懸命文字をおしえてくれたのに、怖くなって逃げ出してごめん。
黒猫が労咳を治すって聞いて黒猫を探していたのに病気なおせなくてごめん。最後まで一緒にいてあげられなくてごめん。まだまだいっぱい謝りたいことはあるけど、続きは後でね。これだけ言わせて。
大好きだよ。ありがとう」
その言葉を紡ぐ声はか細く、小さい。それでも確かに伝わった。言ノ葉はなぜかそう思った。根拠も確信も無い。でもなぜか自信だけはあった。自分の言葉を拾えるのは雪ただ一人なのだから、伝わらないはずがない。そんな前向きな考えが言ノ葉の脳を過ったのだ。
井上家之墓の前には痩せ細った黒猫が一匹、寄り添うように倒れていた。

言葉を得た猫

執筆の狙い

作者 十三
106.72.50.0

偉人に頼らず幕末をテーマに書きたいと思って作ったものです
ファンタジー要素があります
およそ11000文字です
他サイトで投稿していたものですが、至らぬ点を指摘してもらい、改善したいたいと思いこちらにも投稿しました
あと、なぜか1マス空けてても投稿確認ページで段落下げ出来てないんですけど……

(他サイトのものを加筆修正しております)

コメント

匿名
126.209.38.128

再掲?
再掲
y?
再掲

阿南沙希
126.209.37.219

読ませていただきました。一生懸命お書きになってることは概ね理解できましたが、某ネロとパトラッシュが脳裏に浮かんでしまい、二番煎じ感がすごくあります…こういう不治の病で死にネタは一時流行ったので1億煎じくらいかもしれません。

原因としては、総じて考察が浅いと思います。
気になったことを書きますね。

1:幕末らしくない
作者さんに限った話ではないですが、当時のことを調べて書いてますか? 読む限り、口語が多くて近現代に見えます。幕末がいいなら、描写に幕末らしさを描くべき。
ごはんを作るのでも、かまどに火を起こすとこから始めますし、幕末は政情不安なので噂話を耳に挟むシーンがあってもいい。また、この時代には武家、名字帯刀を許された大商人など一部を除いて、庶民には基本的に名字は無いことになっていました。名字を名乗れるようになったのは明治以降です。その時代らしさが無いので、かなり気になりました。

幕末にする醍醐味として猫が坂本龍馬なり沖田総司なりとすれ違い、歴史の一端を垣間見たり、じつはイベントに絡んでたり…といった展開があると、この時代にする必然性がありながら、描いてて面白いものになるのでは。


2:後半が作者都合
獣の神さまの論理が無茶振りで、神らしいというより設定の雑さを押し通しています。神様にツッコミ入れるのはラノベでよくありますが、設定を練り直したほうが良いのでは。
不治の病で死、にもっていこうとして強引にお話を引っ張っている気がします。

3:簡単に死んでる
結核の調べも甘いです。両親が亡くなってすぐ死んだなら、もう普段から生活に支障が出ているのでは。抗生剤がない当時なので死の病には違いないですが、土方歳三みたく生還した人もいますし、もうちょっと色々なパターンを知ったほうがいいと思います。ラストありきかもですが、すでにこういった展開は手垢がつきまくってますし、それらの99パーセントが病気やその治療や患者&家族の思いに無頓着です。生きるにしろ死ぬにしろ、しっかり描いた作品を読んでみたいです。

雪の死にたくない理由もあいまいでした。親もなくして自分も罹患して、先の見通しも暗い。つまり絶望感いっぱいなので大抵の人は死にたいのでは?
雪が死にたくなくて黒猫を探した、とありますが、ぎゃくに、死にたくて森に入ったら黒猫が出てきて生きろと言われている気がした、だから連れて帰った…だと自然にもっていけるかと。


とりあえずこのくらいです。
ストーリー、時代背景は要組み直しかと。
個人的には、最初は猫ではなく黒着物の孤児の男の子にして、雪と仲良くなったけど結核を発症した彼女を助けたくて、人間の人生と引き換えに雪の命を救い、快癒した彼女を猫になった男の子が見守る…みたいな展開でもいいのかな? と思いました。獣の神さまに訴えるシーンとか、見どころにできそうですし。

