作家でごはん!鍛練場

『空』

料簡著

空という漢字から話を膨らましました。
ばらばらの内容からいろいろな事実が浮かびあがってくると面白いかなと思って構成を組み立てています。
上手く伝われば幸いです。

〈ある美術館の話〉
 ある国のある地方のある都市のある町の片隅に、寂れた美術館がありました。
 しかし、それは一見しただけでは、ただの廃館にしか見えません。例えば、観光目的で美術館までやってきた人が十人いたとします。おそらくは十人が十人とも入り口に書かれた開館の文字と、壁に書かれた掠れて見えにくくなっている美術館のネームプレートを見るまでは、そこが美術館とすら気づかないでしょう。
 老朽化しきっている外観の造りは一見まるで古典建築物のようですが、そこに一切の芸術性はありませんでした。どれくらい芸術性がないかというと、町内の悪ガキによってこの美術館の壁に無造作に書かれたラクガキぐらいありませんでした。
 中の造りも外と同じく朽ちていました。一応、運営されているので、毎日掃除されていて、清潔にはされていますが、老朽化は誤魔化しきれていません。天井を見ると黄ばんでいて、雨漏りでもしているのかよくわからないシミもあります。壁に目を向けると内装は所々剥がれていて、誰が開けたのかぽっかりと穴まで空いていました。その穴の奥には配水管が丸見えです。また、美術品を照らすライトこそすべてついていますが、作品を管理するために重要な空調は壊れているらしく館内の空気は埃っぽく寒々としていました。
 そんな様子でありますから一日の観覧客も多くて指折り数えるほどしかおらず、むしろ数える必要もない日の方がほとんどでした。
 そもそも、この美術館には集客力を期待できる目玉の美術品がありませんでした。そこにあるのはどれも誰も知らないような無名の画家の、しかも、二流か三流の作品の模造品(レプリカ)しかありませんでした。数点だけ本物がありますが、あくまでどれも三流作品でしかありません。
 これも仕方のない運命でしょうか。そんな美術館もある日取り壊される事になりました。取り壊される事に町の人々は誰も反対しようともしません。もちろん感慨など誰も持ちません。町民は始めからこのあってもなくてもいいような美術館に関心など無かったからです。
 取り壊されるに当たってこの館内に保管されていた美術品もどうにかしなければならなくなりました。本来なら美術品は他の美術館に寄付をしたり、オークションにかけたりしますが、ここにある二流三流の模造品ではどこも美術館も引き取ってはくれません。ましてやオークションにかけられたとしても売れる事などないでしょう。結局、数点あった本物だけがオークションにかけられて他は焼却処分されてしまいました。
 オークションにかけるといっても決して売れる事を期待してかけられたわけではありません。むしろ逆でした。どこの馬の骨とも知らない芸術家が作ったとはいえ、さすがに本物をいきなり焼却してしまうのは彼らに悪いという善意の欠片もない同情から、焼却する理由をつくるため、オークションにかけられたにすぎませんでした。
 結局、オークションに出された作品の内、売れたのは一作品だけでした。雲がまばらに散る青い空の絵です。作者は不詳。ただ、そのキャンパスの裏に作品のタイトルらしき文字が書かれていました。そこには東方の小さな島国の文字で一字『空』とだけ書かれていました。
「はっきり言って何の価値もない作品だ。ともすれば贋作よりも価値はない。落札した人間はよほどの物好きだろう」と関係者は語っています。ちなみに落札価格は行われたオークションの中で最も高値だったそうです。不思議な事もあるものです。
 そして、期待通りオークションで売れ残った他の作品は残しておく必要もないので、すべて焼却されてしまいました。
 美術館の取り壊しも滞りなく終わり、跡地には今まで町内にはなかった大きなショッピングモールが建てられるという話です。


〈ある観覧客の話〉
 それは雨の降っているある日のことでした。
 ある国のある地方のある都市のある町の片隅に寂れた場末の美術館に珍しく、二人の観覧客がやってきました。二人とも異国人で一人は男、一人は女でした。何の目的でここに来ているのかはわかりません。おそらくは旅行でしょう。
 年の功は二十代前半といったぐらいでしょうか。もしかすると二人は新婚かもしれません。それとも、恋人同士かもしれません。もしくは、単なる友人同士かもしれません。つまり二人の関係ははっきりとはわかりません。ただ、二人は美術品を見るのが目的で入ったわけではなく、単に雨宿りする間の時間つぶしのために入ったようでした。
 二人は館内の美術品を面白くもなさげに見て回ります。
「あーあ、せっかく海外まで来たのに雨なんて最悪。それにここって」
 よほど美術品がつまらなかったのか女は不機嫌そうな表情を浮かべ、大げさに両手を振り上げながらぼやきました。
「まあまあ。どうせすぐに止むさ。少しの辛抱だよ」
 男は柔和な笑顔を浮かべながら優しくなだめます。
「すぐ止む?」
 男の優しい言葉に女は静かに訝しんだ声を上げます。その顔にはうっすらと嘲笑混じりの笑みが浮かんでいます。そして、美術館の窓の外を見ながら指さしました。
「どこからどうみたってすぐ止むって様子じゃないでしょっ」
 さっきの笑みが嵐の前の静けさだったのか、女は突然がぁーと吠えました。女の言うとおり、窓の外で降っている雨足はざぁざぁと激しく、おまけに時々雷まで鳴っていました。
「まあまあ。今日が雨でも明日はきっと晴れるさ」
 しかし、男は柔和な笑顔を全く崩さず相変わらずに優しくなだめました。
 女はその様子に毒気を抜かれたようにきょとんとした表情を一瞬だけ浮かべ、口を開きました。
「あんたのそういう前向きなところが羨ましいわ」
 女の褒め言葉なのか皮肉なのかわからない言葉に男は「そうかい」とだけ答えます。女は「そうよ」とだけ言葉を返しました。そして、二人は何も喋らず美術館内を歩き始めます。
 しばらくの間、館内に外から聞こえる雨足の音だけが響きました。
 男と女は対照的に美術館内を歩いています。男の方は柔和な笑顔で、女の方はつまらなそうな顔で並んで歩いていました。
「あーあ、青い空が見たい」
 突然、女がついたようにポツリと呟きました。それは誰にも聞こえないような小さな声でした。おそらく女も誰かに聞かせる気はなかったでしょう。それは単なる独り言のようでした。
 しかし、近くにいた男は聞こえていたのか「じゃあ、これは?」と言葉を返しました。
「はぁ?どれよ」
 どうでもいい独り言を聞かれて女は不機嫌そうに聞き返しながら男の方へ振り向きます。見ると男は一枚の絵を指さしていました。
 そこには雲がまばらに散る青い空の絵がありました。
「なにこれ?」
「空」
 男は短く答えて、今度は絵のタイトルを指さします。そこには『空』とただ一文字書いていました。彼らの国の文字なのか二人ともその異国の文字を理解していました。
「確かに青い空だけど……もしかしてあんた馬鹿にしてるの?」
 じろりと睨むように女は男を見ます。すると、突然パシャッと言う音が鳴りました。男が女と絵を写真に撮った音でした。女の鋭い視線を受け流して、男は飄々と首を振りました。
「してないよ。期待に応えたつもりなんだけど」
「どこがよっ。こんな下手くそでぱっとしない空なんか見せて。私は本物が見たいの」
「下手くそかなぁ」
 男はカメラを仕舞いながら呟きました。確かに絵は決して下手ではありませんでした。瞳を閉じて男は何か考えています。しかし、突然慌てたように目を開いて目の前の絵をじっと凝視しました。まるで忘れないように目に焼き付けているようでした。
 そして、男はもう一度目を閉じます。また何かを考えてるようでした。男が目を閉じて約一分ほど経った頃でしょうか。また目を開きました。その顔には驚愕が浮かんでいるようでした。
「確かにぱっとしないな」
 男はポツリと、まるで意図せず声が漏れてしまったかのように小さな声で呟きます。
 ふと男が横を見ると女の姿がありません。周りを見渡すといつのまにか女はすたすたと先へ進んでいました。慌てて男は女を追いかけます。
 その時にはすでにさっきの絵の事など完全に記憶の中から消えているようでした。
 男の姿が見えなくなると、私は問題の絵を見てみました。そこには何の特徴もない雲がかった空の絵がありました。女が言ったように決して下手ではありませんでした。ただ、平凡という印象を受けました。
 男に習って私も目を閉じてみます。すると、まるで脳が記憶する価値もないといっているかのようにぽっかりと絵の部分だけが抜け落ちていました。照明や、絵を飾っている額、周りの壁の映像は頭に浮かびますが、肝心の絵だけはなぜか思い出せませんでした。驚いて私は慌てて目を開きます。そこには平凡な空の絵がしっかりと存在していました。
 もう一度よく見て私はふと気づきました。
“確かにぱっとしてないな”
 男が呟いた感想を私もつい心の中で思ってしまいました。
 私は気味が悪くなってそそくさと逃げるように絵から離れました。周りには観覧客はいないことも私をそうさせました。
 私が誰ですかって。私は雨宿りにこの美術館に入った一人旅中のしがない観覧客です。


