作家でごはん!鍛練場
紅葉カナ

little my complex

「須藤君って本当に料理上手だね。愛美、感動しちゃった」
「大げさだよ。ただ俺の家、昔から両親が仕事で遅いから、俺が代わりに弟たちの飯をつくってただけだよ」
「次の調理実習も、一緒に頑張ろうね」

 愛美は自然に須藤の腕に自分の腕を絡ませ、上目使いに須藤を見上げた。あれが女子力というものなのかと思わず感心してしまった。

 私と須藤はいわゆる彼氏彼女の関係にあるが、愛美に対して嫉妬などというものは感じない。私みたいな不細工な女よりも、愛美のような可愛らしい子が彼女の方が須藤も嬉しいだろう。

「何あれ、愛美のやつ、ぶりっこしちゃって本当にむかつくわね。いいの? 美咲の彼氏とられちゃうわよ」

 真理恵が二人に気づかれないように、声を抑えて言った。
 私と須藤が付き合っているということは、真理恵以外誰も知らない。私が須藤に誰にも言わないでくれと頼んだのだ。だから、学校では私も須藤もほとんど会話をしない。しかし、中学からの親友である真理恵にだけは話しておいた。でないと、いろいろと不都合があると思ったからだ。

 愛美は私と須藤の関係を知らないのだから、愛美には何の非もない。

「愛美ちゃんは、須藤君のことが好きなのかな」

 須藤は照れているのか、さりげなく愛美の腕をほどこうとするが、愛美はさらギュッときつく抱き着いている。その仕草が、女の子らしくてとても可愛い。

 調理実習は男女混合の五人の組で行われる。グループのメンバーは生徒たちの間で決めることになっている。事前に、須藤から同じグループにならないかメールで誘われたが、もちろん丁重に断った。華やかな男は華やかな女と、地味な女は地味な男と組むべきだ。私と須藤では、釣り合いが取れない。

「好きかどうかはおいといて、あれは間違いなく狙っているね」

 それはつまり好きだということではないのだろうか。よく分からないが、私には好都合だ。須藤には私と別れてもらおう。始めから、乗り気ではなかったのだ、須藤と付き合うことは。

 ただ断りづらくて、なんとなく付き合うという形になってしまっただけだ。休日には一緒に出掛けたりもするが、一緒にいればいるほど須藤との格差に申し訳なくなってきたところだ。

 いまだに、あの告白はドッキリだったのではないかと疑っている自分がいる。問題は、私から別れを切り出すと、須藤が私に振られたということになってしまう。須藤の方から、別れを持ちかけてくれないだろうか。
 須藤も愛美のことを好きになってくれればいいのだが。

「私ガツンと愛美に言ってこようかな……あっ、やばい。こっちに来る」

 見ると愛美が可愛らしく須藤に手を振って別れながら、こちらに向かってくる。私たちは慌てて近くの女子トイレに駆け込んだ。私たちを気に留めることもなく、上機嫌な愛美がスキップでも始めそうな足取りで、すぐ横の廊下を通りすぎていった。

 私と真理恵は声を出さずに笑い合った。
 すると、ピロリンとスマートフォンの鳴る音がした。確認すると須藤からのラインが来ていた。そのことを伝えると、真理恵が一緒になって覗き込んできた。

『今日、一緒に帰らない?』

 普段なら何かしらの理由をつけて断るところだが、真理恵が痛いくらいの視線で、何か訴えてくる。

 真理恵には、普段から私の須藤に対する接し方を注意されている。鋭い視線で見つめられること5秒、私は覚悟を決めた。
 真理恵には勝てない。

 私は『いいよ』と返信をした。するとすぐに既読が付いたかと思うと、まるで誕生日を祝うかのような可愛らしい、天使が舞っているスタンプが送られてきた。

『部活が終わったら連絡するよ。たぶん六時頃になる』

 再び須藤から連絡がきた。須藤はバレーボール部だ。私は帰宅部。六時まで図書館で時間をつぶすか。一体何の用なのだろうか。別れ話なら願ったり叶ったりだ。

 私がスマホの画面をじっと見つめていたからなのか、それを見て何を勘違いしたのか真理恵がにやにやしながら私のことを肘で突いてきた。

 教室に戻ると半分以上の人たちはいなかった。まだ、昼休み中だから当然だ。教室で女子たちが賑やかに会話をしている中で、一人机に向かって黙々と何かの分厚い問題集を解いている井上の姿だけが異様に浮いていた。

 黒縁の眼鏡をかけていかにもインテリという感じだ。無愛想というほどではないが、井上は普段から他人とつるんだりはせず、少し冷めているところがあるのでクラスでも浮いた存在だ。彼のことをガリベンと馬鹿にするクラスメイトも多い。

 私も社交的な方ではないが、井上と違い人間関係に歪みが生じるほどではない。

「美咲、大丈夫だった?」

 教室の角の席に三人女子が集まっていた。来い来いというように手招きされる。大丈夫というのは、私が今日の調理実習で、包丁で指を切ってしまったことに対してだろう。周りの女子が軽やかな手さばきを見せる中で、不器用な自分が恥ずかしかった。

「全然大丈夫だよ。一応、消毒してきてもらった」

 絆創膏の張られた指を見せながら言う。大丈夫という割には、すでに血が滲み出てしまっていた。まるで自分の不器用さをアピールしているようで、なんともやりきれない気持ちになる。

 須藤がどれほどの料理の腕前かは知らないが、私より上なのは間違いないだろう。というよりも、私がこのクラスで一番の下手くそなのではないだろうか。

「私、料理下手だから、調理実習の日は憂鬱だよ」

 調理実習を終えるたびに、指の傷が増えていく。先週は鍋の蓋で軽く火傷をしてしまった。冷凍庫の中にある保冷剤で冷やしていた時に、須藤と目があった。

 恥ずかしさから、私はすぐに須藤から目を反らしてしまった。須藤に申し訳なかった。こんなポンコツな、まともに料理もできない女が彼女で。

 火傷したその日、調理実習が終わると同時に須藤から『大丈夫?』と連絡が来た。大丈夫だと返信しておいたのに、須藤はわざわざ昼休みの間に保健室に火傷に効くクリームをもらいに行ってくれたのだ。

 須藤は良い人だ。
 須藤は顔も整っていて、かっこいいと思う。性格も良い。女子からも人気だ。だからこそ、私のような女が彼女ではいけないと思う。せめて顔が可愛いとか、頭がいいとか、運動ができるとか、何か一つでも私に良いところがあれば良かったのだが、驚くほどに私には何もない。

「あたしは、普通の授業より、調理実習の方がいいけどな。楽しいじゃん」

 他のみんなも真理恵の意見に賛成のようだ。みんな料理が上手で羨ましい。私は、いつもみんなに迷惑をかけてばかりでいつも申し訳ない気持ちでいっぱいだ。
 その後も、しばらく調理実習についての話題で盛り上がった。しかし、突然なんの偶然なのか須藤に関する話題が出てきた。

「須藤君って料理上手だよね」

 思わず、心臓がどきりと飛び上がる。真理恵がこちらをからかうような目で見てきたような気がするが無視する。

「将来、いいお父さんになりそうだよね」

 実は、私は須藤がそれほど料理が上手いのかは知らない。班の席が遠いこともあるが、なんとなく須藤とだけはいつも視線を合わせないようにと気を使っていた。

「須藤君かっこいいよね。クラスで一番だと思う」
「えー、私は高橋君の方がかっこいいと思うな。今度のバスケの試合応援に行くんだ」
「そういえば、須藤君に彼女がいるって噂知ってる?」

