「あなた宛に来てたわよ」
妻はそう言って、ダイニングテーブルの上に封筒を置いた。
八十嶋伸彦はソファから立ち上がり、封を切った。
八十嶋伸彦先生へ
突然のお手紙、申し訳ございません。私のこと覚えていらっしゃるでしょうか?昔、先生のクラスの生徒だった、三年D組の川添周子です。卒業して十年もたっているので誰だかわかりませんよね。
私は現在就職して、ごく平凡な毎日を送っております。学校を転任された先生が、今現在どんな生活を送っているのか興味本位で手紙を書きました。お返事をいただければ幸いです。
当時、学内ポストに投函した手紙には、お返事をくれませんでしたね。いや、いいんです。あの手紙に書かれていたことは忘れてください。
追伸 事故にあわれた奥さん、そして失明された息子さんはお元気でしょうか?ご家族の近況もお知らせしていただければ幸いです。
手描きで書かれた手紙が一通入っていた。
「誰から?」
外に干した洗濯物を取り込みながら妻が訊ねた。
リビングのソファに腰掛け、背中越しに彼女の声を聞くと、八十嶋は手紙を眺めながら、「昔の教え子だよ」とだけ答えた。
「ああそう。私、これから俊彦を学校に連れてくから」
「え?」
八十嶋が妻の方に振り向くと、そこに彼女の姿はなかった。しばらくして、玄関へと続く階段から、妻が息子である俊彦を介抱しながら降りてくる音が聞こえた。
「今日、なんかあるのか?」玄関で支度する妻に八十嶋は訊ねた。
「飴つくるんだよ」八十嶋のズボンを引っ張りながら俊彦は言った。
「飴?」八十嶋は下を向き、今年十歳になる息子の眼を見た。その眼はどこか虚空を眺めているようで、焦点が定まっていない。両目とも義眼だった。
「昨日の夜言ったでしょ、盲学校の母子教室で、子供と一緒に飴細工つくるの」玄関先の大きな鏡を見て、口紅を塗る妻は言った。
「あぁ、そういやぁ言ってたなぁ」
「お父さんも来る?」俊彦が嬉々とした口調で聞いた。
「いやぁ、お父さん不器用だからなぁ、行きたいのはやまやまだけど・・・」
「あなたは来ちゃダメよ、母子教室なんだから」妻はそう言って、玄関のドアを開けた。「夕方頃には帰るから」
「お父さんの分も作っといてくれよ、俊彦」
八十嶋の呼びかけに俊彦は大きく頷き「うん」と答えた。
妻と息子を送り出した後、ソファに腰掛けた八十嶋は、再びあの手紙を見直した。
―――川添周子。
彼の頭の中でモンタージュのように様々な生徒の顔が現れ、消えていく。川添周子に該当する顔はどうしても出てこなかった。
―――卒業して十年もたっているので誰だかわかりませんよね。
十年前といったら、彼がちょうど教壇に立ち始めてきた頃になる。新米教師だった八十嶋は、とにもかくにも明朗快活に、常に笑顔で生徒と接することを心情としてきた。生徒の悩みには、誰よりも親身になって相談にのった。その当時、生徒からの絶大な信頼を寄せられている教師は自分だったという手応えもあった。
だが、八十嶋にとって、十年という時を遡ると、何か言い知れない不安感が漂ってくる。それが何であったかを具体的に説明することはできない。幾つもの断片が散らばってあるだけで、漠然としないのだ。
弁護士だった妻はその時、妊娠していた。産休をとっている時、自宅で産気づき、同僚の車で病院に運ばれている最中に事故にあった。
電話でそれを知り、病院に駆けつけた八十嶋は、二人の男に呼び止められた。二人は刑事だった。彼らは、運転していた妻の同僚が事故によって亡くなったこと、事故がタイヤに仕掛けられた細工によって引き起こされた人為的なものだったこと、救急隊員が現場に駆けつけた頃には、妻がすでに出産していたこと、そして出産した幼児の眼球がなくなっていたことを告げた。
八十嶋は矢継ぎ早に頭の中では処理できないことを言われパニックに陥った。緊急治療室から出てきた息子を見たとき、助かったことへの安堵と同時に、なぜ産まれたばかりの息子がこんな目に、という疑問符が沸き立ち、この世の理不尽に深く絶望した。
しばらくして、「心当たりは?」と刑事たちに聞かれたが、はっきり、ないと答えた。
しかし今にして思えば、あの頃、自分の周りで不可解なことが確実に起こっていたような気はしていた。
教え子がホテルで変死体になって見つかったのも、彼は長年、気持ちの何処かに整理がつかないでいた。彼女が死んだことと、今回の事故のことは何の関連性もないので警察には何も言わなかったが、十年の歳月が過ぎて、やはりどこかで二つの事件が繋がっているような思いが、彼の中で再燃してきた。変死体で見つかった彼女の遺体の眼球も、息子同様、失われていたのだ。
だが結局、事故のほうは、妻の弁護士仲間であった男に恨みを持つ人物だということで的を絞られたまま、迷宮入りとなった。
