作家でごはん!鍛練場
藤光

ここにいる(全)

 ぼくたちは記録され続けている。
 この世界で起こるあらゆることは映像に記録されている。畳表は剥げ、壁のあちこちに染みの浮いたこの二一〇号室からしてそうだ。ここで起こることは二十四時間、常に監視カメラによって撮影されている。
 確認することは容易だ。
 ◯◯県警生活安全部人身安全対策課は、都心から外れたこの下町の一角に別室を設けている。間口の狭い家の並ぶ小さな路地に面した築五十年の文化住宅、その名も『昭和荘』がそれだ。全室2Kの昭和荘十室すべてが――人身安全第三係に割り当てられている。人身安全対策課における、ここがぼくの職場だ。

 常にブラインドの下された部屋。照明の取り払われた六畳間を埋め尽くす、数台のPCと十数台の液晶モニター、AVケーブル。モニターの明かりに照らされるわずかな領域がぼくの作業スペースとなる。
 ほとんどそんなことはないが、ここにやってきた人は皆、この部屋を見て驚く。「よくこんなところで仕事ができるな」と。そうだろうか。ぼくの作業には集中が必要だ。集中を途切れさせないためには、部屋は暗い方がいい、狭い方がいい、気をそらせる何ものもない方がいい。モニターの映像に敏感になれる。
 いくつもあるモニターは全て別々の画像を映し出している。空港、病院、スーパーマーケット、高速道路、銀行――の監視カメラの映像だ。カメラはそこにきた人たちを狙っている。モニターはそこをゆく人たちを映し出している。始まりがあるわけでなく、終わりがあるわけでもない。そのうち、左下C-1モニターの中で若い男が身じろぎした。
 ぼくだ。
 C-1には常にこの部屋の映像を表示させている。ぼくたちが記録されている存在だということを忘れないためだ。
 ぶるぶる――ポケットの中で携帯電話が震えるので見ると、稲爪からの連絡だった。
『いつもの場所 20時 データ726』
 それだけで十分だった。ぼくは行かなくてはならない。
 いくつか挿さっているもののうち、「726」と書かれたUSBメモリをPCから抜くと立ち上がった。C-1の中のぼくは上着を羽織りモニターの外へ出て行く。二一〇号室のドアが外から閉じられた。
 外は雨で、世界は無数の水滴が、屋根や地面を打つ音に満ちていた。
 通路の手すり越しに、遠くに街灯や古びたネオンサインの明かりが滲んで見える。こんな日はカメラの映像も滲んで歪むだろう。安物のビニール傘を手に路地を地下鉄の駅へ向かう。いつもの場所は二駅向こうなだけだ。
 地下鉄の入り口から階段を小走りに駆け下りる。確かここは監視カメラがあったはずだ。E7855SR――だと思う。駅の改札、もちろんここにもカメラがあって乗降客を狙っている。ここはMT R0007だ。ホームに滑り込んできた列車に乗る。するとMT R1007から、303QP6Eに切り替わる。日曜日の夜にしては、車内は混雑している。
 ものの数分もすると目的の駅に着いた。列車を降り、改札を抜けて、地上へ出ると、そこはもう夜の公園だった。雨の公園に人影はまばらだ。傘を差していつもの場所へ向かう。木に囲まれた小さな広場。向かい合わせになるよう、四つベンチが並べられている。広場にはだれもいなかった。
「505GAB1」
 ビニール傘の水滴に滲んだ右手の街灯がそうだ。
「505GA――」
「覚えているのか? シリアルコードを」
 背後から声をかけられた。雨の気配に紛れて気づかなかった。そばに立たれると、傘を打つ雨音が聞き取れる。
「――B7。そうです」
「お前は、本当に変わったやつだな」
 ぼくのと同じような安物のビニール傘を差した中年男が、ぼくをここに呼び出した稲爪だった。よれよれの背広に手入れのされていない靴を履いている。それが今夜は雨に濡れて一層貧乏くさい。
 いまこの瞬間もシリアルコード505GAB1と505GAB7、ふたつの監視カメラが公園に立つぼくと稲爪を記録しているはずだ。
 ぼくは黙ったままポケットからUSBメモリを差し出す。それを受け取った稲爪は、背広の内ポケットから取り出した携帯端末に差し込んだ。すべての通信機能が外された映像確認用端末だ。
 すぐさま、いくつもの編集映像が再生される。色付きのものもあれば、モノクロのものもある。動画もあれば静止画もある。上から、下から、真正面から。全身、上半身、顔だけ――とその映像はさまざまあるが、ある一人の人物の映像を集めたものだ。
「確かに。行方不明者――木崎夏菜に間違いない。早いな、いい仕事だ」
 稲爪の端末の中で、ショートカットの女がカメラの方を振り返って笑った。十七、八歳か、片八重歯の可愛い女の子だ。
 動画は長いものでも五秒程度。駅の改札を通る木崎夏菜、コンビニエンスストアで支払いを済ませる木崎夏菜、ぼんやりとデパートのエスカレーターに揺られる木崎夏菜、マンションのエントランスを入ってくる木崎夏菜、 郵便局のATMを覗き込む木崎夏菜……。
 次々と端末のなかで木崎夏菜の記録が再生されてゆく。
「このマンションか」
 画面では、男と腕を組んだ木崎夏菜が早足にマンションのエントランスに入ってきた。日付は昨日、十月二十五日だ。
「E3378A A」
 映像のマンションに設置されている監視カメラのシリアルコードだ。聞かれれば、コンビニのだって、デパートのだって、郵便局のだって答えられる。
「それだけ分かれば十分だ。ご苦労だったな」
 パッとしない外見からは想像もつかないが、稲爪は人身安全第三係の係長――ぼくの上司ということになる。臨時雇いのぼくとは違い、れっきとした警察官、人身安全対策課の刑事だ。
 県警に新設された人身安全対策課は、行方不明者の捜査にあたる部署である。ひとくちに行方不明者といっても、実際はふたつに区分するのが普通だ。ひとつは自らの意思で行方をくらます人。もうひとつは何者かによって連れ去られた人だ。前者は家出人と呼ばれ、その行為は犯罪ではないが、後者は誘拐や逮捕監禁といった犯罪の被害者となる。
「家出人?」
「うん……。しばらく連絡が取れなくてな。悪い仲間と付き合っていたようだし、監禁されてるんじゃないかと家族が騒ぎ出したのさ」
 映像を見たところピンピンしてるようだし、大方、新しくできた彼氏のところにでも転がり込んでるんだろうというのが稲爪の見立てだ。
「一課も動かそうかと言ってたんだが……。お陰で無駄な借りを抱えなくて済んだ、ありがとう」
 事案が誘拐や逮捕監禁事件であれば、刑事部の捜査第一課が出張ってくるものらしい。警察内部の縄張りがどうなっているか知らないが、我が人身安全対策課と捜査第一課は仲が良くないようだ。
 用件は済んだ。
「ああ、そうだ」
 別れ際、上着のポケットを探ったかと思うと、思い出したように稲爪が一本のUSBメモリをぼくに差し出した。街灯にぴかりと光るそれは「778」と書かれていた。
「次の仕事だ」

 505GAB1――雨に滲む夜の公園。さっきまで並んで開いていた二つのビニール傘がゆっくりと離れてゆく。ひとりの男は街へ。505GAB7――もうひとりの男は地下鉄へ。
 ぼくたちは記録されている。

