作家でごはん!鍛練場

『天下一脱糞会』

昼野陽平著

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 暗闇に閉ざされた畑の畦道で、鈍い炎が燃えているように、巨人である脱糞糞之介(だっぷんくそのすけ)の肩の肉が、白く揺れていた。服に血がつかないように上半身を裸にしていたのだった。皆がその肉の揺らめくような後ろ姿を眺めて、恐怖の混じったカフェオレみたいな笑いを笑っていた。彼は女を食っていた。妙齢の女を。闇の中で白く光って見える女体。彼は生きたままに、頭からむさぼりくっていたのだった。片手に女を掴み、もう片方では自身の性器をしごいていた。そして女の肉を骨もろともバキバキと音させて咀嚼し、すべてを飲み込んだと同時に射精をした。巨人の精液は2リットルほどもあり、派手に赤土の地面を散った。

 《脱糞族》とは夜な夜な村に現れ、おもに村人がしては困る場所に脱糞をする男たちであった。畑や玄関、屋根や道路などに脱糞するのであった。便は大量のものであった。彼らは大量の便をするために大量の食物を食うのである。ところで低コストで大量に食べられ栄養も豊富でそこそこ美味な食物といえば、もちろん人間である。低コストではあるがハイリスクである。しかし《脱糞族》はそれのスリルを楽しんでいたのであった。家畜をくっても、それも盗んで食っても、人間を食うほどのスリルはない。それに女を食うのは性的にも興奮するのであった。
  脱糞族のなかでも脱糞糞之介と一本糞太郎(いっぽんぐそたろう)の便はとりわけ大量であった。しばしば村人は山のように積み上がった濃い茶色の便の向こうから、朝日の昇る奇観に遭遇した。

 男の話ばかりしていてもむさ苦しいので、ここらで女の話をしよう。
 村には頭のおかしい処女であり少女がいた。16歳の少女であった。名前を狂咲狂子(くるいざききょうこ)といった。彼女は頭がおかしかったが貞操観念は人並みにあった。しかし頭のおかしい人間らしく、処女はもっとも多く脱糞する男に捧げると決めていた。しかし性に対する好奇心は旺盛で、日頃からレズ・プレイを愉しんでいた。馬鹿。彼女は凡野庸子というじゃっかん、知恵遅れの同い年の少女を、性的な奴隷としていた。狂咲狂子はペニスバンドを腰に装着し、卑猥な赤さのそれで凡野庸子が14歳のころに処女膜を貫いた。彼女の股から鮮血が流れるのを見て「うわー、処女喪失ってこんな感じなんだ!」と思った。いつかは私も、もっとも脱糞する人間に捧げるんだ! と思った。馬鹿。そしてそれから二年経ったいまも狂咲狂子は彼女を性的なおもちゃにしていた。とくにハード・ペッティングなどをした。嬌声をあげて「イク」彼女に嫉妬心を覚え、自分の股も刺激させるように命じ、頭の弱い凡野庸子は言われるがままにピンク色の舌でピンク色の女性器を刺激させるなどして、自分もまた「イク」ことを知った。また彼女らはディープキスなどもよくしていた。真っ赤でぬるぬるした舌と舌とを、両生類の交尾のように、ぬらぬらと絡ませた。

 申し訳ないがここでまた男なんかの話をしよう。あなたがもし男だとして同性愛に目覚めるかもしれず、異性を愛する一方で同性もまた性的に愛することになるのは、異性だけ愛する人間よりも、より豊かな人生を生きることであろう。この場合、同性愛者への差別などは、より愛を燃え上がらせるスパイスにでもなるだろう。そもそも同性愛を差別する人間は「キモいから」とかいう浅い動機しか持っていないのだ。信じてもいないのにこういう時だけ神の存在を持ちだして「神の意思に反するから」など。
 脱糞糞之介と一本糞太郎は共に信じられないような脱糞をする巨人だが、彼らのどちらがより多く脱糞するか、という疑問があった。競争心ではなく、単純な疑問であったのだ。そこで彼らは、実際にどちらが多く脱糞をするか試すことにした。そしてかつて老人がゲートボールに使っていた空き地を借りて「天下一脱糞会」を開くことにした。

 晴天であった。じゃっかんの雲があったが晴天であった。馬鹿。そらの青色は目が痛くなるほどに輝いていた。まるで処女のパンツのようだった。
 老人がゲートボールにかつて使っていた空き地は、私の祖父の土地だった。「天下一脱糞会」の主催者は私に利用の許可をもらいに来た。どうでもいい二足三文の土地が糞まみれになるのは、私にとって愉快なことであったので、快諾した。
 晴天であった。まるで電車にはねられてバラバラになった身体を覆う青いビニールシートのようだった。空の下にはベニヤでつくられた「天下一脱糞会」の糞色でぬられた看板があった。ひょっとしたら本当に糞で塗られたのかもしれないと私は思った。ふと私は自殺をしたくなった。理由はなくそういう気分になったのだった。私は自宅に帰り、ロフトの柵にロープを垂らして輪をつくった。それを眺めながら、私は「死ねば無になる」と考えた。では生の世界は果たして有であるか? いや生もまた無である。などと考えた。そして輪の中に首を入れてぶら下がった。

