作家でごはん!鍛練場
ナナシログミ

あの子を食む

あの子の髪を食む。
日に焼けたのか焦げた臭いを纏う、少し軋んだ一本を鼻にかすめてから、それを舐めてみる。味など良くは分からない。ただその一本を口に含むだけで、あの子を私は食らってやったのだと、小心者は満足感に浸るのだ。

「いたっ」
背後に立っていた私に長くうねった髪をぶつけて振り向いて、苛立ちを隠すつもりもなく眉間にくっきりと皺を寄せた。
「なにすんのよ」
乱暴な言葉を浴びせられながらも、髪に埃が……と小さく呟けば、「先に口で言えよ」というだけでとりあえずは解放される。
掴んだ一本は大事にブレザーのポケットに入れてあったハンカチに包み、私はその場から急いで立ち去った。
やや速足で駆け込んだ科目準備室の中で誰もいないことを確認したうえで、握りしめていたハンカチの中身を確認する。
右手の親指と人差し指でそっと摘み上げ、まじまじと見つめる。部屋に舞うチリが背景となり、たった一本がまるで空に駆ける竜のようにうねる。
すっとそれを鼻に近づけ香りを嗅げば、一瞬焦げたような臭い。いつも鼻に付く香水の匂いを誰かれ構わず振りまいているあの子からはかけ離れたような臭いに、思わず口角が上がった。
一度唇にそれを這わせ、舌を出して舐めた。
ただその行為だけで、あの子を貶めているような感覚に陥る。
次は歯と歯の間に引っかけて、思い切り引っ張り、中央で引きちぎった。分裂して2本になった片方だけを床に落としてそっと踏みつけた。
残った片方は口の中へ。細いくせに、やけに口内で存在感のあるそれをとにかく唾液に絡めながら歯にぶつけていた。
準備室の中の静けさが、どこかここだけ世界と分かつような感覚にさせる。独りでいるこの空間に溶け込みながら、私はただただ口だけを動かし続けた。

この行為に意味があるかを考えたこともあったが、もう私はきっかけすら忘れたこの行為をもう1年以上続けている。
腹の中で、きっと胃酸に溶けて消えた痕跡。
私はまた求めるだろうと思うが、次はなんて言い訳しようか、そう考えながらあの子の髪を食み終えて喉の奥へと飲み込んでやった。

あの子を食む

執筆の狙い

作者 ナナシログミ
183.176.110.43

とにかく何かを表出したくて、書きなぐったようになってしまいました。
意味のないことを訳がわからない行為で納めようとするような、そんなことを書きました。
ほんの少しの描写でしかないのですが、変に書いて書き終わって緊張しています。
もっと具体的に書きたいものがあるまで待つべきかと迷ってそれでも書いてしまって…、私の頭の中で起こっている出来事が、これだけの文章で伝わるのかと思いつつ、詳しく書こうとすると説明文のようになりそうで……何かご助言いただけると幸いです。

コメント

だみあんましこせ
126.133.224.187

なんかいいね。

ナナシログミ
123.254.19.75

だみあんましこせ 様

早速のお言葉、ありがとうございます。
読んでいただけたうえ、評価まで頂戴できて嬉しいです!

本当に具体性が欠けており、ストーリーとしても薄いのですが、表現で書き続けていきました。

本当にありがとうございます!

セシール
219.116.81.113

なんか最初の三行で台無しな感じがしちゃうねー。
小説っぽくしょうか、とかいった作者の冷静な企みみたいなもんが、小心者とかいう、変な客観性を感じさせる
言葉にもにじみ出てしまっているようで、マジでこれだけの文章に緊張感を持たせて書ききろうと思っているなら
決定的な蛇足になってしまった感じがするんだよね。
しかもそこが無ければ、不可解で奇妙な変態行為しか残らなくなってしまう、という二重苦になっている。
リアルならいくらでもいる凡庸な変態をそのまま忠実に書き起こしても、まったくリアルにならないのは、文字列には
やっぱり意味を求めてしまうという人間の性なのかもしれないね。


