作家でごはん!鍛練場

『空を飛べないあなたへ』

黒とかげ著

投稿4作目になります。

前作よりも人の心理がもっとうまく書くことを意識しました。

小説のスキルアップのため。厳しいご意見をお待ちしております。

 僕の住んでいる世界には、二種類の人間が存在してる。

 空を飛べる人間と飛べない人間。

 最初に空を飛べる人間が誕生したのは、今から200年ほど前のことだった。もちろんその人間は、僕が生まれた頃には、とっくに亡くなっている。だから僕は直接会ったことはないけど、世間からはひどく迫害された。小学生の歴史の教科書にも大きく取り上げられている有名な出来事だ。
 人間とは少しでも自分達とは違う者には、容赦なく差別してしまう生き物であるらしい。たとえコンクリートのビルが林立し、スマホを使って遠くの人とも会話をする時代になったとしても、それは変わらない。
 この悲劇の結末は、飛べる能力以外は能力的にまったく同じであることが判明し、さらに続々と空を飛べる子供が生まれたことで、なし崩しに収束に向かった。結局、迫害の責任は誰一人として取らないまま。
 それから200年、空を飛べる人間が生まれ続けたことによって、世界の半分の人口を占めるまでになっている。

 僕は走行してる車の後部座席に座り、空を見上げている。

 空を飛べる人々が上空を飛んでいる。まるで風景画にゴマ粒をパラパラと落としたような光景。遠すぎて表情までは確認できない。けれども僕は彼らの姿を見上げる度に、なんとなく楽しそうだなと思ってしまう。それは空を飛べない人間の勝手な妄想だとわかっているけれど。
 ちなみに人間が空を飛ぶ原理は未だに解明されていない。翼もなく体重も思い人間が道具もなしに、空を飛ぶことは本来あり得ないことらしい。そういえば、この前テレビに出ていた学者は、これは人知を超えた進化の一環のなのでないかと自説を披露していた。もしかすると将来的には宇宙すらも自由に遊泳出来るようになるのかもしれないと。そうなったら、いいな、と僕も思う。

 「社長、会社に到着しました」

 「ああ。ありがとう」

 運転手に礼を述べて、車のドアを開ける。視界一杯に巨大なビルが立ちふさがる、僕の会社が所有している会社のビルだ。
 僕が十代の頃に起業した会社はあっという間に大きくなり、今ではこの国でも有数な企業になった。起業したばかりの頃は、僕の意思だけが会社を動かしていたが、従業員が数千人を超えた辺りからそうもいかなくなった。
 エントランスに到着すると、大勢の社員とお客様が行き交っている。僕の姿に気が付くと、一斉に一礼する。

 「お疲れさまです」

 僕も丁寧に礼を返す。それは意識してやってるのはなく、長年染み付いた習慣に過ぎない。
 
 「お疲れさまです」

 専属の秘書が僕の前に進み出た。並列する形になり、歩き出す。
 秘書がこれからの予定を並べる。今日も分刻みのスケジュール、とっくに慣れてはいるけども。

 「それから5時から30分、雑誌の取材が入っています」

 思わず顔をしかめる。雑誌の取材は苦手だ。記者達は僕を褒めちぎるが、ここまで会社が大きくなったのは僕の実力ではない。運と、優秀な仲間たちのおかげだ。
 役員専用のエレベーターの乗り、社長室にようやくたどり着く。秘書は社長室から出て行く。
 社長室には大きな窓があり、眼下に街を一望出来る。当然、空を飛ぶ人々も地上よりはっきりと見える。窓のすぐ近くを制服姿の少女が眼前を飛びながら通過する。くるりと一回転して遠くへ飛んで行ってしまう。

 僕は小さく息を吐き、僕専用の机に座る。パソコンを立ち上げ、山積みされた仕事を片付けていく。


 「社長、雑誌の記者さんが来社されました」

 顔を上げると、いつの間にか秘書が立っていた。仕事に集中して、部屋に入ったことすら気が付かなった。
 時計の針は5時30分ぴったりを指している。

 「社長、記者さんを連れて来てもよろしいですか?」

 「あ、ああ。来て貰ってくれ」


 インタビューは退屈なものになった。記者は問いかける。
 会長は世間では若くして最高の起業家であると言われていますが、それについてどうお考えでしょうか? 
 僕は答える。
 この会社が大きくなったのは、僕だけの力ではありません。僕と一緒に働いてくれる仲間達、お金がない時に貸してくれた銀行、そして何よりお客様がわが社の製品をご贔屓にしていただいたおかげです。

 同じ回答を過去に数百回はしただろう。この質問が来たら、この回答。全ては完璧にシュミレーションされ、有能かつ清廉なイメージが雑誌の読者に届けられる。

 「この質問をもって、インタビューは終わりになります。ありがとうございました。」

 記者が深々とお辞儀する。立ち上がり握手を求める。
 僕は握手をしながら、次の仕事について考え始める。すでにインタビューの内容は忘れている。
 机の上の手帳や録音機器を片付け、記者が社長室の出口へ歩み出した。
 しかしその途中で足が止まり、振り返った。

 「そういえば、社長の奥様は空を飛べる人でしたよね。夫婦円満の秘訣とかありますか?」

 僕は思わぬ質問に、記者の目をじっと覗き込む。
 記者は僕の機嫌を損ねてしまったと思ったのか、慌てて、

 「い、いえ、深い意味があるわけじゃいんですよ。ただ、世間では空を飛ぶ人と飛べない人とは離婚する確率が高いなんて言われてましてね。所詮俗説ではありますが、でもやっぱり私の同僚とか友達とには離婚を選ぶ人が多いのですよ。社長夫婦の仲の良さは、起業家としての名声と同じくらい有名なのですから」

 「これも記事に?」

 「とんでもありません! ただ、私の姪が飛べない人と付き合っておりまして。いずれ結婚するかもしれないのでアドバイスを頂ければと思いましてね。」

 記者は照れくさそうに、ガリガリと頭を掻いた。
 僕は妻との生活を思い出す。空を飛べる人間。結婚してから7年。会社の近くの高層マンションに二人で住んでいる。

 「そうですね。やはり、お互いの価値観を認め合うことではないでしょうか。人生において空を飛べる飛べないは些細な問題です。表面上の問題に捕らわれずに、本質を見て欲しいと思います」

 「なるほど! やはり性格の相性が肝なんですね! そこは普通の夫婦と変わらないんだなぁ。これ、姪と彼氏に言ってやります。」

 記者は意気揚々と部屋を出て行った。
 
 普通の夫婦。記者が最後に言った言葉がどうしてか胸の中から消えない。
 秘書が手帳を開きながら近づいて来る。

 「社長、この後の予定なんですが…。」

 手を掲げ、秘書の発言を遮る。

 「申し訳ないけど、この後の予定はキャンセルして欲しい。」

 「どうしてですか?」

 「突然、家族サービスしたくなってね。今日は君も仕事を切り上げて、早く帰るといいよ。」

 秘書とは長い付き合いだから、結婚しているのも知っている。
 私と同じ、飛べない人間である。だが僕とは違い、その夫も飛べない人間だ。

 
 エントランスから街に一歩踏み足すと、肌寒い空気が体を包み込んだ。日は傾き、林立するビルを真っ赤に染め上げている。
 夕方になるにつれ空を飛ぶ人と少なくなる。あくまで進路は生身の目が頼りだから、暗くなってくると障害物に激突する確率が増えるのだ。現に年に数百件、死亡事故が起こっている。
 
 地下駐車場に降り、静かに車を発進させる。
 家路に帰るサラリーマンや手を繋いだ親子が流れて行く。この人々が空を飛べるのかを、外見上では判断することは不可能だ。

 空を飛べる人間が社会的な特権を得ているかというと、そうでもない。
 この世界には車も飛行機もある。空を飛ぶよりも車に乗った方が速いし、飛行機のように長距離を飛べはしない。空を飛ぶこと、それ自体はビジネスにはなり得ないのだ。
 それより何より、空を飛ぶということは危険を伴う。もし飛行中に病気で意識を失ったり、建物に衝突したら、身を守るものはない。空を飛べる能力はあるのに、あえて飛ぼうとしない人も存在するほどである。

 妻と初めて会ったのもも、彼女が空から墜落し地面に伏していた時であった。当時大学生だった僕は慌てて救急車を呼んだ。妻はどうにか一命を取り止めたものの、三か月程の入院が必要なほどの重傷だった。そのお見舞いに通うにつれ、徐々に親しくなり、そして結婚した。

 僕たちが住んでいる高層マンションに車を止める。オートロックを通り抜け、部屋の扉のノブを捻る。しかしガツリと音がして扉が開かない。鍵が掛っている。
 妻は平日の午前中だけ、パートで働いている。だからこの時間は在宅しているはずなのだが。
 僕がこの時間に帰るのは滅多にないことだから、夕食の買い物に出ている可能性もある。
 