でも、やってみるのが一番学びになるので、このお話でパトラッシュ系のパターンはこんな感じだとつかめたかもしれませんし、それはそれで収穫だと思います。
これからも頑張ってくださいね。

上松 煌
153.203.103.215

十三さま、こんばんは

 拝見しました。
あなたは以前、この作品をこのごはんに載せましたよね。
そのとき、あなたのファンになった上松煌です。

 その折、いろんなかたからの感想や注意・改善点(漢字が多すぎ)などの指摘があったと思いますが、同じものをまた、掲載しちゃったんですね。
何かの間違いででしょうか?

 ごはんのみんなはとまどっているようですよ。

 おれはあなたの作品をまた目にできてうれしかったです。
が、やはり、余りに健気な猫ちゃんの言ノ葉に最初から涙なみだでした。
現実の猫ちゃんもこの物語のように、心から人間を愛し、時としては身代わりになってくれます。
このことは多くの猫好きさんたちが体験していますが、おれ自身も実体験があります。
おれは泣きすぎて、今、頭が痛いですww 
あなたは何と美しい物語を描く人なのでしょう。

 あなたが高らかに詠い上げる暖かな情愛、犠牲的精神こそ、今の自分さえよければの世の中に厳しき警鐘を鳴らし、浄化し、是正すべき人間性の回復の物語です。
あなたは素晴らしい。
 
 この作品はどこかの公募に出していますか?
「内田百閒文学賞」や「坊ちゃん文学賞」などの一般小説部門や、児童文学部門などにだしてみてはいかがでしょう?

 おれに力があれば世界中の言葉に翻訳し、地球上のすべての国々の教科書に載せて、人類の宝として人々に学ばせたいくらいです。

 あなたが江戸期の物語に設定したのは労咳が不治の病だったからなのですが、漢字が多かったり、江戸臭味が薄いのは、今回はあまり気になりませんでした。
それよりもこの作品に漂う善意の気品、思想と言葉の美しさ、情愛の気高さに酔いしれ、ひたすら泣きました。

 あなたを心から応援します!

月天心
219.100.84.36

この原稿は前に見てるし、
「巫山戯るな」とかゆー変換が内容に合ってないよ〜! なのが好かんです。
ラストお亡くなりオチも。。

そういうとこ、初出時からすでに指摘済み だったんで、今回は割愛。



>「内田百閒文学賞」や「坊ちゃん文学賞」などの一般小説部門や、児童文学部門

↑ 『内田百けん』って、「岡山在住の方」か「岡山が舞台限定」の公募じゃなかったでしたっけ??
ググってないけど、審査員:小川洋子先生とかじゃなかった??
この内容では無理です。(枚数も絶対的に足んないだろうし…)


『坊ちゃん』も然り。50枚だか60枚以上必要で、、、
「キラキラの青春もの」が歓迎されてる公募に、こんな陰々滅々の送っていい訳ないでしょう。。

児童文学公募も同。
安易なお亡くなりものと、結末が暗いのは、絶対に歓迎されない世界なの。
そんでもって、児童文学は「巫山戯るな」とかPC任せ変換で書いてちゃあダメダメなんで、、、


上松のレスは「あんまりいい加減なお追従で、あまりに考えなしで、配慮を欠いているなー・・」って。。


真面目に『内田百けん』『坊ちゃん』向けに書いて・応募してる層に、はなはだ失礼でしょう??