〈ある贋作家の話〉
「だから仕事はもう受けないって言っただろう。贋作はもうやめたんだ。え?なんでだって。そりゃあ、自分の限界を知っちまったからさ。俺がまねできない作品があるって知っちまったからだよ。どんな作品だって?そんな事聞いてどうする気だ。興味があるだぁ?はっ、くだらねぇ絵だよ。思い出すだけでも忌々しい。確かに俺は贋作家としてはちっとは名の知れた方だったよ。でもな、しょせんその程度だったって事だ。下らない絵一枚も模倣できねぇ。ああ?確かに有名な絵はたくさん真似てきたさ。しかも、それが偽物だと誰も気づかねぇ。大美術館のキュレーター、名の知れた批評家、大物画家、絵の事なんざ何も知らない金持ち、どいつもこいつも騙してやったさ。みんな馬鹿ばかりさ。こんな日陰暮らしの俺なんかが描いた偽物に億の金を出しやがるんだから。まあ、俺はそれで食ってたからやつらを馬鹿に出来ないけどな。話がそれた、何度も言うが俺は仕事は受けないぞ。だいたいなんで俺なんだ。贋作家なら他にもたくさんいるじゃねぇか。腕の良いやつもいっぱいいる。あ?俺が一番腕が良いって?おだててもなにも出ねぇよ。俺はもう止めたんだ。この仕事は中途半端にやるのがいちばんいけねぇ。なんせ世界中を騙さなきゃいけないんだからな。人を騙すのは楽じゃない。ほんの少しのミスで命取りになる。なんせどれだけ本物に似たメッキを貼り付けようが中身は偽物だからな。だから、仕事を受けるにもそれなりの心構えってか、覚悟ってのがいるんだよ。わかるか?はははっ、そこで口先だけでわかると言わないのがお前の良いところだ。お前のそう言うところが気に入ってたんだ。だから、お前の依頼なら大概のことは受けようって気になったんだ。でもな、今回ばかりは仕事は受けねぇ。そればっかりは譲れねぇ。ああ?これからどう暮らしていくだって?今までの貯金で細々と暮らしていくさ。田舎町にでも小さな家を買ってな。心配しなくてもそれくらいの金は十分にある。金の使い道なんざなかったからな。今まで贋作しか描いてこなかったんだ。酒も女もギャンブルもやらなかった。絵だけ描いてれば十分だったんでやる必要もなかったがな。それじゃあ、もう電話切るぞ。あ?まだ何か話があるのか?俺が贋作家をやめたきっかけの絵の話がどんなだって?何度も言ってるように下らない絵だよ。はっきり言ってどんな絵だったかも覚えてねぇよ。覚えたくもないがな。特徴?強いて言えば特徴がなさ過ぎるのが特徴だといえるのかもな。記憶に残らないくらいな。ほんと冴えない絵だよ。何の価値もない。芸術でもない、娯楽でもない、落書きでもない、誰の記憶にも残らない下らない絵だ。しっかり意識して見てないと見過ごしてしまうようなな。なんでそんな絵が真似できないって?簡単な事だ。そいつには特徴がない。どんな絵でも特徴というものが出るんだ。贋作はそれをつかんで、模倣する。自分の特徴を持たず、他人の特徴を持つんだ。贋作家に自分自身の絵の癖なんざ邪魔だからな。そうすりゃ素人にだっていい贋作は描ける。まあ、それなりの技術と経験がいるがな。特徴のあるやつだったらいくらでも模倣してやる。だがな、特徴のないやつは模倣できねぇよ。何度書いても偽物だって一発でわかっちまう。それで俺はもうむなしくなったんだ。こんな下らない絵一つも真似できないなんてな。自信がなくなったとも言うがな。誰の描いた絵だって?知るかっ、作者不詳だ。ただ、タイトルがあったな。アジアあたりのどっかの国の字だと思う。見た事無い字だった。それが一文字だけ書いてあったな。どう読むかって?絵には書いてなかったんで後から外国語に詳しいやつに聞いたんだが、『ソラ』と読むんだとよ。そのままの意味だ。なんのひねりもない。絵と同じようにつまらないタイトルさ。」


