作家でごはん!鍛練場

『ハムカツサンドの器量(25枚)』

さばのみそ煮著

"新世界より"を読んだあとに書いた作品。
学園モノで程よいSF感。それでいて同性愛がうっすら見える距離。
そして、「腹減った。夜食にハムカツサンドが食べたい……」という欲求が文字に出てしまった狂乱作です。
機械に仕事を取られたら、やりがいを見つけるって難しいのではと思うこの頃です。

少し肌寒くなってきたこの時期は、街路樹がほんのりと色を付け始め、僕たちに一年が終わりに近づいている事を布告してくれる。
眩しく暖かい日差しの下で大人や学生達が寝惚け眼の様子で其々の場所に向かっていく。
「そっちのクラスは何出すか決めたのー?」
片手をポケットに手を入れ、寒そうに顔の半分をマフラーで隠しながら、猫矢未樹は気怠そうに聞いてきた。
秋風のいたずらか、長くさらさらした茶髪がそよめく度に、辺りに良い香りが漂う。

未樹は見た目も香りも良く良く出来ていて、一見して女性とも思えなくもない端正なものを持っている。
ただ学業においてはお世辞にも優秀とは言えず、テスト間近になると恒常に泣きついてくる。好き嫌いが他人から達観して顕著に分かるのだから、強いて毎度のように勉強しろなどと奴に言うことは、疾うの昔に諦めた。
「いや、それが全然決まってないんだ。今日は一日中、準備時間だろ? だから今日で決めようってことになってる」
欠伸でもして今すぐ眠りますよ、とでも言いたそうな顔が、途端に目を輝かせながら食いつき気味に擦り寄ってきた。
「ええー。最初の授業が数学だと思ってたから、ホントに死にそうだったんだよー。なんだなんだー」
眠そうに自転車を漕いでいた足がぐんと元気よくペダルを押し出す。とても分かり易い奴だ。

「未樹のクラスはどうなんだ? もう決まっているのか?」
「もち。うちらのクラスは執事バーさ。男も女も関係なく執事になって、最大限のおもてなしをしちゃうのさ」
「未樹の大好きなコスプレか。今年の文化祭は一段と盛り上がりそうだな」
未樹のコスプレ姿を拝めると思うと、間近に迫る文化祭が待ち遠しく感じてしまった。

技術が進歩してることもあり、いわゆる昔の文化祭とは大きく異なっている。これを言い出せば学校や社会というのは、授業で習う過去の歴史とまるで違うと言い切れる。
機械が世界を動かす今、人間は働くという事に一定の距離を置き、個性や美学、楽しさに重きを置き始めたのだと思う。
もともと日本人というのは狂ったように働く所があったので、遊ぶことが正義となった現代は、さてどうやって寿命が尽きるまで遊び尽くそうかと考え始めていた。そういった時代になったんだと、僕は時々しんみりと考えに浸る。

学校での勉強は大切なんだろうけれど、でも僕がこの世界を支える選ばれた人材になんてなりはしないだろうし、機械が食べ物も何も働いて作ってくれるご時世なんだから、進学や就職なんて——真剣に考える事なんて出来ない。
今できることは唯一の存在と言ってもいい未樹と、遊びの祭典である文化祭を楽しむ事しか、何も出来そうにないと考えてしまう。
「…………ねえサクヤ、ちゃんと聞いてる?」
「え、ああなんだっけ。ごめん」
「ぼーっとして心ここにあらずって感じだったよ。まだ寝ぼけてんのー?」
「いやー、あまりにも暖かい陽気だから、タマシイが持って行かれるところだったよ」
「ホントよく言うよー。ささ、急ごうよ。遅刻しちゃうよ」
はいはい、と苦し紛れに返事を返しつつ、マフラーの下からちらりと望む、寒さに耐えながら小さく微笑む紅色の頬を見つけると、僕はペダルを強く漕いで、文化祭を待ち侘びているであろう、学校の為に急いであげた。