 肩が飛び上がってしまった。不自然に思われなかっただろうか。ここは平静を装はなくては。

「へー、そうなんだ」

 少々ぎこちなかった気もするが、誰も私の言動を気にも止めている様子はないので、大丈夫だろう。真理恵以外のみんなだが。

「うん。隣のクラスの子が先週、隣町で須藤君が女の子と歩いているのを見たんだって」

 先週ということは一緒に映画を見に行った時のことだろうか。隣町とはいえ、やはり駅周辺は危険だったか。ひょっとして私だとすでにばれているのか。

「うちの高校の子? それとも他校の子?」

 手から、嫌な汗が溢れてくる。

「それが私服だったし、相手の子、帽子被ってて顔は見えなかったらしい」

 良かった。私だということはばれていない。今度からはもっと深く帽子を被ろう。

「ショックだな。私須藤君のこと好きだったのに」

 そうだったのか、智恵。かっこいいとはよく言っていたが、好きだとは初めて聞いた。なんだか、智恵に対しても申し訳なくなってきた。智恵、ごめん。

「でも、須藤君なら彼女いて当たり前か」

 良かった。智恵はあまりダメージを受けてはいないみたいだ。

「でも私、愛美あたりが怪しいと思っているんだよね。ほら、最近よく一緒にいるじゃん」

 え? そうなの?

 里美が内緒話をするように、声を落として言った。
 愛美の名前が出たとき、驚いたけどすぐに急に肩かた力が抜けていった。やっぱりなと、不思議と落ち着いた気持ちになれた。

「愛美か。あんなぶりっ子のどこがいいんだろう?」
「あたし、愛美嫌い。あたし愛美と掃除当番一緒だけど、いつも掃除サボって男子とおしゃべりばっかりしているんだもん」

 常々、女という生き物は怖いと思う。愛美は人気者だ。明るくて、よく気が利いて、可愛くて、クラスのほとんどの男子は愛美に憧れているだろう。もちろん、女子からも人気だ。学校では、いつも友達に囲まれている。

 しかし、光が強ければ、その分影の部分も濃くなってしまうのか、たびたび本人のいないところでは悪口を言われているようだ、主に女子から。しかし、その内容というのが、やれぶっりこだとか、やれ彼氏が愛美のことを好きになっただとか、要約すると結局は愛美が可愛すぎることが問題なのだということだろう。

 愛美くらい可愛かったら、私も自信を持って須藤君と対等に付き合えたのに。しばらく、愛美に関する悪口がみんなの口から飛び交っていた。私は、愛美を悪く言えるほど、自分が優れた人間だとは思えない。かといって、皆を注意できるほど勇気のある人間ではない。

 そろそろ愛美本人が帰って来てしまうのではないかと、ただひたすらに拳を握りしめてびくびくと昼休みが終わることを祈っていた。
 
 そろそろ私も何か発言すべきかと考えていたら、急に真理恵が人差し指を口に当てて、静かにもポーズをとった。いくつかの机を使って、皆で輪になるようにしていたので気が付かなったが、どうやら愛美が帰ってきたらしい。窓際で席だし、小声で話していたため愛美には聞こえてはいなかったと思うが、罪悪感に押しつぶされそうになる。

 私の心中とは反対に、愛美はいまだにニコニコと楽しそうな表情である。早速何人かの男子が愛美に声を掛ける。愛美の周りだけ、まるで春が到来したかのようにふわふわと暖かな空気が流れている。あんなに可愛かったら、人生幸せだっただろうな。

 愛美のことを見つめていたせいか、愛美と目が合ってしまった。それだけなら、良かったのだが、なぜか愛美がこちらに向かって進んできた。やはり悪く口を言っていたのがばれたのだろうか。

「椎名さん」

 私の名前が呼ばれた。びっくりした。私の名前、覚えてくれていたんだ。隣の真理恵が少し険しい目で愛美を見つめているように見えたのは私の気のせいに違いない。

「これ、調理室に忘れてたよ」

 差し出されたのは、私の名前が書いてある家庭科の教科書であった。そういえば、見やすいようにと、教科書をすぐ近くの棚の上に乗せておいたのをそのままにしてしまった。それをわざわざ届けてくれるなんて、愛美はなんていい人なのだろう。

「持ってきてくれたんだ。ありがとう、愛美ちゃん」

 里美や智恵から「美咲は天然だからな」と言われてからかわれた。忘れ物と天然は関係ないと思う。真理恵や愛美までも私のことを笑ってきた。

「ねえねえ、愛美」

 里美が愛美に対して小さく手招きした。先ほどまで愛美と悪口を言っていたというのに、そんなことは一ミリも感じさせない口調である。なあにと愛美は顔を近づけてくる。

「須藤君と付き合ってるって本当?」

 私たちだけに聞こえるくらいの小さい声だった。しかし、私の耳にははっきりと届いた。

 里美だけでなく、智恵や歩実も興味深々と言った面立ちで愛美の返答に注目している。私は、自分で自分が一体どういう表情をしているのか分からない。でも、胸がかきむしりたいほどにざわざわと騒いでいる。真理恵は一瞬私のことを見たかと思うと、すぐに愛美に視線を戻した。

「えー、そんなこと恥ずかしくて言えないよ」

 愛美は顔を真っ赤にさせて、両手を頬に当てて悶ええていた。そして、上手にウインクしながら『秘密』とだけ言い残していってしまった。みんなの口から歓声が挙がった。他の生徒たちが一体何の騒ぎだというようにしてこちらを見てきた。その中の一人に須藤がいた。もうほとんどの人たちが教室に戻っていた。その中で、真理恵だけが一人唖然とした表情で愛美の顔を見つめていた。

 愛美ははっきりとは言わなかったが、愛美の様子からして、愛美と須藤は付き合っているようだ。私も須藤と付き合っている。
 あれ? 混乱してきた。

 愛美は可愛い。誰に対しても優しい。頭もいい。お菓子作りも上手で、よくクラスに差し入れをくれる。須藤が好きになるのも当然だ。

 対して私はどうだろうか? 顔は不細工。人間不信。ぽっちゃり体型。体育、家庭科は保健室の常連。テストは毎回赤点ギリギリ。

 愛美とのこの落差はなんだろう。考えていて悲しくなる。須藤もさぞがっかりしただろう。

 そもそも、私が須藤に告白されたというのは、私の妄想の中のことだったのかもしれない。それとも、須藤は何かの罰ゲームで私に告白の真似をしたのかも。もしもそうなのだとしたら、今までそんなことに須藤を付き合わせてしまって申し訳なかった。
 私から須藤に一言謝るべきだろうか。

「そろそろ戻ろうか」

 もうすぐ午後の授業が始まってしまう。席を立とうとすると真理恵が私の手を強く掴んで、私の動きを止めた。

「後で、話がある」

 耳元でそう囁くとすぐに行ってしまった。誰に対してなのか、その背中から真理恵の怒りが感じられた。

 後でという割には、五限の授業が終わっても真理恵は自分の席でじっと怖い顔をしていた。私が何を言っても、「今、考え中だから」としか言って、まるっきり相手にしてもらえなかった。

