・筆の走り

弥代

 鍛練場で感想を書き込んでいてふっと思ったのが、「やはり個人個人で“筆が走る”ということがあるらしい」ということでした。
 “筆が走る”というのは、感覚として『言葉が、文章が溢れてきて止まらない』というような状況でしょうか。

 書いている情景、場面、テーマやモチーフが“走”らせることもあるでしょうし、これと別に、書いている自分自身の状態によって“走”るということも(書く時のBGMとか、時間帯とか、体調とか)あるでしょう。

 そういう状態で書いたものは、巧拙はともかく、勢いがあってなかなか良いものであると思うのです。少なくとも、書いた自分が「好きになれる」文章にはなると思うんです。

 そこで皆さんに質問。
 皆さんは、どんな状況で“筆が走り”ますか?


まりあ

 筆が走るのは、そのキャラクターの感情が自分に身近な時でしょうか。
 叫んだり喚いたり、とかの方が、さめざめと泣いている時よりも書きやすい気がします。
 しあわせだー、というのよりも、不満とか憤りとか、そういう後ろ暗いことのほうが、書きやすい気がします。
 いやだーくらいよー。


織倉

えっとね、ライターズハイになりすぎて、ほんとにヤバくなると、記憶がなくなるんです。
そして、目が覚めると、数十ページ原稿が増えてるのですわ!
小人さん~。ありがとうございます★彡


黒猫

出社直前とか、深夜3時過ぎとか、やめときゃいいときに限って筆が走ります。
「ヤバい!」という意識が集中力になるんでしょう。


深山

聞いてるBGMが気分とシーンにマッチしたとき…
あるいはなにかに感動してハイになってるとき…
…テスト前、追い詰められてるとき…(笑)。
集中しているときがいいみたいです。どうやら。


「筆が走る」
初めて聞きました。
でも確かにそうかもしれません。私の場合、話をさきに決めて書いてますから、おおざっぱなことは頭に入っています。ので、キャラの台詞などは勝手にドドドッとキャラがかってにやってくれます。で、私がナレーター。
気がつけば、「わらーっ」と言うふうにまるで魔法のように終わっている。
(一話一話書いてるんです)
でもこれは本当に調子が良いときとか、良い日だったり。
悪い日だと白いテキスト形式を見て、「あ、も、やだ…」とかなんとかいって、クローズ(笑)。そういうときはやっぱり音楽を聞くとやる気になりますね。


深雪

実際に書き出す前までは、ブワーっと、セリフやら情景が出てくるんだけど。
ソレを整理して理由付けをして、その他いろいろ準備したりなんかして……。

いざ、書き始めてからの「筆が走る」状態は、私にとっては要注意だったりします。
後で冷静になってから読み返すと、とんでもないことになっていることが多々あるんです。
で、他人に読んでもらったところ「突っ走り過ぎ。アサッテの方向に行っちゃってる」と言われた。
いわゆる「キャラクターが勝手に動き出す」というあの状態の、悪い例ですが(~_~;)

もちろんこれは、私個人だけの状態限定ではありますが、私は、冷静に客観的にと心がけています。


黒猫

黒猫は、筆が走るとき、描写か流れのどちらかがお留守になります(^^;。

 描写に夢中になって筆が走っているとき、ストーリーがストップして読みにくくなっていたり。あと、会話文がだだだだ~っと並んで、情景がまったく目に浮かばなくなっていたり。
 ただ、走ったら走っただけラッキーです。書くだけ書いておいて、後から肉付けしたり不要な部分を削ったりできますから。削ることは少ないかなぁ。筆が走ると、その場面の骨格ができあがるから、あとは肉付けしてゆくといった感じです。
 ある情景が一気に頭に浮かんで、その思考速度に追いつくように文章をつむいでゆくので、どうしても必要な描写がすっぽ抜けたりする、という書き方を黒猫はしています。
書くだけ書いてから削る、という直し方が一般的なようですが、黒猫はこんな事情で後から足りないものをつけたして行くという書き方をしています。


瀬凪 優希

『筆が走る』確かにそう行った状況は、経験したことがあります。
 月並みですが、筆が走るのは『書きたいシーン』である時ですね。
 特にクライマックス・シーンはいいノリで、ばりばり書けてしまいます。

 逆に筆が止まってしまうのは、話の構成上必要だけれども、書きたいシーンでは無い場合。これは四苦八苦します。しかも出来上がったのを見て、気に入らないことが多くて書き直しとかしてしまいます。

 後、筆が走るとは違うかもしれませんが、シーンごとのカメラワークが比較的はっきりしていると、すごく書きやすいですね。
  ただしその場合、状況描写文が、かなり同じになってしまうので、注意をしながら書いております。(でも後で読み返すと、ああ、他人には繰り返しだよ、と指摘されてしまう気がして、加筆や変更も結構してしまうのですが……)

 ともかく、筆が走っている文章は、全体的に力が漲り、読んでいても感心できる文が多いのではないでしょうか? 


