作家でごはん!鍛練場

『春がきた』

たらたら著

これ、小説でしょうか。

  
 夕方、田崎敬一郎は唯一の友人である佐々木則夫の訪問をうけた。靴が三足並ぶと隙間がなくなるような狭い玄関に則夫が立っていた。
「おう、敬、半年ぶりだな」
 則夫が右手のひらを見せていた。
「そうだな、突然電話くれて、驚いたよ。狭い市営住宅だけどゆっくりしてけよ」
茶の間以外に部屋が二つ祖母と二人暮らしなのでちょうどよかった。自分の部屋に招き入れた。六畳間だ。ベッド、机と椅子、箪笥が一つ。則夫がベッドに座り胡坐をかいた。敬一郎は机を背に椅子に座り右脚を左脚にのせた。
「卒業したから、もう聞いてもいいかと思ってよ」
 ベッドの上で則夫が胡坐をかきながら言った。
「なにを?」
「ペニス切り裂きジャック事件のことだよ」
 そう言われて息がつまった。堪えきれずやってしまった事件だった。犯人は捕まらないままだ。
犯人は自分だもの。
則夫は背広を着ていた。高校のときは、耳が隠れるくらい長い髪だったが今ではスポーツ刈りにしてむさ苦しさがない。涼しい顔をしていた。農業機械販売会社に就職している。身長は自分と同じ百七十六だった、が高校時代テニス部で三年間頑張っていたせいか体重が八十キロあるという。自分より十キロ重い。筋肉量が多い引き締まった身体だった。
「いつか、聞いてみたいと思ってたんだ。どうして、おとなしい敬が、金属バットで頭を叩いて、ペニスの根元を刺したのか、いつか聞いてみたいと思ってたんだ」
「どうして、犯人は僕だ、と決めつけるんだ」
「あのとき、夕方、暗くなる寸前、自動販売機近くにいたんだ。学校の帰りだった。見たんだよ。たぶん、おまえ。敬の姿だと思う。俺も隆一のことがあのときは、嫌いだから、黙って見てたわけさ、ただよ、あまりに危険だったら止めようとしたけど、チンポ切られたあと、少し唸っていたけど隆一自分で歩いていったし、見ぬふりよ。大事なところ切られたのは後から知ったんだ。それにバレー部の女子が、『大丈夫、病院つれていこう』とか、やたらと騒いでいたし、俺は気がつかないふりをして歩いて帰った。薄情だよな俺も」
 則夫の目が瞬きもせず、こちらを見ていた。そのとき清潔な空気が流れた。素直な視線に負けた。敬一郎としても、忘れようと思っていても、心の中で消えることはなかった。いつも、インターネットの画像で見た癌の悪性腫瘍みたいなものを常時抱えているような気味の悪い気持ちだった。薄情することにより、それが晴れると思うと、なにかが変わりそうで少し嬉しくなった。懺悔、そんな言葉が頭にうかんだ。
「そうか、聞きたい?」
「もちろん」
 背広の上着を脱ぎ、則夫がネクタイを、しゅっ、と刀を勢いよく抜くように首から外した。つやつやと赤い顔をしていた。疚しい影や暗さがまったくない。これだけすっきりと問い詰められると否定する小賢しい気持ちが沸き起こってこなかった。
「よし、話せ」
 自分としては、すんなりと話すことに葛藤はなかった。あまりにも則夫の顔がてかてかとして、ルームライトの光を押し返しているみたいだった。白い歯を見せて嬉しそうだ。犯人を捕まえた刑事にも見えなくもない。そこがちょっと嫌だったが。
「話すから、ちょっと待ってくれ」
「わかった」
 敬一郎は茶の間に行き冷蔵庫から缶コーヒーを取り出し、食卓テーブルの上に置いてあったポテトチップスの袋を手に持った。祖母は長椅子に仰向けに寝そべりラジオを聞いている。最近目が疲れるので、テレビよりラジオだね、時々口にしていた。今年七十になる。背中を見ていると、だんだん小さくなってゆくように見えた。寂しい気持ちがした。それでも、いつか自分もそうなるのだろう。そんなことを考えた。
 部屋に戻って、則夫に缶コーヒーを渡した。ポテトチップスの袋を裂いてベッドの上に置いた。
「俺はずっと気になっていたんだ。井上隆一を切ったのは、お前なんだろう、学校じゃあ、いつもひとりだったよな、SF小説なんか昼休みに読んで誰とも話しをしない。俺はテニスで発散してたけど、友達なんていなかった。友達になってくれそうな男をやっと見つけて声をかけた。それが、敬、お前だったんだ。憐れんでいたんじゃないよ」
「ありがとうだね」素直に話す気持ちになった。「高速道路の下を片側二車線の国道が走っているだろう、その国道は少し坂になっているよね、坂を上りきるとコンビニがあって、そのコンビニの斜め向かいにお寺があるだろう?」
「あるある、お寺って桜井恵美子の家だろう」
「ポテチ喰いながら聞いてくれ」
「喰うから、話しを進めろ」
「登下校のとき、桜井恵美子が総門の前に立つ姿を気づかれないように横目で見るのが僕の日課だったんだぁ」
「恵美子さんは寺の娘だからな」
 頷きながら則夫がポテチを四枚同時に口に入れている。頬がふくらんでいた。
腹へってんのかな。インスタントラーメンでも作ってやろうかと思った。でも面倒なのでやめた。
「大きな瞳に長い睫が陰りをあたえているし、遠くからでも、はっきりとわかるよね、見えるんだよ、涙で潤いがあるその瞳が。真ん中から分けた長い髪は肩まであった。前髪は頬骨のところで切りそろえている。身長は百七十を超えているだろう、モデルだよ、教室ですれ違ったときの目線の高さはあまり変わりなかったからなぁ、高校に入学したときから、心がガクガク壊れそうになったよ。もちろん、話しなんかしたことなかったんだ、まあ、僕を避けていたのか目の中に入らなかったのか、どちらでもいいですよね。そんなこと」
「まあな」
 そう言って則夫は白いワイシャツを脱いで上半身ランニングシャツにになった。喉を鳴らして缶コーヒーを飲んでいる。
「パソコンの動画がいけなかった。勉強したくもないし、ほとんど、官能っていうのでしょうか、パソコンで官能見てた」
「ちょっと待て」と言って則夫がトイレへ行った。その間敬一郎は椅子から立ち上がり、腰に両手をあて身体を反らした。こんなに喋ることがないので疲れた。声帯も動かさないとダメみたいだ。
 窓ガラスに墨が張り付いているみたいに暗い。敬一郎の姿をくっきりと映し出している。鏡みたいだ。夜が深くなった。
 則夫がトイレから戻ってきた。背伸びをして両腕をくるくる回している。コーヒーを噛みながら飲んでいた。
「おいおい、その続き、官能って言ったな、エロだろう。難しい言葉使うなよ」
 敬一郎も椅子に座り直す。気合が入った。
「官能でしたっけ、まあ、エロですね。パソコンで女の柔らかそうな肌、ぷにぷにした肌、脳味噌に直撃しましたね。政治とか経済、スポーツも見たよ。それでも官能画像や動画が嫌味つきになりましたね。芸術的に見えました。それでも、エロですか?」
「エロでいいよ、とっつきやすいから。あんなもの芸術だと思ってるのは、敬、お前だけだ」
「とにかく、小学校高学年からほとんど休んでたんで、中学に入ったときも、時々学校に行くくらい。寂しいというより安心したっていった方が適切ですね。それで不登校。ニートの気持ちがよくわかりますよ。安心なんですこの部屋が」
「ニートの気持ち理解してどうするんだよ」
「則夫が僕と友達ってことは、半分理解してると思う。則夫は初めての友達ですから、感謝してるよ。友達が遊びに来るってことは僕にとって大変なことですから。いつからか忘れたけど、ペニスがムズムズしてきて、射精をしてね、いい気持ちっていうか、他にない、たとえようもない気持ちでしょうか、一瞬死んだような、死ぬ瞬間って射精の瞬間でしょうかね」
「生と死を見つめて、性と死だな。敬」
 こいつの言っていることがよくわからん。
「自分の妄想が具体的になったのはパソコンを買ったときだったなぁ、それって世界旅行をしてる気分で、その国の歴史とか、美味しい食べ物とか、匂いや香りがしたらいいだろうなって考えましたよ」
「そうだ、いずれパソコンから匂いが出るときがくるだろうな」