 きのうの雨の痕跡は、街路のところどころに染みとなって残っているが、今朝は太陽の光が地面に差し込んでいる。
 大勢の人が通り過ぎてゆくが皆急いでいる。朝の駅前は忙しない。数えきれないほどの人が右から左へ横切ってゆく。サラリーマン風の男、OL風の女、半ば禿げ上がった男、長い茶髪の女――ゆく人はいろいろだ。中には学生もいる。
 いつもの時刻に、彼女はぼくの前に現れた。足早に横切る駐輪場の入り口。冷気を帯びた風に制服のスカートがひるがえった。駅へ向かうのだろう。
 まもなく駅の改札を通った。このままホームへ上がれば電車に乗れるが、月曜日なので、構内のコンビニエンスストアに立ち寄るかもしれない――やはり、きた。月曜日の彼女はここでグミを買ってから電車に乗る。なぜだか知らないが、いつもそうする。
 キャンディ類の陳列棚でグミを手に取る彼女が、ぼくのお気に入りだ。色白で小ぶりな横顔と紺色の制服、少し尖った顎のラインとすらりとした彼女の手が画面に大きく映るからだ。
 きれいだと思う。
 彼女がコンビニにいたのは、ものの三十秒程度だろう。レジを済ませてホームへ向かった。
 これから電車で学校へ向かうのだ。彼女の制服はK女学院高校の生徒であることを示す古めかしいセーラー服。校章のプレートから二年生と分かる。名前は知らない。知る必要を感じない。それ以上のことを知っているから。
 いつも先頭車両の乗車位置に立つ彼女は、画面中でもよく見える。いま同じ制服を着た少女と挨拶を交わした。背が高く、とりすました顔は大人っぽいが、笑顔になるとまるで子供のように無防備な表情になる。大人の女性に備わる緊張感と、子供にしかないしなやかさを、その細身の体に併せもった彼女。
 ぼくは、いままさに女性へと変態を遂げようとする雌幼体――見えない殻を脱ぎ捨てようとする羽化したばかりの蝶を空想する。彼女の額で揺れる前髪ですら神秘的だ。
 毎朝、ぼくはしあわせな気分になれる。

 そのとき、トントンと二一〇号室のドアがノックされる。すると、入っていいとも言わないうちにドアが開き、眼鏡をかけたもじゃもじゃ頭の若い男が現れた。
「おはよ、Qちゃん。起きてる?」
 男は一〇四号室の「D」だ。昭和荘の古株で、もっとも長くこのアパートに住んでいる――ということは、人身安全対策課がそう呼ばれるようになる前から、ここでこうしているということだ。その彼に言わせるとぼくは二一〇号室の「Q」らしい。
 以前、どうしてぼくはQなのかと聞いてみたが、Dは「だって十七番目だからね」と言ったものだ。ならばD本人は四番目なのだろう。
「また『彼女』の観察? 飽きないね」
 よれよれのジャージ姿がトレードマークのDは、ぼくの部屋へ上がりこむと、ひょいひょいとケーブルをまたいで、壁のようなモニターを回り込み、ぼくの隣に座り込んだ。
「なに。眠いんだけど」
 彼女が校門をくぐり抜けるのを見届けてから、朝食をとり、歯を磨いて、布団に入るのが、ぼくのルーチンになっている。
「怒ってんだ」
「別に」
 Dの手から、もってきたハンバーガーの入ったレジ袋をとる。近くのコンビニでチンしてきたのか、温かい。
「ひとつは、オレのだよ――。あ、ほら。電車きた。彼女乗ってく。カワイイなあ」
 ホームの監視カメラに、一瞬、彼女が電車に乗り込む様子が映る。いつもの一号車。少し伏せ気味の眼差し、伸びやかなうなじ、この角度から見る彼女もきれいだ。
「Qちゃん、変態だな」
「ケンカ売ってんの?」
「まさか、事実の指摘。ここの住人は、大なり小なりみーんな悪趣味で変態なんだからさ」
 モニターに流れる映像を目で追いながら、Dは買ってきたハンバーガーにぱくついた。うまそうだ。ぼくもいただこう。
 薄暗い六畳間に、PCが発する冷却ファンの唸りと、ふたりの男がハンバーガーを咀嚼する音。朝から寂しい「絵」だ。そうしてる間も、彼女は電車に揺られている。
「ところで……」
 指についたソースを舐めとりながらDが話し出した。
「『778』見た?」
「見た。でも、いつもと違うな」
 昨夜、稲爪から受け取ったUSBメモリには虚ろな表情をした無精ひげの男のデータが入っていた。逗子一馬――ほんとの名前かどうか疑わしいが、一応氏名はそうなっていた。
 しかし、Dが知っているということは、「778」の捜査はぼくだけの仕事じゃなかったのか。これもいつもと違うことだ。
「Qちゃん、鋭いね。あれはいつもの行方不明者じゃないし、犯罪被害者でもない。『778』は、殺人事件の犯人さ」
 まさか。殺人事件の捜査は、人身安全対策課の管轄ではない。捜査第一課の仕事のはずだ。昭和荘――人身安全第三係に殺人犯人の捜査が回ってくるなど、ありそうにない。
「一度は逮捕したんだけど、逃げ出したんだよ。警察本部の取調室から。一課の大チョンボさ」
 取調中、監視役の刑事が居眠りをした隙に逃げ出したのだという。しかし、殺人犯人逃走の情報が、まったく報道されていないのは、どういうことだ。
「警察本部の取調室は、地上十階にある。庁舎の出入りは厳しくチェックされているし、逃げられるはずはないと踏んだんだろう」
 ところが半日だっても、庁舎内から逃走した男は見つからなかった。それどころか、逗子一馬と見られる男から、暴行被害を受けたという女性からの届け出が、その夜付近の警察署にあったという。
「逗子一馬。前科二犯。強盗強姦および強姦致傷で、合計十年間服役。今回の逮捕事実がスナック店員に対する強姦殺人――」
「サイアクだ」
「そう。いまさら『逃げられました』とは言い出せない警察は、ブン屋に嗅ぎつけられないうちに、逗子をとっ捕まえようと躍起らしい」
 それでか。本来なら捜査第一課の仕事が昭和荘にまで回ってきたのは。
「一課は捜査から外された。映像捜査もウチに回ってきた」
「Dもデータを?」
「オレだけじゃない。昭和荘のみんながデータを持ってる」
 逗子の捜索に、人身安全第三係は総力戦というわけだ。いつの間に。
「Qちゃんも、ケツに火がついた?」
「ぼくのやることは変わらない」
「だから、朝から『彼女』を追いかける――と。ま、それもいいさ。じゃあ、今から寝るんだな」
 おやすみ――といい残して、Dは来た時と同じようにモニターを回り、ケーブルをまたいで部屋を出て行った。彼女は電車を降りた。畳の上に転がされたレジ袋にハンバーガーの包装紙がふたつ押し込まれている。
「おやすみ」
 やがてK女学院の校門を入ってくる彼女を確認して、四畳半の布団に潜り込む。そうしているぼくをカメラは記録し続ける。

 街角に、駅に、店舗に、バスに――。いたるところにそれはある。ぼくたちがカメラに撮影されるのは、そう意識していないだけで日常的なことだ。
 この国では常時、数百万台の監視カメラが稼働している。その一台一台が、なにかが映っていようが、いまいが、おかまいなしにレンズに写り込む映像を記録し続けている。考えてみてほしい。百万台のカメラが一時間に記録する映像は、百万時間に及ぶ。一日に記録する映像は二千四百万時間だ。監視カメラは、個人情報の違法収集だ、プライバシーの侵害だと言い募る人もいるが、そんな人にはこう言ってやりたい。
「記録された映像から、あなたの映っている箇所を探して削除してもいいですよ。一日分、探すだけで二千四百万時間かかりますけどね」
 巨大なデータの塊から個人を特定して情報を抜き取るのは至難の技だ。映像捜査の難しさは、そこにある。クラウドサービスの進展とともに、ネット空間に集積されはじめた巨大な映像データ。そこに真実が含まれているのは確かだが、人の目ですべてを確認することは不可能なのだ。
 ぼくたち映像捜査官は、コンピュータに一定の条件を与え、ネットに溢れる膨大な映像データの中から対象となる人間の映像を検索させる。年齢、性別、身長、体格は当然として、顔の輪郭、ヘアスタイル、ほくろの位置や分かるのあれば、病歴や食事の嗜好、下着の色まで指定することができる。それでも検索にかかる映像の数は途方もない量だ。この国では一億二千万もの人が、監視カメラの前にその身を晒しているのだから。
 対象の映像を探し当てるには、映像を見分けるセンスと作業に没頭することのできる適性が必要だ。このセンスと適性をひとまとめに備えた人間がいる。カメラ越しに人を観察することに喜びを感じる嗜好の持ち主――盗撮、覗き見趣味なんでもいいが、Dは簡潔に「変態」といっている。まあ、間違ってはいない。変態でもなければこの仕事は務まらない。
 ここからはDに聞いた話だ。

