作家でごはん!鍛練場

『〈眼〉』

ひとり著

「苦しみと救い」ということを考えながら書きました。文章、ストーリーなど読みにくい箇所や不自然な箇所(明らかな間違い)などありましたら、ご指摘の方、よろしくお願い致します。

 吉川達也が牛丼屋で昼飯を食べていると、隣に座っていた同僚が突然、走って店の外に飛び出して行った。急いで二人分の勘定を済ませてから後を追うと、店の裏手でゲーゲーと吐いていた。未消化の牛肉が擦り切れたゴムのようになって地面を流れている。
「汚いなあ」吉川が呆れたように言った。
「すまん」同僚はハンカチで汚れた口元を拭いた。「でも耐えられなかったんだ」
「何が?」
「牛丼の臭いが」
 吉川は怪訝そうな顔をした。こいつは牛丼嫌いだったか? 確かこの前一緒に来た時はお代わりまでして――。
「とにかく、もう行こう」同僚は身体を起こし、歩き出した。「仕事は山積みだ」
「ああ」吉川は気遣う言葉もそこそこに、同僚の後に続いた。会社に戻ると同僚はいつもと変わらない働きぶりを見せた。
 人々の上に〈眼〉が現れたのはその日の夕方だった。吉川は自宅に帰る途中、電車の窓からそれを見た。夕焼けに赤く染まった雲の隙間に、きらきらと光る巨大な丸いボールのようなものが浮かんでいる。半透明の滑らかそうな表面がグルッと回転すると、真ん中にある大きな瞳孔がこちらを向いた。
「眼だ・・・・・・」吉川は思わずつぶやいたが、周りにいる乗客達も口々に「眼だ、眼だ」と言っている。まるで自分達が目にしているものを何度も繰り返し確認するかのように。
 〈眼〉はそのまま走っている電車を眺め回すように半転すると、雲の間に隠れてしまった。吉川は〈眼〉があった場所をしばらく見つめていたが、急にスマホが鳴ったので視線を落とした。
〈今日は友達と食事するので遅くなります。何か買って食べてください〉
 妻からのメッセージだった。吉川は今しがた目にしたものを知らせてやろうと画面に指を走らせたが、途中で文章を削除した。あいつは自分の眼で見なけりゃ納得しないだろう。俺の言うことなんてまともに聞きやしないんだから。
 電車を降りた後、吉川はスーパーで惣菜を買って家に帰った。台所に入ると、朝食に使った食器が流しの中に突っ込んである。捨て損なった生ゴミの臭い。テーブルの上には「帰ったら私がやります」とだけ書かれたメモ用紙があった。
 吉川はため息をつくと惣菜の袋を開けて、中身をテーブルの上に並べた。皿を汚したくなかったのでプラスチックのトレイに乗せたまま食べた。ひどい味がする。一緒に買ってきたビールで飲み下そうとしたが、口をつけた途端に吐き出した。
「くそ、何だこりゃ」吉川はビールのラベルを見た。サラダ油でも飲んだのかと思ったが、確かに「いつものやつ」で間違いない。仕方がないので惣菜もろとも流しの中に捨てた。帰ってきてこれを見た時の妻の顔を想像すると、少しばかり溜飲が下がった。

 次の日、吉川が会社に行くと同僚は欠勤していた。上司に尋ねると、昨日の夜から吐き気が止まらないらしい。あの牛丼が原因かな、と思ったが、同じものを自分も食べていたのだった。
「残念だな。せっかくあの眼の話をしてやろうと思っていたのに」
 社内を注意深く見回しても、〈眼〉の話をしている者はいなかった。誰もあれを見なかったのだろうか、と吉川は不思議に思った。昼休みにパソコンで検索してみると、動画サイトで映像を見つけた。誰かがスマホか何かで撮影したのだろう。昨日見た時と同じく、〈眼〉は夕焼け空の中をゆっくりと回転しながら、段々と雲に隠れていった。動画の閲覧数は大して伸びていない。寄せられたコメントも、殆どがイカサマだと決め付けていた。
「馬鹿な奴らだ。俺はこの眼ではっきりと見たのに」吉川はいまいましげに呟いた。「マスコミは何をやってるんだろう。こんな特ダネを放っとくなんて」
 吉川はイライラしながら仕事に戻った。

 吉川が帰りの電車に乗っていると、同僚から電話がかかってきた。次の駅で降り、急いで通話ボタンを押す。
「お前か?」
「ああ」同僚は力のない声で言った。
「なんか吐き気が止まらないって聞いたけど、大丈夫か?」
「ああ。いや、実は吐き気ではないんだ」
「どういうことだよ」
「何と言えばいいのか・・・・・・臭いなんだ」
「え?」吉川は顔をしかめた。「臭い?」
「そうだ。何を嗅いでもひどい臭いがして耐えられない。飯を食おうとすると悪臭が鼻の中いっぱいに広がって、何も食べられない」
「病気か」
「分からない。医者に行って診てもらったんだが、原因不明だそうだ。鼻にも特に異常は無いようだし」同僚は不安げにため息をついた。「俺、死ぬのかなあ」
 そうかもな、と言いかけて吉川は慌てて口をつぐんだ。「そんなことはない、大丈夫だよ。ここ最近ちょっと仕事がキツかったんで、神経が参ってるんだろう。十分休息をとれば・・・・・・」それから適当な慰めの言葉が続き、吉川は電話を切ろうとした。
「なあ、吉川」
「何だ?」
「見舞いに来てくれるかな。話し相手がいなくて退屈だし。それに、身体の方は健康なんだ。何か出来る仕事があるかも」
 吉川は少しの間黙ってから、
「分かった、必ず行くよ。でも無理はするな」そう言って電話を切った。

