作家でごはん!鍛練場

『神様のイジわるっ(99枚)』

シュール著

50のおっさんがお涙頂戴小説を書くとこうなります。若い方に感想をもらえれば幸いです。

                一
こんな癖が自分にあるとは夢にも思わなかった。
ロリコン…違う世界の生き物。気持ち悪い。
あんな、まだ乳の匂いの残る女、いや、女の子、そんなものを性の対象にする?
ナンセンス…そう言うしか他にない。
「おじさん、今日はどうするの?」
 我に帰る。
「いつもと一緒でいいよ」
「プラス五千円でここもOKだよ」
 言いながらミサという少女は、ほとんど下着が見えかけている短いスカートを指差した。
「給料前で小遣いが無いんだ。だから、いつもと一緒でいい」
 言うやいなや、背後からミサの小さく膨らんだ胸に手をやり、項に唇をつけた。
 いつものように、乳の香りがした。

 罪悪感を溶かすためにガード下の立飲みで安酒を呷る。
 手にはまだ、ミサの柔らかい肌の感触が残る。
「熱燗おかわり」
 ゴマ塩頭の店主に空になった銚子を渡す。
 店の隅に貼りつけられた小さな液晶テレビの中で、ミサと同い年位の女の子たちが歌い、そして、踊っている。
 社会現象になりつつある、なんとかというグループだった。
「くだらねぇ」
 横で立っている男が吐いた。
「どうせ、なんだ、オタクって言ったっけ、あの気持ち悪い男らのマスターベーションの種だろ。普通の女とろくに口もきけねぇからって、こんな子供まがいの女に目を向けやがって。 ほんと、この国はいったいどうなっていくんだよ」
「お待たせ」
 店主から銚子を受け取る。
「あと、めざしくれる」
 店主は「あいよっ」と呟くように言って、焼き物担当と思しき店員に向かって「めざしいっちょう」と少し声を大きくして言った。
 液晶テレビの中では相変わらず女の子たちが作り笑いを顔に貼りつけて歌い、そして、踊っている。
“何がいいんだ?”
 小学生や中学生の頃、クラスのみんなが躍起になっていた“アイドル”には全く興味が無かった。
 可愛い“女の子”より、綺麗な“女性”が好きだった。
“アイドル”より“女優”。
 それがどうして?
 Yシャツの胸ポケットから煙草を取り出す。
 指が携帯に触れた。
 何も無いとわかっていながらガラ携を開くと、やはり、電話もメールも着信はなかった。

 十五年前に二千五百万円の金を借りて買ったマンションに着くと、部屋の明かりはすべて消えていた。
 もちろん「ただいま」「おかえりなさい」といった言葉の行き交いはない。
 真っ暗なリビングでソファに腰を下ろす。
 暗がりの向こうに妻の寝姿が見える。
 ここ十年、交わりはない。
 冷蔵庫から缶ビールを取り、口を開ける。
 ラップのかかった野菜炒めらしきものがあったのでレンジに放り込む。
 冷えたビールを胃に落とす。
 ミシッと何かが軋む音がしたと思ったら娘がリビングに入ってきた。
 ミサが嘘をついていなければ同い歳だ。
「うるさいから起きちゃったじゃない」
「おぅ、悪い悪い」
「明日から期末テストなんだからねっ」
 言うと娘は部屋へ戻っていった。
 そう言えば今年は高校受験だった。
 娘の事はすべて妻に任せていた。と言うか、自分だけが家族の輪に入っていなかった。
 チンとレンジが鳴る。
 無造作に野菜炒めらしきものが入った器を掴むと、強烈な熱さが指に飛んできた。
「アツっ」
 水を流し指を浸していると、何か泣き出しそうになってきた。

               二
「おしゃれですねぇ、昼間からホットヌードルですか」
 顔を上げると、洋子がいた。
「しょうがないだろっ、給料前で金が無いんだから」
 カップラーメンの容器を机に置き、額の汗をハンカチで拭く。
「久しぶりに食事でも行きませんか」洋子は少しだけ口元に笑みを浮かべて言った。
「給料日まで待ってくれよ」
「私、おごりますよ」
「いいの?」
「花の独身ですから」
「そう。じゃあ、お言葉に甘えて」
「東口に六時でいいですか?」
「ああ」

 約束の時間の五分前に東口に着くと、洋子はまだ来ていなかった。
 煙草に火を付け二回吹かした時、洋子が白い息を吐きながらやってきた。
「すいません。
 帰ろうと思ったら急に課長が仕事を言ってきて」
「あいつはああいうやつなんだ。
 昔から、俺と違って生真面目なところがあって若干KYなんだよな」
“あいつ”とは隣の部署の同期入社だった。
「何食べますか?」
「なんでもいいよ。
 ご馳走頂けるのなら文句は申しません」
「じゃあ、おでんなんかどうですか?」
「いいねぇ、寒い時には最高だよ」

 店は仕事帰りの会社員で混み合っていた。
 カウンターで二人並んで座るのは久しぶりだった。
「ビールにしますか?」
「いや、寒いからいきなり熱燗で。
 洋子ちゃんは?」
「じゃあ、私も熱燗で」
 すぐにお銚子とお猪口が二つ運ばれてきた。
「どうして今日は誘ってくれたの」
 お猪口を重ね合わせながら洋子に聞いた。
「久しぶりに一緒に飲みたくなったんです」
 洋子とは五年間付き合い、三年前に別れた。
「イニシアチブは君が握っているから」と常々洋子には言っていた。
 ある日、ベッドの上で「今日で終わりにしたいの」と言われ、なぜ?とも聞かずに別れた。
 暫くすると、風のうわさで結婚して退職すると聞いた。
 しかし、一年たっても二年たっても洋子は結婚もせず会社にいた。
 暫くすると、又、風のうわさで、婚約が破棄されたと聞いた。
「あっ、大根美味しい。
 食べてみてください」
 四等分に切ってくれた扇形の大根を口に入れる。
「うまいっ」
 そうでしょ、と言った洋子の肩が触れる。
 時計が巻き戻された。
 三本目のお銚子が空になった時、手が触れ合っていた。
「そろそろ出ようか」
「はい」
「今日はご馳走になっとくね」
「ええ。
 おでんくらいなら毎日でもご馳走しますから」
 嬉しそうに洋子は言った。
 店を出ると外の寒さはさらに増していた。
 自然と指が絡み合う。
「久しぶりですよね」
「ついこの間のような気がするんだけどね」
「抱いてくれます?」
「えっ」
 予期していなかった洋子の科白に声が裏返ってしまった。
「こんなおばさん、もう、いやですか」
「そ、そんなことないけど…」
 
 後三十分で泊まり料金になるとのフロントからの内線を切り、受話器を壁に掛けると、もう一度洋子の体に手を回した。
「もう時間ですよね」
 少し寂しさの混じった眼を向けて洋子は言った。
「朝までいようか」
 ダメです、と洋子は首を振る。
「すぐに支度をするんで待っててくれますか」
 言うと洋子は体に何も纏わずにベッドから出ていった。
 シルエットは何一つ変わっていなかった。
 暫くすると洋子が戻ってきた。
 無言で唇を重ねる。
 紅を塗る前に今日最後のキス。
 いつもの儀式だった。

 外の空気はさらに冷たく、そして、重くなっていた。
「なんか腹減ってきたよなぁ。
 奢ってもらって言うのもなんだけど、おでんってあまり腹もちがよくないから」
「久しぶりに頑張りすぎたからじゃないですか」洋子は茶目っけな表情を向けた。

 日付が変わっても眠らない街のラーメン屋にはたくさんの客がいた。
「ラーメン食べる?」
 瓶ビールをコップに注ぎながら洋子に聞く。
「私はいいです」
「じゃあ、俺もやめておこう」
「お腹減ったって言ってたじゃないですか」
「何かこの人混みを見ていたら食欲が無くなっちゃったよ。
 餃子だけにしとくよ」
 店員に注文を告げ、テーブルに常時置かれている小皿にタレを入れラー油を溶かす。
「洋子ちゃんも食べる?」
「いいです。
 ビールだけでいいです」
「じゃあ、もう一本頼もう」
 伝票にさっきの餃子の注文を書きこんでいる店員にビールを頼む。
「今日は久しぶりに楽しかったよ」
 ビールを嘗め、小皿のタレを箸でかき混ぜながら洋子に言った。
「私もです。
 最近色んな事があって、久しぶりに今日は飲みたいなぁと思っていたんです」
「そうなんだ」
「実は両親が離婚したんです。
 いわゆる熟年離婚です」
「えっ、そうなんだ。、じゃあ、今、家はどうなっているの」
「母が出て行ってしまって、父と二人で暮らしているんです」
「そりゃ、大変じゃない」
「出て行った母の気持ちもわかるんです。
 父は全く家庭を顧みない人で、私も小さい時に父にどこかへ連れて行ってもらった記憶ってほとんどないんです。
 お酒ばかり飲んで、仕事が少しうまく行かないと母にあたって。
 手を上げたのも私は何度か見てきましたから。
 だから、母は待っていたと思うんです。
 父が定年退職した一週間後に退職金の半分を持って『お世話になりました』と言って家を出て行きました」
「お父さんは?」
「毎日、半分になった退職金を持って遊び回っています。
 ほとんど家には帰ってこないし、帰ってきたと思ったら、ずっと寝てますから」
「そうなんだ」
「だけど、母が父に愛想をつかしたのはわかるんですけど、結局、私に対しても母は同じような気持ちだったと思うんです。
 いつまでたっても結婚はしないし、まとまっていた縁談は勝手に破棄するし。
 『孫の顔が見たかった』出て行った日にそう言われました」
「お母さんとは会ってるの?」
「たまに食事に行ったりしています。
 今は小さなアパートを借りて、ビルの清掃のパートをしながら暮らしています。
 気のせいか、一緒に暮らしていた時より表情が明るくなった感じがするんです」
「やっぱり夫ってのは妻にとっては鬱陶しい存在なんだ」
「そんなことはないと思うんですけど…」
「だって、大概、妻に先立たれた夫は元気をなくすけど、夫に先立たれた妻は反ってパワーアップするからな」
「そうですか」
 洋子がそう言って少し口元に笑みを浮かべた時、餃子が運ばれてきた。
「洋子ちゃんも食べれば」
「いいです。
 本当にお腹減っていませんから」
「もう今日はキスはしないんだから気を使わなくていいよ」
「何言ってるんですか」言いながら洋子は肩を優しく叩いた。
「じゃあ、遠慮なくいただきます」
 餃子をラー油が解けたタレに浸し口に放り込む。
「うん?」
「どうかしたんですか」洋子が聞く。
「味が少し薄いんだよ」言いながら小皿にラー油を足す。
「入れすぎじゃないですか?」
 赤く色を変えていくタレを見ながら洋子が言った。
「だってしょうがないよ、味が薄いんだから」
 餃子をタレに浸しもう一度口に放り込む。
「うん、丁度いいよ」