 昭和荘の住人は臨時職員ばかりだ。Qちゃんもそうだろ。どうしてだと思う。興味ないか――まあ、ちょっとだけ聞いてくれよ。
 以前はいたんだよ。警察官の映像捜査官。もちろん、オレたちは警察の仕事をしてるんだし、捜査は警察の仕事だからね。最初の映像捜査官は警察官だった。「A」としようかな。
 Aは、若くて優秀な刑事だった。三係(当時はそういう名じゃなかった)が立ち上がって最初に選任された映像捜査官さ。真面目で、物事を深く考える性質(たち)だった。真面目すぎたかもしれない。この仕事を続けるうちに病んで自殺した。
 二番目は正義感の強い男だった。強盗犯人の映像を追ううちに事件に深入りしすぎた。事件班に先行して現場に突入、殺されたよ。Bだ。
 Cには、不活性な男が選ばれた。とりたてて真面目というわけでなく、特に正義感が強いわけでもない――ということは普通の男だ。だが、一年も経たないうちにここを逃げ出した。以来、行方不明だ。笑えるだろ。ここの職員が行方不明なんだ。
 警察の上層部は、ここに警察官を配置するのはやめた。適性のない警察官を消費することの愚かさに気づいたのさ。代わりにネットで募集した臨時職員を採用することにした。その第一号がオレ。
 映像捜査官は、カメラ越しに人の行動を観察し続けなきゃいけない。些細なしぐさから意思を読み取る。無感動に。しかし、執拗に。
 映像の男がもぞりと肩を揺する動きから「小便をもよおしたな」とか、女の視線の送り方から「セックスしたいんだな」とか分かるようになれなければだめさ。
 笑うなよ、マジだ。
 でも、そんなのがまともな人間だと思う? まともじゃ務まらない。Aが死んだように、Cがいなくなったように。
「変態」だ。映像捜査官は、そうでもないと務まらない。
 そういうわけで、Qちゃんは見込みがある。朝から晩まで、画面越しに女子高生を眺め続けるなんて、まともじゃない。OK、OK。変態歓迎だよ。
 ようこそ昭和荘へ。

 そして、Dはいかにも愉快だといった風にぼくの手を握った。柔らかい、冷たい、白い手だった。
 そんなDも、もちろんまともではない。時折インターネットに現れる死体の映像を漁るのが彼の性癖だ。
 ――国家による犯罪者の公開処刑。
 ――自身の首吊り自殺をネット中継する若者。
 ――刑務所内での集団リンチ。
 人が死んでゆく映像を見ると、Dはエクスタシーを得ると言う。
 本当だ。ぼくたち映像捜査官は、お互いにお互いの部屋の状況を常に監視できるよう、カメラを設置し、部屋の様子を映しあっている。Dが死体の映像を好んで見ているというのは、映像捜査官ならみんな知っている。
「古いオレが死んで、新しいオレになるんだ」
 たとえば縊れた死体にそう感じ、そうしながら仕事のなかで溜め込んできた罪悪感や疑問、羞恥心といったものを古いDと共に脱ぎ捨てる。最後に映し出された囚人の手は、血の気を失って真っ白だった。彼のなかに生と死が共にある。
 ぼくはどうだろう。
 Dの言うような「変態」だろうか。そうであればいいのにと思う。
 ぼくは、だれかの思うとおりの存在でいられるところをずっと探していた。それがいまここであるなら、やっと見つけたぼくの居場所だろうから。
 居心地の悪い思いをしてきたのは、子供の頃からだ。ぼくは「こうなれば楽しいな」と考えることを見境なく口にするような子供だった。皆そうだったはずだ。
 ――トンボが、お父さん食べた。
 笑ってもらえるくらいに幼いうちはよかった。ただ小学校に上がっても、
 ――学校が火事で、みんな死んじゃった。
と言っていては、「虚言癖」と言われても仕方がなかったのかもしれない。
「嘘を言わないで」
 ことあるごとにそう言い聞かされるのは、嘘との自覚がないぼくにとって非常な理不尽だった。感じたままに話すことを許されないぼくは、生身の感情のままに人と触れ合うことをしなくなった。
 モニター越しに人を眺めるようなことになったのは、そのせいだと思う。コンピューターとインターネットに出会って、ぼくは初めて人と触れ合えるようになったと感じた。機械は、ぼくを嘘つきと呼ばない。
 何かを期待してここにきたわけではなかったし、期待されていたと思わない。しかし、昭和荘での生活はぼくに合っていた。ここでぼくは、はじめて自分以外のもののために何かをするということを知った。ぼくは職業に出会ったのだ。
 彼女を知ったのは働きはじめてまもなくだった。監視カメラの映像に対象者を探していた時だった。
 映像から視線を感じた。紺色のセーラー服に通学鞄を持った女の子がこちら向いて立っていた。ほんの少しの間、立ち止まっていただけだったが、確かにその視線は、画面の向こうからぼくの目を貫いて、拍動を早めたぼくの心臓まで届いた。
 ――なんだこいつ。
 ぼくは驚いた。そして怖くなった。
 セーラー服の高校生に、ぼくの人には言えない職業を見透かされたように感じたからだ。でも、そんなことはあり得ない。
 彼女が見ているのは、ドラックストアに設置された二日前の監視カメラであって、この部屋でモニターを見ているぼくではない。
 彼女からは、時間も、空間も、ぼくとは繋がっていない。記録された映像をぼくが一方的に観察しているだけなのだから。でも、あのときはすごく怖かったのだ。
 ぼくは彼女を探した。ほんの数秒記録されたカメラの映像を手がかりに、仕事を後回しにしてまで。ぼくは、ぼくを恐怖させたものの正体を知りたかった。不安を消し去りたかった。
 苦労して探し出したリアルタイムの彼女の映像はつまらないものだった。
 K女学院高校の二年生である彼女は、学校と自宅を往復するだけの毎日、朝、駅前に現れ、コンビニに立ち寄り、電車に乗って登校する。夕方はその逆だ。
 取り立てて美人というわけでもない。鼻が少々高すぎるし、尖ったあごは神経質に見える。同じ年頃のボーイフレンドはその影も見せたことがない。
 国語が得意で、数学は苦手。休日に同じ高校の友達たちと食事やショッピングに出かけるのを楽しみにしている。
 普通の高校生だった。つまらない生活、どこにでもあるくだらない人生だ。
 怖いものなどどこにもなかった。ぼくの不安は消え去った。
 その代わりに湧き上がってきたのは、彼女とその生活を所有しているような奇妙な感覚と、彼女を観察することに対する異常な愛着だ。
 これは「変態」的なことなのだろうか。
 それからずっと、ぼくは彼女を観察している。彼女の映像は、映像捜査官としてのぼくにとって、お守りのようなものになった。

