作家でごはん!鍛練場

『404号室』

解けかけの氷(徳明希望さん)著

どうも、伝言板等で好き勝手やり過ぎて、403号室に越すことになったものです。

星新一賞にだそうかなと思っています。率直な感想やアドバイス等ありましたら、宜しくお願いいたします。

 男が自宅マンションの構内へと到着したのは、午前零時を過ぎて日付が変わり、随分と経った頃であった。終電に近い電車に乗って最寄り駅に着くと、駅前のアーケードはどの店もシャッターが閉まりきっていて、酷く閑散としていた。青白く光る街灯たちだけが男を出迎えており、男は電灯のアーチが作りだす一本道のトンネルを、タバコを吹かしながらくぐり、マンションの入口まで辿り着いた。男は何を考えるでもなく、ただボーッとその道のりを歩いていた。意識的に無意識になる時間を設けるのは、この男にとって処世術の一環なのだ。
 タバコの吸い殻を自動ドアの前で投げ捨て、必要性をあまり感じない2人掛けのローテーブルとソファーを脇目に、開放的なエントランスを抜けてエレベーターを待っている間、男は建物内と外気の気温差にやられてブルブルと一度身を震わせると、コートの襟を首元にたぐり寄せた。転職を折りに越してきた高層マンションは築数十年ではあったが小綺麗であり、外観は改装を定期的に行っているおかげか、新築マンションにも劣っていない。男は家賃の安さとそれに似つかぬ保存の良さが気に入り、このマンションの501号室を借り入れることを決めたのだった。当たり前だが、住まいがいっぱしでも俺みたいな男には女は寄りつかないものだな、などと男が自嘲気味に心中で独白していると、エレベーターが到着し、小気味のいいベル音を立てて、目前のドアが開いた。
 エレベーターを降り角部屋である自室の扉の前に立つと、男は妙な違和感を覚えた。解錠しようと鍵を持って伸ばした手を止め、一歩足を退いてみる。ジロジロと視線を扉中に這わせて吟味するが、なかなか違和感の正体が掴めない。ふと、男が隣室の扉を見やると、口をあんぐりさせて間抜けな声を上げた。
「あ」
 扉の色とノブの形が隣室と違う。焦げ茶であったはずのドアは薄緑色になり、ドアノブはレバー式のものから丸い形状のものになっていた。部屋を間違えたかなと、扉脇にある室番の書かれたプレートを確認すると、案の定、男の住まう501号室ではなく、404号室となっていた。男は顔を紅潮させ慌てて早足でエレベーターへと戻り、上矢印のボタンを連打した。他に利用者がおらず止まっていたのであろう、直ぐにドアは開き、男はするりと乗り込むと五階のボタンを押した。ふうと嘆息したのも束の間だった。エレベーターは一向に動き出す様子がなく、遂には男を閉め出すように再びドアを開いたのだ。どうやら階数ボタンを押し損ねたようだと、男はもう一度5階のボタンを、今度は力一杯押した。しかし、何度試してもボタンのランプが光らない。故障かなと、ドア上方にある階表示をみると男は唸るように声を漏らした。
「5階なのか、ここ」
 訳の分からぬ現状への戸惑いから視線をなんとなく逸らした先に、階数ボタンがあった。行儀良く陳列する半透明のボタンを眺めていると、男は思い出したようにある事実に気がついた。
「そうだ、このマンションに4階はない…」
