作家でごはん!鍛練場

『真赤に染まる』

むむむ著

お読み頂きありがとうございます。

最近、「世の中って色々狂ってるなぁ」と思うことがあって、
でもそれをどうしたら人に伝えられるのかなぁと思って書きました。

よろしければアドバイスをお願い致します。

 ある日、神様に言われました。
「あなたは人を殺さなければ、死んでしまいます。誰でもいいから殺しなさい」
 なんて突飛な話でしょう。
 こんなにも品行方正で、皆様の手本となるように生きている僕が、人を殺さなければ死んでしまうなんて。やはりこの世は理不尽です。
もちろん、僕は死にたくありません。ですから人を殺します。
 でも、いったい誰を殺したらいいでしょう?
 神様に言われたからはいえ、人を殺したら法で罰せられてしまいます。警察に捕まり、犯罪者としてネットに顔と名前が出回るでしょう。お先真っ暗とはこのことです。
 しかし、僕は殺さなければならなりません。だってそうしなければ、僕は死んでしまうのですから。
 仕方ありません。話せばきっとわかってもらえるでしょう。
 さて、では誰がいいでしょう。殺しやすさで言えば、家族が一番です。寝ているところに包丁を突き立てればそれで万事解決ですからね。
 いえ、やはりやめておきましょう。楽に殺せはしますが、親に死なれたらその後が困ります。僕の平穏な生活に支障をきたすことは間違いありません。
 やはり無難なところで、クラスメイトや周りの人間でしょうか。
 正直、嫌いな人間はたくさんいます。
 貸したマンガを返さなかった彼。
 ドッジボールで僕の顔面にボールをあてて笑っていた彼。
 僕が拾ってあげた消しゴムをあとでこっそりゴミ箱に捨てていた彼女。
 思い出したくもありませんが、ともかく殺したい人間はごまんといます。
 でも、わざわざ僕が殺すほどの価値が彼らにあるとは思えません。あんなゴミ虫どもを、僕の手ずから殺すのはもったいないと思うのです。
 まあじっくり考えましょう。僕が真に殺すべき相手は、必ずどこかにいるはずですから。

 僕はその日の昼過ぎ、包丁を持って家を出ました。
 台所の棚の奥に、使っていない包丁があったので、僕はそれをタオルにくるんでリュックの底に入れました。凶器の調達はとても簡単に済みました。こんなに簡単なのに、他の人はどうして人を殺さないのだろうかと僕は少し不思議に感じました。
 アスファルトの照り返しにも負けず、すぐ傍をすごいスピードで通り過ぎていく自転車にも気を付け、うだるような日差しの中を懸命に歩き、僕は駅へとたどり着きました。
 そして電車に乗り、街へと出かけました。
 今日は夏休み最終日だったので、街には人が溢れていました。僕は人混みが苦手なので、こういうところはあまり好きではありません。でも、今日は違いました。
 誰を殺しましょうか?
 そうやって街ゆく人々を眺めるのは、何だかとても楽しかったのです。
 僕はいつでも、誰でも、殺すことができる。まるで、神にでもなったような気分でした。
 あの人も、この人も、その人も。誰だって殺せます。彼らの命は、僕の手の中にあるのです。
 こんな愉快な気持ちになったのは、生まれて初めてのことでした。
 夏の日差しも、汗でべたつくTシャツも、街に溢れる人間も、何もかもを許すことができました。
 大きな交差点を渡るとき、肌が真っ黒に焦げた男に足を踏まれました。
 でも、殺しません。彼はきっと、タバコの吸い過ぎで早くに亡くなるでしょうから。
 自撮り棒を持った外国人にぶつかられました。
 でも、殺しません。僕は外国人を自分と同じ人間とは思えないのです。
 電車で、大音量で音楽を聴いている化粧の濃い女がいました。
 でも、殺しません。彼女はいずれ難聴になるからです。
 二時間ほどあちこちをぶらついてから、僕は家に帰りました。
 僕はその夜、じっくりお風呂に入り、早めに布団に入りました。明日は大仕事です。寝不足ではいけません。
 こんなに明日が来るのが楽しみなのは、いつ以来でしょう。早く寝れば、それだけ早く明日が来ます。
 僕はクラスメイト達の顔を一人一人思い浮かべながら安らかな眠りにつきました。

