作家でごはん!鍛練場
五目蕎麦

愛妻弁当

私の妻はなかなかファンキーだった。
出会いはそう、あれは発達低気圧のため、雨が横殴りに降る日だった。私が出張で他県からでもどった日、のちの私の妻となる女大学生は、どうせ捨てる安い傘なんて買いたくないという理由で、駅に隣接するバスターミナルで雨が弱まるのを待ちわびていた。茶色のスカートにベージュのカーディガンを羽織り、髪を肩まで落ろした彼女を私が訪ね見かねて、携帯傘を差し出すと一緒に入れという。そのまま私達は天国へ向けてゴールインするはずだったが、小さな傘はあっけなく強風で半壊し、ずぶ濡れになり私の汚い部屋へホールインワンした。
さておき、夫婦となり私の生活は豊かになった。昼食を除いては。
新婚生活、初出勤の会社の昼時。私はデスクにある資料を片付け、鞄から膨らんだ包みを取り出した。愛妻弁当である。となりのM男と向かいの席のY子がヒュー、ヒューと煽てる中、包みをほどくとヘッドギアをつけたようなアニメキャラ、ロックマンの絵が表れた。私は赤面する間もなく、一心不乱に銀のフタを取り外した。中には白米の姿だけがあった。となりで見ていたM男が、きっとオカズは別箱で渡し忘れたんだよといったので、私は強引に納得して、白米をたいらげた。
初日の愚行もあり、あの量では腹が減るという口実を設け、自身でビッグサイズの無地の紺色の弁当箱を購入し妻に手渡した。妻は可愛らしく、ニコッと舌をだした。私は安堵した。するとつかの間、妻は明日は何が食べたいかという。私は定番のノリベンを注文し、床についた。
明くる日の昼、窮屈な鞄から大きめのナフキンで包まれた箱を取り出した。前日の事情の手前、再び、M男とY子が絡んできた。二人とも白米しかまだ見ていないので、仕方あるまい。フタを開けると、きらきら光る白粒の群れの中央にちょこんと小さな味付けノリが1枚乗っていた。見事なノリベンであった。
その夜、私は妻に寄り添い、レシピを見ながらともに料理した。弁当の白米の比率が98パーセントの理由を考えた末、前日も初日も朝がパン、夜がカレーライス、うどん、というシンプルな食事が原因と睨んだ。今晩にオカズを余分に作れば、明日は安泰。
次の日の朝、私は朝5時に起きた時、妻がここ数日で一番せかせかとキッチンで働くのを見て感謝した。すまない、そう思いながらパンをかじった。トースターの熱が効きすぎたのか、気のせいか、ほんのり焦げ臭い匂いがした。
昼は自信があったため私からM男を誘った。弁当包を持ち上げると、前日よりも軽かった。白米の比率が減った証拠である。昨日はホウレン草のおひたしや、定番の卵焼などを夫婦二人して作った。二人してアーンなどと味見しあい、ラブリーな時を過ごしつくった合作である。箱を開けずとも中身は察しがつくが、ようやく弁当デビューに、気が高まる。そして箱をデスクに置いた瞬間、チャリっと何かが箱の中でなった。フタを開けると白米半分の横に100円硬貨が2枚入っていた。M男は、もはや失笑していた。
私はその夜、妻に不可解な現象の心意を問うた。すると妻は「ごめんなさい。朝、冷蔵庫から作りおきを出して温めたら焦げちゃってたの」という。
「あの200円は何だい?」そういうと、「別のオカズを用意する時間がなくって自分で買っていただこうかと・・・」
「何だそうなのか」と私は妻を愛らしく抱きしめた。
「ひとつ頼みがあるんだ」
「何ですか?」
「今度は500円にしてくれないか?」
「わかったわ」