黒猫

 思考が暴走したときも、筆が走りますなぁ(笑)。
 屁理屈とかずらあああっと並べる場面とか。

 あと、情景があざやかに目に浮かぶ場面とか。
 絵的にイメージをしっかり持っていて、それがドラマティックに動いていると、走ります。

 場面と場面を結ぶ作業をしているとき、筆が止まります。
 黒猫が、パーツパーツを組み合わせるような書き方をしているためでしょう。


あすか

聞いているBGMがシーンの雰囲気(イメージ)にマッチした時、筆が走ることがあります。
あと、まりあさんが言ったのと同じように、キャラクターを思いきり身近に感じる時とか。

私にドツキ漫才を書かせると止まらなくなりますよぉ。
ふっふっふっふっふっふ・・・(怖い)

まあ、それもあくまで気分が乗ってる時に限りますが。
やっぱり情景描写などよりもキャラクターの特性を前面に押し出す会話や情景描写のほうが走り
やすいことは事実です。
ただ・・・私の場合、会話で筆が走ってるからといって油断していると、すぐ話が脇に逸れたりしてとんでもない事になります。
普通に書いていくよりもそれを修正していく方が時間が掛かるという・・・


ロケッツ

それがわかればねえ……集中できたら走るんですけど。

物語の中に入り込めたときです。自分で、その物語の先が気になって気になって仕方のないとき。

あと意外な展開という手札が小気味よくキメられそうなときは集中しやすいようです。

やっぱりプロットは大切ですね。


髙木 蒼

 私にとって筆が走る時とは?と考えてみたところ、

1. 好きなものの描写をしている時
2. 書いているお話と、自分の意識が完全にリンクした時  かなあ、と。
 
 1の場合は、もはや条件反射に近いです。私はどうも月や太陽の描写に命をかけてしまうようで、気が付けばだーっと進んでいたりします。
「振り仰いで見えた月」だけで二枚くらい無心で書いて、ふと我に返り、「なにやってんだ私・・・」と唖然とすることもしばしばです。
こちらは大抵削除の運命にあります。
もったいないので他の話に流用したりもしますが。

 2の場合のときは、はたから見ると放心している状態に近いと思います。
 頭がフル回転状態なので、周りがなにも見えなくなるのです。しかもところかまわずやってくるので、知りあいにはひどく迷惑がられます。厄介です。
 私の場合、頭の中にいきなり浮かんだ映像を文字に著そうとする場合と、前ぶれなくいきなり誰かの台詞が頭を通過して、(本当に通過するだけ。そこで捕まえないといなくなってしまう)そのあとでそのシーンがいつの、どういうシチュエーションかということまでがだーっと一気に出て来る場合とあるのですが、そのとき目の前にパソコンがあればしめたものです。まさに筆が走ります。
 うーんボキャブラリーが貧困で言葉にしづらいのですが、 語り手の立場に入り込めた時、とでもいえばいいのでしょうか。
 違う人格が現われたようでハイになり、物語中の物にリンクします。

 まあどちらにしろ、走ってもせいぜい三,四枚というところですね。
 けれど2は話に詰まった時にやって来ると、一気に展開が早まりラストまで行けるか、逆に、見えていたラストが遠のいてしまうかのどちらかなので、来たとこ勝負です。
 最近は後者が多くて苦しいのですが・・・。
 でも走る時は、どんな状態にしろ気持がよいです。脳内で麻薬物質大放出!
 これがやめられなくて私は書いているのかもしれません。
 弥代さんの言われるように、筆が走った時に書いたものは勢いがあって好きです。
 普段の自分ならば決して思いつかないような文章を書いていたりして、面白いです。


和惟

筆が走る…。
うーん。集中しちゃえば軽く三時間は書けます。
それまでがやたら長くて、極端すぎるなあ。
やはり筆が走るのは、掛け合いとか、自分とキャラが同調した瞬間…でしょうね。
夜中とか、やらなくてはならないことがあればあるほど、書きたくなる。逃避か?
私にはBGMって大切です。でも、本当に集中してると、聞いてないことに最近気付いた。