〈あるオークショニアの話〉
「あの時の事は今でもよく覚えとるよ」
 そう言って初老のオークショニアは語り出します。
 それは十年ほど前のあるオークションの時の話でした。
 その日出品された商品の中にある潰れた美術館から流れてきた美術品がありました。その全ての美術品は三流や四流といわれるもので売れる期待もなく、むしろ売れ残って処分する理由をつけるために出展されていました。
 当然、オークショニアからしたらそんなオークションは不服ですが、全ての美術品を見て納得しました。そのどれも彼の目に付くような物はなく、まるで胡散臭い古美術店で売ってそうなみすぼらしい物ばかりでした。
 オークションが始まりました。他の出展品もあるので最初はオークションも活気づいていました。椅子に座ったバイヤー達が札を挙げてコールしていきます。オークションは盛況でした。
 そして、問題の美術品の番になりました。とたんに、ぱったりと活気が静まりかえります。まるで全てが仕組まれた事のように思惑どおり競売品は一つも売れずにオークションは進んでいきました。オークショニアはなんて退屈なオークションだと思いながらも、それでも仕事なので仕方なく真面目に進行させていきました。
 美術品が残り僅かになった頃でした。今まで空しくオークショニアの声しか響いてなかったオークションが突然活気づき出しました。
 二人のバイヤーが競り始めたのです。一人は若い男でした。肩まで伸びた黒髪はボサボサで、その見た目はみすぼらしく、スーツを着ているためかろうじてこの会場に入れたようでした。また、肩幅も狭く弱々しい印象を与えるような外見をしていました。手荷物は一つだけで、分厚い本らしきものを大事そうに両手で抱えています。オークションには慣れていないのか時々、挙動不振に周りを見まわしていました。
 もう一人は中年の男でした。若い男とは対照的に髪をオールバックで整え、きちんとした身なりでした。態度の方も対照的にオークションに慣れているのか落ち着いた様子で堂々としています。
 対照的な二人は、競り落としたい商品だけは一致しているのか、どんどん値をつり上げていきます。
 二人が競っているのは一枚の絵でした。その絵は白がまばらに散り、残りをすべて青で埋め尽くされていました。空の絵でした。
 結局その絵はその時のオークション中最高の値を付けました。誰もが予想できなかったことで、皆何でこんな事が起こったのか不思議に思ったそうです。
 そうして、オークションは盛況のうちに終了しました。
 商品をバイヤーに商品を手渡す前にオークショニアはその絵を一目だけ見ました。その時、「なんでこんな地味で平凡な絵をお金を払ってまで欲しがるんだ」という感想をつい漏らしましてしまったそうです。商品として扱う側の人間がそんな風に言うくらい、それはつまらない絵だったそうです。
 ちなみに競り落としたのは中年の男性だったそうです。当然といえば当然の結果でしょう。


〈あるバイヤーの話〉
 私の目の前には一枚の絵が額に入れられて飾られている。『空』というタイトルの空の絵だ。話に聞いていたとおり、それは非道くつまらない絵だった。
 しばらく絵を眺めてからスーツのポケットから携帯電話を取り出して、ボタンを押す。
「私だ。あんたが言っていた絵を手に入れたよ。安くない買い物だったがな」
 電話の奥からは一瞬驚いたような沈黙と、しばしの笑い声、そして、「酔狂だな」という答えが返ってきた。
「ああ、確かにな。あんたも見るか?あんたが贋作を止めたきっかけになった絵だ。何かしら思うこともあるだろ?」
「いらん」と返事は即答だった。「あんなクソみたいな絵は二度と見たくねぇ」後に続く言葉は心底嫌悪しているのか吐き捨てるように言っていた。
「そうか」
 私は一言だけ頷く。すると、「おい、まさか俺に見せるためだけにそんな絵を手に入れたんじゃないだろうな?」という問いが返ってきた。
「そこまで酔狂じゃないさ。あんたがそこまでつまらないって言う絵がどんな絵なのか、興味があったからな」
 そこで私は一息吐き、絵を見た。
「それにしても……思っていたよりも上手いな」
 まず、率直な感想を口にする。電話からは「何がだ?」という声が返ってきた。
「絵だよ。もっと非道い物だと思ってた。良くできてる」
 褒めたせいか「ふん」という不機嫌な吐息が返ってきた。それを聞きながら続きを口にする。
「でも、確かにつまらないな。冴えないというか、地味というか……。下手ではないのに、なぜだろうな?」
 不機嫌さは変わらずに今度は「何もないんだよ。その絵は見てもなにも感じないし、何の印象も残らない。だから、つまらないんだ。」という声が返ってくる。
「何もない。……確かにそうだな」
 率直な感想を一言ポツリと呟いて、最後に二言三言挨拶を交わして私は電話を切った。
 携帯をポケットにしまいながら私は絵を近づいてよく見てみた。
 ムラのない均一に統一された塗り、平凡とも取れるありきたりな構図は見ようによっては基本に忠実とも取れる。例えば、コンピューターが絵を描けばこうなるのかもしれないとふと思ってから、私はあまりに馬鹿げた考えなのでつい笑ってしまった。
 そんな事出来るわけないし、なによりする意味すらない。芸術は心に訴える物だ。それを心のない物が作っても何もない作品が出来上がるだけだろう。
 それはおそらくこの空の絵よりも非道い出来だろう。少なくともこの絵には平凡さや退屈さがある。
「少なくとも人間が描いた物なのは確かだな」
 次第に私の興味はこの絵を誰が描いたのかという問題に移っていった。
 こんな絵を描ける人物は一体どんな人なのか、何を思ってこんな絵を描いたのか、どうすればこんな絵が描けるのか。
 思い立った私はすぐさま携帯を取り出しある男に電話した。
「もしもし、私だ。頼みたい事がある。ああ、ちゃんと報酬は払う。ある絵の作者について調べて欲しいんだ」
 私が今電話しているのは知る限りで一番腕の良い探偵だった。何度か彼には世話になっていて、多少無茶な以来も金を積めばこなしてくれた。
 結局、探偵は一週間待ってくれといって電話を切った。私は電話をポケットにしまうともう一度『空』の絵に目をやった。
“調べ終わったらこの絵をどうするかだな…売れそうにもないし、処分するしかないか”
 絵の今後について考えていると、私はふとオークション後のある出来事を思い出した。
 それは私が絵を競り落とせて満足げに会場から出た時の事だった。突然、『空』の絵を譲ってくれと言う男がいた。どうやら、俺と競い合ってた男らしい。もちろん全く譲る気はないので突っぱねたが、あの男はこんな絵をなぜあんな必死になって手に入れようとしたんだろう。


