作家でごはん!鍛練場

『はぐれ草 (87枚)』

越まろ著

 以前、投稿した「山茶花、三つ四つ」に「弟」の章を書き加えたものです。
 二、三の賞に応募しましたが、かんばしくありません。
 どんな点に大きな問題があるのか、忌憚のないご意見をお願いします。

 1.母

 大塚浩二は、ドラッグストアーの駐車場に車を停め時計を確認した。午後一時十五分。ずいぶん飛ばしてきたはずだ。さいたま市大宮区にある会社からここまで四十五分で来たことになる。けれども、すぐには車を出る気が起きない。浩二はため息をつきながら、エンジンを切った。
 早々と歳末セールを喧伝する幟が風にはためいている。その先、道路を挟んで斜向かいに警察署が見える。高校まで住んでいたこの田舎町にはもったいないほどの立派な構えだ。駐車場も広いスペースを確保しているようだが、車をそこに停める気にはならなかった。まして、あの建物の中に入って行くにはもう少し時間が必要だった。浩二はハーフコートのポケットに手をやり煙草を取り出した。
 妻の芳江から会社に電話があったのは、ちょうど昼の弁当を食べていたときだった。芳江は慌てた口調で、浩二の母親が振り込め詐欺に遭って、実家のある町の警察署にいる、と告げた。さらに、六百万円とられたようだ、と続けた。
 そんな馬鹿な、何かの間違いだろ。芳江にそうは言ってみたものの、どこかにそれを否定しきれないものを今も浩二は抱えていた。
浩二の母は七十五歳。六年前に父親が亡くなったあとも実家で一人暮らしを続けている。兄夫婦との同居の話もあったが、転勤により兄が遠地へ引っ越してしまったため立ち消えになった。実家を処分して一緒に暮らそうか、と一応提案してみたが案の定、きっぱり断られた。一人の方が気楽でいいと言う。現に自転車を乗り回して買い物にも行くし、身の回りのこともすべて誰の力も借りずにやっている。もちろん認知症の気配はない。先月電話で話したときも、冗談めかして、振り込め詐欺の電話に気を付けろよ、と言うと、馬鹿にしないで、と憤慨していた。そんなやりとりがあったばかりだから、何かの間違いだろうと、口に出したわけだが、芳江の電話ですぐに『剛志』のことが脳裏をかすめたのもたしかだった。
 食事から戻ってきた部下に、急用ができたので午後から半休をとる、と告げ会社をあとにした。どんよりとした冬空が覆いかぶさってくるようで、ますます浩二の気を滅入らせた。六百万円といえば、父が実家の家屋と共に母に遺した大事な金の半分近くにあたる。それをこんな形で失うなんて情けない限りだ。加えて、自分の経理課長という立場を考えても体面の悪いことこの上ない。車を飛ばしながら道々こんなことばかり考えていたものだから、落ち込んでいるはずの母にかける慰めの言葉もまだ見つからない。それでなくても苦手な母だった。剛志のことがあってから、滅多に笑うことがなくなり、こちらが話を振っても愛想のない短い言葉が返ってくるだけだ。週末ごとにかけている安否確認の電話も、自分のおざなりさを見透かしたような母の受け答えを聞かされるのが嫌で、最近は妻に任せることが多かった。その点、父は良かった。母とは対照的に話好きで、喜怒哀楽を表に出すタイプだったから、わかり易くいらぬ気遣いをすることもなかった。父のいた間は兄の家族も、浩二の家族もしばしば実家を訪れ、楽しいひと時を過ごすことができた。しかし、父が亡くなり、兄が去ったあと、母一人が暮らす家はどこか寒々しく、どうしても足が遠のいてしまうのであった。

 煙草一本を短くなるまで吸い、やっと浩二は車を出た。横断歩道を渡り、警察署の石段を上がる。署内に入って受付で「大塚ですが、母が詐欺に」と言っただけで、ああ大塚さん、とすんなり合点した声が返ってきた。母の事件がもう署内全体に行きわたっているようだった。そのせいか、奥の部屋に案内される途中、あちこちから視線を浴びているような気がした。案内してくれた婦警が部屋のドアをノックする。浩二は息を整え、眼前に飛び込んでくる光景に身構えた。ドアが開かれる。応接室のソファに座り背を向けていた母が振り返った。目が合うと、母は一瞬ばつの悪い表情を浮かべたが、すぐに顔を伏せてしまった。
「母さん、何てことしたんだよ」
 考えてもいなかった言葉が口をついて出た。そう広くない部屋の中に思いのほか大きな自分の声が響き、浩二はそんな言葉を投げてしまったことを恥じた。
「まあまあ、お母さんが悪いことをなさったわけではないんですから」
 母と対面していた半白頭の男が立ち上がって、浩二の傍までやってきた。
「埼玉県警大宮警察署の半田です」
浩二は半田刑事に非礼を詫び、彼に勧められて母の隣の席に腰をおろした。部屋は暖房の効き過ぎでむっとする暑さになっていた。向かいに座る半田刑事はソファの背に脱いだ上着をのせ、白いワイシャツの袖をまくりあげている。部屋の隅で机に向かっている制服姿の若い警官は手に持ったハンカチでしきりに額の汗を拭っていた。浩二も着ていたハーフコートを脱いだ。あらためて隣に座っている母を見る。膝の上にかかえたこげ茶色のジャンパー。着古した濃紺のセーター姿がみすぼらしい。いつものことだが母は心の内を見せまいとするかのように固く唇を引き結んでいた。
 半田刑事が、浩二の方に顔を向けて口を開いた。
「私は大宮署で主に詐欺事件を担当しているんですが、当地で初めてのケースでしたので大宮から応援にやってきました。幸いにも詐欺は未遂に終わっているわけですが――」
「えっ、とられたんじゃないのですか?」
「いえ、未遂です」と言いながら、半田は首を傾げる。
 浩二はほっとして、母の顔を見た。笑ったつもりなのか、母の口元が少し歪んだ。
「どこかで連絡に行き違いがあったんですかね。まあ、でも、よかった。銀行の窓口の行員が機転を利かしてくれましてね」
 半田が自慢げに付け加える。
 殆ど白くなった無精髭が口の周りを覆っている。一見、定年間近の年齢に見えるが、良く日に焼けた肌には艶がある。意外と若いのかもしれない。その男の目に浮かんだ優しい笑いに誘われて浩二は思わず言った。
「じゃあ、母はもう連れて帰っていいんですね」
 半田は少しびっくりしたように眉を上げた。だがその顔にはまだ笑いが残っている。
「いやいや、もう少しご協力いただかないと。未遂といえども事件ですからね。私らとしてもお母さんにお話を伺って、犯人の輪郭ぐらいは掴まなきゃならんのですよ」
 半田は申し訳なさそうにそう言ったあと、「ところで、大塚さん」と表情を一変させた。
「お宅には剛志さんという三男の方がいらっしゃるんですね」
 浩二は母の顔を窺い、一呼吸おいてから「ええ」と頷いた。
「しばらく音信不通だとか?」
 母がどこまで話しているのかわからないまま、これにも「ええ」と答えるほかなかった。
「お母さんは、その剛志さんからの電話だと思われたようで」
 半田が、母の方を覗き込むようにして、「そうだよね」と念を押した。
 母が無言のまま頷く。
「最初、相手はどう言ったのか、もう一度話してくれんかな。昨夜の八時頃電話があったんだよね」
 母の唇が準備運動でもするように二三度小さく動いたあと、やっと言葉を吐き出した。
「ええ、電話に出ると――」この部屋に入って初めて聞く母の声だった。それは喉に引っかかり掠れていた。一つ咳払いをして母が続ける。
「しばらく無言で……切ろうとすると『母さん』って」
 相変わらず顔を伏せたまま、くぐもった声がいやいや押し出されるように言葉を紡ぐ。
「それを聞いて、あなたは何と言ったの?」
「剛志かい?って」
「どうして、剛志さんだと?」
「剛志の声でした」
 半田が浩二を見て額を軽く叩き、その手で短く刈った頭を撫で上げた。そして母に質問を続ける。
「剛志さんはいまおいくつ?」
「三十八歳です」
 母が間髪入れずに答えた。
「最後に剛志さんの声を聞いたのは?」
 母は押し黙ったまま、ジャンパーを抱えた手の甲をさすっている。
 半田が助けを求めるように顔を向けてきたので、浩二が口を開いた。
「剛志は高校卒業と同時に家を出て、それ以来、音信不通です」
 母が顔を上げて睨んだが、構わず続ける。
「生きているんだか、死んでるんだか、それさえわからない」
「剛志は生きているよ」
 母が言い放った。その勢いに気圧されて一瞬凍りついた部屋の中に、隅の若い警官が滑らすペンの音がやけに大きく聞こえる。
 それきり口を閉ざしてしまった母に代わって、半田刑事がその後の経緯を説明してくれた。
 電話の男は、借金を清算するために六百万円いると言い、母は銀行の定期一千万円を解約しに出向いたという。様子がおかしいと感じた窓口の行員が母を引き留め、銀行から警察に連絡がきたということだった。犯人と金のやり取りの約束をしたはずだが、母は話がそこにくると口を閉ざしてしまうという。浩二があらためて、金をどうするつもりだったのか尋ねてみたが、母は頑なに口を噤んだままだった。
 母をもてあましたのか、半田はもっぱら浩二に向かって話しかけてきた。会社はどこかとか、どんなお仕事をとか。経理課長をしている、と答えると、それはそれは、大変な職責だ、と浩二を持ち上げ、話を続けた。
「私も詐欺事件を担当している関係で、よく会社の経理の方にお話を伺う機会があるんですがね、概して皆さん口が重くて苦労します。大塚さんはどうですか?」
「まあ、仕事柄、あまり無駄口はきかないタイプでしょうね」
 半田は、なるほど、と相槌をうち、湯呑の茶を一口啜ると何が可笑しいのか下を向いて笑い出した。
「失礼。いや、ちょっと思い出したことがありましてね」と、再び浩二に顔を向ける。
「まあ、経理の方に限らず、こちらが警察だと聞くとみなさん身構えてなかなか喋ってもらえないんですよ。そうなると私らの方も自然と言葉ではなく、相手の表情の中から隠されているものを読み取ろうとする癖がついてしまうんですがね、これが仕事を離れてもついつい出てしまうもんで、困ったもんです。この間もちょっと失敗をやらかしましてね」と、また笑い出した。
 浩二は、追従笑いを浮かべながら、半田の無駄口の意図を母に結びつけて考えてみる。その上であらためて母の横顔を窺うが、やはり自分の失態を恥じて黙りこくっている女にしか見えない。半田はこの母の表情から何を読み取れというのだろう。
「さてっと」
 笑いを収めた半田が母の方に顔を戻し、やれやれ、という風で頭を掻いた。
「まあ、お母さんのショックも大きいようですから、今日のところはこのへんにしましょうか」
「えっ? それでは明日も……」
 若い警官も、ペンを止め、少し驚いたような顔で半田を見やっている。
「ええ、申し訳ありませんが、明日もう一度お願いします。九時半でいかがでしょう?」
 言葉遣いは丁寧だが、半田の声には有無を言わせぬ圧力があった。