いや、こんな難しいことせんで、さくっと普通におはなしを書いたほうがいいと思う、ってだけの話だけどw

月は無慈悲な夜の女王
219.100.84.36

まず、【人間の毛髪は胃酸では溶かせません!】ので。


骨は溶ける。

カジ・りん坊
112.137.227.226

 作者さんがどう思っているのかはわかりませんが、新しいことにチャレンジしているというか、文章的に迷われている感じなのか?すっきりしない書き出しでした。
冒頭部の『あの子の髪を食む。日に焼けたのか焦げた臭いを纏う、少し軋んだ一本を鼻にかすめてから、それを舐めてみる。味など良くは分からない。ただその一本を口に含むだけで、あの子を私は食らってやったのだと、小心者は満足感に浸るのだ』この部分は、完全にポエムにしてしまったほうがいいんじゃない?
 あの子の髪を食む。
 日に焼けたのか焦げた臭いを纏う。
 少し軋んだ一本を鼻にかすめてから、それを舐めてみる。味など良くは分からない。
 ただその一本を口に含むだけで、あの子を私は食らってやったのだと、小心者は満足感に浸るのだ。
 と、主人公の意識をぶっちゃけておいて、読み手にその世界観と人物像を植え付ける感じにしておいて、次が
「いたっ」
 背後に立っていた私に長くうねった髪をぶつけて振り向いて、苛立ちを隠すつもりもなく眉間にくっきりと皺を寄せた。
「なにすんのよ」
 乱暴な言葉を浴びせられながらも、髪に埃が……と小さく呟けば、「先に口で言えよ」というだけでとりあえずは解放される。

 とするのではなく文調を少し変えて、
 職場に向かう通勤電車の中で、僕は獲物を見つけた。と一文を入れ、
 職場に向かう通勤電車の中で、僕は獲物を見つけた。
「いたっ」
 背後に立っていた私に長くうねった髪をぶつけて振り向いて、苛立ちを隠すつもりもなく眉間にくっきりと皺を寄せた。
 ぐらいにすると、二人の関係性もはっきりするし、状況もある程度推測できるんじゃないかな?と思う。この『振っておく』作業が大事だと思う。
 作者さんは『とにかく何かを表出したくて、書きなぐったようになってしまいました』とあるようにストレートに書かれているようですが、何かを表に出したければ、表に出やすく逆に振っておく必要があると思います。その振り方に面白さが出るのかな?と思います。

ナナシログミ
183.176.110.43

セシール 様

読んでいただき、ありがとうございます!

中身のない文章は、やはり作品としてはよくわからないものになってしまいますね。
せめて三行の出だしなくとも、もう少し文章で表現できる力を磨かねばならないと思いました。

本格的な文章を書ききることができず、改めてみると逃げの文章になっていたかもと思います。

冷静で客観的なご意見、助かります。
本当にご助言ありがとうございました!

ナナシログミ
183.176.110.43

月は無慈悲な夜の女王 様

読んでいただき、ありがとうございます!

無知で書くと、本当にお恥ずかしいばかりですね……。
イメージで書きすぎておりました。

もう少し、自分の文章の根拠を調べてからにせねばと反省です。

お恥ずかしいながらも、ご指摘感謝いたします。
ありがとうございました!

ナナシログミ
183.176.110.43

カジ・りん坊 様

読んでいただき、ありがとうございます!

以前にもお会いして、また今回もご助言いただけたこと非常に嬉しく思います。

実は本当に仰られた通りで、ショートショート大賞なるものを目にしまして、それに感化されて何か突飛なアイデアなど思い浮かばねば……と脳内がごちゃついておりました。

ポエムと取り入れるという案、私には新鮮で、こういったやり方もあるのだなと感動しました。

話しの振り方、そういった観点が自分になかったので、もっと勉強せねばと思います。
惹きつける物を乱暴に表現などに固執していたので、情景描写など交えて今後は考えていこうと思います。

文調も含め、やはり技法をもっと知らないといけませんね。
この作品を投稿して、皆様からいただいたご助言から、勉強不足が顕著になってきたように思います。

ありがとうございました!

偏差値45
219.182.80.182

>食む。
>皺を寄せた。
一般的な高校生レベルで読めるかな。

>科目準備室
誰もが分かる日本語?

