作家でごはん!鍛練場

『三語即興文 2017/11/04~』

三語即興文有志著

感想レスを使ったやりとりです。
興味のある方は参加してください。初めてのみなさんも歓迎します。
前の方の作品に感想を書くのを忘れずにお願いします。

題名   三語即興文 2017/11/04~(新スレッドの日付)。
作者名  三語即興文有志


感想レスを使ったやりとりです。
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【形式】
 (1)前の方の作品に批評・感想を書く。
 (2)出されたお題で50字~1000字程度の文章を作る。
     ※三語を使用した小説であること。三語は順不同で使用可。
     ※漢字(ひらがな・カタカナ)は変えないこと。
 (3)次のお題(三語と課題)を出す。三語は名詞が基本、各語の関係が遠いほど望ましい。
 
【ルール】
 ・第一目的は文章と発想の瞬発力、及びショートショートの構成鍛練です。
 ・同じ方の書き込みは一日一回です。言いかえれば毎日でもどうぞ。
 ・同じお題の投稿が重なった場合、最初の投稿者のお題が次に継続されます。
 ・上記の場合、後の方の作品は残します。事故と見なしますので謝罪などは不要です(執筆の遅い投稿者保護)。
 ・感想のみのレスはご遠慮ください。
 ・事故作品にもできれば感想を書いてあげてください。また、他の作品に感想を書くのは自由です。
 ・何事も故意の場合は釈明必須ですが、多少の遊び心は至極結構です。ただし、基礎の未熟な方の遊びはお断わりいたします。
 ・課題は強制ではなく、努力目標です。お互い無理のないようお願いします。
     例)「主人公の性別は○○で」「ハードボイルドっぽくお願いします」「三人称で書いてください」
 
 ・三語即興文の新スレッドは参加者皆さんによって立ててください。
・フォーマット・ルールなどの改正は必ず伝言板で意見を募ってください。
 ・重複スレッドが立った場合は運営に削除依頼を出してください。

 
【新スレッドの立て方】
 ※現行スレッドが最終面に来ましたら、次に投稿予定の方or有志の方が新スレッドを立ててください。
    作者名:三語即興文有志
    題 名:三語即興文  年/月/日    ←年/月/日 はスレッドを立てた日付となります。
    本 文:ここの本文を改変せずにコピー&ペーストしてください。
  執筆の狙い:執筆の狙いをコピー&ペーストしてください。

 
 ※感想欄の一番最初には、前スレッドの最後の投稿者のレス(投稿者名、三語即興文、次のお題)をコピー&ペーストして投稿してください。
  
 ※新スレッドを立てましたら、最終面にある前スレッドに
 「このスレッドは終わりました。次の三語即興文は新スレッドに投稿してください。」
 の一文を、三語即興文有志の名前で投稿してください。

三語即興文 2017/11/04~ ©三語即興文有志

執筆の狙い

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三語即興文有志

58.94.229.120

感想と意見

三語即興文有志

「三語即興文」最終面に入りましたので、最後に投稿された柴咲さんのレスをこちらに転載します。




柴咲

夜の雨さん
 
『千羽鶴』
かなりの余韻が残っています。
見舞いに行って、夕子ちゃんが元気だったところがボディブローのように効いてきます。これが、いかにも死にそうに描かれていたら、ラストが台なしになってしまったでしょうね。だから牛乳のエピソードは秀逸の極み。
あえて粗を探すのなら、主人公は病名を知らないほうがいいかなと思いました。病名の重さで先が読めてしまうからです。
 
お題
「海峡」「予感」「難破船」で、書かせていただきました。
 
「難破船」
 
 絶望の断崖と呼ばれる忌まわしい領域がある。
 岩壁は急傾斜で海面からほぼ垂直にそそり立ち、風も強く、岩肌は明けきらぬ夜のようどこまでも冷たく青い。背後も灰色の山々に囲まれ、訪れる者は生に絶望した人間だけであった。
 
