作家でごはん!鍛練場

『隣人』

如月著

初めてこちらを利用します。
自分の描いたものが他の方々にはどのように映っているのだろうかと思い、投稿しました。

内容、構成、文章マナー、感想やご意見などいただけましたら幸いです。
理由も添えていただけるとありがたいです。

 あれは何だ。
 国内有数の高級住宅地を目と鼻の先に構え、ここは準高級住宅地とでも呼ぶことができよう。この見栄と虚栄の九龍城砦へ彼が引っ越してきたのは、去年のことだった。
 にじりよる寒気に玄関の門扉は芯まで凍てついていた。本格的な冬の訪れを掌に感じながら門を引くと、突き刺ささるようなそよ風に彼は首を亀のようにすぼませた。確か昨日もそうしていた。ひょっとすると、去年も同じようにしていたかもしれない。
 高級な欲を持たない彼は、たかだか中級程度の実に幸福な会社員であった。変化のない単調で貴重ないつも通りこそが幸福たる所以であり、日常を搔き乱すもの、脅かすものは等しく異物であり不幸であると断じる何の変哲もない凡人だ。
 こんな朝からお客か。まさかな。
 そんな彼は今朝、一つの異物を隣家に見つけてしまった。案山子のように表札の前で立ち尽くしていた中年の男で、まだ禿げてはいないが髪の密度はかなり薄い。枯れ木ばかりで殺風景な冬の山のごとく、まだらに地肌が窺えた。土気色の皮膚は張りもなくたるみ、ずんぐりとした胴体からは粘っこく陰気な雰囲気が垂れ流されている。背景の家々がおしなべて小綺麗なだけに、存在そのものの違和感が嫌でも目についた。
 彼は人のよさげな笑顔を湛えて「おはようございます」とその隣を早足で通り抜けようとした。しかし、
「おはようございます、瀬野さん。お仕事ですか」
 その男のひどく乾燥した声に、彼は二つの意味で驚かされた。
「えっ!? ええ、まあ」
「そうですか、いや、ご苦労様です。まだ朝の六時だというのに瀬野さんは働き盛りですな。立派な方だ。さぞかし瀬野さんは職場でも頼りにされている、優秀な会社員なのでしょうねえ」
「あの、いえ。いえいえ、私なんてまだまだですよ」
「そんなご謙遜を。運に恵まれ能力に恵まれ、うらやましいかぎりです……や、失礼しました。瀬野さんとて並々ならぬ努力をされてきたでしょうに、それを一言恵まれていると片づけるのは浅はかというものでしたな。いやいや、さもしい俗人の単なる羨望と受け取ってくださいませ。ただしかし、いけないと思っても憧憬を抱かずにはいられないのです。瀬野さんには、確かお子さんがいらっしゃいましたね。男の子で、今は小学三年生、でしたか?」
「……ええ」
「お子さんにとっても、よき目標となる父親そのものではありませんか。私なんかは、娘がいるんですがすっかり舐められてしまって。どちらに似たかは知りませんが出来の悪い娘です。どこで何を間違えてしまったのやら。後悔の念に耐えませんが子どもは親の写し鏡と言いますから、つまりはそういうことなのかもしれませんがね。いやはや、社会のためにも家族のためにも、瀬野さんには更なる活躍が期待されますなあ」
「あの、はい。若輩者ですが、尽力させていただきます」
 はははと口の端を釣り上げる彼だったが、その頭の中ではひっくり返された知人の記憶がさながら嵐のように飛び交っていた。
 頭が四角い、というより底辺がやや長い台形とたとえられよう寝間着姿の中年男。だらしなく伸びたベージュのスエットをまさぐり腹をかく男は、狂言面のようなのっぺりとした笑みを顔にはりつけ、眼窩に収まりきっていないのではと思われるギョロ目をぐるぐるとせわしなく動かしていた。近所づき合いを妻に任せきりにしていたとはいえ、彼は目の前にいる男にまるで心当たりがなかった。
 一体誰なんだ。さっきから名前を呼ばれているがこんな顔に覚えはない。自分が知らないだけで、前々からこの近くに住んでいたというのか。場違いも甚だしい。こういう幸の薄そうな中年親父は、閑散としたシャッター街をさまよっているのがお似合いだろうに。
「一方で瀬野さん、やれ私のようなものは鼻息で消し飛んでしまうほどにか弱い存在ですが、どうにかならないものでしょうかねえ。家に帰れば家族に邪険にされ、外へ出たって落ち着く場所もない。愛想がないと言われて笑顔を向ければ、不愉快だとこれみよがしに嗤笑される始末。生き辛いたらありゃしません」
「そうですねえ」
「正論と屁理屈をこねくり回して、声の大きな人ばかりが強い社会。そうそう、例えばタバコです。吸わなきゃやっていけませんよ、全く。瀬野さんだってそうでしょう。タバコの一本や二本、何だというんでしょう。頑張った自分へのちょっとしたご褒美ではありませんか。会計を済ませ、税金も払い、場所にまで気をつけているというのに臭いが不快ですと? とんでもない。ひどい話じゃないですか、ねえ、瀬野さん」
「そうですねえ」
 彼は気づかれないよう、何度も男の顔を凝視した。
 これほどの男なら、一度会っていれば印象が強烈に記憶に刻まれそうなものだが、隣に向かいに斜向かい、どの家人の顔とも一致しない。が、しかし、現に男はここにいて、責め立てるように彼の名前を連呼している。隣家の客人ではないとすると、状況からしてもっとも妥当なのは、
「あの……島、崎、さん」
「何でしょう?」
 勘で隣家の苗字をつぶやいた彼は、ほっと息をついた。
「ええっと、島崎さんはどうなさったんですか、こんな朝早くに。ジョギングや犬の散歩という訳ではないようですが、お仕事へは?」
「今日は行きません」
「お風邪ですか?」
「いえいえ、ご心配なく。親が体だけは丈夫に産んでくれたものでしてねえ」
 飛び出た眼球にまぶたを下ろして島崎さんが目を細める。一方彼はかすかに眉を寄せた。
「よろしいんですか?」
「何がです?」
「何って、もちろん会社ですよ」
「ああ……」
 ああ、ではない。
「いえね、今は会社へ行く以上に大事な用があるんです。誰かに私のお話しを聞いていただかなければなりません。数日前からこうしてたくさんの方々にお声がけしているのですが、そういった訳です。成果はあまり芳しくはありませんがね」
「はあ、それはそれは」