 刑事に見送られて部屋を出ると、それまで抑え込んでいた小用が襲ってきた。母を玄関前に待たせ、浩二は手洗いに入った。
用を済ませて、手を洗っていると、
「大塚さん」入ってきた男に呼びかけられた。半田刑事だった。
「ちょっと、待ってくださいね」と言いながら、半田が小便器の前に立つ。
「冬になると、近くなってかないませんな。やっぱり年ですか」と言ったあと、「お母さんの所へはちょくちょく来てますか?」
 浩二に背を向けながら訊いてきた。
「それが、なかなか。今日はお盆に来て以来です」
「忙しいんでしょうが、もう少し来てあげた方がいいですね」
 余計なお世話だ、と内心毒づきながら、
「そうは思っているんですがね」とおとなしく返す。
 鏡を見ながら手櫛で髪を撫でつけていると、用を済ませた半田が隣に並ぶ。そして「実はね」、と手を洗いながら鏡の中の浩二に話しかけた。
「ああ頑なになられると、私らはお手上げでしてね。なんたって、ほれ、顔が怖いから」言葉とは裏腹に人懐こい笑みを見せる。
「ご面倒おかけしています」
 浩二が頭を下げると、半田が向き直り、手を拭いながら言った。
「いえいえ、こっちは仕事ですから。でも少し、あなたの助けが必要ですかな」
 太い眉を上げ、意味ありげに微笑む。そして、続けた。
「まずは、お母さんの心をほぐしていただけるとありがたい」
 半田が浩二の肩をぽんぽんと叩く。
「ええ、そのつもりです。今日は実家でゆっくりしていこうと思っています」
「そりゃ、よかった。何かお母さんの好物でも差し上げてね」
「ありがとうございます。じゃ、失礼します」
 浩二が背を向けて、出口のドアに手をかけると、「大塚さん」また呼びかけられた。
「明日は、違うお話をお聞きしたいものですな」
 そう言う半田の顔はもう笑っていなかった。