「話しがそれますが、パソコンつけにきてくれた若い人、三十前かなぁ、百八十ありそうな大男で、髪が肩までありましたね、頬はこけて掘れているというか、鼻は神経質そうに細く高い、眉間に皺がよってパソコンをセットしてましたね、言葉が少なかったですよ、同じ人間、親近感がわきましたね。営業には向かないタイプでしたね。技術者っていうタイプ。研究者。僕には飛行機の運転でもしているみたいにみえましたね。説明聞いてもわからなかったのですが、返事だけしておきました。あ、パソコンを買ったときからでしたね、映像だけのセックスですよ。これがマンネリすると、いけなかった。パソコンを買う前は、ここの窓から見える景色が自分のすべてだったんですから。四階建ての市営住宅がここに四棟ありますよね、一棟十六世帯が住んでまして、窓から見えるものは十六のベランダ。ベランダに布団が舌を出したように垂れていたりするんです、赤もあれば肌色もある、それこそ色とりどりです。天気の良い日は舌だらけですね。日光殺菌ですね。この窓は北向きで向こうは南向きなんだ。ベランダの方ね。刑務所みたいなものですね。こちらは北ですので、日の当たるベランダを見ていると、窓が被弾したみたいに光の矢をこちらに放つんですよ。眩しいですよ」
「悲惨だね。俺みたいにテニス三年がんばった人間からすると、複雑な気持ちだ。なんでそうなるのか。学校へ行かないのか。わからん」
「たぶん、まわりの目だと思う。クラスメイトの」
「なんだそれ」
「よく、テレビで犯人が警察署から出てくるとき、報道陣の罵声をあびせる奴がいるだろう。あれは目、目の視線に怒っているんです。僕が間違って学校にいくだろう、まわりの目、『何だどうしたんだ?』と全員の目が全身に刺さるんです。こたこたになりますね、自分の肉体が。もういけません。学校へ行けません」
「自分が悪いんだろ、毎日登校してりゃぁ、そうならんって」
「そうかもしれません。一般的には。小学校一年のとき両親が離婚しました。四年のとき母が癌で亡くなったんです。いま母の母、祖母といっしょに暮してます」
「知ってる」不満そうな顔をしている。
「これが、不登校に拍車をかけました。つまり何も言われない」
 口を大きく開けて則夫が目を細めた。呆れた顔に見えた。
「当たり前だろう、敬の婆ちゃん、言うわけないわな。いつまでも浮浪者なんだな、お前」
「学校に行けない理由はもういいですよ。言ったってしょうがない。床屋に行っても目がありますね。髪を切る人の目ですよ。『高校生、中学生?』って聞かれますね、不登校ってばれないように、ごもごも話すんです。『天気いいよね、今日は暑いね』こういう話が一番ですね。返事は決まって、そうですね、って言えばいいのですから。その人四十代だと思うんです。茶髪で少し長い髪でパーマをかけているんです。顔の皺も目立ってましたね、痩せていて顎のラインがはっきりして、ちょって見た目は修行僧みたいな、かっこいいですね。四国四十八か所にでも巡礼に行ったほうが合ってますね。それはいいとして、娘の話しになると、ドキッ、とするのです。もしかしたら自分のまわりにいるのではないかと。たとえば、学年が一つ下で自分のことを知っているのではないかと、この人の子供が同級生なら変質者扱いされはしないかと心配で」
「そんなに、気にしてんだ」
 則夫は胡坐をかいたままランニングシャツを脱ぎ上半身裸になった。今でも早朝のジョギングをかかせない則夫の肉体は脂肪ゼロに見える。胸の筋肉が二つ、四角に盛り上がり腹筋も凸凹が六つあった。肋骨も二本左右にうっすらと見える。
「まあ、怯えて毎日生きているみたいなもんですから、怯える理由なんて、べつにないのにね。目なんですよ。自分を見る目、他人が自分を見る目。壁でもつくりたいくらい。自分の被害妄想なんですかね。髪を切る人は、娘がどこどこの高校に行って最近、友達の家に入りびたりで帰ってこないって、愚痴ばかり、楽しそうな目をしてますね。『僕は高校を中退して、床屋さんになるための学校に行ったんですけど、高校卒業したかった、卒業したほうがいいよ』と僕に教えてくれるんです。卒業もなにもやっと高校に行ってる身分だった自分にしてみれば、不登校がばれたと思いこみドキッとさせられた。なぜかドキッですね。普通に話してくれるのが、ちょっと安心というか、やっぱり負い目があるんですね、自分の中に。やっと床屋が終わって出て来るときは、ほっとしますね。不登校がばれなくてよかったって」
「それって、よくわからねえなぁ」
「高校はいきましたよ。休みながらね」
「知ってる、俺と友達になるほど来たよな」
「人間って目で会話してるんじゃ、ないですかね。強歩遠足のときなんかよくわかりますよね」
「切り裂きジャックのこと、どうなった?」
 敬一郎は右手のひらを見せた。
「待ってください」
「まあ、わかった」
「僕は、ひとりで歩いている。みんな輪になって歩いているように見える。言葉が弾んでいる。意志が通って風通しもよい。僕は言葉を知らない。話しかけても弾んでこない。馬鹿らしくなる。ひとりで歩いて頭の中で会話して、自分と会話しているのか、架空の人間がいるのか僕にもわからない。そのうち誰が誰だかわからなくなってくるもんです。気づいたときには冷たい人間になっていましたね。友達がいないんですもの。心の暖か味を感じたことがないんですもの。特に腹が立つのはバレンタインデーですね。一個ももらったことがないんです」
「学校いかねえ、敬、来ないものもらえるわけがねえ」
「たしかにね。バレンタインがどうのとか恋のドラマが生まれるとか、そのうち義理チョコとか、うるせえんだよ。あおるな。火に風を送ってもっと燃やそうとしてるんだよ」
「おい、ずいぶんといい演説になってるぞ。お前喋るんだな、結構なもんだ」
「まだつづきますから、聞いててください」
「よし」則夫が胡坐をかいた膝をたたく。
「僕はいじめとかありませんでした」
「そりゃそうだ。学校行ってないんだから。当然だ」
「そうです。高校に行ったら人間を変えようとしました。高校デビューですね」
「そんな、言葉あるんだな。その意気込みはわかるな、決心というか、なんか、そんなもんだ」
「行きましたよ、高校へ、週休四日制じゃなくてせめて三日制にしようと。相変わらず、言葉が出ませんでしたね。これわかりますか、この意味?」
「わからん。言葉がでない。堅いってことか?」
「ぜんぜん、気持ちが沈んでいるだけですよ、たぶん」
「そうか」
「桜井恵美子と同じクラスになったんです。憧れましたね。この人が歩くと大股で、そうハリウッド女優みたいで日本人離れしたダイナミックな感じがしたのです。身体が大きいってことでしょう。僕と同じ百七十以上あったでしょうね。学校の帰り井上隆一と深刻な顔をして廊下で話しているのを遠くから見てまして、何を話しているのか大変気になりましたね。隆一はカンフー映画に憧れている人でしたね。細いズボンを穿いて、なんて言いましたっけ、あの古典みたいな俳優」
「隆一が憧れた、ブルース・リーだろう、古くて観られねえよ、あの映画」
「とんとん、とリズムをとって、獲物を狙うみたいな武道の姿勢、そのあと、『キエーッ、アチチ』と言って敵を蹴るみたいな。隆一がトイレにひとりで行くときも、途中何を思い出したのか、リズムをとってましたね。前、後ろとリズムをとって。タンタンタン。カッコつけやがって。髪型は今思い出すと、横と後ろは刈り上げて前髪はちょっと長め、頬がこけて、そういえば断食してるって言ってたな、わざと目を鋭くして睨んだり、腹立ってくるね。『隆一くんカッコよすぎて』そういう女の子いっぱいいましたね。僕は暗いゴミ箱の中にいるみたいなもんでしたから、それはそれは、眩しいくらいで、入学したときはそればかり目にとまりましたね。学校中を取り巻いているみたいで。青春ってやっぱり春なんだと。青い春ですね。青はけっして濃くないんです。すっきりというか」