 周りの人たちには、まるで私たちが喧嘩したかのように映っていることだろう。真理恵のことだから、須藤が私と愛美に二又をかけていたとか深読みしているのだろう。二人は今も楽しそうに昨夜のサッカーの試合について盛り上がっているようだ。誰もが認める理想のカップル。真理恵の怒りの矛先があの二人の笑顔に行くことだけは何としても避けなくてはいけない。

 それが、私にできる唯一のことだ。私が二人を暖かく見つめる傍らで、真理恵はまるで二人を観察するかのような冷ややかな目で見据えていた。

 最後の六限目が終わると真理恵が私の腕をぐんぐんと引っ張っていった。背後からざわめきが聞こえた。側から見れば、私が真理恵に無理やり連れ去られている図だ。

 六限のあとは掃除とホームルームがある。真理恵はイスを机の上に上げる時間もくれなかった。特に私は、今週は教室掃除の担当なのに、これではみんなに迷惑をかけてしまう。私の訴えなどお構いなしに、真理恵はなおも私の腕を引いていく。

「愛美の話どう思う?」

 三階の渡り廊下に来ると、ようやく真理恵は私の腕を放してくれた。本当に人気のないところに連れてこられてしまった。

「どうって、どういうこと?」
「愛美が須藤と付き合っているって話よ」

 私の理解力のなさにイラついているのか、真理恵が声を荒げて言った。厳密にいえば、愛美自身がはっきりと須藤と付き合っていると明言したわけではない。

「愛美ちゃんと須藤君ならお似合いのカップルだと思うよ」
「なんで二人のこと応援しているのよ。悔しくないの。そうじゃなくて、愛美の話が本当だと思うかどうか聞いているの」

 ますます怒られた。真理恵のイライラはマックスに達しているようだ。

「愛美ちゃんが嘘をついているってこと?」
「そう」
「愛美ちゃんは嘘をつくような人ではないと思うよ」
「それは美咲が能天気だからそう思うだけで、あいつは腹黒だって今日の昼に智恵だって言っていたじゃない」

 これには私も少しカチンと来た。能天気とはひどい言われようだ。これでも、人並み以上に物事を考えているつもりなのだが。それに愛美のことも悪く言わないでほしい、彼女は私の憧れ存在だから。

「第一、そんなこと嘘ついて愛美になんの得があるの。須藤君に確認したらすぐにばれちゃうことじゃない」
「じゃあ、美咲は本当に須藤と愛美が付き合っていると思うの」
「……」

 答えられなかった。須藤が嘘をつくような人でないことはよく知っている。だからと言って、愛美が嘘を言うとも思わない。愛美は腹黒とかぶりっ子とか陰でいろいろと言われているが、こんな私にも優しくしてくれる。さっきだって、わざわざ教科書を届けてくれた。

 明るく可愛くて人を引き付ける魅力のある愛美なら須藤との釣り合いもバッチリだ。
 昼のことを思い出す。腕を組む二人はまるで本物の恋人同士のようであった。愛美のような可愛い子に好意を寄せられて好きにならない男なんていないだろう。

「美咲は、須藤からずっと騙されていたことになるんだよ」

 騙されていたというのは少し大げさではないだろうか。仮に愛美と須藤が付き合っていたのならば、それはそれで喜ばしいことだ。悔しいなんて微塵も思わない。須藤が私と愛美と同時に付き合っているのだとしても、きっと何か理由があるに違いない。

 須藤とは二年になって初めて同じクラスになったため、彼の人となりを詳しく知っているわけではない。だが、普段の様子を見る限り、彼は誰かを騙して楽しむような人ではない。

「今思うと、全部私の妄想だったのかなって」

 そもそも須藤のようなかっこいい人が、私なんかを好きになるはずがなかったのだ。自分の勘違いに今頃気づくとは、自分でも情けなくなるくらいの鈍さである。須藤との恋人気分を味わえただけでもよしとしよう。

 パチンと音がしたかと思うと、真理恵に思い切り頭を叩かれてしまった。

「ヘラヘラするな。もういい、私が須藤に確かめて来る」

 慌てて真理恵の腕を捕まえる。

「止めてよ、真理恵」
 
 これ以上、須藤に迷惑をかけてしまうなど、恥ずかしくて耐えられない。全体重をかけて真理恵を止める。真理恵は私を引きずってでも須藤の元へ行くつもりらしい。逆にこっちが、真理恵に引きずられつつある。

 このままでは振りほどかれてしまうと考えていると、私のポケットからラインのメッセージを受信したことを示す音が鳴った。それに真理恵も気づいたのか、抵抗する力を弱めた。私は腕も力を弱めても真理恵が逃げないことを確認してから、スマホを手に取った。

『大丈夫?
 西口と何かあった?
 椎名が掃除をサボるなんて珍しいって
 みんな心配している。
 俺でよかったら、いつでも相談して』

 須藤からであった。須藤の掃除場所は、確か多目的ホールであったはずだが、わざわざ教室まで見にきてくれたのだろうか。一体、どこまでいい人なのだろうか。

「これでも、妄想だっていうの?」

 真理恵も須藤からのメッセージを覗いていたようだ。告白される以前は、須藤と個人的に連絡を取り合うようなことはなかった。須藤に告白されたのは、もはや疑いようのない事実だ。

「これは私の考えだけど、須藤は二又なんてしてないと思う。愛美が勝手に言っているだけだよ」

 須藤からのメッセージを受け取ってもなお、心が落ち着かないのは何故だろう。愛美に対しても真理恵に対しても、私が須藤の彼女だと自信を持って言うことができない。私は何度も須藤からのメッセージを繰り返し読んだ。

「もっと須藤のこと信じてあげなよ。今日、須藤と一緒に帰るんでしょ。須藤の気持ちをちゃんと確認しておくのよ。今回は見逃してあげるから」

 真理恵は私を置いてすたすたと先を行ってしまった。
 でも、すぐにくるりと振り返った。

「ないとは思うけど、もしも須藤が美咲のことを騙していたのなら、真っ先に私に言いなさい。私が代わりに須藤のことを殴り飛ばしてあげるから」

 真理恵は中学の時からこうだ。ドジで鈍間な私のことをいつもそばから見守っていてくれた。真理恵の厳しさは私への優しさの証だ。いつも真理恵には感謝している。でも私は、須藤は愛美と付き合うべきだと思う。

 真理恵と別れた後、急いで教室に戻ったがすでにほとんどの掃除は終わっていて、あとは机から椅子を下ろすだけであった。みんなに平謝りしてから、作業に加わった。

 みんな私を責めるどころか、逆に心配されてしまった。真理恵と喧嘩をしたという噂がクラス全体に広がっていた。教室に入ってきた須藤が何か言いたそうな様子だったが、周りに人もいたためか黙ってそのまま席についた。

 ホームルームを終えると、大半の生徒は意気揚々と教室を後にした。その中の一人に真理恵もいる。真理恵はコーラス部だ。真理恵は歌が上手い。ちなみに私は音痴だ。カラオケに誘われても、全力で拒否し続けてきた。教室にはまだ何人か生徒が残っている。今日は須藤と一緒に帰ると約束したため、私は図書館で勉強をして時間を潰していた。

『六時にいつもの場所で』

 須藤からの連絡がきた。私は荷物をまとめて靴を履き替えるために昇降口へ向かった。バレー部が早めに終わるときは、何度か須藤と一緒に帰ることがある。待ち合わせはいつも、学校の裏門脇の像の前だ。正門と違い、裏門はいつも封鎖されている。また、周りには古い民家がいくつかあるだけなので人の出入りはない。