 母を車の後部座席に乗せて走り出したが、浩二はなかなかかける言葉を探せない。お昼は? と尋ねてみたが、済ませた、と素っ気ない返事があったあと、もう話は続かなかった。途中、母が行きつけのスーパーに寄って買い物をしている間、浩二は車の中で待ち、つかの間ほっとした気分を味わった。再び走り出すと、今度は通りに和菓子屋の幟を見付けた浩二が半田刑事の言葉を思い出し、母の好きな栗饅頭を買い求めた。
 田舎町の住宅街はそれぞれが十分な広さの庭を持ち、ゆったりと連なっている。葉の落ちた樹木のせいで、家々の様子がよく見通せた。最近改築したのか、真新しい建物も多い中にあって、長年の風雨に曝されて、屋根瓦にも壁のあちこちにも汚れが目立つ実家の建物はひどく見劣りがした。
家の前で車を降り、門扉を開けた母が、ああ、と声をあげた。玄関の鍵と買い物袋を浩二に託すと、庭に足を踏み出す。枯れた芝の上にフラミンゴの羽根を敷いたように、三本の山茶花が大量の花を散らしていた。母は屈み込むと、その花びらを拾い出した。
 剛志が家を出た最初の冬、茶の間から庭をぼんやり見ていた母が、「冬の花がなくてさびしい」と呟いた。それを聞いていた父が早速買ってきたのがこの山茶花の苗木三本だった。数年後、薄桃色に縁どられた白い花を咲かせる頃には葉振りも豊かになり、父はそれをこまめに剪定した。実家に来るといつもきれいに刈り込まれた山茶花の緑に目を癒された。そして今の時期には、散った花びらを一枚一枚丁寧に拾うのが毎朝の父の日課になっていた。父の死後、その世話は母が引き継ぐことになったが、剪定までは手が回らず、奔放に枝を張った山茶花の背丈は浩二が見上げるほどになっていた。
母の丸めた背に目をやりながら、浩二は、何もこんなときに、と口に出しかけたが、すぐにこれが母流の気の鎮め方かもしれないと思い直し、黙って玄関の引き戸を開けた。
 買い物袋の牛乳と卵と野菜類を冷蔵庫に収めていると、玄関の戸を開けて、袋をくれと母が言う。手に持っていたビニール袋を母に渡した。茶の間に入って、茶箪笥の中から菓子器を取り出し、買ってきた栗饅頭を積み上げた。それを座卓の上に置く。今朝の新聞がきちんと四つ折りに畳まれて座卓の角に置かれていた。その上にエアコンのリモコン。部屋が冷え切っていたのでスイッチを入れる。窓越しに庭を見やると、ちょうど母が立ち上がるところだった。
「朝も気になってたんだけど、それどころじゃなくて」
 玄関の戸を開けた母の声は、張りが戻り、はしゃいでいるようにさえ聞こえる。
「ごめんね、いまお茶淹れるから」
「いいから、ここに座んなよ」
 母は頷くと、花びらの入った袋を台所のごみ箱の中に捨てて手を洗う。
「今日は面倒をかけて、本当にごめんなさい」
 浩二の前に座った母が手をついて、深々と頭を下げる。他人行儀なその仕草が癇に障り、浩二はついつい苛ついた声を出してしまう。
「そんなことどうでもいいから、本当のことを話してくれよ」
「本当のことを話しましたよ」
「じゃ、金をどうするつもりだったの。犯人から指示があったんじゃないの?」
 一瞬開きかけた母の口を遮って浩二がたたみかける。
「あの金は、母さんのこれからの生活のために、父さんが遺してくれた大事な金だろ」
「私はね、年金だけあれば、暮らしていけるの。剛志のためなら、一千万だって惜しくない。それに……」
「だから、剛志じゃないって。詐欺だろ」
 浩二が声を荒げたものだから、母は言葉を呑んでまた黙ってしまった。
 気まずい雰囲気を煽るように、エアコンの生暖かい風が頬に当たる。風量を調節しようと、リモコンを手に取ったときだった。母がぽつりと言った。
「ひとつ、嘘を……」
「なに?」
「電話ね、剛志の方から言ったの。『剛志だ』って」
 数秒の間をおいて母の言葉の意味するところを理解したものの、返す言葉が見つからない。警察署で押し黙る母を見ながら、一瞬、ひょっとして、という考えが頭をよぎったことは事実だ。でも、まさか、とすぐに打ち消した。今こうして打ち明けられてもとてもすぐには信じられない。二十年も行方知れずだった男が、今頃連絡をとってくるなんて。
 上手く思考の筋道が組み立てられないまま、浩二はとりあえず思いついた疑問を口にした。
「それじゃ、なんであんな嘘をついたんだよ」
「お金がおろせないとわかったとき、あんたにも、にいちゃんにも、剛志のことを黙っておこうと思って……」
「そんな大事なことを、まったく……。何で隠そうとするの」
「だって、剛志にお金をやろうとしたら、あんたたち反対するだろ」
「そういうことじゃなくて、物事には順序があるだろ」
 そう切り出して喋り始めた浩二は、やっと普段の調子を取り戻す。
 二十年もどこにいたんだか、住民票も移さないで生きてきた男の暮らしぶりは想像できる。まともな職にもつけず、社会の底辺を這いずりまわって生きていたはずだ。金のトラブルも、さもありなん、だ。そんな男に大金を渡しても、まともな生き方のために役立つとは思えない。百歩譲って金をやるにしても、まず、ここに現れて自分たちや、父の仏前に頭を下げるのが筋というものだろう。三年待っても何の連絡もなく、ついにたまらず家出人捜索願を出した家族の無念さを剛志は考えたことがあるのか――、浩二はそんな自分の考えを諄々と母に説いた。
「あんたには、剛志の苦労はわからないよ」
 浩二の話が途切れるのを待ちかねたように、母が話し出す。
「剛志はあんたたちの何倍も苦労したはずだよ。十八でいきなり社会に放り出されて、一人で生きていくしかなかったんだからね」
――それは自業自得だろう、自分で飛び出したんだから――口を挟もうとしたが母はそれを許さないで話を続ける。
「たしかに、まともな生き方はしていないと思う。でもこうやって助けを求めてきたんだよ。何とかしてやりたいと思うのは当たり前だろ。それがお金で済むことならいくらでも工面してやるよ。父さんの遺したお金だし。本来なら剛志にも権利があるんだよ。あんたたちに何とかしてもらいたいというわけじゃない。私の分をやろうというんだ。剛志に今より少しでも幸せになってもらいたい。それが私の一番の幸せなんだよ」
 言葉を重ねるにつれて、血色の良くないいつもの母の顔に赤みが差し、生気のようなものが立ち上がっていく。その様子を間近に見ながら、浩二は母の言葉を受け止めていた。剛志が消息不明のまま自分が死んでしまうと面倒なことになると思ったのだろう、父は遺言書を遺したが、剛志のことには一切触れていなかった。正当な遺言書がある以上、母の言う剛志にも権利云々はあてはまらないが、それを盾に抗うつもりは浩二にもなかった。ただ、こんな現れ方をした男の要望を、母の言う通り、はいそうですね、と簡単に呑んでしまうのには抵抗があった。
 急に立ち上がった母が、茶箪笥の抽斗を開け、葉書を何枚か取り出すと浩二の前に置いた。年賀状が三枚。パソコンで打ち出された宛名はいずれも母の名になっている。裏を返すと、ありきたりの既製品。差出人の名はない。目を惹くのは、どれも左下に『元気です』と手書きの小さな文字があることだった。一番古いのは、父が死んだ翌々年。それから連続して三年間だった。しかし、今年のがない。尋ねようと顔を上げると、「今年はこなかった」と母が呟く。
 もう一度年賀状に目を落とし、『元気です』と書かれた文字をつぶさに見るが、それが剛志の手になるものか判断がつかない。
「剛志の字かい?」
 母は、私にもわからない、と言いながら、同じ引出しから一枚の紙を取り出した。もう何十回も目にした、剛志が家を出た日の書置きだった。
『だれの世話にもならんで生きてやる』
 朝、出がけに手近に見つけたチラシの裏に急いで書いたのだろう、鉛筆で書きなぐった字も文も、彼の心の荒れようがそのまま表れているような乱暴なものだった。これに比べると年賀状の字はちんまりと丁寧で、とても同じ者の筆跡とは思われない。
「字は違うようだけどね、でも、そんな年賀状をくれるのは剛志のほかにはいないよ」
 母の言う通りだった。どこかでひっそりと暮らしている剛志が父の死を知って、その翌々年から母宛に送ってきたに違いない。年賀状だから消印もなく、居場所のあてもつかない。こんな大人気ないことを、と思う反面、浩二は、今さらながら剛志の父への反発の強さに驚かされた。
 剛志が高校一年のときに、兄に倣って浩二も遠方の国立大学へ進学し実家を離れた。そのため、剛志の思春期の様子を殆ど知らない。あんなに好きだった野球を辞めてから変わってしまったと、母が嘆いていた。父に説教されて不貞腐れたように決断したらしいが、大学生活を謳歌していた浩二はそれを他人事のように聞き、休みに帰省しても、自分の方から剛志と話をする機会を作ろうとはしなかった。剛志の態度がとっつきにくいものに変化していたこともあるし、久々に面と向かうと彼の左眉を横断するようについた傷跡が今まで以上に気になってしまうせいもあった。
 浩二が六年生だったから剛志はまだ小学校三年だった。休みの日に学校の仲間五、六人とちょっとした冒険に出たことがあった。それは片道一時間ほど歩いて町はずれの廃牧場に忍び込むという、小学生の男子にとっては胸躍るものだった。剛志がどうしても行きたいと言い張るので仕方なく連れて行った。牧場には鉄条網が巡らされていたが、仲間の一人が、その抜け穴を知っており、どうにか体一つがやっと通る隙間を一人ずつ順にくぐり抜けていた。最後に剛志の番だった。体の小さな彼だったら難なくこなすだろうと油断して浩二は剛志から目を離していた。「あー」という悲鳴に振り返ると左目を抑えている剛志の手の間からボタボタと血が溢れ白いTシャツを汚していた。浩二は慌てて駆け寄ると持っていた薄いハンカチを剛志の手の上に被せた。剛志の手を外すとすぐにハンカチが血で染まった。誰かが差し出した手拭いと交換し、しばらく強く抑えていた。
「剛志がさ、調子こいて飛び抜けようとしたんだ。そしたらバラ線に顔が当たって」
 仲間の一人が言うのを剛志は恨めし気に見上げていた。
「痛いか」浩二が訊くと剛志は強くかぶりを振る。幸い手拭いの表側までは血は染みていなかった。ゆっくりと手拭いを外し傷を確認した。左眉を横切って三センチくらいの切り傷があった。そこからじわじわと血が滲み出している。浩二は慌ててまた手拭いを当て強く抑えた。抑えながら五十メートルほど先にある二階建ての納屋を見やっていた。ここに来る道中皆で喋りあった、あの薄暗い納屋の中でこれから行う冒険の数々を諦めたくなかった。
「大丈夫だな」自分に言いきかせるように剛志に向かって言った。
「家に着くまでずっとこのまま抑えておくんだぞ」
 自分の手を外し、剛志の左手を手拭いに添えさせると、剛志を一人で送り出した。今度は慎重に抜け穴をくぐり、とぼとぼと帰っていく彼の背中を浩二はしばらく見つめていた。
 そのあとの冒険は期待したほど弾むものではなかった。納屋には珍しい農機具もなかったし、慎重に梯子段を上がった二階に乾いた干し草を見つけることもなかった。ただガランとした広いスペースに錆びたスコップが一丁打ち捨てられているだけだった。浩二は自分の心が弾まない理由をそのせいにしたかった。
 その日帰ると家には誰もいなかった。暗くなって母と兄に連れられて帰ってきた剛志は頭を包帯でぐるぐる巻きにされていた。その姿を見て、浩二は自分の失態が決定的なことを知った。傷は思いのほか深く、七針縫っていた。遅くに帰ってきた父からは、平手打ちを喰らい、日が変わるまで長々と叱責を受けた。父の言葉の一言一言は自分が繰り返し自問していたものであったので、納得がいった。その後、剛志に何と言って謝ったのか覚えてはいない。剛志は幼かったから、翌日からすぐに今まで通り浩二にすり寄ってきたはずだ。だが浩二の方は剛志の傷跡を見るたびに自分の不甲斐なさを思い知らされるわけだから、そのときを境に多少なりとも剛志への接し方に変化が生じたのかもしれない。
「あんな根性なしに『剛志』なんて立派な名前をつけなければよかった」
 剛志が家を出たと聞いて慌てて帰省した兄と浩二の前で、吐き捨てるように言った父の言葉が耳に残っている。父と兄は一方的に剛志を責めるだけだったが、浩二は、どちらかというと母の側に与し、剛志の出奔の原因を自分たち家族の中に求めて数え上げていた。

