遠い昔。銀河が人を産んで、神々が君臨した時代のこと。
神々は争っていました。
人間が数を増やすつど、その神々を利する者の数が限られていったからです。
とある女神は言いました。「我々は争うべきではない」
力ある男神は言いました。「ならばあなたが去るがいい」
他の神々は自分こそ地上の覇者、と信じてあえてなにも言いませんでした。
女神には愛する者がありました。
彼はまだほんの見習い。戦士になろうとしておりました。
彼は人なつっこい微笑みで言いました。
「女神よ。私にあなたを守れ、とお命じください」
若い、少年でした。次の闘いが初陣となるのでしょう。
女神は言いました。
「多くを殺し、そんなに戦果をあげたいのですか?」
その声は責めるようでした。女神は争いがお嫌いなのだと彼にはわかりました。
「私は女神の戦士として、闘いに赴きたいのです」
女神が愛していたのはその心でした。ですから涙を隠してこう言いました。
「去りなさい。次の闘いではあなたの出番はないでしょう。あなたの兄たちが多くの敵を退けて戦功を競うでしょう」
「女神よ! あなたは私をいらぬ者とするのですか。なぜ?」
悲痛な声を挙げて、少年は懇願致しました。きっと、命を捧げて女神のために戦うからと。
『すがらないで。私はそんなに強くない。あなたを愛するほどに、心弱く、臆病になってゆくのに』
そのような女神の心は、彼には伝わりませんでした。彼はまだ愛を知らず、女神を母のように慕っていたからです。その気持ちは充分、女神はご承知でした。
『私はあなたが傷つくのに耐えられない。日々鍛練を積み、己に厳しく他を慈しみ、男らしさと少年のはかなさをまとった、あなただから』
しかし闘いは始まってしまいました。女神の鎧は重く、楯を持つ手は震えていました。
「弓兵、一斉射撃! 戦車隊前へ! 飛行兵は援護せよ!」
敵の歩兵隊に向かって、女神は弓兵をと命を下します。敵も手を打ち、歩兵を一旦引っ込め、楯の防壁を築き、矢を尽くさんとして射てきます。が、特性のピラータワーが敵陣を打ち砕き、女神はなおも中央から采配を振ります。翼持つ飛行兵は両翼から敵陣に大岩を落としました。
敵は弓矢によって抵抗しました。
そのとき少年は女神の楯となって流れ矢から彼女を救い、多くの傷を負いました。
『ああ、こんなにもボロボロになって……こんな闘いのために……』
女神の涙は、兜の下。間近にいた少年の他には、だれにも気付かれませんでした。
「長槍隊前へ! ……しっかりなさい! 死んではなりませんよ」
敵の騎馬隊はそれは恐ろしいものでした。一騎につき長槍複数でかからねばなりません。
女神は冷徹に采配を振るい、哀しみに満ちた瞳で、闘いを続けました。お互いに兵士の多くが討たれ、多くが死にました。
それでもまだ、戦は終わりを見せませんでした。闘いは長く続き、神々は地上の覇権を分けました。
女神は人々を治め、これを利するようはからうと、森へ入りました。そこには神秘に満ちた泉がありました。彼女は身に負った傷から血を浸すと、その水によって、闘いに傷ついた人々を癒して回りました。
兵士達は手厚い看護を受けましたが、あの少年の姿はありませんでした。
風の吹く大樹のもと。彼は女神の胸の中で自分の死期を感じ取り、それでも微笑み、苦しい息をつきました。
女神は尊い覚悟をなさいました。彼に神の息吹を与え、ご自分は人として命を絶ち、御自らの血と名と涙とにかけて地上の覇権をあけわたしたのです。
そうです……二度と、愛(かれ)を失わないために。
人々は男神の庇護の元、生き延びました。そして女神に感謝しました。
新たな命を吹き込まれ、大きくなった少年は地上の覇者となり、神に代わって地上を治めるまでに成長しました。
ただ、かつての女神が、自分を退け、また自分を蘇らせた意味について知り、女神の死について、いつまでも一人、後悔し、哀しみにくれるのでした。
『私はあなたのために戦いたかった。あなたのために死にたかった。それで人の身には本望だった』
心に、そう、思いながら、彼はまた地上を狙う神々と闘うため、とうに地上を去った男神と女神に祈りを捧げると、戦の用意をするのでした。
了
『ぱられる聖戦記』©涼香亜弓
これでピュア・ラヴ・ストーリーになっているでしょうか?
愛と闘いについて書いたつもりです。戦は「いくさ」闘いは「たたかい」と読んでくだされば幸いです。
こだわっているのではなく、PCがそのように表記してくれるので、気が利いてるな、と・・・
思いあまって、お話をどんどんふくらませてシナリオにして公募に出そうかと考えております。
その前にプロの先生に見てもらうつもりです。酷評は歓迎です。よろしく!