 珍しいこともないだろう。死を想起させる4という縁起の悪い数字を意図的に避けて、このマンションでは実質4階であるフロアを5階としているのだ。部屋番号にも4の数字は飛ばされており、つまるところ、103号室の隣は104号室ではなく、105号室となるわけである。不意に男は目眩を覚えた。トンデモナイ事件に巻き込まれているのではという不穏な予感を察したためだ。足下が崩れ落ちたような錯覚にさえ陥った。嗚咽を漏らしながら自室の扉をスマートフォンで撮影すると、男は隣室の標識が確かに502号室であることを確認した後、1階へと引き返した。男はエントランスのソファーに座ると、110番に連絡を入れ、自宅に悪質な悪戯がなされている旨を伝えた。
 空調が薄く効いてはいたが、纏わり付くような肌寒さはある。男は小刻みに身を震わせながらコートの襟元に顔を埋めて、突如自分に襲いかかった驚異への助けが来るのを待った。。15分が経過したころだろうか、エントランスのガラス壁の向こうに、白い息を弾ませた青い制服を着た2人組の警官が自転車に乗ってやってきた。男はその姿を確認すると席を立って手を振り、自分が通報したものであると知らせるように合図した。
「こんばんは、早速現場をみせてください」
 エントランスに入って男の元へと駆けつけるや否や、険しい表情をした若い男がキビキビと事務的に仕切ってくれるのを、男はとても頼もしく感じた。幾分か先ほどまで募らせていた陰鬱としていた気分も和らいでゆく。
「ええ、こちらです」
 扉の前に付くと、初老の警官が一眼レフカメラで何枚か扉を撮影する。その間に、若い警官へと質問されるがままに、男は事情を伝えた。
「すると、まだ室内は確認していないわけですね」
「はい」
 二人の警官は顔を合わせ、黙って頷き合った。
「では、我々と一緒に室内を確認していただきたいのですが、宜しいでしょうか。もちろん、何者かが侵入していることが考えられますので、先導は我々が切ります」
「ええ、ええ、では、お願いします」
 男が扉を解錠して開け放つと、警棒を構えた2つの青い制服は声を上げながら部屋の中へと下足のまま滑り込み、板張りの床をギシギシと軋ませながら真っ暗な室内を進んでいく。男はその後に続いて、照明のスイッチの位置を教えるなどしながら部屋々々をの中を確認していく。その間、男は胸中で愕然としていた。家の様子が通勤前と比べて一変していたからである。洋室やトイレ、脱衣所、浴室、リビング、ダイニング、キッチン、和室と、クローゼットや天井裏など、人が隠れられそうな所を一通りチェックし終えると、男はその場に崩れ落ち、声を上擦らせて呟くように青い制服達に被害を伝えた。
「家具もなにもかも、なくなっています」
「そうですか。胸中お察し申し上げます。しかしながらですね、我々はこの事件を手に負えそうにない」
 初老の警官がリビングの床に落ちていた一枚の紙切れを拾い上げて、肩をすくめた。
『Not found』
 その用紙には、でかでかと赤い文字でそう書かれていた。
「契約違反でしょう。なにか隣人に迷惑を掛けるようなことに心当たりはありませんか?」
「え、あっ、え?」
 隣人に迷惑を掛けるというのには、心当たりがあった。男の趣味は所謂オーディオで、時間帯も関係なく、自宅にいる間は大型のスピーカーなどで音楽を聴くことが日課となっていたのだ。
「これは、貴方とマンションオーナーとの契約上で定められた行為で有る以上、我々は下手な手出しは出来ません。この事件の解決を望むのであれば、我々警察ではなく、弁護士の先生に相談してください」
「そ、そんな。こんな横暴なことが、許されていいのですか!?」
 二人の青い制服は、困ったように眉を下げ、黙って首を横に振ると、男を1人取り残して、部屋を後にするのであった。