素晴らしい景観というものは、何度観ても飽きないものだ。
学校と外界を何処までも隔てる、塁壁とも受け取れる白き壁は神々しく感じられ、おおよそ人がよじ登れる事は出来ない程に高く造られている。
許されざるものを拒み、見上げるほど空高く聳え、幅広い肩幅の白正門は校門と言うより塔という表現が相応な風貌がある。機械による厳しい査閲を受け、初めて通れる厳しき門だ。
その白正門を潜ると、遙か遠くに米粒ほどに見える校舎まで続く才色兼備を持ち合わせた庭園が迎えてくれる。宛らフランス風情を基調とした装いで、噴水や長椅子などのオブジェ、色彩豊かな大小様々な草木で彩られたそれは、自然と蝶などの小さな客人を招き入れる。

ここは日本ではない。日本の中にはあるが、全くの別世界に迷い込んだのだと錯覚する。

この領域に穢れが近づくことは決して許されない。それを大々的に主張するかのように白正門という番衆によって守られているのだ。
「ねえサクヤ。端末を忘れちゃったみたい。ごめん、一旦帰るね」
「おいおい。ここまで来てあんな大事な物を忘れるか?」
学生は国から支給されている端末を常に携帯しておくべきで、それ自体が学生証の役割を兼ねている。
白正門は穢れを一つとして許さないが、未樹のような天真可憐で美しい存在さえ、時には拒む正義心の塊なのだ。
「ぱぱっと取ってくるから。大丈夫」
甘酸っぱい香りのする汗を拭いながら、今し方通ってきた方向へ自転車を翻す。
そんな矢先に、軽くて優しいクラクションが背中を叩いた。
「未樹。忘れ物だぞー」
優しいその声色と口調は未樹そっくりで、その小さく丸い形の車体は、どこか見慣れた性格を表しているかのようだ。
「お母さんありがとう!」
なるほど。僕の勘は素晴らしい位に的確だったようだ。
未樹のお母さんは端末を手渡すとにっこりと手を振り、未樹が向かう筈だった秋風吹く街路樹へ消えていった。
「まさにベストタイミング! 救世主だよ。ささっ、教室にいきましょー」
顔を綻ばせながら端末を機械に提示し、小さい背丈を反り返して胸を張り、これでもかと白正門を潜り抜けていく。
「なんというか、本当に運がいい奴だよ。まったく」
遅れまいと未樹の自慢に満ちた眩しい背中を追いかけ、シルクのような髪に隠れた横顔を覗き見る。
「あれが未樹のお母さんか。こうしてみると良く似ているなー」
「でしょでしょー。よく言われるよ。うち母子家庭だから無理にでも似てくるんだと思うよ」

この高校へ入学してから半年。
僕と未樹が出会って半年が経つが、初めてその事を知ってしまった。
さらっと言うところからして気にもとめてないかも知れないが、僕としては少し衝撃が走った。
「でもすごいんだよー。一人で僕を養いながら研究職で働いてるんだから。遊んでばかりいる僕からすると、尊敬の対象だよ」
いつも惚けてのんべんくらりとしているだけかと思ったら、少しながらも危機感に似たものは感じているようだった。
それ以前に目指すべき対象があるという自体が評価すべき所で、独り言ばかり論じている自分は——短慮で痴れ者なのかも知れない。

こっちを向いてきょとんとした表情をしている彼もまた、僕以上に悩んでいるのだろうか。
「おーいサクヤ。何か返事しろよー」
未樹は膨れたお顔をしながら、やや重めのカバンを独り討論会を開いていた僕の頭めがけて振り降ろしてきた。
「痛い。思ったより痛い。何が入ってんだよそのカバン。俺はただ、お前の横顔につい見とれてしまってだな」
今度は僕の冷たい頬へ未樹からの暖かい拍手が送られた。割と結構な勢いを持って。
突然の褒め言葉は、いつもながらお恥ずかしいようだ。それでも手加減ぐらいはそろそろ学習してほしい。