涼香亜弓 拝
涼香亜弓 (07/27 00:08)
こんにちは。作品、拝読しました。
タイトルから、神と人間が共存する異世界の話、と解釈していいのでしょうか。私の持っている神のイメージが、古事記の神とギリシャ神話の神なので、この作品の神がかなり俗っぽいことから、ギリシャ神話の神に近いのかな、と思いながら読みました。
>これでピュア・ラヴ・ストーリーになっているでしょうか?
うーん、どうなんでしょう。そもそも女神の愛と少年の愛は異質なものなので、ラヴ・ストーリーの範疇に入るかどうかぎりぎりのような気がします。お互いに相手を想っていることはかわりないけれど、決して交差することはない平行線というか……。最後に女神の愛は、限りなく母の愛に近くなっていたので、(あなたが死ぬなら私も死ぬわ、というのが男女の愛なら、私が死んでもあなたを助けたい、と思うのが母の愛だと思います)、広い意味ではラヴ・ストーリーになっていると思います。
一つの作品として楽しむことはできましたが、登場人物に共感するまでにはいたりませんでした。
では、また次回を楽しみにしています。
07/27 11:18
涼香亜弓さま、
読ませていただきました。
>これでピュア・ラヴ・ストーリーになっているでしょうか?
自己犠牲。
その人のために死ねるか、たがいに相手を生かしたいと思う、ふたつのピュアな魂。
●そのとき少年は女神の楯となって流れ矢から彼女を救い
愛する人を救うために、流れ弾に身をさしだして死ぬエポニーヌを思い出しました。
女神も、自らの命を少年に吹きこみますよね、細部を膨らませたら素敵なラブストーリーになりそうです。
>愛と闘いについて書いたつもりです。戦は「いくさ」闘いは「たたかい」と読んでくだされば幸いです。
●人間が数を増やすつど、その神々を利する者の数が限られていったからです。
人が増えると、自らを利する神の下に集い、たがいの利のために神の名において争いはじめるということでしょうか。
女神の下に集まった人々は、どんな利を求めていたのか、敵なる神とどんな利のぶつかりあいがあったのかも、考えられたほうがいいかな思いました。
争いを好まないであろう女神がどうして、戦に巻き込まれていったのか、ここを説得力あるように描くのが、いちばんむずかしそうですね。
少年にどのようにして死がもたらされたのかも、暗示にしろ明示にしろ、描かれたほうが自己犠牲の美しさが引き立つのではないでしょうか。
いいものに仕上がるといいですね。ますますのご健筆、お祈りしています。
07/27 12:03
涼香亜弓様
読ませて頂きました。
>これでピュア・ラヴ・ストーリーになっているでしょうか?
どうしても、信仰との絡みで考えてしまいます。
それをラヴ・ストーリーと呼ぶならば、なっていると思います。
>人間が数を増やすつど、その神々を利する者の数が限られていったからです。
この文章の解釈で、この作品の意味が異なってくると思います。
人間が、神を増やした。と読んでよろしいのでしょうか?
「ぱられる」についても色々考えてしまいました。
是非、素晴らしいシナリオに仕上げて下さい。
07/27 13:27
ドリーマー 様。お読みいただきありがとうございます。
>タイトルから、神と人間が共存する異世界の話、と解釈していいのでしょうか。私の持っている神のイメージが、古事記の神とギリシャ神話の神なので、この作品の神がかなり俗っぽいことから、ギリシャ神話の神に近いのかな、と思いながら読みました。
誠にその通りでございます。わたくしは両親も、両親とも宗派の違う複雑さなので、神様への信仰は? なので、このようになりました。また、俗っぽくなければ
人間との交わりなんて書けないような・・・いえいえ。まあ、アーサー・キングの世界をモデルにした部分もなきにしもあらず、なので多少は古くさいでしょうか。
>>これでピュア・ラヴ・ストーリーになっているでしょうか?
>。そもそも女神の愛と少年の愛は異質なものなので、ラヴ・ストーリーの範疇に入るかどうかぎりぎりのような気がします。お互いに相手を想っていることはかわりないけれど、決して交差することはない平行線というか……。最後に女神の愛は、限りなく母の愛に近くなっていたので、
母になったことがなかったので自分で自覚しておりませんでした。ただ、好きになるならこういう女神様がいい、とずっと思ってました。
>あなたが死ぬなら私も死ぬわ、というのが男女の愛なら、私が死んでもあなたを助けたい、と思うのが母の愛だと思います)
そうなのですか……初めて知りました。男女の愛も知らないもので。
>広い意味ではラヴ・ストーリーになっていると思います。
そうでしょうか・・・いえ疑いません。ありがとうございます。
>一つの作品として楽しむことはできましたが、登場人物に共感するまでにはいたりませんでした。
楽しんでいただけたのなら、これ以上のことはありません。登場人物をよく書き込んでお話をふくらませたいと思います。できるかな?
