作家でごはん!鍛練場

『オセロ』

美羽著

まず最初に。空白の開け方ってどうするんですか…前回同様空いてません。ごめんなさい。

正義と悪は一緒なんだなぁっていうのを伝えたかったです。

二人の少女が部屋に入る。ことを決めるときはいつもこの二人揃い、この部屋に入る。
片方の少女はウエディングドレスのような真っ白なワンピース、歩くたびにコツコツと軽い音がなる白い靴。アルビノのような真っ白で綺麗な長い髪。
もう片方の少女は暗黒をイメージするような真っ黒なワンピース、歩くたびにカツカツ鋭い音がなる黒い靴。大和撫子以上に美しい黒髪。
大まかな相違点をあげたが、この2人はどこか似ている。目鼻立ちとか、独特な雰囲気が双子のようにそっくりだ。

「…またクロナとやらなきゃいけないのね」

白い少女は形のいい眉を少し歪ませ、億劫そうに席に着く。足を揃えて背筋を伸ばし、同じポーズしかできない人形のように座る。
それとは反対にクロナと呼ばれた黒い少女は気だるそうに赤い唇を歪ませ、足で椅子を蹴りドカっと席に着く。

「アタシもシロナとはもう二度と会いたくねぇよ」

「仕方ないでしょう、主が不安定なんだもの。クロナせいでね」

白い少女はシロナ、と呼ばれた。
黒い少女はクロナ、と呼ばれた。
似ているようで似ていない二人がガラスのテーブルを挟んで座りあう。
血にも似た赤い革とシックな茶色でできた高価そうな椅子に腰をかけている2人。片方は足を揃え行儀よく、もう片方は足を組み行儀悪く。
真ん中のガラスでできた冷たいテーブルの上には、オセロがポツンと置いてあった。

「チッ…じゃあ今日もオセロで決めるんだな?」

「そうね。それがここでの決まりだから」

そう言うとシロナは白石に手を伸ばそうとする。その手をクロナが掴んだ。掴む力が強く、シロナのポーカーフェイスが一瞬だけ痛みと驚きで崩れる。ギリ、と骨が軋むような感覚がした。

「アンタ、今までアタシに何勝した?」

「…十六勝よ。貴方は私に一度も勝ったことがない。それがどうしたの?」

シロナは睨んでも少しも手の力は緩まない。もう片方の手で反撃してもよかったが反撃したところでいい気持ちはしない。
クロナはニヤリと意地の悪い笑みを浮かべてる。

「今日はアンタに負けないから」

「そう。じゃあ負けないように頑張るわ」

一瞬手が緩んだ隙に振り払い、白石をもぎ取る。クロナはケタケタと不気味に笑いながら黒石をとった。
クロナが中心に黒石を二つ並べる。
シロナも続けて白石を二つ並べる。
白石と黒石が対になるように並べられ、もうじき勝負が始まるのを物語った。

「じゃあ、始めましょうか」




パチン、と盤面と白と黒の石ぶつかる乾いた音が鳴り続ける。次第に緑色の盤面が白へ覆われて行く。未だ序盤だか、次々と黒色は白に飲み込まれて行く。

「さっきの言葉、撤回しとく?」

シロナが勝ち誇ったように笑う。側面を次々に奪う。
一方クロナはゆっくりと追い込まれていく。けれど表情に焦りも怒りもない。ただ勝負を楽しんでいる悪い子供のような笑みを浮かべている。

「いいや、撤回しないね。全て筋書き通りに事が進んでいると思っている時こそ1番落とし穴に落としやすい」

「あら、そう。ならもっと気を引き締めたほうがいいわね」

シロナがパチンと端に白石を置いた瞬間、クロナがすぐ隣のマスに黒石を置いた。横だけでなく、縦、斜めと一気に覆していく。
そのあっという間の出来事にシロナは目を白黒とさせる。

「アタシが本能でクロナが理性。おわかり?アンタが守ろうとしてんのは主人ではなく自分自身」

シロナの心臓を冷たいナイフで突き刺された感覚。汗が市松模様の床の上に落ちる。黒の部分にぴちゃんとミルククラウンの形をした液体が落ちる。
少しずつ見えないものが、見ようとしないものが形付いて、色づいていく。

「…何が言いたいの?」

「アハハッ!図星?」

腹を抱えケタケタと笑い続けるクロナを睨む。バカにされているようで腹がたつ。胸のあたりにモヤがかかったような不愉快。喉に熱い鉛を押し込められたような苦しさ。身を焦がすような怒りの感覚。その感覚をどうにか押し殺しそっと白石を置く。怒りで震え、指先が周りの石にぶつかって少しズレる。