月天心
219.100.84.36

『坊ちゃん』、、、いい加減なこと書いてもてナンだから、ググったわ。。


・400字詰め原稿用紙80 - 100枚
・第15回からは、ショートショート部門が設けられ、400字詰め原稿用紙15枚以下の短編小説が対象となる。


↑ 「その15枚以下に出せばいいじゃん!」と上松は言うのかもしれない。

だが、現状でこの原稿は 【絶対ショートショートじゃない】から、、、

夜の雨
60.42.120.4

作者さんは、文章に読ます力があります。
これは物書きとしてかなりの武器になっていますね。
内容は、無理な設定になっていますが、御作の雰囲気を壊さないで「書き改めることが可能です」。


>執筆の狙い
●偉人に頼らず幕末をテーマに書きたいと思って作ったものです
●ファンタジー要素があります
―――――――――

●阿南沙希 さんが、書かれている問題点は、私も同じように思いますので、改善策(御作を元にした、改なるストーリー)を下記に書いておきました。

1:幕末らしくない

●これは背景が歴史的な事柄(ファンタジーが入るので幕末以前にした方がよいと思います)に絡んでいる設定にすればよい。
主人公たちの生活に歴史的事柄を絡める。
幕末だと、「病気」を具体的(現在ある病名)に書く必要が出てくるので、「奇病」という設定にできる時代にして「作者都合の描写で奇病を創る」。


2:後半が作者都合
>獣の神さまの論理が無茶振りで、神らしいというより設定の雑さを押し通しています。<

●ここは、私もその通りだと思いましたので、筋が通るように改善しました。


3:簡単に死んでる
>雪が死にたくなくて黒猫を探した、とありますが、ぎゃくに、死にたくて森に入ったら黒猫が出てきて生きろと言われている気がした、だから連れて帰った…だと自然にもっていけるかと。<

>ストーリー、時代背景は要組み直しかと。
個人的には、最初は猫ではなく黒着物の孤児の男の子にして、雪と仲良くなったけど結核を発症した彼女を助けたくて、人間の人生と引き換えに雪の命を救い、快癒した彼女を猫になった男の子が見守る…みたいな展開でもいいのかな? と思いました。獣の神さまに訴えるシーンとか、見どころにできそうですし。<

●この内容がよいので、これに肉付けをして、下記のストーリーを組み立てました。

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――


以下、御作をもとにして、阿南沙希さんが指摘した問題点から改善策のストーリーを考えました。

―――――――――――――
主人公は、歴史的合戦や天変地異、飢饉、事件等に巻き込まれて、両親が亡くなり姉と生き別れになっている孤児。

孤児(主人公の少年)が森の湖水でおぼれているところを死ぬために森に入ってきた雪に助けられる。(雪は両親が病気(奇病)で亡くなり、自分も同じ奇病を罹っていた)。
病気は「奇病」ということにして、作者都合の病(描写する)を作ればよい。現実にある病名にすると、調べる必要とかが出てくる。
ファンタジーなので、現実的な病名よりも「奇病」というような書き方の方が雰囲気に合うと思います。

孤児(主人公の少年)が湖水でおぼれていたのは理由(わけ)があった。

湖水の中に神社(社)が奉ってあり、そこに「祈りの水晶」があるのだった。
この水晶に祈ると龍神(魔人)が現れて、願い事を叶えてくれるという話を聴いていた。
それで水中に潜って神社の「祈りの水晶」を手に入れたのはよかったが、無理をして、おぼれてしまったのだった。
雪に助けられた孤児は「祈りの水晶」で両親を生き返らし、生き別れの姉を見つけようと思っていた。
夜も遅く、雪と孤児は森の中で夜を過ごすのだったが、孤児は湖水の龍神に願い事を叶えてもらうために湖水で祈る。
出てきた龍神は「両親を生き返らせろとか、姉と逢わせろとか、願い事が多すぎる。代償が必要で、誰かがその身代りになる必要がある」、という。
「あの娘はどうだ、おまえを助けた娘だ」と龍神がいう。
孤児は自分を助けてくれた雪を身代わりにできないという。
「じゃあ、あきらめるのだな」ということになる。