「しかし、やめる訳にはいきません。私の人生が懸かっているんです。社会に抗うことすら厭いません。いえむしろ、これからは抗います。抗って見せます。そのために私はここにいるのですから」
「それはそれは」
「そしてついに今日、こうして瀬野さんとお会いすることができました。ようやく私の話に耳を傾けていただける方が現れたのです。ようやくです。運命共同体とたとえるのは少々大袈裟ですが、瀬野さんに是非とも協力をお願いしたく思っておりまして、実は――」
「それはそれは……おっと、もうこんな時間ですか。申し訳ありませんが島崎さん、もうすぐ電車の時間なんです。お話でしたらまた後日、私のほうから改めてお伺いしますので今日はここまでということに。では、私はこれで」
「瀬野さんっ!」
 そう言って彼が踏み出そうとした足の甲に、島崎さんの鋭く興奮した声がざくりと刺さった。
「瀬野さん、待ってください! 待ってください、お願いします!」
 釘で打ちつけられたかのように、地面に磔となった足はびくともしない。身動きの取れないでいる彼に島崎さんは詰め寄り、懇願するような眼差しでもって彼の顔をじっと覗き見た。
「瀬野さん、私のことをとんでもない怠け者だとお思いになられたでしょう。いい年をして無責任な人間だなどと軽蔑されたことでしょう」
「そんな、私は別にそんな風には――」
「違うんです、瀬野さん。これには訳があるんです。実は近々よくないことが起こるんです。とてつもなく、よくないことが」
「だから私は……いえ、穏やかじゃないですね。よくないことですか。何が起こるんです?」
「それは、はっきりとは言えません」
「危険な状況なんですか? 私にとっても、島崎さんにとっても」
「いえ。今すぐにでも手を打てば未然に防ぐことは可能です」
「天災か何かですか? 被害の規模は?」
「最悪の場合、死傷者が三名でしょう」
 なんだ、案外しょぼいな。
「詳しい内容までは言えません。瀬野さんが余計な先入観は持ってはいけませんので。ですがその予兆を強く感じているんです。ここ数日前からです」
「はあ……そうですか」
 唇を湿らせ、喉を鳴らして島崎さんは更に続けた。
「ことは一刻を争います。悠長にしていられる時間はありません。最悪の事態にならないよう早急に対策を練る必要があります。が、私一人ではどうすることもできません。力不足なんです。恐ろしいことが起きるとわかっているのに、私の力だけではそれを防ぐことが叶わないのです。そもそも根本的に、私一人だけでは駄目なんです。協力が不可欠なんです」
 大真面目な口調からは、悲痛さすら汲み取れた。すがるような思いを目の奥に宿して、島崎さんは相変わらず、眉を八の字に垂らした情けない笑みを浮かべたまま必死に訴えた。
 島崎さんの言わんとするところの主旨は、彼もなんとなく理解した。要するに『事情は聞かず黙って手を貸せ』と。
「瀬野さん」
 島崎さんの猫背が伸びる。
「お願いがあります。今日はお仕事をお休みください」
「は?」
 ぽかんと彼は口を開けた。
「協力してください。今日一日、私につき合ってください。私の話をじっくり聞いてやっていただきたいんです。どうかお願いします」
 そう言って島崎さんは深々と頭を下げた。
 彼は今しがた発せられた言葉の意味を理解するのに苦労した。しばらくの間は、瞬きすらも忘れていた。だが次の瞬間には、腹の底から湧き出した激しい笑いが、間欠泉のごとく彼の口をついて高らかに噴き上がった。
 閑静な住宅地の清澄な空気を、壊れた笑い袋のように空回りした笑いが小刻みに振るわせた。島崎さんが、ぎしぎしと音が聞こえてきそうなほどにゆっくりと頭を上げた。
「そのように気持ちよく笑っていただけるほうが幸せなのかもしれませんね。同じ話をしましたが、皆さんにはけんもほろろに突き返されてしまいましたから」
 そりゃそうだ。
 彼にしても、滑稽由来は笑いの内約の三割でしかなかった。
「中にはあからさまな侮蔑を示される方もいらっしゃいました。いえ、それこそが正しい反応でしょう。たまたま近所に住んでいるというだけの私からこんな荒唐無稽な話を聞かされて、信じられないというのも無理ありません」
 当たり前だ。
「しかし瀬野さん。私が言っていることは本当のことなんです。信じられないかもしれませんが、事実なんです。他でもない私だからこそ、それははっきりと感じています。瀬野さんが最後の頼みなんです。私にはもう時間がないんです。お願いします、お話を聞いてください」
 ついに島崎さんは膝を地面につき、両手もついてがくりとうなだれた。
 ひいひいと、目尻にうっすらと涙をにじませながら笑いを押さえる彼は、しきりにそのつま先同士をこすり合わせていた。決して水虫なんかのせいではない。
 話なら、もう十分聞いてやったさ。
「島崎さん、きっとお疲れなんですよ。自分でも気がつかない間に心労が溜まって、ありえない幻や強迫観念に追い回されてしまっているんです。最近は何かとストレス社会ですからね、そう珍しいことでもないでしょう。今日一日お休みになられたら、近くの心療科なり精神科なりでカウンセリングを受けられるのをお勧めしますよ」
 では、と断って再び一歩踏み出した。案の定釘が飛んだが、来るとわかって身構えていればどうということはない。
「お大事に」
 彼はにこにこ愛想笑いを置き土産に、どたどた慌ただしく坂を駆け下りていった。
 定刻発車の通勤電車は、いつも通り早朝なだけあって空席のほうが目立つほどだった。彼は好きなシートをゆっくり選び、どさりと腰を降ろしてブリーフケースを膝に置いた。
 くぐもった癖のあるアナウンスの後、電車はがたんと大きな音を立てて発車した。
 彼の真向かいには、無精髭を生やした若い男性がぴんとした真新しいスーツに身を包み、両耳にイヤホンを突っ込んで目を閉じていた。他の乗客も携帯を覗き込んでいたり、ぼんやりと視線を明後日の方向へと向けていたりといつも通りの光景だった。
 そんないつも通りたちに囲まれた彼もまた、それらに倣って鞄を抱え、いつも通り目を閉じた。
 乗り換えまでは、まだまだ長い。