「お母さんはどんな研究をしてるんだ?」
桜色に染まった頬の花びらを擦りながら真面目に質問をしてみる。
「お母さんはねー。コープ技術を色んなものに活かそうとしてるみたい。機械の可能性を広げるってのが分かり易いのかな」
コープ技術。僕らの間ではコープゲームの名で呼ばれているそれは、ピコレベルまで小さくした化学物質を変形させ、仮想的に現実世界に物質を生成する代物だ。悲しいことに高校生の必修科目となっている。
「研究者だけでも凄いのにコープに関連した事をやってるのか。それは胸を張っていいレベルだぞ」
「すごいでしょー。もっと褒めてもいいよ」
二人してあざとい笑みをこしらえながら、教室のある棟へと向かう。

高校と言うには美術性が高すぎるデザインで、下足箱も無駄に広く、そこいらに小難しそうなデザインをした絵が飾られている。
廊下も綺麗過ぎるほど無垢で、静寂に包まれている。
校舎は全て見て廻ったことがない。それくらい馬鹿でかい。迷子になっても困るので、教室がある棟にしか立ち寄らない。
利益や効率ばかり求めていた過去の時代では批判的な扱いをされかねない風貌をするこの学校だが、機械が人間に取って代わる新時代では、いささかも可笑しくない。人生と仕事が等しい時代は終焉し、人生とは何かを逸らさず受け止める時代。学生には学校以上に難しい課題が出されているのだ。
お互いの教室は申し訳程度に離れているので、じゃあまた後でと軽く約束を取り決めてから、自分の教室へと入っていった。

「サクヤくんやっときた。もう授業始まってるよ」
小熊薫は僕より——僕は言うほど勉学は出来ない——遙かに優等生の委員長だ。
何をするにしても正しく規律を持って接してくれる。真面目すぎる所はあるが、それ以上に安息の時間を僕に与えてくれる数少ない泉だ。
「あれ、間に合ったと思ったのにな。ごめん小熊」
「私に謝らなくても良いのに。白正門で出欠が間に合ったのならそれで大丈夫よ。それはそうと、サクヤくんは文化祭の催し物は考えてきたの?」
「うん。一応はね」
「そうなんだ。昨日はすごく悩んでいたから少し心配してたの」
「一応これでも副委員長だからね。忘れたら示しがつかないよ」
「それもそうね。お昼までの時間で決めればいいみたいだから、みんなの意見を聞いてまとめていきましょう」
そういうと委員長である小熊はくるっと向きを変えて教壇の前に立った。
「それでは早速ではありますが、文化祭の出し物について決めていきたいと思います。提案したいものがある方は挙手をお願いします」
それを合図に次々と手が上がる。まるで総統に忠誠を誓う心強い兵士のようだ。

ここからは怒濤の勢いだった。

文化祭の定番である幽霊屋敷。旬の季節ではないとはいえ、これは外せない。王道にして最も盛り上がる催し物であろう。普段真面目なあの人が泣き叫びながら慌てふためく姿というのは耽溺になって見てしまうだろう。

次にお菓子屋さん。甘い香りが大好きな僕からすると実に興味深い提案だ。希に甘い物が苦手な人もいるけれど、お刺身味や金属を舐めたときのなんともいえない味、なんてものを作れば大受け間違いなしだ。

さらには遊園地。なるほど、今の僕らにはそれくらいの物は作れそうだ。流石にジェットコースターみたいな命の保証がないものは出来かねるけれど、観覧車とか、それこそモンスターが飛びたしてくる迫力の映像のたぐいであればなんとか出来るかも知れない。

フラッシュモブなんてのも面白い。学園を廻っている最中に、急に音楽が流れ出して学生が踊り出すんだ。日本人は恥ずかしくて誰もやろうとはしないが、いざ恥じらいを捨ててやってみると、思いの外、面白かったりするのである。

魔法学校なんて素晴らしい提案が出てきたぞ。一昔の時代には魔法の世界を題材とした作品が世を席巻したのだけれど、それを現実の世界としてやるというのは実に面白い。コープゲームの実力を問うにはもってこいだ。