 鍵を開け、部屋に入る。薄暗いリビングはしんと静まり返っている。深夜に帰ってきて、妻が寝ていても僅かに人が居る暖かさが伝わってくるもの。完全に冷え切った家に帰るのは、長い間経験してなかった。
 妻に連絡しようとして、止めた。買い物ならば、すぐに帰って来るだろう。
 
 ただ、妻が帰ってくるまで、ぼけっと暇を潰すのも芸がない。顎に手を当て、するべき行動について考える。出来れば帰ってきた妻が驚いてくれる行動にしたい。
 周りを見回す。視線の先に台所が見えた。
 そうだ、思いついた。今日は妻の代わりに夕食を作ろう。結婚してからは料理をする機会はなくなったが、独身の頃は自炊ばかりだった。

 冷蔵庫の扉を開き、食材を確認し、数種類の野菜と少しの豚肉を取り出す。これだけの食材があれば、野菜炒めくらい作れる。
 20分後、出来上がった野菜炒めはひどい出来だった。野菜の大きさはバラバラ、火が入っていない部分もあるかもしれない。けれど結婚する前の僕らは、こんな料理を食べていた。
 
 野菜炒めと味噌汁とテーブルに並べる。
 妻はまだ帰って来ない。料理が冷める前に帰ってきて欲しいのだが。
 僕はカーテンを開けて、窓の外を眺める。空は藍色に輝き、夜に差し掛かろうとしている。。

 「あら? あなた?」

 涼やかな声が響いた。
 声のした方向へ顔を向けると、妻が空中に浮かんでいた。
 長い髪が、風に吹かれ、はためく。

 「どうしたの? 今日は早いわ。帰るのが遅いとも思って、空を飛んで買い物に出ちゃってたわ。ごめんね。」

 「いや、謝ることじゃないよ。」

 妻はふわりとベランダに着地した。
 着地した瞬間、ようやく服が重力に引かれるように垂れ下がる。
 右手に買い物かごを下げたまま、僕の方へ近づいて来る。パタパタと小さく足音が響く。

 「あ、ああ。今日は早く帰れたからんだ。君がいない間に夕食も作ってみたよ。美味しくないかもしれないけど。」

 「あなたの手料理を食べられるなんて、何年振りかしら。」

 妻は笑った。まるでおとぎ話に出てくる、空から舞い降りた天女のように。


 テーブルに向かい合って食事を始める。妻が野菜炒めを口に入れる。

 「うん、おいしい。」

 心の中で安堵する。もっともこの料理が恐ろしく不味くても、美味しいと言ってくれるだろうけど。
 僕も一口齧る。野菜そのままの味だ。美味くもないが、不味くもない。
 
 「ねえ。最近あなたは深夜にしか家に帰って来ないから言えなかったんだけど、大切な話があるの。」

 顔の前に手を組み、真剣な眼差しで僕を見つめる。これほど真剣な表情は数えるほどしか見たことない。
 反射的にいくつかの候補を想像する。そして、頭に浮かべたことすら後悔した。
 
 「あのね。私、妊娠したみたい。」

 頭が真っ白になる。妻が妊娠してる。それはつまり…。
 
 「妊娠三か月目だって。あなたは父親、私に母親になるのよ。ねえ、喜んでくれるしょ?」

 「もちろんだよ。」

 即座に返答し、妻の組まれた両手に両手を添える。
 僕が親に。
 嬉しかった。とても嬉しかった。けれど心の片隅には困惑と不安と恐怖の感情も転がっている。
 けど、それはこれから父親になる男ならば、誰でも感じる感情なはずだ。

 結婚して7年、妻はずっと子供を欲しがっていた。周囲から子供を産むことについて聞かれることもあった。
 金銭についても問題ない。
 だから僕が妻の出産について反対する理由など、どこにも存在しないはずだ。
 
 「明後日病院に行こうと思うんだけど、あなたは都合がつくかしら?」

 「会社が倒産しても付き添うよ。」

 僕は至って真面目に言った。やっと妻は微笑を浮かべ、

 「そこまでしなくてもいいわ。子育てにはお金がかかるもの、会社が倒産したら困っちゃうわ。そうだわ、出産するまで空を飛ぶのを止めようかしら。」

 「そうだね。その方がいいかも知れないね。万が一事故が起こったら大変だ。」

 僕らは互いの瞳を見つめ合った。
 喜ばしいことだ。そう、問題は一つもないはずだ。

 その夜、僕は興奮して寝付けなかった。
 ベットの隣では妻はぐっすりと眠っている。
 やはり母親になる女性は強いのだろうか。規則正しく繰り返される寝息を聞きながらそう思った。


 ここ数日はずっと快晴だった。
 妻に案内されて訪れた病院は、予想に反して小規模な病院だった。いや、病院と呼べるかすら怪しい。
 
 「医者の良し悪しは病院の規模の大きさには関係ないわ。」

 妻が僕の手を引いて行く。
 待合室には様々な人が呼び出されるのを待っていた。お腹が大きい女性、それに付き添う男性。普通の病院と比べて、幸福そうな雰囲気が漂っているように感じられる。
 僕らも同じような雰囲気なのだろうか。
 少なくとも妻の横顔には一片の不安も感じ取れない。

 看護婦が僕たちの名前を叫ぶ。僕らは手を繋いだまま立ち上がる。
 診察室は微かに消毒液の匂いがした。僕らは並んで椅子に腰かける。
 正面に座っている女性の医者が、カルテから僕たちへと視線を移す。
 
 「この度はご懐妊おめでとうございます。今のところはお子様は至って順調に育っています。しかしまだ三か月目、本番はこれから。今日は妊娠中にやってはいけないことや病気の兆候について説明します。」

 女医は言い淀むこともなく、淡々と説明する。
 僕らは必死にメモを取る。
 長い説明が終わるころにはメモ帳の半分を消化していた。改めて、子供を産むとは大変な事だと実感させられる。

 「大まかですが、最低限の説明させていただきました。ああ、念のために言わせていただくと、ベビーグッズなどはお子様が生まれるまで購入をお控えください。」

 「というと?」

 僕は聞き返す。
 女医は足を組み直しながら、

 「お子様が産まれるまでは、空を飛べる能力があるか判断出来ませんので。空を飛べるかによって赤ん坊の世話の仕方はまったく異なります。お店でも、空を飛べる赤ん坊用と飛べない赤ん坊用では、売り場が分かれているはずです。」

 「親が空を飛べないと、子供も空を飛べないのでしょうか?」

 「いえいえ、そんなことはありません。空を飛べない両親から、飛べる子供が産まれることは普通にあります。医者として、あまり言いたくないことなのですが、現時点では空を飛べる子供が産まれる仕組みが解明されていないのです。ですから空を飛べる能力があるかは、完全に運を天に任せるような感じになってしまいます。」

 女医は苛立たしげに唇を噛む。
 社会的には、飛ぶ能力があろうがなかろうが、差はない。しかしこの病院を訪れる親たちは、子供が空を飛ぶことを望む方が多いのだろうか。
 

 家に帰る途中にベイビーグッズが売っている店に立ち寄った。
 女医が言ってたように、売り場は真っ二つに分かれていた。
 空を飛べる用の赤ん坊のグッズは、ベットや地面に縛り付けて置くような機能が追加されている。きっと赤ん坊の頃は、上手く空を飛べないのだろう。
 妻はそれらを興味津々な様子で眺めたり、実際に手に取ったりしている。

 「やっぱり君も子供が空を飛べた方がいいと思ってる?」

 何でもないように装いながら、僕は尋ねた。
 妻は赤ん坊用の玩具をカラカラと鳴らしながら、

 「んー。私はどっちでもいい。一番大切なのは私たちが、この子に愛情を注げるかどうかだから。」

 玩具を僕に押し付ける。

 「この玩具なら買ってもいいでしょ? 飛べる能力に関係なく使うから。」
 
 僕は玩具を両手で受け取る。
 値段は2000円。
 手のひらで玩具を転がす。どこか懐かしいような気がした。


 次の日、会社に出勤すると秘書から小さな花束を手渡された。

 「これは?」

 「昨日病院にてご夫婦をお見掛けしました。恐らく子供を授かったのではないかと推測しまして。これは私からのささやかなお祝いです。」

 棚から花瓶を取り出し、花を差す。それだけで机の上が一気に華やぐ。

 「ありがとう。嬉しいよ。」

 「どういたしまして。いつもお世話になっていますから。」

 「それはお互い様だよ。それにしても、どうして病院に?」

 秘書が少しだけ俯く。

 「それは…。不妊の治療に…。」

 言葉に詰まる。子供がいないことは知っていたが、まさか不妊の治療をしているとは。
 秘書はすぐに顔を上げ、

 「大丈夫ですよ。もう何年も治療していますから、人にあれこれと言われることには慣れています。それでは、お茶でも淹れてきます。」

 秘書は部屋を出て行く。
 その後ろ姿に掛けるべき言葉を、僕は思いつくことが出来なかった。


 それから六か月が経過した。
 春と梅雨が過ぎ、夏に季節は廻ろうとしている。
 リビングは少々蒸し暑い。妻の体が冷えないようにエアコンの設定温度を高めにしている。

 「ねえあなた、お腹を触ってみて。大きくなってるでしょ。」

 妻はゆったりとした服を着ている。一か月前から大事を取って、パートを休職している。
 僕は恐る恐るお腹に触る。確かに膨らんでる。そして脈打っているような気もする。
 お腹を撫でる。妻がくすぐったそうに身をよじる。