 本州最北端、津軽海峡付近の海岸で水死体が発見された。自殺の名所として名高い近くの断崖から流れ着いたもので、これといった外傷もなく遺体も腐乱していなかった。所持品から身元も割れ、被害者はF市に住む会社員だと判明した。だが、今のところ自他殺不明である。
 すべて鑑識の結果報告を受けてからだが、S署捜査課の見解では自殺の線が濃かった。この海岸では毎年のように自殺者が発見されるのだ。
「村さん、断崖に残されていたメモ、あの件はどうなった」
 係長が訊いてきた。村上は閉口しながら答えた。
「それが皆目意味不明で、しかも筆跡は被害者のものではありませんでした。女の可能性が高いんです」
「女か。その女がカギを握っているかもしれんな。それにしても、カイキョウ、ナンパセン。確かに意味不明だな。わしも津軽海峡で船が難破したことぐらいしか閃いてこんよ。被害者は元船員でもないし、トレジャーハンターでもなさそうだし、完全にお手上げだ」
 係長が腕くみをし、大きな溜息を吐いたとき、電話が鳴った。聞き込みを続ける部下からだった。交際相手の身元が判明したらしい。ばかりかメモと女の筆跡が一致したようだった。また女が敬虔なイスラム教徒だということもわかった。
「イスラム教徒? ならメモのカイキョウは、海峡ではなくて回教の可能性もあるな」
「ほう、おもしろい発想ですね。ですが、そうすると難破船につながらなくなりますよ」
「いや、そうとは限らんぞ。どこかに接点があるはずだ」
 係長は何か魂胆があるのか、防犯課に電話をつなげた。
 被害者が、女からしつこくつきまとわれていたことがわかった。ストーカー被害が出されていたのだ。さらに、女が失恋をして鬱になっていたことも判明した。動機は痴情の絡んだ片恨み。俄然、殺人の可能性が高まってきた。
 
「わしの予感だと、おそらく女は自殺しているな」
 係長がぽつりと言った。
「どうしてですか」
「失恋して鬱になっていたんなら、難破船は実際の船じゃなく、歌だからだよ。たぶん女にとって、その恋は何よりかけがえのないものだった気がするんだ。つまり女は自身の尊厳を賭け、聖戦のつもりで殺した。とうぜん悔いもあった。だから暗号めいたメッセージを残したのさ」
「なるほど。そういえば未遂でしたが、そのヒット曲の歌手も失恋して自殺を図りましたね。でも、それが難破船の歌だという根拠は?」
「女の決意が、歌詞の一節にあるんだ。つむじ風に身をまかせて、あなたを海に沈めたい。とな」
 
 
 
  次のお題は「フクロウ」「雪」「牢獄」で、お願いします。
  課題は特にありません。

2017-10-26 18:21

2017-11-04 21:16

58.94.229.120

ゆふなさき

「難破船」
ミステリ小説を手に取ったかのような気分になりました。論理的に物事を考えられる人なんでしょうね。
私はちょっとしたことで混乱して誤ってばかりなので羨ましいかぎりです。


「文字ならべ」
寝つけない夜、スマートフォンの画面をたどりながら、どこか遠くへ行きたいなんて考えていて。旅行へ行きたい、と書かないのはお金がないからで、実行する気がないから。どこか遠くというのがぴったりだ。
室蘭へ行きたい。響きがよいから。そこに何があるんだか知らない。夜には梟がないて、昼には郭公がなくんだろう。郭公は嫌い、ややこしそうだ。ただまあ、生みつけられもしないから、買い取られもしない。才のない私。
さて、室蘭。冬には行きたくない。雪に覆われて身動きが取れないだろうから。牢獄のなかで解体を待つ身には適しているのかもしれないけれど。