 家に帰ると、珍しく妻が手料理を作って待っていた。テーブルの上に並べられた皿からは、湯気と共に美味そうな匂いが立ち上っている。その向こうには妻のニコニコ顔。久々に腕をふるったので、得意で仕方がないのだろう。そういえば昨日の夜から何も食べていなかったな、と吉川は気付いた。喜んで箸を伸ばしたが、一口食べるとすぐに顔を曇らせた。最悪の味。今までだって妻の料理をそれほど評価していた訳ではなかったが、こんなにひどいものを出されるとは。
 結局、幾つかの皿に少し手をつけただけで、すぐに食べるのをやめてしまった。そそくさと部屋を出ようとすると、背後から妻のすすり泣きが聞こえた。
「ああ。嫌だ、嫌だ」吉川は逃げるように自室へ向かった。椅子に腰かけ、机の上に突っ伏した。
 なんて俺は不幸なんだろう、と吉川は呟いた。会社の給料は悪くない。仕事はキツい時もあるが、基本的には定時で帰ることができる。妻は美人だし、友人もいる。申し分のない生活だ。なのに、どうしてこんなに嫌な思いが尽きないのだろう。どうしてこんなに嫌なものばかり気になるのだろう。同僚の欠勤、料理の不味さ、妻の泣き声・・・・・・。ほんの些細なことでも気分が悪くなる。
 吉川はパソコンを付け、気晴らしに音楽でも聴こうと動画サイトを開いた。ふと「注目の動画」のところを見ると、見覚えのあるものが映っていた。
 〈眼〉だ! 吉川は思わず写真をクリックする。それは彼が見た時とは別の場所で撮影されたもので、再生数はケタ違いだった。〈眼〉は立ち並ぶビル群の上、雲一つない青空の中に浮かんでいる。太陽の光を反射して、まるで磨き上げられた水晶球のようにつやつやと輝いていた。
「すごい」
 動画の中の〈眼〉はゆっくりと回転し、やがて黒い瞳孔が画面の方へ向けられる。吉川は吸い込まれるように〈眼〉の中心に見入った。
「綺麗だ・・・・・・」
 吉川が画面を見つめていると、急に玄関のドアが激しく開かれる音がした。ハッとしてパソコンから眼を離す。慌てて廊下に飛び出すと、外套を着た妻が旅行鞄を持って出て行くところだった。
「待て!」吉川は叫ぼうとしたが、その前にドアが無情にもバタンと閉じた。今すぐ追えば間に合うかもしれないが、めそめそ泣く妻の姿を想像すると引き止める気にはなれなかった。どうせ友達の所にでも転がり込むんだろう、と自分を納得させる。部屋に戻って動画の続きを見ようとしたが、ムシャクシャしていたのでそのままベッドに寝転んだ。

 朝になってテレビを点けると、どのチャンネルでも〈眼〉のことを報じていた。〈眼〉は日本だけでなく、世界の各地でも存在が確認されたらしい。昨日吉川が見た動画はアメリカで撮影されたものだった。有識者は「未知の生命体」、「宇宙からの使者」、「新しい自然現象」など様々な説を語ったが、明確な答えは出せていなかった。
 会社では流石に、〈眼〉の話を大っぴらにする者はいなかった。ただ、数日前と比べると明らかに動揺が広がっていた。うるさ型の上司ですら、いつ〈眼〉が現れるかという様子でしきりに窓の外を気にしているようだった。
「皆、あの美しさにやられているんだな」吉川はひとりごちた。それも無理は無かった。〈眼〉の持つ完璧なまでの美しさは「純粋さ」に近いものだった。無駄なものは一切ない。醜さや汚さとは全く無縁なもの。
「だが、俺の方はそうもいかないんだ」吉川は自嘲気味に笑った。「俺には苦しんでいる友人がいるし、逃げ出した妻もいる。彼らを気にかけてやらないと。それに、自分の面倒も見なければならない」
 上司によれば、同僚は市内の大学病院に入院しているとのことだった。仕事が終わってから行ってみると、彼は神経内科の病棟にいた。
「よお」ベッドに寝ている同僚が手を振りながら言った。丸一日会っていないだけなのに、どことなくやつれた印象を受ける。
「大丈夫か?」
「いや、大丈夫ではないな。ろくに食事もとれないから、とりあえず栄養剤を注射してもらってるよ」
「ひどいことになったな」
「ああ、ひどい話だ」同僚は笑った。「最初は耳鼻科に行ってみたんだが、どこも悪くないと言われた。それで、神経科に来てみたんだが・・・・・・」
「原因は不明か」
「そうだ。打つ手なし」同僚は深くため息をついた。窓の方に顔を向けて外の景色を見る。「話は変わるんだが・・・・・・お前、あの〈眼〉を見たか?」
 吉川はドキッとした。まさかこの場で〈眼〉の話が出てくるとは思わなかった。「ああ、見たよ。一昨日の夕方だったかな、帰りの電車の中で」
「俺も見たんだ」同僚は吉川の方を見た。「この窓からな。あそこに建っているビルが見えるだろう? 丁度あの横に〈眼〉が浮かんでいたんだ。なあ、あれはどこからやって来たんだと思う? 何のために俺たちの前に現れたんだと思う?」
 吉川は同僚から視線を逸らした。こんな時に〈眼〉の話をするのは、何だか筋違いな気がした。
「さあ。俺にはよく分からんよ。あれがどこからやって来たかなんて」
「俺には分かる気がする」同僚は言った。「あれは美しい。とてつもなく美しい。今までこんな気持ちになったことはない。あれを見ている時、俺は悪臭のことも他の嫌なことも、何もかも全て忘れられる。なあ、あれは俺たちに自分の美しさを見せるためにやって来たんじゃないかなあ」
 同僚はまるで子供のような無邪気な眼をしていた。吉川は何とも答えようがなかった。あの〈眼〉が美しいことには同意するが、今の同僚には何か尋常でないものが感じられる。吉川が黙っていると担当医が部屋に入ってきたので、チャンスとばかりにそそくさと外へ逃げ出した。