 「君は妊娠してからしばらく空を飛んでないけど、やっぱり飛べないとストレスが溜たまってしまうかい?」

 「ないと言えば嘘になるけど、でも仕方ないことだから。」

 「君が子供と一緒に空を飛ぶことを楽しみに待っているよ。その時になったら、僕のことなんか気にせずに、思う存分大空を駆け回るといい。」

 妻は少しだけ悲しそうな顔をした。
 何故悲しそうな顔をするのか、理解できない。見間違いだろうか。

 「君も知っているだろうけど、僕の亡くなった両親も空を飛べる能力があってね。二人寄り添って、空を飛ぶのをよく地上から眺めていた。」

 「それは素敵ね。」

 「うん。僕が小学生だったころに相次いで亡くなってしまったから。はっきりとは思い出せないところもある。けど残された記憶では優しい両親だったような気がするんだ。」

 もう顔も思い出せない。けれど両親が空を飛ぶ様子を地上から眺める光景だけは、脳裏に焼き付いている。目を閉じればその光景がいつでも再生出来るほどに。


 都内でも最高ランクの料理を出す店ともなると、街頭の喧騒とはまったく異なり、厳粛たる静けさに包まれている。ましてやVIPルームとなれば、なおさらだ。
 骨董品には詳しくないが壁際にさり気なく陳列されている皿などは、きっと一般的な人間の生涯年収に匹敵するだろう。
 運ばれてきた料理を一口食べる。とても美味しい。日頃は妻が作ってくれる食事を抜かせば、忙しさのあまり、あり合わせの即席麺などですましてしまうしまうことも多い。接待などでは外食することもあるが、仕事の話ばかりで料理の味を味わうどころではない。

 「お義父さん、お義母さん、今日はわざわざ東京に来ていただきありがとうございます。ささやかではありますが、このような場を用意させていただきました。どうぞお楽しみください。」

 しかし老夫婦は料理の美味しさに夢中なのか、反応しない。

 「もう、お父さんたら。ちゃんと聞いてよね。」

 妻が注意をする。ようやく義父が顔を上げ、

 「こんなに美味しいもの食べたことないんじゃ。仕方ないじゃろ。」

 「そう、そう。」

 義母も同意する。妻は呆れたように、

 「せっかく出産の報告をしようと、わざわざ時間を取って貰ったのに。これじゃ意味ないじゃない。」

 妻の両親は県外の山奥で農業をしている。僕達からの援助を全て断り、小さな家に長年住み続けている。そしてその家で一人娘である妻を育てた。
 彼らは孫が出来る年になっても、とても仲が良い。妻曰く、一度も喧嘩したことがないらしい。
 義両親に会うたびに、僕ら夫婦が老人になっても仲の良いままでいられたらなと思う。

 「大丈夫。だって婿殿は偉い社長様だもの、言うことなんてないよ。私らは毎日テレビで見るし。」
 
 義母が無邪気に笑う。
 料理のメインデッシュのステーキが運ばれてくる。

 「でも例え日本一の起業家でも、父親になったことはないのよ。何かアドバイスとかあるでしょう?」

 早速、義両親がステーキにナイフを入れる。切断されたステーキの断面から、肉汁が溢れだす。

 「ない、ない。私たちも特別なことは何もしとらんもの。」
 
 そのまま嬉しそうにステーキを頬張る。

 「もう!」

 憤る妻に目線をやって、無言のまま制止する。無理矢理に育児のアドバイスを聞き出そうとしもしかたない。
 
 「ただ、そうじゃな。アドバイスと言えるかどうかわからんのじゃが、一つだけ親子でやって楽しかったことがあったの。」

 義父がステーキを切断する手を止めて言った。昔を思い出してるような遠い目をしている。

 「というと?」

 「うん。親子三人で空を飛んだときは、やっと親になった気がしたものじゃ。」


 胸に鈍痛がした。


 「そう、そう。沢山飛んだねぇ。高校生になったら恥ずかしがって、一緒に飛んでくれなくなってね。どうだい? 明日、昔のように皆で飛んでみようか。」

 義母も朗らかに同意する。
 
 「お母さん!!」

 妻が椅子から立ち上がり、強い調子で糾弾した。
 しかし義両親は悪びれる様子もなく、食事を続ける。
 
 「そう言えば、婿殿は空を飛べないんじゃったな。すまん、すまん。」

 「飛べなくても婿殿なら心配にないわ。だって私たちよりもずっと頭がいいでしょうから。」

 その様子に、妻はまだ何か叫ぼうとするが、

 「まあまあ、僕は気にしてないから。喧嘩しないで欲しいな。」
 
 椅子から立ち上がり、妻の肩に手を置いた。
 せっかくの食事会なのだ、これ以上荒立てたくはない。
 義両親は妻がなぜこれほど怒るのか理解出来ないらしく、食事が終わるまでキョトンとしていた。


 夏が終わり、もう少しで雪が降る季節になった。
 僕は連日深夜まで仕事をして帰宅する毎日を送っていた。妻は出産に備えて入院している。
 出産予定日はもうすぐである。だからいつ病院から呼び出しがあっても、いつでも対応が出来るように、前倒しに仕事を進めておくことにしている。
 
 誰もいない家に帰宅する。掃除をする人がいないため、少々埃っぽい。電気のスイッチを入れると、いつもの光景が目に入る。
 寝に帰ってくるだけなので、昨日とまったく部屋の様子は変化しない。スーツを脱ぎ、寝室に移動しようとする。
 ふと、テレビの脇に積まれているDVDが目に入った。その中の一枚を手に取ると、空を飛べる子供用の教材だった。パッケージには母親らしき女性が赤ん坊を抱いて、にこやかに立っている。
 これまでこの類のDVDは忙しくて見る暇がなかったが、この日は特段に理由もなくそれを鑑賞したくなった。

 一人きりの部屋で、DVDレコーダーが再生を始める。
 軽快な音楽と共にパッケージに登場した女性が現れ、育児に関するあれこれを説明を始めた。
 その冒頭のシーンは既に勉強済みの知識だった。
 途中から空を飛べる赤ん坊が登場し、女性がその赤ん坊を実際に世話しながら注意点を述べる。赤ん坊は言葉すら喋れないのに、ふわふわと空中に浮かんでいた。
 僕は思わずその姿に見入ってしまう。

 「このように生まれたばかりの赤ん坊は無意識に浮かんでしまいます。だから飛べる能力をコントール出来ないうちはベットなどで縛り付けなければなりません。それと絶対に外には出さないこと。過去にはその類の事故が何件も起きています。」

 その時ばかりは女性も険しい顔になる。それから赤ん坊がいかに飛べる能力をコントロールするかの説明が始まる。
 僕はテレビの画面を指で触れる。画面の中の赤ん坊に触れる訳ではないことはわかっていたけれど。

 「これで一通りの説明を終わります。最後に育児とは関係ありませんが、一つ、興味深い話を。誰でも赤ん坊のころは無意識に浮かんでしまいます。そのことから赤ん坊は空を飛べる能力をコントロールするのではなく、実は地面に足を付ける能力を獲得しているとの説があります。つまり我々は常に浮かんでいる状態が本来の姿ではないかと思われるのです。どうでしょう? 興味深い話でしょう?」

 妻と両親が仲良く空を飛んでいる姿が脳裏に浮かんだ。きっと彼らも亡くなった僕の両親も赤ん坊のころには空中を浮かんでいたに違いない。
 開始の時と同じ音楽が鳴り、DVDの内容が終わった。
 リモコンのボタンを操作して、もう一度はじめからDVDを再生する。
 

 次の朝、出社すると秘書が僕を見るなり、

 「社長、顔色が悪いのですが、大丈夫でしょうか?」

 結局、朝まで色々な積まれていた育児用DVDを鑑賞してしまった。僕自身も子供が産まれることに少々ナイーブになっているのかもしれない。

 「大丈夫だよ。ちょっと夜更かししちゃってね。」

 秘書が心配そうに僕の顔を覗き込む。

 「でもすごい目の隈ですよ? 顔色も悪いし、働きすぎではありませんか?」

 「父親になるんだから、がんばらなきゃ。僕に構わずに今日の予定を教えて欲しい。」

 机に座り、PCを立ち上げる。メールの新着をチェックする。
 このような場合、僕が決して休んだりしないことを長年一緒に仕事している秘書は熟知している。
 諦めたよう首を振り、
 