「そうか、はじめて、敬は冬眠から覚めた熊みたいなもんだ。恋を知るきらめきというか、苦しさとか憧れを知ったというか」
「まあ、そんな感じですかね。隆一は自分よりカッコいい、それは認める。まあ、人間のすべてはそれでは計れない」
「人間とかやめろよ、まあ、敬、カッコだけは負けたってことだろう。いいじゃねえかよ、たいしたことじゃねえ。でも礼儀とか人格は大切だぞ、社会人になるとわかる」
「パソコンを入学とともに買って、休みは一日中向かってましたね。エロにはまってしまって。最初は、もう、止まりませんでしたね、オナニーですよ。猛獣みたいにシゴキましたね。快感は中毒になるね。覚せい剤は知りませんけど、やめられないのがわかりますね」
「悪いパターンだ。婦女暴行に走る前兆だ」
 則夫が片目を潰したみたいに歪ませた。
「気持ちいい。やめられん。性器の先が真っ直ぐじゃなく首をひねったような形になっちゃいましたよ」
 人差し指をベッドに向けて、「このベッドでシコシコか」則夫が言った。大きく口をあけて笑っている。
「性器が変形するくらい、やりましたね」
 たしかに右にねじれている、自分のペニス。
「おい、オナニーばっかりすると、女の穴に入れたとき、射精しねえぞたぶん、握力より強い膣は存在しないぞ」
「それって専門的ですね。僕は包茎なんですよ。無理すれば剥けるんですけど、締め付けられて痛いんです。竿が痛いのではなく狭い皮の口が裂けそうで痛いんです」
「今も、か、包茎?」
「大学デビューと同時に手術しました」
「デビュー好きだな。今度は大学デビューか。意気込みは、わかる」
「地元のクリニックに行ったのですが、これは真性包茎ですねって、手術後、亀頭が常に露出しますからシリコンでも入れないと、トランクスにあたっているだけで、刺激されて痛いとか、どうのとか言って広告で見た料金とまったく違うんですね。広告の三倍に跳ね上がりました。先生じゃなくて、助手みたいな若い男でした。そうですね、化粧が似合う面長の顔で、ホストクラブの方が合っているみたいな。やめました。ローン組んでもいいからって、その白衣を着た男に引き止められましたが、中古車買えるくらいの料金だったので考えます、と言って出てきました。ここはボッタクリだ。営業しているのかわからないくらい静かで窓にはカーテンが引かれ無人の館みたいな、やけに高尚に見えるクリニックでしたね。それから、家に帰ってもう一度考えた。包茎に別れを告げると何かが変わると思った。心のけじめですね」
「よくわからんけど、そうなんだ」
「包茎が嫌で特急に乗って、栗川市へと向かいました。大きい街ですね。駅のホームに降りると、ざわめきが身体を包み込み足早に動く人々が左右に入り乱れていました。ベルが、ジリジリとあちらこちらで鳴って、地下鉄に乗る人が改札機に群がっていました。そこを横目に駅北口から地上にでました。眩しかったですよ。ぴっぴ、ぴっぴ、歩道を渡るときの音ですね。何かの広告アナウンスがひっきりなしに聞こえ横に文字が走る電光掲示板。僕からいわせるとガチャガチャですよ。人と音と光が団子になっていましたね。ここが都会ってやつなんだ、と。頭が痛くなっちゃう」
「俺なんか都会へ行くと、刺激的で嬉しくなっちゃうけどな。地下鉄に乗れるし、ここには地下鉄なんてないし、着ている服も違う気がするし、レストランなんか選び放題いろんな食べ物、たくさんあるしな、刺激的だよ、ないものがないってくらいだ」
「まあ、窓から見える景色が世の中のすべてだった自分にしてみれば、刺激的というよりは、雑音と背中を押される忙しさ、渦にでも巻きこまれる恐怖しかなかったですね。とにかく、電話で予約していたクリニックへ足を急がせました。料金はすでに決めてくれて安心だったからだ。『悪徳業者には気をつけろ』と教えてくれるクリニックだからよけいに安心できた。クリニックはビルの五階でしたね。『帰りの特急時間に間に合いますから、けっこう来ますよここに地方から』三十前後らしき男のカウンセラーが、おっとりとした目を向けてきまして、ゆっくりと話すひとでした。勇気は必要でしたね。地元でもここでもチンポを見せました」
 拍手しながら則夫が笑った。
「いいぞ、いいぞ」
「なにがいいのかわかりませんが、『それじゃあ、手術室へどうぞ、こちらです』カウンセラーの男が案内してくれました。他の患者さんはいませんでしたね。完全予約制でしたから、ビルの一室でしたので、先生とカウンセラー、そして僕だけだったのではないでしょうか、『ここへ寝てください』カウンセラーに指示されました。性器に麻酔をうってましたね。『どうしてここにきたの? なにか見ました』先生が聞いたので、『紹介なんです』と言ってしまった。引きこもりに紹介者なんてありえないですけど。『紹介だなんて嬉しいね』そう言って笑顔を見せました。丸顔の七三に分けた背の高い、おそらく百八十近くあるでしょうね。身体が細く長い枝のような姿でした。『だれか紹介してくれたら、少しお金もらえるよ。帰るとき聞いてみたらいいよ。紹介料ね』カウンセラーに聞けということでしょう。カウンセラーはベッドの横に立っていた。とにかく、紹介できたと言ったとたんから、先生は気分がよくなったみたいで、性器に麻酔をうつとき、『技術がいるんだよ、麻酔うつの』と得意気に言ったのです。『どうですか、感じますか』亀頭をなにかで突いているみたいな感じがしましたね。『感じますね』『もう一度、強い麻酔をうちますね』先生が言って注射したみたいだった。『こんどはどうですか』そう聞かれて、『だいじょうぶです』答えたんだよね。なにも感じませんでしたから。麻痺してた。カチャカチャと金具がぶつかるみたいな音がして、臍のところにテントみたいに厚い布がかけらたように思えました。手術台に寝てましたからよく見えないのです。金具の音はたぶん性器の皮を切る道具だと思いますよ。カウンセラーの男が部屋からいなくなりましたから。余分な皮切るのを見たくない、気持ちが悪くなるからでしょう。それが直感でわかりました。ああ、切られる。何か、悪い自分の暗さが切られて落ちてゆく。悪いものが切られるわけですから、運も向くと嬉しくなりましたね。サラリーマンの平均月収で自分は幸せになれる、包茎手術の代金はサラリーマンの平均月収ぐらいですからね。自分を変えたい、と頭の中で祈りましたよ。これで貯めたこずかい全部なくなった。ああ、しかたない」
「そうか、包茎じゃなくなるってことは、男になるってことだからか、昔に元服みたいな気分だったんだな、よくわからんけどわかる、わかってあげよう」則夫が白い歯をみせて笑う。
「痛くなかったですね。安心しました。これで、風俗行ったとしても、堂々と腰に手をやり、自慢できると。行ってみたい。僕のペニス普通ですけど、まあ、比べたことないのでわかりませんが、何か自信が欲しかったんです。手術がおわり、個室でカウンセラーの男と漆黒のテーブルに向かい合って話しをしました。『これ、鎮痛剤です。痛ければ飲んでください』僕の目の前に差し出したのです。『これで、思いっきり、自信を持ってできますよ』さわやかに男が言ったのです。僕もそんな気がしました。特急列車にのって帰ってきたのは夕方でしたね。一週間は入浴できません。シャワーしてもかまいません。ペニスをこすらないでくださいね、と言われました。性器に目に見えないラップみたいなものが巻いてあるみたいなのです。それは、ここの院長の発明でして、といささか自慢げな顔をしてましたね。そのクリニックを後にして夕方の特急の乗りました。特急に乗っていると睾丸が痛むのです。歩きづらいのなんのって、おっぱいの大きい女が横に座ったのですが、勃起しませんでしたね」
「それだけで勃起してたら、年中勃起しちゃうよ」
「そうですか、いいですね、年中勃起してもかまいません。次の日には痛みはなく普通に暮らして大学にも行ってましたね。これで、やっとソープでも行って思いっきりしてみたいと。ソープにいく金がない。中学から貯めたお金全部なくなった、包茎手術で」