 白いキャンバスが張られた舞台の上にはまだ脱糞糞之介と一本糞太郎は現れてなかった。
 観客席には平日なので暇人ばかりが集まっていた。身体に奇形があって働けない人間が多かった。背中から足が生えているもの、全身の皮膚が角質化していて珊瑚のようになっているもの、双頭のもの、四肢がねじれているもの、手足がないもの、などなどであった。また自称アーティストのニート、来世はフジツボやヒザラガイになりたいと願っている怠け者、定年退職した呆けかかった老人、うだつの上がらないチンピラ(派手なアロハシャツを着ている)などなどもいた。そしてわざわざ学校を休んできた狂咲狂子や一緒に連れてこられた凡野庸子もいた。凡野庸子の知恵おくれ特有の濁った目とは対照的に、狂咲狂子の目はキラキラと濡れて、光り輝いていた。私は彼女の目ほど美しいものを見たことがない。ああ、私は死んだことになっていたのだったが、うっかり出てきてしまった。まだ現世に未練があるのだろうか? 彼女の目があまりに美しかったので……。
 彼女らは昨晩、狂咲狂子の家でシックスナインをし、彼女は「どっちが勝つと思う? あたしは勝った方に処女を捧げるわ」などと話していた。言い忘れていたが狂咲狂子は大変な美人であったのだ。どのような美人であるかは、読者諸兄らそれぞれの理想とする美人を思い浮かべてほしい。それが狂咲狂子である。

 やがて観客席に歓声が上がった。舞台に脱糞糞之介と一本糞太郎が現れたのであった。彼らの目は互いに好奇の目で覗き合うように眺めあっていた。果たしてどちらが多く脱糞するだろう? 青空の下で、巨人が二人並んでいる様相はなかなかの壮観であった
  審判は蛭野淫平(ひるのいんぺい)という36歳の童貞がしていた。彼はついこないだまで持病の統合失調症の陰性症状に苦しんでいたがさいきんは安定期に入り愉快な日々を過ごしていて機嫌が良かった。世界は薔薇色--それもピンク色の薔薇色--だと何度も自殺未遂した彼は言った。
 彼は元気を振り絞って「皆さんお待たせしました、これから天下一脱糞会を開催いたします!」とマイクを持って言った。
「まず最初にどちらが先に脱糞するか、向精神薬の裏表で決めます。そして脱糞が終わったらどちら多く脱糞したか測定し、勝敗をします。勝った方には特に賞はない……いや、あったありました、観客席におられる狂い咲きさんの処女がささげられます。良かったですね。私もいっぱい脱糞して童貞を捨てたかったです。しかしご覧のように貧しい身体をしているの望めません。残念でした」
 観客席にいる観衆はその言葉を笑った。狂咲狂子は自らで賞品になるように主催者に申し込んだのだった。

 そうして「天下一脱糞会」が始まったのであった。
 蛭野淫平は空高く向精神薬を投げた。地面におち何か文字がある面が上になり
「始めは一本糞太郎さんです。どうぞ大量の脱糞を」
 と言った。
 一本糞太郎はズボンとパンツを脱ぎ、黄色い性器を露出した。すさまじいほど巨大な性器で、それはくるぶしの辺りまで垂れており亀頭には般若の入墨があった。そして一本糞太郎はその場にしゃがみ込み、脱糞を始めた。それは次のようなものであった。
 ビリいいいぶりぶりぶりいぷしゃああああああげりげりげりげりいいいいぶすうううううううべちゃべちゃべちゃあああああああああああビリビリビリいいいいいいいいいいいいぷしゅぷしゅううううううううううううううびびびびびびいいいいいいいいいいぷすぷすぷすううううううううううう!
 以上のような脱糞をし白いキャンバス地の舞台に糞の山を作った。それは蛭野淫平の背丈より高いものであり、また一本糞太郎の背丈より高いものであった。彼の身体のいったいどこからそのような大量の糞が出てくるのか、誰もが不思議に思った。
「凄まじい脱糞でした! 私はこのような大量の脱糞をみたことはありません。ちょっと自分の目が信じがたいです。さすがの脱糞糞之介さんもこれほどの脱糞は不可能ではないでしょうか。では脱糞糞之介さん、お願いします!」
 蛭野はそう言って脱糞を促した。脱糞糞之介はやはりズボンとパンツを下ろした。その性器が巨大であるのは一本糞太郎と同じであったが、彼の性器は二股にさけていた。観客席の観衆はそれを見て沈黙し、唾を呑んだ。
 やがて脱糞糞之介はその場にしゃがみ込み脱糞を始めた。それは次のようなものだった。
 スースースースーばぶりぶりぶりぶりいいいいいいいいびしゃああああびりびりびりいいいいいいいいいいい!
 そのうちに脱糞糞之介の身体が宙を浮き始めた。信じられないことに、かれは脱糞の圧力で宙を浮いたのだった。宙空に浮かんだかれはやがて空を自由に飛翔し、すさまじい糞を排泄しながらどこかへ飛んで行ったのだった。それは地球を何周も何周も回ったのであった。
 やがて彼は会場に戻ってきた。勝敗は明らかであった。蛭野淫平は「脱糞糞之介さんの勝ちです!おめでとうございます! と言った。
「では賞品の狂咲狂子さんの処女を差し上げます」
 そういうと狂咲狂子が歓喜の弾ける表情をうかべて舞台の上に上がり
「脱糞さん大好き! その二股の性器で、私の前門と後門とを、同時に貫いて!」
 と言って彼に抱きついた。
 すると脱糞糞之介は「腹が減った」と言って、彼女をボリボリと頭から食ったのであった。まず頭部をガブリと食われバキバキと頭蓋を噛み砕かれた。脱糞の口内から溢れて床におちる鮮血、つぎつぎと身体を食われてだんだんと小さくなっていく狂咲狂子。やがて狂咲狂子のすべてが脱糞糞之介の胃袋に収まり、彼は射精をした。