では、また次回を楽しみにしています。
ご来訪、誠にどうもありがとうございました。
涼香亜弓 拝
07/27 14:50
>自己犠牲。
>その人のために死ねるか、たがいに相手を生かしたいと思う、ふたつのピュアな魂。
あ、と思いました。さすが
愛の伝道師たるショコラ様。
テーマを一言で言い表されてしまいました。
>愛する人を救うために、流れ弾に身をさしだして死ぬエポニーヌを思い出しました。
>女神も、自らの命を少年に吹きこみますよね、細部を膨らませたら素敵なラブストーリーになりそうです。
ありがとうございます。
でもラヴは生きててナンボのような気もするのですが・・・通俗的ですか?
>人が増えると、自らを利する神の下に集い、たがいの利のために神の名において争いはじめるということでしょうか。
うい。わかりにくいというか、独りよがりな一行のような気がしていたのですよね。ショコラ 様がご理解くださったからと言って、いい気になってしまってはいけないと思います。
>女神の下に集まった人々は、どんな利を求めていたのか、敵なる神とどんな利のぶつかりあいがあったのかも、考えられたほうがいいかな思いました。
争いを好まないであろう女神がどうして、戦に巻き込まれていったのか、ここを説得力あるように描くのが、いちばんむずかしそうですね。
どうして、こんなことに・・・のアンサーが必要と言うことですね。いいヒントを下さいました。
>少年にどのようにして死がもたらされたのかも、暗示にしろ明示にしろ、描かれたほうが自己犠牲の美しさが引き立つのではないでしょうか。
少年の勇姿と死後の違いをうまく書きたいと思っております。
こんな話、誰が読んで下さるだろうかと思いながら投稿したので、感想、ご指摘、うれしかったです。
本当にありがとうございます。
涼香亜弓 拝
07/27 15:18
水生 様
>読ませて頂きました。
ありがとうございます。
>>これでピュア・ラヴ・ストーリーになっているでしょうか?
>どうしても、信仰との絡みで考えてしまいます。
それをラヴ・ストーリーと呼ぶならば、なっていると思います。
神は究極愛だと思う不信心者です。現代の神にはありえない、かもしれない。
全き愛を知らぬ者には、愛は不変、愛は神、となってしまうのですよ(爆
移り変わってゆくのが人なのに・・・
>人間が数を増やすつど、その神々を利する者の数が限られていったからです。
この文章の解釈で、この作品の意味が異なってくると思います。
人間が、神を増やした。と読んでよろしいのでしょうか?
はい、ここですね。いいわけはしませんがショコラ様の解釈を引用させていただければ
>>人が増えると、自らを利する神の下に集い、たがいの利のために神の名において争いはじめるということでしょうか。
となります。わかりにくくてごめんなさい。
>「ぱられる」についても色々考えてしまいました。
いろいろって・・・? どんなのでしょう。不安。
>是非、素晴らしいシナリオに仕上げて下さい。
あ、え、ええ。・・・はい。
どうもすみませんでした。
涼香亜弓 拝
07/27 15:45
こんにちは、拝読させていただきました!
面白かったです。前回がホラーでしたのに、今回はまた180度違った作品を書かれたことに驚きました。完成度も高いと思いました。
あまりラブ・ストーリーは読んだことが無いのですが、こちらの作品からは女神様と少年兵士のお互いを想いあう気持ちがとても伝わってきました。でも、たぶん二人とも戦いってことで、わきまえている部分があって、私たち二人だけ幸せになればいいといった考え方じゃないことに、僕はかっこよさを感じました。
最終的に女神様は自己犠牲を選び、少年兵士が女神様の犠牲を知ってムキムキに成長して再び戦いに挑むといった、この締めも僕は好きです。
文章が三人称(神視点?)というよりも、なにか神話を読み上げる女性(?)がいて、その人の一人称を読んでいるような不思議な感じがしました。
勉強不足の人間の感じたことを書かせていただきました。とても素敵な作品でした!ありがとうございました!