「彼女、つくるとかじゃなくてソープか?」
「彼女はできません。それは自分がよく知ってますよ。もう一人前の男になったので、そろそろ、『切り裂きジャック事件』について話しましょう。あれは高校二年の秋でしたね」
 則夫が天井に目を向けた。
「そうだろうな、雪降るまえだったよな。男にならなくたって、話せる話だよ」
「僕は、堕胎の映像を見ました。何か月みたいな形。わからないくらい小さな人間の命。魚の子みたいな形でしたね」
「胎児だろう」
「そうです。女性が股広げて性器まるだし、穴に銀色のハサミを入れるんですね、なんとも言えず、自然の行為に見えました。ハサミがペニスに見えて勃起したぐらいですから」
「勃起すんなよ、わがままチンポだな」
「でも、勃起は少しの間で、すぐに水のやらない花のように萎れたんです。それは」
「それは?」
「膣から羊水にハサミが入ったとき、胎児が逃げたんですね。目や表情はわかりませんよ、逃げたのはわかるんです。その動きで。狭い空間ですから逃げられません。まあ、粉々ですよ。胎児は。頭は大きいですからね、脳を破壊するんです、ハサミで。粉々にしてかきだすんですゴミみたいに」
「おい、気分悪くなってきた。まさか、胎児をつくったペニスが憎くなったのか」
「そうですね。夜も眠れなくなりました。恐ろしいんです。夜中話しかけられましてね、胎児に」
「危険だなあ、おまえ」
「桜井恵美子と井上隆一が付き合っているのは、誰の目にも明らかだったよね。まあ、学校帰りいっしょに、ふたりで帰ってましたから、この野郎って思いませんでした。まあ、学校に行ってませんでしたし、パソコンで動画ですね、官能ですか」
「エロ動画」
「エロですね、百七十近くある恵美子の身体は女の身体なんだろうなって、そう思ってエロ見てると、もう、してしまいました。毎日ですよ」
「学校こないで、しこしこ毎日か。まあいいや」
「恵美子の家、寺ですね。金色の壁と黒く大きな屋根、砂利が敷詰められた寺の敷地。山門から覗くと威厳というか荘厳とでもいうか、恵美子が処女であることの象徴に見えました。この敷地の中で隆一が『アチョー』って脚を高く上げる姿を想像しました」
「想像すんなよ。くだらない」
「恵美子の夏は白のジーンズにTシャツ姿。ぴっちりと尻のかたちがはっきりわかりました。左右に揺れる尻。長い脚、スニーカーの白さが際立っていた。ブラジャーのあとがTシャツから浮き出ていましたね。風より軽い長い髪。エロを見て恵美子に会いにゆくために学校に通う、それがあの時の登校理由。でも、すぐに不登校になりましたけどね。それから、夏の終わり、風が冷たく首に巻きつく感覚がよぎったときです。恵美子が栗川市駅のトイレで子供を産み落とし、死なせた事件だったよね、あれ」
「そうだ、あのとき、お前に教えたよな、相手は隆一だと。警察に呼ばれたかどうかわからんけど、警察が、学校に来てたし。隆一もよばれてた」
「僕はそれを聞いたとき、次の日から学校へ行きました。体育の時間、風邪をひいたと言って嘘をついて休んでいました。そのとき、隆一とその親友らしき雅夫も休んでました。つまり、三人で教室にいたのです。『まいったぜ、恵美子には』隆一が机に尻を乗せて言ったのです。雅夫は椅子に座り腕を組んで隆一の話しを聞いていました。隆一の声は教室に響くくらい大きいものでした。他は僕ひとりでしたからね。大声で喋ってましたよ。僕がいることはぜんぜん気にしてないみたいで、どうせ、学校に来ない人間だと思っているのでしょうね。あれはたしか、『俺よ、一発やっちゃってよ』ギクリとしましたね。『恵美子とか?』雅夫が聞いてましたね。『そう、たいしてよくはなかったけどよ』笑いながら隆一が言ってましたね。『俺なんか、まだ女とやったことねえよ』雅夫が言ったとき、正直だと思いましたね」
「あいつら、そんなこと言ってたのか?」
「そうです。おおっぴらに。普通は言わないよ。それに、万引きの常習犯なんですよ、隆一。スーパー、コンビニで食い物や日用品を盗んでるみたいで。まあ、街の中にたくさん店ありますから、同じ店に何度もいったら捕まるので、違う店を選んで万引きしてるみたいで、毎日じゃないので捕まらないって、隆一が言ってましたね。そんなことを、僕のまえで大声で話してましたね。それだけ、自分が石か見もしない交通標識ぐらいにしか思ってないってことですよ。あいつらにしてみれば。眼中にないってことですね。自分の存在がこの教室ではどんなポジションなのかよくわかりました」
「学校に来ないお前はそんなもんだよ。いいじゃねえか、俺という友達が今いるんだから」
「ありがたいです」敬一郎は頭をさげた。「それから、二ヶ月後ですよ、則夫から聞いたのは、恵美子が栗川駅で赤ちゃん産んで、殺したって。僕は隆一とセックスしたことに驚いた。僕もできれば、セックスがしたかった。できれば、恵美子としたかった。もう、荘厳で大きく心を弾き飛ばすお寺に住んで、なんでまた、あんな、生意気な隆一とセックスしたのか、隆一の精子が恵美子の身体の中に入り込んでいく夢をよくみました。精子が蛇のように見え、子宮に向かって滑り込んでゆくのです。自慰行為しましたね」
「おまえも、暇だね」
「はっきり言っていいですか、暇です」
「わかった、わかった」
「そのときは、まだ隆一をどうこうしょうとは思わなかったのです。時間ですね時間。オナニーをしているうちに、終わったあと、恵美子を思いオナニーできなくなったんですね。僕だけの恵美子じゃなくて、夢ぶち壊しですよ」
「それにしても、狭い世界だよな、俺にはわからん」
「僕が思ったのは、オナニーを壊されたことではないんです。堕胎の映像が殺人現場に見えてしかたなかったんです。勃起しなくなりましたね、一時期」
「一時期って、時間が経てば勃起したのか?」
「そうです。勃起だけはどんな状況であってもするもんですよ。ひとりで部屋の中にいると妄想がストーリーのなって四、五時間あそべますね」
「おまえ、異常だよ、ニートの神髄だな」
「褒められても困るんですけど」
「褒めてねえよ」
「恵美子は学校に来なくなりましたね。あの事件は、事件とあえて呼びますが。日増しに重く心にのしかかってきました。暫くしての自慰行為は、『恵美子は僕のものだ』心で叫びながら射精しました。力の入った、手を震えさせてする、しこしこでした。親指が腱鞘炎になるかと思いました。怒りと快楽が入り混じったようなものです。射精して身体と心が軽くなった、と思ったのは嘘で、そのあと、恵美子を奪われた口惜しさに苛まれましたね。堕胎ですよ」
「堕胎がどうかしたのか?」則夫が怪訝な顔をする。
「堕胎の倫理が心を動かしました。たぶん、定義付けが欲しかったんだと思います。いま考えると幼稚ですね。また思い出すんですよ。体育の時間、教室にいた時のことを。隆一と雅夫が僕の聞こえるところで、恵美子とのセックス話しを。『いいなあ、隆一、恵美子とやれるなんて』雅夫が言ってましたね。くだらない会話と思いましたが、人と会話をしない僕はそんなものかと思いました。『すっきりした』って言って隆一が笑ってましたね。そのときですよ、勃起しなくなったのは。容疑者のあがらない方法を考えました。僕が犯人になればいい。そんなことを考えました、自慰行為はやめました、それは、決意みたいなものです。則夫だって知らなかっただろう、決意を持ったって」
「知らねえな、俺とおまえはSF小説で知り合って盛り上がった仲だったから」
「おたがい、読書家ですから」
「そんな、大それたことじゃねえよ」
「恵美子と隆一の子供だと思えば腹が立つが、ひとつの命って思えばそれは、かわいそうで愛おしいものです」
「そりゃあそうだ」