 吉川が病院の廊下を歩いていると、後ろから誰かに呼び止められた。振り返ると、さっき部屋に入ってきた担当医が立っていた。
「少しばかりお時間をいただいてもよろしいでしょうか?」担当医は眼鏡をかけた人懐こそうな顔を微笑ませた。吉川は少しの間考えてから、彼の申し出を承諾した。
 二人は病院の中庭にあるベンチに腰掛けて話した。
「では、あの〈眼〉が原因だと?」吉川が驚いたように言う。
「ええ。実は彼が入院したのと同じ日に、あちこちの病院でも同じような症状を訴える患者が続出しましてね。どこも対処のしようがなく、たらい回しの状態なんですよ」
「それが、〈眼〉が最初に現れたのと同じ日だと」
「そうです。それに、症状は嗅覚だけではないんです。聴覚、触覚、味覚・・・・・・」
「味覚もですか?」吉川は慌てて言った。
「ええ。ところが不思議なことに、視覚に異常が出たという報告は今のところ全くないんです。それに症状が出ている箇所についても、身体的な障害などは全く見られない」担当医は眉間に手を当ててうつむいた。
「対処法は見つかっていないんですか?」
「今のところはね。〈眼〉との因果関係だってまだ推測に過ぎません」
 吉川は空を見上げた。あの日、電車の中から見た、〈眼〉。夕焼けに赤く染まった雲の間から、きらきらした表面を覗かせている。同僚は牛丼の臭いにゲロを吐いて、俺は糞不味い惣菜とビールを買って・・・・・・妻の手料理・・・・・・。
「おそらく」吉川が言った。「おっしゃる通り、あの〈眼〉が原因なんでしょう」
「しかし、一体何故でしょう? どうしてこんなことが起きるのでしょうかねえ」担当医は当惑したように言った。「あの〈眼〉にしたってそうです。どうしてあんなものが急に現れたのか」
「あいつは」吉川は言った。「同僚は、あの〈眼〉が自分の美しさを見せるために来ている、と言っていましたよ」
「あなたはどう思われます?」担当医が真面目な表情で吉川の顔を覗き込む。
 吉川は少し黙ってから呟くように言った。「・・・・・・分かりません。でも、あれが純粋で美しく見える、ということだけは確かだと思います」
「僕も同感です。あれを見ている時は仕事や何やかやの辛さが吹っ飛ぶようで。正直、病みつきになるような何かがありますね」
 担当医は冷静に言ったが、その実、彼もまた同僚と同じように〈眼〉の魅力に憑かれているようだった。吉川は若干の不安を覚えながらも、同僚や〈眼〉についての理解を共有する仲間が出来たことに、ホッとした気分だった。
「ところで先生は何故、そういったことを私に話すんです? 正直言って私は全くの部外者ですよ」
「部外者、本当にそうでしょうか? あなたはなんだかとてもやつれているように見えますが・・・・・・」


 五感に関する奇妙な症状は、瞬く間に世界中で見られるようになった。アメリカのテキサス州に住むある農家の主婦は、動物の鳴き声が耐えられなくなり、散弾銃で近くの牛を片っぱしから撃って回った。インドのとある修行僧は体中の皮膚が痒くて仕方がなくなり、全身に灯油を浴びて火をつけた。フランスの聖地ルルドでは礼拝に来ていた盲人の目が治り、奇跡と呼ばれたが、同時にひどい耳鳴りや幻聴に悩まされるようになった。
 マスメディアがこれらの現象と巨大な〈眼〉とを結びつけるのに、そう時間はかからなかった。発症した人々の殆ど全てが、あの巨大な球体が現れている間だけは苦しみから解放され、その美しさに酔いしれるのだった。
 吉川もまた、自分の症状と戦っていた。このところ何を食べても美味しいと感じることが無い。以前は大好物だった大根の煮物も、今では味のしない、ヌルヌルした塊としか感じられない。食欲は減退し、体力も集中力も落ちた。だが最大の問題はそんなことではなかった。自分の〈眼〉に対する執着が、日に日に増しているように思われるのだ。
 会社では既に社員の半数以上が発症していた。彼らの殆どが欠勤し、残った者も症状に苦しめられながら一日中〈眼〉の到来を心待ちにしている。もちろんまともに仕事ができるはずもなく、会社の経営が傾くのは時間の問題だった。吉川は絶望的な気分になりながら、それでも心のどこかで〈眼〉を待ち望んでいる自分に嫌気がさした。
「くそっ、何で出ないんだ」
 吉川はあれから何度も妻のスマホに電話をかけていた。スピーカーの向こうからは呼び出し音が聞こえるだけで、何の反応もない。もしかすると妻も〈眼〉にやられてしまったのだろうか。
「こんな時くらい、傍にいてくれてもいいじゃないか。頼むよ」吉川は泣きそうになりながらスマホに向かって何度も囁きかけた。
 昼休みに吉川が非常食用のクッキーをかじっていると(色々試した結果、これが一番マシだった)、担当医から電話がかかってきた。
「すみません、少し眼を離した隙に・・・・・・」
 吉川が病院に行ってみると個室はもぬけの空で、ベッドの上にメモ用紙が一枚残されているだけだった。吉川は震える手で小さな紙片を持ち上げると、そこに書かれている奇妙な一文を読んだ。