 学校では付き合っていることを秘密にしたいという私のために、須藤が提案してくれた場所だ。須藤のいる体育館は裏門からは距離があるため、いつも私の方が先について須藤を待つことになる。そしてその二、三分後に須藤が小走りでやって来る。以前、慌てなくていいよと言ったところ、須藤は早く会いたいからとはにかみながら言ってくれた。これには流石に赤面してしまった。

 図書室を出るとまたスマホが鳴った。須藤からだ。

『教室に忘れ物したから少しだけ遅れる』

 一瞬代わりに取って来てあげようかと考えたが、すぐにその考えは振り払った。この時間ならまだ教室に残っている生徒もいるだろう。そんな中で、須藤の机やらロッカーの中を漁る言い訳が思いつかない。

 スマホをポケットにしまい直し、そのまま階段を降りていく。
 ひょっとしたら須藤と昇降口で鉢合わせしてしまうかもと考えていると、昇降口のところで甲高い女の声が聞こえてきた。

「こんなところで会えるなんて偶然だね。どうしたの? 部活終わったの」

 愛美の声だ。そう思うと同時に、実際に手に鞄を持った愛美の姿が見えてきた。どうやら愛美は下駄箱にいる人物に話しかけているようだ。その人物に心当たりがあり、嫌な予感がする。

「ああ、ちょっと教室に忘れ物しちゃって。安西さんはもう帰り?」

 やっぱり須藤の声だ。魔法にかかったように足がピタリと止まってしまった。

「一緒に帰ろうよ、ここで待っているからさ」

 愛美が嬉しそうに目を輝かせている。愛美は本当に須藤のことが好きなのだろう。太陽のような笑みを見ていると、自分の存在が愛美の光に消えてかき消されてしまいそうな気持になる。

「いや……今日はこのあと用事があって、人と待ち合わせしているんだ」
「えー、つまんない。それって誰と? 愛美も一緒に行っちゃだめ」
「……とにかく今日はだめなんだ」

 愛美が駄々をこねていると、上履きに履き替えた須藤が出てきた。

「待たせている人がいるから、急いでいるんだ。ごめんね」

 須藤が早口に、時計を気にしながら言った。須藤の言う、待たせている人とは私のことだろう。2人の並んだ姿を見ると、急に自分が場違いな存在に思えてきた。ひとまずどこかに隠れよう。そう思い、回れ右をしたところで、愛美に呼び止められてしまった。

「あれ、美咲ちゃん?」

 再び足が止まる。えっと須藤が驚きの声を上げた。背中に二人の視線を感じる。ここまま行ってしまえば、二人のことを無視したことになるだろう。できれば人違いのふりをしたかったのだが、私は覚悟を決めて、振り返った。
「やっぱり美咲ちゃんだ」
「……うん」

 昼間は苗字で呼んでいたいたのに、もう下の名前呼んでくれた。こんなにも自然に相手との距離をつめるなんて、愛美は本当に凄い。私にはとてもできない。

 愛美が小走りで私の方に来たかと思うと、そのまま抱き着いてきた。いい匂いがした。須藤もゆっくりとこちらに歩いてきた。そして、申し訳なさそうな表情をしながら手を合わせてごめんのポーズを取った。愛美は須藤に背を向けているため、そのことに気づいていない。

「聞いてよ、美咲ちゃん。須藤君がね、愛美と一緒に帰ってくれないの。もうこんなに暗いのに一人で帰れって言うんだよ。ひどいよね」

 愛美がしくしくと泣く真似をした。

「いやだから、約束があるんだって」

 須藤が慌てて、自分の言い分を述べた。私との約束がなければ須藤は愛美のお願いを聞いてあげていたのだろうか。なおも愛美は泣きまねを続けている。

「愛美この間、痴漢にあったから一人じゃ怖いの」

 愛美が痴漢にあったとは初耳だ。いつのことかは知らないが、今までそんな素振りを見せることなく気丈に振る舞っていたのか。可愛くて羨ましいと思っていたが、可愛いとそういうことに狙われやすのだろう。

 始めて自分が不細工で良かったと思った。私が男なら、私のような女は狙わないだろう。事実、今まで痴漢にあったことなど一度もない。須藤が駄目なら、私が一緒に帰ってあげようか。でも、女の私ではいざというとき戦力になれない。

「ねえ、美咲ちゃんからもお願いしてよ」

 やはり男の方が安心か。須藤は約束があるといっていたが、私との約束だろう。なら、一緒に帰るのは別に今日である必要はないだろう。もし、急を要する話なら、わざわざ放課後まで待ったりはしないはずだ。

「可哀想だよ、須藤君。一緒に帰ってあげなよ」
「え、でも……」

 遠回しに今日の約束は中止にしましょうということを伝えたかったのだが、須藤には伝わらなかったようだ。何かを言いかけたまま、唖然といった表情で私のことを見つめた。ちょっとの間があいて、私の考えが伝わったのか、分かったよとかすれた声を縛り出した。

 須藤の言葉を聞いた瞬間、やったーと愛美が飛び跳ねて喜んだ。よほど今まで不安だったのだろう。愛美が安心して帰れるといいな。須藤が微妙な顔をしているのは、私への罪悪感だろうか、それとも愛美と帰れることへの照れ隠しだろうか。

「なら、椎名もい……」
「美咲ちゃん、こんな時間までいるなんて珍しいね」

 須藤の言葉と、愛美の声と重なった。

「何をしていたの?」

 ここで須藤のことを待っていたというのは言いづらい。2人が付き合っているかの真偽はともかく、そんなことを言えばきっと愛美を傷つけてしまうことになるだろう。この2人のことを邪魔してはいけない。

「わたしは、真理恵と一緒に帰る約束をしていて……」
「そうなんだ、二人とも仲直りできてよかったね」

 喧嘩していたわけではないが、そのことを私の日本語力とコミュニケーション能力ではうまく訂正できないため、曖昧に笑って誤魔化す。

「じゃあね、美咲ちゃん。気を付けて帰ってね。ほら、早く忘れ物取りに行こう」

 愛美ちゃんが手を振ってくれたので、私も手を振り返す。私なら痴漢にあう心配もないというのに、それでも心配してくれる愛美はやっぱり優しい。愛美はすぐに須藤の腕を引っ張って階段を上って行った。須藤がまだ私のことを見ていたので私は2人が見えなくなるまで手を振り続けた。

「……帰ろう」

 残ったのは静寂だけだった。外はもう真っ暗だ。

 咄嗟に真理恵の名前を出したが、ここ最近はコンクール前で忙しいらしい。今もまだ練習中かもしれない。

 真理恵は今頃、私と須藤が一緒にいると思っているだろう。今ここで真理恵に会えば須藤とのことを問い詰めるに決まっている。今日は一人で帰ろう。

 夜道を一人ぽとぽと歩く。昼間はどうってことのない道だが、夜になるとやたらに電柱の影や、動物の鳴き声が気になって仕方がない。
 痴漢よりも幽霊の方が怖い。痴漢は走れば逃げられる気がしないでもないが、幽霊からは逃げられない。

 私はよく映画を見るが、ホラー系のものは安心した瞬間に、ドンと幽霊が現れる。あれはあの後、黄泉の世界に連れていかれてしまうのだろうか。それとも気絶して目が覚めれば終わりなのだろうか。
 