「どうするかです。隆一をどうやって懲らしめるかです。ピザの宅配に電話して、一日三回宅配させたり、コンビニ弁当を宅配させて嫌がらせしました、三日続けてやめました。公衆電話からかけました。公衆電話さがすの大変でした。懲らしめた気にならない。面白くない。怒りがおさまらない。セックス動画をみてると、男と女が気持ちよさそうに絡み合っているのを見てると、隆二と恵美子に見えるんです。もういきりたってきました。ペニスじゃありません、気持ちが。後悔してます。隆二のペニス切ったことを」
「俺に言わせりゃあ、くだらない。それでも懺悔してんなら許してやるぞ」
「たしかに、僕もそう思いました。雨が降った日のことです。バッティングセンターへ向かいました。秋だというのに蒸し暑い夕方でしたね。自分で一本持ってましたから」
「金属バット自分で買ったのか?」
「いえ、燃えないゴミの日に出してあったのを拾ったんです」
「そうだろうな、積極的だと思ったよ、敬にしては」
「バットを振り回して、汗をかきすっきりして、自動販売機の横にある椅子に座っていたとき、いつも心にある重いもの、実感としては黒くて重いものなんです。どうも、気になる。そのとき、ランニングシャツに青い短パンを穿いた隆一が自動販売機の前に立ち、ミネラルウォーターを買ってましたね。空手部でしょう、隆一に似合ってる部活だね。隆一は僕のことを石ぐらいにしか思ってませんから、自動販売機の横のベンチに座っていたことさえ、気がついていなかったでしょうね。それだから、やりやすい。腕時計を見た。午後五時。よし、早く日が暮れる秋以降にこいつを叩きのめす、と決心しました。堕胎の映像が頭を過ぎるのですね。フラッシュバックのように。初雪が降ったときです。金属バットを持って自動販売機の後ろに立っていました。隆一らしくカッコつけて白のTシャツ姿でした。寒いというのに。よけいに腹が立ちましたね。ミネラルウオーターを買って背中を隆一が見せたときです。うしろから脳天をガツンと、鈍い音がしました。すぐに隆一はミネラルウオーターを手から放り投げて前のめりに倒れましたね。もう、ここまで来たらやるしかない、と。幸いまわりの人はいなかった。目と口だけ開いた泥棒マスクみたいなものを被り、うつ伏せになった隆一の背中に馬乗りになったんです。意識朦朧としてましたね。立派な障害事件ですから、もう、後にはひけません。念のため、短パンを脱がし、隆一のペニスが見えました。皮が剥けていましたが少し皮にペニスが埋もれていました。剥けば亀頭が見える黒い皮のチンポ。自分のズボンからカッターナイフを取り出し根元へ突き刺し、これがなかなか切れないのです。軟骨のせいだと思いました。どこからどこまで軟骨なのかわかりませんでした。滅多刺ししてましたね。玉が精子をつくるから悪い、と勝手に思い袋を裂いて玉を取ってやろうと思いましたが、血が溢れてくるんですね。もう、何がペニスで何が玉なんだかわからなくなって、金属バットでペニスと玉を叩きに叩きました。一回づつです。隆一はうめき声さえ上げず白目が見えました。ひくひくと臍のところを痙攣したみたいに波打ってましたね。最後は足で股間を蹴り上げ逃げてきました」
「おお、おい、俺の股間まで痛くなったよ」則夫が肩を落としゆっくりと背中をまるめて息をしている。「それからどうした?」
「走って家まで帰ってきました。心臓の鼓動が鼓膜を震わせていましたね。まわりが見えない。脚が空回りしているみたいで走っているんだか前に進んでいるんだかわからなくなりましたね。祖母と茶の間で会ってしまいまして、『どないしたん』と祖母が目を丸くしましたね。『ペンキ、ペンキ』咄嗟にでた言葉でした。何やら雰囲気が悪く、わかるでしようね、血とペンキの識別なんて、なんぼ目が老眼だとしても。それでも、黙って自分の部屋に戻りました。トイレにいってたのでしょう。いつもは眠っている時間ですから。自分としてもこの時間、九時ですね、人目のつかないところをうろうろ歩いて。祖母が茶の間にいない時間、狙って帰ってきたのですから。運悪くばったりと会ってしまった。部屋に入っても震えがとまらず、五分おきに襲ってくるんです、ぶるぶるって。そのあと、後悔しましたね。でも、恵美子のことを考え、産道を鋏みたいなものが進んで殺害する映像を思い出して、後悔を吹き飛ばしたんです」
「そうか、そういう慰めかたもあるよな。でも犯罪は犯罪」
「隆一が入院して、学校中が大騒ぎになって。恵美子とのことも取り出さられて、それはもう、学校が爆発したみたいな騒ぎになりましたよね」
「そうだ、そうだ。そのとき、隆一のお見舞いにいってきたよ俺、親いねえ奴だったから、ふと、寂しそうな横顔見せるときがあったな、恵美子の親戚が誰かの復讐かって、怒ってたな。でも今、勃起するらしいから、よかったじゃないか」
「知ってんの、今の隆一」
「まあ、ちょっとな」
 曖昧で困ったような笑顔をみせる則夫だった。
「僕としてもちょっと、身体がビクビクしてきましたね。緊張っていうのかブルブルと寒いときに突然震えがくるみたいに」
「それでも、敬の名前がでることはなかったよな。石みたいなもんだから。誰も敬だと思わんだろう。俺もあのとき見たようなそんな気がしたから。たぶん敬だろうと思っただけ。俺でよかったよな目撃者が俺で」
「いつ警察がくるのか、担任の亀山先生が自宅にくるのか、ドキドキガクガク。歩き方もどこかぎこちなかった。そんな気がしたんだ。毎日。それでも、一週間たったら官能動画見て勃起。まいった、自分でも嫌になった自分のことが」
「射精したんか」
「しました。それはもう五回以上したときもありました。ストレスですストレス。戦争で明日知れぬ命の兵士は異常にセックスしたくなるそうじゃないですか、それですよそれ」
「そのあとたぶん一か月くらいたったころ、しきりに隆一のことを聞いてくるから、おまえが。何かおかしいな、そう思ってたんだ。それに隆一は一か月しないうちに退院して元気だったからな。隆一のペニスが切られたことより、恵美子の事件が大きかったから、ペニス事件はうやむやになったんだ。敬だって知ってるだろう。カッターナイフでペニス刺したって使い物にならなくなるとは思えないし、まあ、刺しどころが悪かったら大変なことのなっただろうが、まあ元気だったからよかったけど」
 トランクス一丁になりベッドの上で腕枕をして横になる則夫だった。欠伸をしている。「眠いなぁ」と言った。
「恵美子は学校にはいない。誰もそのことについて語ろうとしない。日が経つにつれて空気みたいになってしまった。そう何もなかったように規則正しく人々は動いている。太陽が東から登り西に沈むそれに似ていたよ。すべてはいつもと変わりない。でも恵美子を奪われた自分の気持ちは日増しに、やるせなさが身体に重く伸し掛かってきたんです。もう動けないくらいでした」自分でも声が沈んだのがわかった。
「そうか、その気持ちわかるよ。ペニス千切りたくなる気持ちもわかる。他人事かもしれんけど、あれだぞ、客観的に見て穴にペニスを入れただけのことなんだ。まあ、それだけで解決できるもんじゃないけど」
「いまこうして、話している自分は冷静になってるんだろうな。そう思う」
「そうか、隆一はその後トラック運転手になった。車好きが高じて選んだ職業らしい。コンビニで一度会ったことがある。髭ずらの顔だったな。頬はこけて。眠る暇がないってこぼしてた。まあ、ひとのことだから関心ないけどな」
「そんなもんだ、恵美子のことなんて何も考えてないんだ。死んだ子供のことだって、すべては流れてるんだ。馬鹿らしい。やっぱりすべて馬鹿らしい」
 時間の流れを目の前で見たような気がしてならなかった。出来事はすべて風になる。
「恵美子はその後どうなったのか、知らないか?」
「知らねえ、通信教育で高校を卒業したとか聞いたけどな」嬉しそうに笑いながら則夫が言う。
 何か隠している表情が見て取れる。
「卒業してからもう四年か、敬、よく順調に来たな留年とかなくて」
「僕か、高校も大学もぎりぎりセーフなんだ、どういうわけか」