 暗い二一〇号室のPCは、ぼくが人と繋がるための唯一の方法で、モニターは世界に向けて開かれた窓だ。オレンジ色に傾いた陽光を孕んだカーテンが、優しく部屋を照らしている。
 目を覚ますと四時半を過ぎていた。
 そろそろ仕事を始めなければならない。洗面台で顔を洗うと昨日受け取ったUSBメモリを机の上に探す。十六分割されたメインモニターの右上に、校門を出て行く彼女が現れたところだった。
『778』に記録されていた逗子一馬のデータをシステムに走らせる。今朝、Dから聞いた前科のほか、これまでに警察が調べ上げた逗子の個人情報が表示される。家族構成や職歴、これまでに犯した犯罪の詳細などだ。そうしているうちにも、次々にシステムが対象者――この場合は、逗子一馬だ――によく似た人物が映っている映像を探し出してくる。モニターに表示されら映像は見る間に百件を超えた。そのうちに一万件を超えるだろう。
 そのままでは手に負えないので、データに絞り込みをかける。この絞り込み方に映像捜査官の個性が出る。腕の良し悪しが現れる。
 対象者の外見や、立ち回り先のデータを事細かく指定することで絞り込んでゆくのが一般的だ。
「でも、それがベストなのだとしたら、わざわざ人間がするまでもない。AIにさせときゃいい」
 いずれこの仕事は、人からAIに取って代わられる。Dの説だ。
「Qちゃんはそうじゃないな。直感で絞り込んでる。『これ』とキーワードを選ぶセンスとスピードは、だれにも真似できない」
 それでも結局、ぼくもAIには敵わないだろうとDはいう。ぼくたち映像捜査官は、AIがこの仕事を担うまでの繋ぎにすぎない。
 彼女が駅の改札を通る様子が、メインモニターの右上二番目に映り込んだ。シリアルコードJR1115K――。ぼくは彼女の通学経路にあるカメラコードを全て把握していて、モニターに次々と表示させることができる。
 サブモニターC-1には、メインモニターに注視しているぼくが表示されている。
 逗子。
 彼女。
 ぼく。
 斉しく監視される存在。
 逗子一馬。兵庫県神戸市生まれ。三十七歳。大学在学中、女友達をレイプした上に、携帯電話を盗んだとして強盗強姦の罪に問われた。懲役四年。
 出所後、コンビニ店員として働くが、通りすがりの女性を殴って脅し、公園に連れ込んでレイプ。強姦致傷の罪で、六年間服役。
 今年九月、行きつけのスナックの店員を帰宅したマンションで待ち伏せ、被害者の自室でレイプした上、タオルで首を締めて殺害、逃走するも逮捕された。身長178センチ、体重62キロ、やせ型。
 逗子のデータには、更にそれぞれ事件の詳細と本人の写真が添付されている。痩せて顔色の悪い男だ。逮捕された時に撮影されたものだろう。ぼさぼさした髪に無精ひげ、虚ろな表情に生気はない。
 逮捕された事件の映像データが添付されている。ファイル形式から動画共有サイトに流出したカメラ画像とわかる。
 ――再生。
 マンションのエレベーター。ドアが開き、髪が長くあごの尖った若い女が乗り込んでくる。次いで男。ひょろっと棒きれのような身体、逗子一馬だ。背を丸め、あごを突き出すようにして歩く足は軽く引きずられている。途端に出て行こうとする女。手を掴んで引き止める逗子。閉まってゆくドア。男は女の頭を壁に打ち付ける。一回、二回。拳で顔を殴りつける。何度も何度も――。
 女のほおがひしゃげ、鼻が潰れる音が聞こえてくるような映像だ。密室での暴行は続き、やがてドアが開くと女は男に引きずられるようにしてエレベーター出ていった。その時、女が血で赤く染めた顔をこちらに向けた――ぼくを見た。
 音声はなく作りものめいた映像に、ぼくは引き込まれた。女の視線だ。この女は知っている。ぼくが見ていることを……監視カメラを通じて見知らぬ誰かに見られていることを――自覚している。そのことを呪っている。この映像はネットに流出し、衆目に晒される。
 この後、尖ったあごを持った若い女は、自室で犯されたあげく、殺されることになら。これ以上呪わしいことがあるだろうか。
 逗子の犯した過去の事件に遡って資料を当たる。逗子が二十二歳のときに最初に起こした事件の被害者は、十九歳の大学生だった。色白で細面、髪の長い女性だ。二十八歳のとき、二番目の事件。被害者となったコンビニ店員も髪が長く、すっと鼻筋の通った若い女性だ。殺されたスナック店員と似ている。
 逗子に関するデータの中には、警察本部から逃走直後に発生した暴行事件の被害者に関する情報も含まれていた。濃紺のブレザーとチェック柄のスカート、被害者はまだ中学生だった。色白で髪が長く、尖りぎみのあごに、高い鼻をしていた――。
 ぼくは被害者のデータを呼び出しながら、並行して彼女の映像もチェックしていた。これだけ逗子の「嗜好」に合っているのだから、チェックしない方がどうかしている。メインモニターの右上で彼女は乗っていた電車から降りた。何事もない、いつもどおりじゃないか。
 中学生を襲った逗子は、被害者を殴りつけて狭い路地に引き入れようとしたところを、通行人に見つかり逃走している。それがいまから三日前のことだ。まだこの街にいるのか、隣県にでも逃走したのか、その後の足取りはまったくつかめていない。
 次々と人が電車からホームに降りてくる。もう彼女は画面から消えて、まもなくとなりの分割画面、JR6394J――駅ナカのコンビニの監視カメラにその姿が現れるはずだった。まだ見えない――。
 そのときだった。電車を降りる大勢の人の中に、エレベーターの中であごの尖った女を殴りつけていた男の姿を見たのは。棒きれのような身体、前かがみで足を引きずる歩き方。
 しんと胸の奥が冷えた。
 世界から視覚以外の感覚が消え去った。
 男はホームを奥から手前へ通り過ぎて見えなくなった。分割画面の表示を確認する。十月二十七日十六時五十二分三十八秒――記録された映像ではない。リアルタイムだ。
 ぼくの前にやつが現れた。

 夕闇が落ちはじめたアパートの部屋の中でたまらず立ち上がったが、しばらくはどうしていいか分からなかった。しかし、ぼくは画面の向こうには殺人犯人を捉えていた。
 コンビニに設置されたカメラの映像に彼女が現れた。コンビニに立ち寄ることなく画面から消える。何人か乗降客をおいた後、追うようにして逗子一馬が同じように画面を横切った。たったいま目の前にいる。そこにいるように感じる。しかし、それはぼくの手の届かない遠いところでの出来事なのだ。
 携帯端末を取って稲爪に連絡をとろうとした。コールする、コールする、コールする……が電話には出ない。メッセージを送るか? だが、それをいつ稲爪が見るというんだ。間に合わない。
 そう、間に合わない。やつは彼女を追っているかもしれない――いや、きっとそうに違いないのに。ぼくの手はいまそこにいるやつに届かない。
 改札を通る彼女が画面に現れて消えた。数人おいて、逗子一馬が同じ改札ゲートを通ってゆく。
 たまたま彼女と逗子の向かう方向が同じだけではないかと思ってみる。駅を出ると二人はまったく別の方角へ向けて歩き出すのだ。偶然、ぼくが知っている二人の人間が同じ電車に乗り合わせたに過ぎない。
 メインモニターの分割画面には、いつも彼女がその前を通る街頭カメラの映像が映っている。道に落ちた夕日の影が長い。この道は住宅街に通じていて、夕刻以降、住人以外が通行することはほとんどない。
 彼女が現れた。まっすぐいつもの道を自宅へ向かっている。その五メートルほど後を逗子一馬が歩いてきた。画面に映っているのは、彼女とやつの二人きりだ。
 絶望的な気分で携帯端末を操作するが、稲爪が応答する気配はない。対象者発見を伝えるメッセージも未読のままだ。
 たまらず、ぼくは部屋を飛び出した。じっとしていられなかったのだ。頭の中では、エレベーターの中で執拗に女を殴っていた男の姿が、繰り返し繰り返し再生されている。女はいつのまにか紺のセーラー服姿に変わっていた。
 Dがいる。
 混乱した頭に一筋の光が差し込んてきた。人身安全三係での仕事が長いDなら、稲爪以外の警察関係者と繋がりがあるかもしれない。アパートの外階段を駆け下りて、一〇四号室へ向かう。四番目の男、Dの部屋だ。ドアブザーを鳴らす、何度もボタンを押す――が鳴らない……。
 構わず玄関ドアを乱暴に叩く。
「おい、D!」
 しかし、応答はない。ドンドンと古びたドアを叩く音が空しく響くだけ。
 ドアノブに手をかけると鍵はかかっていなかった。ドアは難なく開いた――。が、中は真っ暗だった。
「――?」
 一歩足を踏み入れるが、2DKの部屋に人の気配はない。それどころか映像捜査官の部屋にはあるはずの、パソコンやモニター、映像機器が一切ない。
 ほこりの積んだ畳と染みの浮いた壁、すすけた天井から古びた吊り下げ照明が一つあるきりの部屋には、かびた匂いが満ちていた。Dの姿はない。いや、この一〇四号室に住人がいるとは思えない。
 そんな馬鹿な。
 となりの部屋のドアに飛びつくと、鍵はかかっていなかった。中は空っぽ。その隣もそう。一〇一号室を開けると大きく太ったネズミが足元に飛び出してきて、ぼくは飛び退った。
 どうなっているんだ。人身安全三係のみんなどこへ行ってしまったんだ! だが、二階の部屋も二一〇号室を除く、すべての部屋が空っぽだと分かると、納得せざるを得なかった。
 ここ――昭和荘には、ぼくしかいないのだと。
 どうしていいのか分からず、部屋に戻ると、彼女は自宅から一番近い監視カメラの前を通り過ぎるところだった。この先、どのくらいの位置に彼女の自宅があるのか分からなかったが、最後に彼女が映るのはいつもこのカメラだった。彼女が、そして逗子が画面を横切ってゆく。ぼくが知覚できない場所へ消えてゆく。
 手にした携帯端末で一一〇番をコールした。手遅れになる前に、ぼくにできる最後の手段だった。
「――はい、警察本部です。事件ですか事故ですか?」
 多少まごついたが、通話相手の担当官に警察本部から逃走した犯人を見つけたこと、その犯人は女性に乱暴し殺した罪で捕まっていたこと、正にいま、別の女性の後をつけていて被害に遭うおそれが強いことを伝えることができた。
「ぼくは人身安全対策課三係の九条といいます」
 電話口の相手は応えなかった。不自然なくらい、長く。そして――。
「……警察本部から犯人が逃走? そんな事実はありませんよ」
「逗子です! いま監視カメラでみつけたんだ」
「……そんな者は知らん。それに……人身安全なんて部署は県警にない。あんたいったい何者だ?」
「――!」
 相手はまだ何かを話し続けていたが、ぼくは端末から耳を離して一一〇番通報を切った。ぼくのしてきたことの何が本当で、何が嘘なんだ。
 途端に、足元から世界が崩れていくような錯覚を覚えた。もちろん錯覚とはわかっていたが、その寄る辺なさは本物だった。虚無の空中に放り出されたぼくは、ぼくがぼくであることの確信を失った。

