作家でごはん!鍛練場

『半券』

(本)著

短いですが、よろしくお願いします。
感情移入していただけたら嬉しく思います。

「お、お、お、俺の!」
お、お、お、俺の?
親父の叫び声が隣の部屋から響いた。
「こうなったら……!!」
次の瞬間、僕の部屋のドアが勢いよく開いた。
親父は手に持っていた分厚いハードカバーの本を僕に押し出すように見せた。その朱色の表紙には見覚えがない。
「お、お前、この本をさわっただろう」
震える声で親父は言う。本を持つ手も小刻みに揺れている。
「その本は知らないけど……」
うっかり、その本はと言ってしまった。僕は心の中でしまった! と言った。実は、『***』は読んでいる。
親父の本棚はなかなかのコレクションで、ひっそり探索することがある。
親父はそんな僕の表情に気付いてか気付かずか、
「本当か」
と言った。
僕は、食べかけの炭酸煎餅から口を外して、
「その本がどうしたの?」
と聞いた。
「それは、その」
親父は話し出した。
親父が言うには、この本の真ん中に、『風と共に去りぬ』の半券をはさんでいたらしい。
親父は、
「これは、あいつしかいないな……」
と言った。
「やっぱり、そう思う?」
僕は炭酸煎餅の缶をテーブルに置いた。
「兄貴の部屋に行く? いるみたい」
親父は、自分の部屋と反対側の壁を見て、憂鬱そうにうなずいた。

ノックをしたドアから出てきた兄貴は不機嫌そのものだった。寝起きのぼさぼさ頭に、いつもの大きな黒いスウェットを着ている。
僕を見ると、苛ついた表情をした。
親父が
「お前……」
と言うと、やっと親父を見た。
「半券……」
親父がそう言うと、
「用事はそれだけ?」
とドアを閉めようとした。
僕が、
「あ、兄貴」
と声を掛けると、
「お前まで何か用か!」
と怖い表情になった。
「兄貴は、素晴らしい映画ファンだと心得ております」
兄貴は黙ってうなずく。
「特にお好きなのは……」
「アクション」
「でも……」
「素晴らしい映画はなんだって愛している」
親父は心配そうに僕の顔を見た。兄貴は変わらず、親父の目を見ようとしない。
「兄さんは、親父の部屋の『***』という本を読んだことがありますか?」
「あるわけねーだろ!」
僕はにやっとした。
「おや、内容はご存じ?」
「い、いや……」
兄貴は珍しく焦りの表情を見せた。
僕は兄貴に言う。
「映画というものは」
「その内容にふさわしい者だけが見ることができる」
「風と共に去りぬは」
「愛する者のもとに」
親父が真剣な声で、
「私も愛してくれよ」
と言った。
兄貴は親父の顔を見て、言った。
「風と共に去ったのは」
「憎しみか」
「……返すよ」
兄貴は部屋の中へと入った。

(了)

半券 ©(本)

執筆の狙い

短いですが、よろしくお願いします。
感情移入していただけたら嬉しく思います。

(本)

49.96.7.247

感想と意見

やどく はなつ

読ませていただきました。短くて読みやすかったです。

感想としては、仲いい家族なんだな。とほのぼのしました。
しかし、親父さんと兄貴さんの性格やどういう人なのかが気になりました。
あと、『***』は何と読めばいいですか?名前を決めた方がさらに読みやすくなると思います。

2017-12-07 17:14

202.156.243.214

(本)

やどく はなつ 様

お読みくださり、ありがとうございます。
親父さんと兄貴さんの性格がわかりにくかったですか……。人物の書き込みがまだまだ甘いみたいです。
『***』は、えーと。本当は秘密なのですが、『愛の夢』とお考えください。
ご感想ありがとうございます。

2017-12-07 17:42

49.96.7.247

なばあ

短くてテンポも良く、とても読みやすかったです。
しかし、状況の説明が足りず、途中でちょっとおいてけぼりになりました。
でも、短い中でここまできれいにまとめられるのはすごいと思います。
次はもっと長いのも読んでみたいです。

2017-12-08 16:52

222.14.236.130

(本)

なばあ 様

ありがとうございます。
そんな風に書いていただけると、ほっとします。
そうですか、おいてけぼりの感じでしたか……。
いつも短いので、長い話も書いてみたいです。

2017-12-08 21:08

49.96.7.247

(本)

英訳してみました。
ご興味のある方、よろしくお願い致します。

'HALF TICKET'

「お、お、お、俺の!」
お、お、お、俺の?

'M, m, m, my!'
M, m, m, my?

親父の叫び声が隣の部屋から響いた。
「こうなったら……!!」

I heard my father's cry from his room.
'That's so...!'