孤児は、その夜、雪と過ごし、「両親が死に、姉とは生き別れになった」と話す。雪も両親が奇病で亡くなり、生きる気力がなくなって、森に来たという。
同じような身の上なので、二人で生きようということになり、朝になり雪が住んでいる村に帰る。
ところが、雪は奇病を患っているので、一緒に過ごしていると、だんだんとひどくなってくる。
孤児は雪が姉のように思えてくるので、彼女を助けたいと思うようになる。
それで再び湖水に行き、龍神を呼び出して雪を助けたい(奇病を治して)と頼むと、「お前の命と引き換えだ」という。
孤児が「祈りの水晶」は、願い事が叶うのではないのか、「ぼくは、祈りの水晶を手に入れるために、おぼれて死にかけた。龍神のいうことだと、「祈りの水晶」などあってもなくても同じだというと、龍神も納得して、新たなる提案をしてきた。
「お前も、命が亡くなれば、彼女のこれからを見られないので、言葉が話せる猫として生かしてやろう」ということで、孤児は猫になり、雪の元に帰る。
こうして雪と猫は寄り添うように、一緒に生活をする。

そんなある日の事、武将と娘が来た。
娘が生き別れになった弟を探しに来た。
娘は山賊に誘拐(天変地異、その他でもよい。主人公の弟と生き別れになる理由)されたのだが、武将が助けてくれて、武将の養女になっていた。
夜も遅くなり、雪のところに一夜泊まることになる。
黒猫は娘が行方知らずの姉だったことに気が付いている。
美しい姉は武将の娘になっていた。または妻になっていた。
黒猫は「弟を探しに来た」という、姉に懐く。(アピールする)。
姉が気に入り、黒猫をもらいたいという。
雪が黒猫は家族同然なのでと断ると、あなたも一緒に来ないかと誘われる。
両親の墓参りなら、いつでも来られるということで、雪と黒猫は姉たちの屋敷に行くことになる。


了。


ハッピーエンドなら、上のようなラストにする。

アン・ハッピーなら、ラストは黒猫が雪に彼女は姉だと告げ、姉の膝でタイミングを見て、弟だと話をして、昔話に花が咲き、姉が驚き、悲喜こもごものところで、黒猫は雪や姉に看取られながら、寿命で亡くなる。(現代のように栄養が行き届かない時代の猫は寿命が短い)。

黒猫が人間の言葉を話せるのは、雪と姉だけ。

●上で孤児の「姉」が弟を探しに来て再会しますが、「姉」という設定を「兄」にしてもよいと思います。兄にした場合は、雪と兄が結婚して黒猫の弟も一緒に暮らすということになります。


以上です。

阿南沙希
126.209.50.175

横レスですみません、私の案を良いと思って膨らませて書いてくださったお気持ちはありがたいですが…

前に載せた作品かもしれませんが、作者さんは本文のお話を一生懸命書いたはずですし(でなければもっと荒唐無稽になるはず)、その筋は違うと感じたとしても、他人がちょっと書いた程度の案を膨らませてしまうのはあまり良くないと思います。

カツオの刺身には新鮮なワサビを使ったソースが良いと思っていてそれを開発している人に、カツオにはマヨネーズが一番だと言って、さらにマヨポン酢がいいだのオイスターマヨがコクがあるだの書いてしまったら、最初の話って何? になってしまうのでは。

賛同の意は一言程度にとどめていただけると、受け手にとってはより示唆的になります。
もし、想像が膨らむのであれば、夜の雨さんにひらめきを生む案だということなので、ご自身で書き起こしてみると新しい表現やキャラクターを見出せるのではないかと思います。コメント欄にちょっと書いた案を流用しても全く気にしませんので、お時間あれば是非トライしてみてください。

もちろん私も、個人的にはこんな話だったら…と書いた責任があります。
指摘するなら案は出さねばと書いた意味が強く、また、出した案も昔話にはよくあるパターンの1つにすぎませんが、死ぬ話より生きる話のほうが何倍も難しいし、書き甲斐があります。
生きる話を書いて挑戦し続けたい、できたら同じ作家の卵さんにもそうあって欲しい、という気持ちがあって案を出しました。
しかし、結果として作者の意思を全く無視していたので、礼を欠いていました。もっと作者の意を汲むべきだったと反省しています。死にネタでもしっかり組めば、またこれかの定型を越えられるかもしれませんしね。