〈ある老夫婦の話〉
「ただいま戻りました」
「おかえり」
 身なりの良い初老の女性はそう言って家へ入ります。彼女を出迎えたのは同じく初老の男性でした。二人は並んで歩き、ダイニングルームへと入っていきます。男性は椅子に腰をかけ、女性は二人分のお茶を入れてからテーブルを挟んだ向かい側に腰掛けました。
 しばらく二人のお茶を啜る音が響きます。
「オークションはどうだった?」
 一息吐くと初老の男性が尋ねました。
「なかなか楽しめましたわ」
 初老の女性は微笑みを持って返しました。その反応は女性が珍しくかなり御機嫌な事を表していました。男性はおやと思いながら、尋ねます。
「何か良い物でもあったのか?」
「いいえ」
 女性は首を降りました。そして、「ただ」と言葉を繋ぎます。
「少し不思議な出来事があったの」
「不思議な出来事?」
 男は一言繰り返して、お茶を一杯啜りました。こくりと頷いて女性も同じくお茶を啜ります。その口元には旦那が話しに興味を持ってくれた事を喜ばしく思う婦人の笑みがありました。
「オークション会場で突然泣き出しちゃった方がいたの。私の隣の席だった方なんでハンカチを貸してさしあげたんですわ」
 男性は一つ相づちを打って、女性に続きを促しました。
「なんでも手に入れたい絵があったんですけど、他人に競り落とされてしまったんですって。それで悔しくて泣いてしまったらしいわ」
 そこで女性はお茶を啜ります。男性は興味津々と言った様子で、女性がお茶を飲んでいる間にもかかわらず質問を口にする。
「どんな人だったんだい?」
 男性の質問に女性は優雅な手つきでお茶を一口口にしてから、ゆっくりと答え始めました。
「見知らぬ人様をこう言っては良くありませんが、小汚い方でしたわ。オークションにはあまり縁のなさそうな。まるでオークションに来るためにクローゼットから慌てて出してきたようにスーツはヨレヨレで汚れていて、髪の毛もボサボサでした。あと、本のように大きな日記帳を持っていらしたわ」
「へぇ、その人はよほど絵が欲しかったんだねぇ」
 感心しているのかしみじみと男性は呟きました。
「その人が欲しがっていた絵というのはどんな絵だったんだい?」
 男性が尋ねると女性は小さく笑い出しました。男性は訳がわからず笑っている女性の方を見ています。
「何かおかしな事でも聞いたかい?」
「いえいえ」
 笑いながらも女性は首を振ってから、口を開きました。
「あなたがこんなに興味を持ってくれると思わなかったから、つい」
 そう言われて男性は気恥ずかしいのかムッとした表情を浮かべて「そんなことない」と言わんばかりに憮然とした表情を浮かべました。それでも、興味はあるので女性が答えるのを待っています。
「ごめんなさいね。空の絵でしたわ。青い空に雲がまばらにかかっているだけの。けど、その……はっきり言ってあまりすばらしい絵ではありませんでしたわ」
 その答えに男性は拍子抜けしたように口を開きました。
「すばらしくないって、それは絵自体が上手く描かれていなかったのか?」
「いいえ。私は素人目ですけど上手いと感じました。ただ……」
 口籠もる女性に男性は「ただ?」と答えを催促します。
「パッとしないというか、なんというか平凡な絵でしたわ」
 いまいちしっくり来ないのか女性は歯がゆそうに答えました。その答えに男性は顔を顰めました。
「それは有名な絵なのか?」
「いいえ。作者不詳でしたわ」
「じゃあ、どうしてその人は泣くほどにそんな絵を欲しがったんだ?」
「私も気になって聞いてみたんですの。そしたら、なんでも父親の大切な絵なんですって」
「それ以上は何も言われなかったのか?」
「ええ。流石に初対面の方に深く聞くのはよくないですし。ですから不思議な出来事なんです」
 女性はそう言ってもうこれ以上は話せる事はないというように話を切った。
 男性もしばらくはその話の事が気になっていたが、すぐに話題が別の話に移るとそちらに興味が移っていった。
 お茶の時間は終わって男性はシャワーを浴びに行き、女性は後かたづけをしていました。
「そういえば」
 ふと思い出したように女性が呟きました。
“別れ際に、購入者に譲って貰うよう頼んでくるとおっしゃったけど上手くいったかしら”


〈ある報告書の話〉
“このたびはご依頼された調査が遅れて大変申し訳ありませんでした。ここに調査結果を報告します。『空』の絵は欧州のどこかの国で作られたようですが、制作者は特定できませんでした。ただ、画家が描いた絵ではないようです。また、別紙において『空』の絵のオークションに出されるまでの経路を記していきます。尚、ご依頼を完遂できなかったため代金の方は結構です”
 依頼の期日から一週間遅れで貰った探偵の報告書にはこんな内容がプリントアウトされていた。それに目を通しながら私は深くため息を吐く。結局、『空』の絵を誰が描いたかはわからずじまいだった。
 ここは私の家の自室だった。少々はしたないが椅子に腰をかけながら机に脚をのせている格好で報告書を読んでいる。
“それにしても、あの探偵ですらわからないとはな。一体どんなやつが描いたんだ?”
 失望や苛立ちよりも逆に不気味さを感じながら私はふと日記帳らしき本を持った薄汚い男のことを思い出していた。
“こんなことなら邪険にせずに少しくらい話しを聞いておいたらよかった”
後悔してももう後の祭りだった。名前も素性もなにも分からない男を探すことは不可能だ。ため息をつきながら、もう一枚の報告書に目を通す。
『空』の絵が今まで展示されていた美術館の名前が書かれている。しかし、流石にこんな絵を好んで展示するところは少なかったようで、片手で数えてもまだ指が余るくらいしかなかった。
 一目見ただけで全て確認できるその報告書を私は何か手がかりがあるかを期待しながらじっくりと目を通す。
 そうしているうちにふと、その中の一件の美術館の名前が頭に引っかかるような、そんな感触を覚えた。それはもうとうの昔につぶれてしまったが、寂れたある町の場末の美術館の名前だった。
 記憶の中を探る。もう十年ほど前になるだろうか、あの頃はまだ恋人同士だった妻と一緒に海外旅行行った時の話だったと思う。
 確か雨宿りついでの時間つぶしのために入った美術館の名前が報告書に書いてある名前と一致しているように思えた。
 まだ確信はない。ただ、記憶が蘇ってくる内に一つの確証に至る証拠を持っていることを思いだした。
 途端に慌てて椅子から立ち上がり、戸棚からアルバムを引っ張り出す。それから、若さ故に写真を撮りまくったせいか十数冊にもなるアルバムを一冊一冊確認していく。
 そうして、八冊目で私はやっと目的の写真を見つけた。
 不機嫌な妻の隣に掛かっている冴えない絵。
 そんな構図の写真の中にある絵は間違いなく『空』の絵だった。
“なんだ。私は昔この絵を見ていたのか”
 今の今まで忘れていた事実に私は可笑しくなって笑ってしまう。わざわざ大枚をはたいて購入しなくてもこんな身近なところで見れたのだ。
 この絵の作者がわかったわけではない。そもそもこんな事を思いだしたからって意味なんてない。それでも私は探偵のこの報告書に満足と感謝の感情を持っていた。
“代金はいらないといっているが無理にでも払わないとな”
 笑みを浮かべながら私は自室を出て、妻が夕食の支度をしているであろうキッチンへと向かった。
“妻との話の種に絵を家に飾るのも良いな”
 絵の今後についての考えも決めながら、私はまずはさっき思い出した出来事を妻に話そうと足を速めた。


