作家でごはん!鍛練場

『放課後』

わんこ著

自分の作品に価値があるのか教えてほしくて投稿しました。

 窓から見えるのは海だった。公立のこの高校に来てもう二年が経つ。クラスにもだいぶ慣れた。
 ユリはぼーっと外の景色を眺めていた。クラスでも比較的地味な吹奏楽部員だった。
 さっきからひどく頭痛がした。時に吐き気すら催した。空いている窓から射しこむ大気が心地がいい。
 ずっと先生は黒板に過去の歴史を書き綴っている。
 ふいに意識が揺らぐ。気付くと目の前は真っ暗になっていた。

 ミナトは昼休み友達のケイとパンを食べていた。購買で買った苺ジャムパンだった。
 缶コーヒーと一緒におなかの中に流した。
「なぁミナト、ユリが病院に運ばれたみたいだぜ?」ケイが言った。
「ああ吹奏楽部のやつか」
「そうそう。俺とユリ結構仲がよかったから今日の練習後にでもお見舞いに行こうと思うんだけど」
「時間大丈夫なのか?」
「監督に相談してみるよ」

 午後ユニフォームを着て専用のグラウンドで練習をする。バットを持ったケイにミナトは速球を投げた。綺麗な弧を描き、バットに当たったボールはミナトのグローブに吸い込まれる。
 太陽は沈んでいき、徐々に明るい日の光が消えてゆく。
「監督。今日友達の見舞いに行かなきゃならなくて早めに上がらせてほしいんですが」
「見舞いって誰だよ?」
「隣のクラスのユリです」
「ふーん。まぁいいぞ。お前も行くのか」
「はい」ミナトは返事をした。
「大会が近いんだから気を抜くなよ」

 二人は電車に乗って病院まで向かった。あまり通ったことのない場所だった。片手にはスティックのカロリーメイトを食べていた。
 ミナトの心には若干の緊張があった。ユリのことを実際少し気になっていたのだ。
 電車はガタンゴトンと音を立てながらゆっくりと病院へと向かっていく。街並みが大きく変化していき、ちょうど遠くには海が見えた。
 ホームについたときやけに人通りが多いのに気づく。今日は金曜日だった。
 夕焼けの中に人が混じる。もう太陽は沈みそうで、空はオレンジと青が融合した色に彩られていた。
 彼らは病院まで歩いていく。
「大丈夫かな?」ケイがいう。
「たぶん。知らないけど」
 お互い女の子のお見舞いに行くので少し気持ちが高ぶっていた。
 病院の中に入り、面会のお願いをする。
 少したって看護師さんに案内してもらう。
 病室のドアが開く。
「あ」ユリがこちらを向いて声を出す。服はすっかり変えられていた。
「おう」ケイがいう。
「ミナト君もきたんだ」
「ああ」
 ミナトは内心名前を憶えていてくれたことがうれしかった。
 三人で少しの間会話をする。
「体は大丈夫なのか?」ケイがいう。
「来週には退院できるみたい」
「そりゃあよかったな」ケイが返事をする。
 夜になると看護師がやってきた。
 楽しい時間は終わり、二人は病室を後にした。
 帰りの電車の中でケイとミナトは座っていた。
「ユリ大丈夫でよかったな」ミナトがいう。
「だよなー。俺たち中学一緒なんだよ」
「そういやそうだったな」
 電車が駅に着くと、ケイは降りる。
「じゃあな」ミナトがいう。
「ああ」
 ケイは電車から降りて向こうへ行ってしまう。ミナトは席の端にもたれながら、遠くを見ていた。
 闇の中に無数の光が見えた。所詮知っているのは自分の人生だけだ。彼らが何を見てきたのかなんてしるよしもない。
 ケイがポケットを確認すると携帯が入っていなかった。
 どうやら病室に忘れてきてしまったらしい。
 ちょうど電車が最寄り駅についた時だった。
 しぶしぶミナトは明日取りに行こうと思い電車を降りた。