一通りの意見が出尽くした後は僕ら委員長と副委員長の採決を持って決める事になっている。多数決というのもあったけれど、それは正しい意味での平等にはなりにくい。様々な可能性を模索する為にも、僕らで決めた方が良いのだ。
僕と小熊は机をこつりと合わせながら、さてどうしようかとお互いの顔を見合わせる。
小熊はきりっとした性格に対し、表情はいつも優しいもので出来ている。肩まで伸びた黒髪は、優等生の品格をより高い次元に押し上げている。そこから零れるぎゅっと集まった花束のような薫りは、このままずっとお喋りをしていたいと思わせるように穏和である。
「よくぞまあ、あんなにも意見が出るもんだな」
「みんな楽しいことが大好きなのよ。学生の本分は勉学ってよく言うけれど、それと同じくらいに遊ぶ事は大切だと思うの。そういう意味では優秀なクラスだって言えるわね」
「それもそうだな。そんな楽しみにしている人を満足させるような正答を導き出すのは大変だぞ」
「そこなのよ。どれもいい提案なのだけれど、ここまで多いと流石に難しいわね。……そういえばサクヤくんの考えていた提案ってなんだったの」
そうだ。みんなの勢いに押されて一言も喋っていなかったんだ。
「僕はそうだな、学校を舞台にした探検ゲームをしたかったんだ。この学校、異常に広いだろう? だから見学も兼ねて色々な場所を探検するんだ。もちろん化け物も出てくるけれど、あくまで流離い、冒険の雰囲気を味わうのが醍醐味なんだけどね」
小熊は少し固まったような素振りを見せると、うんうんと一つ一つ何かを確認する様子で頷き、そして何かを弾き出した。
「うん、それいいじゃない。コープゲームでこの学校を異世界に変えちゃいましょうよ。それなら魔法学校だってお菓子屋さんだって、それにフラッシュモブだって一つのイベントみたいに扱えるわ!」
そう巻き気味に即答すると、小熊は再び教壇の前に立ち、身振り手振りを交えて演説を始めた。公衆はふむふむと頷きながら、最終的に満場一致の割れんばかりの拍手で総統を讃えたのであった。
あんなに生き生きした小熊を見た僕は、一言も喋らずに荒い鼻息をもって彼女の意見に共鳴賛同したのである。

校舎がぐるりと囲むように作った中庭には、丁度真ん中辺りで屋上まで伸びている塔が生えている。銀にも似て綺麗な白い塔には、背丈ほどの窓がむき出しの螺旋階段に沿って計算されたように配置されている。太陽の光をさんさんと浴びたそれは、虹色に輝く幾何学模様の光の筋を創造し、幾重にも重なって不思議な陰影を織りなす。まさに螺旋の街路を神秘的に演出スポットライトのようだった。
螺旋階段の行き行く先、つまり天辺に吊されている目映いほどの鐘が大きくゆっくりと揺れ始めると、校舎が、庭園がそれに共鳴し合い、僕らに昼の訪れを囁いてくれる。
庭園を飾る樹々の空隙から溢れる日差しが、僕と未樹が座る長椅子を微かに胡粉色に染め上げる。眩しいのだけれど、時の狭間に迷い込んでしまったような、ゆったりとした時間に感じられる。