 「午前中はデスクワーク。午後から雑誌の取材が入っています。」

 「またか…。えっと、どこの雑誌?」

 妻が妊娠したのがきっかけになったのか、経営者としだけではなく、良き夫としての取材も多くなっていた。

 「ずっと付き合いのある雑誌ですね。記者は…。以前一度だけ取材したことがある記者さんですね。」

 秘書が記者の名前を述べる。
 思い出した。帰り際に妻が空が飛べることについ質問した記者さんだ。たしか姪の彼氏が空を飛べるんだったったけ。 それからお付き合いは上手くいっているんだろうか。
 上手く行っていて欲しいと思う。もっと詳しくアドバイスするべきだったのかと、少々の後悔が胸をよぎる。
 男女が逆だが、それでも記者さんから上手くいってると聞けたら、きっと疲れなど吹っ飛んでしまうに違いない。
 
 「どうしてもと言うなら、断りますが?」

 「いや、取材は受けるよ。」

 少しだけ元気が戻ったように感じる。
 
 「それと私は明日から二日間有給を取らせていただきます。仕事は後輩が代替します。」

 「うん、聞いてる。珍しいね、旅行にでも行くのかい?」

 「いえ、病院に行きます。」

 顔が強張った。
 不妊治療を受けていることは知っていた。そして現時点ではその効果が表れていないことも。
 
 「別に社長が気にすることではありませんよ。社長の奥様の妊娠と、私たち夫婦の不妊には関係ありません。私は素直に社長が父親になることを祝福しております。」

 秘書は微笑んだ。
 僕が逆の立場ならば、こんなにも自然に笑えはしないだろう。どうして妻といい、母親になろうとする女性はこんなにも強いのだろう。

 「もし、もしもだよ。生まれた子供が空を飛べる能力を持ってたらどうするつもりなのかい? 君もご主人も空を飛べないだろう?」

 言った瞬間、質問を悔やんだ。これは職場の仲間にする質問ではない。
 プライベートに踏み込みすぎている。秘書がこのまま怒って、部屋を退出してもおかしくない。
 恐る恐る秘書の顔を見上げる。
 
 しかし、秘書は意表を突かれた表情で僕の顔を眺めていた。まるで質問の意図が伝わらなかったように。

 「空を飛ぶ飛ばないは別段何一つ他に影響するとは思えませんが。子供が生まれたら愛します。それだけですが?」

 「そ、そうだよね。変な質問して申し訳ない。」

 頭を下げた。自分が今どんな顔をしているのか、それを秘書に見られたくはなかった。
 
 
 数日後、僕は車を猛スピードで飛ばしていた。病院から妻が産気づいたとの連絡あったからだ。
 すぐに義両親にも連絡した。義両親も急いで東京に来てくれると約束してくれた。
 思ったよりも動揺はない。それはきっと長い間この日が来ることを思い続けていたからだ。

 病院の駐車場に乱暴に車を止め、急ぎ足で中に向かう。

 「今のところは順調に推移していますが、自然出産は何が起こるのかわかりません。どちらにしてもまだ時間が必要と思われますので、旦那様は待機をお願いします。」

 看護師が告げた。
 出来れば妻の顔を一目だけでも見て、励ましたかった。けれど妻は自分が出産する姿を見られることを嫌がり、それも叶わない。
 廊下に設置してあるベンチに座った。待つ以外に僕に出来ることはなかった。
 
 爪を噛んだ。
 小さい頃から自分ではどうしようもない事態に直面すると、この癖が出てしまう。ここ10年は出さなくても良かった癖。
 赤ん坊だった頃からの僕の半生がフラッシュバックのように頭を過ぎ去る。

 そしてこれから。
 以前の診断により、生まれてくる子供は女の子だということはわかっている。
 妻と相談して名前も決めた。「穂香」、それが僕たちの子供の名前だ。
 僕は穂香とのこれからを生活を想像する。おむつを替えたり、一緒にお風呂に入ったり。小学生になったら勉強を教える。思春期になったら、娘から嫌われていまう。
 そして最後には穂香が結婚してしまって、僕は結婚式で号泣してしまう。そんなことが遠い将来、あるのだろうか。

 永久とも思える時間が経過する。
 途中で看護師が何度か休憩を進めたが、全て断り、ベンチに座り続けた。
 腕時計が秒針が動くたびに、カチカチと音が鳴っているような気さえする。

 妻のことを考える。
 僕は誰よりも妻を信じている。仮に破産して全てを失ってしまっても、妻だけは僕を見捨てたりはしないと。
 ゼロから会社を起業したから、お金がなくなれば、人が離れて行ってしまうことを嫌と言うほど知っている。世間も手の平を返すように、僕を叩くだろう。
 けれど、きっと妻だけは最後まで傍に居てくれるだろう。


 突然分娩室の扉が開き、女医が目の前に立った。
 僕も立とうとするが、あまりにも長い間座っていたので、うまく力が入らない。
 それでもベンチに手を付きながらなんとか立ち上がる。

 「無事に出産が終わりました。」

 女医は疲れた表情をしていたが、力強く言い切った。

 長い息を吐いた。緊張が解け、体が弛緩していくのが自分でもわかる。

 「ありがとうございました。」
 
 女医に向かって深々とお辞儀をする。
 しかし女医はそれに感情を動かすこともなく、淡々と話を続ける。

 「母子とも現状では健康ではありますが、出産直後に容体が急変するケースもあり得ます。旦那様も気を抜かないでください。」

 「妻や子供と会えますか?」

 「奥様は眠ってらっしゃいますから、今夜は会うのを遠慮した方が良いでしょう。お子様はまだ触れることは出来ませんが、会えます。ぜひ声を掛けて上げてください。案内しますよ。」

 そう言うと廊下の先へと、女医は重い足取りで歩き出そうとする。

 「いえ、新生児室の場所はあらかじめ調べていたので案内は不要です。女医さんも少し休憩と取られた方がよろしいかと。」

 先導しようとしていた女医の足が止まる。
 
 「そうですか。それではお言葉に甘えさせていただきます。」

 「ありがとうございました。」

 もう一度、一礼する。
 女医は分娩室に戻ろうとする。しかし再び足が止まった。
 そして振り返らないまま、
 
 「そうだ。言い忘れていたのですけど、お子さんには空を飛べる能力はありませんでした。」
 
 何でもないことのように女医はさらりと告げた。


 その言葉を心が理解するのに、時間が必要だった。

 
 パタンと深夜の病院に扉が閉まる音が響く。
 僕はしばらく阿呆のように立ち尽くし、そして何も考えられぬまま新生児室へと歩き出した。
 深夜の病院には人影はまったくなく、昼間の喧騒とは打って変わり静まり返っている。僕の足音だけがカツカツと響く。
 廊下の角を曲がる。その先に一室だけ明かりが点灯している部屋が現れた。記憶によればそこが新生児室。

 ドアをノックして、看護師に名前を告げる。
 看護師はにこやかに対応してくれ、並んでいるベットの一つを指し示した。
 それから看護師はすぐに部屋に備え付けられ居る机に座り、書類を書きだした。深夜なので当直の看護師は彼女一人のようだ。
 
 指定されたベットへと進む。
 微かなエアコンの音の他には静寂に包まれている。
 この部屋にいるのは、全て空を飛べない赤ん坊らしい。その証拠に赤ん坊はベットに縛り付けられてはいない。赤ん坊の顔を一つ一つ見ながら歩く。
 

 指定されたベットに穂香がすやすやと眠っていた。


 指定されたベットには小さい命があった。生まればかりなので僕と妻、どちらに似ているのかはまだわからない。
 当然、嬉しさもあったけれど、同じくらい悲しい気持ちも心に湧き上がる。
 
 「ごめんよ。穂香。」
 
 小さな手足、胸が微かに上下している。手を伸ばすが、途中で女医に言われたことを思い出す。
 将来この子が僕と同じ気持ちを持ったとしても、僕に出来ることは何もない。
 なんだか無性に悲しい気持ちになった。 

 
 「あなたが謝ることはないのよ。」


 その時、病室に女性の声が小さく響いた。よく知っている声。妻の声だ。
 振り返ると、検査衣を着ている妻が立っていた。髪の毛は乱れ、顔色は蒼白でいまにも倒れそうにすら見える。
 慌てて妻の腕を掴み、体を支える。

 「ダメじゃないか! 寝ていないと。」

 「ごめんなさい。でもどうしても言いたいことがあったの。きっとここに居ると思って。」

 妻は掠れたような小さな声で答え、穂香の方に視線を向けた。
 
 「穂香が空を飛べないことか…。きっと僕が悪かったんだ。」

 「違うの。」

 「いや、そうさ。君は穂香と一緒に空を飛ぶのが夢だったよね。それも、もう叶わない。僕がこの子の可能性を奪い取ってしまったんだ。」

 右手が伸び、僕の頬に触れた。ひんやりと感触が伝わる。

 「違うの。あなたは穂香が空を飛べた方がいいと願っていたけれど、私は違う。」

 顔を上げ、僕の目を凝視する。
 
 「私は穂香が空を飛べない方がいいと思っていたの。」

 「え?」

 言った途端、妻の瞳から涙が一筋流れた。
 妻の顔を眺めているうちに、次々と涙が溢れては地面に向かって流れてゆく。
 笑おうとしたらしく、泣きながら表情をクシャクシャにする。