駄文、失礼。

次のお題
猫、外野、信号

2017-11-08 01:50

27.143.73.41

夜の雨

感想。

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――
「難破船」柴咲さん。

お題 「海峡」「予感」「難破船」
課題、ミステリー。

本格的な内容で、面白かったです。
こういう作品を読むとにやりとします。
状況設定なども刑事ドラマが目の前に浮かびました。
「海峡」と「カイキョウ」が「回教」で「イスラム教徒」というのもよかったです。
難破船の歌詞の一節、うまく作品のキーワードに取り込みましたね。
あと歌手の件もなるほどと思いました。
いろいろと盛っていただきありがとうございました。
気が付いた点も書いておきます。
>これといった外傷もなく遺体も腐乱していなかった。<
「断崖」から飛び降りたら、かなり傷がつくと思います。
波が打ち寄せますので、身体が岩に叩きつけられるとかもありますね。

―――――――――――――――――――――――――――――――――――

「文字ならべ」ゆふなさきさん。

お題「フクロウ」「雪」「牢獄」
課題 なし。

日常のなかで「どこかへ行きたいなぁ」とか、思う時に、地図を広げたり、画像を観たり、動画を観たりして、心を旅立たせる事ってありますよね。
そんな作品かなと思いました。
郭公(カッコウ)は自分の産んだ卵をほかの鳥の巣に入れて、育ててもらうらしいですね。
郭公のひなが孵(かえ)ると、ほかの卵を巣から落とすらしいですけれど。

――――――――――――――――――――――――――――――――――――






 お題
    猫、外野、信号

   『身づくろいをする女』


 バッテリーを組んでいた。
 西沢はピッチャーでかなり優秀だったので、プロのスカウトからも声をかけられていたが、肩を痛めて会社に入った。肩が治れば社会人として活躍できる逸材で、プロの可能性もあった。
 俺の方はとてもものにならず、野球は大学を卒業すると足を洗い、企業戦士として働くことを決意し、仕事一図に頑張った。
 その甲斐もあり、27歳で上場企業の係長になった。
 同僚に素敵な女性がいて結婚し、幸せな新婚生活を送ることになった。
 西沢はどうしているのかというと、27歳にもなりまだ野球をしていた。
 社会人野球というやつだ。
 肩は治っていたがすでにプロの道は閉ざされていた。
 その西沢から電話がかかってきた。
「次の日曜日○○球場に来てくれよ、彼女を紹介するから」
「えっ? 結婚するのか?」
「ああ、そうだ。取引先の娘さんでな、ちょっとした玉の輿だよ。逆玉というやつだ」
 それで西沢が指定した球場の外野に行った。秋も深まり寒くなりかけていたが、陽だまりがありそこにシャム猫が落ち着いていた。
 猫は野球には興味はなく、身づくろいをしており、ときたまマウンドの方を見ていた。
 俺は猫から少し離れたところで西沢を応援した。
 9回裏満塁で一打出ると西沢はノックアウトだったが、どうにか抑えて、奴の球団が勝利をものにした。
 試合が終わり西沢は外野にいる俺のもとへやってきた。
「彼女を紹介するよ、石川美夜子さんだ」
 そういって猫の方へ手を差し伸べた。
 俺は「えっ?」と思い、シャム猫へ視線をやると、そこには20代半ばの美しい女性がいて、パープルが映える、ステンカラーコートを着て、オフホワイトのピンタックパンツに座席の汚れが気になるのか、身づくろいしながら、興味なさそうに俺を見た。
 俺は何か、信号を見落としたのではないかと思ったが、目の前にいる、着飾った美しい女性は、見れば見るほど気品が漂っていた。

 後日談

 西沢の億ションと言われる自宅に呼ばれた。
 彼女の父親が家を買ってくれたそうである。
 テーブルに並べられた豪華な料理はお手伝いさんが作ったもので、彼女は美しい洋装でテーブルにつき西沢と話をしている。
 テーブルマナーもしっかりしているところを見ると、彼女はシャム猫ではなかったらしい。
 まったく愛想のない女性だったが、俺が「にゃーお」と声をかけると、大きな目をひときわ見開き、俺を興味ありげに見つめた。
 そういえば西沢も、ネコナデ声で彼女と話している。