 翌日ミナトはユリのもとを訪れた。
「ごめんユリ携帯忘れた」ミナトはそう言って病室に入る。
 ユリの体調は見るからに悪そうだった。
「ああ」ユリがそういった。
「うん」ミナトは言う。
「昨日のはなんだったわけ?」ユリが冷たい。
「別になんでもねえよ」ミナトはそう言い訳する。
 ユリは明らかに疲れているようだった。
 ミナトが休日にすることといえば音楽をネットで聞くことだけだった。
「ユリ、屋上へ行かない?」
「何するの?」
「音楽を聴くんだよ」
「は?」
「ビートルズを。最高の音楽を」
「古いわよ」
 遠目でユリのことを見ていた。
 ミナトにはユリが何を考えているのか皆目見当もつかなかった。
 結局僕らは屋上へ向かった。
「静か」とユリがいった。
「高校でたら大学行って働かなきゃ」
「私死ぬみたい」
「え……」
 ミナトは聞き返す。
「もうじき死ぬんだって」
「悲しいね」
「うそよ」
「本当だよ」
 ミナトは目に涙を浮かべていった。
「どうせ私が死んだってどうでもいいのよ。私が嫌なの」
「そんなことないよ」
「どうせ葬式の時だけ涙を流して、そのうち懐かしい思い出にでもする気でしょう?」
「そんなひどい……」
 ミナトは奇妙に思った。確かにユリが死ぬと聞いても何も感じない。
「余命は?」
「三か月」
「さみしいね」
「うそ」
「本当だよ。俺はやっぱりお前に会えなくなると寂しいよ」
「本当に?」
「うん」
 ベランダに風が吹いていた。あまりに冷たい風だった。嘘みたいに空が雨雲に覆いつくされていた。
 

放課後 ©わんこ

執筆の狙い

自分の作品に価値があるのか教えてほしくて投稿しました。

わんこ

175.108.137.210

感想と意見

おかめ

どんな作品にだって価値はあります。ただ、それが良い小説として出来上がっているかどうかという問題ですね。
この小説で問題点を挙げるとすれば、まずテーマがはっきりしていないことです。この小説で何を言いたいのか、
という事が読者に伝わることが大切です。作者はこの小説で何を言いたかったのでしょうか。死にゆく友人への
悲しみの情? 或るは若くして死病に取りつかれた者の悲しみ、寂しさ、絶望感?
まず、テーマを絞って、そのテーマを発展させることが大切だと思います。
また気が付いたことですが、これはいわゆる三人称の小説ですが、視点が統一されていないと思われます。
冒頭の部分で頭痛がして意識が遠のいたのはユリの視点ですね。おそらく脳腫瘍でもあったのでしょう。
次の段落ではミナトの視点になっております。一行空けたとしても読者は戸惑います。その後はほぼミナトの視
点のようですが、会話文の発言者がはっきりしない感があります。
病院にケータイを置き忘れたのを取りに行く場面で、
> 結局僕らは屋上へ向かった。
とありますが、この小説は三人称小説ですから、僕という一人称が地の文に混じることはあり得ません。僕とは
おそらくミナトの事でしょうが、このような人称の混乱は小説としては致命的です。
テーマの問題ですが、この小説では友人の死を悲しむのか、死にゆく自分の運命を悲しむのか、どちらかに統一
してそのテーマをもっと深く掘り下げて描写することでしょう。そしてテーマに関係のないエピソード、つまり
場面や会話などですが、これは省略しなければなりません。その代わりに、テーマをもっと深く描くことですね。
それで、この小説は見違えるほどよくなると思います。
私は小説の専門家ではありませんし、他人を指導する立場ではありませんが、この小説を読んで私が感じたこと
の一部を述べさせて頂きました。
その意味でも、この小説にはそれなりの価値があるのです。

2017-04-13 19:44

115.177.113.158

わんこ

>おかめ様
感想ありがとうございます。
テーマと人称についてわかりました。
次は改善させていただきます。

2017-04-13 21:26

175.108.137.210

野足夏南

拝読しました。

真面目に書かれたものであれば、価値はあると思います。
ただ、そのことと、小説として体をなしているかどうかはまた別の問題とも思います。
これはまだ小説の未完成品だと思いました。
上の方が挙げられている問題点は全てもっともだと思いますが、個人的には「伝えたいこと」の前に書きたいことが書けているか、という問題があると思います。個人的にこの小説は、その書きたいことが定まっていない印象がありました。「テーマ」と構えてしまう前に、書きたいシーンや設定を一つ考えて、それに付随する物語を書いていくという方法もあると思うのです。その場合、何かが伝わるかどうかは単なる結果なのではないでしょうか。
作者さんとしては、恐らく最後のシーンが書きたかったのかな、と推測しますが、だとすればそこをもっと丁寧に、楽をしないで描写を深めていく必要があると思います。
描写を深めていくことについては、とにかく本を読み、書くことです。偉そうに書きましたが私も読書が足りてないなと思うことしきりです。
書きたいことをそのとおりに書けるようになる為の道のりは険しいです。頑張ってください。

2017-04-22 10:53

222.148.106.33

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