 店を出ると、タクシーに乗る洋子と別れ一人で街を歩いた。
 携帯が震えた。
 メールの着信だった。
 ミサからだった。
“今度会えるのいつ?”
 返信は打たなかった。
 洋子の余韻がまだ体を包んでいた。
 寒さに我慢ができなくなると流しのタクシーを止めた。
 乗り込むと、自宅マンションの近くにある大きな交差点の名を告げた。
 車が走り出すと、社会現象になりつつあるアイドルグループの歌がラジオから流れ出ていた。
「ほんと、こんなのどこがいいんでしょうね」運転手が話しかけてくる。
「まあ、いいんじゃないですか」
「日本の男も本当に情けないですよね。
 こんなしょんべん臭い女にうつつを抜かして。
 ちゃんと恋愛して結婚して子供を作らないと」
「ほんとそうですよね」言いながら少し眠気を覚えてきたので目を閉じた。
 ミサと初めて会ったのは、洋子と別れて少したってからだった。
 今思うと、寂しかったのだろうか。
 だけど、よりによって“しょんべん臭い”女にいったのはどうしてなのだろう。
 癒してくれるのなら誰でも良かったのだろうか。
 初めて会った時、ミサに“女”は感じなかった。
 娘の友達と会っている、そんな感じだった。
 ところが、フロントで金を払い、部屋に入り、シャワーを浴びているとミサが突然服を着たまま中に入って来て…。
 気がつくと“女”のミサは横で寝息を立てていた。
「お客さん、ここでいいですか」
 運転手の声で目を覚ます。
 窓の外に見慣れた風景が漆黒の闇の中で鎮座していた。
 車を降りると、みぞれ交じりの雨が降っていた。
 携帯を開くとミサにメールを打つ。
“また連絡するよ❤❤❤”

              三
 三人揃って外出するのは久しぶりだった。
 朝起きてリビングへいくと妻に「車出してくれる」と言われ、最近出来たばかりの商業複合施設、いわゆるショッピングもできて、食事もできて、暇があれば映画も見れる、そんなところにやってきた。
 目的は、高校受験を控えた娘が風邪をひかないための防寒グッズを買うことだった。
 目的のフロアーに着くと「少し時間がかかるわよ」と妻に言われ喫煙室に向かった。
 土曜日とあって、開店したばかりなのに店内にはたくさんの人がいた。
 娘と同じ歳くらいの女の子の団体がファンシーショップと看板のさがったスペースで騒いでいる。
 その前を通ると、ふと、薄い緑色の丸い玉をつなげた、娘が最近手首に付けているリングに目が止まった。
 確かもうすぐ誕生日だと言っていた。
 商品の脇に付けられているPOPには“幸せを呼ぶ…”と書かれていた。
 値段は二日分の生活費だった。店員に聞かれてもいないのに「娘の誕生日なんで」と言ってお金を支払った。
 喫煙室に入るとピンク色の袋からリングを取り出し、ズボンのポケットに忍び込ませた。
 ここ何年か、娘に誕生日のプレゼントなんか買ったことがなかった。
 妻からも「買ってあげれば」と言われなかった。
 煙草に火をつける。
 紫煙がゆらゆらと薄茶色に染まった天井に向かって上っていく。
 携帯を開け、メールを打つ。
“来週の金曜日、どうですか?”
 すぐに返信メールが携帯を震わせる。
“オッケー。いつものところで七時でいいっすか?”
 すぐに返す。
“了解。
”誕プレ持っていきます“
 誕プレとは、誕生日プレゼントのことで、娘が一度使っていた時に「それはどういう意味だ」と聞いて
教えてもらった。
“ウッピー”
 意味がわからなかった。

 結局、缶コーヒー一本を空にし、吸い殻を三つ作ったところで妻から買い物終了のメールが来た。
 そして、食事をして帰ろう、と追加のメールがすぐに飛んできた。
 フードコートと呼ばれる空間にはたくさんの人がいた。
「先に行ってくるね」
 言うと妻は娘と一緒に席を立った。
 立ち並ぶ店舗に向かって歩く二人は途中で腕をからませた。
 訳のわからない疎外感を感じた。
 妻と娘が戻ってきた。
「何にしたの?」
 聞くと娘は「石焼ビビンバ」と答えた。
 妻はその横で、それがどうしたの、といった表情をして、もってきたコップの水を口にした。
「お父さんも行ってくれば」と娘が言ったので、あまりお腹は減っていなかったがとりあえず席を立った。
 ハンバーガー、ラーメン、焼きそば、たこ焼き、讃岐うどん、長崎ちゃんぽん、いわゆる、ジャンクフードが大半だった。
 食べたいものが無かったので席に戻ろうと思ったが、一人だけ食べずにぼーっとしているのもなんなので、誰も並んでいなかった長崎ちゃんぽんの店の前に立った。
「お出来しましたらお呼びしますので」と言ってテレビのリモコンの小型版を渡された。
 席に戻ると、娘はスマホとにらめっこ、妻はスーパーのチラシとにらめっこ、同じような表情をしていた。
 二人ともやはりテレビのリモコンの小型版を持っていて、暫くすると、高い電子音が鳴り「行ってくるね」と娘が言って、また二人並んで立ち並ぶ店舗に向かって歩いて行った。
 後ろ姿が似てきた。
 言葉使いも日に日に一緒になってくる。
 テーブルに置いたテレビのリモコンの小型版が鳴る。
 店の前に着くと、長崎ちゃんぽんが湯気を立ててトレーの上に置かれていた。
 セルフで紅ショウガをてんこ盛りにして、その上から胡椒をこれでもかと振りかけた。
 席に戻ると、娘と妻はハフハフと、銀のスプーンで石焼ビビンバを頬張っていた。
「お父さん、紅ショウガ多すぎじゃん」娘が言う。
「これがうまいんだよ」言いながら紅ショウガの絡んだ太めの麺を口に運ぶ。
 確かにうまかった。
 続いて、蓮華でスープを掬い喉に流し込む。
 薄い。
 もともと味の濃いものが好きだったが、長崎ちゃんぽん自体も結構濃口の食べ物だ。
 もう一杯スープを掬う。
 若干、胡椒の香りだけを感じた。
 こんなもんか、自分を納得させ、ポケットの中のリングを確認する。

           四
 帰りがけに上司に頼まれた書類をそろえ終えた時、待ち合わせの時間までに一時間を切っていた。
 家とは反対方向のホームに止まっていた快速電車に飛び乗ると、朝のテレビの「今年最高の寒さになるでしょう」とは裏腹に背中に汗を感じた。
 途中、私鉄に乗り換え、いつもの駅で電車を降りると改札の向こうにミサがいた。
 よっ、と手を上げたりはせず、目だけでお互いを確認する。
 自動改札を通り抜けようとした時、行く手を阻まれた。
 家の最寄りの駅ではないのだ。
 視界の隅でミサが笑っている。
 乗り越しの精算を済ませると改めてミサと合流する。
 駅で偶然出会った父と娘を演じる。
 一〇分ほど歩くと、急に人影が無くなり、街灯も姿を消す。
 ミサが手をからめてくる。
 いつもの白い建屋がわずかな照明を浴びて暗闇に浮かぶ。
 部屋に入ると真っ先に“誕プレ”を渡す。
「ウッピー」
 この間メールで見た意味不明な言葉だった。
「お返し」と言ってミサは頬に唇を重ねた。
 いつもの乳の香りがした。
「シャワー浴びてくるよ」
 洋子との時は浴びないこともあったが、ミサとの時は必ず浴びる。
 それにアルコールは決して口にしなかった。
 何故だかはわからない。
 嫌われるのを恐れているのか。
 思いながら脇の下に泡を立てる。
 浴室から出るとミサは下着姿になっていた。
「今日はどうする?」重みのない言葉をミサは発する。
「いつもと一緒でいいよ」
 言うとミサはすぐに体を寄せてきた。
 乳の香りが安物のボディシャンプーの香りを消す。