07/29 23:55
中野 乙 様。恐れ入ります。涼香亜弓です。
>面白かったです。前回がホラーでしたのに、今回はまた180度違った作品を書かれたことに驚きました。完成度も高いと思いました。
いろいろ試みてはいるのですが。完成度が以前よりすこうし、よくなったらしきことが、わたくしの心を強くしてくれます。
ありがとうございます。
>あまりラブ・ストーリーは読んだことが無いのですが、こちらの作品からは女神様と少年兵士のお互いを想いあう気持ちがとても伝わってきました。でも、たぶん二人とも戦いってことで、わきまえている部分があって、私たち二人だけ幸せになればいいといった考え方じゃないことに、僕はかっこよさを感じました。
今回ばかりはお詫び致します。心叫ぶほど、苦しい思いで書きました。神の思う愛を信じること、学ぶことが自分には必要だと思いました。
誰かのために書いたのではないのです。わたくしには読者様の顔すら浮かんできません。未熟故でしょう。
でも今は。哀しいとき、なぜか猫が寄ってきて事を成すので、気が紛れます。お話書いてる時は困りますけれど。そんなことはないのです。とても安らいでおりますよ。
>最終的に女神様は自己犠牲を選び、少年兵士が女神様の犠牲を知ってムキムキに成長して再び戦いに挑むといった、この締めも僕は好きです。
そう言っていただけてほっと致しました。
>文章が三人称(神視点?)というよりも、なにか神話を読み上げる女性(?)がいて、その人の一人称を読んでいるような不思議な感じがしました。
「有名になりたければ借金をつくれ、世に埋もれたいのなら詩人になれ」という言葉を読んだことがございます。きっと詩人にでもなりたかったのでしょう。
>勉強不足の人間の感じたことを書かせていただきました。とても素敵な作品でした!ありがとうございました。
いいえ、どう見ても頭の悪そうな幼い文章に、我ながら恥じ入ります。
でも、ありがとうございます。
万感の思い込めて。
涼香亜弓 拝
07/30 01:20
読ませていただきました。
狙いにはピュアかどうかとのことですが……難しいです。『ロミオとジュリエット』のように身分の差、さらにはお互いの立場から本人たちではどうしようもない、その中での恋愛模様ですが、最終的に少年兵は女神の命と引き換えに息吹を返す、でもその身を戦いに投じてしまう。
侵略があるとはいえ戦いに身を投じる部分から、戦が嫌いな女神の存在がむなしいと言いますか、もし少年兵が生き返ったときに女神への記憶がなければ報われないけれどピュアなストーリーになったと思うのです。女神の視点から見ればです。神になる前の少年兵はピュアというより無垢な印象を受けました。神になったあとの少年兵はピュアと言うには難しいです。女神は終始ピュアだと思います。
ストーリーは面白かったです。少年兵が生き返った後に絶対的な力を持って、でも女神を敬いながら地上を統治した、とか。でもそうすると少年兵は神をも凌駕してしまいますし、難しいです。
08/04 02:29
たぬ吉 様。
難しい、と各所に見られますのは、ご不満のご様子ですね。わたくしも投稿してから時間が経って、ピュアかどうかはどうでもよくなってきました。自己満足か・・・と思い始めてきた頃です。
>最終的に少年兵は女神の命と引き換えに息吹を返す、でもその身を戦いに投じてしまう。
男の方が神様級の力を授かったら、することは世界征服しかないと思うのですが。
>侵略があるとはいえ戦いに身を投じる部分から、戦が嫌いな女神の存在がむなしいと言いますか、もし少年兵が生き返ったときに女神への記憶がなければ報われないけれどピュアなストーリーになったと思うのです。
おお、なんと切ない。やはり己は底が浅かった、と思い知る涼香です。
>神になる前の少年兵はピュアというより無垢な印象を受けました。神になったあとの少年兵はピュアと言うには難しいです。
人を殺傷することを覚えてしまったからでしょうか?
>女神は終始ピュアだと思います。
わたくしの分身も書き込んだとしたら、間違いなく彼女に信心し、仕えるはしために・・・ああ、でもそのように言っていただけてうれしいです。
>ストーリーは面白かったです。
それこそうれしいお言葉。感謝いたします。
>少年兵が生き返った後に絶対的な力を持って、でも女神を敬いながら地上を統治した、とか。
愛のないひとには地上を統括して欲しくなかったので・・・女神への変わらぬ愛、それこそが彼の存在意義であり、闘いを続ける理由、のような・・・
>でもそうすると少年兵は神をも凌駕してしまいますし、難しいです。
大丈夫だと思います。闘いの好きな強い神様はいっぱい居るし、闘いに飽きた神様は別次元へと乗り込んでいったんじゃないかとよんでます。
そこがパラレルだったのですが、書き損じてしまいました。もっと真剣に向かい合わなければ、笑われてしまいますね。すみません。
たぬ吉 様に「難しい」思いをさせてしまって申し訳ありません。
今、苦手なホラーをちょっぴりずつ勉強中です。何がどうなっているのかわからないものが多いのですが、多分古くさいのを読み過ぎなんだと思います。
新しいものに挑戦したいですね。
涼香 亜弓 拝
08/04 03:30
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