>意味のないことを訳がわからない行為で納めようとするような、そんなことを書きました。

そもそも人間の行為に意味がないことはない。
訳がわからない行為とて、その原因はある。

>もっと具体的に書きたいものがあるまで待つべきかと迷ってそれでも書いてしまって…、

プロではないのだから迷うこともあるまい。

全体として言えば、「つまらない」「曖昧」

麻生
121.92.248.193

拝読しました。
短いですが、よくできていると思います。面白かったです。
変なやつの変な行為なのですが、とてもわかりやすく、納得しやすく書かれていると思いました。髪ってとにかく不気味ですからね。お化けを絵で書けば、何であれ髪が長いというのは必須ですからね。貞子も長い髪だし、伽椰子だって、お岩さんだって長い。排水溝に髪の毛が絡まっているのも不気味です。なので、興味津々です。
 難癖つけるとすれば、あの子をもう少し魅力的に書いてほしかったですね。ほぼ台詞だけの登場ですが、かわいいでもいいですし、色っぽいでもいいですが、なんかそんなのを感じることができればさらによくなると思います。髪を噛まれたときの反応、たった一つの反応をどう書くかですね。このままでは、ただ乱暴な女性生徒という感じで、いくら小心者でもこの子はない、と思ったりします。なぜ、この子なのか、は案外大事なことと私なんかは思います。

>右手の親指と人差し指でそっと摘み上げ、まじまじと見つめる。部屋に舞うチリが背景となり、たった一本がまるで空に駆ける竜のようにうねる。

髪の毛を龍に見立てる。アリですが、背景がチリでいいのかな、と。私ならですが、窓辺で青空を背景にすると思います。その方が雄大さが出るのでは、なんて。塵とすれば、先にチリが部屋でどのように舞っているのか、どこから沸き立ったのか、そんな背景言葉が一言はいるような気がします。まあ、あくまで個人的な意見ですけど。

 そして、御作はとても面白いし、うまく出来ていると思うのですが、致命的なのが髪を食うところです。
 実際にやってみましたか。きっとこの通りには行かないと思います。
 昔、新聞だったか、ネットのあやしげな情報だったか覚えていないのですが、髪が胃に入って、胃壁にからみついて、手術して腹を切った、というのがありました。
 それがどこまで本当がわかりませんが、本当だとしたら、この変な生徒はとっくに入院してますね。すでに指摘があるように、胃酸では解けないはずです。
 という以前に、髪の毛は呑みこめないです。喉やあちこちにひっかかって大変です。

>歯と歯の間に引っかけて、思い切り引っ張り、中央で引きちぎった。分裂して2本になった片方だけを

 ここも歯では切れないと思います。逆に歯茎が切れてしまうと思います。髪の毛を刃物を使わずに二本にはできない派に、私は一票です。
 というようなことを除けば、髪の匂いとか、とても精密に面白く書けています。こういう変なやつの話も、面白いですね。それでは。

ナナシログミ
123.254.19.75

偏差値45 様

読んでいただき、ありがとうございます!
以前にもお会いしていたと記憶しており、またコメントいただけて感激でございます。

まさに、最後の一文に痛いところを突かれた思いです。
中途半端に書いたなら、それでもそれなりのストーリー性などこめておかねばならなかったと反省しています。

面白さとは何かもっと追究して書けるよう、精進したいと思います。
表現の浅はかさ…なのか、そういったところも気を付けたいです。

ありがとうございました!

ナナシログミ
123.254.19.75

麻生 様

読んでいただき、ありがとうございます!

肯定的な評価をいただけたうえ、書いた私本人以上に多くをくみ取っていただけたことがとてもうれしく思います。

人物への雑さが確かにあったように思います。
どれだけの文量で表現すべきか、そこも迷いつつ書いていたので、指摘いただけて改めて考えてみました。

行動の真意をどう匂わせるか、そこが筆力なのかもしれないですね…。

描写については、例示することが多かったのでただ見立てたくらいにしてしまったのですが、バランスを見落としていました。
私としては、曇天に降る雪…で表現したくなりました。

髪の話ですが、完全にイメージで書いてしまっており、実験も知識もなく……。

詳細な点でご助言いただき、もっと文の細やかなところに着目して丁寧に書くことを心がけようと思いました。

もっと自分の作品に対して真摯に向き合っていこうと思います。

ありがとうございました!

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