 白々と街灯が点いている。日は落ちてビルの向こうに残光が薄くなっていく――。
 地下鉄を乗り継いで、ぼくはいつもの公園へやってきていた。あれから一時間は経ってしまった。
 どうしてここへやってきたのかは自分でもよくわからない。ただ、ぼくが考えていたぼくというものを規定する一部が、ここで稲爪に会っていた事実には間違いがない。ぼくと警察を結びつける最後の接点が、この公園――505GAB1と505GAB7、ふたつの監視カメラの映像が交わるこの場所にはある。
 雨は降っていない。日が落ちても都心の公園に人の姿がなくなることはない。昨日は誰もいなかった小さな広場のベンチにも、携帯端末を覗き込むスーツ姿のサラリーマンや、笑いさざめく若いカップル、ぼんやりとビルの明かり見上げるホームレスの姿などが見える。
 稲爪はいなかった。もちろんそうだった。いるはずはないのだ。ぼくがここに来るのは、彼から呼び出されたときに限られていたし、ぼくが稲爪を呼び出したことのなど一度もなかったからだ。
 携帯端末を取り出して、稲爪の番号をコールする。スピーカーから呼び出し音が聞こえる。一回、二回……。夜の公園に空しく響く。五回――。
「稲爪なら出ないよ」
 はっとして視線を巡らせると、ベンチに腰をおろしているサラリーマンと目があった。いつものジャージ姿ではないが、もじゃもじゃ頭に眼鏡、Dだった。
「逗子の確保に向かってる。さすがだな」
 立ち上がったDは、仕立てのよいスーツを一分の隙もなく着こなしていて、いつもの彼とは別人のように見えた。
「どうして?」
「通報したろ。それに――オレたちは常に記録されている」
 そうだろと言ってDは薄く笑った。いつもの、少し斜に構えた彼の笑顔だった。
「来ると思ったよ」
「いったいどういうことだ」
 目の前のこの男はいったい何者だ。あのアパートはどうして空っぽなんだ。ぼくが映像捜査官だというのは本当なのか。それともそうした一切合切がすべて嘘なのか。
「本当のこと? なんだそれ。もし本当のことってのがあるとすれば、オレたちにとってそれは、モニターの向こうにあるものだろ」
 知ってるはずじゃないかと言って、歩み寄ってきたDはぼくの肩を親しげに叩いて、一切れのメモを差し出した。電話番号だった。
「一緒にやろう」
 メモをぼくの手に押し付けるとDは去った。振り向くことなくまっすぐ広場を出て行った。
 ぼくは追うことなくその背中を見送り続けた。
 すっかり暗くなった公園に街灯が鋭く光を投げていた。すぐそばに505GAB7のコードを持つ街頭カメラが佇んでいる。
 ぼくは記録されている。
 
 午前七時三〇分、もうそろそろいつもの時刻だ。到着した列車が吐き出した人の群に朝のホームは混雑していた。列車を降りる者と乗り込もうとする者が作る混沌が、渦を巻き、流れを形作って徐々に秩序立っていく。人の群れが、ぜん動する臓器ようになる不思議な時刻だ。
 でも、いつもと違い今朝は、ぼくもそれを構成する粒子のひとつだ。ぼくは流されるようにしてホームを改札へと歩いてゆく。若いもの、老いたもの、男、女――が様々なひとつの方向へ流れてゆく。
 改札の手前、コンビニエンスストアに滑り込む。ここの出入口からは自動改札を流れてゆく人がよく見える。
 グミの陳列棚を探そう。
 ゆうべは昭和荘に戻らなかった。空虚な建物。偽りが詰め込まれた部屋。不確実な真実。ぼくには「そうではない確かなもの」が必要だった。
 夜通し確かなものを探して歩いた。歩いても歩いても見つからなかった。ぼくにそんなものはないと突きつけられたような気がした。
 そしていまここにいる。
 店内の時計を見る。午前七時四〇分。いつもの時刻だ。自動改札は途切れることなく人を招き入れている。まだ現れない。
 息苦しくなってきた。胸を大きな手でわしづかみにされたように。ぼくは浅い息を繰り返す。
 ――どうして彼女は現れないのだろう。
 あの後のことは何も知らない。逗子がどうなったのか。稲爪が逮捕したのか。彼女は無事だったのか。それとも、ぼくが知ってる全てのことは、だれかの作り出した虚構だったのだろうか。人身安全三係と昭和荘のように。
 午前八時。彼女は姿を見せず、諦めたぼくはコンビニエンスストアを出て改札へ向かった。自動改札を通る。吸い込まれた切符から視線をあげると、視界の端に紺色のスカートが揺れた。
 足が止まった。
 ぎこちない動作でぼくの方へ向かってくる少女は、足に包帯を巻き、片脇に松葉杖をついていた。K女学院の制服。尖ったあごと不釣り合いに高い鼻。すれ違うときに見ると、あごと目元が赤く、うっすらと腫れて見えた。
 ぼくが足を止めたのは、ほんの二、三秒のことだった思う。すれ違ったのはほんの一瞬だけ。それで十分だった。振り返ると彼女はホームへのスロープに差し掛かったところだった。ゆっくりと、しかし、まっすぐに歩いてゆく。もちろん彼女がぼくを振り返るなどということはない。そして、ぼくも二度とは。
 再び歩き始めたぼくは、携帯端末を取り出して登録したばかりの番号をコールした。一回、二回、三回……。

「もしもし――Dか」
 

ここにいる(全)

執筆の狙い

作者 藤光
182.251.189.193

先月あげたものの完全版です。前回読んでいただいた方、どうでしょう。印象通りでしたか。感想をいただいた方、ありがとうございました。おかげさまで頑張れます。よろしくお願いします。

ちなみに前回あげた部分は、ほとんど変えてませんので、覚えてる方はすっ飛ばしてもOKです。

コメント

アフリカ
49.104.49.246

拝読しました

うん、面白い。

終始ぶれることなく集中して書かれたのだろうな~と、もしかしたら一気にとり憑かれたように書かれたのだろうなと感じました。
当然、僕にはとても面白かった。

気になった事を少しだけ

文章のてんで不満はゼロでした。

ただ、贅沢を要求してしまうと部屋に閉じ籠り動きのない映像ばかりが続いてしまうこの話が、一転して過激に動き出せるチャンスがあったのに(意図的?)やっぱり最後まで静かなトーンで語られた為に登場するキャラクターの色味が薄いと思いました。
短い話ではあるのですが、(ぼく)が接触を持った人間は二人。やっぱりこれは弱いと思いましたし、僕的には救出に向かうべきだったのではないか?と感じました。結末は全てが失敗して(ぼく)の思い通りにはならない今回の出し方に賛成ですが、助けに行かなかったことで(格闘乱闘等がなかった)狂暴なキャラクターを折角造ったのにそれがいかされてなかった気がします。この場合。ぼくを含む全ての人が間接的には実行暴力を使う悪と変わらない。って感覚が薄れてしまうような気がします。(そう言うテーマなのかは僕の勝手な読みですが……)

それと、Dが再び現れるのはスジ的に正解だと思うのですが読み手に何も教えてくれないので多くの謎を残したままのラストに向かってしまう感覚です。
組織の概要だけでも少し出すべきではなかったかな?と感じました。

とは言うものの、前回から引き続き読んでみて、やっぱり凄い上手いと思うしワクワクさせられました。
これは練り込めばどのような展開にも広がることが出来る凄い書き物になると感じます。

勉強になりました。

本当に勉強になりました。

ありがとうございました

九七式中戦車・改
119.104.103.82

「ここにいる(全)」拝読しました。

サスペンス調の展開は緊張感があって良かったです。「これは面白いな~」と思いながら読み進めました。
しかし、しかしですよ?