 「どうして? だって空を飛べた方がいいに決まっているじゃないか。そりゃあ、社会的には有利にはならない。けど空を飛べるんだよ? それなのに…。」

 「だって、もし穂香が空を飛べたのなら、あなたはこの子を愛せなかったでしょう? きっとこれ以上、自分だけ空を飛べないことに耐えられない。あなたは私と穂香から離れて行ってしまうわ。」

 その瞬間、胸に亀裂が入ったような痛みが走った。
 否定したかった。しかしその言葉が喉から出ない。
 空を飛べる能力の有無で誰かを差別したことはない、そう断言出来た。今、妻に指摘されるまでは。
 
 「確かに空を飛べた方が人生が豊かになるかもしれない。けれどこの子にとって、もっとずっと大切なことがあるの。あなたがこの子を愛することよ。父親としてずっと傍に居てくれることよ。」

 僕は父親になる万全の準備をしていたはずだ。けれど、全てがわからなくなった。
 頭の中で必死に弁明の言葉を探し続ける。しかしどうしても見つけ出せない。
 僕は沈黙する。沈黙せざるを得なかった。それが妻の指摘が事実であると認めることだとわかっていたとしても。
 
 病室が静寂に包まれる。
 
 思い返せば両親が手を繋いで飛ぶのを見ることが、何よりも好きだった。
 学生の頃は空を飛べる能力のあるなしで態度を決める人を軽蔑していた。
 起業してからも区別しないように社員に訓示してきた。
 雑誌にも綺麗ばかりを得意げに吹聴していた。

 けれど本当は空を飛べる人が嫌いだった。羨ましくてたまらなかった。
 自分が軽蔑してきた人間とさして変わらないことを、嫌と言うほど思い知らされる。
 

 「あなたが泣いているのを初めて見たわ。」

 ぽつりと妻が言った。
 自分の顔を撫でる。指先に自分の流した涙の感触がした。
 僕は自分でも知らず知らずのうちに涙を流していたらしい。人前で涙を見せたのは両親の葬儀の時以来のことだ。
 妻の姿が、ぼやけて見える。

 僕は頬を撫でる妻の右手を両手で包んだ。
 そして縋るように、
 
 「穂香は空を飛べなくても幸せになれるかな?」

 「なれるに決まってるじゃない。あなたは自分が幸せじゃないと言うの?」

 妻は僕の胸に顔を埋めた。
 僕は幸せだ。それだけは今となっても確信できた。

 「私も悪かったの。無神経だった。妊娠するまでは本当に空を飛べる能力なんて気にしていないと思っていた。けれど妊娠してから、空を飛ぶ話題が出るたびにあなたは苦しそうな顔をするんだもの。」

 そして顔を埋めたまま、目を閉じる。

 「あなたが劣等感を抱くことないのよ。私は空を飛べなくてもあなたを愛しています。穂香も空を飛べなくても幸せになれる。だって私たちは家族なのだから。」

 家族。家族か。
 根拠はないことはわかっている。

 しかし、納得した。

 「僕でも父親になれるかな?」

 妻の髪を撫でながら、僕は言った。
 くすりと僕の胸の中で妻は笑った。

 「大丈夫。今は無理でも、少しずつ父親になれるわ。私も母親になれるようにがんばるから、あなたが全てを背負い込むことはないのよ。」
 
 その時、ベットで寝ていた穂香の目が開いた。そしてじっと抱き合ている僕たちを凝視する。

 「ほら、穂香も祝福してくれる。」

 そう言われると僕も穂香の表情が笑っているように見えてくる。
 妻が一層強く、僕に体を預ける。
 
 「言いたいことを言ったらなんだか疲れたわ。ねえ、病室まで運んでくれる?」

 妻が出産直後だということをようやく思い出す。慌てて妻の体を抱える。
 いつの間にか涙は止まっていた。

 妻を抱き上げる。
 腕の中の妻は眠っているのか、目を閉じたままもう何も言わなかった。


 数年後、僕は昼間の公園に居た。
 上空では妻が空を飛んでいる。クルリと円を描く。そして自由落下から地面すれすれで急回転。
 その技の数々を見上げるたびに、今でも胸に鈍痛が走る。きっと痛みが完全に消えることはないだろう。けれどその痛みは依然と比べてずっと穏やかだ。

 僕の隣には幼稚園児になった穂香が立っている。穂香は妻が技を披露する度に歓声を上げた。

 「お母さん、すごいね!」

 穂香がパチパチと拍手をする。
 今日は穂香が妻が空を飛ぶところを見たいと言い出したので、親子で公園にピクニックに来ている。

 「そうだね。母さんはすごいよ。」

 穂香に微笑みかける。
 僕らはひまわりの花のように、妻の飛ぶ姿を追いかける。

 「お父さん、穂香も空を飛びたいなぁ。」

 無邪気に穂香が言った。
 僕は穂香の目線に、自分の目線が重なるようにしゃがみ、

 「ごめん。それは無理なんだ。穂香とお父さんは空を飛べなないんだ。」

 「えー。」

 穂香が頬を膨らませる。
 
 「でもその代わりにお父さんが手を繋いであげよう。」

 穂香に向けて手を差し出す。
 けれど穂香はその返答に不満だったらしく、なかなかその手を取ろうとしない。
 
 でも、僕は手を引っ込めはしなかった。
 しばらく後、穂香は不承不承といった様子で僕の手を取った。

 「しょうがないから、穂香はお父さんの手で我慢してあげる。」

 「ありがとう。」

 繋いだ手は暖かい。

 少し離れた場所に妻が着地する。
 僕らは手を繋いだまま、その場所に駆け出した。

空を飛べないあなたへ ©黒とかげ

執筆の狙い

投稿4作目になります。

前作よりも人の心理がもっとうまく書くことを意識しました。

小説のスキルアップのため。厳しいご意見をお待ちしております。

黒とかげ

124.86.172.187

感想と意見

アフリカ

拝読しました

冒頭の意外性も中盤の牽引力もラストのオチも僕は嫌いじゃなかったです。

でも、ドM様なのか厳しい意見が欲しいとの事なので頑張ります。

僕が気になったのは語り口。どちらかと言えばハードボイルドなジャンルでよく見かける淡々とした短い語りは俯瞰的な感覚を高めているとのだと感じます。『僕』が現場で語っているにしては酷く冷静で他人事のように感じます。その分、台詞で感情を説明している感じもしますし、せっかくの一人称の使い方が気になりました。
例えばですが、『僕』を何でも良いのですが『田○健○(以後、健○)』とでも、置き換えて読まれたら何となく分かると思います。僕には殆どの場面でこの文体でこのテンポなら語り手が別にいても違和感を感じないと思いました。
一人称で書いているならもっと地の文章に感情を反映させても良いのでは? 台詞で説明すると引いてしまうのは状況の説明だけでは無くて感情も同じかと感じます。十分に書ける方だと思うので『普段言わない台詞』として誘導するのではなくて台詞にしない感情(普段呑み込む言葉)を地の文章でガンガン出せるのが『僕,私』目線の有利な特徴ではないでしょうか?

物語は僕は好きでした

ありがとうございました

2017-04-15 12:46

49.104.30.196

GM91

拝読しました。
こういう話は好きです。
ただ、書こうとされているテーマに対する掘り下げについてはまだ少し余地があるような気もします。
率直に言えば物足りなさを感じます。

あと、細かい設定で少し気になったのですが、上空と言うような高度まで何の制約もなしに飛べるのであれば、良くも悪くもかなり役に立つと思うのです。
山岳の災害救助で険しい谷をひょいと越えてみたり、橋がない場所でも川の向こう岸に渡れたり。

御作の主題を察するに、もっと「役に立たない理由」をきちんと設定として作りこむほうがいいかなと。例えば、飛べるんだけど30cmしか浮かないとか水の上とかはダメとか息継ぎすると落ちるとか。

次作楽しみにしています。

2017-04-15 15:49

202.215.168.236

へげぞぞ

傑作だと思います。

2017-04-15 15:54

180.199.23.223

abejunichi

読ませていただきました。
とても興味深いストーリーだと感じました。テーマと物語がしっかり結びついていて、それが良いのだと思います。
しかし後半に進むにつれてちょっとずつ興味を失っていく感覚を味わいました。
空を飛べる人間と飛べない人間がいるというメタファーの広がりと物語上の設定がどこに向かうのか、前半は興味をそそられるのですが、真実が明らかになるにつれてちょっと興味がそがれる。
これは物語上の問題ではなく、筆者の文章のクオリティや熱意が、後半に向かうにつれて下がっていったからなのではないかと推察しています。
どのように書かれたのかはわかりませんが、面白いストーリーなのに、後半は心奪われない。
もちろんこれは読み手である僕の心の中で起きていることで、書き手のテンションの問題ではないのかもしれません。
しかし優れた音楽の演奏がそうであるように、書き手のコンディションやテンションは必ず文章に顕れます。
推敲でそれらを修正することはできるのかもしれませんが、僕にはそのあたりのことはよくわかりません。
せっかく面白い物語性を持っていらっしゃるので、読み手を誘うテンションで最後まで書ききっていればよかったのではないかと感じました。
でも面白い作品だと思います。
ありがとうございました。