「卒業して就職したら、毎日仕事だぞ」
「たぶん、もたないだろうね」
 これからどうしたらいいのか不安になる。もう卒業だ。あと半年。大学は逃げ道だった。とにかく就職はさけたくて進学した。
「あれから三年たったね。ああ、就職したくねえ」
「何言ってんだ、バカ」
「ばあちゃんにこれ以上金ださせられないしなあ」
「そりゃあそうだ。それが普通の人間だ。人間、進歩しなきゃあ、みんな苦しんでんだ。誰だって。俺だって」
 大学時代少しでもアルバイトしておくべきだった、と後悔した。人と話すことが苦痛で、則夫とばあちゃん以外は、自分のことをバカにした目で見ている。何か変なものでも見るような目で見ている。本当のことはどうなのかわからないが。聞いたこともないし。
「敬がよく、隆一のペニスをカッターナイフで切ったことが今でも信じられん。いまさら、罪滅ぼしってことにもならんしな。時効だ時効。勃起せんで射精できんくなったら大変なことになってたぞ。なんでもなくてよかったな」
「なんでもないって、何でわかるんだよ」
 心の中では不能になってほしかった。でもあれから四年も経っている。今の自分としては恵美子が立ち直っていてほしかった。
「おい、俺眠くなった。ここで寝ちゃうぞ」言いながら寝息をたてる則夫だった。
 ベッドで大の字になり熟睡したように見える則夫を横目に、床に毛布を敷き腕枕で横になることにした。部屋の灯りを消した。ジー、と耳の奥に小さな音が響いてくる。夜の音だろうと思った。静かだった。
 大学四年になると、一年生のときみたく忙しくはなかった。あいかわらず卒論に没頭していた。それ以外やることがなかったのだ。卒業後の不安と焦り、自分の場合は人とのコミュニケーション不足が祟って集団生活は不可能に思えてならなかった。日本全国、則夫だらけならば問題はないが。そんなことはありえない。
 散歩がてら恵美子の家でもあるお寺に向かって歩くことはよくしていた。いつも山門のところで立ち止まる。山門の向こう側には参道があり石段だった。また兜みたいに威勢のよい門が見える。人が歩いているところを見たことがなかった。たぶん、この奥座敷みたいなところに恵美子がいるような気がしてならなかった。
 茶色の枯葉が国道をガサガサと音を鳴らしながら集団で走っている。それは冬になりたくて急いでいるみたいだった。
 十二月になった上旬、則夫から電話があった。会社の飲み会があったらしい。会社は敬一郎の市営住宅から歩いて二十分のところだった。月に一度立ち寄る則夫だった。今日は酒を飲んでいるので、泊まるとのことだった。実社会の経験をいつも語る則夫だったが、今夜に限って最初から恵美子の話しだった。
「おい、敬、恵美子に会いにいかねえか?」
「ええ」驚いた。「なんだよ、急に、会いたいけど戸惑うじゃねえか」こいつ酔っているんじゃないかと思った。敬一郎の自室六畳間でのことだ。突然図ったように聞こえた。
 いまそんなことを言われても、会いたい気持ちはあるが、ましてまったく関係ないといえば関係ない。こちらが一方的に好きになっただけだ。それでも、自分にとっては初恋なのだ。たとえ則夫にだって言えない。誰にも言ったことはない。好きな気持ちは今でも変わりない。
「おい、敬、明日、日曜日だ。何も用事ないか?」
「ああ、別にない。どっか行くのか?」
「ちょっと俺につきあえや」白い歯を見せて笑う則夫だった。
 三月まであと四ヶ月ある。だいたいにして就職活動していない敬一郎だった。やる気もないのだ。ばぁちゃんが死んだとき、どうするのか、暇なとき考えたりした。暇なときしか考えられない自分が情けなかった。飲めない酒をコンビニで買って飲んだ。湯呑茶碗で一杯飲んだだけで顔が真っ赤になり、心臓がバクバク異常に動き出したようになる。飲めないのだ。それでも、すぐに眠れるのが嬉しく一気飲みしたりした。それでも、卒業式の日はくる。時の流れが怖くなった。
 朝からティッシュみたいな雪が降った。肩に雪がのっている。則夫が迎えにきてくれた。肩にのった雪を払うのに時間がかかった。則夫はジーンズにトレーナー、革の黒いロングコート姿だった。雪が降る日は暖かい。
「おい、敬、恵美子に会いにゆくぞ」
 突然言われても、敬一郎は口ごもった。
「年が明けたら、卒業おめでとうだ」次の言葉を押し殺すみたいに小声で話す則夫だった。
 雪が風に舞っている。地面から手が伸びたみたいな地吹雪になっている。
 いったい今になってどういうことだ。恵美子は高校の途中で姿を消したようにいなくなり、もう自分の中では終わったような人物になっていた。会いたくないのかといえばそんなことはない。会ってみたい。その気持ちに嘘はない。でも会って見たところで何になるのか。ただ苦しさが増すだけではないのか。
 国道片側二車線、いつも散歩に来ていた道。お寺が見えた。恵美子がいるらしい。山門右隣りに乗用車二十台ほど止まれる駐車場がある。駐車場入り口のすぐ左に車をとめた。
「おい、敬、会っておいたほうがいい」そう言ってから携帯電話で誰かと話をしている。
 総門を通り石段を登ると山門があった。ずいぶんと大きく厳めしい姿をしていると思った。則夫の背中を見ながら歩いた。
「はじめて見るけどでけえな、則夫」やっとお寺についたと思った。
「ここが、仏殿とかいうところだ」則夫が立ち止まり雪がうっすらと塗った巨大な瓦屋根を見ていた。
 瓦屋根の大きな仏殿。正面右横にある引き戸を開けて中に入った。
 はっきり言って凄すぎて言葉がでなかった。長い廊下を歩き灯りのついた引き戸をまた開けた。天井は高く廊下の壁には雲に乗る白いドレスみたいな服を着て長く黒い杖をを持つ黒髪の長い女性が描かれている。
 石油ストーブが二十畳ほどの中央にあった。その左右に男と女が正座していた。
 男と女と敬一郎の間に則夫が立った。
「わかるだろう、隆一と恵美子さんだ」
 隆一は板前が着るような黒の上着と下は同じニッカーズボンに似た足首がしまった服装だった。変わった服装に思えた。作務衣、この服装はたぶんそうだ。恵美子も同じ作務衣だった。
 長い黒髪を後ろで一つ縛りしている恵美子が白い歯を見せ、目を細めた。「おひさしぶりです」
「ええ、おひさしぶりです」
 高校時代話したこともないのに、こんな笑顔を向けてくるなんて驚いた。長年の友人みたいな笑顔だった。
 隆一は正座しながらやさしく目を細めて語りだした。頭は五厘刈りだった。地肌がもちろん見える。ルームライトの光が頭の頂点に写っている。
「どうも長い間ごぶさたです」正座したまま頭を下げる隆一だった。
 なにかの修行僧にでも見える。言葉使いもそれらしくなっている。ひとことひとこと、言霊みたいに聞こえるから不思議だった。耳を疑った。本当に隆一なのか。耳を澄ました。
「佐々木くんから聞きましたよ。傷害事件のことを」
「そうでしたか」
「べつに謝る必要なんてないですよ」
 正座した敬一郎と同じ目線になっている。
 青畳の藁みたいな草の香りがした。凛とした空気に包まれた。
「ごめん、思いあまってついやってしまったんだ」敬一郎は頭を下げた。
 思いあまってすることじゃない。恵美子を奪われたことへの怒りとセックスへの快感がない交ぜになってカッターナイフを持ってしまった。ペニスが許せなくなったのだ。こいつさえ、性欲がなくなればこんなに苦しくはないだろうと。開放されたくて事件をおこした。