〈ある日記帳の話〉
 ○月△日(雨)
 最近は仕事も忙しかったので久しぶりの日記だ。かといってあいにくの雨だったため外出する事もなく、特に書く事もないので最近描き上げた私の作品について記しておく。
 フェットからの依頼で描いたルノワールの『野原で花を摘む娘たち』という作品だが、明るい色彩とタッチが真似しやすかった。ただ、有名な絵は大多数の人の目に触れるため偽物とばれやすい。細心の注意を払っても、払いきれないために神経をすり切らしながら描くためかなり疲労のたまる仕事だった。

 ○月□日(曇り)
 自分の仕事にふと疑問が浮かんできた。私はもともと自分の名を広めたいがために絵を描く道へ入った。しかし、実際今は他人の偽物を描いている。贋作家としての名はそこそこ売れてきたが、私の求めたものはそんなものだったろうか。もっとちゃんと名の売れる仕事がしたい。

 ○月×日(晴れ)
 嬉しい知らせが入ってきた。私の息子が生まれたらしい。生憎と今は大きな仕事を抱えているため会いに行けないが、仕事が終わればすぐ病院へ駆け込むつもりだ。ああ、息子を見るのが待ち遠しい。

 ○月△日(晴れ)
 ようやく息子に会えた。目元が妻に似ていて、とても可愛らしい。これからこの子がどんな風に育っていくのか。とても楽しみだ。でも、願わくば、私のようにはなってほしくないと思う。どれだけお金を稼げても私はこの子に胸を張れるような仕事をしていないのだから。

 □月○日(雨)
 最近贋作が描けなくなってきた。心に迷いがあるからだろうか。この仕事は不特定多数の人を騙す仕事のため、迷いがあると一発で偽物とばれてしまう。そろそろこの仕事も潮時だろうか。

 □月△日(晴れ)
 私は贋作家を引退しようと思う。しかし、最後に一枚だけ描きたい絵がある。それは私が描いた私だけの絵だ。今思うとずっと偽物ばかり描いていて、長らく本物を描くという事を忘れていたと思う。絵のモチーフは決まった。いつか異国で見た青い空にしよう。

 △月×日(曇り)
 やっと絵が完成した。しかし、私の気分は重い。出来上がった絵を見て愕然としているからだ。その絵は一言で言うとつまらなかった。平凡で何の特徴もなかった。ただキャンパスを青く染め、まばらに白い絵の具を垂らしただけのような絵だった。長らく他人の癖を真似て描く事しかしてこなかったツケだろう。自分自身の癖を無くしてしまった。贋作家としての自分をこんなにも恨めしく思ったことは初めてだった。

 △月□日(雨)
 絵が描けない。どうやっても前に描いた空の絵が脳裏に浮かんで絵が描けない。あの絵が私の唯一の本物になるのは不本意なため、何度もキャンパスに向かっているが、一筆入れただけで出来上がる絵の特徴のなさが浮かんでくる。絵が描けない。

 ×月○日(晴れ)
 もうこれ以上絵を描くのは止めようと思う。これ以上は描けないと思ったからだ。目の前には唯一の私の真作である青い空の絵がある。タイトルを付けていなかったため今日つけた。『空』という異国の字を当ててみる。私がモチーフにした空がある国の字だ。『ソラ』と読むらしい。しかし、この文字には別の読み方があるという。空っぽという意味の『カラ』という読み方だそうだ。どちらがこの絵にぴったりか考えるまでもないだろう。
                                   
                                                                                     『空』終

©料簡

執筆の狙い

空という漢字から話を膨らましました。
ばらばらの内容からいろいろな事実が浮かびあがってくると面白いかなと思って構成を組み立てています。
上手く伝われば幸いです。

料簡

121.118.213.157

感想と意見

うし

 個人的に物凄く好みの雰囲気を醸す物語でした。面白かったです。ありがとうございました。

 一度読んだだけですが、誤字脱字は特に見当たらず、間違った文法などもなかったように思えます。小説としての基本がきちんとしている文書という印象を受けました。

 一枚の絵画に振り回させる人々を描いた群像劇。夜行/森見登美彦を彷彿とさせました。

2017-08-09 22:14

153.178.5.36

ゆふなさき

空五度の響きが好きな者です。
空の絵ですが、庶民の四畳半の部屋の壁にちょうど良さそうですね。美術館でみるような迫力がある絵では生気を吸い取られそうで、仕方なしに猫の絵のカレンダーなんて飾っているんですよ。それを空の絵にかえれば、部屋を広く錯覚できるだろうし、壁の色にも合うだろうし。
なにもない、芸術には至らない、技術だけある、虚しい絵。
なんだか私の自画像にもなりそうだ。
この話は素晴らしい!