 お題
「プテラノドン」「宮沢 賢治」「自画像」。

 課題 なし。

2017-11-08 05:28

58.94.229.120

柴咲

ゆふなさきさん
 
「文字ならべ」
・ラストの一文が意味深です。妙に余韻が残ります。
生みつけられもしないから、買い取られもしない。才のない私。この文章も、なぜか共感を覚えました。
 
夜の雨さん
 
「身づくろいをする女」
・どうして彼女を猫と見間違えたのでしょう。
たぶんどうでもいいことなのかもしれない。核心はシャム猫のように気品がある女性だから。
 
 
「プテラノドン」「宮沢賢治」「自画像」で、書かせていただきました。
 
 たびたび怪鳥が目撃されるという情報を得、急遽、私は赤道直下の島へ降り立った。島は淡路島程度の広さで大半は密林である。人口はわずか千人あまり。案内人は十二歳の少年だった。
「ぼくが子供なんで、不安そうな顔をしてるね」
 密林へ足を踏み入れたとき、私の顔をしげしげと見て少年が問いかけてきた。
 それもそのはずで、私はひどく身体能力の乏しい鳥類学者なのである。これまでずっと安全な日本で観察を続けてきており、こういった未開の地で未知の生物を調査するのは初めてであった。
「ジャングルには猛獣もいるのかい。例えば、豹とか」
「さあ、どうだろう。豹に近い猛獣がいることはいるけど、人間を襲ったりはしないよ。人間を襲うのは人間と相場が決まってるからさ」
 なるほどとは思ったが、身の安全に対する何の気休めにもならない回答だった。
「そんなに、ここの住民は凶暴なのかい」
「以前はね」少年が鉈で草を払いながら含み笑いをした。「でもケンヂのおかげで、村はすっかり平和になったんだ」
「ケンヂ?」
「うん、宮沢賢治。学校に自画像が飾ってある。彼は奇跡を起こした」
「どういうこと」
 私は歩みをとめて、訊いた。話が胡散臭かったからだ。日本の小説家を、どうしてこのような未開の人間が知っているのだ。たぶんに外交辞令であろう。だから自画像だって嘘っぱちだと思う。
 少年が立ちどまる。私へ振り向いて言った。
「この先に黒い丘があるのさ。そこは満月の晩になると星が降りそそぐんだ。それを見て、彼の本を読んで感銘を受けた王様が、丘へ上った。そして巣を発見したんだ」
「巣? 何のだい」
「プテラノドンだよ」
 ああ、それこそが私の捜しているものだった。やはりいるのか。胸が興奮で湧きたった。
「早く、そこへ案内してくれないか」
「もちろんだとも。大人たちが総出で待ちわびてるよ。なんせ王様以来の生贄だからね」
「ちょっと待ってくれ。君が何を言いたいのか、まったくわからない」
「だって王様は、あんたと同じ日本人だよ。争いの絶えない当時の村人たちを危惧して、自ら犠牲となって黄泉の国へ旅立ったんだ。プテラノドンの背中に乗ってね」
 王様は日本人だったのか。それで、ようやく宮沢賢治の本に感銘を受けたことが納得できる。だからといって私は王様ではない。また諍いが起きはじめているらしいが、救う義理もない。それと宮沢賢治と関係があるのなら、もしやプテラノドンとは銀河を走る汽車……冗談じゃない。
 私は踵を返した。すると目の前に屈強な大人が三人、意味不明の笑みを浮かべて立っていた。
 
 
 
次のお題は「金庫」「償い」「山男」で、お願いします。
課題は特にありません。

2017-11-08 22:46

218.224.21.234

おはよう処女

柴咲さんへ

キーワードをうまく捌いて、優良で奇妙なホラー短編を描けているように感じました。ラストにはちょっぴり恐怖が芽生えました。小学校高学年向けの(皮肉じゃないです)児童文学か、寓話性強い作品が向いてるんじゃないかなーと、ふと思いました。あと未開人の少年にしてはちょっと語り口がこなれすぎている感じがありました。細かいとこだけど。