〈『見ること』は素晴らしいことだ。俺は『見ること』になる〉

 書かれているのはそれだけだった。括弧でくくった『見ること』の下に、幾重にもアンダーラインが引かれていた。
「それで、あいつはどこに行ったんです?」吉川が尋ねた。
「分かりません。廊下にある監視カメラの映像を調べたんですが、病院を抜け出す様子は確認できませんでした」担当医が申し訳なさそうに言った。
 吉川は部屋全体を見渡した。ベッドの横にある窓が開いており、外から風が吹き込んでいる。
「まさかここから」
「四階の窓からですか? 出たとしても、足場も何もない。真っ逆さまに落ちるだけです」
「この下の地面は調べましたか?」吉川は担当医の方を振り返った。
「ええ、もちろん」
「警察は?」
「今、捜査していただいているところですが・・・・・・」
 それから数日経っても、同僚の行方は分からなかった。何もかもお手上げの状態だった。世界中に突如現れた〈眼〉と、拡がっていく原因不明の症状。そして今度は人が煙のように消えたのだ。
「『見ること』は素晴らしいことだ。俺は『見ること』になる・・・・・・」吉川は同僚が残した言葉が頭から離れず、呪文のように何度も何度も繰り返し呟いた。しかし、一向にその真意を解することはできなかった。

 ある日テレビを点けた吉川は、座っていたソファーに力無く身を沈めた。画面には都会の上空に浮かぶ幾つもの巨大な〈眼〉が映し出されている。そしてどこからやって来たのか、大勢の群衆が〈眼〉を取り囲むように次々と集まって来ていた。
「そうか、あの〈眼〉が・・・・・・」
 吉川は担当医に電話をかけた。これから会えないかと言うと、快く承知してくれた。病院の近くで待っていると、目の前に赤い車が停まった。
「・・・・・・驚きましたよ。知らない内に患者の殆どがいなくなってるんですからね。僕らはもう、廃業です」担当医が笑いながらハンドルを操作する。
「〈眼〉の仕業ですね」吉川もその隣で笑いながら言った。「まさかあいつらにあんなことができたなんて」
「僕もあの〈眼〉については少しばかり考えたんですけどね」担当医が恥ずかしそうに言った。「あれは何か、食中植物のようなものなんじゃないでしょうか。魅惑的な美しさで獲物を惹きつけ、捕食するという」
「でも、全ての人間を惹きつける美しさなんてあるんでしょうかね」吉川が不思議そうに言った。「あなたも私も、それだけじゃなく世界中の人があれに魅せられているんだから」
「ええ。だからこそ、あの〈眼〉は、我々の五感を狂わせたんじゃないでしょうか。ただ一つ、視覚だけを残してね」
「『見ること』は素晴らしい。俺は『見ること』になる・・・・・・」吉川は呟いた。「でも、患者の身体には何の異常もなかったんでしょう?」
「それが不思議なんですよ」担当医が顔をしかめた。「あの〈眼〉はどうやら人間の神経系や身体組織を全く無視して、我々の表象そのものに直接働きかけているとしか考えられないんです。つまり、我々が感じていることそのものに直接干渉しているのだと」
 車は市街地を出て殆ど誰もいない国道に入る。そのまま都心に向かって走っていった。
「一つの感覚を失った時、残された別の感覚がその代わりを果たすという話があります。では、一つを残して他の五感がいかれてしまった場合、どうなるでしょうか?」
「たった一つ残された感覚にすがりつく? まるで辛い現実から逃げ出すように・・・・・・」吉川は苦笑いした。「神様もとんでもない救いを用意してくれたな」
「実際、その通りなのかもしれません」担当医は眉一つ動かさずに言った。
 吉川は不安気に担当医の方を見た。
「それで実際『見ること』になっちまったら、どうなるんでしょうか?」
「さあ。『見ること』というくらいだから、本当に『見ること』しかなくなるんでしょうねえ。『聞くこと』も『嗅ぐこと』も『触ること』も無い。誰もいなくなった世界を永遠に眺め続けるだけ・・・・・・」
 吉川は身震いした。「あの〈眼〉は本当にこの世界を見ているんだと思いますか?」
「さあ、分かりません。見ていたとしても、我々と同じような世界を見ているとは限りませんよ」
 車は都心に入る手前で停った。「ここで、お別れです」担当医が言った。道路の向こう側に立ち並ぶビル群の上に、巨大な〈眼〉が幾つも浮かんでいる。「僕はもう行きます。正直、皮膚の痛みが全身に回って耐えきれないんですよ。その車は自由に使ってもらって構いません。まだガソリンも残っているので、ここからなら十分引き返せますよ」担当医は軽く会釈すると、道路の向こう側へ歩いていった。
 吉川は引き返さなかった。そのまま車に乗ると都心に入り、妻を探した。朝から晩まで人気のない街を走り回り、ガソリンが切れるとガソリンスタンドで補給した。ガソリンスタンドには誰もいなかった。中に入ってコーヒーを沸かし、飲んだが、ドブ水のような臭いと味がしてゲーゲーと吐いた。もう何日もまともに食べていなかった。
 都心を出て国道を走っていると、市街地から大勢の人間たちが歩いてきた。彼らのいずれもが、倦み疲れたような顔をしている。もはやこの世に何の楽しみも見出せず、最期に残された希望があの〈眼〉なのだ。吉川は車を徐行させながら、彼らの中に妻の姿がないか注意深く見た。途中、何度も彼らに加わって歩いて行きたくなったが、今の俺にはそれができないんだと思い直した。
 吉川は市街地に入ると、妻の実家に行ってみた。町には人っ子一人おらず、家にも人の気配は無い。精魂尽き果てて車の側に座りこむと、妻の手料理を拒絶した日のことを思い出した。あいつの作ったものをもっと味わって食べればよかった。どんなにひどい味がしても、最後の一口まで食べればよかった。こんなことになると分かっていれば、あんな別れ方はしなかったはずだ。どんなに嘆いても、もう取り返しがつかない。
すると突然、ポケットに入れてあったスマホが鳴った。画面を見ると、「沙絵」の文字が眼に飛び込んでくる。吉川は震える手でスマホを持ち直し、そこに書かれている文字を食い入るように読んだ。
〈達也。連絡を怠ってしまってごめんなさい。あなたが何度も電話してくれていたこと、ぜんぶ知っています。でも、私にはどうすることもできませんでした。どんな返事を送っていいのか分からなかった。もう何日もあなたのことばかり考えています。あなたはもう、私の料理を食べてはくれないでしょう。もっと色々作ってあげればよかった。今更後悔しても遅すぎますね。それに、私はあなたの声を聞くことができません。あなたの手に触れても、温もりを感じられません。そんな人生に何の喜びがあるでしょうか? 私達に残されている道はただ一つ『見ること』です。私達を悲惨な運命から救ってくれるのは『見ること』だけです。今、私達の上には〈眼〉が浮かんでいる。できればあなたと一緒にいたかったけれど、どうせ一つになるのだから同じことでしょう。必ず来てくれると信じています〉
 そこまで読んで吉川はスマホを取り落とした。手が震えている。がっくりと頭を垂れ、ポロポロと涙をこぼして泣いた。やつれた顔に涙の筋が幾つも光る。そのままよろよろ立ち上がると、子供のように泣きじゃくりながら国道の方へ歩いて行った。

