作家でごはん!鍛練場
金川明

【短編二作】海底のそこ/見下ろせば世界

『海底のそこ』


 不意に、目が覚めたらいい。
 ここが夢ならいい。
 現実がもっと、美しいのなら。
 もう何も不満はない。もう何も不安はない。
 僕の心は一人だけ。僕は心に一人だけ。
 それでいい。それだけでいい。
 海底のそこが寒くても、火山がきっと温めてくれる。
 海底のそこが暗くても、太陽がきっと照らしてくれる。

 空に太陽は見えない。空にはきっと、始めから何も無いんだろう。
 浮かんでいる雲だって、飛んでいる鳥や飛行機だって、きっとなかみはからっぽなんだ。
 そらはからだから、そらはそらなんだ。




『見下ろせば、世界』


 宙を舞って、空を駆けて。
 見下ろせば世界。
 この手で体を抱きとめなければ、私は私でいられない。
 この手を振りほどかなければ、私はこのまま堕ちていく。
 空の彼方へ? あの地面へ? それはわからない。
 けれど。
 止まっているのは怖いから。
 一人でいるのも怖いから。
 私は、ひたすらに羽ばたく。
 空を蹴って、風を抱いて。
 すれ違う風は目をくれず、振り落ちる羽は虚空に光る。
 見上げれば彼方。

【短編二作】海底のそこ/見下ろせば世界

執筆の狙い

作者 金川明
131.129.145.100

昔書いたまま眠っていたものを、少し手直ししたものです。
とくに意味はありません。

コメント

弥言
153.222.185.164

あれっ? なんか良い詩に見えます(;・∀・)
うーん、このサイトには結構な頻度で「詩?」がでますが、リズムも洒落も押韻もないようなものがほとんどな気がしていて。ちゃんとリズムがとれていて押韻があるこの作品がとても素晴らしく見えました。ハードル下がっているだけ?

ぶっちゃけあんまり意味はわかってないんですけど。
小説が「ハンバーグ」とか「カツ丼」なら、こういう詩は「コーヒー」とか「タバコ」みたいなものだと思うので。さらっと読めて、なんとなく考えさせられて、気持ち良ければそれでいいのかと、わたしは思います。

岡田寄良
106.130.8.243

拝読しました。
面白かったです。
世の中で一番偉い職業は多分詩人だと思います。
最初の詩は内向的で甘えたような感情が伝わってきました。
そして僕は空を新しい世界、あるいは将来と受けとりました。
語り手はそういう意味性を持った空を食わず嫌い的に拒んでいる。
二つ目の詩は一つ目の詩の時よりも成長した感じがします。
視野が広がり世界を俯瞰的に見ることもできるようになった。
だけども羽ばたいていることの辛さもある。

NaItOu
60.139.32.156

こんにちは。読ませて頂きました。十八番の小説ではなく詩なんだ、と新鮮な感じがしました。
すっと頭を抜けて引っかからないよい詩だと思います。自分は詩の中に意味を求めるという事より気持ちよく読めることを重視していまして、その観点からもこれはとても心地よい作品です。
ただ金川先生のことですから、詩の中にメッセージを意図し設定されていそうでそれも気になります。また時間があればご教授を。

銀天公社の偽月
219.100.86.89

「そらはからだから、そらはそらなんだ。」的なのは、
最近も、電子書籍の漫画で見た。
(主人公の名前が「空」で、小学校時代、「お前なんか、そらじゃなく、カラだ」といじめられる……)


このフレーズの元ネタは、
日本の有名フレーズを英語訳にした、
「Vanity of vanities; all is vanity.」
を、さらに和訳したものだと思う。


なんつーか、「ちょっと詩的に聞こえるよう、対句ならべてみました〜」なだけで、
上っ面。

【言葉に血が通っていない】んで、

こーゆーの書かせたら、現役女子中高校生には絶対勝てないわ!
(彼女らの言葉は、「血が通っている」ので)

金川明
1.75.243.145

弥言さんへ

感想ありがとうございます。
今回の作品については私もまったく同感です。リズムやテンポ、読みやすさを重視して書かせていただきました。それを心地良いと思っていただけたのならうれしいです。