404号室 ©解けかけの氷(徳明希望さん)

執筆の狙い

どうも、伝言板等で好き勝手やり過ぎて、403号室に越すことになったものです。

星新一賞にだそうかなと思っています。率直な感想やアドバイス等ありましたら、宜しくお願いいたします。

解けかけの氷(徳明希望さん)

183.74.192.123

感想と意見

八月の鯨

ダメですね。
書き出しで、捨てました。。


> 男が自宅マンションの構内へと到着したのは、午前零時を過ぎて日付が変わり、随分と経った頃であった。終電に近い電車に乗って最寄り駅に着くと、駅前のアーケードはどの店もシャッターが閉まりきっていて、酷く閑散としていた。青白く光る街灯たちだけが男を出迎えており、男は電灯のアーチが作りだす一本道のトンネルを、タバコを吹かしながらくぐり、マンションの入口まで辿り着いた。男は何を考えるでもなく、ただボーッとその道のりを歩いていた。

↑ マンションの「構内」へ到着してる筈なのに、その直後で「電車に乗って最寄り駅」だし、、、

時系列が酷すぎるし、ショートは「タイトルと書き出しが命!」なんで。。


とりあえず、中身すっとばして(読んでない)、
末尾を確認すると、

> 二人の青い制服は、困ったように眉を下げ、黙って首を横に振ると、男を1人取り残して、部屋を後にするのであった。

↑ 描写が悪い。「二人の青い制服」って語順〜単語のチョイスがダメな感じだし、「結び」としては【弱すぎる】感じする。


短編公募はさー、

【両端をきっちり整える】ようにしないと、一次選考も通れません。

星新一賞って、書きやすいから、確か2700件とか応募あるでしょう??(学生部門は別で)

2017-08-10 19:30

219.100.84.60

地獄極楽丸

部屋を後にするのであった。

賞を目指してるレベルの人に失礼かもしれませんが、
ムーミンのスナフキンを思い出しました

2017-08-10 19:54

1.0.88.18

弥言

あれ? 星新一賞って基本SFじゃなかったでしたっけ?

「課題:あなたの理系的発想力を存分に発揮して読む人の心を刺激する物語を書いてください」

ってかいてありますよ。
私も応募したいなーと思ってネタは考えているんですが。
新しい技術が社会に根付いた未来を想定し、人の営みがどう変わってどんな面白いことが起こるのか?って流れで書こうとしています。

去年は、高性能の義手? その前は宇宙エレベーターとか賞をとってますよ。その前は「二酸化炭素を炭酸カルシウムとしてサンゴに固定、それを大量に行うための変異体作成というアイデア」とか難しいこと書いています。

2017-08-10 19:54

124.86.105.210

いけだうし

 星新一賞には向かない内容かもしれませんね……

 一つだけ言いたいことは

 一文一文が非常に長い。だから読みづらい。特に狙いがない限り、一文一文を短くできるよう努力しましょう。

2017-08-10 21:22

153.178.5.36

加茂ミイル

文体が私と似ている気がしました。
友達になれそうな気がしました。

2017-08-11 00:32

60.34.120.167

ポキ星人

 家賃滞納者に対して、法的な手続きを踏まずに大家なり管理会社がドアをロックしたりドアノブを変えたりする事例は問題になっていて、アパートのトラブルについての一般向けの本などでも取り上げられていますし、たぶん法学部の講義でも扱っていると思います。警察官だって知らないはずはないです。留守中に家具を搬出したとかいう話もないではないのです(これは借主が家賃滞納のまま家具も残して逃げた場合の話が独り歩きしたものかもしれず、アパートに夜帰ってきたら朝あった家具がない、なんてのは都市伝説かもしれませんが)。
 このままではたんに作者が無知なんだろうと感じますし、もし上記事例を知ったうえでこれが意外な落ちになって作品として成り立つのだとでも思っているなら法とか社会問題とかに対するセンスが鈍いとしか思えません。うまいへた以前にこういうものを公募で高評価することは社会的にあり得ないと思います。

2017-08-11 10:24

180.12.49.217

山口 夕

>>二人の青い制服は、困ったように眉を下げ、黙って首を横に振ると、男を1人取り残して、部屋を後にするのであった。
が問題なのは「制服」数え方は「人」ではないためでしょう。
書き換えてみますと
>>二人は困ったように眉を下げ、黙って首を横に振った。そして、2つの青い制服は男を1人取り残して、夜の街へ戻っていった。
のようになります。