勝手を申し上げてすみません。作品の感想外の事でやり取りはしていませんので(仕事や自分の作品執筆で時間がないです)、返信は必要ありません。心の中に留めていただけるとありがたいです。では。

ドリーマー
116.67.238.66

拝読しました。

前回の投稿作を、推敲し直して再投稿されたのですね。

前作は視点の乱れ(作者視点と猫視点が入り乱れている)が気になりましたが、今作ではかなり改善されていると思います。
ただ『然し』『巫山戯るな』『寧ろ』などの漢字は、やはり開いた方がいいと思いました。
御作の場合、ファンタジー要素がありますし、内容も十代向け(読者対象は小・中学生くらいでしょうか)ですから、なおさら普段使わないような漢字は避けた方が、作品の雰囲気に合うと思います。

ところで前回も書いたかもしれませんが、幕末が舞台とは思えない表記が多々ありました。阿南さんが指摘されている以外にも、例えば江戸時代は曜日の概念がないので「一週間」という概念もないとか(日本に曜日が導入されたのは明治時代になってからなので)、当時は髪を結っているので「長くのびた艶やかな黒い髪は昨日の夜の闇のようで、サラサラとそよ風にのって靡」くことはないとか、紙の本は高価なので雪の家に「東海道中膝栗毛」があるのは考えにくい(当時の庶民は貸本屋で借りて読むのが一般的でした)とか、まあ、他にもありますがこんな具合です。

偉人に頼らなくても時代小説は書けます。御作の場合なら、その時代の暮らしをきちんと調べて、登場人物にその時代の暮らしをさせればいいのです。御作には雪がどんな家に住んでいるのか、どうやって食事の支度をしているのか、そもそもどうやって収入を得ているのか、具体的なことが何も書かれていません。そこをきちんと書くことで、ちゃんと時代小説になります。幕末をテーマにするのなら、作中に幕末の世相を加えればいいのです。
ただ御作の設定だと、どうやって収入を得ているのかを具体的に書くと、お話自体が成り立たなくなります(両親が労咳だと知られると同時に、確実に働き口を失うので、その時点で暮らしていけなくなります)。
また飼い猫が飼い主を失えば食べ物に困るかもしれませんが、言の葉はもともと野良猫です。江戸時代の食糧事情と野良猫の食糧事情を考えると、言葉(猫語)を失ったために「生きていくための食料ですら満足にとれず、日に日に憔悴して」いくのはちょっと考えにくいです。

さらに改稿されるなら、一度に全部は改善できないので、次は時代考証、その次は時代設定に沿ったストーリーの手直しというふうに、一つ一つクリアしていけば、最終的に作者さんの納得のいく作品になると思います。

自分のことは棚に上げて勝手なことを書きましたが、少しでも参考になれば幸いです。
それでは失礼しました^^

月天心
219.100.84.36

この原稿は、これはこれとして、もう3年間はいじらないで、「別の新しいもん」を書いた方が絶対いいよ〜??

と強く思ってる派。



この原稿、書き出しから「???」引っかかりまくって、個人的にダメなんです。

 >『獣神様、獣神様。

↑ それって、どんな神様??

『獣神ライガー』とかゆー、お懐かし特撮紹介番組でしか見たことないタイトルが浮かび、それ以上先へ進ませない。。

「十二支に入ってる動物」ならば、話は簡単なんです。下鴨神社だー伏見稲荷だーで、それぞれパーソナルな可愛いお社に祀られてますからー。
「神様のお使い系」も然り。

でも、ざっくり「獣神」ってされると、前述の『獣神ライガー』になっちゃう。


でもって、作者、「そういう細部設定はまるで考えてないザル原稿」なのが明らかすぎるんで、

それを目にした読者は、「無駄に悩ましく、ひたすらバカバカしくなる」んです。


基本設定、ちゃんとしてくれ。

偏差値45
219.182.80.182

正直に言えば、「つまらないかな」
個人の好みだけれど、はやりハッピーエンドが良いと思いますよ。
たとえバッドエンドであっても教訓めいたものは欲しいですね。

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