八十嶋の教え子であり、変死体となって見つかった滝口美香は、後に彼女とのアブノーマルな性行為を強要していた男が逮捕された。男は彼女を売春していた。
俊彦はいずれ聞いてくるだろう。八十嶋はその時、眼を失っても奇跡的に助かった息子に真実を伝えてやりたいと思っていた。だがその真実が曖昧模糊としていて正体を掴めない以上、どうすることもできない。もしかしたら、自分の思い過ごしかもしれない。そうであってほしいという願望が八十嶋にはあった。真実を知ったとき、今までの日常が全て壊れてしまう予感がしていた。
―――学内ポストに投函した手紙には、お返事をくれませんでしたね。
八十嶋は思い出したように立ち上がり、二階の押し入れから、段ボール箱を引っ張り出し、箱いっぱいに詰まった手紙を一枚ずつ取り出した。学内ポストというのは十年前、八十嶋が赴任していた学校で設置されていた意見箱だった。思春期ならではの悩み、または学校への意見、口では言い難い様々なことが手紙に書かれ、生徒から投函された。当時、八十嶋は学内ポストの担当をしていたが、予想を反して手紙の量が多かったので、読み切れない手紙は自宅に持ち帰り、十年間押入れの中にしまっていたのだった。
「あった」と彼は思わず声を上げた。そこには川添周子とローマ字で表記された白い封筒があった。封を切ると、中から桜の模様で薄く彩りされた便箋が三枚入ってあった。
八十嶋伸彦先生へ
先生のクラスの川添周子です。学内ポストは先生が管理しているそうなので投函しました。
何から書き始めたらよいのやら…とにかく、私は先生に、告白しなければならないことがあります。それは、先生の奥さんと、そのお子さん、そして滝口美香のことです。でもそのことを直接、口にして伝えるのは苦手なほうなので、手紙で言わせてください。
私が数ヶ月前、義理の母との確執が原因で、家出したいと先生に相談したとき、先生は家出をやめるように諭してくださったのですが、私はそれを、あまり素直に受け入れられませんでした。
父の再婚相手としてやってきたあの女は、父が病気で亡くなるやいなや、父が生前大切にしていた職人道具を全て捨ててしまいました。あの女は初めから父の遺産目当てだけに結婚したのです。父が亡き後、私はあの女と二人屋根の下で暮らすという状況に、どうしても耐えられませんでした。
父は飴細工職人でした。父はよく私に飴細工を見せてくれました。様々な形の飴細工がありましたが、子供の頃の私がとくに惹かれたのは、人間の眼の形をした飴でした。私のその飴の光沢に吸い寄せられました。父はそれを「人間の澄んだ眼をイメージしたんだ」と言っていました。そういえば父の眼もその飴と同じ澄んだ光沢を放っていたような気がします。
そして、毎日、教壇に立つ先生の眼も同じ光沢を放っていました。
長々とこんな文章に付き合ってもらって申し訳ございません。
結論を先に言います。
滝口美香さんを殺したのは私です。そして車に細工をしたのも、奥さんの赤ちゃんの眼を抉ったのも私です。
これからそれに至った経緯について書きたいと思います。
本当に恥ずかしい話ですが、私は先生をストーカーしていたのです。
学校で私は孤独です。クラスの派閥に入っていくことができません。そして家に帰ってもあの女が待っています。あの女の眼は直視できないほど濁りきっています。私の居場所はどこにもありません。
そんな時先生が「たった一人でもいいから、心の底から信じられる人を見つけてごらん」と仰いました。こんなことを言うのは気恥ずかしいですが、私はその言葉を聞いたとき、思い浮かんだのは先生しか居ませんでした。
初めは興味本位だったんです。先生がご結婚をされているという事は知っていたので、どんな奥さんがいて、先生がどういう生活を送っているのか、それだけが知りたかったんです。
私は毎日、定時の時間に先生の後を尾行して、ご自宅に入る先生を見届けて、そして早朝、先生が出勤する時間にご自宅から先生が出てくるのを待ち構えるという生活サイクルを送りました。
そして、電信柱の陰に隠れて、玄関での先生と奥さんの日常の一端を垣間見るたびに、これが家族というものなのかと、何度も打ちのめされました。私はその時、先生と奥さんとの繋がりに飴細工のような美しさを感じたんです。
そんな時、私は学校のトイレであることを聞きました。私は個室にいてお弁当をつついていたんです。私の苦手なガヤガヤとした集団がトイレに入ってくるのがわかりました。「ほら見て」と滝口美香の声が聞こえ、携帯を開く音が聞こえました。「えぇこれマジで」と周りが騒ぎ始めます。
「うん、あたしこれでさぁ脅迫しようと思ってるんだよねぇ、八十嶋を」
一瞬、耳を疑いました。
八十嶋先生のこと?
脅迫?