 都心は集まってきた人達でごった返していた。空の上には〈眼〉が現れ、全ての人間がそれを希望に満ちた眼差しで仰ぎ見ている。やがて〈眼〉はその巨大な瞳孔を群衆の方に向け、青白い光を放ち始めた。周りに群がっている人々が、一人、また一人と空中に浮かび上がる。彼らの中には安らかな顔をした吉川の妻や、担当医の姿も見られた。群衆が歓声を上げる。持ち上げられた人々はそのままゆっくりと上昇し、どす黒い瞳孔の中へと吸い込まれていく。感覚の苦しみから解放され、純粋な「見ること」へ。〈眼〉がたたえる完璧な美しさは、まるで人々の澄み切った心を反映しているかのようだった。

〈眼〉 ©ひとり

執筆の狙い

「苦しみと救い」ということを考えながら書きました。文章、ストーリーなど読みにくい箇所や不自然な箇所(明らかな間違い)などありましたら、ご指摘の方、よろしくお願い致します。

ひとり

124.208.166.115

感想と意見

adelie

退廃的な雰囲気で進むストーリーは絶品です。
徐々に〈眼〉がもたらす異常が明るみに出ていく過程が見事で一気に読ませるパワーがあります。救いというのは決して美しい形で行われるわけではなく、あくまで被救済者の視点からでしかそれを肯定することができない場合というようなことをこの物語から考えました。無駄なものが一切ないストーリー展開には唸ってしまいます。
主人公・吉川の独白が「」で括られていることに少しだけ違和感を覚えましたがそれも、特におかしいというものでもありません。
とてもいい小説でした。

2017-09-05 00:10

61.46.156.132

ゆふなさき

美しい小説ですね。
ポストモダンの小説で「バルーン」というものを読んだことがあって。ニューヨークの宙に肌色の風船がいくつも浮かぶようになって、人々はそれをみると穏やかな気持ちになるという話。
ただ、眼が浮かぶのはなんとなく物騒に感じますね。ピカドンやら監視体制やらの。

2017-09-05 12:29

27.143.73.41

カジ・りん坊

 とても面白かったです。冒頭からグイグイ引き込まれました。
 始めのほうの『朝食に使った食器が流しの中に突っ込んである。捨て損なった生ゴミの臭い。テーブルの上には「帰ったら私がやります」とだけ』の部分がとても印象的でこの一文で、いろいろと関係性なども判りながら謎を秘めた文章になっているなぁと思いました。

 五感に対する症状のピックアップも非常に興味深く、無駄を感じさせない流れだと思いました。

 

2017-09-05 12:54

124.110.104.4

古河 渚

初めまして

拝読しました。
私の感じでは、ここ鍛錬場には、ごくたまに極上の作品が現れるのですが、まさに今、その作品に巡り会えました。
全体として淡々と進むストーリーに、恐怖とか夫婦の感情とかが、非常にバランスよく配置されていて、飽きさせるところがない、すばらしい作品でした。
<眼>の存在ですが、世紀末的な終世感を醸し出して、もしかしてバベルの塔的な警鐘なのか?、それとも救いの何かが現れたのか? いろいろなことを感じながら楽しむことができました。
中、長編にすれば初〜中期の村上春樹的な作品になるような気がしますし、短編としても、このままで敬愛する春樹(春樹は短編の評価も、大変高いです)に負けないレベルだと思います。