藤光さんのラスト、ラストになってないじゃん! 
三幕構成で言えばミッドポイントに差し掛かったとこですよ、これ。
これ完全版じゃない! 完結してないって!

だって稲爪が情報収集してた目的とか、逗子一馬がどうなったとか、女子高生は大丈夫なのか(貞操の話ね)とか、Dは何を「やりたい」のか、タイトルにある「ここにいる」ってのは誰の事なのか(ラスト間近の地の文「そしていまここにいる」ってのはタイトルを背負う重みがないよ…)、冒頭の木崎夏菜ってそもそも何者なのか、全然伏線回収してないじゃないスか。

こっからじゃないっすか本編は!
と、叫びたい気持ちでいっぱいです。

「君の名は。」で言えば滝君と三葉が入れ替われなくなったとこで終わり。
「紅の豚」でいえばポルコがミラノに行く途中で撃墜されて終わり。
「アナ雪」だとエルサが氷の城を作って終わり(まさかのレリゴーエンディング)。
「シンデレラ」だと主人公が着飾ってカボチャの馬車で城に乗り付けたとこで終わり。

そんな感じなんスよ。
私の言いたい事、判りますかね?
公募に挑戦されるなら、絶対続きが必要だと思います。


あと、少し気になる事を。

>巨大なデータの塊から個人を特定して情報を抜き取るのは至難の技だ。映像捜査の難しさは、そこにある。クラウドサービスの進展とともに、ネット空間に集積されはじめた巨大な映像データ。そこに真実が含まれているのは確かだが、人の目ですべてを確認することは不可能なのだ。

>『778』に記録されていた逗子一馬のデータをシステムに走らせる。今朝、Dから聞いた前科のほか、これまでに警察が調べ上げた逗子の個人情報が表示される。家族構成や職歴、これまでに犯した犯罪の詳細などだ。そうしているうちにも、次々にシステムが対象者――この場合は、逗子一馬だ――によく似た人物が映っている映像を探し出してくる。モニターに表示されら映像は見る間に百件を超えた。そのうちに一万件を超えるだろう。
 そのままでは手に負えないので、データに絞り込みをかける。この絞り込み方に映像捜査官の個性が出る。腕の良し悪しが現れる。
 対象者の外見や、立ち回り先のデータを事細かく指定することで絞り込んでゆくのが一般的だ。
「でも、それがベストなのだとしたら、わざわざ人間がするまでもない。AIにさせときゃいい」
 いずれこの仕事は、人からAIに取って代わられる。Dの説だ。
「Qちゃんはそうじゃないな。直感で絞り込んでる。『これ』とキーワードを選ぶセンスとスピードは、だれにも真似できない」
 それでも結局、ぼくもAIには敵わないだろうとDはいう。ぼくたち映像捜査官は、AIがこの仕事を担うまでの繋ぎにすぎない。

御作から引っ張って来た文章です。

「ネットワークカメラ 顔認証」とか「中国 天網」とかでググってもらったらすぐ判明する事ですが、御作の設定は10年以上遅れています。
2018年現在の技術だと、顔をトリガーに「任意人物の本人映像」をAIが引っ張ってくることは可能です。
つまり、「似た映像」を人間が取捨選択する必要は無いでしょう。「ほぼほぼ本人の映像」が自動抽出されて、人間が「ストーリーある映像に編集する」という作業になると思います。
(ぶっちゃけるとAIにとって代わられるというより、最初からAIベースでの技術なんですよ)
このあたりは設定の再考が必要ではないか? と思いました。

落としどころとしては、主人公は映像編集を依頼される一方で、ネットワークカメラシステムに不正アクセスして女子高生を覗き見ている、という流れかな? 昭和荘も映像編集PCだけ与えられてて、マルチのモニター類は主人公が自前で用意してる前提ですね。

あと作中では監視カメラという言い方をされていますが、カメラメーカー側が「ネットワークカメラ」に言い換えていますので、それに合わせたほうが「今風」な感じがしますよ。「監視」というとちょっと古臭いかな。
作者さんとして監視社会のディストピア感を出したいのかもしれませんが、その着想自体も「古い」感じがしますので避けた方が無難かと思います…。


ま、私が「三幕構成」重視派なのでこんな感想になりましたが、「これは映画じゃねーんだよ、三幕構成なんて屁ぇこいてプーじゃ」と思われるかもしれませんね。それはそれで構いません。

ただ、んー。私の素直な感想としては、「続き読みてー!」なんです。
そんだけ面白い、ってことッスよ。

ゆふなさき
27.143.73.41

初めまして。

プロの作品を読んでいる気分になりました。阿部和重の文体にそっくりの変態要素ありのハードボイルドタッチで、ミステリーの要素まであってスッゴク面白い!!!
完璧なものですが唯一残念に感じたのは、私の読みが浅いせいで謎が多いまま終わってしまった感がありまして。続きが欲しくなりました。

それでは、拙い感想ですが大変楽しめました。

上松 煌
153.203.103.215

藤光さま、こんばんは

 最初の数行拝見しました、これって35年以上昔のバブル前の昭和ですよね。
それなら「まさに」って感じです。

 でもそれ以降なら「う~ん」…。
おれの義父の大弥次郎、この人は自分では「デザイナー」って言っていて、実際にデザイナーなんだけれども、実のところは「がくしゃ」です。
あるngo(非政府組織=国連に活動報告義務権利あり)の常務理事)で、ま、世界を股にかけてる。

 感覚と現状が違う気がする。
「数行しか読まないでわかるか?」ってあなたはいうだろうけど。
ごめん。

阿南沙希
126.209.43.62

読ませていただきました。結末予想は、主人公は実は多重人格で、逗子一馬と同一人物、そして一連の出来事は主人公に犯した罪を自覚させるためのセラピーだった…という流れだと面白いかな〜なんて思いながら読んでいました。

与太話はさておき、やっぱり臨時職員の設定は苦しいですよ。なんとか説明してる感じがします。最後の「一緒にやろう」でなんとなく昇格した感も謎です。元から怠けてるのが映像でバレてるのに、あまたある事件の一端に関わっただけでそんな変化は無いのでは? この辺は、正職員にすればわざわざ描かなくていいし、最後に気持ちも新たに部署移動しました〜で、作者的には楽だし無理がないんじゃないかと。
あくまで臨時職員にこだわられるなら、時給や定時などもあったほうが具体性があるかと。圧倒的に割りに合わないけど居心地が良いから続けている…とか。

それと、三課の仕事内容が最後まで曖昧でした。捜査に入らないのか? とっさの時には入るのか? 当然入るものだと思っていたら主人公はまさか⁈ という態度だったので、よくわかりませんでした。
序盤ではっきり書いておくとわかりやすいです。

筋としては、作中で論が散漫になってしまった感があります。はじめて自分以外のもののために何かをすることを知った…これがまとめとしてもっとはっきり出ると良かった。たんに職業に就くだけでもそう思えるかもしれませんが、いろんなピンチを乗り越えたり経験を通してもっとそう思うはず。成長だったり、それまでの殻を破ったり、描きどころはそこにあるのだし、もっとウェイトを置いたほうがいいです。前半はひたすら動かずにいて、怖がりな自分の気持ちも書いて、後半で一気に動かして、やらねば的な状況にもっていく等。
作中では展開に終始してなんとなく社会的に成功した感があるだけなので、心境の変化というお話にとって大事な要素が抜けていると感じました。