「すっごく面白そうじゃん! なんだよサクヤ。そんな事を朝から考えてたのかー」
「考えていたというか、漠然としたものを委員長が料理してくれた感じだよ」
「みんなの意見をぱっとまとめて決めちゃうんだから、その委員長さんとやらはただ者じゃないねー」
探偵を気取ったように眉を潜めて言ってきてはいるが、あの統率力をまじまじと観てしまった当事者からすると、これが案外、外れでもないのかもしれない。
「未樹のクラスは順調なのか?」
「あーうん。ほら、コープ使っちゃえばあっという間じゃん? どんな衣装にしようか迷ってるぐらいかな」
「どんな衣装でも似合うと俺は思うぞ。元が違うからな、元が」
「どこか皮肉交じりな言い方だなーサクヤ君」
ぐりぐりと脇を小突きながら、やや重みのあるカバンから可愛らしく小さい弁当を出す。
「でもまあ僕の所はすぐ出来るからいいんだけど、サクヤの方は結構な規模なんだから準備とか大変なんじゃないの? 週末の休みを抜かすと二日しかないよ」
「ああそこなんだよな。委員長とも話したのだけれども、時間は掛かりそうなんだよな。コープを使ったって、結局の所は元のアイデアを想像しないといけないし、広大な学校の下調べをしなきゃいけない。それにみんなの意見を反映させようと思うと、しっかりとヒヤリングが必要だし」
コープは現実世界に摩訶不思議なものを作ってくれるものではあるが、結論を言うと、僕らの想像力に頼るところがかなり大きい。『世界一怖いお化けを作って』とお願いしたとしても、自分の中で一番怖い存在が出てくるのが、よく知られる定石である。
「うーん。聞いてるだけでも大変そうだよ。もうお昼なんだし、ご飯でも食べればいい案が出てくるんじゃないかなー」
長話はいいからご飯を食べさせろと、遠回しにもなっていないご意見が出てきたので、あ、はい。と小さく謝罪して、ご機嫌を損ねないうちにご飯を食べる事にした。

ハムカツサンド。それは誰が考えたか知らないが、恐るべき魅力を秘めた食べ物である。本来なら薄く切られ、レタスや卵といったサンドイッチの定番達に押し挟まれるハム。そんな脇役の彼が柔らかく主役を包み込むパン生地に身を任せ、堂々と歩むことが出来る花道なのだ。
少し焦げたソースと、仄かに誘うパンの甘美な匂いが辺りの目を炯眼にさせる。
「うわー。美味しそう。ハムカツサンドじゃん。それも大勝屋の特製ハムカツサンドじゃん!」
未樹が目を輝かせるのもその筈、この地方で知らない人はいないと——少なからず僕はそう思ってる——言われる程の人気店の味だ。機械には決して表現出来ない繊細な味付けは、何か困ったとき、多くのことを考えなければいけないときに、この味を身体が求めてくる。学校まで持ってくるのは初めてではあったのだが、文化祭という大イベントに主役が登場してくるのは、然るべき事だったのかも知れない。
「いいないいなー。ねえサクヤ。ちょっとくらい分けてくれるよね。そうだよね」
子犬のようではあるが、鵜の目鷹の目で主役を狙うその姿は、まるで何としても舞台の座を奪おうとする奸婦のようであった。
「当然だろ? 俺はそこまで人として落ちこぼれてはいないのさ。ほれ」
ひょいっと摘まんだハムカツサンドを未樹の真上に垂らす。芳醇な香りに釣られたそれは、恥じらいもせずに齧り付く。
天にも昇るようなその微笑みは主役を射止めた天使のようだった。
「ふぁふがだねー。ひちひゅうとひょうすにふさわひいあじだよー」
どうやら褒めてくれている——おそらくだが——ようだ。死に物狂いで獲得してきて心から良かったと涙ながらに思う。
未樹はもぐもぐと軽快なリズムでお口を空にすると、「ふぅ」と一息吐いた。
「僕、これ大好物なんだよね。大勝屋がお母さんの仕事場の近くだから、たまに買ってきてもらうんだ」
「おいおい、大勝屋の近くって事は、未樹の母さんが働いている研究所って、VRUの事かよっ」
「うんうん。そうだよー。よく知ってるねー」