 須藤と帰るときはこんな不安な気持ちになることはなかった。ただ一緒におしゃべりをしていれば、いつの間にか家の前まで来ていた。最近では須藤の自転車の荷台に乗せてもらうこともある。頬に当たる冷たい風とは対称に、須藤の背中は暖かく、そして心地良かった。

 愛美も今頃、その温もりを感じているだろうか。愛美の家は私や須藤とは反対だった気がするが、それでも送ってあげる須藤はなんて優しい人なのだろう。須藤だけではなく男の人全般がそういうものなのだろうか。私は須藤以外の人と付き合ったことがないので詳しいことは分からない。

 気が付けばいつも須藤のことばかり考えている。須藤はとてもいい人だ。だけど、須藤を信じることができない。それは、須藤がいけないのではない。過剰なまでに、私は自分に自信がないのだ。

 スクールカーストというものに当てはめるのならば、須藤は上位。私は下、よくて中間層の下といったところだろうか。もしも須藤が、運動も勉強もできなくて、顔も不細工だったら良かったのに。そうすれば、もっと気軽に須藤と付き合うことができたのに。

 今日は星が綺麗だ。初めて、須藤に告白をされたときもこんな星の綺麗な夜だった。

 あの日は確か、委員会の活動が長引いて帰りが遅くなったのだ。校門を出たところで、須藤に呼び止められた。須藤は部活の帰りだった。須藤の周りには数名の知人がいたにも関わらず、女の子が夜道を一人で帰るのは危ないと言い張って私と一緒に帰ってくれたのだ。自転車の荷台に乗るように勧められたが、部活で疲れている須藤の足腰にこれ以上の負担をかけるのは申し訳なく思い、その旨を伝えて断ったのだが、突如須藤が噴き出して笑い始めたのだ。

 結局、徒歩の私に合わせて須藤を歩かせることになってしまった。それでも、須藤は嫌な顔一つ、むしろ終始楽しそうに私に話かけてくれた。だから、私も自然と笑顔になれた。

 私は、女の友達は何人かいると自負しているが、男となると友人といえるほど親しくしている人はいなかった。高校二年生にして、初めて男の友人ができるかもしれないと須藤に期待を寄せ始めていた。

 だからこそ、須藤に好きだと言われたときは、頭を瓶で殴られたようなショックを受けた。家の前につくと、須藤は急に真面目な、だけどどこか照れているような顔つきになった。そして付き合ってくれと言われた。私は、あまりに突然のとこに、だけど何か言わなくちゃと思うものの、何を言えばいいのか分からずに、ごめんなさいと頭を下げて、家に逃げ込んでしまった。

 家に入ると、途端に腰が抜けたのか、すぐにその場にへたり込んでしまった。扉のすぐ向こうに須藤がいると思うと、金縛りにあったかのように手足の自由がなくなった。

 須藤のようなクラスの人気者が私のような陰気な人間に告白などするはずがない。これは何かの間違いだ。そうだ、これはきっとドッキリなのだ。どこかにカメラが仕掛けてあり、私の反応を見て笑うつもりなのだ。

 中学生の時にも、罰ゲームで適当な女子に告白をするということを男子がやっているのをみた。そうだとしたら、須藤に悪いことをしてしまった。あれでは須藤がまるで私に振られたみたいではないか。須藤のプライドを傷つけてはしまわなかっただろうか。明日あたりにでもきちんと謝罪しよう。須藤が、私に振られた男として不名誉なレッテルを張られていたら申し訳ない。

 しかし、謝るといっても、自分から男の人に話しかけるのは気恥ずかしい。明日学校に行ったら、クラスのみんなが教室にいて、須藤がドッキリ大成功のプラカードを持って出てきてくれたら、本気にしちゃうところだったと、軽く笑い飛ばしてすべて解決することができるのだが。

 そういえば、私の反応はドッキリ的にはどうだったのだろうか。面白味のない反応で、皆を興ざめさせはしなかっただろうか。

 翌日、期待を込めて教室のドアを開けたが、プラカードを持っている人はいなかった。須藤を含むまだ半数以上の人は登校していなかった。

 いつ種明かしが来てもいいように、身構えていたのだが、みんな至って普通に振る舞っていた。種明かしは放課後なのだろうかと頭を抱えていた時に、ちょうど教室に入ってきた須藤と目があった。が、すぐに視線は反らされた。

 一瞬しか見えなかったが、須藤の顔は少しやつれていて、目も赤く充血しているようだった。朝練が大変だったのか、それとも、やはり、昨日の私の発言で気を悪くしてしまったのだろうか。須藤が自分の席についた後も、須藤に注意を向けていた。須藤の変化には他の皆も気づいたようで、大丈夫とか、どうしたのと須藤を気遣う発言があった。

 今、思うとその中の一つに愛美の声があった気がする。しかし、須藤は別にとだけ言い放つと、頬杖をついて私の方とは反対、つまり窓の方をずっと眺めていた。不機嫌そうな顔をしていたに違いない。事実、傍目から見ても須藤の機嫌はすこぶる荒れていたと評されていた。掃除の時間にはついに、普段は仲のいい高橋とも殴り合いの喧嘩に発展していた。

 流石の私も、この一連の出来事がドッキリなどではないということに気が付いた。それでも、念のために、真理恵にそれとなく探りを入れたのだが、このクラスでドッキリが行われているなんて聞いたことがないと答えられた。

 女子生徒が呼んだ教師に、須藤と高橋が連れていかれたとき、須藤と目があった。朝とは違い、須藤は私の視線に気が付くと、目を大きく見見開いた。揺れる瞳の中に私がいた。

 放課後、帰ろうとしたところで、須藤からためらいがちに声を掛けられた。周りにいた他の生徒の視線が急に、私たちに集まった。それを自覚した途端、私は頭を下げて一目散に教室から飛び出してしまった。

 あまりの不審な行動に、クラスのみんなに変な誤解をするのではないかと、道中心配していたのだが、そんなことは杞憂であったと、後で知った。

 クラスメイト達は、私が荒れた須藤に怯えて走って逃げだしたのだと思ったらしい。須藤はその日のことを、「須藤の荒れた日」として、今でもからかわれている。そのたびに、椎名も走って逃げだしたと引用されるのはどうにかならないだろうか。

 須藤のことは嫌いではない。付き合う以前からも須藤に対しては、良い印象を持っていたし、付き合い出してからも良い人であると思っている。

 しかし、須藤には執念深い一面もあった。あれからも須藤は何度か私に話しかけようとした。私のことを想ってか、決まってそれは周りに人のいない、私が一人になった時であった。最初のうちは、ちょっとしたパニック状態で、須藤が何か言い始める前に走って逃げだしてしまっていた。

 だからなのか、次は須藤からメールが届いた。内容は、一度会って話がしたいというものだった。須藤に対して悪いことをしたという自覚はあったので、意を決して私は須藤と会うことにした。場所は私の家の近くの公園で待ち合わせることになった。待ち合わせ時間よりも早めに行ったのだが、すでに須藤も到着していた。