そうして次の日の弁当箱の中身はハーフ白米に、500円という、あっぱれなものだった。

愛妻弁当

執筆の狙い

作者 五目蕎麦
49.98.167.233

諸事情であまり時間がとれないので、即席麺みたいなものです。狙いは特にないですが、とりあえず、書く練習です。スマホ投稿なので頭文字あきません、すみません

コメント

偏差値45
219.182.80.182

面白味はあるのだが、中味はない。そんな感じですね。
まあ、ファンキーな妻じゃ、しょうがないかな。
そもそもファンキーという定義がよく分かっていないのだけれども。
漫画『あたしンち』にも同様のストーリーはありますね。
やはり小説は漫画には勝てないのか。そんな気持ちになりました。

愛にすべてを
111.107.145.70

拝読しました。
新婚、いいですね。

【引用】
出会いはそう、あれは発達低気圧のため、雨が横殴りに降る日だった。私が出張で他県からでもどった日、のちの私の妻となる女大学生は、どうせ捨てる安い傘なんて買いたくないという理由で、駅に隣接するバスターミナルで雨が弱まるのを待ちわびていた。茶色のスカートにベージュのカーディガンを羽織り、髪を肩まで落ろした彼女を私が訪ね見かねて、携帯傘を差し出すと一緒に入れという。そのまま私達は天国へ向けてゴールインするはずだったが、小さな傘はあっけなく強風で半壊し、ずぶ濡れになり私の汚い部屋へホールインワンした。
【引用終わり】

一文が長く、わかりにくいです。一文一意(一文につき、意味を一つ)にすると、わかりやすいかと。
オチも、もう少しインパクトのあるものがほしいです。

すみません、好き勝手書きました。一緒にがんばりましょう。

五目蕎麦
49.98.167.233

>偏差値45様

漫画の脅威は考えたことがありますが、最近はあまり考えなくなっていました。ライトな文を書いたつもりですが、漫画のほうがおもろーといわれれば、確かに本作はきついなぁと思います。小説ならではの要素を出さないいけないと改めて認識した次第です。
感想ありがとうございました。


>愛にすべてを 様

出だしの文の意見、参考になりました。
オチはあまり深く考えていませんでしたが、このままでは微妙であるとわかりました。また再考いたします。
感想ありがとうございました。

カルネ
133.232.243.157

これはこれで面白かったです。
ただ、漫画に似たようなストーリーがある、というのは残念でしたねという感じです。
作者が読んでいなかろうと、読者が他にもこういうの読んだよ、という時はもう二番煎じ以外の何物でもなくなってしまうので…。
ただ、私はマンガの方を知らなかったので、面白く読めました。

後は、もし私が妻の立場だったら、この弁当は妻が作るものと思っている昭和の男にイラっと来るかな(笑)。
でもそれを態度には出さずに、五目蕎麦さん描くところの料理下手のかわいいかわいい妻を演じて、一緒に作るようにして、最終的には自分の弁当は自分で上手に作れる夫への改造ミッションにするかしらね(笑)。

五目蕎麦
49.98.167.233

>カルネ様

オチというか話を膨らませた場合のご意見参考になります。
家事については意外と夫が良かれと思い手伝うと妻は家庭の役割、つまりできない女と感じ、かえって憤慨したり、あるいは日々の日課のリズムを狂わされ邪魔と思うこともあるようです。難しいものです。
感想ありがとうございました。

めっし
126.74.66.3

始まり方に、とてもセンスを感じました。

いきなり「ファンキー」という言葉を使われることで、「なんだこの文章!?」と、惹き込まれました。その突拍子の無さから続く具体的な言葉の数々、茶色のスカートやロックマンの絵、それらの描写がとても丁寧で、そのギャップにまた魅力を感じました。

物語というよりも、文章そのもので読ませる筆力のある人、というのは、こういうことをいうんだなと、感心してしまいます。

あと、「M男」とか「Y子」とかは、星新一さん的イズムも感じ、星さん大好きな僕にとってはまたそこで魅了されました。

素晴らしかったです。

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