2017-08-09 23:02

27.143.73.41

ゆふなさき

なんてね。
先の感想、よくある「自分のことを書かれたみたい」な感覚がしまして。贋作というよりは、空虚な空にシンパシーを感じてしまって。

それにしても、どの言葉にも高級感がありますね。ホントに作家さんのゴーストをしていた人の作品みたいで。
私は文字に関してセンスがないから天と地を見たみたいでクラクラします。
私の文章とか読みにくいですよね。
失礼しました。

2017-08-09 23:53

27.143.73.41

hir

 読み終わって、オークションで競り合った若い男の今後が気になりました。
 父親の描いた絵を手に入れてどうするつもりだったのか、作中の人物で唯一不憫なイメージがあります。

2017-08-10 00:09

210.149.159.201

料簡

うし様

感想ありがとうございます。
そのように言っていただけて本当に嬉しいです。ありがとうございます。
森見登美彦の「夜行」は表紙で気になっていたのですが、まだ読めていません。
また読んでみたいと思います。

2017-08-10 16:19

121.118.213.157

料簡

ゆふなさき様

絵の飾り先までは考えていなかったです。確かに部屋が広く見えそうですから、狭い部屋にぴったりですね。

言葉や文体については、その時、その時にはまっていたものの影響が大きいです。
例えば、冒頭の書き出しは「KICK THE CAN CREW」のイツナロウバの歌い出しが元ネタですし、文体は太宰治や上遠野浩平の影響を、構成については浦沢直樹の影響を受けています。
(10年くらい前に書いた作品なので影響を受けた作品も昔のものになっています。)
好きな本を傍らに置いて、書くのに詰まったら読んでいました。

ゆふなさき様の文章もストレートで、勢いがあってわかりやすかったです。
体言止めや倒置法を使っているためか、テンポよく読めました。

感想ありがとうございました。

2017-08-10 16:34

121.118.213.157

料簡

hir様

感想ありがとうございます。

オークションで競り合った若い男については掘り下げるプランもあったのですが、この作品のコンセプトの「読む前と後でタイトルの読み方が変わる作品って面白そう」がぶれてしまうので却下しました。
ただ、もし掘り下げた場合、「余命僅かな父親のために、日記に書いてあった父の唯一の作品を探し求める物語」が展開していたと思います。
父が贋作家だったことを知り、軽蔑していた息子が、最後に親孝行をするという流れです。絵が手に入るか、入らないかは決めていませんが、どちらにせよ今まで憎んでいた父のために何かをしたという行動が彼の心に変化を与えると思います。

それを書くと言いたいことが変わってしまうので、空の絵の作品名がわかるところで終わっています。あくまでこれは上記のコンセプトの作品ですので。

確かにここに書かれているだけでは若い男が不憫です。作品の登場人物にそのように言っていただけて本当に嬉しかったです。
雑文で申し訳ありませんが、このプロットで、若い男の不憫さが少しでも和らげばと思います。

2017-08-10 17:05

121.118.213.157

八月の鯨

オチは途中で分かるんですけど・・
肝心の「絵」が見えて来なかった。

「からっぽだから、見えて来ないのだろう」というオチのオチ?も、はじめの方で分かるんで、意外性がありません。

“キャンバス何号サイズの、どんな構図・どんな色彩の空の絵なのか…”は、しっかり・ハッキリ描いておいても、充分「このオチ」は持って来れる(むしろイメージしやすくていい)ので、
やっぱり、「序盤でキッチリ、その絵の詳細を描いておいた方がいい」のではないか??

現状だと、【作中の“絵”を、言葉で描写するだけの絵画スキルが、作者にないことが一目瞭然】なだけなので。。


しまいに出て来る、肝心の絵の描写:
 >ただキャンパスを青く染め、まばらに白い絵の具を垂らしただけのような絵だった。

↑ ここの手抜き感がもうハンパなく、「作者自身の、絵画に対する愛のなさ」がいかんなくだだ漏れている。

「油彩」ですので。。
そんなんで「空の絵」には絶対なりません! ので、ちょっと高校で美術履修した人にでも、「基本」を聞いた方がいい。


この原稿で、一番イカンと思ったのは、「贋作名人が描いたオリジナルが、美術館に収蔵されるまでの経緯」が、一切不明な点。
贋作師の映画、ジョン・ローンも出演してた『モダーンズ』なんかでは、その点をお洒落に&さららっとカバーしてました。

2017-08-10 18:19

219.100.84.60

八月の鯨

本文、中身おかしい所は何カ所もある訳ですけど、

それを指摘しても、多分、上のレス文のように「この話はタイトルありきの話なので…」と返ってくるだけだろうなー。。


そう思いつつ、野暮は承知で1点指摘させてもらいますと、

エピソード2:【美術館、展示室内、絵の前で写真撮っちゃう夫婦の自己中マナー違反】にカチンと来てしまい、
かなり頓挫しそうになった。

「どんなに小さな地方美術館でも、基本マナー守って鑑賞してくれよ、この夫婦〜…」ってげんなりし、
「そんな描写を平気でしている作者は、美術館行かない人なんだなー」って。。


そこでもうね、「以降出て来る(だろう)美術関連のハナシは、たぶんほぼテキトー…」と丸わかりになってしまって、期待持てなくなった。
事実、「その予想を出るものはなかった」んで。。

2017-08-10 18:36

219.100.84.60

加茂ミイル

丁寧に状況を説明していると思いました。
リアリティのある描写だと思いました。

2017-08-11 00:37

60.34.120.167

料簡

八月の鯨様

お読みいただきありがとうございます。
絵の詳細な描写、贋作名人が描いたオリジナルが、美術館に収蔵されるまでの経緯など描写不足など一つひとつ丁寧にご指摘しただけるのはありがたいです。
予想が出るものが書けるように精進したいと思います。

HNから察するに映画がお好きなのかなと思います。贋作師の映画は見たことがなかったのでまた見てみたいと思います。教えていただきありがとうございます。

野暮に野暮を返すようで恐縮ですが、海外の美術館の大半はフラッシュをたかなければ基本的に撮影可です。
特別展示物など撮影禁止の絵ももちろんありますが。

だから、日本から見たらあの描写はマナー違反ですが、舞台が海外なのでありです。
日本と海外の文化の違いは面白いと思います。物語の中でそういう発見があれば面白いかなと思ってあのシーンは入れました。
あのシーンに疑問を持つには、場面を自分の中に落とし込んで、じっくり考えながら読んでいただかないと出てこないと思います。
そんな風に読んでいただき、さらに批評をいただけて、嬉しいです。
ありがとうございます。