 七つ目の駅への到着を告げるアナウンスが流れた、その直後のことだった。
 ぼうっと意識を遊ばせていた彼は、ひりひりと、まるで火に肌を焦がされるかのような違和感を覚えた。それはあまりにはっきりとした違和感だった。顔の傍でライターでも弄ばれているのではなかろうかと、そんな不安が頭によぎるほどの感覚だ。
 今度は何なんだ。
 彼はあからさまに憮然とした表情を浮かべ、その眉間に深くしわを刻んだ。日頃はつとめて温厚な性質である彼も、今朝は島崎さんの一件のせいで虫の居所が悪かった。
 鋭く眇めた眼差しでもって、彼は熱線の元凶をきっと睨みつけた。そして氷に心臓を掴まれたかのように、ぞっとした。
 島崎さんが立っていた。
「っ!?」
 寝巻き姿にくすんだベージュ色をした島崎さんは、林立する黒々とした人だかりに佇む一本の異物だった。つり革も掴まずにだらりと両手を垂らし、情けない笑いを浮かべたままじっと彼を見下ろす島崎さん。真っ赤に燃える双眸は電気炉の観察窓を、腰をしならせて顔を覗き込む様相は枯れ柳を髣髴とさせた。
「お願いします、瀬野さん」
 耳障りな音をぎいぎいと響かせながら、電車がゆっくりと動き出した。彼は咄嗟に視線を床に切り、認めたくない現実に知らぬ存ぜぬを突き通そうとした。車内の空調は暑いくらいだというのに全身が総毛立つのがわかった。
「せめてお話だけでも。それだけで、ひょっとしたら私は救われるかもしれないんですよ」
 島崎さんの言葉はどういう訳か、雑音があちこちに反響する車内にもかかわらずねっとりと耳にまとわりついてきた。決して声を張っているのではない。むしろ低く不明瞭で、それは羽虫の唸りにも似たささやきだ。現に繰り返し呼びかける島崎さんに、他の乗客たちは一瞥すらくれようとしなかった。
「お願いします、瀬野さん。お願いします。瀬野さん。瀬野さん。瀬野さん」
 額に鼻にと汗が浮かんだ。彼は石のように体を硬直させ、時間が過ぎるのをただひたすらに耐え続けた。乗り換えの駅はまもなくだったが、何度も名前を呼ばれるあまり一秒一秒がきりきりと真綿のように引き伸ばされる。
 このまま露骨に無視をつきとおす自分は、他人の目にどれほど薄情な人間に映るだろうか。それは彼自身も心得てはいた。しかしそれでも、今更島崎さんへ向き直ることを、彼の無意識は許してくれなかった。
 やがて次の駅に停車した。毎朝いくつもの電車が乗客をたっぷりと吸い上げる巨大な駅で、彼が待ち焦がれていた乗り換えの駅だ。
 彼はドアが開いた途端にバネ仕掛けのおもちゃさながらに立ち上がり、島崎さんの脇をすり抜け一目散に車外へと飛び出した。入れ替わりに黒服の一団がどっと車内に雪崩れ込む。
 混雑する構内を縫って走る彼は、半ば転げ落ちるように慌ただしく階段を駆け降りた。足がもつれて、何度も鞄をぶつけては詫びを言った。しかし決して振り返ることはしなかった。
 ホームに並ぶ電車はどこもかしこも鮨詰め状態だった。彼の目指す乗り換え電車も例外ではなく、ドアが乗客の鼻を挟みかねないところも珍しくはなかった。だが焦燥に駆られる彼に冷静さも余裕もありはしない。
 急がなければ。逃げなければ。身を隠さなければ。
 考えるより先に体が動き、彼は無我夢中で肉壁へと体当たりを食らわせた。
 罵声も何もおかまいなしに無理やり体をよじり、みちみちという音に包まれながら壁と同化する。肺がうまく膨らまず内臓が左右から圧迫される。汗や化粧でスーツが汚れる。
 しかし今は、そんなことすらどうでもよかった。
 車両の中ほどまで進んだ頃、ようやく彼は後ろを見た。あたりは一面が黒く染まっていて、中年の吐息に白く曇ったガラスの向こうにも島崎さんの姿は見当たらなかった。
 うまく撒けたか。
 駅員の野太い声を合図にドアが閉まり、ようやく彼は胸をなで降ろすことができた。そのまま床に座り込んでしまいたいくらいだった。