その後、そのガヤガヤとした集団は、場所を変えるかのようにトイレから居なくなりました。私は気になって仕方がありませんでした。
同じクラスの滝口美香さんは、先生もよく知っている通り、私とは正反対の性格で、常に華々しく、それでいて素行の悪い生徒であったと思います。学校中でも、クラスの輪から逸れた私の耳にさえ、滝口さんが援助交際をしているという噂は入ってきました。
私は真相を確かめようと、滝口さんを尾行することにしました。
彼女は学校が終わると、街でサラリーマ風の男と落ち合い、古いホテルへと入って行きました。私は滝口さんと男が入ったホテルの部屋のドアに耳をあてて、中の様子を伺いました。しばらくすると、部屋の中から滝口さんの悲鳴が聞こえたので、私は思わずドアを叩いてしまいました。すると中から窓をあけるような音が聞こえて、ゆっくりとドアが開き、中からバスローブを羽織った滝口さんが覗いていました。
彼女は私を見るなり、驚いた顔をして「なんであんたがここにいんの?」と言いました。部屋に入ると、ベッドの上には見たこともないような怪しい道具が散乱していました。
「あんたのおかげで助かったわ。たまに居るんだよね、ああいう変態」と彼女は言いました。部屋の窓が空いていました。さっきの男は、ドアを叩いた私を警察だと思い込み、そこから飛び降りて逃げたということです
私は滝口さんに、事の真相を確かめました。すると彼女は笑って、携帯の画像を、私に見せてくれました。
そこには前嶋先生と滝口さんがキスをしている姿が収められていました。
「前嶋の車の中で撮ったの。シートベルトが取れないってアタシが言って、あいつが顔近づけてきたときに、アタシの方から無理矢理。そんで片方の手でカシャって、こんなにうまく撮れるなんて思ってなかったけど。あせってたねーあいつ、夜遊びしてたあたしを、親のところに送ってやってる最中だったから。消してくれって言ってきたけど、何の見返りもなしに消せるわけないじゃん。たっぷり絞りとってやるって言ってやったよ」滝口さんは薄ら笑いを浮かべながら、そう言いました。
私はその瞬間、彼女の眼がどんどん濁っていくのが見えました。あの女と同じ眼になっていくのを見て、私は体の底から突き上げてくるような不快感を抱きました。
その後の記憶はおぼろげですが、おそらく私はその時、先生の家族を守らなければならないという、おかしな使命感が咄嗟に働いたんだと思います。
私は滝口さんに何かをしました。
すると彼女は「ぎゃあ」と言って、ベッドに倒れこみました。
私は上から乗りかかり、彼女の顔面にあるものを振り下ろしました。
それは和鋏でした。
父からもらった飴細工に使う鋏で、私はいつもそれを持っていました。
私はそれを何ども一心不乱に振り下ろしました。
しばらくすると、彼女は何も言わなくなりました。
彼女の濁りきった忌々しい両眼が、不愉快だったので、私は和鋏でそれを削ぎ取り、彼女の持っていた携帯から例の画像を消して、部屋の窓から飛び降りて逃げました。
先生、ここまで読まれて頭を抱えてしまっているでしょうね・・・
私の愚かな行為はこの後、もっと続くのです。
私はその後も、先生と奥さんとの私生活を覗き見するという行為を続けました。
おかしな話ですが、私はそのとき、先生と奥さんの幸福な生活を覗き見ることによって、日頃の苦しみから開放されるような体感があったのです。
しだいに、お腹が大きくなっている奥さんの姿を見たときは、新しい命の誕生を実感し、心が打ち震えました。ずっとこんな幸せの瞬間を覗くことができたらいいのにな、とその時何度も思ったんです。
しかし、また魔の手は忍び寄ってきました。
その男は、先生が帰ってくる直前に、先生のご自宅から足早に出てきました。初めは知り合いか、友達なのかなと思いました。玄関先で先生の奥さんと何か口喧嘩をしています。ほとんど聞き取れませんでしたが、男の眼は凄まじく濁っていました。そしてなぜか、そのとき奥さんの眼も、濁っていたんです。
私は不穏なものを感じました。私は男の跡をつけ、そいつが弁護士であることを突き詰めました。 男は、先生が仕事で出払っているところを見計らって、たびたび自宅に足を運び、奥さんに付きまとっているようでした。
私はその男の存在によって、先生のご家族の生活が再び脅威にさらされるのではないかと思い、すぐに行動を起こしました。
しかし今度の場合は、弁護士です。無防備なところは仕事柄、あまりありません。そこで私は、以前、どこかの主婦が、走っている車のタイヤのナットを外れるように細工し、夫の保険金を狙ったというニュースを聞き、その方法を真似することにしました。私は弁護士事務所の下の駐車場にとめてある男の車のタイヤに細工を施しました。
寄せ集めの知識と手先の器用さでカバーした素人考えの計画だったので成功するかどうかはほとんど賭けでしたが、事態は思わぬ結果を導いてしまいました。
私はその時、妊娠中の奥さんが心配で、学校をサボり、先生の自宅にいる奥さんをずっと見張っていました(言葉は悪いですが) 家の前にあの男の車が突然止まり、男は家に入り、玄関から奥さんを介抱しながら連れてくると、その車に乗せてしまいました。そうです。間の悪いことに、産気づいた先生の奥さんは、あの男の車で病院に行こうとしたのです。私は走ってその車を追いかけました。車は猛スピードで私との距離を離していきます。そしてすぐに事故が起きました。