VRUは国際開発機構の出資で誕生した仮想技術を担う第一線で活躍する組織だ。僕らが身につけている学生証代わりの端末もこの会社が作っているし、一般に言うコープゲームは、そもそもこの会社が生み出したテクノロジーを指している。
大勝屋近くの研究所は本部ではないが、それでも一般人は勿論近づくことすら許されないし、研究者として採用されるには想像を絶する鬼門が待っているだろう。
仮想技術のおかげで、世界は根本から変わっていったと言われている。僕らのように高度な遊びとして使う分は可愛らしいだけで済んだだろうが、政治や軍事はいち早く飛びついた。それ故に、要塞のような印象さえ受けるその研究所の拠守振りは納得のいくものだった。
結局の所、大人達がそれらを使って何をしたかというと、元々が不安定な話だから語る事はしないが、平常通り正しい道で進むわけもなく、僕らが人生の目標探しに困窮している現勢を造形したのは間違いないのようのない事実だ。政治というのは何時の時代になっても変わりはしない。過去の歴史を根拠にしてその結論が導き出せる。
「今のご時世で知らない奴はいないだろ。彼処に近付くのだって、遠いし、普通の事じゃ近寄らないぐらい居心地が悪い所だし」
「……」
未樹はぷるぷると震えだした。なんだ、進化でもするのか。
未樹はすうと顔を上に上げると、僕を見上げるようにして寂しさ半分、亢奮半分で物語った。
「サクヤ君。僕らは行かなければならない場所が出来たようだ。さあ行こう。最果ての秘境へ!」
未樹は左手を高らかに、時に摩訶不思議なものを創造してくれる太陽へ向けて指さした。その左手によって作り出された物陰に隠れる右手は、まだ一口も食べていない最後のハムカツサンドをちゃっかりと掠め取っていた。
ここまで彼を魅了するハムカツサンド。もはや崇敬を通り越して嫉妬さえ思惟してしまう。なんだろう、悔しい。

ハムカツサンドの器量(25枚) ©さばのみそ煮

執筆の狙い

"新世界より"を読んだあとに書いた作品。
学園モノで程よいSF感。それでいて同性愛がうっすら見える距離。
そして、「腹減った。夜食にハムカツサンドが食べたい……」という欲求が文字に出てしまった狂乱作です。
機械に仕事を取られたら、やりがいを見つけるって難しいのではと思うこの頃です。

さばのみそ煮

121.200.188.114

感想と意見

二月の丘

『新世界より』って、長野まゆみ??
長野まゆみは読むんだけど、「SFジャンルのは嫌い」なんで、それは読んでいない。


書き出し、
 >少し肌寒くなってきたこの時期は、街路樹がほんのりと色を付け始め、僕たちに一年が終わりに近づいている事を布告してくれる。
の「布告」の使い方から引っかかり覚えて……
ざざっとスクロールで眺めた範囲でも、「漢字表記された言葉」のセレクトが、全体に「大仰」「不適切」な感じで、座りが悪いし「カチッと嵌っていない」感じする。。

掉尾の、
 >もはや崇敬を通り越して嫉妬さえ思惟してしまう。
も、、、「思惟」??


その書き方(文語調硬め表現?)を採択している割には、
 >未樹のコスプレ姿を拝めると思うと、間近に迫る文化祭が待ち遠しく感じてしまった。
とか、
 >そういった時代になったんだと、僕は時々しんみりと考えに浸る。
ってな、油断した箇所(たぶん作者の素の文体?)が入り混じってるから、
作品世界の均質性? が崩れてバランスがヘンテコ、「印象が散漫」になる。


「長野さん的雰囲気」を、一旦取り込んで消化して、
【自分の文体(スタイル)に落とし込んで書く】と・・
書いている側には、「書き上げたことの達成感」は大きい。
だけど、それは「読者には関係のないこと」だし、
そのまま公募に出したりなんかすると「審査員先生方からの山ほどのお叱り」を頂戴する羽目になる。

そんでもって、「凝りまくった記述法が癖になって」「なかなか元には戻せない」んで・・


「学園もの」だったら学園ものに絞って、まずは「シンプルに書き切る」方がいいと思う。

2018-02-10 14:19

219.100.86.89

ちくわ

貴志祐介じゃなあい?

ハダカデバネズミの。 



漢語は良く調べてから使わないと間違いやすいす。

>好き嫌いが他人から達観して顕著に分かるのだから、強いて毎度のように勉強しろなどと奴に言うことは、疾うの昔に諦めた。

だめじゃん。

2018-02-10 14:29

220.221.69.173

黒井太三郎

SFなのかなただのラブコメに読めた。

2018-02-11 20:59

121.109.111.65

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