 幾度かの乗り換えを挟んだが、彼が再び島崎さんと鉢合わせることはなかった。
 それからは誰かに足を踏まれたり肩口でくしゃみをされたりと、慣れ親しんだいつも通りたちが次第に彼の周りをたむろするようになった。ようやく平穏が帰ってきたと、彼は靴裏にこびりついたガムでさえ愛おしく思った。
 とある生保会社の受け持つオフィスビルの八階が彼の職場である。デスクに荷物を置くと、息づく間もなくミーティングで本日の目標というノルマが課長から告げられた。ちなみに今月のノルマは一人当たり五百万円。合言葉は、一円足らずは人に非ず、である。
 八時四十分をすぎると、職場の電話が一斉にがなり始めた。
 彼もいつも通り業務に取り掛かった。しかし今朝の一件が尾を引いているのか、その動きは一切の精彩を欠いていた。新人の頃にすらしなかったケアレスミスに書類の雪崩。距離感を見誤った指先は電話を突き飛ばし、はじかれた受話器がぶらぶらとデスクから宙吊りとなる始末である。初めこそ笑って誤魔化すことができたが、背中に感じる冷ややかな視線は増える一方だった。
 やがて彼は休憩と称して席を立った。頭皮の下で這い回る苛立ちに、体がタバコを求めて音を上げたのだ。
 昨今は受動喫煙の問題から分煙が叫ばれて久しい。彼の会社もご多聞に漏れず、喫煙所はフロアのはるか辺境へと追いやられてしまっていた。本来であれば一服することに負い目を感じる道理はないのだが、人目につかないところで煙をくゆらせていると、自分がちんけな遊びに興じる不良に成り下がってしまったような錯覚を起こす日も少なくなかった。
 声の大きな人ばかりが強い社会。
 不意をついて、そんな言葉が脳裏によぎった。すると芋づる式に、望んでもいない島崎さんの顔までもが記憶に蘇ってきてしまった。彼はケースからタバコを取り出しながら渋面を浮かべた。
 俯き歩きもって何度目かわからないため息をついていると、ふと彼の視界が喫煙所内の先客を一人、その端にとらえた。うちの課員か、それとも他の部署だろうか。何の気なしに顔を上げ、労いの言葉を喉元まで出しかかった。
 島崎さんがそこにいた。
 彼は手にした貴重な一本をくしゃりとへし折り、ふざけるなとばかりにケースへめちゃくちゃに押し戻した。
 どうして。
 島崎さんは諦めてなどいなかったのだ。すぐさま踵を返し、彼は本能が命ずるがまま、逃げるように喫煙所から立ち去った。
 どうやってここまで来たんだ。この職場を島崎さんら近隣の誰かに話した覚えはない。仮に知っていたところで、そもそも関係者か来客でなければビルのフロントを通過できない。あんな格好で、不審に思われないはずがないのに。
 訳がわからなかった。
 それからはいたるところに島崎さんの影は現れた。食堂の一角に、応接室のスモークガラスの向こうに、休憩所の自販機の前に、給湯室にトイレにエレベーターに、果ては取引先の背後に島崎さんの影を見た。
 島崎さんはもう、自分から声をかけようとはしなかった。手を伸ばすことも、彼の行く手を阻むこともしない。そこにいる。ただそれだけだ。しかし島崎さんの無言のプレッシャーは彼の精神を着実に追い詰めていった。
 どこにいようとも島崎さんは幽霊のように現れ、そして霞のように消えて行く。助けを求めようにも彼以外は島崎さんのことなどまるで見えていないらしく、同僚たちは皆が一様に、彼が切望するいつも通りをのんびりゆったり、これ見よがしに楽しむばかりで全く当てにならなかった。
 苛々とキーボードに八つ当たりをしていると、デスクトップのアイコンが反転し、くるくると島崎さんの情けない笑顔に変わっていった。
 鋭く声をあげてデスクから飛びあがると、きゃっ、と誰かにぶつかった。
 声は明らかに女性のものだった。けれども彼が振り向くと、もう一人、息がかかりそうなほどのところに無言で立ち尽くす島崎さんもそこにいた。