路地から広い道に出ようとしたところを、車のタイヤが外れ、自制を失い、電信柱に強い衝撃でぶつかりました。辺りに人気はなく、私は急いで、奥さんの安否を確認しようと車に近づきました。運転席の男は顔面からフロントガラスに当たって死んでいました。後部座席にいた奥さんは、意識は失っていたものの、生きているようだったので私はホッとしました。
そして奥さんの股から、産声を上げ覗く赤ちゃんを見て、私は今この瞬間、眼の前で、産まれたての生命の姿を目撃してしまったという、感動に打ちのめされました。
そしてなにより私が心持ちしていたことは赤ちゃんの眼でした。父の飴細工の光沢と同じ先生の眼を、赤ちゃんがしっかり継承していることを私は期待しました。
赤ちゃんの瞼がゆっくり開かれ、私はその奥にある眼を直視しました。
先生・・・私はこの後の、絶望感をどう言葉で表現していいのかわかりません。
私の中で理想としていた先生と奥さんとの家族像が一気に崩れ去り、今までやってきたことが全て無になるようなそんな感じがしました。
赤ちゃんの眼は先生の澄んだ眼を継承していませんでした。
しかしそれだけではなく、もっと最悪な現実を私は見てしまったのです。
その後、私がなぜあのような行動をしたのか、その理由は、どうしてもここでは書けません。
先生、もし真実を知りたいのであれば、お返事をください。知りたくないのであれば、この手紙を焼き捨ててもらって結構です。
私はもう一人で生きてゆくと決めました。
家を出て、父と同じ道に進もうと思います。
この先、どんな事になろうと、私はもう人を信じることはありません。
三年D組 川添周子より
腰の力が一気に抜けるような感覚だった。
全身から嫌な汗が噴出し、心臓が外まで聞こえるほどに高鳴り、一瞬、過呼吸になった。八十嶋は、重しのようになった全身を立ち上げ、階段の手摺を頼りに、なんとか一階まで降りた。
―――警察―――。
すぐにその言葉が浮かび、リビングの電話を取り番号を押した。
電話の発信音と同時に、家のチャイムが鳴った。
八十嶋は一旦、受話器を置き、玄関の扉を開けた。妻が立っていた。
「ごめん鍵忘れちゃって、どうしたのあなたその顔?」
「いあ、…ちょっと腹具合悪くて…」八十嶋は咄嗟に繕った。
「大丈夫、正露丸飲んだ?」
「うん…」
「そうならいいけど、あなた、それよりびっくりするわよ。俊彦、今日の飴細工で一等賞とっちゃった。あの子そういう才能あるみたい。講師の人に誉められちゃってね…」
「うぉう、そうか」
「それだけだけじゃないのよ、その講師の人、昔あなたの教え子だったらくして、手紙も送ったって、こんな偶然あるのね…川添周子さん、あなた覚えてる?」
「……」
どうしたのあなた?と妻の声が聞こえた。
「先生お久しぶりです」
一人の女がドアの反対側から顔を覗かせた。
長身でロングヘアーの眼の窪んだその顔に、八十嶋は川添周子の面影を思い出した。
彼はその瞬間、文字通り、腰の力が一気に抜け、体勢が崩れた。
「ちょっとあなた大丈夫?」
妻はそう言うと、床にへたりこんだ八十嶋に寄り添ってきた。
「逃げろ」
八十嶋が妻の耳元でそう言ったときだった。にぶい音がして、妻が突然、彼の躰にのしかかった。
妻の躰を抱くようにして仰向けに倒れた八十嶋は女を見た。
女は警棒のようなものを片手でバックにしまうと、俊彦を前にして玄関へと入ってきた。硬直した俊彦の首には女の握った和鋏が突きつけられていた。
「あの手紙、読んでくれました?」
その口ぶりは、本当に恩師にあった生徒のようだった。
その後の女の手際は速かった。意識の朦朧とした妻をリビングのダイニングテーブルのイスに座らせ、両手両足を前嶋に縛るよう命令した。息子に和鋏を突きつけられている以上、指示に従うしかなかった。
「子供にだけは手を出さないで・・・」
妻は事態がまったく掴めない様子で、懇願するように何度もそう言った。前嶋は「すまない」と何度も呟くように言いながら、妻を震える手で椅子に縛り付けた。「先生もです」と女が言うと、バッグから出した手錠を、八十嶋自身で後ろ手を椅子に縛るよう命じ、彼はやむなくその指示にも従った。
「・・・頼む、言うとおりしたぞ、俊彦を逃がしてくれ・・・」八十嶋は女の眼をしっかり見つめて懇願した。
女は何も言わず、俊彦を二階へ連れていこうとした。
「ちょっとどこ行くの」妻がヒステリックに叫んだ。
「大丈夫です、俊彦くんは関係ありませんから」
女はそう言うと微かに笑った。俊彦は事態を飲み込めない表情のまま、女と共に二階へ上がっていった。
妻はただひたすら泣いていた。
前嶋は妻に手紙のことを簡潔に話した。
「大丈夫だ、あの女は俊彦には何もしない・・・」八十嶋は自分を落ち着かすかのように何度もそう言った。
妻は事情を説明しても事態を未だに掴めていないようだった。朦朧とした意識の中「どうして?」と何度も搾り出すような声で呟いていた。無理もなかった。八十嶋自身、あの女が、なぜ自分たちを縛り、これからいったい何をしようとしているのかまったく理解できていなかった。