「何度も、剛志から連絡が来ていることを言おうと思ったんだけどね――」
 黙り込んだ浩二の様子を窺っていた母が、恐る恐るという感じで静かに話し出した。
「さっきあんたが言っただろう。剛志が厄介者になってるんじゃないかって。私もそう考えたの。あんたたちにも大事な家庭があるし、昔みたいに、よかった、よかったじゃすまないものね。せめて、まともな人間になってることを確かめてから、あんたやにいちゃんに話そうと思ったんだよ。そうしたら、こんな電話だもの。とても言えやしなかった……あんたたちにとってはとっくに死んだ弟さ。私一人で引き受けるしかないと思った」
 母の言葉が胸に刺さった。この数年間で剛志のことを考えたのは何回だろう。いつだったか父の命日に線香を上げたとき、そろそろ剛志の位牌も、と思いながらとても母には言い出せなかった。思い出せるのはそのくらいで、父の死後、妻との会話の中でも、兄との電話の中でも、剛志の安否を話題にしたことはなかった。
――あんたたちにとってはとっくに死んだ弟さ――低い母の声が頭の中を駆け回る。浩二はそれを振り払うように話を変えた。
「剛志は何て。金を取りに来るって?」
「いいえ、そこまでは。何だかとても急いでてね。ただ用意しといてって。また今晩電話するって言ってた」
 どうしても悪い方向に想像がいってしまう。よからぬ連中の中でもがき苦しむ剛志の姿を思い浮かべる。さっきまではそれを自業自得と冷たく突き放せたが、今は何とか手を差し伸べたいと思っている自分の心の変わりように浩二はとまどった。
「やるにしても、絶対本人に取りにこさせなきゃだめだ。父さんに線香の一本でもあげさせないと」
 一瞬、瀬踏みをするような目の動きを見せた母だが、すぐに、「ええ、もちろん私もそのつもりよ」と、ほっとした様子で同意した。
「携帯の番号は訊いたかい?」
「いいえ、携帯は持ってないって言うし、かけてきた電話も公衆電話だって言うの」
 剛志の切り詰めた生活状況が想像できた。心細い話だが、今はただ剛志からの連絡を待つほかはなかった。
 いつのまにか外は暗くなっていた。カーテンを引きに立ち上がった母が、夕飯はどうしようと言い、外で何かうまいものでもと考えていた浩二だが、いつ剛志から電話があるかもしれず、仕方なく店屋物をとって済ますことにした。
 やっと少し落ち着いた時間を見付けた浩二は、母が寝室に使っている次の間の襖を開けた。六畳の和室の奥に仏壇がしつらえてある。実家に来たときは、真っ先に父の仏前に手を合わせるのだが、今日はそれどころではなかった。浩二が線香をあげていると、台所からやってきた母が、浩二の後ろに座り、「明日はお花を買ってこなきゃ」と独りごちた。
二人で出前の親子丼を食べているときだった。浩二の胸のポケットに入れた携帯電話の着信音が鳴った。一瞬ドキっとしたが、それが剛志であるはずはなかった。芳江に連絡を入れることをすっかり忘れていたため、彼女がしびれを切らしてかけてきたものだった。剛志のことは帰ってから話した方がいいと咄嗟に判断し、芳江には言わなかった。詐欺が未遂に終わったことを話し、母が動揺しているのでもう少しそばにいてやるつもりだから、帰るのは遅くなると告げた。
 母が食べ終わった丼を洗っていると、今度は家の電話が鳴った。台所から茶の間に戻ってきた母と目を合わせ、浩二は頷いた。母が胸に手を当てながら電話台の前に正座する。
「もしもし、……剛志かい? ……いいえ、今日はおろせなかった。……ええ、明日は大丈夫。……取りに来るのね。何時頃? ……夜の七時ね」
 復唱しながら母が目で尋ねてくるので浩二は大きく頷いた。
「ええ、わかった。待ってるよ。……ちょっと待って、浩二がいるの。……切らないで、いま代わるから」
 浩二は母から受話器を受け取った。 
「剛志か?」
 無音の中にキリキリと弦を締め上げるような緊張感が受話器の向こうから伝わってくる。心配そうに聞き耳を立てている母と目を合わせ、もう一度呼びかけようとしたときだった。掠れた声が耳に届いた。
『……こーにぃ』
 こーにぃ。すっかり忘れていた。「にいちゃん」と呼ばれるのは上の兄だけで、いつの日からか浩二は、たしかに剛志にこう呼ばれていた。こーにぃ、と言って日向臭い体をぶつけてくる剛志と、この茶の間でじゃれ合っていた頃を思い出す。いつも坊主頭に刈っていた彼の頭の毛の感触が手のひらに甦る。途端に懐かしさがこみ上げてきて、用意していたものとは違う乱暴な言葉が飛び出した。
「……剛志。元気にしてるのか。ばかやろ」
『ごめん、連絡できんかった。俺……』
 覚えている剛志の声とは似ても似つかない完全なオヤジの声だった。母が電話の声を聞いて、剛志の声でした、と即答したことが思い出され可笑しかった。その余韻を残したまま浩二は言った。
「連絡するくらいいつでもできたろ。どんだけ心配したと思ってるんだよ」
言葉は相変わらず乱暴だったが、口調はずいぶんくだけたものになった。
それを感じ取ったのだろう、剛志も少しおどけてみせた。
『こっちは毎日肉体労働だから、夜は疲れて寝るだけさ』
「そうかい、お前の苦労話は明日聞いてやるよ。きっとこいよ」
『ああ』
「きっとだぞ」
 再び、ああ、と答えたあと、ためらったのか剛志は少し間を置いた。
『こーにぃ、実はな――』と続ける。
『母さんには言ってないけど、俺、いま一緒に暮らしてる女に子供ができるんだ。今度は産ませてやりたい。だから、やり直そうと思って……』
「……そうか。子供か」
 にじり寄ってきた母が、代わってくれと催促する。
「母さんに代わる――」浩二の言葉に割って入った剛志が『ごめん。もう切れる』と切羽詰った声を出す。「剛志、剛志」と母が呼ぶなか、ツー、ツーと繰り返す無情な音が浩二の耳にも聞こえてきた。
 諦めて受話器を置いた母に、剛志に子供ができることを話してやると、母の双眸が見る間に涙で溢れ、それが頬を伝った。両手で顔を覆って台所に立つ母の姿を眺めながら、浩二の方は最初の感慨も去り、すっかり冷静な気持ちで振り返っていた。
――電話も持てないような生活をしていて、子供なんか育てていけるのか。それにしても、明日でもいい話を何で今日、それも母ではなく自分に話したのだろう。母には直接言いにくいからか。金をもらうためにダメを押そうと思ったのか。たしかに効果は絶大だった。母のあの様子を見ればわかる。ああ、なんてひねくれた見方をするんだ。考えすぎだろう。すべては明日。明日、剛志に会ってからだ。金曜日か。会社の方は朝電話すればいい。まず警察署だ。訳を話し、母と一緒に半田刑事にひたすら頭を下げる。謝って済む問題ではないかもしれないがそうするしかない。そして銀行。今度は自分が同行するのだから大丈夫だろう。兄にはいつ話そう。剛志と会ってからにしといた方がいいか。あくまで彼の話を聞いて自分が納得してからだ。兄には根掘り葉掘り聞かれるな。骨の折れる仕事になることを覚悟しなきゃ――
 頭を整理しながらこんな段取りを考えていると、これがいつも会社でやっていることだと気づき、可笑しくなった。
 家族のために力を注ぐ――妻や子供たちは別にして、今までなんとなく避けてきたことだった。
「あら、にやにやしちゃって、へんね」
 お盆に湯呑を二つのせて、母が再び座卓の向かいに座る。涙の跡はもうなかった。
 母はお茶を一口啜ったあと、「いただこうかね」と言いながら、初めて菓子器に手を伸ばした。
「母さん、ほっとするのはまだ早いよ」
 母ににやけてると言われたからではないが、浩二は自分を戒めるつもりでそう言った。
「わかってる。剛志がどんな男になってるか、よく見なきゃね」
 母が栗饅頭を口に持っていく手を止めて言った。
「電話じゃわからんけど、会って、話してみればわかるはずさ」
 剛志がどんな苦労をしてきたのかは知らないが、自分もある程度の人生経験を積んできた、人を見る目も培ってきた、という自負が浩二にはあった。もし剛志がいいかげんな話で取り繕うならば、厳しく追及してやる。もちろん、そのときには金をやることに断固反対するつもりでいた。けれども、目の前の母の浮かれた顔を見ていると、やはりそんな場面は想像したくない。剛志よ、頼むぞ、と祈るような気持であった。
 もう、子供たちは餡子ものを食べなくなった、と言っても聞かないので、仕方なく二個だけ栗饅頭をコートのポケットに押し込み実家をあとにした。
「明日は九時に来るからちゃんと用意して待っててよ」
 玄関の戸を開けながら浩二が念を押すと、母は、はいはい、と軽い調子で応えたあと、「浩二」、とあらたまった。
「なに?」
「ありがとう」
 温かい目の色を浮かべて母は言った。
 門扉を開けて往来に出た。そして明日、ここを入ってくるひとを思いやった。小さく手を振って見送っている母も同じ思いでいるはずだった。