色々批判ばかりですが、褒め言葉よりも改善点のほうがプラスになるので書かせていただきました。

あっ、ハンバーガー食べるシーンは良かったです。紙が袋に入ってるとか、ちょっとした描写がお上手だなと思います。人間の心のリアルが書けたら、ネタがわいて湧いて…になるのでは。何作か読ませていただいてトータルの印象ですが、そんな風に感じました。

弥々丸
126.3.30.4

はいはい、わかったよ。

あんたがくっだらねー努力してるとこはわかった。
けどな、浅いんだよ。もっと、人間の深いとこまで入り込んでくるような小説を書いてみせろよ。

はっきり言います、これは自己満です。オナニーです。

オナニーならオナニーらしく、人の目につかない場所でやってくださいこのへんたいめ。

藤光
119.104.8.7

アフリカさま

一番に感想をいただけると思ってました。ありがとうございます。

>終始ぶれることなく集中して書かれたのだろうな~と、もしかしたら一気にとり憑かれたように書かれたのだろうなと感じました。

少しぶれているし、集中は途切れがち。非常な難産でした(笑

>ただ、贅沢を要求してしまうと――

アフリカさんの好みというのもあるのでしょうが、今作は「ぼく」の内心の物語に終始し、キャラが積極的に動き回るシーンを加えるつもりはありませんでした。
モニターを見ながら、Dとハンバーガーを食べるシーンがありますが、あれがこの小説を象徴するシーンと個人的には思っています。

>読み手に何も教えてくれないので多くの謎を残したままのラストに向かってしまう感覚です。組織の概要だけでも少し出すべきではなかったかな?

ここは私の好みと限界の出たところです。
筆力のなさから、そのシーンに至るまでの過程でも説明的な描写のオンパレードでして、その設定まで書いてしまうと小説に持たせたい「謎めいた感じ」が台無しになってしまうと考えて書きませんでした。
読みにくくてすみません。

>勉強になりました。

こちらこそ勉強させてもらってます。
読んでいただきありがとうございました。
これからもがんばります。

藤光
119.104.6.216

九七式中戦車・改さま

感想ありがとうございます。
いっぱい書いていただいて、なんだか恐縮。

>藤光さんのラスト、ラストになってないじゃん! 
三幕構成で言えばミッドポイントに差し掛かったとこですよ、これ。
これ完全版じゃない! 完結してないって!

実は、私が書きたかったことはここで終わりなんです。
この後、「ぼく」がなにをどうするかというのは、この小説では重要ではない。まあ、私がそう思ってるだけかもしれませんけど。

>ただ、んー。私の素直な感想としては、「続き読みてー!」なんです。
そんだけ面白い、ってことッスよ。

ありがとうございます。
とても、うれしいです。続きは無理ですけど、また、書きますのでよろしくお願いします。

>「ネットワークカメラ 顔認証」とか「中国 天網」とかでググってもらったらすぐ判明する事ですが、御作の設定は10年以上遅れています。

なるほど。
今作は、近未来の出来事として書いています。
「カメラ映像を人力で解析するのは技術的に時代遅れ」ということですね。
ただ、私は確信があって書いてます。「警察捜査は、いまだに映像解析を人力にたよっているのが大多数だ」ということを。

ただ、フィクションとしてのリアリティ、しかも未来の物語としてのリアリティを持たせようとするときに、「映像解析が人力ではリアリティがない」というのは、説得力があります。人の想像力というのは、常に現実の数歩前をいっているものだということを忘れないようにします。

また、書きます。
今回はありがとうございました。

藤光
182.251.189.193

ゆふなさきさま

感想ありがとうございます。

>プロの作品を読んでいる気分になりました。阿部和重の文体にそっくりの変態要素ありのハードボイルドタッチで、ミステリーの要素まであってスッゴク面白い!!!

ありがとうございます。
阿部和重、読んでないです。今度、読んでみます。面白かったというのは、とても嬉しいです。

>私の読みが浅いせいで謎が多いまま終わってしまった感がありまして。続きが欲しくなりました。

決してゆふなさきさんの読みが甘いわけではありません。私の書き方がイマイチなせいだと思います。もう少しなんとかしたいと思います。

ありがとうございました。
また、読んでください。

藤光
182.251.189.193

上松煌さま

感想ありがとうございます。

>「数行しか読まないでわかるか?」ってあなたはいうだろうけど。

わかってるなら、書かなければよろしい。

――とは別に、コメントを読んでも上松さんの言わんとするところが、どこらへんにあるのかさっぱり要領を得ません。

お義父さんのことは何か拙作と繋がりが??

>感覚と現状が違う気がする。

どこの感覚? なんの現状?

すみません、よくわかりませんでした。

藤光
182.251.189.193

阿南沙希さま

感想ありがとうございます。

>結末予想は、主人公は実は多重人格で、逗子一馬と同一人物、そして一連の出来事は主人公に犯した罪を自覚させるためのセラピーだった…という流れだと面白いかな〜

そりゃだいぶ違いました。

>やっぱり臨時職員の設定は苦しいですよ。

そうですか。
私も、やはりこのままがいいと思います。

>三課の仕事内容が最後まで曖昧でした。

わかりにくかったですか?

ストーカー・DV事案を始めとする恋愛感情等のもつれに起因する 暴力的事案、行方不明事案、虐待事案等の人身安全関連事案に対して(中略)生活安全部に新たに人身安全対策課を設置した。

――ネットにある兵庫県警の規定から抜粋しました。

作中の三係は、こうした部署のうち、映像解析により行方不明者等を探している係です。そうは読めませんでしたか。

>はじめて自分以外のもののために何かをすることを知った…これがまとめとしてもっとはっきり出ると良かった。

書き手としては、そこはポイントではないのです。「お仕事小説」ではないです。
論が散漫であることは、そのとおりで、だからこそ阿南さんにもうまく伝わっていないのだろうと反省しています。

>なんとなく社会的に成功した感がある

「ぼく」が社会的に成功してしまったように読めてしまったのなら、まったく書き手の意図するところではありません。
そもそも私は臨時職員から正職員に「昇格」するという感覚に馴染めません。

>あっ、ハンバーガー食べるシーンは良かったです。紙が袋に入ってるとか、ちょっとした描写がお上手だなと思います。

気づいてもらえましたか。
その部分は後から手を入れたんです。なかなか気の利いた表現になったと気に入っています。

ありがとうございました。
また、よろしくお願いします。

藤光
182.251.189.193

弥々丸さま

感想ありがとうございます。

>はいはい、わかったよ。あんたがくっだらねー努力してるとこはわかった。

ぶらぶらと散歩をしていると、いきなり通行人に殴り倒されたような気分です。私がなにかしましたか? たしかに「散歩」はしてましたが。

>浅いんだよ。もっと、人間の深いとこまで入り込んでくるような小説を書いてみせろよ。

小説は、「センス」という名のスコップを使って、「自己の経験」という名の地層を掘っていくと、やがて現れるもの。

ところが、私のスコップは、まだまだちゃちいので、今はまだ固い地層を掘り崩せないのだと思います。もう少し待ってください。

>はっきり言います、これは自己満です。オナニーです。

作中のDなら
「ここの小説は、大なり小なりみーんなオナニーの産物、後始末したティッシュ屑なんだからさ」
というでしょうね。

でも、そんなことは百も承知なんでしょ。

>このへんたいめ。

まるで、そこにDがいるみたいだ。

ありがとうございました。

弥々丸
221.22.130.5

はい、藤光くんも失格

藤光
182.251.189.193

なんか審査されてんの?