 ベッドから出たミサは慣れた手つきで冷蔵庫から缶のウーロン茶を取り出しソファに腰を下ろした。
「もし自分の子供がこんな女の子になったらどう思う」
 ミサには、初めて会ったときに、結婚をして妻はいるが子供はいないと言っていた。
「子供には子供の人生があるから別にいいと思うよ」ベットの中から答える。
「嘘っだぁ。
 女の子がいないからそんなこと言えるんだよ。
 本当にいたら絶対に激怒(げきど)ってるよ。
 あっ、激怒るっていうのはすごく怒るっていうことだから」
 言いながら少しはにかんだ表情にあどけなさが垣間見える。
 娘の顔がダブる。
「逆に君のお父さんが俺みたいなおっさんだったらどう思う。
 ミサちゃんみたいな女の子とこんなことをしているおっさんだよ」
「おっさんにはおっさんの人生があるからいいと思うよ」
 二人で声を上げて笑った。
「だけど、私、お父さんがいないから、お父さんってどういうものかわからないんだ。私が生まれてすぐに事故で死んだって聞いているんだけど」
 ミサの身の内話を聞いたのは初めてだった。
「そうなんだ。
 じゃあ、お母さんたいへんだよね」
「そんなことないよ。
 スナックのママやって結構楽しそうにしてるよ」
「お母さんにはバレてないの?」
「大丈夫だよ」
「だけど帰るのが遅くなったりミサちゃんの歳にしてはお金だってたくさん持ってると思うから」
「バイトに行ってるってことにしてるから。
 それにさっきも言ったけど、スナックでママやってるから私が家に帰った時はほとんどいないし、朝、家を出る時はまだ寝てるし」
「彼はいるの?」
「いるわけないじゃん。
 こんなことしてるんだから」
「こんなことって、自分では良くないことをしていると思っているんだ」
 ミサの表情が少し変わった。
「もうどうでもいいじゃん」
 言うとミサは手にしていた缶のウーロン茶をコツンとテーブルの上に置き、ベッドに戻ってくると額を胸に押しつけてきた。
 汗なのか涙なのか、何か冷たいものを感じた。

 ミサと別れるといつものガード下の立飲みで酒を呷った。
 テレビでは天気予報が流れていて、明日はホワイトクリスマスになると言っている。
 クリスマスなど、娘が小さい時には色々とかかわっていたが、今は全く関係が無かった。
 街全体の浮かれ方が逆に癇に障った。
 そう思っていると、店の奥に、サンタの帽子を被った赤鼻のトナカイが二頭いた。
 頼んだゲソ焼きが出てきた。
 七味を掛け、噛む。
 思ったより固かったので奥歯で噛もうとした時、ゲソが歯の上を滑り、誤って舌を噛んでしまった。
「いてっ」思わず声が出る。
 すぐに口の中に血の味が拡がる。
 グラスの底に残っていたビールで口の中をすすぐ。
 煙草に火を付け、痛みが去るのを待つ。
 噛んだところをツンツンと指でつつく。
 痛みはかなり薄くなっていた。
 恐る恐る熱燗を流す。
 大丈夫だ。
 もう一度ゲソをつまむ。
 七味の味を感じた瞬間、舌がもげるような痛みが襲ってきた。
 ゲソを吐きだし口を手で押さえたが、痛みに耐えることができなかった。
 カウンターから崩れ落ち「大丈夫かっ」と駈け寄ってきた二頭の赤鼻のトナカイが被っていたサンタの赤い帽子が最後の記憶だった。

           五
 病院のベッドの上で目を覚ますと妻がいた。
 大丈夫?というより、何やってんのよ、という顔をしていた。
 口や鼻に管は通っておらず、腕に点滴の針が刺さっているだけだった。
 舌の痛みは消えていたというより、感覚そのものが無かった。
「お昼から先生が話があるって」
「うん」とだけ頷くと、目を閉じた。

 診察室に入ると、見るからに自分より若い医師が白衣を着て座っていた。
 空調が効いているとはいえ、白衣の下には薄いシャツを一枚着ているだけだった。
 相撲取りと医者だけはどんな寒い冬でもいつも薄着だよなぁとくだらないことを考えていると「お掛けください」と丸椅子をすすめられた。
「単刀直入に申し上げます」
 丸椅子にまだ尻が落ち着かないうちに若い医師は表情を変えずに言った。
「舌癌です」
 背筋にスーッと寒気が走った。
「末期に近い中期です」…「すぐに手術をして頂きます」…「舌を切除することになります」…若い医師の言葉がシャボン玉のように部屋の中を漂う。
 そして「言葉を失うことになります」の医師の一言で、全てのシャボン玉がポンと音を立てて割れた。

 妻に付き添われて自宅に着くと、陽は既に落ちていた。
 娘は高校受験を控え、近くの学習塾に行っていていなかった。
「少し横になる?」妻が聞く。
「いや、いいよ」と首を横に振る。
「晩ご飯の支度してないから買い物に行ってくるね。
 おかゆでいい?
 先生はまだ刺激のあるものはダメだって言ってたから」
「ああ、すまない」
「あの子帰って来たら晩ご飯は少し待っていてねって言ってくれる」
「ああ」と今度は首を縦に振った。
 一人リビングに残される。
 机の上には箱の形からして、毎年、近所の奥様仲間から義理で買っているクリスマスケーキが置かれていた。
「言葉を失うことになります」…診察室で割れたシャボン玉が場所を変えて再び空間を漂う。
 天罰だろうか。
 ミサとのこと、洋子とのこと。
 娘が学習塾から帰ってきた。
 無言でリビングに入ってくると目が合い、何だ戻っていたの、といった顔をした。
「母さん今買い物に行ってるからもう少し晩ご飯は待ってくれって」
「わかった」と言って娘は自分の部屋に行こうとした。
「おい、ちょっと話があるんだ」
 声を掛けると面倒くさそうに娘は顔だけをこっちに向けた。
「父さん、癌なんだ。
 ぜつがん(舌癌)って、舌の癌なんだ。
 で、舌を取っちゃうんだ。
 もう話せなくなる。
 これまで嘘ばっかりついてきたから閻魔さんが怒ったんだろうなぁ」
 少しだけ表情を変え「そうなんだ」とだけ言って娘は自分の部屋へ入っていった。
 リビングでまた一人になる。
 机の上に置かれた箱の中の砂糖で出来たサンタクロースと目が合う。
「とんだクリスマスプレゼントだよ」
 そう言うと、笑うしかなかった。
         
 次の日、クリスマスの日、、手術が年明けの一月十日に施されることが決まった。
 結果、言葉を失う日まで、あと十六日となった。
 会社に電話を入れると「仕事のことは気にしなくていい。会社は君を全面バックアップするから」と上司に言われた。
 あまり好きではなかった上司だったが、最後に「ありがとうございます」といった時、言葉に少し涙が混じった。
 風の噂で聞いたのか、その日のうちに洋子から電話があった。
 洋子は泣いていた。
「天罰だよ」と最後に言って電話を切った。
 次の日、ミサからメールが来た。
“誕プレ毎日つけてるよーっ  一日遅れのメリークリスマス  今年も一年アリガトネっ  そして  あけおめ―っ  あいさつをまとめてみましたーっ  ばいならーっ”
 すぐに返信メールを打った。
 一月の四日、言葉を失う六日前に会うことになった。

            六
 年が開けた。
 年賀状に“頑張りましょう”という言葉が目立った。
 妻は手術の翌週からスーパーマーケットのレジ打ちを始めることになった。
 治療費は保険で賄えるとはいえ、有休で休めるのは三か月だけ。それにもし復帰できたと
 しても出世はもう見込めない。
 娘は出来合いのおせちを食べると“出陣式”と称したものに参加するために学習塾へ行った。
 そして、一月四日がやってきた。
 妻には、会社のみんなに最後の声を聞かせに行くと嘘を言って家を出た。
 いつもの駅でミサと落ち合い、いつもの白い建屋に入った。
「つけてまーす」
 折れそうな手首にぶら下がった薄いグリーン色の球が連なったリングをミサは見せつける。
「早くシャワー浴びてきてね」言いながらミサは身に付けている衣を一枚一枚剥いでいく。
 娘と本当に同い歳なのか、妙な色気をいつもより強く感じる。
「いいんだ、今日はシャワーはいいんだ」
「そうなの?
 珍しいじゃん。
 じゃあ、今日はどうする?
 いつもと一緒でいい?」
「いや、それもいいんだ。
 今日は本当にいいんだよ」
「どうしちゃったの」
 自分が今置かれている状況をすべて話した。
「死んじゃうの?」
「死なないために舌を取るんだ」
「喋れなくなっちゃうんでしょ」
「そうなんだけど、なにか、俺だけは手術して舌が無くなっても、喋れるような気がして」
 ミサは「そうなの…」と消え入るような声を出した。
「自分のお父さんがこんなんになったらどう思う」
「うーん…よくわかんないけど、嬉しくはないと思う」
「そうだよな」向かいの鏡にミサの背中が映る。
「今日でミサちゃんともサヨナラだ」
 ミサは何も言わなかった。
「ありがとう」言いながらいつもの枚数の紙幣を差し出す。
「いいよ。今日は何もしてないんだから」とミサは拒否する。
「生きている限りは幸せにならないとな」言ってミサの手に紙幣を握らせる。
「死んじゃダメだよ、絶対にダメだよ」
 ミサは言いながら手首にぶら下がった薄いグリーンの玉が連なるリングに涙を落した。