是非、次回作も読ませてください。

以下、表記に関してですが、
(1)・・・・・・ですが、…… と記載したほうがいいと思います。公募とかでは気にする人もいるかもです。
(2)本作では、連結した会話文が多い(下の例)のですが、
>「俺には分かる気がする」同僚は言った。「あれは美しい。とてつもなく美しい〜〜〜〜」
 私の場合は、句点はとってしまい以下のように
「俺には分かる気がする」同僚は言った「あれは美しい。とてつもなく美しい〜〜〜」
 のように書いていました(言ったではなく続けたにすると思います)。どちらが一般的な
 のかはよく

2017-09-05 13:13

202.229.143.47

アフリカ

拝読しました

絶賛の嵐に誘われて読んだのですが

読後のこのなんとも言えない感覚。

やったり素直に、面白いの一言

この枚数でドッカンドッカンと撃ち込まないで
うんうん面白いと思わせるのは素敵だと思います

ただ、最後の眼によって人々が救済?されるのも少しだけ違うような気もしました。
見えている現状に甘んじて生活していた事を嘆くキャラクター達ですが、眼に取り込まれることでそれが解消するとも……思えなくて……
つまりこれは見えているものを見ないようにしている現代への啓示なのかな……とも考えながら読み進んだので……
僕的には眼は人間の人間らしさを奪う「奴!」って感覚でした。
でも、文盲読めてない可能性の高い僕ですから眼から陰の部分を感じ取った感覚は間違いかもですね……


でも、楽しく読めました。

また次の作品も出して下さい

ありがとうございました

2017-09-05 15:54

49.106.193.93

麻生

読ませて頂きました。
天空に大きな眼があるというのは、ゆふなさんの紹介されたバルーンのように特に珍しいものではないので、話がどう進むのかなという所に関心を置いて読んでいきました。
そしたら、ちょっと宗教的な色合いもあって、またも、幼年期の終わりとか思い出して、おお、宇宙人物かと思ったり。未知との遭遇もこんな感じかな、と。
でも、やがて人々は目だけの感覚しか持たなくなって、目になって空に登っていくわけですね。そして救われる。
ここは、私もアフリカさんのようにすっと心に落ちませんでした。逆じゃないかと。見ることは救いにはならなくて、むしろ盲目になることこそが救いじゃないかと。
実は、ブラインドネスという映画を思い出していたのです。ノーベル賞作家の原作らしいですが、ある日、突然、地球上のすべてが視力を失うのです。日本で始まるのですが、そのブラインドネスの状態で、人々は触覚や聴覚などでつながりを見出していくのです。つまり救われるのに目が邪魔だったわけですね。
御作は真逆で、味覚などを失って、目だけになる。それが素敵なこととして書かれているのかどうかは、一読ではわかりませんが、印象としては目の復権で救われるという感じでしょうか。天空に目があれば、神の目か、監視の目、そんな感じの方が強い気がしてしまって、個人的にはそれは救いじゃないだろうと思うのです。
 歴史の流れとしては、昔は文化的には聴覚が威張っていました。音楽は聞くものであり、演劇も物語も聞くものでした。読むものじゃなかったですね。ロミオとジュリエットの冒頭では、どうか2時間?じっくりお聞きください、とあります。見てくださいじゃないのですが、現代は視力優位の世界ですね。それへのアンチ、つまり文明批評的なものにするのなら、やはり天空に大きな眼があるのは違うのではないかと思ったりします。あくまで、作品そのものじゃなくて、定時されたことへのコメントですけどね。
 作品としては、3点リーダーは、すでに指摘されていますように、……にすべきでしょうし、また、

>「俺も見たんだ」同僚は吉川の方を見た。「この窓からな。あそこに建っているビルが見えるだろう?・」

 のような書き方は西洋では普通で、翻訳では、きっと「見た。」のように句点があるのがふつうと思います。
 また、目と眼と書き分けられていますが、目が多すぎますね。少しうるさい感じなので、別の表現で単純に「見た」などでもいいのかもと思いました。
 また、

>朝になってテレビを点けると、どのチャンネルでも〈眼〉のことを報じていた。

 この文、ちょっと違うのかもしれないな、と思います。自信ないですが。「でも」なら、「眼のことが報じられていた」じゃないでしょうか。「も」なら、『報じていた」でいいと思うのですが。
 いろいろ書きましたが、私はこういうのが好きなので面白く読みました。それでは。

2017-09-05 17:48

218.226.59.113

九月が永遠に続けば

〈眼〉の設定〜描写で、即想起したのは、
オディロン・ルドンの絵。
ギュスターヴ・モローの代表作を“眼球だけ”に置き換えた『出現』と、そのモチーフをさらに簡素化させて気球にした『眼』。


同僚と神経科医には、名字つけた方が、読者が読みやすい。(同僚が森本、医者が小石川とか…)
とくに医者は“吉川の担当医ではない”んで。


全体の雰囲気は、90年代のニューウェーブSFの旗手:JGバラードっぽくて、「巧い」んだけども、
“この手の異常事態・特異現象のハナシ”としては、、、「中盤が平板」すぎる感じ??