弥々丸
106.161.218.96

あんなのをあたしが書き込んだものと思える時点でマヌケだって言ってんです
おつかれさまです

藤光
182.251.189.193

えっ、そうなの。
まぎらわしー

夏端月
220.208.27.39

でしょ(偽物or本物も登場か?)対応にお取込み中ですが、前回に続き読ませていただいたので感想です。
前回、も一つだなと思ったのですが、本作(完)読ませていただいて、面白かったデス。
文章は言わずもがな構成にいたっても、なかなか読みごたえがありました。

感想欄を読んで、諸氏が指摘する細かな点(設定とか)は改良すべきだと思いました。
それとは別にあたしが思ったことは、この小説の「立ち位置」が中途半端なのではないだろうかということです。エンタメ? ブンガク? 藤光さんどっちにしたいのかなー? と思って。まあ、ブンガクエンタメそのどっちでもない、どっちも含むって分野もあるのですけど、本作は思い切ってそのどっちかに振った方が良いのではないかとあたしは思いました。
さすが藤光面白く読ませていただいた。 

藤光
182.251.189.193

夏端月さま

感想ありがとうございます。

>前回、も一つだなと思ったのですが、本作(完)読ませていただいて、面白かったデス。文章は言わずもがな構成にいたっても、なかなか読みごたえがありました。

ありがとうございます。
だいぶ苦労しました。

>感想欄を読んで、諸氏が指摘する細かな点(設定とか)は改良すべきだと思いました。

よく覚えておきます。

>エンタメ? ブンガク? 藤光さんどっちにしたいのかなー?

そのどっちも。
私は、いわゆるエンタメ小説を読むことに物足りなさを感じて、自分から書き始めたので、そういう意味ではブンガクを志向してる。

ただ、書いていて感じることは、「私は書いているうちに物語に流れやすい」ということ。とにかく書きやすいしワクワクする。そうするとエンタメの方が私に向いてるのかもしれない。

いまは単に、複雑な模様を織り込んだ文章が書けるよう練習しているところです。

>さすが藤光面白く読ませていただいた。 

また、面白いものが書けるよう頑張ります。
ありがとうございました。

水野
121.115.143.249

『ここにいる』読みました。

警察が主体をなすような小説(本作は必ずしもそうとは言い切れませんが、一応その部類としてカウントさせていただきます)はほとんど読まないので、先入観のない純粋な読書を楽しむことができました。私の所有する警察小説といえば『新宿鮫』くらいのものですが、文章がつまらないので序盤で断念したままです。それと比べたら、と言うと少々おこがましく聞こえるかもしれませんが、本作は小説として非常に「読ませる文章」だったと思います。集中して読むことができました。

以下は気になった点です。主人公である「ぼく」は「昭和荘」を職場としているわけですが、彼が位置しているのは二一〇号室です。ところで、「昭和荘」は「全室2K」「十室すべて」で構成されています。そうすると、一階には部屋が存在しないということになります。これは果たして狙ってやった設定なのか、私にはわかりませんでした。本編には直接関係のないことかもしれませんが、念のため。

夜の公園で、「ぼく」が稲爪という名の上司に木崎夏菜の映像データが入ったUSBメモリを渡す場面があります。ここでは単に、木崎夏菜は「家出人」として取り扱われていますね。ですが、他の方の指摘にある通り、この場面が物語上どういう役割を果たしているのか、いまいちはっきりしません。「778」、つまり逗子一馬に関する捜査への「つなぎ」の役割を果たしている、と言うのがせいぜいでしょうか。
しかし読み進んでいくと、「778」は「ぼくだけの仕事じゃなかった」ことが判明する。であればわざわざ、夜の公園で「ぼく」だけ個別に「778」の捜査を言い渡された理由が不鮮明になってしまうように感じられます。

知ろうと思えばすぐにでもその名前を知ることができたのに、あえて知ろうともしなかったK女学院高校の女の子も、役割としてはもう一つ足りない気がします。彼女は本編を通じてある意味「ぼく」の行動と感情を規制する役割を果たしていますし、彼女の存在が原因で、逗子一馬に関する「ぼく」の捜査は頓挫することとなる。「ぼく」とこの女の子が相まみえるのは結末部分においてですが、現状、よくわからない感じで終わってしまっています。
結局、彼女は「ぼく」にとって何だったのでしょうか。映像ではない生身の彼女を目撃したことで、「ぼく」にどんな心境の変化があったのでしょうか。思わせぶりでなく、主人公が抱えている潜在的な異常性含め、しっかりと書く必要があると思います。

しかしながら本作で何より重要なのは、自分が愛着を感じていた女の子が、映像を通して目の前で危険な目に合おうとしているにもかかわらず、自分の「監視とその情報提供」という役割に縛られてついに助けることができなかったという事実、しかし、自分のその役割があったからこそ、一人の女の子の被害を最小限に食い止められたのだという真実、この二つです。個人的に、主人公が結果として果たすことになったこの「正義」の部分を、もっと前面に押し出しても良かったのではないかと思います。

夏目 吉春
114.159.221.17

 藤光さまこんばんは。
 お名前は憶えておりますが、なにせ一年前前の事なのでどのような作品だったか忘れてしまいました。しかし、短い文章をつないでテンポよく展開される物語には、なぜか自然に引き込まれて行き、読了まで連れてこられてしまいました。前もこんな感じの作品だったのかもしれませんね。感想は上にも上がっておりますが「つづきは無いの?」です。
 ありがとうございました。

藤光
119.104.12.95

水野さま

感想ありがとうございます。

「警察小説」ではないですね。刑事の出てくるミステリとかは好きですが、警察小説は嫌いなんです……。ま、読んでくれる人がどうカテゴライズするかは、ひとそれぞれなんですけど。

昭和荘ですか……気になる人多いみたいですね。
「昭和荘」は、いわゆるアパートとか、文化住宅と呼ばれた昭和期に建てられた集合住宅をイメージしてます。木造モルタル二階建て、一階に五部屋、二階に五部屋、外階段があって、内廊下はなしです。各部屋は六畳間と四畳半の和室に台所と猫の額ほどのトイレ、浴室付。

木崎夏菜は、つなぎ以外の何者でもないです。
ただ、前回、序盤部分を投稿したときは、木崎しか出てこないので彼女にはそれなりの役割があったのです(このときは、この序盤のみで一作品のつもりで書いてます)が、今回、後半を付け足すと、序盤は単なる「前振り」となったので、木崎の役割が??となったのです。

序盤部分を書き換えなかったのは、「続きを書くといいながら、展開上の都合から藤光のやつ序盤を書き換えやがったな」と思われるのが、いやだったからです(笑


「778」が個別に渡されるのは、秘密の保持のためです。秘密工作員同士が、そ知らぬふりでベンチに腰を下ろし、すっとブツを受け渡す……。昔からある手口です。
ほかの三係メンバーにも、同様に手渡しされています。もちろん、各人が別々の場所で。


彼女については、書かなくていいと思っています。
書いてしまうと興ざめですが、「ぼく」が駅で「彼女」に遭遇する場面で、「ぼく」は自分のやっていることが現実と繋がっていたことを確認できたわけです。彼女も一応無事だったし。そこで「ぼく」がどう感じたかというのは……、書き手の企みとしては、『読み手が感じたことが、すなわちぼくが感じたことですよ』ということです。

なにも感じないよっていわれるなら、それまでの小説だってことです。残念ながら。
時間を無駄遣いさせてしまってスミマセンでしたってね。

最後の箇所、おおむね水野さんの読みどおりなのですが、私はいかなる意味においても「ぼく」の行動に「正義」と呼べる箇所はないと思いながら書いています。徹頭徹尾、彼は個人的に行動しているし、なにか社会的規範が念頭にあって行動したわけではない。ただ、単に「彼女に危害が加えられるのを何もしないで見ていられない」と感じたにすぎません。


「正義」って、どうしても社会性を帯びる言葉じゃないですか。
そうしたものは、どうしてもうさんくさいですから。

しつかり読んでいただけたようで、ありがとうございました。
また、よろしくお願いします。

藤光
119.104.12.95

夏目吉春さま

感想ありがとうございます。

ご無沙汰してます。
『ピグマリオンの腕』以来です。
あれは去年の12月のことだったので、ほんとうに一年ぶりですね。

去年読んでいただいた頃から、いまの書きぶりを意識し始めました。
当時も、いまも手探りですが、一年前よりだいぶ込み入ったことを書こうと挑戦しているつもりです。前のは、今作よりずっと読みやすかったはずです。

つづきは、ないんです。

ほかの方からもありましたが、この後の「ぼく」や「D」、「稲爪」なんかの話が読みたかったりするんでしょうか? 単なる社交辞令(ネットにそんなものがあるのか)?

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