 翌日、わくわくしながら学校へ向かうと、何も知らないクラスメイトたちはさっそく僕に悪意をぶつけてきました。
 さて、この中で誰を殺しましょうか。そんなことを悩んでいたら、クラスのある女子生徒が突然、僕らのあいだに割って入りました。
「やめなよっ」
 顔を真っ赤にして、拳を握りしめて、彼女は大きな声でそう言いました。
 理由はわからないのですが、彼女は怒っているようでした。
 そして何を思ったのか、彼女はクラスメイトたちに向けて、大層なご高説を始めたのです。それはもう、聞くに堪えない、とてもつまらない話でした。
 誰もが知っていて、なおかつ何の役にも立たないような。「赤信号を見たら、止まりなさい」とでも言っているかのような。そんな意味のない話です。
 僕らはもう中学生なのですから、わざわざ言われなくてもそんなことはわかっています。
 しかし、彼女はどうやら何かに突き動かされているようでした。そう、まるで、悪魔に取り憑かれたようだったのです。
 彼女は放課後、僕の席へやってきてこう言いました。
「私、夏休みのあいだ、ずっと後悔してたの。なんで見て見ぬふりをしてたんだろうって。ほんとにごめんね。でも大丈夫。私がいるから」
 彼女は笑いました。屈託のない、天使のような笑顔でした。
 僕は鞄の底から包丁を取り出し、彼女を殺しました。
 肉を裂き、心臓を穿つその感触。歪む彼女の表情。
 あふれ出す真っ赤な血液。鮮血が僕の手を伝い、滴り落ちていくさま。
 そのすべてが、僕には愛おしく思えました。

 世の中の人間に、私の気持ちを理解することができるでしょうか?
「彼女を好きになったから殺した」
 好きな相手を殺すなんて、歪んでいますね。
「彼女に同情されることに腹が立って殺した」
 僕はそんな惨めな人間ではありません。
「もっと早く助けてほしかった、っていう逆恨み」
 それは本当にただの逆恨みですね。
「彼女の心が綺麗なうちに、神の元へ届けたかった」
 本当に彼女の心はきれいだったんでしょうか?

 僕が彼女を殺した理由は、至極簡単です。
 僕はこの世から悪を排除したかったのです。
 人間は欲に縛られ生きていく存在です。そして、それを許すのが神です。人間の罪を許すことができるのは神だけなのです。
 それなのに、彼女は身の程をわきまえず、世界のルールを捻じ曲げようとしました。偽りの正義を語り、偽りの神を語り、傲慢にも人間の罪を雪ごうとしました。
 真っ赤に染まる欲望を、中が見えないように綺麗にラッピングして、自分は他の有象無象とは違うと高らかに謳う。そんなこと、許されるはずがありません。
 彼女は悪魔の手先だったのです。
 ならば、殺すほかありません。
 僕が生きるためにも、それは本当に必要なことだったのです。

 正義を成した僕が、なぜ裁かれるのでしょう?
 やはりこの世は狂っています。

真赤に染まる ©むむむ

執筆の狙い

お読み頂きありがとうございます。

最近、「世の中って色々狂ってるなぁ」と思うことがあって、
でもそれをどうしたら人に伝えられるのかなぁと思って書きました。

よろしければアドバイスをお願い致します。

むむむ

124.87.202.225

感想と意見

偏差値45

最初の出だしは実に面白いです。
ぐっと引き込まれますね。
読みやすいけど、理路整然としません。
むしろ、理路整然としないから、良いのかもしれません。

>僕はその日の昼過ぎ、包丁を持って家を出ました。
「違う、そこはマグロ包丁だろう。家庭用ではダメだ」
と神様が耳元で囁きますね。

>正義を成した僕が、なぜ裁かれるのでしょう?
>やはりこの世は狂っています。

「ふふふっ、馬鹿な人間め」
神様のお面を外して、悪魔が笑います。

自分なり遊んでみました。面白かったです。

冗談さておき、
イスラム過激派のテロリストは、洗脳されてしまうと
そんな感じになるのかもしれないです。

2017-10-07 23:25

219.182.80.182

七篠

>> 誰を殺しましょうか?
 そうやって街ゆく人々を眺めるのは、何だかとても楽しかったのです。
 僕はいつでも、誰でも、殺すことができる。まるで、神にでもなったような気分でした。
 あの人も、この人も、その人も。誰だって殺せます。彼らの命は、僕の手の中にあるのです。
 こんな愉快な気持ちになったのは、生まれて初めてのことでした。
 