  2.弟

「やはり、そういうことでしたか。いやね、私もそんな気がして、昨日浩二さんに声をかけてみたんですがね」
 浩二の長い言い訳話が終わると、半田刑事はそう言ってちょっと自慢げに眉を上げた。
 昨日と同じ部屋。浩二と母は彼の前でかしこまっている。
 隅で必死に浩二の話を筆記していた昨日と同じ警官がペンを置き、首を回していた。
 浩二たちは今日何度目かの、申し訳ありませんでした、を口にして頭を下げた。
 昨日とは打って変わって今日の部屋は寒いくらいだった。半田刑事もしっかり上着を着込んでいる。その半田が湯呑を持ち上げながら言った。 
「しかし、お母さん、嘘はいけませんな。弟さんが先に名乗ったことを言っていただいておれば、こんなことにはならなかった」
 母は立ち上がり、再び、申し訳ありませんでした、と頭を下げる。浩二はさすがにもう謝る気が起きず、座ったまま視線を落としていた。
「まあ、お座りになって」 
 母が腰を下ろしたところで、今度は半田の長い説教話が始まった。まず湯呑の茶を飲み干してギロリと浩二を睨む。そして、おひとりで暮らすお母さんの近くにいるのに半年もご無沙汰しているのはいかがなものか、と切り出し、四か月です、と訂正したいところを浩二がぐっと堪えて低頭したのをいいことに、話は最近の親子関係を嘆く一般論に移る。続いて、若い者の不可解な事件が後を絶たない現状を憂い、それもこれも、日本が大事に育んできた大家族制度の崩壊にあると結論付ける。さらに、
「私は、福島の猪苗代湖の近くの生まれでしてね」と話を膨らませようとする。午前中には銀行を済ませたいと思っていた浩二が袖に手をやり腕時計を見ると、さすがに半田も気が付いたようだ。
「いやいや、お忙しいところとんだ長話をしてしまいましたな。まあ、今度は本当の詐欺電話がかかってくるかもしれませんので、十分注意なさって」と、話を収めようとしたときだった。ノックをしてドアを半分開けた婦警が戸口で、「宇佐美さん」と若い警官を呼んでいる。
「こちらはのんびりしたものですが、大宮あたりでは被害届がひっきりなしに出てますので」言いながら、戸口で立ち話をしている二人が気になるのか、半田の目線はそちらに向いている。そんな半田を宇佐美巡査が目顔で呼んだ。
「ちょっと失礼します」と二人に加わった半田だが、二言三言話すとすぐにドアを閉めて出て行ったまま戻らない。お茶を入れ替えにきた婦警に、浩二が「何かあったんですか」と訊くが、「お待たせしてすみません」と謝るばかりで答えてくれない。十五分ほど待ってようやく半田が戻ってきた。
「やあやあ、お待たせしました」
 半田は新しいお茶を忙しく一口啜ると、浩二に顔を向けて言った。
「最近は、いろいろ手続きが面倒で、こんな事件でも、サインしてもらわなきゃならない書類がいくつかあるんです。向こうに用意してあります」と言って立ち上がる。
 浩二のあとに母もついていこうとすると、
「細かい書類なんで、浩二さんに読んでもらい、代理人のサインをもらいます。お母さんはここでちょっと待っていてください」
 そう言って浩二を連れ出した。

 浩二が母の待つ部屋に戻ってきたのは二十分も経ってからだった。母をすっかり待たせてしまって不審がっているのではないかと危惧したが、警察署を出て銀行に向かう車の中で母が一方的に話し続けていたのは、あの宇佐美とかいう若い警官のことだった。待っている間に彼が気を使って母の相手をしてくれたようだ。
「桐生だって、宇佐美さんの実家。あちらもお母さんがお一人で住んでいるらしいわ。お姉さんが傍にいるから安心だって」と始まり、彼が刑事を目指して熱心に勉強していることをさかんに誉める。昨日も今日も、調書をとる大役に与って光栄だと言っていたらしい。母にしては珍しく熱心に話すのを、浩二は適当に相槌をはさんで聞き流していた。それどころではない問題が彼の頭の中を占領していたからだ。
 
 銀行で無事に預金を引き出し、六百万円の札束を用意したバッグに詰めて浩二が実家に持ち帰った。母とは銀行の表玄関で別れた。昨日から置きっぱなしにしている自転車に乗って帰ると言ったからだ。母はついでに買い物もして行くと言った。一足先に着いた浩二は、バッグから銀行の紙袋を取り出し、茶箪笥の抽斗を開けた。例の剛志の書置きがしまわれている抽斗はいっぱいだった。閉めようとしたとき、一番上に載っているメモ書きが目を惹いた。手に取って見る。