2017-08-11 07:30

121.118.213.157

料簡

加茂ミイル様

お読みいただきありがとうございました。
丁寧でリアリティがあると言っていただけてすごく嬉しいです。

2017-08-11 07:32

121.118.213.157

八月の鯨

>野暮に野暮を返すようで恐縮ですが、海外の美術館の大半はフラッシュをたかなければ基本的に撮影可です。
特別展示物など撮影禁止の絵ももちろんありますが。

デジカメの時代に入ってから、海外の美術館は行ってないので、そう言われちゃったらそうなのかもしれませんが・・

私が大英博物館やテートギャラリーに行った頃には、

・大英博物館は、人気の展示室は撮影可で、フラッシュは禁止。(原書の展示室とか、完全禁撮だった感じ)
・戦争博物館は、特別展示含め、撮影可だった記憶。
・テートギャラリーは、完全撮影禁止。
・ロンドン塔も、確か撮影は禁止だったような??(レガリアのレプリカ展示室は、撮影可)
・故宮博物院、台北のも本土のも、撮影は不可だった。

ルーブル美術館は、まだ行った事ないけど・・撮影可な印象はない。聞いた事がない。(「模写は可」だから、いつも模写している人がテレビに映りますね)



だから、「美術館で撮影」は、やっぱり違和感あるのと、
「読者は日本人」だからなー。。。

2017-08-11 10:34

219.100.84.60

ゆふなさき

国立西洋美術館の常設展、撮影できますよ。
観光旅行中という雰囲気の西洋の人たちがスマホで撮影しているので驚いたのですが、そのとき美術館の人に勧められたんですよ。フラッシュたかなければ撮影できますよというわけで。方針を定めた直後だったので触れ込みたいなんて雰囲気でした。
ただ失敗したこともあって。
草間彌生展で彫刻に撮影ポイントの看板が出ていて撮影して。そのあと過去の絵画作品を気に入ったので撮影したら、それはダメですといわれて冷や汗かいたんですよね。
だからなんというか。

フラッシュを使わずに撮れる範囲が広がり、フラッシュ自体も熱のないライトが使われるようになったので、これからは撮影可能の美術が一般的になるんじゃないですか?

ただ新しい話ではなくても、芸術家を目指している人が図録を買えずに、いや図録なんて商売っ気のあることをしていない美術館へ出向いていって、フラッシュ焚いて撮影している、なんて光景があったりしたら素敵だとは思うんですけどね。

2017-08-11 12:27

27.143.73.41

麻生

読ませて頂きました。
久しぶりに顔を出しても知らない人ばかりで、でも、ヒマなので何か一つ読みたいなと思って開いたら、ついつい最後まで読んでしまいました。雰囲気が出ている作品で、とても面白かったです。最後まで読めたのは、文章がよかったからです。こういう雰囲気を出せる人は、ごはんにはそんなにいないのじゃないでしょうか。ペンネームをぐぐれば、何かでてきそうなお方ですね。言葉であれっと思ったのは、年の功、だけでした。
上のほうで、リリアンギッシュさんが、冒頭でオチが読めたという感じのことを書かれていますが、私も、この空はクウだなとはすぐに思いました。そういう美術館でもある感じですし。なので、日本的なクウに対する贋作者の描く西洋美術のfullなどの対比が、もっと哲学的に描かれるのかと思ったのですが、そこまではなく、西洋人の目に移るクウ、その怖さでも異常さでもなく、ただのクウへの茫然とした眼差しで終わったのが、もし無理して何かを求めるとすれば、そこが物足りなかったかもしれないですね。日本には、中島敦の名人でしたっけ、弓を見て、これなあに、という弓の達人がでますが、そういうのがもっとはっきり対比されるのもアリかなと。何にしろ、西洋人の発想でクウが出てきたのは、実に最近のことですからね。江戸には、無量大数とか不可思議とかあったのに、アインシュタインでさえ、宇宙はクウではないと確か思っていたはずで。
返信で、贋作者の息子の話が書かれていますが、あったほうがいいのかどうか。もしそこが書かれていれば、ハリウッド映画になってしまいますね。それはそれでもいいのですが、こういう曖昧さもクウの話としてはいいのじゃないでしょうか。
散り行く花さんは、絵が浮かばないと書かれていますが、私には浮かびました。むろん自分勝手な絵ですけど。つまり絵の中央が何もなくて、けれど奥行だけがすごくて、そこから宇宙が見える、つまりクウが見える、そんな絵でしょうか。
どうでもいいことですが、美術館での写真撮影ですが、ゆふなさんが書かれていますように、今はOKかもしれませんが、最初に奥さんと行ったのはかなり昔の印象があります。のちの回想場面で、奥さんの姿が見えないので、ひょっとして亡くなったのかもしれないし、しかも回想が年配の男の印象があるので、写真をとったのはかなり前のこと。つまり撮影が禁止されていたときのことかな、と思いました。もういちどきちんと読めば、この部分読みちがえかもしれないですが、ちょっと思いましたので蛇足書きでした。
とにかくとてもよかったです。料簡さんというHNはすぐ忘れると思いますので、次回作が読めるかどうかわかりませんが、今回はたのしみました。ありがとうございました。

2017-08-11 19:52

219.104.55.225

料簡

八月の鯨さま

さまざまな美術館に行かれているのですね。海外の美術館にはなかなか行けないのでうらやましいです。

いつから撮影が可能になったか調べてもわかりませんでしたが、10年くらい前にはもう撮れるようになっていたと思われます。はっきりとは覚えていませんが、この作品はそれくらいに書いたので。

「読者は日本人」というご指摘は、目から鱗でした。今まではただ漠然と文章を読んでくれた人がせめて楽しんでくれたら嬉しいなぐらいしか考えてなかったので、読み手の立場を考えるというのは私にとっては新しい観点です。そうした今まで自分のなかにはなかった考えからアイディアは生まれると思うのでありがたいです。
ありがとうございます。

2017-08-12 07:07

182.250.246.240

料簡

ゆふなさき様

国立西洋美術館ではもう撮影できるようになったんですね。2020年の東京オリンピックに向けて都内の美術館で、撮影ができるようにする流れが起こっているのはニュースで見たのですが、もう可能なところがあるのは知らなかったです。

撮れる作品と撮れない作品の区別は難しいですね。同じ場面にであった場合、私も冷や汗をかいてしまうと思います。昔、行った美大の卒展が撮影可能だったのですが、撮影するだけでも緊張しましたし。

気軽に写真を撮れる世界が来ると素敵ですね。これからに期待です。

2017-08-12 07:20

182.250.246.240

料簡

麻生様

お読みいただきありがとうございます。
日本と西洋の考え方の違いは面白いですね。深いです。ただ、哲学的な部分までは考えていなかったので、なんといいますか、恐縮です。中島敦の達人の話は面白そうですね。山月記しか知らなかったのでまた読んでみたいと思います。