しばらくすると女がリビングに戻ってきた。
「俊彦くんは、いい子ですね。ベッドに縛っても文句一つ言いませんでした」
「どういうつもりだ」八十嶋は口調を強めた。
「教えてくれ、なぜ息子の眼を奪った、なぜ今頃、俺達の前に出てきて、こんなことができる?」
八十嶋の問いかけに、女は一呼吸おいて答え始めた。
「十年前、あの事件以来、先生のご家族のことは忘れていました。私のやるべきことは、父に誇れる立派な飴細工職人になることだという目標を心に誓って、その為だけに生きてきました。でもある日、ふっと昔のことを思い出して先生の家を眺めてしまったんです。そこには仲睦まじい先生と奥さん、そして俊彦くんが居ました。私はそれを見て、体の底から抑えられない怒りが沸いてきたんです、いったい誰のおかげでこの人達は幸せを謳歌しているんだろうって。私が滝口美香とあの弁護士を殺し、俊彦くんをあのような姿にしなければ、先生と奥さんの関係は現在のようなものではなかったはずです。先生がこの幸せな家庭を築けたのは、いったい誰のおかげですか?」
女の口調が落ち着きを保ちながら、怒りを内包しているのが八十嶋にはわかった。
「飴細工はいつか溶けるから美しいのです。何時までも溶けないものなんか蝋細工と変わりません」 女はあらかじめ用意していたようなセリフを吐いた。
「私は真実を伝えるために今日、此処に来ました」
「…真実?」前嶋は訊ねた。
「そうです。そして奥さんに罰を与えます」
女は一言だけそう言うと、妻の背後に周り、後ろ髪をつかんだ。恐怖で慄く妻の口を手で抑え、彼女の顔を覗き込んだ。
「先生、私が俊彦くんの眼を削ぎ取ったのは、フロントガラスに当たって死んでいたあの弁護士の眼と瓜二つだったからです」
女はそう言うと、片方の手で和鋏を妻の眼球に近づけた。妻は血の気を失いきった表情で、目の前にある刃先から逃れようともがいた。
「この女の眼は、濁っています。義理の母と同じ眼です。私はこういう眼を向けてくる人間を見ると不愉快になります」
女は妻の眼の下の瞼に刃先を食い込ませた。妻の苦悶に満ちた叫び声が女の手の内から外にこぼれた。
「濁った眼を削ぎ取ります」女は冷ややかにそう言い放った。
「ちょっと待て、待ってくれ、お前の言いたいことはわかった、悪いのは俺だ、妻は関係ない、だから頼む、やるなら俺にやれ」
そう叫んだ瞬間、八十嶋は自分が取り返しのつかないことを言ったことを覚悟した。女はきょとんとした表情をした。
「先生は何も悪くありませんよ」
「いや、悪いんだ、俺は正直、滝口美香が死んだときホッとしたんだ。俺はあの女に自分と結婚してくれなかったらこの写真をばら撒くと脅されてた。だからあいつが死んだことは俺にとって不幸中の幸いだった。教師としてあるまじき感情だったと思う。あの弁護士と妻ができてるんじゃないかという疑いも当時はあった。でもそれを妻に問いただす勇気がなかった。だから俺は妻を信じた。だが生まれてきた俊彦の顔は年々、あの弁護士に似てくることに俺は苛立を感じた。あの子に何度も冷たい態度をとったこともある。妻への不信感をあの子にぶつけていたんだ。あの子が妻の居るときだけ俺になつき、居ない場所では余所余所しい態度になることにも俺の苛立に拍車をかけた。俊彦は多分、俺が父親ではないことに薄々、気ずいてるんだろうと思う。そして俺を恨んでいるだろう。正直、俺はあの子が何を考えているのかわからない、俺はあの子が怖い。親としてあるまじき感情だ。俺は疚しい人間なんだ。だから妻より俺のほうが何倍も罪がある」
八十嶋の本音だった。
「先生、奥さんを庇うために、必死なのはわかりますが、やましさを抱えた人間の眼は濁ります。私の眼には先生の眼は濁っているようには見えません」
「それはお前の眼が濁ってるからだ」
八十嶋のその言葉で、女の表情が一瞬、般若のような形相になった。押さえていた妻の口から手を離すと、和鋏をこちらに向けゆっくりと近づいてきた。
「先生、本当にいいんですか?」
女は和鋏の刃先を八十嶋の片方の眼の下瞼に突き立てた。
八十嶋は覚悟を決めた。
彼はそのとき、いっその事殺してくれればどんなにいいかと思った。
妻の叫び声が聞こえた。
刃先が下まぶたにくい込むと、片方の眼の視界が一瞬にして消えた。
不思議と痛みはなかった。
「お父さ~ん」
俊彦の声だった。
八十嶋は片方の眼で階段脇に立っていた息子を見た。
これが最後の光景かと思った時だった。
俊彦は笑っていた。
『短編「先生の眼は飴細工」』©ドリー
ドリー様
読ませて頂きました。
これで三作読ませて頂きましたが、どうも私とは相性が悪いようです。
どの作品も、良く出来たお話だと思うのですが、ピンときません。
これは、ストーリーを先読みする私の癖が原因かもしれません。
さて本作ですが、登場人物の気持ちがよく理解出来ませんでした。
突っ込みどころ満載に感じる作品ですが、それよりそちらの方が気になりました。
取り留めのない感想ですみません。
07/31 14:24
犯人から殺人衝動に繋がるほどの説得力も、子供の目を抉るほどの狂気も感じ得ない。