「金庫」「償い」「山男」で書きます。


『ヤマオトコかくかたりき』

「私がなぜ山男になったのか……その話をしよう」彼はそう切り出した。
「ちょっとまってください。その、山男とはなんですか?」僕が、素朴な疑問(あるいは無知の表出)をぶつけると、彼はあっけにとられた顔をした。
「君、山男を知らないのかね」彼は非常に驚いたような、そしていくぶんの嘲笑の雰囲気をもった声色でそう言った。
僕は不快さを押し殺さず言った。「ええ、まあ。もちろん、テレビなどで見かける類のものではないですから」
彼はそんな僕の言い草を気にも留めずに鼻をならす。
「はは、君はたしか中学生だったね? 若いひとは知らんのだろうね。それも無理はないか、なにせ『山男協会』は秘密結社であるからね」
「山男協会?」
「そう、『山男協会』という組織が存在する」
「それは、全米ライフル協会みたいなものですか?」
「まったくちがう。ライフル協会はロビイング、つまり政治家に票とカネを渡して銃保持の自由を守ろうとするが、『山男協会』は政治家との関わりさえもたないのだ」
僕は彼をいぶかしげに見つめた。彼は、そんな僕の視線に気がついたのか、軽く肩をすくめた。
「私はかつて、『金庫やぶり』を職業にしていた。つまり、金庫を破ることでその報酬を得て、そして生活していた。破る金庫にもよるが、それはなかなかいい収入が得られるものなんだ。もちろん、これは裏の世界の仕事だった」
「そして、『山男』もそうである」僕は皮肉たっぷりに顔をしかめて言った。
彼はコーヒーが入ったマグを揺らしながら答えた。「それはある意味合っているし、また別の意味では間違っているとも言える。……話を戻そう」
「ある日、私はとある巨大な組織に一つの依頼を受けた。とても巨大な組織だ。誰も彼らには逆らえない。そういう奴らがこの世界にはいる……。そして、その依頼とは、日本最大の金庫を破るというものだった」
「日本最大の金庫?」僕が水をさした。
「そうだ。想像はつくだろう?」
「たとえば、UFJとか?」
「もっと大きい金庫だよ。水族館の、一番大きな水槽くらい大きい」
僕にはそれが、どこの、だれの金庫なのか想像もつかなかった。
「私は成功した。その金庫を破った。そして、『組織』から多額の報酬を得た。国家予算の何割かというレベルの額だった。だが問題が一つあった」
彼は目を伏せた。僕らが腰掛けている山道のベンチからは、べったりとした夕焼けに染まる町が眺望できた。
「私が日本最高の金庫を破ったことで、私には世界最高峰の『金庫やぶり』という評価が裏の世界に広まってしまった。君は知らないだろうが、裏の世界では、有名になるということは何よりも危険なことなんだ。そこはルールはあっても法律はない世界だから、簡単に命のやりとりが始まる世界でもある」
「私は命を狙われた。理由はわからない。様々な利害関係が絡み合った結果、私を狙うヒット・マン(殺し屋)がやってきたのだ。私は逃げなかった。『金庫やぶり』は手先が器用なだけじゃない。それなりに腕も立つんだ。そうして私は、ヒット・マンを返り討ちにした。私の撃った弾が奴に当たった……」
そう言った瞬間、夕日に紛れ、溶け込みそうになりながらも、確かに彼の眼の端に、涙のきらめきがあったのを僕は見逃さなかった。
「ヒット・マンは私の恋人だった。もちろん女だ。私は愕然とした。こんなことが起きていいのか、運命というものを呪った。即死だった。彼女は決して美しい女ではなかったが、太い眉の印象的な愛嬌のある顔をしていた」
彼は静かに町を見下ろして言った。
「山男とは呼び名に過ぎない。我々は、自身が傷つけてしまった、あるいは損ねてしまった女のために、償いようのない償いを山に登って想うだけだ。社会的な価値は無に等しい。なぜ山なのかも、私は知らない。ただこうして、高いところで彼女を想うんだ。彼女が私を殺そうとした理由、彼女が何を思ってそうしたのか、そして私に殺された彼女の人生の意味……」
ついに彼は言葉を切らしてしまった。僕はその大きな男の悲しい背中を見つめる他、なにもできやしなかった。