「今日でアンタとオセロするのはもうおしまい。だから、最後ぐらいはおしゃべりでもしようと思って」

「…つまり貴女は心理戦にしようということね」

シロナの質問には答えず、パチッと置く。白を黒に返すの繰り返し。

「…私は正しい。私は理論、法律、合理性…全ての道徳的に正しい。言うなれば正義よ」

「アタシが正しい。アタシこそが正義だ。主人を思うならやりたいことやらせるべきた。ちっぽけな枠に全てに当てはめんな」

「やっていいこととダメなことがある。その為に私ー理性ーがいるんでしょう?」

「人の視野は狭い。やりたいことをやりたいときにする。それがアタシー本能ーだ」

だんだん二人の声色が低くなる。
シロナはだんだんと怒りが積み重なっていく。
窓のない部屋。壁というものはないように思える。広そうで、息の詰まる密室。白と黒の床がどこまでも伸びていて、奥が霧にかかったような部屋。
その中で繰り返される軽い音。黒と白が奪い合い、揺らめぎ合う。

「二つの正義があるのなら、どちらかが敗者になる。アタシが勝者でアンタが敗者。正義は仲良しこよしができないのさ」

「敗者こそ悪、確かにそうね。けれど一般世間では貴女が悪よ」

「アタシは主人の正義であればなんでもいい。周りなんて二の次、いや五の次ぐらいだな」

「貴女は自分勝手ね」

「それが本能さ」

「ねぇシロナ、全部アタシに身を委ねて」

パチンと最後の角に黒石が置かれる。
シロナは、気づかなかった。怒りで頭が回らなかった。縦、横、斜めに黒いラインが入る。
六十四マス、全て埋まった。
白が三十二枚、黒も三十二枚。一瞬黒に飲み込まれたと思ったが、白が虫食いのように点々と置かれていた。

「…え?ひ、引き分け…?」

目を見開き交互に見つめる。何か嫌な予感がする。心臓に大量の血液が送り来れる。

「アタシは勝ち負けなんてどうでもよかった。理性という蓋が取れればなんでもよかった」

シロナは立っていられなくなった。敗北感と、不安と、ありとあらゆる私ー理性ーが否定されたことにより膝が笑う。

「ね、シロナの全てをアタシに頂戴?」

世界が壊れた。違う。シロナだけが宙に浮く感覚。そして、地に堕ちる感覚。ふわりと生暖かい風がまとわりつくような、気持ちの悪い不快感。
クロナは笑っていた。悪魔が笑う。違う、天使だ。天使が優しく微笑んでいる。クロナが手を伸ばした。その手をシロナは掴んだ。敗者は無意識に、勝者にすがりついた。二つの正義のうち、一つの正義は悪となった。本能にすがりついて、楽になりたかった。
クロナとシロナの手が絡み合う。白い服と黒い服が混ざる。その姿は切っても切り離せないオセロの石のよう。




とある十六歳の少女は数分前まで万引きをしようとしていた。学校の帰り道から遠く外れたショッピングモールのとある本屋。表紙が可愛い単行本を盗もうとした。けれど、理性が少し働いたのか、本能が怠けたのか実行するまでには至らなかった。
その少女は囚人服という名のお嬢様学校の制服を着た。街を歩けば誰もが振り返る黒いワンピースに白いリボン。
罰という名の勉強や習い事を強いられ、心休まる時間すらない。
監獄という家に戻れば厳しい父に教育される。厳しい教育で父の理想の形に無理やり当てはめさせられる。
少女は、ただ釈放を待っている。自由を待ち望んだ。

「あぁ…私、早く自由になりたい」

単行本を適当な本棚にしまい本屋を出る。次こそ犯罪に手を染めるだろう。冷え切った心が、本能が笑う。もう理性なんて彼女にあるのだろうか。
彼女は脱獄する。自由を求め、彼女は鳥籠の鍵を壊し外へ羽ばたく。

「あぁ、そうだ。次アタシが万引きすればあのジジイも諦める…アハハッ!楽しみだなぁ」

黒い髪と白い肌。宝石のような綺麗な瞳。
本能に溺れる者はこの世にはたくさんいる。
彼女は、本能そのもの。
彼女は獣に近くなった人の一人。
ただ限りなく、黒に近いオセロ。

オセロ ©美羽

執筆の狙い

まず最初に。空白の開け方ってどうするんですか…前回同様空いてません。ごめんなさい。

正義と悪は一緒なんだなぁっていうのを伝えたかったです。

美羽

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感想と意見

則竹直樹

キャラのネーミングセンスがシンプルなのにいい!
オセロっていう世界には白と黒しか存在していないからですよね? 結構好きです。この感じ。

>空白の開け方ってどうするんですか
簡単に説明します。下は例です。適当に書いたので内容は無視でシクヨロ。

 僕は君に惹かれてしまった。深い瑠璃色の瞳が幻想的だ。
 僕の心は君に鷲掴みにされた。

みたいにします。伝わるかな……? 改行したら全角スペースをあけましょう。さらに!マークや?マークの後も1マス空けます。
それと、三点リーダー(…のこと)は偶数個使うのが普通です。てゆうか奇数は気持ちが悪い。…とかです。………はまだ多いからごまかせてますが。