天下一脱糞会 ©昼野陽平

執筆の狙い

ありがとうございます。
よろしくお願いします。

昼野陽平

60.71.229.31

感想と意見

偏差値45

漫画太郎の作品を連想しますね。
進撃の巨人の要素もあって楽しいです。
その発想力の豊かさは大事だと思います。
なかなか小説で笑いを取る、というのは、難易度が高いと思っているので、
良い勉強になりました。

>腰に装着し、卑猥な赤さの
ちょっとしっくり来ないです。

>それは蛭野淫平の背丈より高いものであり、また一本糞太郎の背丈より高いものであった。
彼の身体のいったいどこからそのような大量の糞が出てくるのか、誰もが不思議に思った。

ここは一番、笑わせていただきましたw

最後に狂咲狂子が食べられてしまう、というオチも素晴らしいです。

精子の量から巨人は相当の大きさですよね。計算したら、人間の重さが1000倍違うので、
イメージ的にはナガスクジラの5倍です。糞の量はおそらく2トン程です。
そうやって計算するのも、また楽しからずやです。

2017-10-05 21:18

219.182.80.182

たらたら

おもしろい!

脱糞男とちびロケットマンの戦いを書いたら面白いと思う。書けるよ、昼野様なら。

朝鮮半島を脱糞で解決し、金一族を食し、射精する物語。

最後は射精で。

笑えた!

2017-10-06 10:06

219.160.114.218

叶こうえ

拝読しました。

 また下ネタかあと思って読み始めて、やばい面白い……となり、所々で笑ってしまった。
 実は昼野様の作品、けっこう読んでいたりします。初めてコメントしました。

 脱糞族ってネーミングがいいし、何気に冒頭で女を食べる伏線張ってるんだなあとか。
 人称が一人称なのに神視点で様になってるのも上手いな、と思いました。
 脱糞で宙に浮く展開は面白いもののアニメ的というか新しさはないなと思いました。が、オチは良かったです。

 何物にも囚われないような作者の発想力を感じました。

2017-10-06 13:19

114.149.176.233

昼野陽平

偏差値45さん

感想をありがとうございます。
漫画太郎は小学生のころ読んでいろいろ衝撃でした。こんなの出版していいんだ……とか。
進撃の巨人は興味あるのですがまだ読んでないです。
卑猥な赤さの、というところはしっくりこないすね……もっといい表現を考えなければならない箇所でした
オチありがとうございます。
笑っていただいたということで大変はげみになります。
ありがとうございました。

2017-10-07 16:26

60.71.229.31

昼野陽平

たらたらさん

感想をありがとうございます。
おもしろいとのお言葉、励みになります。
社会的な要素を取り入れてみるのもおもしろいかもですね。そういうのはやったことがないですし。
ありがとうございました。

2017-10-07 16:31

60.71.229.31

昼野陽平

叶こうえさん

感想をありがとうございます。
また下ネタですね。自分でも閉口してきました……。
けっこう読んでいたとのお言葉嬉しいです。
脱糞で宙に浮くというのは自分でもちょっとどうかなと思っているところです。でもなんか他にぱっとしたアイデアも出ず……という感じです。
とても励みになる感想でした。
ありがとうございました。

2017-10-07 16:37

60.71.229.31

言うことなし!

褒め言葉です。

2017-10-09 09:04

219.160.114.218

昼野陽平

Aさん

ありがとうございます><

2017-10-09 17:19

60.71.229.31

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