作家でごはん!鍛練場

『シュミレーションを回せ』

三隅著

はじめて描いたものになります。
生活の中で、物語風にするとメモを取り易いことに気がつきました。
表現したいモノは、あえて書くと実体験に基づいた感傷です。
何を挑戦とするか難しいですが、初めて小説を書こうと形にしたというのがそれに当たるかと思います。
拙くて恐縮ですが、ご一読いただけると嬉しいです。

多くの場合、私の思考は言葉に結びつかないので、もやもやしたままだ。それは曖昧でおかしな形を描いて、呑み込まれていく。そしてたちまち私はそれを忘れてしまう。『嘔吐』J.P.サルトル
         
             
       「シミュレーションを回せ」
白い病棟が隔離されたような陰気な雰囲気を持つ建物の一角で、タカ(・・)がしれたデータの整形にいそしむ学生は、作業を中断してただ茫漠としていた。期限は明日の9時である。先程から窮所に詰まって検索をかけ、杓子定規な模範例をなぞってみてはいるが、目の前のトラブルを解決するには至らない。大変迂遠で途方に暮れた現状を改善する方途は浮かばない。先程から目の前の画面は、動作を促すたびに赤い文字列を吐くだけで、取り立ててめぼしい進捗もない。

―――「はなから向いてないのだ」と反芻するたび、作業は倍速で停滞する。下の階でチェーン店由来のコーヒーマシンを何度も往復して、空になったカップを部屋の外の小さなゴミ箱に捨てる。部屋に戻ると、デジタル化に取り残された自室のブラウン管とは異なる、時代に見合った薄型の液晶と向かいあう。目の前の難題からの気散じに数分眺めていると、時刻が0時を過ぎていることに気づく。間欠的に湧き上がる記憶の裡にあるトラウマ、処理しきれていない不条理の情念に数分意識を飛ばされる。透明なコーヒーを無理に飲まされるような後味の悪さに、気を悪くして画面から目を逸らす。
 
 焦燥感に堰きたてられて足の裏から粟立つ。ひりついた足を浮かせて二階へ降りる階段へ斜めに体を揺らして身体を運んでいく。揺篭の微動とは真逆の、船酔いを起こしたようにおぼつかない足取りは羊腸たる軌道を残す。隣室の教授は「期待していない」と言葉を残して定時に退出された。余計な構えを解くような遠回りな配慮か、あるいは字句通り見限られているのか。 我慢とは限界のある美徳であるならば、進歩のないプレゼンを繰り返し聞かされて、そろそろうんざりされているだろうことも想像に難くない。いつからか、離人症患者が抱えるに似た空虚感を覚える。一切の現実感から切り離された浮遊感が心象を抱き他人事のように状況を嚥下する。


 辺りで一等高台にある建物を出て、樹路となっている坂道を下った先に有るコンビニへ向かう。建物群の正面階段を通らず、下りの坂道を延々進むと「意欲など役に立たない」と確言する実利主義者が頭に浮かぶ。今晩のように能率の上がらぬ夜のあがきは、欠けている能力を尊大に見誤った行く末か。明日必要なのは伴っていない実力の未熟さを覆うための不毛な自己弁護、実態のないあやふやな概念によってではなく、求められるのは滞りの無い成果であった。流れを堰き止めず場を白けさせないことこそ自身に課せられた命題である。寄る辺は「意欲」に有らず、それならば有無を言わせず凱歌を奏するにたる明白な実力を当前に備えておくことが、人前に立つマナーであるようで。


 コンビニで飲料を買い、坂を上る。明日が迫るごとに加速する不安は明日への飽くなき夢想を溶かし、現実に目を向けさせる。焦燥の波を激しく立ち上げ、頭の中には明日への怯えばかりが脳裏を占める。ふと衝動的に手にもつペットボトルを投げ上げたくなり、頭上高く放り投げた後ペットボトルは幾度か回転して地面に弾む。重力によって物が落ちるように、個々人に生来的に備わる固有の能力―――ポテンシャルに見合った卓越性を無理なく証明することが、世の理に潜む背景であるならば投擲主は誰なのか。

 部屋に戻ると、空虚の念は不思議とすがすがしさに変換される。朝までの数時間、前途遼遠の道筋で、想定し得る悲惨に対し余すことなくシミュレーションを回す。専門家とは限られた範囲で全ての失敗を経験した者に与えられる「屋号」であるなら、前後の過程は何で築かれるのか。画面はエラーを吐きながら、赤い警句を鳴らして止まない。

シュミレーションを回せ ©三隅

執筆の狙い

はじめて描いたものになります。
生活の中で、物語風にするとメモを取り易いことに気がつきました。
表現したいモノは、あえて書くと実体験に基づいた感傷です。
何を挑戦とするか難しいですが、初めて小説を書こうと形にしたというのがそれに当たるかと思います。
拙くて恐縮ですが、ご一読いただけると嬉しいです。

三隅

175.177.4.146

感想と意見

基礎の基礎

コミュニケーションとコミニュケーションの違いって分かります?

これ恥ずかしいパターンですよ。

2017-04-17 08:27

49.98.161.67

童子繭

タイトルはいいけどねえ

2017-04-17 11:57

210.142.105.253

佐藤

読ませていただきました。

「作業は倍速で停滞する。」と言った表現に、くそう、と思いました。
多少表現の上滑り感は否めませんが、遅々として進まない検証への
煩悶やら焦燥のような印象にも取れます。
狙いを拝見する感じだと、そこを表現したい、と言うようにも取れましたので、
自分にとっては「あ、これはうまく目的を達成できた文章になっているな」
と言う印象になりました。

散見される語句の誤用も、また編み上げられた要素であるようにも感じられました。
間違っていますよと指摘したいところですが、これもまた仕掛けられた罠であるような笑

先日感じていた「原稿が進まない……」モヤモヤ、苛立ちを、
この作品を読むことで思い出してしまいました笑

2017-04-18 17:36

126.36.64.124

三隅

基礎の基礎様

ご指摘ありがとうございます。
不用意でした、以後注意いたします。
http://www.tt.rim.or.jp/~rudyard/kaego011.html

2017-04-23 15:02

175.177.4.77

ご利用のブラウザの言語モードを「日本語(ja, ja-JP)」に設定して頂くことで書き込みが可能です(テクニカルサポート)。

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