冗長なだけで、いまひとつ説得力が乏しく・・(ごめん…)
そこでしっかり説得力持たせる設定と描写が出来ていないために、ラストのまとめが「若干弱い感じ」になる・・んだと思った。


〈眼〉が人々にもたらす精神作用は、「発達障害者が普段目にしている世界(=感覚過敏)」のようで、興味深く読めただけに、
ラストのオチが「古い、とてもありがち」(90年代ニューウェーブSF調をベタに踏襲してる感じで、そのまんま時が止まってて、その域を出ない…)なのが、

全体に巧いだけに残念。

2017-09-05 19:40

219.100.86.89

ひとり

adelie様
お読みいただきありがとうございます。

>救いというのは決して美しい形で行われるわけではなく、あくまで被救済者の視点からでしかそれを肯定することができない場合というようなことをこの物語から考えました。
〈眼〉の美しさをことさら強調した作品でしたが、この辺りを汲み取っていただけたのは有難いです。

>徐々に〈眼〉がもたらす異常が明るみに出ていく過程が見事で一気に読ませるパワーがあります。
ありがとうございます。できるだけ最後まで読んでいただけるように書いたので、嬉しく思います。

2017-09-05 20:35

124.208.166.115

迫太郎

面白かったです。
読み始めてからすぐに引き込まれ、最後まで詰まることなく進んでいきました。

嗅覚の変化により何日もまともに食べることもできず吐いていたのに生きていた。となると水だけは飲めていたのかなと、そんなところが気になったりして…。

最後の妻のメールはとても良かったと思いました。

ありがとうございました!

2017-09-06 06:56

49.98.90.116

明日香

面白かったです。
市川拓司さんのこんなにも優しい世界の終わり方を思い出しました。
<眼>の描写がとてもリアルで私も見てみたいです。
美しい筆致で、神々しさの中に、透き通るような青や清々しい透明感のある描写でした。繊細なのに勢いよく進む、読める。すごいです。
一つだけ気になったのは、妻の名前が最後に出てきたことくらいです。妻で良かったのでは…?と思いました。
見落としでしたら申し訳ありません。
素敵な作品をありがとうございました。

2017-09-06 16:04

60.40.55.52

ひとり

ゆふなさき様
お読みいただきありがとうございます。

>美しい小説ですね。
ありがとうございます。自分の書く話や文章を美しいと思ったことが無いので、意外でした。

>ポストモダンの小説で「バルーン」というものを読んだことがあって。
その小説は知りませんでした。他の方も指摘されていますが、本作で使用しているガジェットそのものはありきたりです。他にも似たような作品があるのではないでしょうか。

>ただ、眼が浮かぶのはなんとなく物騒に感じますね。ピカドンやら監視体制やらの。
同じく麻生様も「監視の目」ということをおっしゃっています。「空に浮かぶ眼」はどちらかといえば近代的なものを想起させるのでしょうか。私はどちらかと言えば「古代~中世」の伝統的な神観を多少イメージして書いたので、これらの感想は興味深かったです。

ありがとうございました。

2017-09-06 19:26

124.208.166.115

夜の雨

『〈眼〉』拝読しました。


面白かったです。
かなりのレベルで書かれています。

しかし、致命的な欠点があります。

欠点。
御作で出てくる「眼」は人間の五感を狂わすわけでしょう。
とりわけ「食事」を味わえないということですよね。
だから主人公の吉川は妻(沙絵)の料理を食べられなくなります。
それが原因で妻は主人公のもとを去るわけでしょう。
この「去り方自体も軽い」ですけれど。
普通なら話し合いますけれど、こんな簡単に家を出ません。
「それまでにもいろいろ夫婦間で問題があり、それらを伏線として書いてあれば別」です。
伏線があれば、食事の件が引き金になって妻が勝手に家を出ることも考えられます。

A>妻(沙絵)の料理の味が主人公(吉川)に合わなくなったのは「眼」が原因なのですよね。<

ただ、妻が家を出たときは妻もまた、主人公も「眼が原因で妻の料理の味が夫に合わなくなったということはわかりませんでした。

しかし、その後「世界的に眼がどうたら」ということになれば、「眼が原因で人間の五感がどうの」という話になりますよね。

というか、なっていますよね。

だとしたら、妻の料理の味がおかしいのも「眼」が原因で「たぶんホテルの料理も味が合わなくなっている」ので、「妻は主人に対して料理の味で、うしろめたさを持つ必要はありません」。
従って、妻と主人公は別れる必要などはありません。


御作だと妻と主人公が簡単に、別れてしまっています。

そのあたりを書き直すと、よい作品になります。


それでは、頑張ってください。

2017-09-06 19:26

58.94.229.120

ひとり

カジ・りん坊様
お読みいただきありがとうございます。

>とても面白かったです。冒頭からグイグイ引き込まれました。
ありがとうございます。楽しんでいただけたのなら書いたこちらとしても嬉しいです。

>始めのほうの『朝食に使った食器が流しの中に突っ込んである。捨て損なった生ゴミの臭い。テーブルの上には「帰ったら私がやります」とだけ』の部分がとても印象的でこの一文で、いろいろと関係性なども判りながら謎を秘めた文章になっているなぁと思いました。
日常描写に注目していただいて有難いです。本作では主人公の妻は終始「不在」として扱おうとしたので、日常の描写によって妻の存在感を読者に伝えようとしました(しかしその一方で妻に関する「致命的な欠点」が夜の雨様によって指摘されています)。

ありがとうございました。

2017-09-06 20:54

124.208.166.115

ひとり

古河 渚様
お読みいただきありがとうございます。

>全体として淡々と進むストーリーに、恐怖とか夫婦の感情とかが、非常にバランスよく配置されていて、飽きさせるところがない、すばらしい作品でした。
ありがとうございます。楽しんでいただけたのなら何よりです。

>(1)・・・・・・ですが、…… と記載したほうがいいと思います。公募とかでは気にする人もいるかもです。
三点リーダーに関しては麻生様からもご指摘をいただいていますが、これはもう、言い訳のしようがありません。ワードで書いた時はちゃんと表記したつもりだったのですが、書いたのとは別のパソコンで投稿したせいか変なことになってしまいました。いずれにせよ投稿前に確認できたはずで、それがなされていないのは書き手の怠慢に他なりません。
これ以外にも誤字、段落の空け忘れ、妙な改行といったミスも見つかりました。