岡田寄良さんへ

感想ありがとうございます。
私のこの二作が詩と呼べるものなのかどうかはわかりませんが、込められた想いについて深く考察していただけたようで大変うれしいです。


NaItOuさんへ

感想ありがとうございます。
先ほども書きましたが、今回の二作は意味よりも、テンポやリズムを重視した作品です。込めた想いや伝えたい事柄もまったくないわけではないのですが、そう明確に定められたものでもないので、ご想像にお任せ致します。


銀天公社の偽月さんへ

感想、というよりはご指摘でしょうか。ありがとうございます。

空という主人公も、その元ネタについても一切存じ上げませんので、そう言われましても反応に困ってしまいます。

何をもって今回の二作に血が通っていないとし、何をもって女子中高生には通っているとしているのか、次回作にいかすためにも、細かくはっきりと教えていただきたく思います。
是非ともよろしくお願いします。


ありがとうございました。

あのにます
111.239.181.243

『海底のそこ』に関して
何故"そこ"がひらがななのか。
最初、底と其処をかけているのかな、と思いました。
でもそこを底と変換すると、海底の底になってしまって頭痛が痛いみたいな変な日本語になるんですよw
だから、海底のそこの"そこ"は、其処なのかな。
海底の中で、部分を表す"そこ"が使われているのでそこに何があるのか気になりました。
なにがあるんですか。

『見下ろせば、世界』に関して
"空を蹴って"という表現は、羽ばたいているのであれば蹴る必要はないと思います。
"大地を蹴って、羽ばたいて"なら、わかります。

何故か"上京もしくは海外での暮らし"という感じがしました。
必死に羽ばたいて、今まで見てきた自分の世界(地元)を見下ろして、上を見ればキリがない。
何かを必死に抱えていないと、急降下してしまうかのような切迫した感情。
夢を抱いて地元を飛び出した若者の詩だと思います。

偏差値45
219.182.80.182

正直、言えば、分からないですね。
それは主体となる存在です。
ある意味『なぞなぞ』なので、あまり好きではない作品です。
前者は海中、後者は空中、対になっていると思われても仕方ないかな。

実際の海中は弱肉強食の世界。
シャチやサメでもなければ、恐怖と不安でいっぱいでしょうからね。
そして空中は弱肉強食の世界から回避している場所。
鳥だって好きで飛んでいるわけではない。地上は危険でいっぱいだから
空にいるわけですからね。

とはいえ、主体が分からないので、シャチや鳥と言っても意味がないかもしれない。
もしかしたら、海底の岩かもれないし、空の雲を指しているかもしれない。
結局、解釈できないような内容なのです。つまらないですね。

金川明
131.129.145.100

あのにますさんへ

感想ありがとうございます。
海底の〝そこ〟に何があるのか、ということでしたが、強いて言うならそれは〝理想〟です。
お気づきになったかはわかりませんが、主人公が「夢ならいい」と思っているのが〝ここ〟であるのに対し、海底は〝そこ〟と表現されています。
つまるところ、主人公は今いるこの場所(陸の現実世界)から、海底にあるその場所を想い描いているのです。
海底のその場所には、きっと不安も不満もないのだろう、と。

>『見下ろせば、世界』に関して
 "空を蹴って"という表現は、羽ばたいているのであれば蹴る必要はないと思います。
 "大地を蹴って、羽ばたいて"なら、わかります。

これは比喩ですので、本当に蹴ったり抱いたりしているわけではありません。
空を蹴っているのに対し、風を抱いていることから、空を嫌い、風を求めている主人公の心情を表しています。


偏差値45さんへ

>前者は海中、後者は空中、対になっていると思われても仕方ないかな。

私自身、そのつもりで投稿させていただきましたので、問題ありません。


>実際の海中は弱肉強食の世界。
シャチやサメでもなければ、恐怖と不安でいっぱいでしょうからね。

先ほども書きましたが、主人公は本当に海底にいるわけではありません。
陸にいながら海底のその場所(主人公にとっての理想)を想い描いているのです。


そもそも、空も海も、空ならば将来や未来、光、希望などを、海ならば停滞、過去、闇などと言ったものを指したものであって、本物の空や海をそのまま表しているわけではありません。




今回は、意味よりもテンポやリズムを楽しんでいただければと思い書いたものですので、解釈については明確に定めておりません。ここで述べたものはあくまで考え方の一つとして捉えていただければ幸いです。

ありがとうございました。

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