・何の仕事しているのか
・籍は、予定日は
・住所(絶対忘れない)
・兄ちゃんに電話 ?
・体、悪いとこないのか
・帰って来ないか

『住所』は太く、強く丸で囲んである。『帰って来ないか』と読める最後の行は二重線で消されていた。
 浩二はしばらくそのメモを見つめていたが、今の自分ならば真っ先にこれだ、と尋ねたいことを行の先頭に指で書いてみた。
メモを元の場所に戻し、その下の抽斗を開けて、紙袋ごと金を押し込んだ。六百万円。大したかさばりにもならない。浩二は自分の年収を思うと、笑いたくなった。
「いいお肉があったわ」
 帰ってきた母が茶の間に顔を出し嬉しそうに言った。手に持ったスーパーの袋から黄菊、白菊、ピンクのカーネーション、そして浩二の知らない青い花が溢れ出ている。
 昨晩、明日はお寿司でもとろうか、と母が言ったのに、七時だから、食べてくることもあるだろうと考え、二人が出した結論がカレーだった。「剛志、好きだったね」とそのとき呟いた母の頭の中には、たしかにいまだに学生服姿の剛志がいたはずで、二十年ぶりに再会する家族の晩餐がカレーかよ、と思いはしたが、浩二も賛同したのだった。
台所に立って鋏を使いながら花瓶に仏花を挿している母に、金をしまった抽斗の位置を教えると、ありがとう、と明るい声が返ってきた。
母は仏花を仏前に飾ると長いこと父の遺影の前で手を合わせていた。母と入れ替わりに浩二も仏前に座り手を合わせる。そのあとインスタントラーメンで簡単な昼食を済ませると、慌ただしかった午前中とは対照的に遅々として進まない午後の時間が二人の間に腰を据えていた。それぞれに、これから数時間後に対面することになる剛志の様子に思いを馳せ、どうしても黙りがちになる。浩二の方は、半田刑事から負わされた母に言えない秘密を抱え込んでしまったせいで、なおさらだった。普段なら、時間をやり過ごすための軽い話題を提供することくらい何とはないのだが、今日だけはとてもそんな気分にはなれなかった。
 約束は七時だったが、何かの都合で早く来ることもあるかしらんと、通りに車の音がするたびに浩二は立ち上がり、茶の間の窓から外を見やった。二度ほどは外に出てあたりを見回し、何も変わった様子がないことを確認するついでに、庭で煙草を吸った。母の方は一度だけ庭に出て、四、五枚落ちていた山茶花の花びらを拾ってきたが、その後はすることもなく、何度も壁の時計を見上げては、ため息をついていた。それでも時計の針が四時を回ったとき、「作るね」と浩二に声をかけて台所に立った。ほどなくして俎板の上で野菜を刻む音が聞こえてくる。それを待っていたかのように浩二の携帯電話が鳴った。途端に台所の音が止む。
『警察、どうだったの』
「うん、なんとか済んだ」
『よかったね』
「うん」
『銀行は?』
「無事におろせたよ」
『何時だったっけ、剛志さん』
「七時」
『終わったら必ず電話ちょうだいね』
 浩二は言葉少なに返答を繰り返し、最後に、遅くなりそうだから、今夜はこっちに泊めてもらう、と告げて早々に芳江との電話を切り上げた。昨夜、帰ってから剛志が今日来ることを話したが、芳江は驚きはしたものの、喜んではいなかった。「何してるのかしらね」と、一応剛志を気遣ったものの、自分たちの生活を乱されるのではないかという不安がありありとその顔に出ていた。今も電話の声の調子でそれがわかるだけに、台所で聞き耳を立てている母のことを考えると、浩二の受け答えもぶっきらぼうになるのだった。

