・説明-解説について

エド

先日、初めて小説(のつもり)を書き上げ、知り合いに見て貰ったのですが、「前半は説明不足だね」と言われてしまいました。
そこで質問なんですが、みなさんはモノについてどの程度書き込みしますか?
たとえば“おしぼり”は説明しなくても“フィンガーボール”は説明するとか...。
そんな線引きを教えてくださいませ。


にゅう

 それは対象とする読者、話のリズム、モノの重要度などによると思います。
 たとえばほとんどの読者がそのモノを理解できるかということが上げられると思います。
 一定の年代、性別、住んでいる地域、趣味などによっては当たり前のモノでも、それ以外の人にはまったくわからないというモノがたくさんありますよね。
 不特定多数の人を読者にしたいと考えてるならば当然説明をつけたほうがいいですね。
 しかしあまりに説明が多すぎると話のリズムが壊れてしまう恐れがあります。
 説明ばかりで話の進まない小説なんて、だれも読みたくありませんから。
 そこで重要度の高いモノや、話のリズムを折らない程度の説明だけ本文に入れてあとは最後に注釈として入れておく方法があります。
 よく外国の小説や歴史小説などで使われている方法ですね。
 ただあまりにも当たり前すぎることなどを書きすぎたりすると新人賞などでは印象が悪くなると思いますが。


黒猫

 たとえば、モノというのは、どんな場面に登場するどんなモノなのでしょうか。エドさんが実際に書いて、説明が足りなくて読者に伝わらなかったその物体は、はたして何なのでしょう。
 それが「地球から20万光年離れたエルシオス星の文明では日常的に使われている、ペペキノリマという道具」だとしたら、まるっきりこの通りに記述されてもどんな物体だかまったくわからないです。が、「近所のホームセンターで購入した家庭用中性洗剤」だとしたら、説明は一切不要です。

 さらに考えると、はたして「モノ」についての説明が不足だと言われたのでしょうか? 「晴美は歯を磨きながらテレビを見ていた」という記述があったとします。これも「中学生の晴美が歯を磨きながらテレビを見ていると、母親から早く出かけるように言われた」と記述することで、朝の風景ではないかと読者は想像できるようになります。
 いつ、どこで、誰が、何を、どのように、どうしたか。いわゆる5W1Hですが、上記の表現方法では、直接記述することなく「いつ」という要素を読者に想像させるように仕組んでいます。「どこで」という情報も省略しているわけですが、これも「中学生の晴美がリビングで歯を磨きながらテレビを見ていると」という表現にすると、またずいぶんイメージが変わってくるのではないでしょうか。

 また、前半が説明不足ということは、後半はどうなのでしょう。もし後半が説明不足でないのだとしたら、前半と後半を読み比べてみると良いのではないかと思うのですが。いかがでしょう?


エド

にゅうさん、ありがとうございます。

>一定の年代、性別、住んでいる地域、趣味などによっては当たり前のモノでも

やっぱり、そうなんでしょうね。
実は、以前、職場の仲間が(年齢31歳)食事から帰ると「なんで、あのチゲラーメンは辛いんだ!」と怒っていました。
もちろん僕は「そりゃ、チゲだから」と答えましたが、どうやら彼はチゲの意味を知らなかったようです。
他にも、焼肉屋でタン塩をタレに付ける人とか(趣味じゃなくて)もいて、それ以来、当たり前のモノというのがイマイチ掴めなくなってしまいました。
さすがに、鉛筆やノートは問題ないでしょうが、トレーシングペーパーとかハードディスクとかになると“?”です。
とりあえず、特殊と思われる語句については、うまく説明入れていくしかないですね。

黒猫さん、サンクスです。

>説明が足りなくて読者に伝わらなかったその物体は、はたして何なのでしょう。

ふと、気づいたのですが、もしかしてピッキングツールかも。

>はたして「モノ」についての説明が不足だと言われたのでしょうか?
>前半が説明不足ということは、後半はどうなのでしょう。

うーん、もしかすると時間経過に対する文章量の可能性があります。
つまりこれが、質問に“書き込み”と書いた理由なんですが。
主人公が、武器その他をどうやって入手したかを説明してるトコがあり、そこは原稿用紙1枚程度しか使ってないんです。
そこは自分的にはあまり重要なシーンとは考えていないものの、いきなり日本で銃とかもってたらオカシイでしょうから入れたんです。
ただ、前フリの部分だったので、テンポを考えてさらっと書いてしまったんですけど...。
つまり、それで前半は...という話なのかも知れません。
自分的には演出(?)だったんですけどねー。


黒猫

 ピッキングというと、錠前を開ける技術ですね。その道具の形状を描写してもしかたないでしょうし、ピッキングのツールと言っても多少マイナーな単語ですから、知ってる人は知っていても知らない人は知らないわけで。そこで「ピッキング」という単語を用いずに記述する工夫をするか、あるいは「ピッキングのツールというのが鍵空けの道具である」と読者にはっきりわからせる部分をタイミング良く割り込ませるか、どちらかになるのでしょうね。
 私の個人的な解釈ですが、ピッキングや武器の入手といった場面の登場する物語の特性から創造して、やはり「ピッキング」という単語を登場させたほうがかっこいいと思います。ですから、そこをどう演出し読者にわからせるかが鍵ですよね。

 たとえば。

「なんだ、そりゃ?」
 不思議な形に加工された数本の針金を取り出したのを見て、奴はたずねた。俺は鍵穴にそれを差し込んで作業を開始しながら、言った。
「ああ、ピッキングのツールさ。鍵を開けるのに使う」