「あんたこんなとこにおったんかいな」
その声に振り向くと、僕らの背後にはトレッキングに適した格好をした中年の女性が立っていた。それは、決して美人ではなく、太い眉が印象的な女性で……。
「おう、すまんな携帯充電切れてたんや」
先ほどまで、センチメンタルに語りを続けていた彼は、突如として流暢な関西弁を話し始めた。
「日暮れてるやん! ほんまわたしはよ帰りたいいう点のに、一人であちこちいきよってからに」
「すまんすまん、久々の山やし、いろいろ見たかったんやん」
二人はなか睦まじい中年の夫婦という感じで山道を並んで下り始めていった。
そしてその去り際に、彼が振り向いて、僕に向けてニヤリと歯をむき出しにした。
僕は夕日に当てられながら町を見下ろしている。あまりにもその日差しが鋭いので、ずいぶんと顔が火照っていた。

〈了〉


次のお代は
「牛乳」「戦争」「滝」でお願いします。

2017-11-09 01:41

61.46.156.132

柴咲

おはよう処女さん
 
『ヤマオトコかくかたりき』
 
とんでもなくスケールの大きい物語。かと思いきや、太い眉をしたヒットマンは、ただの大阪のおばちゃんだった。山の景色というのは、そんなふうに男を妄想させるのかもしれません。
 
「牛乳」「戦争」「滝」
次の作品が掲載されていなかったので、取り急ぎ書かせていただきました。
 
「アシスト爺さん」
 
 よく晴れた十一月の昼下がり。築地市場へ続く、ひっそりとした公園のベンチに、老人が頬杖をついて何やら考え込んでいた。
 きれいに刈り込んだ白髪に銀ぶちのロイド眼鏡、値の張りそうな紺色のスーツ、靴も光沢のある本革靴を履いている。一見サラリーマンにも見えるが、きっと裕福な隠居老人なのだろう。
 しかし、よほど問題が深刻でもあるのか、目の前を人が通りすぎても姿勢をくずさず、身動き一つしない。
 老人は、少し離れた場所のベンチに座る少女をじっと見ていた。
 
 少女は泣いていた。
 その場所は垣根に囲まれた、ちょっと入り組んだ公園の片隅で、老人のベンチからしか見えない場所でもあった。少女は目から滝のような涙を流し、真っ赤に泣き腫らしていた。
 
 老人が少女に近づいた。そして、いきなり突拍子もないことを言った。
「きみの涙を、私に売ってくれないか」
 びくっとした少女が、身をかまえながら涙をぬぐう。「どうして」
「一ヶ月前に、私の伴侶が死んだんだ。でもわたしは戦争で感情を失くし、まったく泣けなかった。わたしはどうしても人並みに泣きたい」
 少女は戸惑いを見せる。はにかみながら答えた。
「いいけど、わたしの涙で、そんなこと可能なの」
「それほど難しいことじゃない。きみの涙を家へ持ち帰り、牛乳と混ぜて飲むだけだから」
「牛乳と?」
「ああ、牛乳には哀しい物語が隠されている。きみも、荷馬車の子牛が売られていく「ドナドナ」という曲を知っていると思うが、じつは子牛に喩えた迫害の歌でもあるんだ。それだけじゃないよ。牛乳にはカルシウムが豊富なように、クルシム効果が満載なのさ」
「あんた、ばかじゃない」
 少女が立ち上がる。涙は消えていた。


 
 拙い作品ですみません。
 
次のお題は「負け犬」「スプーン曲げ」「トランプ」で、お願いします。
課題は特にありません。

2017-11-12 22:24

218.224.21.234

ご利用のブラウザの言語モードを「日本語(ja, ja-JP)」に設定して頂くことで書き込みが可能です(テクニカルサポート)。

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3,000字以内