下は全てを使った例。

 クロエはシロエの似合わない格好を見て頭が混乱してしまう。
 その爽やかな見た目とは打って変わって、闇堕ちしてしまったかのように感じた。

「そんな……シロ、エ? どうして黒のワンピースを着ているの!? 黒は私のイメージカラーなのよぉ!?」

的な感じです。
なんか色々言ってすいませんでした。
こんな感じさえ守れてれば大丈夫ですよ。

2017-09-13 01:38

119.82.162.183

美羽

則竹直樹様

 読んでいただきありがとうございます。はい、黒と白の世界観というところからオセロに関連付けてました!
 あと空白と……についての説明ありがとうございます!助かりました!
 色々ありがとうございました

2017-09-13 22:11

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黒とかげ

拝読させていただきました。
自分を棚に上げて厳しいことを書かせていただきます。

文章について
 ・まず途中でシロナとクロナどちらが喋っているのか、わかりずらい箇所があるので
  もう少し会話の一つのセンテンスを長くするなどの工夫が必要なのではないかと感じました。
  あとシロナとクロナの顔立ちなどの描写なのですが、「一部違うけど、それ以外は同じ」より
  「大体同じけど、一部違う」の順番の方がしっくりくるような気がします。
  「歩くたびにコツコツと軽い音がなる白い靴」「歩くたびにカツカツ鋭い音がなる黒い靴」
  この対比の表現は実に素晴らしいです。

物語について
 ・途中でシロナは「理性」クロナは「本能」これは話の途中で明かさない方がいいかと思います。
  なぜならこれが話のオチなので最後にドーンを明かした方がインパクトがある。
  他にはいくつか疑問があります。
  なぜ引き分けなのにシロナがクロナに吸収されたのか?
  なぜクロナが今回の勝負で勝てたのか?
  なぜこんなに必死の勝負なはずなのに、勝負を始める前はやる気のない様子だったのか?
  この辺をうまく物語に落とし込めればずっと面白くなるのではないかと個人的に思いました。

以上です。お互い文章書きとして頑張りましょう。



  

2017-09-14 12:46

124.86.172.187

山口 夕

 読んでみてフロイト的な考え方なのかと思いました。
 クロナ≒エス(イド)
 シロナ≒超自我
 そして自我(またはそれに類するもの)がオセロゲームという形でバランスを取ってきた、というものでしょうか。

 
 「私」と「アンタ」など分けてありましたが、私もシロナとクロナのどちらが話しているのかやや分かりにくいと感じましたので、そこを描く必要があるのかなと思いました。
 私の考えですが、小道具を利用するのはどうでしょうか。コーヒーなどの黒い液体や"black"がつく紅茶(black tea)をクロナに持たせると、
――――――
「今日でアンタとオセロするのはもうおしまい。だから、最後ぐらいはおしゃべりでもしようと思って」

「…つまり貴女は心理戦にしようということね」

シロナの質問には答えず、パチッと置く。白を黒に返すの繰り返し。
――――――
 の部分が
――――――
「今日でアンタとの最後の勝負になりそうよ」
 紅茶を片手にクロナが石を打つ。それを聞いてシロナは思わず眉をひそめた。打つ、石を返す動作にも自然と力が入る。
「シロナ、それはどういうこと?」
「何も、そのままの意味よ」
 シロナの心は揺れ動いていた。まずい――クロナのペースに乗せられていることにシロナは気づいた。さっきの彼女の手は悪手だったかもしれない。時間を少し使い、シロナは深く息を吐く。空気が入れ替わり、彼女の思考が整理された。
「心理戦のつもり?」
「ただ、おしゃべりしたいと思っただけよ」
 不敵にもクロナはカップに口をつけ、紅茶を静かに飲む。空いた手で白を黒に変えていく。
――――――
 のように書けるのかなと思いました。

――――――
その姿は切っても切り離せないオセロの石のよう。
――――――
 こちらには少し付け加えると良いと思いました。
――――――
その姿は切っても切り離せないオセロの石だった。ただ、白が隠れていて黒がその色を強く主張していた。そう、石は黒が上を向いていたのである。
――――――


 私はアドラー関係の本を少しばかり読んだせいか、「とある十六歳の少女」が「父から離れたい」という目的のもと、自分にとって最も良い手段を探しているに過ぎないと感じてしまいました。

 発想はとても良いと感じます。もう少し丁寧に書いていただくと読者としてはありがたいです。
 これからもがんばってください。

2017-09-14 20:18

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