 家に着くと妻はリビングで一人コーヒーを飲んでいた。
 娘は風呂に入っているらしく、洗面所の木目調の扉が閉まっていた。
「食べてきたの?」
「ああ」とは言ったものの、何も食べていなかった。
 ミサと別れた後、いつも立ち寄る立飲みには今日は寄らなかった。
「喋り収めだからってバカみたいに喋ったら疲れちゃって。
 風呂に入ってもう寝るよ」
「お腹がすいたらお鍋の中にお豆腐を炊いたのがあるから」
「ああ」
 言って何気なく隣の和室を見ると、旅行鞄が置かれていた。
「入院の準備だよな」
 言うと妻は「そうよ」と感情を込めずに言った。
 旅行鞄の脇にはスケッチブックが小さく積まれていた。
「あれは?」
「あなた話せなくなるから」と言って妻は口を手で覆った。
「あっ、筆談用か」少し笑みを浮かべて言うと、妻は、しまった、という表情を浮かべた。
「そうだよなぁ、何かまだ実感が湧かないんだよ。本当に俺話せなくなるのかなって、そんな感じなんだよ」
 言葉を失うことが決まってから妻との会話が増えた。
 元々無口で、付き合っていた頃もこっちからの問いかけには応えたものの、向こうからの問いかけはほとんどなかった。
 ここ何年かは問いかけに対して答えが返ってくるのは二回に一回ほどしかなく、聞こえているのに聞こえていないふりをしているんじゃないかと思われる場面も多々あった。
 それを思うと、もうまもなく言葉を失う人間に対して情けを掛けてくれているのか。
 それとも、自覚はないものの、少しでも人と話をしていたいという未練からか、問いかけの回数が増えているのかもしれなかった。
「今日、パソコンで何気なく検索履歴を見たら“手話”ってあったわ。
 あの子、あなたが病院に運ばれて戻ってきた日、部屋で泣いていたのよ。
 あの子なりに何か感じているのよ」
「そ、そう…」
 時が立てば、妻との間は修復できると高をくくっていた。
 娘だって、今が一番多感な時期だ。
 小さかった時の頃のようにまた話しあえるはずだ。
 しかし、イジわるな神様は、そんな淡い希望を根こそぎ剥いだ。
 あと六日しかなかった。
 言葉を失うまで、あと六日しかなかった。

         七
「今日と明日の二日間でよろしいでしょうか」
「ええ」
「チエックアウトは明後日の朝十時になります」
「わかりました」
 鍵を受け取るとフロントの脇にあるエレベーターに乗った。
 ウィークリ―マンションなるものを利用するのは初めてだった。
 部屋へ入って暫くすると、洋子からフロントに着いたと連絡があった。
 部屋の階数と番号を告げるとすぐに呼び鈴が鳴った。
「悪いなぁ、お正月休みのところ」
 洋子は何も言わず、肩に掛けていた鞄を下ろした。
「とりあえず、部署にあったUSBを全部持ってきました」
「すまない。
 頼めるのは洋子ちゃんしかいなかったんだ」
 一瞬、洋子の表情が緩んだように見えた。
「見つかっちゃうと、私、横領罪で捕まっちゃうんですよ」
「その時は大きなスケッチブックを持って行って筆談で洋子ちゃんのことを弁護するよ」
「それに、今時、USBって。
 IフォンやIパッドならもっと簡単で便利なのに」
「そんなのわけわかんないんだよ。
 洋子ちゃんに言われて、初めてUSBの存在を知ったけど、聞かなかったら秋葉原の電器屋に行って、中古のカセットデッキとカセットテープを買いに行こうと思っていたから」
「まあ、とにかく準備するんで少し待っていてくださいね」
 五分もたたないうちに準備は整った。
「じゃあ、どうしますか」洋子がパソコンのキーボードを叩きながら聞いてきた。
「そうだなぁ、まず、日常生活の、朝起きてから夜寝るまでの間に使う言葉をを順に拾っていって、それが終わると、一年間の行事っていったらへんだけど、そこで使う言葉を拾う。そして、これから年齢を取っていくにしたがって娘が遭遇するだろう出来事に出てくる言葉を想像して拾っていこうか」
「わかりました」言うと洋子はキーボードを叩くスピードをさらに上げ「じゃあ、一度練習してみますか」と言ってUSBをパソコンに差した。
「よしっ、じゃあ、まずは簡単なところで『おはようございます』からいこうか」
「娘さんに『おはようございます』っておかしくないですか。『おはよう』でいいんじゃないですか」
「そ、そうだよなぁ。じゃあ、その『おはよう』をいってみようか」
「わかりました」洋子は頷いた。「じゃあ、いきますよ…用意…スタート」
「お、おはよう」
 洋子は口も抑えず大笑いした。
「な、なんなんですか、それは。緊張しすぎですよ」
「悪い悪いっ。
 こんなことするの、子供の時に自分の部屋でこっそりと自分の歌を録音して以来だからな」
 洋子はまだ笑っていた。
 ここ何年、家で「おはよう」の言葉が部屋の中を漂ったことはなかった。
 緊張して当り前だった。
「もう一回頼むよ」
 ペットボトルの水を口に含み喉をゴクリと鳴らす。
「いきますよ 用意 スタート」
 洋子の声につられるように「おはよう」と今度は自然に声が出た。
「OKですっ」洋子はキーボードを叩きながら喜んだ。
「いいですよ。その調子でいきましょう」
「じゃあ、次は『いってらっしゃい』をいくよ」
『おはよう』で肩の力が抜け『いってらっしゃい』は一回でOKとなった。
 続いて『お帰り』『学校どうだった』『ご飯食べようか』『早くお風呂入れよ』『風邪ひいちゃだめだぞ』『おやすみ』を立て続けに一回で成功させた。
 実際に言葉を失うと、どんな精神状態になるのかどうかはわからなかったが、いつかはそういった機会が、と今回のことは無理やり自分を納得させた。
「ちょっと早いけど昼ご飯にしないか。久しぶりに真剣になったんで何か疲れちゃったよ」
「何か買ってきましょうか」洋子が立ち上がりながら聞く。
「いいよ。お弁当持ってきてるんだ。
 仕事の引き継ぎに行ってくるって嘘を言ったら妻が作ってくれたんだ」言いながら筒状のステンレスの容器を鞄から取り出す。
「それってお弁当ですか?」洋子が聞く。
「そうだよ。
 悲しいかな今や俺の主食の座に着いたお粥だよ」
 水筒からお茶を注ぐように蓋のカップにお粥を流し込む。
「おいしそうですね」洋子が言う。
「食べる?
 たまにならいいんだけど、毎日食べているとさすがにね」
「いいです。
 そんな、折角の愛妻弁当を頂くことはできません」
「それは嫌味?
 それもどっちの嫌味?
 俺が愛妻弁当を持ってきていることに対してなのか、それとも、たかがお粥を愛妻弁当だって言っていることに対してなのか」
「どっちでもないです。
 だって私もちゃんとお弁当を持ってきてるんですから」
 言うと洋子は鞄から、良く運動会のお弁当なんかに使われる四角い緑色のパックを取りだした。
 蓋を開けると、色鮮やかなサンドウィッチが敷き詰められていた。
 どう見ても一人分の量ではなかった。
「良かったら食べますか」
「かまわないの」
「いいですよ。
 玉子なんか柔らかくていいと思うんですけど」
「じゃあ、お言葉に甘えて」三角形の白いパン生地をつまみ、久しぶりに“固さ”の感触を味わった。
「あっ、うまいよ」
「本当ですか。
 紅茶も持ってきているんですけど飲みますか」
「ああ、悪いなぁ」
 洋子は、お粥が入っている容器よりは少し小さめのステンレス製の水筒から紙コップに紅茶を注いでくれた。
 檸檬のいい香りがする。
「こんなつまらないことにつきあってもらってすまないね」
「いえ、いいんです。
 それに、決して“つまらない”ことじゃないです。“大切な”ことです」
 何も言うことができずサンドウィッチをただ頬張るだけだった。