 前のめりに倒れるすんでのところで、彼ははっと目を開けた。向かいの席には夢と現実との区別もつかない男の間抜け顔が、暗がりに包まれた街衢を背景に、ガラス窓からこちらを覗いていた。
 日付を跨いで走る夜行列車には、酸えた疲労と、崩れた化粧の残り香ばかりが漂っていた。
 いつから眠ってしまっていたのだろうか。とんでもない夢を見ていた。
 彼は不自然な体勢に凝り固まった筋肉をほぐしながら、しかし、無理もないかと辟易した。
 電車を降りると、彼は今朝方走り降りた道を逆に辿って家路を急いだ。何も熱い風呂と柔らかい布団が恋しかった訳ではない。彼は顔にも体にも不快な脂汗がべっとりとこびりついていたが、その歩みをはやらせていたのはひとえに純粋な恐怖心故だった。
 暖かみに欠けた白い街灯が生み出す小さな孤島を、足はいくらも踏みしめることもなくせわしなく動く。物陰からあの顔がぬっと現れはしないか、背後からまた名前を呼ばれはしないか。いもしない島崎さんの影に怯える彼は、真夜中に人の顔を天井に見つけた子どもも同じだった。
 時折我に返っては、彼は気付けと激励を込めてその顔を平手で力のかぎり張った。
 いくらなんでもこの時間だ。待ち伏せなんてされるはずがあるものか。確かに気味が悪いし不安はあるが、いい年をした大人がいちいちそんなことで怯えていられない。
 疲れから弱気になっているだけだと、彼は道中で何度も首を振った。大きく息を吐き、よからぬ考えを体から追い出してしまおうともした。
 しかし悪い予想というのは、得てしてよく当たるものである。
 島崎さんは待っていた。
 ……畜生め。
 時刻はとうに一時を回っている。自宅が見えたと同時に突きつけられた絶望に、彼はその場に膝から崩れ落ちそうになった。
 今朝と同様、その影は島崎さんの自宅の前でぼんやりと立ち尽くしていた。
 誰かを待っている様子ではなかった。身じろい一つせず、苦心して手に入れたマイホームと向かい合って思索に耽っている。そんな印象だった。
 もっとも、だからといって彼の帰宅が困難な状況にあることに変わりはない。何しろ隣家である。いかに楽観視しようとも、砂利の一つでも踏んでしまえば、街灯に青白く浮かぶ笑顔が「実はお話があるのですが」とたちまち迫ってくるのではないかという懸念を拭い去ることができない。想像するだけで身の毛がよだった。
 すぐさま暗がりに身を隠し、そっと島崎さんのほうを窺い見る。時期が時期だけに、野宿をして低体温症にでもなってはたまらない。進むか戻るか、示された選択は二つに一つである。彼の中では利己的な天使と小胆な悪魔とが激しく葛藤した。
 これほどまでに粘着質な人間だとは予想外だった。もはや素知らぬふりをして生活することは諦めざるを得ないだろう。異常という一言で片づけるには、島崎さんはあまりに執念深い。ややもすると、自分だけでなく家族にまで害が及ぶ可能性だってある。ここは素直に出て行って、辛辣な皮肉を覚悟で頭を下げたほうが得策か……いや、待てよ。島崎さんの追跡がこれからも延々続くというのは、あくまで自分の予測に過ぎない。今日さえ乗り切ってしまえれば明日からは再び平穏が訪れる、そんな未来がないとも限らない。それにここで自分の非を認めてしまえば、それに漬け込んで今後どんな不利益を被る羽目になるかもわからない。結論を急がず、駅前のネットカフェで一晩を過ごして様子を見てみるというのも、一つの手かもしれない。
 どちらも一長一短だった。
 どうしたものか。
 彼が頭を抱えた――そのときだった。
 突然、島崎さんの自宅からけたたましい騒音があがった。食器が割れる鋭い音に重たい棚が倒れる鈍い音。かすかに聞こえる女のすすり泣きと、それに覆いかぶさる野太い怒声。さすがの彼もこれには色を変えて暗がりを飛び出し、もつれる足で半ば放心状態の島崎さんに駆け寄った。
「島崎さん、何ぼんやりしてるんですか! 強盗じゃないんですか! 早く警察に――」
「どうやら始まってしまったようです」
 彼の詰問を遮り、島崎さんは視線を合わせず呟いた。自宅の異変など意に介した様子はまるでなく、その口調は気味が悪いほどに穏やかだった。
 肩透かしをくらってまごつく彼へ、島崎さんは更に続けた。
「自分を抑えきれなくなってしまったんですよ。堪えれば堪えるほど、たがが外れたときの反動が大きくなる。何だってそうでしょう。今まではどうにか私一人で押さえ込むことができていましたが、それは根本的な解決なんかではなく、その場凌ぎに過ぎません。辛抱強く、私は随分と我慢してくれたと思いますよ。私は今週いっぱいが関の山だろうと、限界だろうと感じていました。だから隣人である皆さんに助けて頂こうとしたのですが……」
 島崎さんが向き直った。今朝の燃えるような目はすっかりくすぶり、そこには失望がはっきりと浮かんでいた。
「あなた方が隣人で残念でした。いや、虫のいい話といえば、それまでなんですがね」
 気がつくと島崎さんの家から聞こえていた騒音は止み、辺りには静けさが戻っていた。あれは一瞬のことだった。
「今日はもうお休みください。こうなってしまっては、お願いできることはもうありません。最後くらいは自分の手で片づけます。瀬野さんも、もう私なんぞとは関わり合いになんてなりたくはないでしょう?」
 それだけ言うと、島崎さんは死んだように静まり返った我が家へと姿を消した。
 彼は最後の最後だけお節介にも警察へと連絡し、まもなく到着したパトカーの回転灯に閑静な住宅地は明々と照らされることとなった。すると目に喧しい光は時間を追うごとに一つ、また一つと次第に増えていき、ついには救急車まで到着するほどの騒ぎとなってしまった。
 島崎さん一家全員の死亡は、翌日の昼にはテレビで小さく報じられることとなった。そこでは島崎さんの母娘にはいくつもの外傷があった点、島崎さん自身は明らかな自殺であった点、島崎さんによる無理心中の可能性が高いという警察の見解をキャスターが神妙な顔で述べていた。
 しかし生気が欠けて目鼻の埋もれた、能面のような顔をした一人の中年男について、世間が関心を向けたのはそのわずか数分間だけだっただろう。次の瞬間には誰とも知らない芸能人のゴシップニュースに切り替わり、キャスターは清々しい笑みを浮かべていた。