冒頭部分については
男が自宅マンションの構内へと到着したのは、午前零時を過ぎて日付が変わり、随分と経った頃であった―――

終電に近い電車に乗って最寄り駅に着くと、駅前のアーケードはどの店もシャッターが閉まりきっていて…
のようにダッシュ(―)を利用することで時系列を整理できます。
いけだうしさまがおっしゃる「文」というのは「段落」であると解釈して書きますが、段落が長いという点については私は問題はないと思います。相性があるのかなとは感じますが、気になさる必要はないのではとは思いました。

2017-08-11 19:27

124.240.230.118

なんだか頭の中のイメージを先走って書いてしまっている感じかな。
読者にわかる様、創ったものを整理してからもうちょっと丁寧に書かないと。

あと、説明的に描き過ぎて回りくどい。文と文の繋がりを意識して単語の取捨選択をしましょう。


文の切り方や単語の分割統合を意識した添削例をひとつ。


 男が自宅マンションの構内へと到着したのは、午前零時を過ぎて日付が変わり、随分と経った頃であった。
 その日も終電近くの電車に乗って最寄り駅へ着いた。駅前のアーケードはどの店もシャッターが閉まりきっていて、酷く閑散とし、青白く光る街灯たちだけが男を出迎えている。男は電灯のアーチが作りだす一本道のトンネルを、タバコを吹かしながらくぐり自宅マンションまで歩いた。何を考えるでもなく、ただボーッとその道のりを。意識的に無意識になる時間を設けるのは、男にとって処世術の一環なのであった。



読点と動作は一文三つ位まで(セリフ用読点含まず)でないと異様に読みづらくなるので注意。

2017-08-11 21:34

153.193.108.229

解けかけの氷

皆様、返信遅れてしまい、申し訳ありません。

八月の鯨さま>
書き出しの時系列は、敢えてそうしました。ですが、後日自分で見直してみても、時系列が戻るまでが長くなりすぎて、単純に整理出来ていないように見えます。

最初の一文をカットするなり、マンションの到着時間から、駅の到着時間に書き換えるなりしてみます。

終わりの文章も名文っぽくなるよう、工夫してみます。

アドバイス、有り難う御座いました。



地獄極楽丸さま>
感想有り難う御座います。
では、二人の警官は純白のマントを翻して、ベランダからハングライダーで飛びったったなどに改稿しておきます。


弥言さま>
賞の特設ページをみる限りそのようですね。失念しておりました。
舞台設定を近未来風に変えて、端々に現代には存在しない品々を登場させることにします。
アドバイス有り難う御座いました。



いけだうし様>
後日、自分で読み返してみて、句点を挟んで、二語に分けるべきだなと思われる箇所が見つかりました。ご指摘有り難う御座います。
以後、気を付けるようにします。
アドバイス有り難う御座いました。



加茂ミイル>
感想有り難う御座います。
次はもう少し個性がでるよう、気を付けます。



ポキ星人さま>
そういった作品の常識性に対するツッコミ助かります。法にも、社会問題にも疎いものでして。
自分の表現したかったものに目が行き過ぎたようです。深く考えずに、オーバーな結末にしてしまいました。
その事も踏まえて、家具類が奪われるのではなく、マンション側が経営しているオンラインサービスが利用不可能になる、というものに改稿いたします。
アドバイス有り難う御座いました。


山口 夕さま>
結末の添削有り難う御座います。参考に書き直そうと思います。
段落長さについては、僕も問題はないと思います。

―については、汎用性がありすぎて、上手に使いこなせる自信がないのですが、今後、作風に合わせて活用できたらなと思います。
アドバイス有り難う御座いました。



熊さま>
根本的な問題のご指摘有り難う御座います。
確かに、客観的に書ききれていないとおもいます。
そうならないよう、どういった工夫が必要なのか、勉強してみます。

文章の長さ。句読点につきましても、すっきりさせるよう、気を付けるようにいたします。
アドバイス有り難う御座いました。

2017-08-13 19:17

1.75.3.10

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