 このように、ピッキングを知らない登場人物を利用するのが簡単です。が、ピッキングを知っている集団同士だった場合、この手は利用できません。

「ピッキングのツールを」
 俺が小声で言うと、相棒はいつもの小さな袋を渡してくれた。
 中には不思議な形に加工された数本の針金が入っている。俺はその中から3本を選び、鍵穴に差し込んだ。十数秒。ドアのノブが静かに回った。
「よし、入れるぞ」
 ピッキング、つまり鍵開けのスキルは、チームの中では俺が一番優れている。

 こんなところでしょうか。
 まだまだ手は考えられますよね。ピッキングに限らず、様々な場面を描写するとき、少ない行数、文字数であっても、それを読者に伝える方法を工夫することができます。
 可能性は無限大です。

 それと、時間経過についてですが。
 たとえばそれが演出であるとして作者が意図した部分なら、そこを説明不足と言われた場合、説明を増やすよりも演出として何が不足していたのかを考えたほうが、狙い通りのものに近づけるのではないでしょうか。
 単に時間経過ならば、「次の日」と一言書けば、たった一行で丸一日時間を進ませることができます。先日テレビで見た「猿の惑星」などは、寝て起きただけで数百年という時間を経過させていました。
 時間経過と文章量は比例しないわけです。
 武器入手の場面を適度にぼかす手法は手加減次第なので、確かに難しい判断が必要だと思います。説明しすぎてしまうと、読者は逆に説明不足を感じます。説明が足りないと、読者には何が起こっているのかまったくわかりません。
 謎めかして読者に適度に想像させるのが良い方法なのでしょう。たとえば登場人物に、「こんなもん、どうやって手に入れたんだ?」「企業秘密さ」と会話させると効果的かもしれません。

 もうひとつ、大事なことに気づいたので、よけいなおせっかいかもしれませんが、一言だけ添えさえてください。
 エドさんの最初の発言と比較すると、2番目の発言のほうが具体性が増していて、最初の発言の説明不足をずいぶん補えているように思えます。読者に必要な情報を提供するという作業
は、小説だけではなくこういった場でも鍛えられることがあります。
 ふたつの発言を見比べて、何が違うのか研究してみると面白いかもしれません。


近所一 一

 説明が必要か、必用じゃないかを考えるより……説明するモノの重要性を考えた方がいいと思います。例えばハードディスクやトレーシングペーパーの固有名詞も、その後に続く話に絡んでくるなら必要かも知れません。
 しかし、ただ会話の流れで出しただけで、それっきりなら説明するだけ行の無駄になります。逆にページが足りない場合は、埋めるのにいいかも知れませんが、そういう特殊なケース以外は入れない方がテンポよく話は進むはずです。

 例【HDの説明】を書いてみます。

1.
「これって、ハードディスクの容量が足らないと思うんだよ」
 ハードディスク【HD】――店にはよくHDと略されて書かれているが、これがないとパソコンはただの箱になる。黒い画面は映るだろうが、訳の分らない文字の羅列を見るだけなら、赤いダイヤル式TVの方がよほど役に立ってくれるだろう。
 (キャラA)の言葉を中身半分理解した(キャラB)は、新しいパソコンを買わなきゃならいと思いこみ、ダイエット中の女子高生よりスリムな札入れを見て頭を抱えこんでいた。
「金ないのに新しいパソコンなんて買えないよ」
「はっ?HDを増設すればいいだけだって。でも、その財布の中身は致命傷だな。HDも買えないかも」

2.
「僕が、今ほしいのは、ハードディスクかな」
「またパソコンの話?たまにはパソコンの事、忘れなさいよ」
「ちょ、ちょっと」
 (キャラC)は、(キャラA)の手を取り、アンティークの小物のように映る商店街へと駆け出していた。

 1はHDが話に絡んでるので、説明を入れて上げた読者に親切です。逆に2番はHDが絡んでないので説明を入れるとお節介になります。仮に(キャラC)がパソコンを知らないとしても、『HDって、何?』みたいな説明を入れてしまうと……テンポが破綻します。現実として考えてみても、パソコンに余程興味がない限り質問されることはないはずです。こういう風に考えてもらえれば、説明を入れるか入れないかは分ってくると思います。


エド

黒猫さん、丁寧な対応ありがとうございます。

>そこをどう演出し読者にわからせるかが鍵ですよね。

そうですね。
如何せん、そのシーンで大量のアイテムを入手させたので、いちいち説明を入れたく無かった上、主人公が一人で行動してたもので...。
でも、今考えると、“開錠用のピッキングツールを入手”って書いておけばよかった気がします。
でも2番目の例文はカッコイイですね。
次回から無駄な説明を省くのではなく、カッコイイ演出をするチャンスと受け止めます。

>時間経過と文章量は比例しないわけです。

そうですよね。
僕も“それから1週間後”などの記述を入れていたのですが...、
うーん、今度会ったら細かく聞いてみます。

>2番目の発言のほうが具体性が増していて

ご指摘感謝します。
掲示板への書き込みというのが初めてなもので、何をどのくらい書いたらいいのかわかりませんでした。
でも文章を書く、というのは、どんな場でも練習になるのですね。
これからも、がんばります。


エド

近所さん、どうもです。

>説明が必要か、必用じゃないかを考えるより……説明するモノの重要性を考えた方がいいと思います。 『HDって、何?』みたいな説明を入れてしまうと……テンポが破綻します。

おおっ、それはいいかも知れない。
自分の想像の産物と恐らく一般知識でないもの以外は、重要でない場合、パスしていきます。
あっ、もちろん好きで説明したい場合は書きますが...。
特にキャラの肉付けしたいときなどにね。

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