生まれたばかりの赤ちゃんの目を抉ることは、できなくはないでしょうが、かなり現実感がないですね。
理由となった目の色を確認することがかなり難しいからです。
犯人がこれほどまでの異常性を持つに至る理由付けができていないようです。
細かい部分に説得力がなく、それにより必然性がないのです。
こうなると、ただ残虐な描写の作文になってしまいます。
推敲も足りていないようです。
前作を読んでいたので、楽しみにしていたのですが残念です。
07/31 15:05
ドリーさん
『短編「先生の眼は飴細工」』拝読しました。
面白かったですよ。前作よりもより構成力に磨きが掛かっていると思います。
設定も仕掛けも抜群でした。
惜しむらくは、仕掛けの抜群さに比べてそれを表現するための作品の量が足りていないことです。
率直に言いまして最低、中篇(100枚)ぐらいに伸ばさないと、駄目だと思います。
でどこか新人小説賞に出した方が良いと思います。じゃないとここにいる誰かにネタぱくられて
ってことも無きにしもあらずですから。
その前提でこうした方が良いと思うことを書きますね。いちおう文量を増やし、
大幅に改稿すると考えての意見です。
・飴細工シーンを足しましょう。
飴細工をつくる官能的な描写を足して下さい。
別に、母子教室じゃなくても良いはずです。縁日で珍しく若い女性の飴細工士がいてその作業姿に見とれる。
って感じで良いんじゃないですか? それで盲学校のPTAのような役職の妻が、母子教室にお誘いするって感じで。
ここで祭りの歴史性を語っておけば、伝統色も出て良いと思います。
・息子が登場するシーンを足しましょう。
上と絡めて、息子や妻がいるシーンを足しましょう。
・回想シーンとの2部構成にしてください。
回想シーンと分けることで、文量を増やす際に余裕が生まれます。100枚超になる場合は検討下さい。
回想シーンで考えるのは主人公が教師のときです。そのときに川添周子のシーンと事故のシーンを重点的に書いて下さい。
一番問題が多視点になることです。それに比べれば時系列が横断するのはたいした問題ではありませんので。
いちおうこうすることで、推理小説としても楽しめるようになります。
・ラストで誰かを殺して下さい。
ホラー小説であることをもっと意識してください。ラストの一行は巧いんです。しかしそこまでのカタ
ルシスがやや不十分です。目を抜き取るシーンが書けないなら、ホラーなんて書かない方が良いと思い
ます。純文学か恋愛小説を書いた方がいい。っていうかフィクションで、人を殺すのはそろそろ慣れた
方が良いと思いますね。じゃないと自分の手でホラーブームは作れないと思います。たとえドリーさんが
プロになっても他人の人気に便乗しかできない作家になりますよ。
<まとめ>
簡単に書きますね。
ホラー小説作家を目指すなら文章量は今よりも、数倍の文量を書く癖を付けた方が良いと思います。
ほんとアドバイスすることと言えばそれだけです。そうすれば取材とか、やるべきことが見えてくると言うか
自分の作品をもっと俯瞰できるようになりますから。
結構モチーフとか冴えていると思います。意見箱とか、飴細工とか、ラストとか、母子教室など、アイデアは
抜群でそれだけ抜き出せば、プロ作品と比べても遜色はないでしょう。がしかし、それを表現するための技術が
完全に足りてないぞと言うことになります。でそれを得るためには、短篇を書き続けたんじゃ絶対に無理なん
ですね。300枚とは言わないので、150枚くらいの完璧な作品を作って欲しいなと思いました。
まあ他にも細かいことを言うといろいろあるんですけどね。家族ものを書くときは主人公の記述は全部
名字ではなく名前にするとか、心情じゃなく信条とか、八十嶋が前嶋になっていたりとか、他にもケアレスミスが
散見しました。最後にプリントアウトして原稿チェックする癖を付けられた方が良いと思います。
プロになる素質は充分にあると思います。
07/31 16:18
はじめまして。拝読しました。
しかしまぁ、何とも困った作品ですね。内容といい、それを表現している筆遣いといい、「良いね」と思えるところを見つけるのが難しい……
で、まずは内容。アイデア・プロット云々よりとにかく、他の方のご指摘にもあるとおり、ただただもう中身がお粗末かつツッコミどころ満々載。なので途中からはそれ=ツッコミどころ探しだけを楽しみに読んだほど。たとえば、ちょっと長いけれどこの部分↓
>八十嶋は矢継ぎ早に頭の中では処理できないことを言われパニックに陥った。緊急治療室から出てきた息子を見たとき、助かったことへの安堵と同時に、なぜ産まれたばかりの息子がこんな目に、という疑問符が沸き立ち、この世の理不尽に深く絶望した。
しばらくして、「心当たりは?」と刑事たちに聞かれたが、はっきり、ないと答えた。
しかし今にして思えば、あの頃、自分の周りで不可解なことが確実に起こっていたような気はしていた。
教え子がホテルで変死体になって見つかったのも、彼は長年、気持ちの何処かに整理がつかないでいた。彼女が死んだことと、今回の事故のことは何の関連性もないので警察には何も言わなかったが、十年の歳月が過ぎて、やはりどこかで二つの事件が繋がっているような思いが、彼の中で再燃してきた。変死体で見つかった彼女の遺体の眼球も、息子同様、失われていたのだ。