また、一つひとつに丁寧なコメントありがとうございました。参考にさせていただきます。

楽しんでいただけたみたいで、すごく嬉しいです。ありがとうございました。

2017-08-12 07:40

182.250.246.240

蠟燭

何の違和感もなく読めました。プロですねこれは。
時折このサイトには突然変異のようにプロっぽい人が現れて連作することもなく消えるのが散見されて、プロの暇つぶしじゃないんだろうか、なんて。

さて、ここからど素人の僕が戯言を読み飛ばしください。
贋作家の話は、「」一文で構成されているのが興味深く、
報告書の話、日記帳の話と、趣向を変えてきてるのは上手いなぁと感心するばかりです。
執筆の狙いで、空の漢字と書かれていたので、てっきり穴と工を分解した話かなと思っていましたが、読みの話だったんですね。
ただ、僕的には御作、無感動でした。オチを読んでも、ふ〜ん、あっそ。で終わりました。これを面白いと思える感受性が僕には欠如してるんだと思います。

僕は麻雀が好きで上手い人と強い人がいます。上手い人はトータルで負けない技術力。強い人はここ一番の勝負強さ。
例えが悪いですが小説も似てるかなと、上手いけど面白くない。下手かもしれないけど面白い小説が僕は好きです。

こんなこと言ってしまう自分の心を鑑みれば、おそらく上手く書ける人への嫉妬なんだと思います。
小説の体を成してる御作は素晴らしいですね。

最後に捨て台詞を、
つまんない。ペッ。

失礼しました。

2017-08-13 00:26

180.31.202.32

サン・ビセンテ

読ませていただきました。


たくさんの作品が日々アップされているなか、どれから読もうかと迷い、コメントのたくさんついているのを目安にしてます。
安易な方法ですけど。

文章は書きなれていらっしゃると思いました。
また書かれている内容から教養と、様々な人生経験が感じられました。


>ばらばらの内容からいろいろな事実が浮かびあがってくると面白いかなと思って構成を組み立てています。
>上手く伝われば幸いです。

他の読者の皆さんがポジティブなコメントをされているのですが、自分はどうもうまくいきませんでした。
最初から読んでうまくいかず、あっちを読みこっちを読みしたのですが、内容に入って行けず…。
人に「あんたADHDじゃない?」と指摘されたこともある、物事に集中できない性質のせいかもしれません。
だから気にしないでください。

作者様には物語を構成する権利があるので、話の流れの中で核心を次第に明らかにする手法ならそれはそれで結構です。
ただ、他の方もおっしゃっているように、もう少し絵の描写をして欲しかったかなとは思いました。
それが何よりも重要なアイテムですので。
最初は曖昧にぼかして、クライマックスに向かって詳細が明らかになる、というのは常識的過ぎるでしょうか?

また次の作品も期待しております。

2017-08-13 01:00

108.93.178.243

料簡

蠟燭様

お読みいいただき、ありがとうございました。

>何の違和感もなく読めました。
違和感なく読んでいただけたようでほっとしています。

>執筆の狙いで、空の漢字と書かれていたので、てっきり穴と工を分解した話かなと思っていました。
なるほど。そういう驚きを与える手法もありますね。面白い、参考になります。穴と工を分解して、意味を持たせるとなると今の自分なら絵ではなく仏像にするのかなと思います。
中身が空洞の仏像に穴を開けるとエ(絵)が出てくる話です。ただの、だじゃれですね。

>小説も似てるかなと、上手いけど面白くない。下手かもしれないけど面白い小説が僕は好きです。
麻雀の例えはよくわかります。私も下手ですけど好きですし。
また、面白い小説が書けるように精進したいと思います。

余談ですが、嫉妬していただけて光栄です。違ったらすいませんが、最後の捨て台詞は最上級の賛辞として受け取らせていただきます。
そうした感情を素直にかけるのはうらやましいです。嫌みたらしくなく、実直さがうかがえます。蠟燭様の人柄が表れているのでしょうか。
私自身は顔色をうかがうタイプで、そうしたことが苦手ですのであこがれます。

ありがとうございました。

2017-08-13 06:55

121.118.213.157

料簡

サン・ビセンテ様

お読みいただきありがとうございました。

>あっちを読みこっちを読みしたのですが、内容に入って行けず…。
さまざまな書き方をしているので、内容がわかりにくかったり、とっちらかってたりする部分は否めません。
それはこちらの力不足です。せっかくお時間を割いて読んでいただいたのに申し訳ありません…。

>もう少し絵の描写をして欲しかったかなとは思いました。それが何よりも重要なアイテムですので。最初は曖昧にぼかして、クライマックスに向かって詳細が明らかになる、というのは常識的過ぎるでしょうか?
絵の描写に関してはもっと詳しくした方がよいというご意見をよくいただきます。ありがたいです。
「最初は曖昧にぼかして、クライマックスに向かって詳細が明らかになる。」という方法ですが、この作品ですと他人の目→作者の目という流れで絵を見ていくので、自然に、なおかつ説得力を持たせつつ描写できそうな気がします。そういうやり方も面白そうです。

ありがとうございました。

2017-08-13 07:12

121.118.213.157

GM91

拝読しました。
ふくらました、はいいと思います。ただ、まだ練りが浅い感じがします。
まだピースが埋まっていないパズルのような読後感でした。
他の方へのご返信から察するに意図的なもののようですが、個人的にはもうちょっとだけ書き進めてほしいなと思いました。

あと、ルーブルは撮影可でした。
現役の聖堂(サクレクールとか)とかだと撮影禁止のところもありますね。
国内だと、大三島の大山祇神社の宝物館が、撮影はおろか模写も禁止!って書いてあったり。
まあ管理者側のポリシーによりけりってとこでしょうか。
ゆえにまあ、「絵の前で撮影」はそれがマナー違反、だと断定はできない、くらいの解釈ですね。

2017-08-13 18:29

113.38.243.34

料簡

GM91様

お読みいただきありがとうございます。

>ピースが埋まっていないパズルのような読後感
とはいい得て妙だなと思います。何を残し、何を書くかはいつも迷いますが、物足りなさを感じられたならこちらの力不足です。

ただ、もうちょっと書き進めてほしいと思っていただけたことはすごく嬉しいです。

日本には模写すら禁止のところもあるんですね。初めて知りました。宝物館だからでしょうか。国内の話ですが、世界は広いといいますか、面白いですね。どのような裁量になっているのか気になります。教えていただきありがとうございました。

2017-08-14 15:10

182.250.246.227

ご利用のブラウザの言語モードを「日本語(ja, ja-JP)」に設定して頂くことで書き込みが可能です(テクニカルサポート)。

:
:
:
3,000字以内