 この文は実にそれらしい文章だと思いました。

 結末の自論のようなものは、わたしには詭弁にもならない支離滅裂な主張だと思いました。

2017-10-08 00:29

180.145.187.31

むむむ

偏差値45様

読みやすいと言って頂けてとても嬉しく思います。
どのくらい理路整然としていたほうがいいのかは、
バランスが難しくて悩んでいます。

「マグロ包丁」や「神様のお面」というのは
そういうふうにも受け取って頂けるのか、と思い勉強になります。
「人間を裁く」と、「魚を捌く」がかけてあって、
人間をマグロのように見なすってことなのかな、とか
悪魔のように残酷な神様は、本当は神様じゃなくて悪魔なのかもしれない、とか
色々考えさせられました。ありがとうございます。

テロリストのことは考えていなかったのですが、
一般的な倫理観の外にある、という点では書きたいことと
近いのかもしれないと思うので、少し調べてみます、ありがとうございます。

2017-10-08 13:29

60.39.106.59

むむむ

七篠様

結論の部分はあれこれ悩んで、
「支離滅裂で理解できない」と「わけわからないけど、納得できないこともない」
という狭間にいけたらいいと思っていたのですが、
ご指摘を頂いて、支離滅裂の方に偏っているのだと感じました。
もっと説得力があるような、
自論ではなくて、
オチになるように書き直します、ありがとうございます。

「誰を殺しましょうか?」からの部分は
「それらしい」と言って頂けたので、きっと狭間にいけたのかなと思っています。
ありがとうございます。

2017-10-08 13:30

60.39.106.59

アトム

読ませていただきました。

異邦人や罪と罰から得られた題材のように思われますが、短絡すぎます。
粗筋にもなっていません。
もっと、長いもの(物語)にして細部を書かないと。それが小説です。

小説の表現形式は詩や俳句のように一辺を切り取るものではないと思います。
切り取ったものの裏付けが小説ではなかろうかと。


失礼しました。

2017-10-08 15:21

126.28.165.175

むむむ

アトム様

ご感想を頂きありがとうございます。

書かないことで想像してもらえる部分があるかと思っていたのですが、
それにしても短すぎたでしょうか。
どこを膨らませるべきなのか自分ではあまりわかっていないので、
アドバイスを頂けたら嬉しいです。

とりあえず自分では、
「人って動物と大差ないのに、ずいぶんお高くまとまってるなぁ」
というのが主題のつもりだったので、
そこをもっと主人公の視点から掘り下げようと思います。

また、ご指摘頂いた「切り取ったものの裏付けが小説」というのが
自分にはまだよくわからないのですが、
なんとなくわかった気になるのも違うと思うので、
胸に留めておいて、じっくり考えようと思います。

『異邦人』は以前読んだことがあるのですが、
『罪と罰』はしっかりと読んだことがないので、
勉強のつもりで読んでみようとも思います。
ありがとうございます。

2017-10-08 17:11

60.39.106.59

アトム

再訪です。

>また、ご指摘頂いた「切り取ったものの裏付けが小説」というのが
自分にはまだよくわからないのですが

・絵画に例えれば、城なら城を貴方が観てその景観を伝えるとき、門や屋根だけを書いて城の全貌が伝わるでしょうか。読者に想像しろというのは無理ですね。
貴方の角度から見えた主題(切り取ったもの)は、景観の成り立ちにの中にあったわけです。その主題を伝えたければ、成り立ち(物語)を書くと言うのは必然です。読者はその中から種を拾い想像力を働かせるのではないでしょうか。私が言った『裏付け』とはこれですね。

>どこを膨らませるべきなのか自分ではあまりわかっていないので、
アドバイスを頂けたら嬉しいです

> ある日、神様に言われました。 
・神の言葉は幻聴ですか?。 実際に現れた場合とは、彼の内面を覗くにも、後に続く話しの受け取り方も違ってくるので、先に呈示すべきです。

> もちろん、僕は死にたくありません。ですから人を殺します。
・ 死にたくないから人を殺すと、短絡すぎです。どんな人間でも、そこに到るまでの葛藤や煩悶があってしかるべきで、それを書くのが小説です。

>僕が拾ってあげた消しゴムをあとでこっそりゴミ箱に捨てていた彼女。(これは、面白い good)

> そうやって街ゆく人々を眺めるのは、何だかとても楽しかったのです。
 僕はいつでも、誰でも、殺すことができる。まるで、神にでもなったような気分でした。
 あの人も、この人も、その人も。誰だって殺せます。彼らの命は、僕の手の中にあるのです。
・妄想に浸れる人ならありえるという、リアリティはありますね。

>世の中の人間に、私の気持ちを理解することができるでしょうか?
「彼女を好きになったから殺した」
 好きな相手を殺すなんて、歪んでいますね。
「彼女に同情されることに腹が立って殺した」
 僕はそんな惨めな人間ではありません。
「もっと早く助けてほしかった、っていう逆恨み」
 それは本当にただの逆恨みですね。
「彼女の心が綺麗なうちに、神の元へ届けたかった」
 本当に彼女の心はきれいだったんでしょうか?