 やがて月日が経ち、隣にとある親子が引っ越してきた。野田さんという、まだ小さな男の子を連れた幸せそうな一家だった。
 ある日、彼が仕事で街を歩いていると、野田さん宅のご主人とばったり出くわした。丁度息子も手がかかり、妻も化粧で誤魔化しきれないしわが目立ってきた頃だったので、愚痴の一つでも聞いてもらおうと野田さんを呼び止めた。しかし野田さんは、仕事が忙しいからと言って、そそくさとその場を立ち去ってしまった。
 遠ざかるその背中を見つめる目に、果たして何が浮かんでいるのか。せめて野田さんを追いかけないようにと、彼はただそれを願うことしかできなかった。

隣人 ©如月

執筆の狙い

初めてこちらを利用します。
自分の描いたものが他の方々にはどのように映っているのだろうかと思い、投稿しました。

内容、構成、文章マナー、感想やご意見などいただけましたら幸いです。
理由も添えていただけるとありがたいです。

如月

122.145.232.159

感想と意見

でしょ

とりあえずいろいろと異常な感じ? とか馬鹿な言い方で申し訳ないんですけどそんな感じのことが書かれているものとは思うんです。

普通に読むなら島崎さんは島崎さんじゃないものとして読むと思うんですよ、あたしはそのつもりでした。あ、ネタバレかな? っつかあんまり意味ない感じだからいっか、って勝手にすみませんです。


”声の大きな人ばかりが強い社会”

って何度か出てくるんですけど、島崎さんの現実味のない神出鬼没さと何か関係あるんですか? 読む人みんなが島崎さんが神出鬼没に振舞うことは全く当たり前に予感してしまうんですけど、その理由については多分着地出来る人少ないんじゃないかなあ。
あたしは馬鹿なので、最後の場面、島崎さんちでどういった経緯で何が起こったのか、そんなことさえ理解できてないです。
島崎さんちでどうしてそれが起こってしまったのか、それに理由はあまり必要なさそうなことだけは何となく理解してます。

目の前で起きたショッキングな出来事と所詮小さな扱いのニュース、そのコントラストはわかりやすいですけどあたしはただの雰囲気だと思っていて、やっぱりその意味は全然わかってません。