 午後からは、言葉を失ってから、家庭の中で起こりうることを想定して言葉を拾うことにした。
「娘さん、受験でしたよね」洋子が聞く。
「そうだよ。丁度あと一ヶ月後くらいだ」
「じゃあ、それいきましょう」
「わかった」
『今日も塾か?』『あまり無理しちゃだめだぞ』『今日は数学か?』『雨が降ったら迎えに行ってあげるから』
 順調に進んでいった。
「次は受験当日の会話を取りましょうか」
「お願いするよ」
『緊張しちゃあだめだぞ』『周りのみんなが賢そうに見えるけど、同じ学校を受けに来ているんだから差なんかないから』『名前を書き忘れちゃだめだぞ』『受験番号もだぞ』『時間前に終わったら必ずケアレスミスをしていないか確認するんだぞ』『昼ご飯はあまり食べすぎちゃだめだぞ』『お帰り、疲れただろ』『ご飯食べてお風呂に入ったら今日はもう早く寝なさい』
 全てが順調に進んでいった。
 しかし、順調に進めば進んでいくほど、自分は言葉を失うんだ、という実感がますます強くなっていった。
「じゃあ、次は合格発表の日ってなるよね」
 あと少しだけ残っていたペットボトルの水を飲み干して言った。
「その前に確かバレンタインデーがありましたよね」洋子は悪戯そうな笑みを浮かべて言った。
「それはいいよ。
 ただでさえ多感な時期だし、へたなこと言ってこれ以上鬱陶しがられたら…」
 洋子には、娘に言葉を失うことを告げた時、妻からあとで聞いた涙の話は言っていなかった。
「いいじゃないですか。
 今年だめでもいつかは使う時が来ますよ」
「そうかなぁ」
「きっと来ますって。
 さあ、やりましょう」
「やるのはいいけど、なんて言えばいいんだよ」
「誰かにあげたのか、それだけでいいんじゃないですか」
「わかった」
「じゃあ、いきますよ。
 用意、スタートっ」
「きょ、きょうは、バ、バレン…」
「ストップ」言って洋子はまた大笑いした。
「やっぱりダメだよ。
 こんなこと今まで言ったこと無いし、やっぱりパスだ」
「ダメです」洋子は必死で笑いをかみ殺して言った。「さっきも言いましたけど、今すぐじゃなくても、いつかきっとその場面がやってきますから」
「そ、そうかなぁ…まあ、わ、わかったよ」
 渋々承諾したが、OKが出るまで四回もかかった。
 そして、合格発表当日。
“合格バージョン”
『おめでとう、良かったな』『今日は美味しいものでも食べに行こうよ』
“不合格バージョン”
『しょうがないよ、一生懸命頑張ったんだから』『俺なんか落ちまくったからね。高校受験、大学受験、それに、勉強なんかまったくしない不良の奴らでも受かる原付免許まで落ちたからね』『気にすること無いよ、一生は長いんだから』
 続いて高校入学の日。
『その制服いいね』『友達できそうか』『クラブは何か入るのか』
 ここまで終えて少し疲れを感じた。
「少し休憩しようか」洋子に言う。
「はい。何か甘いものでも買ってきましょうか」
「そうだなぁ、シュークリームでも買ってきてくれる」
「シュークリームですか」
「ああ。何か意外?」
「ええ。
 昔、バーボンを飲んでいる時にチョコレートを食べていたのは覚えているんですけど」
「甘いものなんかめったに食べないんだけど、シュークリームだけは特別なんだ。
 俺たち子供の頃は今みたいに“スィーツ”っていう言葉なんかなかったし、それに、甘いものって結構高価なものだったんだ。
 親父ギャグで『ケーキ食べてるの? 景気いいねぇ』てあるけど、あれは本当のことだったんだよ。
 ある時、親父が酔って帰ってきた時に、もう歯も磨いて寝ようとしているところを無理矢理起こされて「さあ、食べろ」って真っ赤な顔をした親父がちゃぶ台の上に四角い箱を置いたんだ。
 包装を剥がして、箱のふたを開けると、それまで見たことのない食べ物が、おそらく酔ってフラフラになって箱を振りながら帰ってきたんだろう、箱の隅に肩寄せ合うようにして固まっていたんだ。
 それが、生まれて初めて見た、シュークリームだったんだ。
 口にするとこれがまた無茶苦茶に美味かったんだ。
 世の中にこんな美味いものが存在するのかって家族みんなで感動したんだ」
「へえー、そうなんですか。初めて聞きました」
「そうだったっけ?」
「ええ。
 じゃあ、美味しそうなのを買ってきます」
「あまり食べれないから少しでいいよ。
 できれば一口サイズのやつで」
「わかりました」言うと洋子は鞄を肩に掛け部屋を出て行った。
 机の上に散らばるUSBを見る。
 残せるものがたったこれだけかと思うと何か侘びしい気持ちになる。
 舌を指で触れる。
 何もない普通の柔らかい舌だった。
 軽く歯で噛む。
 もう一度噛む。
 噛み切る勇気はない。
 好きなように生きてきた。
 やりたいことをやって生きてきた。
 こんな状態に置かれたからといって、悲劇のヒロインになる資格など無いのはわかっている。
 だけど、この期に及んで、生きることへの未練がふつふつと湧水のように湧いて出てくる。
 もう少し生きていたい。
 娘の顔を見ていたい。
 娘と話していたい。
 暫くすると、洋子がレジ袋を下げて戻ってきた。
「大きいのしかなかったんです」言ってレジ袋から出てきたシュークリームは、乳児の頭ほどの大きさがあった。
「これは一生かけても食べられないなぁ」
「大丈夫です。
 紙のお皿を買ってきたんで」
 言うと洋子は乳児の頭ほどの大きさのシュークリームを袋から取り出し、紙の皿の上に置くと、レジ袋の中からプラスチックのスプーンとフォークを取り出し、シュークリームの皮を器用に割ってくれた。
 カスタードクリームが皮の中にたっぷりと浸っていた。
「どうぞ、お気の召すまま」言って洋子はシュークリームの皮を割ったプラスチックのスプーンとフォークを渡してくれた。
「じゃあ、お言葉に甘えて」
 スプーンでカスタードクリームを掬い、喉に流し込む。
 思わず「うまい」という言葉が飛び出た。
「洋子ちゃんも食べれば」
「いいんですか」
「いいよ。
 どうせ、こんなに俺食べれないから」言ってスプーンを洋子に渡す。
 洋子は受け取ったスプーンでカスタードクリームを掬い、口の中に流し込む。
「美味しいっ」
「そうだろ。
 俺はもういいから、あとはお願いするよ」
「わかりました。任せといてください」
 言うと洋子はもう一度プラスチックのスプーンでカスタードクリームを掬い、自分の口へ持って行くのかと思うと「はい、あーん」とこっちの口の前へ持ってきた。
「大丈夫ですよ。
 誰も見てませんから」
 言われるがままに、口を開け、喉にカスタードクリームを流し込んでもらった。
 つき合い始めた頃、酒を呑み始めると何も食べなくなることを知られ、無理矢理食べさせられたことを思い出した。
 店のカウンターで「あーん」をやったのだ。
 思い出すと、頬が少し熱くなる。
 娘もまだ小さく、家庭の中にはまだ楽しさが溢れていた。
 外に女を作ろう、作りたい、そんな気持ちなどさらさらなかった。
 なぜ洋子に惹かれたのか、よくわからなかった。
 心の奥底にそういった気持ちが潜んでいたのだろうか。
 洋子の手からプラスチックのスプーンを奪い取ると、唇を重ね、吸った。
 カスタードクリームの味をお互いに確認する。
 そして、出会った頃の、二十代のような激しい直線的な交わりを何度も繰り返した。
 果てた後、軽い口付けを何度かかわし、窓の外を見ると、空は藍の色に染まっていた。
「今日はもうおしまいだ。
 緊張したのか何か疲れたよ。明日も、又、お願いしていい?」
「いいですよ。全然かまわないです」
「悪いなぁ」言ってベッドから出ようとした時、洋子に腕を掴まれた。
「一つだけお願いがあるんです」
「なに?」
「さっき、今日はもうおしまいだって言いましたけど、あと一言だけ」
「いいよ。声はまだ出るし」
「じゃあ、すぐに用意します」
 言うと、体に何も纏わず、洋子はベッドから出て行き、すぐにノートパソコンを持って戻ってきた。
 濡れた陰毛が蛍光灯の光を拾いキラキラと輝いていた。
 ノートパソコンをベッドの脇の小さなテーブルに乗せ、ピンク色のUSBを差し込むと洋子は背を向けシーツにくるまった。
 ウィクリ―マンションのシングルベッドが軋む音を立てる。
「『愛してる』って言ってくれますか」洋子が背を向けたまま言った。
「ああ、いいよ」
 洋子は腕だけをベッドから出すと、キーボードの上に指を滑らせた。
「じゃあ、お願いします」
「ああ」
 ゴクリと喉が鳴る。
「愛してるよ」
 暫くの沈黙があり、洋子はもう一度キーボードの上に指を滑らせる。
「ありがとうございました」
「いや、お礼を言うのはこっちだよ。色々とすまなかったね」
「そんなことないです」
「明日もお願いするよ」
「はい」洋子は相変わらず背を向けたまま答えた。
「じゃあ、そろそろ帰ろうか」
 言ってベッドから出ると洋子は「いいですか」と聞いてきた。
「いいですかって、何が?」
「ここに泊まっていいですか」
「泊まる?」
「ええ。
 今日はここにずっといていたいんです」
「明後日の朝まで借りているから別にかまわないけど、帰らなくて大丈夫なの?」
「ええ」
「それならいいけど」
「わがまま言ってすみません。
 どうしても今日はここにいたいんで」
「わかったよ。
 じゃあ、気をつけて」
 言って洋子の方を見ると、まだこっちに背を向けたままだった。

 自宅に着きリビングに入ると珍しく妻と娘が揃っていた。
 テーブルの上ではホットプレートが白い湯気を立てていた。
「お鍋だから」妻が言う。
 しかし、ホットプレートの脇には、ステンレスのボールの中で水に浸っているお豆腐と、お茶碗にてんこ盛りに盛られた白ご飯、そして、陶器の器の中で肩を寄せ合っている二つの卵だけだった。
「この子、明日、塾で一緒に食べれないから」
 娘の顔を見たが、娘は目を合わせなかった。
“最後の晩餐”は粛々と執り行われていった。
 妻が昆布で出汁を取り、煮立ってきたところに豆腐を入れる。
 何の会話も取り交わされず黙々と三人で豆腐を掻きこむ。
 豆腐が無くなると、妻はホットプレートの中に白米を溶かし、煮立ったところで、二つの卵を割った。
「こんなのでお腹いっぱいになるのか?」
 娘に聞いたつもりが妻が代わって「さっき塾から帰って来て袋パン食べたから」と答えた。
 やがて娘は「ご ち そ う さ ま」と世界中の誰にも聞こえない声を発して自分の部屋へ帰って行った。
「酒飲みたいんだけど、少しでいいんだ」
 言うと妻は「ちょっとだけよ。熱燗でいい」と聞いた。
「ああ」
 チン、と電子レンジの音がして湯呑に入った酒を妻がテーブルの上に持ってきてくれた。
 胃に落ちていく熱い感触を久しぶりに味わった。
「あの子に何も言わなくていいの?」
 妻が「もう喋れなくなるのに」という言葉を省略して言った。
「ああ、大丈夫だ」ホットプレートにわずかに残った米粒の間で顔をのぞかせている豆腐の欠片をつまみながら言った。
「本当に?」
「ああ」
 妻はその言葉を聞くと、テーブルの上に残った三人のお茶碗や器を持って流し台に入った。
 そして、強く、シンクの蛇口をひねった。
 水とシンクのぶつかり合う音がリビングを支配した。
「最後の晩餐だ、贅沢にいこう」
 自分に言い聞かせるように言うと、テーブルの片隅に輪ゴムで縛られていた使い古しのかつお節の小袋を手に取った。
「召しませ」
 かつお節がホットプレートの上で舞い、そして、人をバカにするかのように、米粒の上で、フラダンスを踊る。