・ここは作者さんの思考が固まらず、散漫したままで書いている印象。


 何かをした。人を殺したでもいいですが、そこに到った理由と過程は細部まで丁寧に、がアドバイスです。
 
 想像力は誘引するのであって、想像力に頼ってはいけません。(文章は客体で)


 再訪失礼しました。

2017-10-08 20:17

126.28.165.175

むむむ

アトム様

お返事を頂きありがとうございます。

①「切り取ったものの裏付けが小説」
額縁に収まるように丁寧に城を描いて、
その上で、見て頂く方に額縁の外側の景色を想像してもらう、
ということなんでしょうか。ぼんやりとですがわかった気がします。
額縁の中の、自分の力で書かなければならない部分まで、
読んでくださった方の想像力に頼っていたのかと思います。
想像力を誘引できるようにがんばります。

②「神様の言葉が幻聴」
主人公が人間に絶望して、
人間より一次元上の、超越した存在として神という言葉を用い、
神を言い訳に自分を正当化する、
というふうに考えていたので、幻聴のつもりでした。
あまり細かく考えていなかった部分もあり、
神という言葉を安易に使い過ぎたのかと思います。
考え直します。

③「死にたくないから人を殺す」
人間はいつだって利己的なので、
自分が死なないために他人を殺すのは当然、
という思考回路のつもりだったのですが、
まったくそういうことを書かなかったので、
短絡的というか、論理破綻気味なのだと思います。
書き直します。

④「消しゴム」
一か所でも面白いと思って頂けるところがあったと安心しています。

⑤「街ゆく人々を眺める」
他の方からも「それらしい」と言って頂けた部分で、
ありえないけれどリアリティのある話が書けたらいいと思っていたので嬉しいです。

⑥「散漫になっている部分」
主人公が突発的に人を殺しておきながら、
まだ冷静で常識的な部分が残っている、
ということを書きたかったのですが、
主人公の気持ちより、私自身の気持ちが強くなっていて
一貫性が無くなってしまっているのかと思います。
書き直します。

⑦「理由と過程を細部まで丁寧に」というのを念頭において、一から見直そうと思います。


丁寧にアドバイスを頂き、ありがとうございました。

2017-10-08 23:02

60.39.106.59

岡田寄良

拝読しました。
面白かったです。
殺意を持った狂人の話でしたが、狂人にも善悪の基準というものがあるのですね。
むしろ善悪の基準とそれに対する態度の示し方を世の中に流通している基準、
例えば法律等に依存しないから狂人なのでしょうか。
よくわかりませんが、狂っているのは世の中なのか、自分なのか、
実はその見極めは案外難しいぞとこの作品を読んで思ってしまった僕は
狂人の世界へ足を踏み入れかけているのかもしれないと少しドキドキしました。

2017-10-10 21:25

182.250.248.234

試練

初めまして
読者としての素直な感想のみ、お話させてください。

初めの数行で、主人公の僕=変質者かと感じました。
それともジョークで、何か落ちがあるのかなあと思ったら、
勇気を出して、正義をふるった彼女を生贄にした。

主人公の見た異常な世界は、結局通常の世界なんじゃん。
でもまあ、世の中この手の事件てあるよね、そういう意味では、
確かに、世の中狂ってます。

ありがとうございました。

2017-10-10 21:35

114.166.126.173

むむむ

岡田寄良様

ご感想を頂きありがとうございます。
面白いと思って頂けて安心しております。
また、物事を見るときの基準を社会常識や道徳に依存しない、というのは
私が伝わったらいいなと思っていた点だったのでとても嬉しいです。

たくさんアドバイスを頂いたので、色々見直しながら、書き直したり加えたりしているところだったのですが、
ご感想を頂きとても励みになりました。ありがとうございました。

2017-10-10 23:22

124.87.202.225

むむむ

試練様

ご感想を頂きありがとうございます。
また、先を想像しながら読んで頂けたとのことで嬉しいです。

異常なことがよく起こっているのに、
それを「まあ、たまにはあることだよね」と受け入れてしまっている
そういう意味でやっぱり世の中は狂っている、

というのが心に残りました。

事実は小説よりも奇なりとか
何でもありの現実だからこそ何でも起こる余地がある、
ということなのかもしれません。
とても参考になりました、よく考えてみます、ありがとうございます。

2017-10-10 23:23

124.87.202.225

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