次の瞬間、僕の部屋のドアが勢いよく開いた。
親父は手に持っていた分厚いハードカバーの本を僕に押し出すように見せた。その朱色の表紙には見覚えがない。

The next moment, someone opened my room's door with a big sound.
That was my father. He showed a hard covered book what is very thick in his hand. I have not seen the crimson cover.

「お、お前、この本をさわっただろう」
震える声で親父は言う。本を持つ手も小刻みに揺れている。

'D, did you touch this book.'
He said in a trembling voice. His hand was trembling also.

「その本は知らないけど……」
うっかり、その本はと言ってしまった。僕は心の中でしまった! と言った。実は、『***』は読んでいる。

'I don't know that book.'
I said 'that book' without thinking. I said 'Oops!' in my mind. Actually, I have read '***'.

親父の本棚はなかなかのコレクションで、ひっそり探索することがある。

There is a collection of books in my father's bookshelf, I have searched in there sometimes with secret.

親父はそんな僕の表情に気付いてか気付かずか、
「本当か」
と言った。

I don't know if he noticed my face,
'That's true?'
He said.

僕は、食べかけの炭酸煎餅から口を外して、
「その本がどうしたの?」
と聞いた。
「それは、その」
親父は話し出した。

I took tansan-sembei out of my mouth,
'What's happen about that one?'
I heard.
'That is, is'
My father began to talk.

親父が言うには、この本の真ん中に、『風と共に去りぬ』の半券をはさんでいたらしい。

What he says, there was the half ticket of 'Gone with the wind' in the middle of that's pages.

親父は、
「これは、あいつしかいないな……」
と言った。
「やっぱり、そう思う?」
僕は炭酸煎餅の缶をテーブルに置いた。

My father said,
'That was caused by him...'
'You think so also?'
I took the bottle of tansan-sembei on the table.

「兄貴の部屋に行く? いるみたい」
親父は、自分の部屋と反対側の壁を見て、憂鬱そうにうなずいた。

'Would we go to my brother's room? I think he is there.'
Father nodded his head depressingly seeing the wall facing his room's.

(続く)

2017-12-09 20:03

49.96.7.247

(本)

ノックをしたドアから出てきた兄貴は不機嫌そのものだった。寝起きのぼさぼさ頭に、いつもの大きな黒いスウェットを着ている。

My brother who went out from the door looked just unpleasant. He has messy hair and took usual black big sweatsuit.

僕を見ると、苛ついた表情をした。
親父が
「お前……」
と言うと、やっと親父を見た。
「半券……」
親父がそう言うと、
「用事はそれだけ?」
とドアを閉めようとした。

When he looked at me, he showed more unpleasant face.
'You...'
Father said to him and brother looked him at last.
'The half ticket...'
Father said that only,
'Your order is only that?'
Brother said so and was going to close the door.

僕が、
「あ、兄貴」
と声を掛けると、
「お前まで何か用か!」
と怖い表情になった。

I said to him,
'M, my brother'
'What order you also!'
He turned in frightening.

(続く)

2017-12-09 20:14

49.96.7.247

(本)

「兄貴は、素晴らしい映画ファンだと心得ております」
兄貴は黙ってうなずく。
「特にお好きなのは……」
「アクション」
「でも……」
「素晴らしい映画はなんだって愛している」

'I know that you are a very movie fan.'
My brother nodded with silence.
'Especially, you like...'
'Action'
'But...'
'I love whatever a good movie is.'

親父は心配そうに僕の顔を見た。兄貴は変わらず、親父の目を見ようとしない。

Father looked at me anxiety. Brother don't look at him still.

「兄さんは、親父の部屋の『***』という本を読んだことがありますか?」
「あるわけねーだろ!」
僕はにやっとした。
「おや、内容はご存じ?」
「い、いや……」
兄貴は珍しく焦りの表情を見せた。

'Brother, have you read a book in father's room '***' ?'
'Why have I done that!'
I grinned.
'Oh, do you know the detail?'
'N, no...'
Brother looked like in a temper unusually.

(続く)

2017-12-09 20:16

49.96.7.247

(本)

僕は兄貴に言う。
「映画というものは」
「その内容にふさわしい者だけが見ることができる」
「風と共に去りぬは」
「愛する者のもとに」

I said to brother.
'The movie is.'
'Only someone loves that can watch.'
'Where has gone with the wind?'
'To whom loves that.'

親父が真剣な声で、
「私も愛してくれよ」
と言った。
兄貴は親父の顔を見て、言った。
「風と共に去ったのは」
「憎しみか」
「……返すよ」
兄貴は部屋の中へと入った。

Father said seriously,
'Please love me.'
'What has gone with the wind?'
'That's hate.'
'I'll return that to you.'
He went into his room.

(了)

2017-12-09 20:18

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