おいおい、こんなありえね~状況下で、「しかし今にして思えば、あの頃、自分の周りで不可解な事が確実に起こっていた“ような気はしていた”」、「彼女(教え子)が死んだことと、今回の事故のことは何の関連性もないので……」って、誰がどー考えても感覚的におかしいでしょうがコレ。ましてや主人公は高校教師やっている程の知能の持ち主。どんなにパニクろうと、いや、動揺すればなおさら、こんな出来事が身の回りで連続して起こった途端「絶対繋がりがある……」と考えるはず。だって、自分に近い関係者が相次いで命を狙われ、その上両事件に共通する極めて特徴的な手口として“被害者の眼球摘出”まであるんだから。
他にも、ストーリーの背景や事件に関する一部始終(犯行動機~方法、つまり謎解き)の大半が“犯人のおしゃべり”(手紙の告白文も含め)で綴られている事(誰も訊いてねーのに)や、随所に見られる↓のごとき謎めいた文章……
>八十嶋の教え子であり、変死体となって見つかった滝口美香は、後に彼女とのアブノーマルな性行為を強要していた男が逮捕された。男は彼女を売春していた。
あまりといえばあまりなため、余計なおせっかいを承知で、せめてココだけでも“最低限”手直ししておきますね。
>>変死体となって見つかった八十嶋の教え子、滝口美香の事件の方は、その後彼女にアブノーマルな性行為を強要していた(交際相手の)男が逮捕された。男は彼女に売春までさせていた。
……いやホント、ツッコミどころには事欠かない、そういう面においては「困った」なんて言いつつ内心「結構楽しめた」作品でした。ごっつぁんデス。
07/31 22:00
連投ごめん。
そうか、先ほど手直しさせていただいた箇所の“売春”は、“買春”と書き間違えた訳なんだ。ただ、それでもやはりどこかおかしいなぁ。じゃあ、こんなのでどう?
>>>変死体となって見つかった八十嶋の教え子、滝口美香の事件の方は、その後、彼女にアブノーマルな性行為を強要したとされる男性が逮捕された。男は彼女の顧客、つまり売春相手だった。
07/31 22:16
水生 様
正直、書いててやっちゃたなと思ってしまいました・・・
登場人物の気持ちは自分の中でできていたつもりでしたが、あまりの表現不足で
、作品全体の脆さが露呈したようです。
08/01 23:08
名前入れなきゃ 様
犯人から殺人衝動に繋がるほどの説得力も、子供の目を抉るほどの狂気も感じ得ない。
ごもっともです。狂気を表現するにはそれ相応の筆力がいることを痛感しました。精進します。
08/01 23:18
タニグチ 様
惜しむらくは、仕掛けの抜群さに比べてそれを表現するための作品の量が足りていないことです。
なるべく無駄を削ぎ落したのですが、それが逆に駄目だったようですね・・・
たしかにモチーフが多すぎて、それぞれが書ききれてない気がしました。
・飴細工をつくる官能的な描写を足して下さい。
たしかに飴細工の描写が無さ過ぎて、主人公の目にたいする執着が書ききれてませんでした。
退屈にならないように無駄なところをなるべく削ぎ取ったのが、敗因だったようです。
・回想シーンとの2部構成にしてください。
回想シーンと分けることで、文量を増やす際に余裕が生まれます。100枚超になる場合は検討下さい。
100枚超ですか・・・
正直、100枚超となると、このネタで持つのかな・・・という不安があります。退屈にならなければよいのですか・・・
・目を抜き取るシーンが書けないなら、ホラーなんて書かない方が良いと思い
ます。
暴力描写に逃げ腰を感じていて、書くのを避けてていた自分が居ます。
手厳しい意見ありがとうございました。精進します。
・300枚とは言わないので、150枚くらいの完璧な作品を作って欲しいなと思いました。
正直前々回の「埋葬」が始めた書いた小説なので、150枚と言われると、気が遠くなるような思いになります。がんばってみます。ケアレスミスを含め拙い駄文を読んでいただき、本当にありがとうございました。
08/01 23:48
石野モアイ 様
拙い文章を読んでいただき誠に恐縮です。
教師の心理状態は完全に盲点でした。
もう嫌になりますね・・・確かに教え子があんな状態で死んでいたなら、普通はおかしいと思うはずです・・・・
なんでこんなことに気づけなかったのか・・・はぁ・・・
文章の出来の悪さも露呈し恥ずかしい限りです。
もう次はヤケになって、石野モアイ様にもっと突っ込んでもらえるような、ナンセンスかつ不条理なものを書こうと思います。その時はもう今回以上にボロクソに言ってください
拙い文章にお付き合い頂き、本当に申し訳ございませんでした。
08/02 00:00
>正直前々回の「埋葬」が始めた書いた小説なので、150枚と言われると、気が遠くなるような思いになります。
ほう、それは将来性はありますねw
それはともかく長篇には早めにチャレンジしてみてください。
短篇に逃げずに、長篇を書ききる体力と、全体を見る力を付けてください。
いちおうもしこの題材で長篇を書かれるつもりがあって、それでも不安なの