 上等な牛のスネ肉がごろごろと盛られたカレーを何とか胃の中に全部収めたころには、外はとっぷりと暮れていた。そして午後七時を少し回ったときだった。車の音が近づいてきて家の前で止まった。カーテンの隙間から覗くとタクシーの行燈が目に入った。浩二は座卓のそばで祈るように手を組み合わせて座り込んでいる母を手招きしたが、母は首を横に振って動かない。タクシーの室内灯が点き、うっすらと人影が判別できた。後部座席に乗っているのは黒っぽい服装の男とサングラスをかけた女。男が先に降り、女が料金を払ったあとそれに続く。浩二はカーテンを閉じ、母に言った。
「剛志だ。一人じゃない。女も一緒だ」
 浩二の最後の言葉に母はびっくりしたように目を瞠り、聞き取れない呟きを吐くと、立ち上がって玄関に向かう。浩二も続いた。
 外から足音が近づき、玄関の擦りガラスの向こう側に人影が立った。
「今晩は、剛志です」低い声が言った。
 浩二は母と並んで上がり框に立ち、「開いているのでどうぞ」と答える。
 引き戸が半分開かれ玄関の灯りの中に男が現れた。黒縁の眼鏡がまず目に入る。そして、ふさふさとした黒髪。黒のブルゾンで上半身を覆った細身の体。百七十五センチくらいはあるだろうか、浩二よりも少し高い。彼が剛志だとしたら最後に見たときよりも伸びているようだ。浩二の知っている剛志は眼鏡をかけていない。そのせいもあり玄関に立つこの男が剛志だとは、一目では判別できなかった。母もそうなのだろう、首を突き出してじっと見つめている。
「剛志?」
 やっと母から声が漏れた。
「母さん、久しぶり」
 男の口が小さく歪み、思いのほか白い歯が覗く。
 浩二はこんなときにつまらないことを思い出す。剛志はよく歯磨きをする子だった。たいがいの男の子はいい加減にするところを、母に言われた通り朝晩欠かさずに丁寧に磨いていたのだ。
「剛志なのね」
 母が上がり框の端まで身を乗り出して剛志に両手を差し伸べる。そしてその手で近寄ってきた剛志の胸のあたりを何度も叩いた。しばらく母のするがままにさせていた剛志が、外の方に顔を向け、「入んな」と呼びかけた。
 次に玄関の灯りの下に現れた女は、母に視線を向けると軽く頭を下げた。ベージュのライトダウンに包まれた少し小太りの体形。手には東京の老舗菓子店の紙袋を下げている。サングラスははずしていた。浩二はその顔をまじまじと見る。口紅を薄く引いただけの化粧っ気のない顔が、蛍光灯のせいもあり、ずいぶん疲れているように見える。女は「はじめまして、村上香織です」と言って、さっきよりは深く頭を下げた。
「よくいらっしゃいました」
 母が頬の涙を抑えながら香織に向かって言った。
「さあ、あがって」浩二は、剛志の肩をトンと叩く。
 この家の三和土には不似合いなスニーカーが二組並んだ。
 茶の間に入った二人を座卓の傍につかせると、母は膝を交えんばかりに剛志にすり寄った。浩二は剛志の向かいに座り、言葉が出そうもない母に代わって、口を開いた。
「剛志、悪いがちょっと眼鏡をはずしてもらえないか」
 一瞬怪訝な表情を見せたが、浩二の意図がわかったのだろう、にやりと笑いをみせて剛志は眼鏡をとった。着ていたブルゾンを脱ぎながら見つめてくる剛志の顔の中に、浩二は自分が知っている彼の面影を探した。自分と同じ薄い上唇、右目より少し細い左目。その左の瞼の上、眉毛との境にある小さなほくろ。そして何より、そのほくろから眉の中を横断するように伸びているはずの、……傷跡。しかしそれはこうして間近に見てはじめてその痕跡が確認できるほどに薄らいでいた。浩二は、少しほっとする。
「どう、納得した?」
 浩二は、嫌味なその言葉を無視して、真っ直ぐに剛志を見つめて言った。
「二十年、いままで何してたんだ?」
「一言では言えん。いろいろ……」
 剛志は口を濁す。
「苦労したんでしょ」
 母がやっとの思いで話しかけるが、それを否定したつもりなのか、剛志は無言で首を横に振るだけだった。
「剛志さん、話してあげたら。いつも言ってたじゃない」
 横から香織がこの場にそぐわない鋭い声で言った。
 剛志が驚いたように香織を見る。そして少し間を置いてから言った。
「俺のしてきた苦労ぐらい誰だってしてるはずさ」
「そうかしら」
 香織が不満そうに剛志を見ている、というよりも睨んでいると言った方があたっているか。
「まあ、その話はあとで聞くとして、まずは、父さんに線香あげてもらおうか」
 浩二が立ち上がると、香織がすかさず、
「お母さん、これを仏さまに」と、持ってきた紙袋から菓子折を取り出し母の前に差し出した。
 浩二は次の間に続く襖を開けた。仏壇の前にはあらかじめ座布団が一つ用意されていた。剛志がまず座り、線香に火を点ける。香織は剛志の後ろに正座して仏壇に飾られた父の写真に目をやっていたが、すぐにその視線をまるで値踏みするかのように仏壇のあちこちに飛ばしていた。
控えめなリンが鳴る。剛志は父の遺影に長いこと手を合わせていた。香織と席を替わり浩二の隣に来るとぼそっと訊いた。
「父さん、俺のこと何て言ってた?」
 浩二が口を開く前に、母が答えた。
「いつも言ってたのよ。剛志は何をまだ根に持ってるのかって」
「お前が出て行って、三年、捜索願出せなかったんだ。父さんが頑として許さなかった。でも変わったよ。父さん」
 座卓に戻り、それぞれが同じ位置についた。母は台所に立ちお茶を淹れて持ってきた。
「香織さん?」
 お茶を一口啜ったあと母が呼びかけた。
「あっ、はい」手に取っていた湯呑を慌てて置き、香織が答える。
「予定日は、いつ?」
「六月十日です。四か月に入ったところです」
「そう、大事にしないといけない時期ね。でも暑くなる前に産むことができるからよかったわね」
 香織が曖昧な笑顔を作り、頷きを繰り返している。
 母は、剛志に顔を向け、「あんたたち、まだ籍を入れてないんだね。すぐに入れなさいよ」と強い口調で言う。
「わかってる。これがけりついたらそうするつもりだった」
「剛志、いま何の仕事してるんだ。子供できてやっていけるのか」
 浩二はずっと気になっていたことを切り出した。
「運送業」最低限の答えが返ってくる
「運送業って、お前運転免許持ってないんだろ」
「うん。助手みたいなもん。でも子供生まれたらもっと稼げる仕事をするさ」
「あてはあるのか」
「あるっていうか、いま世話になっている人からちょっと話をもらってるんだ」
 どんな仕事なの、と母が尋ねても、剛志ははぐらかすばかりではっきりしたことを言わない。香織がときどき口を挟み何とか補足しようとするが、肝心の本人にその意志がないからさっぱり伝わらない。
 浩二は、世間の波に揉まれたはずの剛志の二十年の底の浅さに驚き、剛志の先行きを思うと暗澹とした気分になる。それでも、何とか剛志から明るい話を引き出そうと、仕事以外に何かやっているかと、水を向けてみる。
「なんも」と言って、黙ってしまう剛志に殆ど諦めかけたとき、剛志の表情に動きがあった。
「ときどき、誘われるんだ。野球に……」
 剛志がまだ続きを話しそうだったので、浩二も余計な口を挟まなかった。
「でも、たいがい日曜日なんで。俺、日曜も仕事のこと多くて……」
 もうしまいかな、と思ったとき、まるで雨垂れが落ちるようにポツリ、と続く。
「出るときは結構活躍するんだ……、だからまた誘いがくる」
 そう言って白い歯を見せる。ここに来てから初めて見る剛志の作り物ではない笑顔だった。
 これで少し打ち解けたのか、母の尋ねるままに、現在の生活について口重く剛志は喋った。体は丈夫なの、と問われて、一回入院したことがある、盲腸で、と笑った。
 浩二は、忘れないうちにと、剛志に住所を書かせた。
 今のアパートにはあまり長くいない、と言いながら彼が書いた川崎市の住所は、浩二にも少し様子がわかる。剛志の話と突き合わせ、高層ビル群に囲まれて古いアパートがごちゃごちゃと建て込む界隈を思い浮かべた。
 壁の時計を見上げた剛志が「母さん、急かせて悪いけど、そろそろ……」と、言いにくそうに語尾を濁す。
「そうだね。でもその前に、にいちゃんと話さないかい?」
 返事を待たずに電話台の方ににじり寄る母を剛志が強い口調で止めた。
「待って。今日は勘弁してくれよ。兄貴と話すんだったら、いろいろこっちも準備がいるよ」
「準備って? なにを」
 浩二が質すと、剛志は途端に卑屈な笑顔を作る。
「ほら、いろいろ、きついこと言ってくるだろ、兄貴。こーにぃと話すようにはいかないよ。それに兄貴の方だって、いきなり俺が出てきちゃ、びっくりだろ」
「たしかにな。俺が先に話しといてからにした方がいいかも」
 浩二が助け舟を出したものだから、剛志はあからさまに安堵した様子をあらわした。
 母は、納得いかない様子だったが、それでも、「それじゃ」と言って、茶箪笥の抽斗を開け、紙袋に入った金を取り出す。
「はいこれ、六百万円あるよ」
 剛志は紙袋を受け取ると、中を覗き、札束を目で数える。香織もにじり寄ってきて二人して紙袋の中を覗き込んでいる。
「お母さん、ありがとうございます。助かります」 
 先に礼を言ったのは香織だった。
「ありがとう」
 剛志は紙袋ごと持ってきたデイパックの中にしまい込んだ。そして脇に置いたブルゾンに手をかける。
「また、今度、ゆっくり来るから」
「もう帰るの。お腹はすいてない? カレーがあるよ」
「うん。入ってきたとき匂いがしてた。母さんのカレー久しぶりに喰いたいけどさ、今日は食べてきたし、本当にもう時間がないんだ」
「お茶だけでももう一杯飲んでったら?」
 母がなんとか引き留めようとするが、金を手に入れた剛志の心はもうここにあらずだった。
 大宮駅まで行くという彼らを浩二が送ってやることにした。
 慌ただしく別れの挨拶をかわし、玄関を出る。  
浩二が運転席に向かおうとすると、母が「ちょっと」と言って、車に背を向けて門扉のそばに浩二を誘う。
「なに?」
「香織さんさ――」母は浩二の肩に頬をつけて小声で言う。
「あのひと、妊娠してないね」
「どうして」
「茶の間に入ってきたときプンと煙草の匂いがしたの。多分タクシーの中で吸ってたのね」
「剛志の匂いが移ったんじゃないの」
「いいや、剛志には匂いはなかった。あんたみたいな煙草のみには気が付かないだろうけど、よくわかるものなのよ」