「待たせちゃってごめんね」

 小走りで須藤に駆け寄りながら、謝った。

「いや、俺も今来たところだよ」

 最近の須藤の様子とはうって変わって、この日の須藤は少し顔を赤らめて、それでいてどこか嬉しそうな顔つきであった。

 まずは、これまでの須藤への無礼な対応を謝るべきか、それとも須藤が話を切り出すのを待つべきか考えていたら、先に須藤の方から話始めてくれた。

「あのさ、この間のことなんだけど、もう一度考えてくれないかな。俺、本当に椎名のことが好きなんだ。付き合ってほしいと思ってる」

 須藤が顔を真っ赤にさせて言った。

「もし、それが無理なら友達からでもいい。だから、俺のことを避けないで欲しい」

 須藤の手が、私の手を力強く握りしめた。痛いくらいであり、それは火傷してしまうかと思うくらい熱かった。

 手を取られているため、もう逃げ出すことはできない。ここで返事をしなくてはいけない。須藤のことは嫌いではない。むしろ好感を持っている。ただ、付き合いたいかというと、決してそういうわけではない。

「……ごめんなさい」

 私の答えはずっと前から決まっていた。あとは、須藤の顔を見ないように俯いて、ただひたすらに謝るだけ。もしもまた告白をされたら場合に備えて、昨夜私が考えた作戦だ。

 手さえ解放されれば、一直線に家に帰ろう。これですべて解決するはず。だが、須藤の私の手の拘束を緩める気配がない。恐る恐る須藤の顔を覗き見た。

「どうしても駄目? 他に好きな人がいるとか?」

 つながれた二人の手を見ると、今更ながらに、待ち合わせ場所を近所にしたことを後悔した。今のこの状況を誰かに見られたらなんと言い訳すれば良いのか。日曜の昼であるにも関わらず、幸運なことに公園内には私と須藤しかいなかった。

「そういうわけじゃないけど……」
「だったら、一か月で良い。一か月だけ俺と付き合って、それから返事をくれないか」

 須藤がどんな提案を出そうとも、答えはノーである。それよりも早く、この手の拘束を解かなくてはいけない。もし異性と手を繋いでいたと親の耳にでも入ったら、羞恥心でもう家にはいられない。

 周りを過剰に気にしていたためか、遠目に膨らんだエコバックを下げた、ポニーテルの女の子の姿が見えた。
 真理恵だ。

 私の家の近くということは、真理恵にとってもご近所だ。幸い、真理恵はまだ私たちのことに気が付いていない。せめて、この手だけでも振り解かなければ。そうすれば、昼の公園に私と須藤だけでいることは何とか言い訳できるはずだ。

「頼む俺にチャンスをくれ」

 須藤がさらに私の手を強く握りしめる。頼むから大声を上げないでもらいたい。この時私は、いかに須藤の手を振り解くかで頭がいっぱいだった。このままでは真理恵に見つかってしまう。

 自分ではよく覚えていないが、なんと私はこの時、首を縦に振ってしまったらしい。真理恵の方ばかり見ていて、須藤がどんな表情をしていたかなんてわからなかった。歓喜極まった須藤が私に抱き着こうとしたところで、私の名を呼ぶ真理恵の声が聞こえた。

 一か月だけのはずだったのに。須藤と付き合い始めてからすでに三か月がたとうとしている。口からため息が出たが、それは白く形をつくるとすぐに消えてしまった。

 足を止めると、ちょうど須藤に二度目の告白をされたあの公園だった。星の輝く時間に公園で遊ぶ物好きはいないらしく、暖かな外套の灯る民家とは対照的に、ただ静かにブランコがたたずんでいた。

 あの日のことを思い出していたからか、私は引き寄せられるようにして、その公園に入っていった。

 須藤と過ごした日々は、嘘偽りなく楽しかった。須藤の話してくれる内容はすべてが新鮮であったし、休日には二人でボーリングや、スケートなど今までの私なら絶対に行かないようなところにも行った。

 友達が、口癖のように彼氏が欲しいという理由が少しは分かった気がした。それでも、最初の一か月が過ぎたとき、私は須藤に対してあの日の言葉をもう一度言うつもりだった。

 しかし、一か月が過ぎても相変わらず楽しそうに私に話しかけてくれる須藤を見ていると、どうしても切り出すことができなかった。それでずるずるとここまで引っ張ってしまった。

「ごめんね、須藤君」

 何に対してのごめんなのか、自分でも分からないままに、口から言葉がこぼれ出た。須藤が返事をしてくれるはずもないのに。私の言葉は夜空の闇に吸収された。

「椎名?」

 須藤の声が聞こえた。振り返ると、入り口のところに自転車にまたがった制服姿の須藤の姿があった。少し息が切れている。私を心配して、愛美を送った後に来てくれたのだろうか。

 いや、須藤の家も私の家と方角は一緒ではないか。須藤があまりにも私に優しく接してくれるので、つい自分に都合のいいように勝手に解釈してしまう癖がついている。

「やっぱり、椎名か。女の子がこんな時間に一人で帰るなんで危ないだろう。何考えてるんだ」

 須藤が歩きながら近づいてくる。自転車は入り口に置いてきたようだ。怒ったような、安心したような口調であった。須藤は私のすぐ目の前までやってきた。

「会えて良かった」

 須藤が私を抱きしめた。今まで手を繋いだことはあったが、抱きしめられたのはこれが初めてだった。

 私はまるで金縛りにでもあったかのように、手足が固く硬直してしまい、その場に直立の姿勢で固まってしまった。異性に抱きしめられる経験など初めてだった。

 私の心臓は激しく鼓動していた。血液が頭の先まで逆流するように、顔が火照っていくのが感じられる。こんなにも心臓が激しく動いてしまえば、須藤にも聞こえてしまうかもしれない。

 須藤のことが好きかは分からない。ただ、特別な人ではある。いつもまっすぐに私の目を見て、私の心配をしてくれて、隣でずっと笑ってくれる。

 異性でここまでの関係になったのは須藤が初めてだ。自信を持って須藤が好きだと言えたらどんなに楽であろうか。

 私は、一度好きになった人を生涯愛し続ける自信がある。浮気なんてしない。例え暴力を振るわれたとしても、誰よりも愛して支えてあげたい。

 ただ、ずっと愛してもらえる自信がない。今は私のことを好きでいてくれても、この先私以上に好きな人ができるのではないかと不安に思う。

 私は、そっと須藤を押し返した。須藤が手の拘束を緩める。私は須藤の目を見つめた。急に私が真剣な顔をしたものだから、須藤が不思議そうに首を傾げた。

「どうして私なんかを好きになってくれたの?」

 闇に溶けて消えてしまいそうな声だったけど、確かに須藤の耳に届いたようだ。須藤が形のいい眉をゆがめる。

「だから、そういう自分を卑下する言い方はやめろって言ってるだろ」

 須藤は少し怒っているみたいだ。当たり前だ、彼女であるはずの私が自分のことを信じてくれないのだから。

「ごめん。でも、どうしても知りたいの」

 須藤と目が合う。突然こんなことを言いだした私の心中を測りかねているようだ。少し間をおいてから、ようやく須藤が口を開いた。

「どうしてって、言われてもな」

 須藤は顎に手を当てて考え込んでいるようだ。月明かりに照らされて、その姿はまるでドラマか映画のワンシーンのようだ。

 でも、好きな理由を述べるだけで、そこまで考え込まなければいけないのかと思うとがっかりしてしまう。おまけにまだ答えが出ていないなんて。私に対する気持ちはそんなものだったのか。