2017-09-06 21:49

124.208.166.115

きさと

作者様の書きたいことたけが連続してスピーディーに続いていくため、話としては読みやすく理解しやすいです。しかし、どうしても読者が感じる時間と現実の時間との間にズレが生じるため、心の底から作品世界に入り浸れず、作品自体が「作り物」としか思えないところがあるのがもどかしかったです。
書く際に逐一現実における時間の長さと照らし合わせて、文章量を多くしたり少なくしたりといった記述の濃淡の調節がなされていれば良かったと思います。
着眼点や具体例の盛り込み方はかなり良いです。

2017-09-06 21:56

183.74.205.233

ひとり

アフリカ様
お読みいただきありがとうございます。

>見えている現状に甘んじて生活していた事を嘆くキャラクター達ですが、眼に取り込まれることでそれが解消するとも……思えなくて……
>僕的には眼は人間の人間らしさを奪う「奴!」って感覚でした。
間違いどころか実に的確にお読みいただけてとても嬉しく思います。書いた私にとっても〈眼〉は、救い主というよりは人々の固有な「苦しみ」を(感覚的な苦しみとすり替え、救いへと吸収することによって)奪ってしまうものなのです。
物語の最期には感覚的な苦しみに耐えられなくなった人間たちが次々と「救済」されていきます。彼らや吉川(とその妻)にも日々の生活がありそこには固有の「苦しみ」があったはずなのですが、それらは皆五感の苦しみとなり、唯一の救いである『見ること』へと吸収されてしまう。私は「救い」がそうしたものだとは信じたくありませんが、もしかしたら「本当は」そういう救いこそがやってくるのかもしれない。そのような恐れからこの話を書きました。

長々と書いてしまいましたが、書き手の意図などは適当に聞き流していただくのが良いかもしれません。楽しく読んでいただけたとのことなので、嬉しく思います。
ありがとうございました。

2017-09-06 23:03

124.208.166.115

ひとり

麻生様
お読みいただきありがとうございます。

>でも、やがて人々は目だけの感覚しか持たなくなって、目になって空に登っていくわけですね。そして救われる。
>ここは、私もアフリカさんのようにすっと心に落ちませんでした。逆じゃないかと。見ることは救いにはならなくて、むしろ盲目になることこそが救いじゃないかと。
アフリカ様もこの部分は「違う」のではないかとおっしゃっていました。私自身こうした「救い」は信じたくないのですが、正直申し上げますと、何が「救い」なのかということは私にもよく分からないのです。見ることではなく盲目になることが救い、とのことですが、それに対しても同じように「分からない」と言うしかありません(サラマーゴの『白の闇』も未読です)。

>歴史の流れとしては、昔は文化的には聴覚が威張っていました。音楽は聞くものであり、演劇も物語も聞くものでした。読むものじゃなかったですね。ロミオとジュリエットの冒頭では、どうか2時間?じっくりお聞きください、とあります。見てくださいじゃないのですが、現代は視力優位の世界ですね。それへのアンチ、つまり文明批評的なものにするのなら、やはり天空に大きな眼があるのは違うのではないかと思ったりします。
文明批評というよりは、伝統的な神的存在が人間の感覚を操ることで信仰されていく、という矛盾した話にしたかったのです。神と「見ること」を関係づける考え方は西洋の思想史では伝統的で、ギリシャ語で言うところのtheos(神)とtheoria(見ること)を関係づける説が五世紀ごろには既にあったようです。

>この文、ちょっと違うのかもしれないな、と思います。自信ないですが。「でも」なら、「眼のことが報じられていた」じゃないでしょうか。「も」なら、『報じていた」でいいと思うのですが。
本文の表現だと「報じる」の主語が省略されてしまう形になるのでしょうか。「眼のことが報じられていた」なら「眼のこと」が主語になりますし、「も報じていた」だとチャンネルが主語になりますよね。こうした省略がアリなのかどうかは、ちょっとよく分からないです。すみません。

ありがとうございました。

2017-09-07 22:06

124.208.166.115

ひとり

九月が永遠に続けば様
お読みいただきありがとうございます。

>“この手の異常事態・特異現象のハナシ”としては、、、「中盤が平板」すぎる感じ??
>冗長なだけで、いまひとつ説得力が乏しく・・(ごめん…)
>そこでしっかり説得力持たせる設定と描写が出来ていないために、ラストのまとめが「若干弱い感じ」になる・・んだと思った。
仰る通りです。単にガジェットがありがちという以上に、「担当医」が出てきた辺りからの話の流れは工夫というか展開に「粘り」が無く、本当にどこかで見たSFの「ベタな(そして雑な)踏襲」にしかなっていないと思います。
他の方が最後の展開に納得いかないと仰っているのも、そこの弱さに起因するのかもしれません。


>同僚と神経科医には、名字つけた方が、読者が読みやすい。(同僚が森本、医者が小石川とか…)
>とくに医者は“吉川の担当医ではない”んで。
これもその通りで、ちゃんと名前をつけて描写するべきでした。

ありがとうございました。

2017-09-11 12:12

124.208.166.115

ひとり

迫太郎様
お読みいただきありがとうございます。

>面白かったです。
>読み始めてからすぐに引き込まれ、最後まで詰まることなく進んでいきました。
ありがとうございます。最後まで読んでいただけて嬉しいです。

>最後の妻のメールはとても良かったと思いました。
ありがとうございます。妻の長い台詞(?)が出てくる唯一の箇所なので、できるだけ印象に残るようにしようとしました。

ありがとうございました。

2017-09-11 12:30

124.208.166.115

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