2017-04-15 15:59

60.93.106.163

晴れて名無し

とても情緒的な文章を書く人ですね。このまま磨けばいいと思います、時折目につく日本語問題で悪い印象を全部回収してもこういう感想でした。続きが気になったし、引き込む力があったから最後まで読めました。

2017-04-15 16:53

113.159.214.242

卯月

拝読。

面白かったというよりは素晴らし。へげぞぞ様の(傑作だと思います)とのコメントが上にありますがそれに近い。マアそこまで言って委員会なのですが。

(空を飛べる飛べない)このめたふぁはいかようにも解釈できる訳で、作為者さんの意図した以上の効果はあるのではないかと。

でも晴れて名無し様の言ってらっしゃるように日本語不自由ですよね。言葉選んでほしいし推敲もしてほしい。

益もなき事しか申し上げられませんが、御寛恕下さい。
御健筆を心より祈念申し上げます。ってか

2017-04-15 20:31

183.176.74.78

hir

 拝読しました。
 とっぴな設定が目を引くのですが 言葉の違い、文化の違いに置き換えても成立しそうな話に思えました。
 空を飛んで活躍している人とか、空が飛べなくて事件を起こす人とか、同じ人間であるとまとめるより、それぞれの利点や不利でしっかり違いを出すほうが活きるような気がします。
 ラストで飛ぶ気分だけでも、と肩車するのはどうでしょう。

2017-04-15 21:55

210.148.63.6

夜の雨

『空を飛べないあなたへ』拝読しました。


斬新な作品でした。
この手があったかという感じですね。

約16000字。
御作は、原稿用紙に直して40枚というところでしょうか。


A>僕の住んでいる世界には、二種類の人間が存在してる。
 空を飛べる人間と飛べない人間。<

B>最初に空を飛べる人間が誕生したのは、今から200年ほど前のことだった。
C>世間からはひどく迫害された。小学生の歴史の教科書にも大きく取り上げられている有名な出来事だ。
D>人間とは少しでも自分達とは違う者には、容赦なく差別してしまう生き物であるらしい。

という具合に、Aに関連してB、C、Dがあります。

「C,D」に書いてあるように、「世間からはひどく迫害された。」「人間とは少しでも自分達とは違う者には、容赦なく差別してしまう生き物であるらしい。」これが、Aに絡んでいます。

ところでこの「C,D」ですけれど、アメリカ映画の『X-メン』(エックスメン)そのものですね。
ただ、『X-メン』はエンターテインメントで、ド派手な演出があり、御作は、「人間愛」(特に、家族)を中心にした近未来作品ということになっています。
だから、『X-メン』とは、まったくの別物として、読めますので、ご安心してください。

『X-メン』(ウィキペディアより)。
社会問題
ミュータントと一般の人間の紛争は、ユダヤ人、アフリカ系アメリカ人、社会主義者、LGBTなどの、アメリカでのマイノリティたちが経験したことだといわれている。
人種差別問題
この物語の根底には、公民権の問題が潜んでいる。ミュータントは迫害を受ける人種的・宗教的マイノリティの暗喩であると見られることがある


問題点
●推敲が弱いですね。
ところどころ、文章がおかしいところがありました。
「作者様が、もう一度、読み返せば直せる」ので、大した問題ではありません。

●御作では200年後の世界ということになっていますので、商品「スマホ」ほか、いろいろが、違う形式になっていると思います。
そのあたりの、未来社会らしさを描いたらよいですね。


●こちらが、問題点の本題
主人公は「飛べない人間」で、妻は「飛べる人間です」。
さて、「生まれてくる子供は、飛べるのか、飛べないのか」ということで、わけ隔てなくいろいろな人と接している主人公に、
差別意識が「ある」「ない」うんぬん、という展開になっています。

しかし主人公の両親二人は、空を飛べる人間だったのですよね。
その二人に「差別された迫害された」というエピソードがありません。
また両親に自分たち二人は空を飛べるが、子供である主人公は空を飛べないことについて、「話をされた」
『E』のような、エピソードがないのですよね。

E>>御作の場合は、妻が妊娠して子供が産まれたら、空を飛べるか飛べないか、また、産まれた後(ラスト)も、
家族間のエピソードで、「空を飛べるか飛べない」と「親子の愛情」問題を絡めて描いています。
妻が空を飛んで、主人公と娘が見ていて、「お父さん、穂香も空を飛びたいなぁ。」というエピソードです。<<


主人公が自分の娘にラストで接した内容が、自分の両親の場合は、ありませんでした。
なぜないのか、御作のテーマに関する重大ごとなので、きっちりと、描く必要があると思います。

懐妊のことや、不妊治療のことが書いてありました。
また、文章が、やわらかというか、ナイーブでしたね。
作者様、女性でしょう。
男性だと、ここまでナイーブに書かれないと思いました。


かなり、レベルが高い作品で、テーマもよいし、読みやすかったです。
だから、余計問題点が目立ちます。

2017-04-15 23:38

114.189.140.228

なんだかなあ~。色々ヌルい。
年号書いてないけど現代でいいんだよね。
飛べる事を社会問題として書くには浅すぎ(保育園や小学校、航空管制、ドローン規制に近いであろう法的な事、また衣服やケータイ電話のアンテナ局など飛べる事によって変わるものが考えられていない)。まずもって、個人の問題に終始してオチをつけるなら迫害などと社会問題を持ち出して書くのはよした方が良い。


参考資料に『イカロスの誕生日』をどうぞ。

2017-04-16 16:46

122.22.117.87

野足夏南

拝読しました。

誤字脱字が多いのがまず気になりました。推敲は大事だと思います。読み手の興を削いでしまいますので。
設定は好きです。他の方も仰っているように色々な寓意が込められているようで興味を惹かれました。
ただ、物語としてはまだまだお粗末ではないかと思います。主人公が時代の寵児的な人物(と解釈しました)とはおよそ思えない平凡な思考、平凡な言葉、そもそもどういった会社でどういう業務を行っているのかといったディテールが一切描かれないふわっと感、物語としての一本線過ぎる展開、嫁の両親の平面的な人物造形(特に個人的には老人の口調に「〜じゃ」とか使われると、うーんとなってしまうのです)など気になるところ多数でした(他の方が引っかかっているところほぼ同意です)。
恐らく書き手の方はかなり若い方なのではないかと思いました。だから評価がどうということは一切ありませんが。
とりとめなく書いてしまいましたが、そんな感想です。

2017-04-16 17:04

222.148.106.33

黒とかげ

アフリカ様

感想ありがとうございます。

確かに一人称である必要はないのかも知れませんね。
話のクライマックスで妻に主人公の本当の気持ちを語らせる以上、それまでに心情を語らせることは
抑える必要がありました。
そう考えると、一人称とはミスマッチだったのかもと指摘されてそう感じました。

一人称と三人称をうまく使い分けられるように勉強します。

2017-04-16 19:56

124.86.172.187

黒とかげ

GM91様

感想ありがとうございます。

言われる通り空を飛ぶという設定の説明が足りませんでした。
ただ、設定を説明すると小説自体が冗長になってしまう恐れを感じてしまいました。
今でも冒頭の部分は説明だらけです。

中盤辺りに読者様に受け入られる程度に説明、あるいはエピソードを付け加えられればと
今になってそう思います。

空を飛べる制約に関しては、最後の妻が自由に飛んでいる光景を主人公と娘が眺めるという絵が
欲しくて制約を設定しませんでした。
これも無制限はやりすぎかなと感じたので反省したいと思います…。

2017-04-16 20:05

124.86.172.187

黒とかげ

へげぞぞ様

感想ありがとうございます。

傑作と言っていただいて嬉しいです。
しかし一人前の文章書きとしてはまだまだです。
今回、皆さまから色々なご指摘を頂いたので、これを生かし、次回作に反映したいと思います。

2017-04-16 20:07

124.86.172.187

黒とかげ

abejunichi様

感想ありがとうございます。

書き手のテンションについてですが、当初プロットを組んだ時は文字数を一万文字が目標だったんですけども、
気が付くと一万5千字をオーバーしていまして…。
恐らくそれが影響しているのはと思います。もっとクライマックスからオチにかけて文字数を増やすべきでした。

他にも冒頭は大きな物語を描くように見せて、物語が進むにつれ小さくなってくる手法を取っているので、
それが読者様の興味が離れて行く原因になった可能性もあります。
とはいえそれは言い訳でしかないので、次回作は最後まで興味を持たれるような話を作れるようにがんばります。