であればよろしければ下記メルアドにご連絡下さい。よろしければ協力
(お手伝い)させていただければと思っています。もちろん変な営業とかは
しませんのでご心配なく。
↓
taniguchi@kaedebooks.com
08/02 00:15
はじめまして。読ませていただきました。
こういう話、大好きです。「当たり」でした(笑)
>「先生、奥さんを庇うために、必死なのはわかりますが、やましさを抱えた人間の眼は濁ります。私の眼には先生の眼は濁っているように見えません」
>「それはお前の眼が濁ってるからだ」
結局、全員「濁った」眼をしていたんですね……ニヤリ。
眼球を抉る凶器が和鋏ってあたりも良かったです。
最後で期待を持たせつつ、裏切られるバッドエンドもGJでした。
ただ、これはB級ホラー&サスペンス好き人間の感想なので、大事なのはドリー様がどの層に受ける作品を書きたいのかかな~と思ったり。
以下、ここを直すと文章としての完成度が上がるのでは、と思った点を挙げます。
>―――川添周子。
ダッシュは「――」などとふたつ重ねてつかいます。作法を知っててあえてのことでしたら、お節介ごめんなさい。
>「いあ、…ちょっと腹具合悪くて…」
三点リーダーも同様、「……」です。
>教え子がホテルで変死体になって見つかったのも、彼は長年、気持ちの何処かに整理がつかないでいた。
ここ、唐突にさらりと出てきたので、あれこんな事件あったって言ってたっけ?と思って、あわてて前に戻って読んでしまいました。
「実は、教え子が変死体になって見つかった事件も起こっていた」というような具合に、言い切ってしまったほうがいいのではないかと思いました。
>俺はあの女に自分と結婚してくれなかったらこの写真をばら撒くと脅されてた。
八十嶋は滝口と付き合っていた、ということですか? それとも「搾り取る」内容が「結婚」ということなのか……いまいち判りませんでした。
あと、リアリティの問題についてちょっと触れたいと思います。
>なんだか題名も含め、安っぽい仕上がりになってしまいました。
「安っぽさ」について考えてみたのですが、リアリティの問題かなと思いました。
警察の対応や眼球を抉られたときの反応など、全体的にリアリティに乏しい気がしました。私はホラー物ではスピード感や奇抜な展開を重視するタイプなので、気にならなかったのですが。
プロでもリアリティの扱いは難しいところであると思います。
リアリティを省略する部分と、「生々しさ」を出す部分。
この選択と上手さこそが、それぞれの作品の妙味なのではないかと思います。
御作はさくさくと話が進み、一気に読んでしまったのですが、「生々しさ」の点では物足りなかったかなと思います。
言うなれば、氷を口の中で転がしたときのような感じかなと。口の中にある時はひんやりとして気持ちいいのですが後は引かない、印象に残らないといった感じです。
血に濡れてぬらりと光る眼球の存在感でも、眼球を抉られた父を見て嘲笑う息子の歪な姿でも、飴細工職人の狂気でもいいです。
プロット自体は非現実的でも、何かひとつでも「生々しい」ものがあったら、また印象に残ったかなと。
好きなことをえらそうにつづってしまった感じですが、何か少しでもお役に立てれば幸いです。
失礼します。
08/03 12:40
はじめまして、ワタイといいます。最近ホラーが好きで、題名に惹かれて読ませていただきました。投稿小説の感想を書き込むのはこれが初めて(大抵こっそり読み逃げしてます)なので、あんまり大したことは書けないでしょうが、少しでもお力になれると嬉しいです。
飴細工と眼球、といったイメージの対置はとても印象的だと思います。赤いテーブルの上に白い皿があってその上に美しい飴細工と取り出されたばかりの眼球が置いてある光景を想像してしまいました。とても鮮烈で、頭に焼き付くイメージだと感じるのですが、作中であまりその二つのイメージを活用する部分が見られなかったのが残念です。
過去にあったことを手紙ですべて語ってしまうのは、とてももったいないと思います。その部分こそ一番緊迫感の出るところじゃないでしょうか。父を愛する娘が、義理の母との関係や、先生への異常なまでの憧れ、その生活を覗き見るという行為などを通して、どのように歪んでいき、恐るべき殺人や眼球をえぐる行為をするに至ったのかを読ませてほしかったです。
ただ、そうすると先生と彼女との対決、この小説のラストシーンだけ時間が飛んでしまいそうですが、そこだけ時系列に変化があると気持ち悪いので、いっそその対決は妻と息子の運び込まれた病院とか、そういう場所で、事故のすぐ後に起こしてもいいんじゃないかと思います。そうすると何年も時間が飛んで緊迫感が薄れることなく、一気にクライマックスに向かうことが出来るんじゃないかと。
すみません、偉そうなことばかり言ってしまって。私に言えることはこのくらいです。お役に立つかどうかは分かりませんし、あまり小説を書いていない素人の意見ですから、気にいらないと思えば忘れてやってください。失礼しました。
08/03 23:36
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