瀬野さんが野田さんに話しかけますが、そんな例えば結末らしき主人公としての肯定の意味も全然わかってないです。

”声の大きな人ばかりが強い社会” に何とかこじつけられなくもなさそうな雰囲気こそがあたしはそもそも説

2017-08-30 20:48

119.241.20.37

山口 夕

如月さま

 少なくとも終盤において、私は「瀬野」が話した「島崎さん」は本体(と呼んでいいのか分からないけれども)から離れた"良心"が具現化したものとして解釈しています。以下に続く感想・意見もそれに従ったものとなりますことをご了承ください。

 三人称視点を主軸にしておられるのなら、「島津さん」の心情描写を入れた方が分かりやすかったと思います。逆に「瀬野」の一人称視点で「彼」の心情描写を深くする手もあったかと思われます。前者の場合は
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 島津は限界だった。"島津"自身を抑えることはもはや彼の手には余ることだった。少なくとも彼にとっては愛しいはずの妻と娘が別の自分には憎悪の対象以外のなにものでもなかった。
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 といろいろな角度から得られる情報を提示できる三人称視点の利点を活かした方が読者は「この島津は自分と戦っているんだ」と理解しやすくなります。


私の個人的な指摘ですが、
>それだけ言うと、島崎さんは死んだように静まり返った我が家へと姿を消した。
 は
>島津は生きてはいなかった。瀬野は島津の姿から生気と言えるものを全く感じることはなかった。島津はそのまま虚ろな目で彼にとっての「我が家」だったものへ吸い込まれて、消えた。
 のように変えてみるのはどうかと思いました。

 「島津」の影に追われる「瀬野」や「瀬野」がだんだんと「島津」に近くなっていくようなところは非常に巧妙な文章で描かれていると思います。
 全体として、表現力は高いですが、伝える力が弱いために物語に読者が入っていきくく、せっかくの描写の効果が下がっていると感じました。ぜひ続けてください。経験を積んでください。あなたなら素晴らしい作品を世に出せるでしょう。

2017-08-30 21:26

124.240.230.118

如月

でしょさま。
ご感想を寄せていただき、ありがとうございます。

私自身、描き方が遠まわしになってしまうきらいがあり、そのせいでわかりづらい部分があったことと思います。


でしょさまのおっしゃるとおり、このお話の中で登場する島崎は島崎本人ではないという前提で描きました。
抑圧や軋轢に疲弊している自分自身を助けてもらいたいと思念が飛び出した、と解釈していただければと思います。

”声の大きな人ばかりが強い社会”というのは、まず様々な形で立場の強い人がいて、島崎や瀬野のようにそのしわ寄せを食う弱い立場の人間がいることを示したつもりでした。
ただし瀬野は島崎に手を貸すことはなく、弱い立場であるからこそ自分の日常を死守すべく無視を貫き、結果として本物の島崎の我慢が臨海を越えたのが最後の場面です。
ニュースで小さく扱わせたのは”声の大きな人ばかりが強い社会”にとって取るに足らないこと、ありふれたこと、黙殺を表現したかったからです。

瀬野が野田に取り合ってもらえなかったのは、島崎と瀬野の関係の繰り返しです。

疎遠、乾燥、薄情さなどを全体をとおしてのイメージとしたつもりです。
説明は必要ないとのことでしたが、一応、私個人がどういった点を意図していたかということで記させていただきました。


描き方として物事を抽象的に表現することの是非についてはわかりませんが、やはりお話は読み手の方に伝わってこそだと思います。
仮によくわからなかったとしても、読了後に何らかの余韻を残せるような作品であるように描くべきだと思います。

今一度、自分の文章を見つめ直したいと思います。
ありがとうございました。

2017-08-31 20:22

122.145.232.159

如月

山口 夕さま。
ご感想を寄せていただき、ありがとうございます。

描き手の意図としましては、おっしゃられた解釈で間違いありません。


人称についてのご意見、とても参考になりました。

ここでの三人称は、各登場人物たちの関係の希薄さや無関心さなどを表現できるだろうかと考えて選択したものでした。
しかしその分心理描写がおろそかとなり、感情移入しにくいものとなっていたかもしれません。

島崎についても、終始正体不明の存在として扱っていたため、読了後に結局あれは何だったのかと消化不良になる原因かもしれないと考えさせられました。
序盤や中盤は難しくとも、終盤ならあるいは、という気がしています。

三人称視点(一人称も)の効果や描き方について復習してみようと思います。


文章の校正案までいただき、ありがとうございます。

このように自分の作品を第三者の方から客観的に指摘していただく経験は初めてのことなので、とても勉強になりました。
よい作品を描けるよう、これかも経験を積んでいきたいと思います。

ありがとうございました。

2017-08-31 21:07

122.145.232.159

カジ・りん坊

 すいません。冒頭の『あれは何だ』は何なんでしょうか?
 確かに『あれは何だ』とド頭にあれば、興味を引くとは思いますが、それが何なのか? さっぱり判りません。
 結局『こんな朝からお客か。まさかな』ということでしょうか?だとしたら『こんな朝からお客か?』で始めればいいんじゃないですか?