「分かった。……ありがとう」

 私は顔を見られないようにしながら須藤の脇を通り過ぎようとした。分かっていたことだけど、こうも現実を叩きつけられると泣いてしまいそうだ。

「ちょっ、待ってくれ」

 須藤が私の腕を掴む。

「確かに、どうしてとか、どこがとか聞かれても、俺はなんて答えればいいのか分からない」

 好きの理由が分からないってどういうこと? 私の貧相な脳では理解が追い付かない。

「けど、椎名を好きな気持ちは本物だ」

 須藤はさらに続けた。

「理由はないけど、好きなんだ」

 一般的にこういう返答の仕方はどうなのだろうか。確かに、『君の笑顔が好きなんだ』とか真顔で言われても、私は須藤の言葉を信じることができただろうか。否、私に好かれる面があるはずがないと、何かと理由をつけて須藤のことを突き放すだろう。

 だからと言って、『理由はない』というのも乙女心に傷ついてしまう。嘘でもいいから優しいところ、とか気配りができるところとか、そういった抽象的でもいいから、何かしらの答えが欲しかった。

 どう反応すればいいのか困っていると、私が納得したと思ったのか、須藤が私の手を取り、「帰ろうか」とにっこりとほほ笑んできた。

 小心者の私が、この雰囲気を壊せるはずもなく、須藤と二人並んで帰った。須藤が私に微笑みかけてくれるたびに、私の心は罪悪感と劣等感に押しつぶされそうになる。

 須藤は良い人。
 初めての男友達。
 だからこそ、誰よりも幸せにしてあげたい。

 でも彼女が私なんてばれたら、須藤はきっと恥をかく。愛美ならきっと皆に認められる彼女になれる。
 愛美が須藤を好きなのは確実だ。
 あとは、須藤の気持ちだけ。

 二人を結ぶ、恋のキューピッドになりたい。

「椎名、今度の日曜日デートしようぜ」

 何も知らない須藤が話を続ける。笑うと子供みたいな顔。その時、須藤を傷つける悪い考えが浮かんだ。

「うん。いいよ」

 でも、それが須藤にとっての最善の選択肢になる。私はそう信じている。

little my complex

執筆の狙い

作者 紅葉カナ
110.162.233.164

初めて1万字を超える小説を書くことができました。
ネガティブな女の子の恋愛の一場面を書いてみようとしたのですが、卑屈になりすぎたような気もします。

書いていて自分の文体が単調であるように感じました。また、ストーリー展開も思うように進められませんでした。

内容、描写、書き方などご指摘いただけると助かります。

よろしくお願いいたします。

コメント

阿南沙希
126.159.208.85

こんにちは、読ませていただきました。ネガティブな、と書かれてますが確かにそうですね。後ろ向き具合は表現できてますが、そういうキャラをどうもっていきたいかがはっきりしていないので、ただマイナス思考を延々と繰り返してるだけで、字数がもったいないです。

気になったところを書きますね。

1:季節感がない
恋愛は季節感が大事です。夏か冬かでも、展開できること、イベントなど違いますよね。単調な原因の7割はこれだと思います。設定した季節らしい描写を増やして服装を変えてみると結構書いてて楽しくなるのでは。
コイツどんな水着着るんだろう? 自信なくてワンピース にしようとするけどひと肌脱いでやろうとビキニにする…みたいな(笑)妄想をメモして、ネタにするとか。

2:主人公が他人に無頓着
後の項目にも関わりますが、主人公の人を見る目がなさすぎて、魅力を感じないレベルです。
愛美の態度は一般的に引いてしまう露骨なものですが、誰にでも好かれる女子、と語っている。女子から陰口を叩かれてるし、それが自分の仲間内ならそちらの言い分を信じそうですが、全く気にもとめずに誰も悪くない・私が悪いに帰結していて、他人を気にするようでいて自分しか見ていない、自己中心的な傾向が強く出ていて、うまく魅力と結びついていないので好きになれません。ネガティブが主人公のキーワードですが、友達がいる&彼氏に惚れられる要素なりエピソードを登場させないとネガティブオーラに読者は感情移入ができないと思います。
狼がきたぞ、じゃないですがあまりにも連発してしまうと主人公の自己評価の低さが特徴を通り越して、私かわいそうなネガティブキャラ=あざとさを無意識に演じているように見えてしまうんです。きっとそうではないと思うので…主人公の気づいていない魅力を、彼女に気づかれない形で描いてあげてください。
また「一生愛し続けるし浮気もしない」の、くだりはちょっと重いです。高校生くらいだと真っ直ぐな姿勢と受け取れるかもしれませんが、もう少し読者が受け止めやすい形で書いた方がいいと思います。

3:彼氏が惚れた理由が曖昧
ここが本作一番の致命的な欠点かと。読んでいて「言えよ、アホ!」と思ってしまいました。
まあ、理由を言わないでなんとなく好きが今は多いのかもですが…この流れで言わないのは明らかにナシです。この主人公のどこが良かったんだろう?とずっと考えながら読んでいたので。疑問が解消されずに、とにかく好きの一言で片付けられ、消化不良感が果てしないです。
主人公がネガティブを克服する流れにしても、やっぱり無理だとしても、彼氏に言われた理由が一番の分岐点になるはずです。やたらと人のことに介入してくる親友含め(この人も最後どうなったのか中途半端でした)、全体的にデフォルメが強いのも相まって、振る舞いとして不自然かつ残念なキャラクターが多い印象です。

ストーリー進行がうまくいかない、とのことですが、出来上がった作品からあらすじを書き出すと、ストーリーの足りない部分やキャラクターの矛盾がはっきりします。
一度書き上げて直す作業が大事です。私も長さや思いつきの運もありますが、5〜6回は直して、誰かに読んでもらって直して、絵に描いてみて直して…もうこの作品読み飽きたって状態で完成です。しばらく寝かせて冷静になってから直すものもあります。
書いてる途中であっちこっち戻って直すと、ますますコントロール難しいですし(^◇^;)


長々とすみません。何か参考になれば嬉しいです。

ラピス
49.104.47.7

結構、印象に残る話を作られるのに、主人公がネガティヴ過ぎて魅力がない。もったいないです。
ブスでぽっちゃりで根暗、、、どこかに内面や特技とか等で須藤が好きになるに足る人物だとわからせて欲しいです。
愛美のいやらしさはよく出ています。そんな愛美を主人公が応援する気持ちが理解できない。私なら愛美だけは嫌ですから。

最後は中途で終わってしまい、残念です。放り出さずに、きちんと終えて欲しい。

紅葉カナ
27.229.138.64

阿南沙希様

読んでいただきありがとうございます。
アドバイスまで頂き、大変嬉しく思います。

1:季節感がない
私はこれまで季節はストーリーに直接関係しないからと特別に意識をしてきませんでした。ずっと自分の書く小説は人物描写と会話に終わってしまいどこかつまらないと感じていましたが、季節感のなさが関係していたとは気が付きませんでした。
季節の設定を入れるだけで新たな話が展開できますし、服装まで考えていくことで登場人物により深みを持たせることができますね。

2:主人公が他人に無頓着
おっしゃる通りだと思います。今回、主人公をネガティブな女の子という設定にしたのは、少女漫画の主人公などはたいてい明るく人を魅了する性格をしているので(最近の作品はそうではないものも多いようですが……)、その逆で書けば面白くなるのではないかと思ったからです。
ネガティブなキャラを出そうとするあまり、愛美に対する態度もおかしなものになってしまいました。そもそも、この物語が主人公にネガティブを克服してもらいたいのか、ネガティブなりの恋愛を演じてもらいたいのかなど、物語の目的なども考えることができていませんでした。魅力ある登場人物を書けるように頑張りたいと思います。