でも書かないときに限って発想が思い浮かびません?
誰かの台詞や場景が走ることは確かにあります。(苦笑)
なんか、家事をしてるときなんかにドワーって来られると、慌ててペンと紙をとりに走ったり。端から見ると変らしいですよね。


シナプス

皆さん映像が走るのけっこー、多いですね。
実は私もです。
私の場合純粋な映像ではなく、3.8次元とか4.2次元ぐらいと言うとすっきりする後、言語が補助になる、そんな感じの映像。
こういうのですけど、頭の中じゃけっこー素直に理解できるし、そう言うのは、書き上げるのも早い。
書き終わっても、けっこー理論整然としている感じで。


鐘辺完

最近、筆が走ったことはないんですけど、まあ、その前提で……。
とにかく戦闘シーン。どかばきぐしゃどかーん。って戦ってるシーンは筆が走りますね。
(頭悪そうな表現やなぁ……)
あと、他の方も書いてますが、キャラとシンクロできてるときのかけあいですね。


リリコ

私は一人称で書くことが多いので、心理描写で筆が走ります。
でも、その場合ねっちこいフレーズが並び、ひとりよがりが渦を巻いている状態になりがちなので、推敲時に苦悩のポイントとなります。

あとは、断片的なシーンがうまく繋がった時。
イメージが消えないようにと、必死で浮かぶ情景を写し取りながら追い掛ける。
その時は必死で走りますね。

30枚くらいの作品なら、筆が走ったまま「了」となることもあるのですが、走らない時は一枚も書けない。無理して搾り出してみても、結局後で削ったりと・・・辛いです。


ながつきりん

筆が走る・・・!
なんて素敵な響き!
…ここ最近、すっかり停滞したまま走ることを忘れつつあります。

すっごい書きたいシーンが、断片的に浮かんでくることはあります。
が、それはあまり文章にはならない。
元来、絵を主に描いてきたので、
映像として、頭の中で出来上がったシーンから起こして文字にしている感じです。

ぐわーんという感じで(?よく判らない?)これだ!というのがきても、いざ書こうとしたら、ダメなときの方が多いです。
勢いで書いた文章は、あとで読むととても浅くて、独り善がりになっています。私の場合は。

浮かんだものを暖めて、少しずつ言葉を「紡いでいく」というのが、自己流でしょうか。
それでも、書くときは一気に書くなあ。(結局どうなの?)

とにもかくにも、そろそろ走って欲しいものです。


書きたくなるまで書かないのが現状です。いいものか、わるいものか・・・
でも、書きたくないのに書いていくと絶対納得の行くものが出来あがりません。
映像と感情を一体にしていかないと話が流れないんです。
不便です。


細江

 書いていられる時間が少ないので、それ以外の時間に「あれも書きたい、これも書きたい」とたまりまくり、時間になったら筆が走ります。
 筆が走らないときは、まるで関係のないものを、書き散らします。するとのってきて、筆が走
るようになります。


綾乃

夕方、「憂鬱」ぐらいが調度よい!
なーんか暗い歌を聴いたときとか、重々しい雰囲気の時、例えばバッハの「小フーガ」。
過去、一番来たときは合唱コンクールの指揮者の指導をマンツーマンでバシバシ受けていたとき。うまーく、私の創作意欲とアイデアがマッチして、そこに音楽が絡み合い・・・。
悲劇が好きなので「低く多きな暗いもの」に触れているときですね♪
「残酷な天使のテーゼ」もよかったなあ。


流浪人

 私の場合、ストーリーが映画みたいに鮮明にぱぱぱって浮かんできて、それを表現する言葉とかも、あとからあとからあふれ出てくるときに、筆が乗ります。指だけが追いついてない、みたいな。
 そんなときにはやっぱり、筆が乗らないときに無理やりひねり出した文章よりも、いいのが書けるような気がします。自己満足かもしんないけど。


一砂

私の場合はですね、主人公あたりが何かしらのピンチに陥ってる時が、一番書けますね。
それも、精神よりは、肉体的に痛いもの。
これは、どんな気分のときも書けます。楽しいくらいに。
私自身の状況としては、授業中。(笑)静かできれいな場所って、そこくらいなんですよ…。
あとは、深夜ですかね。静か。静かなところがいいらしいです。周りにも、自分に注目する人が誰もいないっていうのが、落ち着きます。想像力が広がって、書けます。


ゾノ

何年か書いていなくて、仕事を止めて、すごく時間があって、よし書くぞと思った時。
考えてみたら、そんな時しか、筆が走っていない。
ボクって、凡人なんですね。というか、作家に向いていないというか。
所詮、趣味人程度なのでしょうか。
といいつつも、何とか、これからは、毎日書かずとも、毎日、小説のことは、考えるようにしています。
やっぱり、作家になりたいんですね。
筆、また走り出すといいなあ。