         八
 ウィークリーマンションに着くと、洋子は缶コーヒーを手にパソコンの画面をじっと見つめていた。
「良く眠れた?」
「はい」
 言いながら洋子は少し疲れた表情を見せた。
「たまには、こういったところで一人になるのもおつなものです」自分の言ったつまらない冗談に洋子は少し笑みを浮かべた。
「昨日はどこまでやったっけ?」
「娘さんが高校に入ったところまでです」
「そうか。
 じゃあ、その後は…」
 考えていると洋子が「彼氏ができたバージョンで」と少し悪戯っぽい笑みを浮かべて言った。
「それはだめだよ」
「どうしてですか」
「だって、そんな時、俺はなんて言えばいいんだよ。『いやぁ、良かったね。おめでとう』って言うわけにいかないだろう」
「まあ、そうですけど…」
「そうだ、誕生日だよ。
 あいつ六月生まれだから」
 言うと洋子はキーボードを叩き「じゃあ、いきます」とさっきよりは締まった顔をこっちに向けた。
『今日、誕生日だったよな』『今年でいくつになったんだっけ』『これプレゼントだ』『一年はあっという間だな』
 順調に進む。
「次はクリスマスだ」
「クリスマスならなおさら彼氏ですよ」洋子がからむ。
「だからそれはいいって、じゃあ、いくよ」無理矢理始めた。
『メリークリスマス』『サンタが本当にいるってまだ思っていないだろうなぁ』『友達とパーティーなんかしないのか』
「よしっ、次はハッピーニューイヤー、お正月だ」
 洋子は呆れた顔をしてキーボードを叩く。
『あけましておめでとう』『今年もよろしく』『これ、お年玉、あまり入ってないけど』『たまには初詣にでも行くか』
「よしっ、これで一年を回った。
 あとは娘に巡ってくることを順番に…」
「高校に入って時が過ぎて、そして…」
 そこまで言って洋子はいたずらな目をこっちに向けた。「やっぱり彼氏ですよね。そこは避けては通れないですよ」
「ダメだって。それは無しだよ」
「じゃあ、娘さんが結婚する時はどうするんですか。必ず何か言わないといけませんよ」
「そ、それはまた別の話だよ。そうだ、先に成人式にしよ、成人式」
「まあ、いいですけど」言って洋子はつまらなそうな顔をしてキーボードを叩いた。
『お前も二十歳か』『あっという間だったなぁ』『その振袖似合ってるぞ』『今日から酒もたばこもOKだ』『今度一度飲みにいこう』『ひょとして俺に似て酒豪だったりしてな』
「あっ、しまった、俺もう酒も呑めなくなるんだ。呑みになんか行けなくなるんだ」
「取り消しますか」洋子が聞く。
「いや、やっぱりいいよ。ひょっとしたらまた呑めるようになるかもしれないし。夢は捨てずにおこう。次行こう。次は、大学を卒業して社会人になった時だよ」
「就活で苦労している時に何か言葉を掛けてあげなくていいんですか」洋子が缶コーヒーを傾けながら聞いた。
「そうだよなぁ…じゃあ、それいこうか」
『毎日ご苦労様だなぁ』『あまり無理しちゃだめだぞ』『どうしても決まらなかったら家にいてもいいぞ』『くだらない会社のくだらない面接官におべんちゃらなんか言う必要ないよ』『人間はプライドを持って生きなきゃ』
「よしっ、次はめでたく社会人になれたときね」
『今日から頑張ってな』『つまらない男につかまるなよ』
「ちょっと待ってくださいよ。何ですか今のセリフは」洋子が呆れ顔で言った。
「何ですかって、俺の本音だよ。つまらない男につかまるなよ。そのまんまだ」
「そんなぁ、これから夢と希望を持って社会へ出ていくっていうのに」
「あ、あと、これも頼むよ」
『部下は上司を選べない』『バカな上司はうようよといるけど気にするな。何か言われても心の中でバーカと舌を出して、口ではハイハイと言っておけ』
 洋子は呆れたようなそして少し怒ったような顔をしてキーボードを目にも止まらぬ速さで叩いた。
「はい、OKです。だけど、ちょっとリアルすぎませんか」
「そうかなぁ。いずれ本人も気づくことだから」
「わかりましたよ」洋子は自分に言い聞かせるようにして言った。「じゃあ、いよいよ次は娘さんが彼氏を家に連れて来て『お父さん、娘さんを…』ですよね」
「もうわかったよ、何回も言わないでくれよ、やればいいんでしょ、やれば」言いながら喉をゴクリと鳴らす。
「賛成バージョンと反対バージョン、どっちから先に録りますか」
「どっちって、賛成バージョンしかないよ」
「だって、さっき、つまらない男に…って言ってたじゃないですか」
「娘が選んできた男には反対はしない。そら鼻にピアスをされるとさすがにキツいものがあるけど、基本的にはすべてイエスだよ」
「そうなんですか」洋子が意外そうな顔をして言う。
「だって、俺は今まで自分のやりたいようにやってきて、人の意見なんか聞かない、自分の考えが一番だって思ってきた。
 そんな俺に、娘のすることに反対する権利なんかどこにもないよ」
“そんな俺”の片棒を担いでいるという自覚を持っているのかどうか洋子は何も言わずキーボードの上に細い指を滑らせた。
『ふつつかな娘ですがよろしくお願いします』『ご出身はどちらですか』『お酒は飲まれますか』『じゃあ、折角ですから軽くやりましょう』
「娘が生まれた時は、もともと女の子が欲しかったから、別に一人っ子でもいいかって思ってたんだけど、最近、やっぱり、男の子も作っときゃよかったかなと思うんだ。
 歳を取って、自分の息子と酒を飲みたいってやけに思うようになったんだ」
 洋子は視線をキーボードの上に落したままだった。
『結構仕事の後なんかに行ったりするんですか』『晩酌なんかは』『親父さんとはたまには』『では、ひとつよろしくお願い致します』
「はい、OKです」言いながら洋子は「少し休憩取りますか?」と聞いてきた。
「いや、いいよ。
 早く終わらせて昼ご飯食べに行こう。
 洋子ちゃんとの最後の晩餐だ。
 ほとんど味覚が無くなっちゃうらしいから、なにか思い出に残るような何か、こう、キツいっていうか、濃いっていうか、そういったものを食べに行こう」
「くさやとかですか」
「ははっ、それもいいかもな。
 とにかく早く済ませてしまおう」
「じゃあ、次は娘さんが嫁ぐ時ですよね」
「そうだなぁ」
「じゃあいきますよ」
「ちょ、ちょっと待ってくれ。
 今時の“嫁ぎパターン”はどうなっているんだろう。
 昔ながらに式の前日に『お父さん、長い間お世話になりました』なのか、それとも式の当日にウェディングドレスを着て、目に涙をためて『お父さん…』のパターンなのか」
「そんなこと私に聞かないでくださいよ。嫁いだことがないんですから」
「そ、そうだよな…す、すまない」
 その原因になっているのはおまえだろっ、と、突然、イジわるな神様が洋子にウェディングドレスを着せた。
「綺麗だよ」
「ちょっと待ってくださいよ。
 まだ準備ができてないんですから」
「あっ、すまない」
 洋子にはまだウェディングドレスが着せられたままだった。
「はい、じゃあいきます、よーい、はいっ」
『きれいだよ』『おめでとう』『幸せになるんだよ』『家庭っていうのは時代が変わっても奥さんがしっかりしないといけないんだ』『俺のことはどうでもいいけど、母さんだけはたまに顔を見に来てやってくれよ』『子供はかわいいから作った方がいいよ』『但し、俺に似たらすまない、先に謝っておくよ』『こら、泣いちゃだめだって、せっかくのお化粧が台無しだよ』
 目の前にも泣いている花嫁がいた。
「ありがとう。これでおしまいだ。終わりにしよう。悪かったね、つまらないことに付き合ってもらって」
「いえ、いいんです」洋子は目を真っ赤にして首を横に振った「だけど、まだ、お孫さんが出来た時とか…あと、他にも…」
「いや、もういいよ。
 ほんと、俺のわがままに付き合ってもらってすまなかった。
 こんなことしたって、娘が喜んでくれるって保証なんかないし、それに、俺だっていつまで生きられるかもわかんないし」
「そ、そんなこと」
「ご飯食べに行こう。
 最後の晩餐にくさや食いに行こう」
「だけど、最後に、奥様には…」
 洋子が“奥様”と言う言葉を使ったのはこれまでの二人の間には一度もなかった。
 それは暗黙のルールだった。
「いや、いいよ」
「なにか、一言だけでも」
「いや、ほんとうにいいよ。
 それより早く行こう。
 最後の晩餐に店の前で列を作って待つのはいやだから」
 渋々「はい」と言った洋子の体からは、いつの間にか、ウェディングドレスが消えてなくなっていた。