「私は高校卒業後、トラック運転手になりました。事故をおこし、接触事故二回、ガードレールとか。追突事故、こんなもの会社が保険かけてるから、保険でなんとかなる、へのカッパ。そんな気持ちでした。会社からは、『そのうち、でかい事故をおこすぞ』と同僚からも、上司からも言われてましたが、そんなのまったく気にしてませんでしたね。それより女と別れてむしゃくしゃしてたんで、女買って給料前借して、会社の専務が伯父さんでしたから、まあ自分も偉い気分になって自由に振舞ってました。交差点で信号無視。悪いことにドライブレコーダーがトラックキャビンについてますから、フロントガラス前の光景が全部録画されてまして、信号無視したのは自分のほうでした。相手の側面に衝突。軽自動車でした。重症でした。どん、というか重い衝撃。ドーン、というような。またやってしまった。結局、切られてしまった。失業。ただ、この相手の男性だったのですが、重症でした。いま考えてみると死ななくてよかった。この男性のところに会社の上司と謝罪にいったんだ。奥さんと子供二人いてね。夫婦とも軽い知的障害があって、中学を卒業後、タオル工場で共稼ぎ、夫婦とも両親がいない。話しを聞いているうちに、学校時代いじめもあったみたいで、幸うすい人生みたいで、ただひたすら人生を歩いているみたいで、そのとき、何で自分はこのひとにぶつかったんだろうと。不思議と胸にこみ上げるものがあった。わかるんですよ、私も両親がいない、養護施設にいましたから。気持ちのなかではいつも荒れてましたから。それから、言葉が出なくなりましたね。アパートに帰って、今後のことを考えたのです。仕事はない、どうしょうか。狭いトラック業界ですからこの街は。事故ばかり起こしている人間なんて雇ってくれないし。まして、一度面接にいった運輸会社は、前の会社に電話をしてどんな人間なのか聞くみたいなのです。配車係の忠雄さん、太って脂が顔に塗ってあるみたいにぎらぎらしたタイプでした。私のことをよく思ってませんでしたから、たぶん、事故をおこしてばかりいる不良みたいに言ったんでしょうね。予想ですよあくまでも。でも、事実ですからしかたありません。アパートの家賃が払えなくなったのです。それで、高校卒業までいた施設に金を借りにいったのです。三か月分貸してくれました。施設の先生が個人的に貸してくれたんです。ありがたかった。とにもかくにも就職です。あっという間に三か月。やるせない気持ちもあって、毎日コンビニで酒を買って飲んでました。眠れるんです、酔っ払って、そのうち酒浸りの毎日でした。不安を掻き消すために飲むんです。就職活動しているより、飲んでる時間のほうが多い。いよいよ、生活が立ち行かなくなってしまった。それで、ふと、思い出したことが、恵美子のことだったんです。腹が減ってよれよれになりながらこのお寺にきたんです。高校時代の友だちに金を借りにいったのですが、『ないよ、悪い』と謝られて、演技しているのがわかる。目は口ほどに物をいうとはこのことで、上手な断り方だした。それも人生の一コマだと思えたのです。腹が減って余分な力や思考がなくなったんでしょうね。素直にすべてが見えるようになったというか。ちょうど、恵美子さんの母親が寺に帰ってきたときでした。車で。恵美子さんの同級生なんですが、と言いました。一食だけ飯食わしてくださいと。寒い今日の夜みたいなときでした。星が左右に、きたきらと、刃物みたいに光ってました。鋭く刺すように輝いていた。いまでもはっきり覚えています。命ぎりぎりの状態でしたから。恵美子さんがいたから、食事にありつけたのです。『どうしたの?』これが玄関で逢ったときの恵美子さんの第一声でした。『あら、恵美子の同級生とか言ってたけど』恵美子により同級生であることが証明されたんです。でも恐ろしい気持ちもありました。あれです。子供を産み落とした事件のことです。湯気がでたご飯なんて卒業以来はじめてみたような気がしました。ほんわり湯気が立ちのぼりゆらゆらと。それだけでおいしそうでした。味噌汁、肉、ステーキでしたね、キャベツの千切り。食べ終わったあと、あの忌まわしい事件を話したのです。食べてる間、恵美子と恵美子の母が別の部屋に行ったのを見てましたから、あの事件の男って話していたのでしょう。別の部屋で。こっちは腹いっぱい、生きてるって気持ち、大満足でした。ただ心配なのは、時間がたてばまた腹が減ります。恵美子さんと母親の前で、『もし、よかったら恵美子さんと付き合いたいのですが』そう言ったのです。母親は口をまるく開けていました。あの井上隆一が、と思ったのでしょう。私にはそう見えました。『付き合いますか』って恵美子さんが聞いたのです。普通ならばそんなこと言いませんよ。母親も黙って下を向いていました。たぶん、あの事件以来、恵美子さんは大変苦労したのではないでしょうか。通信教育で高校を卒業したらしいのです。世間の目もあったでしょう。それから、私はとりあえず、恵美子さんと付き合うことになり、アルバイトに精をだすことになったのです。噂というものはこの街を離れない限り何年も続くものなのです。煙草も酒もやめました。なんとかしょうと思ったのでしょう。やめたからといって何が変わるわけではないのです。ただ、何かを変えようと思ったそれだけです。恵美子は思った通り外へ出たがりませんでした。人の目が気になっていたのでしょう。昼間は人の多いデパートとかは行きたがらなかった。私もそれは十分承知していましたし、別に行かなくともよかったのです。恵美子と付き合っていて感じたことは、自分と同じ、いや、それ以上に苦しんでいたことです。一日一日を、一時間を見据える視線と動作に見えました。達観とかいいますがそんな言葉で決めつけられません。少しの動作にも完結があるとでもいうのか。話すときも言葉少なでしたけど、ご飯を食べるときも歩くときもすべて、心置きなく生きているというのか。産み落とした子供のことは一度も聞いたことがありません。寂しい、悲しいとは、一度も聞いたことがありません。夏の日に海へ行きました。車で一時間のところにある大津海岸です。杉林に囲まれた細い国道を運転しました。突然ひらけた景色、光が一斉に車内に入り込み違う世界に入り込んだように思えたのです。どこまでも続く海岸線、白い波だけがその線を乱していました。水平線のところには夏色の客船かタンカーかはわかりませんが、二隻並んでいたのです。そのとき、恵美子の横顔を見ました。はじめて笑ったのです。恵美子の横顔の向こう側には、宝石に似た光が海面に飛び跳ねていました。やっと、昔の、高校時代の恵美子に見えたのです。『今じゃなくていいんだけど、結婚してくれませんか』そう言ったのです。それ以外に道がないような気がして。生きていく術が。私が生きてゆくことにおいてこれが一番、幸せ以上のことのように思えたのです。好きだからとか、どうだとかということではなく、罪滅ぼしも少しはあったと思いますが、それ以上の何かですね。答えはあるような気がしたのです。結婚しなくとも、恵美子さんのために生きようと、そんなことを考えたのです。恵美子さんの母の勧めもあって、翌年春、仏教の学校へ入学することになったのです」
 紫色の作務衣を着た隆一の意味がよくわかった。ずいぶんと変わったことに驚いた。
ストーブを挟んで正対して正座している恵美子がずっと下を向いて聞いていた。長い髪を後ろで一つ縛り、頬には縦に線が入っているみたいに痩せている。細く長い眉毛、睫は長く高校のときそのままに、時折、敬一郎と則夫の方を見た。潤いのある瞳は、あのときのままだった。恵美子が立って背中を見せて障子を開けた。
「あら、雪が、こんなに」
 縁側から見える松の木が、枝を弾いて雪が散った。
「今日、泊まってゆきますか?」隆一に声をかけられた。
「いや、帰りますよ」則夫が答える。
「聞き忘れましたが、田崎さん、大学へいかれたそうで」恵美子が問う。
「三月卒業です」
「そうですか。その顔は就職が決まってますね。私みたく苦行ではなく明るく楽しい生活が待っていますね」隆一が敬一郎の肩に手を添えた。
「そうです。こいつ、市営住宅を出てマンションでも借りて、バリバリ彼女つくってバラ色の人生ですよ」則夫に背中を叩かれた。
「また来ます。井上さんの妻よりきれいな女性つれてきますよ」なぜか、大きな声で言ってしまった。
「よく言った」則夫が笑顔をみせる。
 雪が降り積もっている。庭のかたちそのままに。