えくさ

”筆が走る”時ですが、私は大概の場合では家の中の物の名前を頭の中に”書き込み続けた
時によく”筆が走る”という現象が起こります。
まぁこれだけでは本人にしかわからないと思いますので違う言葉で言うと・・・
「ワード」を思い浮かべると、それに伴って関連事項が2,3個浮かび上がってきてそこからは系統樹のように、またはネズミ講のように・・・。
そして数学のように当てはめていけば、あら不思議、支離滅裂な文章のできあがり。
なぜ支離滅裂というか意味不明というかそのような文章になるかと言うと設定やメモが全くできてないからでしょうね。

ちなみに皆さんの言っている「内容、もしくはキャラにリンクした時」というのはえくさには向いていないみたいです。
まぁ喜怒哀楽の“喜”と“楽”の時ならまだしも“哀”の時は気狂いのようなサイコチックな文章も多々有りがちです。

ちなみに今まで(私は文学歴がまだ半年という未熟者ですが・・・)筆が進まなかった事は1度もありませんでしたし、その内の三度に一度は“筆が走っ”てましたし、やっぱりやり始めは何でも楽しいのでしょうか?


ちゆみ

私の場合は、「夢」を利用(?)します。
この間締め切られた長編小説の応募では、賞の応募に合わせて設定や登場人物や起承転結を決め、導入部分の30枚程度は書いたのですが、そこから話がうまく流れていかない。
大筋は決まっているはずなのに、登場人物達がしゃべってくれない、動いていかない。
その話の全体を彩るトーンというか、匂いのようなものがどうも自分にも感じられなくて・・・・・・。
しかし、それからずっと、その話の世界についてを頭の片隅に置きながら生活していたら、ある日突然夢を見て――起承転結でいう「承」にあたる場面で登場人物が動いているシーン――
驚いて飛び起きた瞬間からパソコンに走りました。
(なんと、〆切まであと2週間という時期!)
後はラストまでひたすら、仮眠を取りながらのキー叩き。途中、やはり何度か流れが止まったりもしましたが、そんな時は「とにかく寝る」。
また夢を見て起きたら、頭の中ではすでに続きがつながっていて。
最後の200枚は、3日で仕上げました。ほぼ徹夜状態で意識がもうろうとした中での作業でしたが、出来上がってみたら、初の430枚の長編が完結! 

応募し終わってから作品のコピーを数人の友達に読んでもらって批評を受けましたが、彼らの全員が、冷静な頭で書いた最初の部分より、半分解脱したような状況で書いた後半部分へ、よい評価をつけてくれました。
(そんな書き方で、本当にどこまで審査が通るのかは、全く保証の限りではありませんが・・・)

万が一、それで賞を通過できたとしたら、
「ドリーム作家」を自称することを知人にも勧められました。


望月真人

 筆を走らせる前に、自分が今書くところはどんなところか、どんな人間が出ているか、どんなことをしようとしているのか、思いつくことを思いつけるだけ思いついたら書き始めます。
 頭の中でぐるぐると掻き混ぜるより、メモにして一覧にしています。
 1、2時間も集中するなんて事はできませんが、結構、思い描いたことは書くことができます。

 だから、筆が走るというか筆を走らせるというか。そんなところです。


中村

 毎日必ず作品に手をつけることを目標にして頑張っている時、何度かもう打つのがもどかしいぐらい走ったことがあります(ワープロ打ちなので)。
 私にとってはやっぱりじっくり作品と向き合ううちに走るものですね。というより初日から走ったことはない気がする。もうかなり自分が作品にのめりこみ、書いていなくとも頭の中で作品をいじくることに夢中になるとぐらいになると走ります。
 でもきっとそのときの私は危険人物になっているかも?


坂本康宏

 月並みな言い方で申し訳ありませんが「筆が走る」っていう状態は、僕の場合「降りて来る」ということなんでしょうね。

 降りて来るのが「神」なのか「悪魔」なのかは判然としないのですが、プロットを立て、大まかなストーリーとキャラクターを創り、書いているワケですから、奇妙な言い方かも知れませんが、自分としてもその部分のだいたいの面白さはわかっている筈なんですが、書いている最中に、何かが「ここは、こう書け」と囁かれでもしたかのように、自分が思っている以上のモノを書ける時があるのです。

 ただその時、嫁さんが話しかけてきても、子供がじゃれついて来ても、「聞こえていない」ので、怒られることがしばしばありますが^^;

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