3:彼氏が惚れた理由が曖昧
これでは読者様は納得できなかったなと、反省しています。思いつきで書いてしまっていることがほとんどなので、今後はきちんと登場人物ごとの背景や性格などを考えていきたいと思います。読んでもらうことを意識して、読者に納得してもらえるだけの情報を提供しなければいけないのですね。

自分の力不足と今後の課題を知ることができて、非常にいい機会となりました。
このような駄文に細かな批評まで下さり、本当にありがとうございました。

紅葉カナ
27.229.138.64

ラピス様

感想ありがとうございます。

やはり魅力ある主人公を書くことはできなかったようですね。
ネガティブさを出すことばかりを考えていて、須藤や読者を惹きつける魅力まで考えられていませんでした。
これまで私の書く登場人物たちはどれも特徴のない面白みのないものがほとんどだったので、今回はあえて極端に性格をかき分けて登場人物ごとの個性を出してみようとしてみました。
愛美のいやらしさは出せていたようで、ほっとしました。

主人公が愛美を応援する理由ですが、最終的に『主人公⇒愛美⇒須藤⇒主人公』の三角関係にしてみたいと思い、主人公は愛美に惹かれているという脳内設定を勝手に作ってしまっていました。そのような設定を描写することはできていませんし、序盤から主人公が愛美を応援しているのは確かにおかしいですね。

もっとストーリや背景などを考えてから、改めて書き直してみようと思います。

中途半端な形で終わってしまい、すみませんでした。

偏差値45
219.182.80.182

半分まで読んだ。後は時間がなかったので流し読み。

この種の恋愛ものは知らないのですが、
あえて言えば、『君に届け』に近いのかな。
しかし、『君に届け』には味があるのですが、
御作に関しては味がないのです。
主人公に何かしら、魅力があると良いと思いましたね。
簡単に言えば、何かに抜きんでた長所ですね。
例えば、英会話が出来るとか、江戸時代の人々が書いた草書が読めるとか、
占いがよく当たるとか、長距離走が得意とか、ペン廻し日本一とか、何でも良い。
そういうものが味になってくるわけです。

文章そのものは読みやすいのだけれども。もう少し展開が早いといいかもしれない。

>初めて1万字を超える小説を書くことができました。
小説は長ければ良いわけではないんです。
その分、内容が薄くなってしまったら、意味がない。それはすごくマヌケなことです。
個人的には半分ぐらい不要な内容のような気がしてならないです。

セシール
219.116.81.113

長いの書いたね、よく頑張った!
しかし、それと面白いかどうかは別w

筆者さんは、この手の作品に必要なもの、外せない要素、あれば輝くなんか、みたいなことを考え抜いたことがある
かな?
小説には大体二種類あって、一つは、訳の分からん他人の思考をいちいち驚きながら読みといていくもの。
もう一つは、多少の違いはあれ、最初と最後が数パターンくらいに絞られていて、中身がどう膨らまされているかを
楽しむ、ラノベだとかジュブナイル一般だとか、年齢に関係ない恋愛小説みたいなもの。
後者には、自分がどう書くか以前の読者側にある共通認識、セオリーみたいなものをちゃんと意識しておく必要が
あるように思える。
認識ではなくて、筆者特有の意識だ。
当然読者とか視聴者としてあれこれ見聞きしてきた筆者さんも、そういう共通意識を持っているのであるけれど
書く側に立った場合当然自分の意思と労働力でなにがしかを作りあげるわけだから、読む側として感じていたそういう
ことをもっとはっきり厳格にきちんと自分の中に持って、それを受験勉強中の高校三年生の自室に張り付ける自作の
張り紙のように、目標として設定する必要があるように思う。

言われているように、主人公はかなりの強度でひっこみ癖がある。これはつまり昭和中後期頃の社会的プレッシャー
が女性にかかっていた頃の少女漫画によくある、やはり「既にあるフォーマット」の一つだ。
当てずっぽうで、今はこれだから違うのを、という引っ張り方ではこのジャンルはちょっと厳しいかもしれない。
やはりそういうレベルではなくて、筆者さんが考える恋愛の条件とかその過程とか、ジャンルへの愛とか無くてはなら
ない要素とかをしっかり目に見えるように掲げ、それらがしっかり読者に伝わるようなものを書く必要があるのでは
ないだろうか。
そういう既にあるパーツを唯一無二の人格である筆者さんが組み上げて見せるという事実こそ、こういったジャンル
を長く輝かせていく原動力であるのだろうし、そういう確固とした覚悟を作者に要求するジャンルなんじゃないだろうか
と思う。

あと、掴みが弱い。
キャラも弱い。
変な倒置表現など使わず、しっかり時系列で、苦手なシーンであっても飛ばさず、最初から最後まで書ききる練習を
したほうがいいかもわからんね。
別でキャラ設定をノート半分くらい楽々作りあげることが出来る、とかいうならそれでもいいが、仮に最初の場面が
告白シーンだったら筆者さんはどこまで微妙な部分を考えどう表現しただろう、とずっと思っていた。
そこで、主要キャラの詳細なキャラ設定を物語に乗せた形で作りあげられていたら、こういうお話にはならなかった
んじゃねえかなと思えてしまう。

紅葉カナ
157.80.162.70

偏差値45様

コメントありがとうございます。
ご指摘の通り、実はこの小説を書くにあたって、登場人物の大まかな性格や立ち位置は『君に届け』を参考にしていました。原作を読んだことはないのですが、アニメを見てとてもドキドキしていたのを覚えています。あのドキドキを作り出すには、ストーリーの面白さも登場人物の魅力も重要になるのですね。いくつもの漫画や小説を読んできましたが、その物語になぜ魅了されるのかまで考えたことはありませんでした。どういった要素が読者を惹きつけることができるのか研究していきたいと思います。

『文章は長ければ良いわけではない』←ご指摘ありがとうございます。
これまで、掌編くらいの長さの小説を書くことはできても、それ以上書くことができず、今回初めて1万字を超える小説が書けて舞い上がってしまいました。だらだらとどうでもいいことを書き連ねているから、ストーリーの展開も遅くなってしまっていたのですね。推敲を重ねて、不要な内容は省くように注意していきます。

今後の課題を明らかにすることができました。
本当にありがとうございました。

紅葉カナ
157.80.162.70

セシール様

コメントありがとうございます。
恥ずかしながら、小説において必要な物、外せない要素、輝くものなどを考えて小説を書くことができていませんでした。自分の書きたいことしか考えず、読者の立場を考えることを忘れていました。自分の価値観だけで物語を進めても、読者は共感も感情移入もできなくなったしまいますね。読者の共通認識、セオリーこれらをしっかりと頭に置きながら、ストーリーを考えていきたいと思います。

主人公が強度の引っ込み思案、これも既にあるフォーマットだったのですね。知りませんでした。勉強不足でした。既存のフォーマットを参考にしてしまうとパクリになってしまうのではないかと思い、これまでとは違うパターンを書こうとしていたのですが、もっと大切なことがあったのですね。フォーマットではなく、中身をどう膨らませていくか、私なりの恋愛を表現して、それを読者に伝えられるようにしていきたいと思います。

キャラ設定に関しても、全くと言っていいほど作り込むことができていませんでした。いつもキャラ設定があいまいだから書き続けることができていなかったのかもしれません。

的確な指摘、ありがとうございました。
自分の課題が見つかりました。

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