                   (了)

春がきた ©たらたら

執筆の狙い

これ、小説でしょうか。

たらたら

119.10.227.27

感想と意見

偏差値45

素晴らしく良く書けていると思う。
読みやすい。分かりやすい。
キャラの心理変化も理解できる。

ただ便宜的に章や節で区切ってくれると読みやすい。
なぜなら、いっぺんに読むには少々時間がかかるからね。

批判や注文をつけるのは、簡単だけれど、
それをしてしまうとバランスが崩れてしまうので、
このままで良いと思う。
あえて言えば、背景画を少し入れてもいいのかな、と思う。

しかし、面白いか? と言えば、個人的な好みのジャンルではないで
厳しい評価になる。
それでも充分、楽しめる作品に仕上がっていると思います。

2017-10-06 11:30

219.182.80.182

カジ・りん坊

『これ、小説でしょうか』ということですが、小説であれなんであれ面白ければいいと思うのですが、年寄りの小便のようにダラダラダラダラしていて切れが悪いと思うし、故に面白さを感じませんでした。

2017-10-06 17:38

124.110.104.4

たらたら

偏差値45様

読んでいただきありがとうございます。勢いで書いたものですので、

書きたいことがあったのですが、気がついたらこんな作品に。

>章や節で区切ってくれると読みやすい

そうでしょうね。納得。

2017-10-06 17:49

219.160.114.218

たらたら

カジ・りん坊様

読んでいただきありがとうございます。

>年寄りの小便のようにダラダラダラダラしていて切れが悪いと思うし、故に面白さを感じませんでした。

すいませんでした。ごめん。

2017-10-06 17:51

219.160.114.218

読了。

隆一の心理描写は、もっと長く書いたほうが重みがでたと思う。変化が突然と読めなくもない。
内容は、堕胎描写があるので、ちょっとひいてしまうこともあった。

スピード感もあり、読ませられた。よくできていると思う。

2017-10-09 09:00

219.160.114.218

東海道

太宰、町田、の作風みたいだ。最後が、平和に終わることに、好感がもてた。

ここでは、めずらしい作品。

好みで、会話体が好きなんだよね。

2017-10-10 08:44

219.160.114.218

三田

拝読いたしました。
個人的には割合好きな文体、好みのストーリー展開でした。オチはちょっと納得いきませんでしたが全体としてするすると読めました。

前のコメントでも言及されていた、地の文をもっと、というのは私も感じた点でありました。
会話の内容、登場人物の感情の遷移、明らかにされる真実が衝撃的であるからこそ、それと対比するように平和的な夕方の、ごく平凡な風景を挟み込んでいればもっと鮮やかに犯行の生々しさが伝わったかもしれません。
犯行の季節と現在の季節を統一して、なにかひとつ一貫して描かれる季節の風物(本作であれば反抗当時の雪でしょうか)を設定してみても良いかなと思いました。
雪がしんしん降っている。ベランダからびちゃびちゃと音がするからぼた雪に変わったのかもしれない。雪に風が加わって、まるで嵐のようだ。これだけで、心理描写になるかと。

オチに納得いかなかったというのは、ぺニスをメッタ刺しにした恋敵が、ぺニスをメッタ刺しにしたいと思うほど恋い焦がれていたヒロインと復縁していて、果たして主人公の狂気は復活しなかったのか?という点がひとつ。
もうひとつは、妊娠させられ、トイレでその子を産み殺して、人生めちゃくちゃになったヒロインが、そうホイホイと元凶である男と復縁するか?という点です。そう、ヒロインがミステリアスすぎて、オチを不可解に思ってしまいました。ヒロインにも、なにかひとつ、暴露すべきことがあって良かったのではないでしょうか。人生めちゃくちゃにされた男と復縁するだけの、秘密が。

辛口ばっかり続きましたが、再度申し上げます通り、私こういうお話、ストーリー展開大好きです。主人公が狂気じみてて最高です。雪のなかでぺニスメッタ刺し、しかも切り取ろうと思ったけど軟骨が固くて無理だった、さらには今そいつは元気に勃起してかつ昔の恋人と仲直りしてる。このあと主人公がどんな狂気をさらすのか、続きが気になります。

興味深い作品でした。ありがとうございます。長々と失礼しました。

2017-10-11 02:11

175.177.4.10

たらたら

三田さま

読んでいただきありがとう。

三田さまであれば、隆一と恵美子のねっとり描写がでてくるでしょう。ねっとりです。それは人間のありのままの姿であり、そのシーンを入れることにより読後感も違ってくると思います。

三田さま、「犯す」というテーマで一筆、書いてくださいませ。

辛口、よかったです。ありがとう。地の文の描写ですね。それに、話しの流れが不自然。そうだよなぁ。恵美子、隆一・・・。

勉強になります。

納得のゆく辛口でした。

2017-10-11 20:27

119.10.227.27

たらたら

Aさま

ありがとう。感謝です。

2017-10-11 20:29

119.10.227.27

たらたら

東海道さま

>好みで、会話体が好きなんだよね。

ぼくもそうなのです。

ありがとう。

2017-10-11 20:30

119.10.227.27

ポキ星人

 佐々木則夫は、なでしこジャパンが国民栄誉賞もらったときの監督です。登場人物の名は一応検索しておいたほうがよいです。
 
 作者が書きたいことを書いたのだろうと感じられますから、そういう意味では悪くはないです。それが作者に取って大事なことであれば周りがどう言おうが気にする必要はないと思います(ただし、それを読者が受け入れるかは別問題ですが)。
 
 全般に気になるのは、誰が何をどこまで知っているのか、はっきりしないところです。
 隆一が恵美子が産み落とした子の父であることを、恵美子の母は知っているのか(最後の隆一のセリフの>あの忌まわしい事件 というのは自身が被害者になった傷害事件のことか、恵美子を妊娠させた件なのか、どっちでしょうか)、知っているならいるで、知らないなら知らないで、それを前提にしてもう少し書くことがあるように思います。
 田崎敬一郎が傷害事件の犯人であることを隆一が(うすうすでも)知っているのかという問題もあります。知っているならそれを前提とした隆一の言動が書かれたほうがよいですし、知らないなら敬一郎が隆一に告白する(かそのことについて葛藤する)ことが書かれたほうがよいです。
 

2017-10-12 01:38

180.12.49.217

たらたら

ポキ星人さま

>佐々木則夫は、なでしこジャパンが国民栄誉賞もらったときの監督です

そうですね。失礼です。反省です。(汗)

>全般に気になるのは、誰が何をどこまで知っているのか、はっきりしないところです

そうなんです。やっぱり、自然に流れていないんだなぁ。会話で書くのは難しんだなぁ、反省です。ありがとうございました。

2017-10-12 05:56

119.10.227.27

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