2017-04-16 20:17

124.86.172.187

黒とかげ

晴れて名無し様

感想ありがとうございます。

自分では意識して情緒的な文章を書きたつもりはありませんでした。
あるいは物語にのめり込みすぎたのかもと思います。

物語と適度な距離感を持って執筆したいです。

2017-04-16 20:19

124.86.172.187

黒とかげ

卯月様

感想ありがとうございます。

推敲の甘さについては前作でも指摘されたのですが、どうにもうまくなれません。
書いてる時、見直している時には完璧だと見えてしまいます。

せめて誤字はなくせるようにがんばります。
文法に関しては根本的な国語力が不足していると考えられるので、
少しずつ勉強していきます。

2017-04-16 20:29

124.86.172.187

黒とかげ

hir様

感想ありがとうございます。

この話の元ネタというか、現実世界での話にするならば、夫婦の肌の色に関するものにしようとしてました。
ただそれだと日本人には馴染みがないことと、空を飛ぶ光景に美しさに惹かれて設定を変更しました。

空を飛ぶことのあれこれに関しては、書き出すと切りがないような気がしたのでばっさりカットしました。
本筋と関係なくて、テーマがぶれてしまうとの恐れを抱きました。
とはいえ読み返すと、あまりにもカットしすぎてるようにも感じたので、その匙加減が今後の課題です。

2017-04-16 20:35

124.86.172.187

黒とかげ

夜の雨様

感想ありがとうございます。

>A>僕の住んでいる世界には、二種類の人間が存在してる。
 空を飛べる人間と飛べない人間。<

>B>最初に空を飛べる人間が誕生したのは、今から200年ほど前のことだった。
>C>世間からはひどく迫害された。小学生の歴史の教科書にも大きく取り上げられている有名な出来事だ。
>D>人間とは少しでも自分達とは違う者には、容赦なく差別してしまう生き物であるらしい。

>という具合に、Aに関連してB、C、Dがあります。

>「C,D」に書いてあるように、「世間からはひどく迫害された。」「人間とは少しでも自分達とは違う者には、容赦なく差別してしまう生き物であるらしい。」これが、Aに絡んでいます。


話の構造に関しては単純な起承転結を採用しておりまして、特に目新しい箇所はないです。
冒頭に差別の話であると暗示して、実際にオチ等で差別の話に持って行ってます。これらもテンプレだと思います。
ただ自分は話の構造に関しては突飛なことはしなくても良いと考えています。


>ところでこの「C,D」ですけれど、アメリカ映画の『X-メン』(エックスメン)そのものですね。
>ただ、『X-メン』はエンターテインメントで、ド派手な演出があり、御作は、「人間愛」(特に、家族)を中心にした近未来作品ということになっています。
>だから、『X-メン』とは、まったくの別物として、読めますので、ご安心してください。

>『X-メン』(ウィキペディアより)。
>社会問題
>ミュータントと一般の人間の紛争は、ユダヤ人、アフリカ系アメリカ人、社会主義者、LGBTなどの、アメリカでのマイノリティたちが経験したことだといわれている。
>人種差別問題
>この物語の根底には、公民権の問題が潜んでいる。ミュータントは迫害を受ける人種的・宗教的マイノリティの暗喩であると見られることがある

元ネタはX-メンではなく、実際のニュースから取りました。
新聞では毎日差別について報じられています。そこから感じた思いを小説にしました。
X-メンに関しては映画も小説も見たことがないので、機会があれば拝見させていただきます。


>●推敲が弱いですね。
>ところどころ、文章がおかしいところがありました。
>「作者様が、もう一度、読み返せば直せる」ので、大した問題ではありません。


これが小説を書き始めた時からの自分の課題です。
どうにも推敲がうまくなりません。少しずつでも上達していきたいです。


>●御作では200年後の世界ということになっていますので、商品「スマホ」ほか、いろいろが、違う形式になっていると思います。
>そのあたりの、未来社会らしさを描いたらよいですね。


時代背景を明示しなかったのは明確なミスです。
作者の頭の中でもなんとなく現代であればいいなという、漠然とした考えしかありませんでした。
次回作は文章中に読者様がはっきりと理解できるように、書きたいと思います。


>しかし主人公の両親二人は、空を飛べる人間だったのですよね。
>その二人に「差別された迫害された」というエピソードがありません。
>また両親に自分たち二人は空を飛べるが、子供である主人公は空を飛べないことについて、「話をされた」
>『E』のような、エピソードがないのですよね。

>E>>御作の場合は、妻が妊娠して子供が産まれたら、空を飛べるか飛べないか、また、産まれた後(ラスト)も、
>家族間のエピソードで、「空を飛べるか飛べない」と「親子の愛情」問題を絡めて描いています。
>妻が空を飛んで、主人公と娘が見ていて、「お父さん、穂香も空を飛びたいなぁ。」というエピソードです。<<

>主人公が自分の娘にラストで接した内容が、自分の両親の場合は、ありませんでした。
>なぜないのか、御作のテーマに関する重大ごとなので、きっちりと、描く必要があると思います。

実は執筆している最中にこの問題に関して書くべきか悩みました。
しかし結局は現実世界では差別する人は対象に会ったことがない人が多い事と、話に悪人を出したくなかったこともあり、
最終的には採用しませんでした。
しかし今改めて読み直すと、もっとソフトにその辺りの事情を説明するエピソードを入れることが出来たように思えます。
やはり説明があった方が物語としても質が上がるので次回に生かしていきたいです。

2017-04-16 20:59

124.86.172.187

黒とかげ

熊様

感想ありがとうございます。

浅いとの指摘ごもっともだと思います。
差別の話にしつつ優しい話にしようとしたこと自体に少々無理があったのかも知れません。

社会問題に関しては真面目に書くと、いくら書いても終わりがないので、話の初めには解決したとの
スタンスを取りました。ちょっと極端すぎたのかもしれなせん。

参考資料、読ませていただきます。

2017-04-16 21:04

124.86.172.187

黒とかげ

野足夏南様

感想ありがとうございます。

今回のテーマ自体がかなり難しいものを採用したので、それを伝えるだけで手一杯な感じは
書いてる最中も自分もしました。
このテーマをの短編小説にまとめるための力不足を実感しています。

キャラに関しては、平面的だと自分も思います。
かといってこの小説に強いキャラづけが必要かと言われると正直答えが出ません。

とにかく誤字が減らせるよう推敲の能力を上げていきたいと思います。

2017-04-16 21:10

124.86.172.187

GM91

すみません補足させてください。

>言われる通り空を飛ぶという設定の説明が足りませんでした。

そんなことを言ったつもりは全くないのです。
僕が言いたいのは、設定をもっと練ったほうがいいのでは?という趣旨であって
その上でどう作中で描写するのかはまた別の話だと思います。

極端な話、矛盾していたり誤解されるような説明ならいっそ作中世界では当たり前のことだとして特に何も説明しない、という方法もアリです。

補足ついでにもう1点。
「空を飛べる制約に関して」の件について、お気持ちは理解できるつもりです。
ただ、作者としてそのシーンに拘りがあるのなら作中世界に対して矛盾しないような設定を考えたらいいと思うのです。
制約云々はあくまで僕が思いついた一例なのであって、他の方法があればそれでもいいと思います。

2017-04-16 23:00

175.131.61.2

夜の雨

文法上の問題について


基本部分でミスっているようなので、手っ取り早く、勉強になる方法を書いておきます。

基本は、プロの小説を読むことです。
それも、名作や、ベストセラーと言われるような作品を読むと、文法上の問題はもちろんのこと、構成やキャラ設定、テーマ、ほか、自分の血となり肉となります。

徹底してやるには、名作そのものを原稿用紙に書き写すか、ワードに書き写すかをしてください。
段落から、「、」「。」すべて、一字一句、作品を丸写しします。

そうすると、自分の悪い癖が直ります。

読む場合は、少々長くても問題ありませんが、書き写す場合は、短い作品を選んだ方がいいですよ。

他人が書いた長い作品を一字一句書き写す行為は、ストレスもそれなりに溜まりますから。
短いと、ほとんどストレスはありません。

自分が書くジャンルの作品を書き写す(または、読む)と、行間の開け方などもわかります。


昔の文豪と言われる作家は詰めて文章を書いていました。
現在は、あまり詰めずに、行間を開けたりして、読みやすさを優先しているようですね。


どちらにしろ、プロ作家の書く息遣いが感じられたら、しめたものです。


ほか
ワードなどで作品を書いた場合、文法的に問題があれば、文章の下に赤線が入りますので、気が付くのではないでしょうか。
怪しい文章の場合は、緑色の線が入ります。
おかしな文章を書いても赤線が入らない場合もありますので、ご注意ください。
緑色の線は、問題がなくても、入る場合があります。