『あれは何だ』と始めてからの取扱説明書のような文章がやたらに長いし、あれは何だに意味が無い。



 

 

2017-09-01 09:06

124.110.104.4

九月が永遠に続けば

冒頭・・
 >この見栄と虚栄の九龍城砦
って形容に引っかかった。なんとなく……「九龍城」って言葉を使いたかっただけじゃねぇの?! と。(そして作中の現地と「魔窟」のヴィジュアルは合致しない…)

でもって、序盤にすぐ来るのが、

 >「そうですか、いや、ご苦労様です。まだ朝の六時だというのに瀬野さんは働き盛りですな。立派な方だ。さぞかし瀬野さんは職場でも頼りにされている、優秀な会社員なのでしょうねえ」
 >「あの、いえ。いえいえ、私なんてまだまだですよ」
 >「そんなご謙遜を。運に恵まれ能力に恵まれ、うらやましいかぎりです……や、失礼しました。瀬野さんとて並々ならぬ努力をされてきたでしょうに、それを一言恵まれていると片づけるのは浅はかというものでしたな。いやいや、さもしい俗人の単なる羨望と受け取ってくださいませ。ただしかし、いけないと思っても憧憬を抱かずにはいられないのです。瀬野さんには、確かお子さんがいらっしゃいましたね。男の子で、今は小学三年生、でしたか?」

“案山子男が主人公の逐一を把握している不気味さ”を出すにしても、“ただ単に作者都合の主人公の情報提示:説明台詞”にしても (←読み手からは「後者」に見える訳ですが…)
序盤に出て来る台詞としては、いくらなんでも「冗長すぎ」で、唐突感ありすぎて、
そこでリタイア。
(締め切り明けで脳味噌干涸びてなければ、最後まで眺めるだけは眺めたかもしんないんですが・・)

主人公紹介は、「鉤括弧台詞頼み」でやられると、読む側うんざりするんで(ごめんなさい…)
地の文に織り込んで、「分かりやすく」書いて欲しい。



文章的には、「年季の入ったワナビさん文体」で、ここのサイトじゃよく見る「中高年(らしい)文章」。

“筆が滑って、ついつい余計な事満載にゴテゴテ盛り込み、書き過ぎている”状態だから、

【無駄を削ぎ落して、抑制のきいた文章にあらためる】といいんじゃないかなー??


ちょっと見た範囲でも「書けてそう」な感じだし、「短編1本まとめ切るだけの技量はありそう」な感じ受けるんで、(←あくまでも、まだ読んでない中での推量…)
現状だと、もったいない。

2017-09-01 10:59

219.100.86.89

如月

カジ・りん坊さま
ご感想を寄せていただき、ありがとうございます。


冒頭の「あれは何だ?」は、一目見ただけでは客とも何とも思えない奇妙なものがある、という瀬野の所感のつもりでした。
そのため、「あれは誰だ?」や「こんな朝からお客か~」としなかったのですが、冒頭でいきなり示したところで意味がわからないなどと感じられるのも納得です。

説明的な文章が長くなるというのは、確かに私の描き方の悪い癖です。
分散して織り込むなど、冒頭と合わせて何らかの修正を考えたいと思います。


ありがとうございました。

2017-09-02 08:44

122.145.232.159

如月

九月が永遠に続けばさま

ご感想を寄せていただき、ありがとうございます。


冒頭の九龍城については、恥ずかしながらおっしゃるとおり、私個人が使いたかったというのが大部分を占めると思います。
魔窟というイメージは登場人物たちの住居のみを自分の中では指しており、お話を進める中での舞台となる電車なり会社には持っていませんでした。

言い換えや雰囲気に合った言葉を見つけられないはずがないので、修正させていただきます。
そして作者の気分で不釣合いな言葉を選択しないよう、肝に銘じます。


島崎の冗長な台詞については、度を越してしつこくしすぎたかもしれません。

粘着性と情報開示の両方を兼ねながら、瀬野の素っ気ない返事にどうにかしてしがみつこうとあれやこれやと言葉をつなげていった結果それが逆効果となる様子を描きたかったのですが、読み手をうんざりさせては元も子もないと思います。
ただし、それ以外の地の文などの冗長さは私の悪い癖に他なりません。

程度の問題なのか描き方として無理があるのか、人物描写の改案も含めて熟考させていただきます。


推敲などで文章を削るのは、まさに私が課題としているところです。
気を抜くと、削るための作業のはずなのにすぐに分量が増えてしまいます。

また文章も、性格の問題なのか年不相応と思われるものになってしまい、小学生が主人公のお話なのにややもすると文章が堅苦しくなったりというのも悩みの一つです。
すっきりした文章、やわらかい文章を描くため、しばらく模索を続けます。

もったいないとおっしゃっていただけて、とても励みになります。
ありがとうございました。

2017-09-02 09:23

122.145.232.159

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