作家でごはん!鍛練場

『私と妖怪退治さん』

凡人著

妖怪退治さんのミステリアスな雰囲気と全体的な不気味な雰囲気を出せるように書きました。

 大学の敷地内の端の方に、ポツンと建っている南校舎の廊下を、私は一人で歩いていた。
 壁の塗装はところどころ剥げて、電球は明るくなったり暗くなったりを繰り返している。
 年期を感じさせる古い校舎は、薄気味悪く、本能的に何か出そうな感じがした。
 そんなことを思っても、私には霊の気配は特に感じない。もしいたら、それはそれでかなり困るのだけど。
 そんな雰囲気だけはある廊下を歩き続けると、ほどなくして目的の場所に到着した。
 廊下の途中のどれよりも古びて見えるドアに、心霊現象研究会とこれまた古びたプレートが掛けてある。
 もうこんな寂れたところに研究会があることが心霊現象じゃないのか。
――心霊現象研究会。活動内容は説明不要だろう。名前だけでどんな部活か分かる、あら不思議。
 ここまで活動内容をストレートにしているのは、狙っているのか、ネーミングセンスの問題か。
 私だって、本当だったらこんな胡散臭い所には入りたくはない。だが、背に腹は変えられない。
 行くしかない。そう覚悟を決めて、私はドアを軽くノックする。
 しかし、返事はない。気付いていないのだろうか、もう一回ノックする。が、相変わらず物音一つしない。
 留守にしているのだろうか。それなら出直してくるしかないが、こんなところをもう一度訪れるのは、できることなら勘弁したい。
 軽くドアノブをひねる。鍵が掛かってなくて、簡単に開いた。
「すいませーん」
 開いたドアから顔だけ出して言うが、返事はない。
 相変わらず物音はない。
 いないのかな。ここで来るまで待つというのも心細いので引き返そう。そう考えていると……
「おい」
不意に、後ろから低い声で呼び掛けられた。
 驚いて後ろを振り向く。後ろに立っていた男の姿を見て、恐怖で体に悪寒が走る。
 目が隠れるくらいの長い髪の仏頂面。それなのに、目は強い光を宿していて、普通の人達と違うものを感じさせた。
 しかし、一番特筆すべきところはそこじゃない。
 彼の背後には、二、三人ほどの人達が憑いていたのだから。
 昔から霊感がある私には、それが捉えられる。
 彼らは無表情にこちらを見据えてくる。その視線に、悪意や害意は無い。
 しかし、私は恐怖で動けなかった。目の前の出来事に脳の処理が追いついていない。本能が、それを認識するのをためらっているのだ。彼らの存在に対して、人が抱くのは恐怖。例え、それが人畜無害だとしても。
 もちろん、私も例外なく彼らに恐怖という感情を抱く。
 全身の小刻みな震えが止まらない。体も固まったように動かない。
 そんな状態に陥っていると、
「落ち着け。こいつらはただの浮遊霊だ。お前に危害はないから安心しろ」
 男がそう声を掛けてきた。数秒ほどかけて、その男が言ったことを理解する。
 理解したと同時に安堵で体の力が抜けた。体のバランスを失い、へなへなとその場に座りこんでしまう。
「大丈夫か? 立てるか?」
 男は心配そうにこちらを見てくる。表情の乏しさと対照的に、やけに目つきは鋭い。こちらを心配してるというよりも、値踏みしていると言う方が正しいか。
「だ、大丈夫です」
 抜けた力を入れ直して立ち上がる。彼をもう一度見るが、やはり背後には幽霊がたくさん憑いていた。そういう体質なのだろう。
「それでなんの用だ」
 男は唐突に口を開く。
「あ、えっと……野田川彰子って言います」
 咄嗟に言葉が口を付いて出たが、しまったと気づく。
「お前の名前を聞いてるのではないんだが……」
 やっぱり男は呆れた顔をしていた。
「す、すいません」
 羞恥で顔が熱い。
「そういえば、俺は名を名乗ってなかったな。俺の名前は鳴神泰治だ」
 そっけない態度で言った彼の首のネックレスが揺れた。

私と妖怪退治さん ©凡人

執筆の狙い

妖怪退治さんのミステリアスな雰囲気と全体的な不気味な雰囲気を出せるように書きました。

凡人

119.243.140.226

感想と意見

太郎

作品の書き出しだけ?

2017-05-18 04:33

126.254.138.202

凡人

太郎
そうですね

2017-05-18 14:52

182.251.250.38

ラピス

面白かったです。続きが読みたい!
文章も読みやすいし、話もきちんと計算されています。
お上手なので、もっと評価されていいはずと思い、出て来ました。

2017-05-19 18:38

49.104.56.59

凡人

コメントありがとうございます。そういわれると嬉しいです。ですがもっと罵倒してもらっても大丈夫ですよ笑。

2017-05-19 20:04

119.243.140.226

芝浦

個人的な好みもありますが、すごく読み易いです。
段落ごとにまとめないのは、ネット経由小説だからでしょうか。

欲しいなと思った描写は、霊に関するところです。
作品の冒頭なので、作品のカラーである霊、妖怪、そういうものをもっとピックアップしてもいいのでは?と思います。

例えば、主人公が歩いている場面では、霊がいるとどう感じて、それがないので霊がいないのは分かっているが、怖い、という流れを挟むとか、
妖怪退治屋についている霊も、描写できない理由があるとしても、性別だけでも入れたりすると場面に入りやすいと思います。ここで勝手に想像しちゃうと、あとで、「あ、違ったか」と感じると思うので。

作品全体は読んでないので、あくまでこの投稿された場面だけの印象でコメントしています。
作品が展開する前の良い感じが出てます。今後も執筆活動、頑張ってください。

2017-05-21 12:17

118.109.165.165

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