ワードのほかに日本語向けのPCソフト(一太郎)があると思いますので、ご自分で調べて、必要だったら、使用するのも手かもしれません。


それでは、がんばってください。

2017-04-17 14:20

114.189.140.228

藤光

読ませていただきました。

もうすでにたくさんのかんそうが書き込まれていて、その上に私がどうこう書き連ねることもないのですが、設定がとても印象的でしたので、一言だけ……。

「空を飛べる人」と「空を飛べない人」不思議な設定と、この設定にマッチした文章が魅力的です。
文章に手直しした方がよいところがあるのは確かですが、それとは別にこの不思議な設定を最後まで読ませる魅力も併せ持っているなと感じました。

2017-04-17 19:24

182.251.255.50

童子繭

僕はいまいちだと思った。飛べることが社会のヒエラルキーとリンクしてないから。飛ぶ力とかじゃなくて。。。もっとアイデア煮詰めてみるといいかも。黒人男性と結婚した白人の女性が生まれてくる子供の肌の色を理性では気にしなくても、感情では気にするみたいな切迫感ある設定が欲しいね。だってそれは社会での立場に大影響与えるじゃん。ある遺伝子だと記憶力が十倍違うとか。それが就業差別にリンクしてるとか。親子で飛べなくて悲しいって、代わりにキャッチボールでもすrすればって思った。でも最後まで読めました。引っ張られました

2017-04-18 12:21

210.142.99.201

kiki

よく練られているなと感じました。
特に面白かったのはこの文です。

>誰でも赤ん坊のころは無意識に浮かんでしまいます。そのことから赤ん坊は空を飛べる能力をコントロールするのではなく、実は地面に足を付ける能力を獲得しているとの説があります。つまり我々は常に浮かんでいる状態が本来の姿ではないかと思われるのです。

興味深い、と思いました。違う世界観設定の中で、こんな考えが出てくるのは妙にリアリティがあるというか。

ただ、他の皆さんが書いてるように、オチに近づくにつれ、興味がどんどんなくなっていきました。
素直に言うと飽きました。最初は良かったんですけどね。

原因は起伏がないからだと思います。
空を飛ぶという設定を外した場合、この物語は普通の話になってしまいます。
もう少し追い詰められたほうが、ハラハラして面白いかなと思いました。

余談ですが、私は誤字とかは程度によりますが、どうでもいいと思ってます。
それよりも物語が受けるかどうか、心を掴むかどうかが重要です。

受けるかどうかは一番難しいとして、心を掴むかは、最初に考えるべきことだと思ってます。

2017-04-18 19:10

106.154.110.25

黒とかげ

GM91様

再訪ありがとうございます。

確かに設定を明示する必要はありませんよね。
しかし自分がほとんど考えてなかったのも事実です。
だから小説に表現されなくも設定を練ることはだけはやった方がいいですよね。
今作はもうどうしようもないとして次回作からはプロットに加えて、世界観も事前に考慮したいと思います。

現状の自分の作家としての力量では物語の演出の引き出しが少なくて、設定と面白さを両立させることが
難しいのです。しかし少しずつでも勉強して行きたいと思います。

2017-04-18 19:39

124.86.172.187

佐藤

読ませていただきました。

設定の突飛さはさておき、その設定に基づいた夫婦の機微の描出はお見事です。
ただ、そこが丁寧であるからこそ、周辺部が牧歌的であることには違和感がありました。
この点については他の方の感想の繰り返しになってしまうので、コメントを控えます。

社会問題的な部分はカットし、思い切り絵本寄りにしてもよいのではないかな、と思いました。

2017-04-18 19:40

126.36.64.124

黒とかげ

夜の雨様

再訪ありがとうございます。

日本語は難しい……。
小説を書きだしてから初めて実感しました。
読書量はそれなりにあると自負してはいますが、いざ書いてみると全然ダメだったいう……。
書き写す方法もやろうかなと思ったことはあるのですが、どうも人の作品を分解するのは
敬意に欠けているように思えて断念しました。

とりあえずWordはパソコンに入っているので次回作からはそれを用いで書いてみます。
次はもう少しましな日本語をお見せできればと思います。

2017-04-18 19:45

124.86.172.187

黒とかげ

藤光様

感想ありがとうございます。

設定をお褒めいただいてありがとうございます。
正直自分ではそれほど意識と言うか、小説の売りにするつもりはありませんでした。

望外に評価され、感性のズレを感じてしまいます……。
しかし評価されたことは前向きに捉えて執筆を続けていきたいと思います。

2017-04-18 19:56

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黒とかげ

童子繭様

感想ありがとうございます。

前半に空を飛べるうんぬんの話から、後半は夫婦の話になります。
空を飛べるSF的な話を期待した方にはつまらなかったかもしれません。

この設定を読み返すと、確かにもっと大きな物語に繋がりそうではあります。自分でも想像が刺激されます。
他の作者様が書けば同じ設定でも、もっと面白い展開だった可能性もあります。
しかし、今回の自分の力量ではこの展開になりました。

もっと面白い小説がかけるようがんばります。

2017-04-18 20:09

124.86.172.187

黒とかげ

kiki様

感想ありがとうございます。

自分の意図としては夫婦の葛藤が話の中心であり、空を飛ぶのはそのための後付けの設定でした。
恐らく、それがダメだったのでしょう。

起伏がないのは文章の量が当初の予定から大幅にオーバーしてしまった影響だと自分では思います。
プロットを組んだ段階では半分の文章量で書き上げるつもりでした。
文章量がオーバーするにつれ、プロットの修正が必要だと今回の投稿で勉強させていただきました。

2017-04-18 20:18

124.86.172.187

黒とかげ

佐藤様

感想ありがとうございます。

確かにこの小説の核はおとぎ話、あるいは寓話です。
設定を広げずに、話を短くしても良かったのかもしれません。

あるいはいっそ5万字くらいにするとか……。
中途半端に設定を説明してしまったことがダメだったと皆さんの感想を読んで思いました。

2017-04-18 20:24

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abejunichi

再度書かせていただきます。
ここまでの感想とその返信を読んでいて、空を飛ぶというメタファーと夫婦の物語が少し乖離しているのだろうとわかりました。
もちろんストーリーは素晴らしいし、文句はないのですが、比重のようなものが間違っているのでしょうね。

SF的な方向というよりは、飛べる人間と飛べない人間という設定に比重を置かれたらいいと思います。
後半でも、妻が空を飛んで帰ってくるシーンは、読んでいて絵が浮かんだし、そういう部分の比重をあげた方がいいでしょう。
もちろん主人公の飛べない悲しみとこみで。

春樹さんが何かのエッセイで、夢の中で空を飛ぶことについて書いています。
確か麻原彰晃の空中浮遊について語っているエッセイです。
僕も(夢の中だったら)空中浮遊ぐらいできると、春樹さんは語っていらっしゃいました。
この文脈で言うと、空を飛ぶということは、現実と乖離し、想像力がある人という意味です。
麻原彰晃は間違った飛び方をして多くの人を傷つけた。春樹さんは、ずいぶん前のエッセイなのに、当時からそういうことを考えていたんだと驚かされます。

話が脇道に逸れたので、本筋に戻します。
メタファーと心は繋がっています。
空を飛ぶとは、現実ではないぐらいの乖離をあらわします。
春樹さんはエッセイのなかで、自分は宙から少し浮かび上がる程度には飛んでいると語っています。
つまり、まるっきり地に足をつけた人間ではないけれど、少し浮かび上がるぐらいの想像力はあるよということです。
どこが少しだと思いますが、宙に浮かぶ、空を飛ぶとは、その高さによって、どれぐらい現実と乖離しているようなところにいるかという、寓話性やファンタジー性、SF性、つまりフィクションとしての高さも表しているのではないかと僕は仮定しています。
そう考えられるメタファーの広がりが、空を飛ぶという行為にあり、冒頭では、力はあるのに迫害されてきた人々が浮かびます。
現実を変えていく優れた想像力は、春樹さん的な方向や、ファシズムや麻原的な方向の両面があると思います。
でも、そういう意味において空を飛ぶことができる人間はいます。
小説家になろうと足掻く人々なんて、空を飛びたい人々だろうと思います。
あるいは、この現実の中でフィクションに夢を見出す普通の人々だって同じです。
空を飛びたいのです。
そういう人々の空を飛びたいという夢にこたえられるだけの結末だったか?
その部分が、僕が物語にかける作家のテンションと呼んだ部分です。
舞台にあがっているジャズプレイヤーが、最後の最後でキメなかったら、どれだけそれまでがよくても、少し残念だなと思うものです。
でも良いアイデアだと心底から思います。

2017-04-18 22:03

60.93.106.163

黒とかげ

abejunichia様

再訪ありがとうございます。

その設定とテーマの割合は本当に難しいですよね。
プロでも失敗している人はゴロゴロいると思います。
そこが名作になる条件の一つかと、自分もどの程度割合を直せば、読者様を感動させることができるのか
正直な所、現状の力量ではわかりません。
実際に書きながら少しずつ間合いを図ってくしかないのかと思います。

2017-04-20 19:53

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