 結局、洋子との最後の晩餐は、蕎麦屋となった。
 まだ目を赤くした洋子に「天ざるにしませんか」と誘われたが断り、ただのもりそばにした。
 但し、熱燗を一本つけた。
「酒とそばの組み合わせが一番好きなんだ。
 お互い邪魔をせず、それぞれの味を際立たせる。
 俺もそういった家庭を目指したんだ。
 お互いの立場を理解し尊重する。妻は妻の世界で、娘は娘の世界で、そして、俺は俺の世界で、それぞれ頑張ればいい。
 だけど、ダメだった。
 理解してもらえなかった。
 と言うか、あまりにも俺が身勝手すぎた。
 酒の味が強すぎて、そばの味を消しちゃったんだ」
 天ざる、もりそば、熱燗が一斉に運ばれてきた。
 つゆにネギを入れ、わさびを溶かしていると「どうぞ」と洋子がお銚子を差し出した。
「おっ悪い」
 小さなお猪口があっという間にひたひたになる。
 こぼさないようにそっと口へ持ってきて、一気に喉に流し込む。
 胃袋にコツンと熱が落ちる感覚を味わう。
「うまい」思わず声が出る
 飲まないか、とお銚子を洋子に傾けたが、彼女は笑みを浮かべて首を横に振った。
 その代わりに「いただきます」と大きなエビ天にかぶりついた。
 そして、エビ天が尻尾だけになった時、もう一匹のエビ天を指差して「食べますか」と聞いてきたが、今度はこっちが首を横に振った。
 もりそばを喉にくぐらせるだけで精一杯だった。
 結局、洋子が「ごちそうさまでした」と手を合わせた時、自分のもりそばの“もり”は半分も嵩を減らしていなかった。
「やっぱり入んないよ」
「あまり無理しない方がいいですよ」
「珈琲でも飲みにいく?」
「いえ。私、そろそろ帰ります」
「会社はまだ休みだろ」
「今日くらい、父が家に戻っていそうな気がするんで」
「そんなのほっとけばいいじゃないか。
 好き勝手に生きているんだから、って俺が言うのもなんだけど」
「洗濯物や洗い物がひっくり返っていると思うんで」
「洋子ちゃんは男運がないよね。
 そんなお父さんやこんな俺に足を引っ張られて」
「そんなことないです。
 こうやって一緒に最後の晩餐も過ごせたし。
 男運は悪くなんかないです」
「そうか」
「じゃあ、そろそろいきます」言うと洋子は立ち上がった。
「途中まで送って行くよ」
「いいんです。ここでお別れします。
 二人きりになると泣いちゃいそうなんで」
「そうか、わかったよ」気持ちは同じだった。
 が、突然「あっ、そうだ」と声を上げてしまう。
「どうしたんですか」洋子が目を丸くして聞く。
「よく考えてみると、まだ新年の挨拶をしていなかったよね」
「そう言われればそうですよね」
「じゃあ…あけおめ」
「あっ、若い子の言葉知っていますね」
「娘に教えてもらったんだ」本当はミサからだった。
「じゃあ、私も…あけおめ」
 にっこり笑うと洋子は風のように店を出て行った。
 店に一人取り残されると一気に疎外感が襲ってきた。
 空になったお銚子をもう一本注文する。
 携帯が震えた。
 洋子だと思った。
“チーすっ”
 ミサからのメールだった。
 まるでさっきまでの二人の行動をどこかでじって見ていたかのようなタイミングの良さだった。
“彼氏できたっす
 もうこの仕事やめるっす
 幸せになりまっす
 携番もメルアドも全部変わるっす
 だからおじさんとはもうこれが最後っす
 本当は十八歳でしたっす
 彼と一緒に暮らすっす
 連絡取りたければ紙飛行機でも飛ばすっす
 北の方にいるっす
 じゃあバイナラっす“
「紙飛行機かよ」
 一人ごちるとテーブルの上にやってきたばかりのお銚子からお猪口に酒を注ぎ、一気に喉に流し込んだ。

 店を出ると、陽はまだ高かった。
 二合の酒で顔が火照っていたが、正月だから、と自分を納得させた。
 途中、陸橋を渡る。
 半分ほど来たところで足を止める。
 陸橋の下を車が次から次へと流れる。
 柵を持つ手に力が入る。
 飛び降りる勇気などまるっきりなかった。
 ポケットに手を突っ込むと蕎麦屋のレシートが出てきた。
 無理やり飛行機の型に折り、空に向かって腕を振る。
 地球の中心に引っ張られるように飛行機は真っ逆さまに落ち、車の川へと吸い込まれていった。

           九
 手術は無事終わった。
 一週間ほど、喋れないストレスから妻に軽く当たったりしたが、その後は、慣れたというか、諦めたというか、病院のベッドに深く体を預けることができた。
 娘は私立の受験が迫っており、手術が終わって麻酔から覚めた時に一度顔を見せただけだった。
 言葉を失って二週間がたったころ、洋子からメールが来た。
“明日、会社のみんなでお見舞いに行きます”
“気を使わないでください。僕は生きています”と返信を打った夜、いつものネガティブ思考の波が静かに押し寄せてきた。
 天井ボードに開いた無数の穴を見て、何の為の穴なんだろう、なんの為にこれだけ多くの穴が必要なんだろう、俺はいったい何の為に生きているんだろう、周りの人に迷惑を掛けるだけだ、何もその人の為にしてあげれない、ただ生きているだけ、生きる為に生きているだけ。
 そして、お決まりのようにミサを思い出す。
 乳の香りを嗅ぎ、小さな乳首を口に含み、下半身が熱くなるのを感じる。
 すると、ネガティブ思考の波は待ってましたとばかりに静かに沖へと引いていった。

 翌日、洋子が会社のみんなと一緒にやってきた。
 筆談用のスケッチブックに黒のサインペンを滑らせる姿に、女性社員はみんな瞳を潤ませていたが、洋子だけは、視線を合わせることはなかったが、一人、冷静な表情を浮かべていた。
 昼食、といっても流動食の準備が始まると「じゃあ、また来ます」と言って、みんなは帰っていった。
 そして、昼食が終わって、買い込んだ週刊誌を読んでいると洋子からメールが来て、三十分後、病室の扉をノックした。
“どうやってまいてきたんだ?”スケッチブックにサインペンを滑らせる。
「もともと、有給を取っていたんです。お見舞いの為だけに出てきてるってことに…」
“相変わらず用意周到だなぁ”
 そこまで書いて洋子にスケッチブックを差し出した時、ページが最後だというのがわかった。
 両手を合わせて“お願い”と表現し“これ”とスケッチブックを指差し、枕元の棚に指先の方向を変え“取ってくれる”と山積みになったスケッチブックを指差した。
 洋子は「わかりました」と言って、一歩ベッドに近付くと、枕元の棚に手を伸ばした。
 洋子の上半身が目の前に迫る。
 咄嗟、というか、パブロフの犬というか、無意識のうちに洋子の体を抱きしめた。
 その時、病室の扉が突然開いた。
 妻だった。
 慌てて洋子を離す。
「あら、すいませんねぇ、お忙しいのにお見舞いに来て頂いて」
 垂れた前髪を掻きあげて言った妻は、今日は、生命保険の件で、自宅で保険会社の人間と打ち合わせすることになっていて、洋子たち会社のみんなが来る少し前に病院を出ていたのだ。
「判子持って行くの忘れちゃって。
 歳を取るといやですよねぇ、物忘れがどんどんひどくなっちゃって」
 妻のテンションが高すぎる。
 元々が無口で、余計なことは一切喋らず、感情を表に出すことはほとんどなかった。
「あら、他の方はもうお帰りになられたの。今日はみなさんで来て頂いたんですよね」
 洋子は「え、ええ」と唇を微かに動かした。
「お一人だけ居残りですか」
 妻はこれまで一度も見せたことのない意地悪な視線を洋子に向けた。
「違うんだ」
 言おうとしたが自分には言葉がなかった。
 棚に山積みになっているスケッチブックに手を伸ばすが届かない。
「毎年年賀状ありがとうございます」言った妻の瞳がキラリと光った。
 スケッチブックを…。
「確か三年前でしたっけ。
『こっちはこっちでうまくやってます』ってコメントが書かれてましたよね。
 ああいうの普通、奥さんのいる人に対して書くセリフじゃないですよね」
 やめてくれっ、違うんだよ、ちょっと聞いてくれっ…
 千切れんばかりに伸ばした指がスケッチブックにあたり山が崩れる。
 洋子は部屋を飛び出ていった。
 妻は暫く無言で立ちつくしていたが「保険会社の方、待たせているから」とだけ言い残して部屋を出て行った。
 部屋の床に散らばったスケッチブックが虚しく見えた。

         十
 退院して一週間がたった。
 毎日何もすることもなくただ時の流れに身を委ねているだけだった。
 妻は必要なこと以外は何も話さなかった。
 洋子とは音信不通だった。
 一度、妻がいないときに、部屋の窓から北に向かって紙飛行機を投げたのが、唯一の自らがとった行動だった。
 娘が学校から帰ってきた。
 明日はいよいよ私立高校の受験だった。
 USBのことは妻にはまだ言っていなかったというか言えずにいた。
「今日はもう早く寝なさいよ」
 リビングに入ってきた娘に妻が言う。
 娘は首だけを縦に振ると、自分の部屋へと消えていった。
 スケッチブックを開け“受かりそうなのか”と書いて妻に見せた。
「大丈夫。本当のすべり止めだから。ここ落ちたら行くとこないから」妻は感情を一切込めずに言った。
 娘には行きたい私立の高校があった。
 しかし、今後のことを考えて、妻が公立高校へと志望校を変えさせたことはなんとなくわかっていた。
 次の朝、娘は使い捨てカイロを二つ持って家を出ていった。
 USBは使わず“頑張ってな”とスケッチブックに書いて見せただけだった。
「悪いけど、今日は店長から通しで入ってくれって頼まれているんで定期検診は一人で行ってね」
 朝食の後片付けをしながら妻が言った。
“わかった”スケッチブックに書いて妻に見せる。
 妻はパートでスーパーのレジ打ちに行ってくれていた。
 周りのみんなに、迷惑を掛けていた。

 駅に着くと、タクシー乗り場を素通りして軽い上り坂をゆっくりとのぼった。
 暫くすると、白い建物が視界に入ってきた。
 嫌な威圧感を感じる。
 着くと、受付で定期検診に来た旨を外出用の小さなスケッチブックに書いて伝える。
 十分ほどして名前を呼ばれ、診察室に通された。
 手術をしてくれた医師が「元気そうですね」と声を掛けてくれたので、ええ、と首を縦に振った。
「じゃあ、横になってくれますか」白いシーツが敷かれた診察台で仰向けになる。
「失礼します」
 医師が耳の後ろのリンパ腺を触る。
 手が止まる。
「痛くないですか」
 ええ、と首を縦に振る。
 もう一度医師の指がリンパ腺をなぞる。
「今日、これから時間ありますか」
 もう一度、首を縦に振ると、医師はカルテに何かを書き込み「精密検査を受けて頂きます」と機械的に言った。

           十一
 精密検査の三日後、余命三カ月を言い渡された。
 妻は延命治療を望んだが、死ぬ間際になってじたばたしたくない、静かに死んでいきたいという“最後”の我儘を聞き入れてもらい、都心から少し離れたところにあるホスピスに入った。
 妻は毎日二時間かけて来てくれた。
 ホスピスに入ると決まった時、まだ、スーパーのレジ打ちを続けると言ったが“もうゴールが見えたんだ、家のローンも無くなる、生命保険も入ってくるからゆっくりすればいいよ”とスケッチブックに赤いペンで書いて説得した。
 娘はすべり止めの私立高校に受かり、今は公立高校受験に向けて塾通いを続けていたが、それでも二日に一度は来てくれた。
 洋子にはホスピスに入った日にメールを打ったが何の反応もなかった。
 そして、紙飛行機も折れないほど衰弱しきった頃、妻に初めてUSBのことを話した。
「もっと早く言えばよかったのに」
 妻はデキの悪い子を見るような目で言った。
 但し、その作業に洋子が関わっていたことは最後まで言わなかった。

          十二
 改札を出ると雨が落ちてきた。
 メモリアールホールまでの道を駆ける。
 来るつもりはなかった。
 会社のみんなにも、父親が具合を悪くして、と嘘をついた。
 それが、昨日の夜、仕事を終えて誰もいない家にたどりつくと、待っていたかのように電話が鳴った。
 液晶のディスプレイに見慣れない数字が並んだ。
 出ると奥様だった。
「最後に顔を見に来てあげてください」
 ホスピスに入ったことはメールをもらって知っていた。
 だけど返事は返さなかった。
 病室での、あの時の奥様の目が忘れられなかった。
 受付に着くと、会社のみんなが意外な顔を向けた。
「お父様、大丈夫なんですか」
 同僚の女の子が目を真っ赤にして聞いてきた。
「大丈夫よ。
 普段の不摂生が祟っただけだから」
 言って、何気なく斎壇を見ると、遺影と目が合った。
 慌てて目をそらす。
 それでも涙線が反応したのがわかった。
 斎壇の脇に、奥様と真新しいブレザーを着た女の子がいた。
 そうか、高校生になったんだ。
 ゆっくりと二人に近付いていく。
 遺影に目で追いかけられているように感じる。
 二人の前に立ち頭を垂れる。
「この度はお悔やみ申し上げます」
 顔を上げると、目の周りを赤く腫らした娘さんの顔が目に入った。
 泣きじゃくったのだろう。
「お忙しいところ、申し訳ございません」奥様。
「いえ、とんでもございません。
 それより、ご主人様からこれを奥様にと預かっておりまして」
 腕に掛けた黒いポーチから、ピンク色のUSBを取りだし、差し出した。
 そういうことだったのね、とは言わず「そうですか。ありがとうございます」と言って亡き主の妻は受け取った。
「それでは」と言って、二人から離れていく。
 やがて、読経が始まった。
 すすり泣きがそこかしこから聞こえる。
 見ないでおこうと思っても、何度か遺影と目が合ってしまう。
 思い出が頭の中を駆け巡る。
 悲しみの感情の川が決壊しかけるのを何度か堪える。
 読経が終わり焼香へと移る。
 親族が終わり、会社の得意先関係の人達が席を立ち始めた時、ホールの係員の声が静かに斎場内にこだました。
「生前のお御霊様が娘様にお言葉を残されました。
 ご列席の皆さまに是非ご拝聴いただきたいと存じます」
 ざわざわとしていた斎場が一瞬にして静まり返った。
『おはよう』  『おやすみ』  『緊張しちゃだめだぞ』  『おめでとう、よかったじゃないか』
 斎場のあちこちですすり泣きが嗚咽に変わる。
 そして、自分たちの焼香の順番が来た時、ホールの係員の声がもう一度斎場内に静かに響き渡った。
「娘様が嫁がれる日のお言葉です」
 斎場のすすり泣きの輪がどんどん大きくなっていく。
 娘さんが泣きじゃくっている。
 横で奥様が肩を抱き寄せる。
『きれいだよ』  『おめでとう』  『幸せになるんだよ』  『俺のことはどうでもいいけど、母さんだけはたまに顔を見に来てやってくれよ』  『泣いちゃだめだよ、せっかくのお化粧が台無しだよ』
 斎場のすすり泣きが嗚咽に変わる。
「ばかっ」
 遺影に向かって吐く。
「自分の子供さんを悲しませるのは最低ですよ」
 言った途端に、悲しみの感情の川が一気に決壊した。
「すいません」
 列を飛び出し斎場を出ると、洗面所の個室に駆け込んだ。
 思い切り泣いた。
 途中誰かが隣の個室に入ってきたが、気にせず、泣いた。
 そして、涙が枯れ斎場に戻ると焼香はすでに終わっていて、参列者はホールの車止めで出棺を待っていた。
 やがて、多くの人に抱えられて棺がホールから出てきた。
 娘さんが「父さんっ」と言って駆け出てきて、棺にすがりつく。
 奥様が「もういいのよっ」と言って娘さんを棺から無理矢理引き離し、棺は霊柩車に納められた。
 見るのがつらくなり、ホールを後にする。
 しかし、ホールの係員の声が後ろから追い掛けてくる。
「ご出棺の前に、亡き御霊様から、本日ご列席頂きました皆さまへの最後のお言葉でございます」
 しばらくの沈黙の後、、あの人の言葉が聞こえてきた。
「愛してるよ」
 霊柩車の出棺を告げる大きなクラクションがあとに続いた。
 そして、雨空に向かって言葉を放つ。
「神様のイジわるっ」
       
            了

神様のイジわるっ(99枚) ©シュール

執筆の狙い

50のおっさんがお涙頂戴小説を書くとこうなります。若い方に感想をもらえれば幸いです。

シュール

49.250.194.40

感想と意見

加茂ミイル

リズミカルな文体です。

2017-11-06 07:07

114.185.18.188

ペンニードル

シュール様はじめまして。
面白かったです。なんだか本当に”おっさんの生態を若者に知ってほしい”というメッセージがひしひしと伝わってきました^ ^
地の文におっさん感を漂わせる技は秀逸だと感じました。
ラスト、自分に向けられたはずの愛してるが、娘さんに取られてしまった切なさや温かさはとても映像的でした。



思った点は、
あくまでもエンタメとして読んだ場合。舌癌が唐突過ぎるかな? という点。
焼香のシーンで読者の感情を最大に揺らしたいのだと思いますが、誰に感情移入していいのかわからない。
これまでの語り部はずっと主人公でしたが彼は亡くなります。継いだのは洋子さんですが、彼女も録音には携わっているし、あの場で誰よりもあの音声を聴いて嗚咽したはずの娘さんには視点が寄れず(でも君のお父さんはコレを不倫相手とイチャつきながら撮ったんだよ感)

いまいち見所が掴めなかったです。

2017-11-06 21:25

39.110.185.153

シュール

加茂ミイル様

返事が遅くなりすいません。いつも感想を頂きありがとうございます。

2017-11-11 04:26

49.250.194.40

シュール

ベンニードル様

返事が遅くなりすいません。営業職で接待が続いていたもので。
駄作をお読みいただき、また、細かいご指摘を頂きありがとうございます。
ベンニードル様が仰る通り最後のシーンや舌癌については自分でもう~んどうかなぁと
思って書きましたが、さすが読み込まれている方には突っ込まれてしまいますね。
又、投稿しますので的確なご感想を頂ければと思います。

2017-11-11 04:35

49.250.194.40

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