 母から言われて浩二は年不相応な剛志の白い歯に納得した。
「そりゃ、妊娠してても吸う人はいるだろうけどさ、剛志が止めさすと思うんだよね」
 浩二は喉元まで出かかっている言葉を辛うじて抑えた。
 母はいっそう声を細めて言った。
「なんで、そんな嘘をつく必要があるのかね」
「金をもらうため?」
「そうだろうかねぇ」
「どうする? やっちゃっていいのかい」
「私は最初からそのつもり。剛志がどんなんでもね。それが剛志の役に立つんだもの」
「わかった。帰ってからゆっくり話そう」
 浩二は話を切り上げ、車に向かった。
「母さん、何の話だった?」
 運転席に座ると後部座席から身を乗り出して剛志が早速訊いてくる。
「さっきの話さ。兄貴とお前を話させたいんだ」
「勘弁してくれよ。言ったろ、こーにぃから一応話してもらったあとの方が絶対いいって」
「ああ、わかってるよ」
 浩二はシートベルトを締めながらそう言うと車のエンジンをかけた。
 母が後部座席の窓に寄ってきて、剛志に呼びかける。
「剛志、電話頂戴よ。きっとだよ」
 二人が母に挨拶している隙に、浩二は後部座席の香織が写るようにルームミラーを調節した。
 車が角を曲がり母の姿が消えると、後ろから「ふぅ」とため息が聞こえた。
 香織のようだった。それを聞いて剛志が「疲れたろ」と声をかける。
「煙草吸ってもいいんだよ」
 運転席から思いがけない声がかかって、ちょっとびっくりした香織の表情が見える。
「吸うんだろ」と念を押され、「それじゃ遠慮なく」とほっとする香織。
 ライターを擦る音。深く息を吐き出す気配。少し遅れて甘い匂いが運転席に流れ込む。浩二が以前吸っていた銘柄だった。
「こいつ、妊娠してるのにやめられなくてさ」
「いいよ、無理しなくて」
「俺は無理してでもやめさせたいんだけどさ」
 浩二は自分の言った言葉が、無理して煙草をやめなくていいよ、という意味で伝わっていることに気付き、可笑しかった。
 交差点の赤信号で停まっていると、
「お兄さん」
 煙草を吸って少し余裕が生まれたのか、初めて香織の方から話しかけてきた。
「お母さん、わたしのこと、どう思ったかしら」
 浩二は、さっき母と話したことをぶちまけたい気持ちになったが、いったんはぐっと堪える。そして少し乱暴にアクセルを踏み込んだ。車は大宮に向かう県道に入った。
「お兄さん?」
 香織の甘えた声が浩二の耳に障る。
 もう限界だった。半田刑事からは、できるだけ気付いていない振りを続けてくれと言われたが、素人の自分がそんなにうまくやれるわけがない。
「もう、いいよ!」
 浩二の尖った声に、後ろから剛志が身を乗り出してきた。
「もういいって、どういうこと?」
「だから、もうやめろって言ってるんだ。夫婦の真似は」
 慌てて香織が煙草をもみ消す。
 浩二の頭の中で半田刑事が念を押す。
――私らの狙いは女ですからね。それだけは気付かれないように
「ばれちゃったのね」
「だから無理だって言ったんだよ」
「でも、私だって精一杯やったのよ。そうでしょ、おにいさん?」
 おにいさん、と呼ばれても、もう兄の意味にはとれなかった。酒場の女が客に媚を売るときの、おにいさん。浩二の苦々しい今の気持ちを逆撫でするように後ろでまた、シュッとライターを擦る音が響く。
 浩二は剛志が今言った言葉を反芻していた。
――だから無理だって言ったんだよ――、剛志はたしかにそう言った。と、いうことは女の方から頼み込んでついてきたということだ。金がたしかに剛志に渡ったことを確認するために。
「ごめん、こーにぃ。どうしても金が必要だったんだ。こうした方が母さんの気持ちが動くと思って……」
 母さんの気持ちを利用しやがって、と裏切られた気持ちが半分だが、重くのしかかっていたもう一つの難題に光明がさし、浩二の気をいくぶん楽にさせたこともたしかだった。
 半田はこうも言ったのだ。
――なんとか、女に金を持たすように仕向けてくれないだろうか。そしたら私らの仕事もやりやすくなる。
 もちろん、浩二は、保証したわけではない。無理です、といったんは撥ねつけた。そんな浩二に半田が追い討ちをかけた。
――駅に着いたら、弟と二人で少し話させてくれ、と言って、女を先に車から降ろせばいい。女はどう考える? 金を持ち逃げされるとは思わないだろうか。念のためこれは預かっておく、と言って金の入ったバッグなり袋を持って降りる。そこまできたらあとは任せてもらいたい。
 半田は自信満々に言った。浩二もなんだかできそうな気になって尋ねた。
――あとはどうなるんですか?
――女の身柄を確保する。恐喝でも、なんでも理由をつけて。
――それでは、別件逮捕になるんでは?
 半田はギロリと目を剥き、
――大塚さんに心配してもらわなくても、うまくやるはずです。警視庁がね、
と、言って目尻を下げた。
――弟はどうなります?
――弟さんにも一応署まで来てもらって事情を訊きます。けれども、警視庁は弟さんには興味はないようです。
「どうせ俺は厄介者だろ」
 浩二が返事をせずに黙りこんでいたので、剛志が先回りしたように浩二の胸の内を口に出した。
――でも、そんなやつらとつるんでいるんだから、剛志も同類なんでしょうね。
 半田は頷きはしなかった。かわりに上着のポケットから煙草を取り出すと浩二にも一本勧めた。
――弟さんがまっとうに生きてきたかどうかは、もちろん私にはわかりません。でも、あなたはお兄さんなんだから、会ってみればわかるんじゃないですか。
 そう言って、盛大に煙を吐き出した。
半田に言われなくても、そう思っていた。が、今その自信はぐらついている。母ほどではないにしろ、浩二にも肉親の情というものが邪魔をして冷静な判断を下せないでいる。
――どうせ俺は厄介者だろ――今も自嘲気味に言った剛志のその言葉の裏になんとか彼の救いを求める匂いを嗅ぎ取ろうとしている。
けれどもそんな思いとは裏腹に、出てきた言葉は冷たく剛志を突き放すものだった。
「自分にやましいとこがあるからこんなせこい芝居を打とうとするんだろ」
「おにいさん、あたしが悪いの。剛志は嫌がったんだから」
 香織がすかさずとりなしたが、今となってはこの女の声を聞くのも虫唾が走った。
「おにいさんはやめてくれ。あんたの兄さんになったつもりはない」
 浩二は突き放すように言うとアクセルを踏む足に力を入れた。
 夜の県道は対向車も少なかった。遥か先に前を行く車のテールランプが見えている。ルームミラーに目をやると後ろを着く車も十分な車間距離を保っていた。あの車に半田刑事が乗っているはずだ。浩二は目を凝らすがもちろん確認できない。代わりに不貞腐れたように窓の外を見つめている香織の横顔が目に入った。
「剛志、前に来ないか」
 浩二は半分振り向いてそう言うと、返事を聞かないうちに減速して車を路肩に寄せた。車を停め、一旦降りて剛志を待つ。片側一車線の道を白のセダンが追い越して行った。追い抜き際にスピードを緩めたその車に、四人の男が乗っていることはわかったが、半田がいるかどうかは判別できなかった。
「うぉ、寒い」
 後部座席から降りてきた剛志がブルゾンの襟口を押えながら、助手席のドアに手をかけたところで、小さく声をかける。
「今日、二人で話す時間はないか」
「今日は無理。今日中に金を持っていくところがあるんだ」
「三十分くらい遅れても大丈夫だろ」
 剛志は、うん、とは言わなかった。
 これだけの言葉を交わしただけで二人はまた車に乗り込んだ。
 再び走り出すと助手席に腰を下ろした剛志が、やたらと、浩二のことを訊いてくる。子供はいるの? 何年生? いまの家はマンション? 買ったの? いつ? 問われるままに素直に答えているうちに気が付いた。剛志は自分のことを訊かれたくないためにこんなに矢継ぎ早に尋ねてくるのだと。その証拠に、もともと彼にとっては大して興味のないことだからさっぱり話がはずまない。訊かれた以上のことを返してやれば別なのだろうが、浩二の方も、それどころではない事情で頭がいっぱいだった。
 剛志を助手席に誘ったのは、もちろん、香織に聞かれたくない話をするためだったが、いざこうなってみると、なかなかむずかしい。ルームミラーに映る香織は窓に頭を凭せかけて目を瞑っているが、前の二人の話に聞き耳を立てていることは間違いない。
「こんな時間からパチンコかよ」
 しばらく黙っていた剛志が突然声を上げた。なるほど、前を行く車が派手な電飾に引き寄せられるように右折して行った。その車がパチンコ店の駐車場で切り返し、浩二たちの車の後ろに着くことを剛志は考えもしない。
 午前中、半田刑事に連れ込まれた奥の小部屋は、テレビドラマでよく見るような取調室だった。
――こんな部屋ですみません、
 半田は謝りながら、部屋の中央に置かれた机の前のパイプ椅子を浩二に勧めた。
 浩二と向かい会う形で座ると、半田はすぐに上着の内ポケットに手をやり一枚の写真を取り出して机の上に置いた。どこかの建物から出てきた男女を隠し撮りしたものだった。サングラスをかけた女。赤い唇が真っ先に目を惹く。一目でわかるブランド物のバッグを肩にかけ、颯爽と歩み出そうとしている。すれ違うときつい香水の匂いを嗅がされそうな、そんな女だ。後ろの男は、出てきた建物を振り返ったところなのだろうか、横顔で、おまけに顔の下半分が女の肩に隠れている。黒縁の眼鏡だけが印象に残った。
――実は、昨日あなたがお帰りになったあと警視庁から捜査協力要請がきまして、この写真がこちらのパソコンに送られてきました。写真の女、『村上香織』といいます。ある一連の詐欺事件で警視庁が内偵捜査をしている夫婦の片割れです。男の方は亭主とは違います。情報はあまりありませんが、『オ・オ・ツ・カ』と呼ばれているようです。
 半田は、意味ありげにゆっくりと発音した『オオツカ』のもたらす効果を確認するように間をおいた。
――よく、ご覧になってください。弟さんじゃありませんか?
 浩二は机の上に置かれた写真を取り上げてしばらくじっと見ていたが、諦めて首を横に振る。
――わかりません。なんせ二十年も会っていないんですから。それに、『大塚』なんてありふれた名前ですよ。別人じゃないですか
――そうでしょうな。浩二さんにそう言われちゃ、私らも引き下がるしかないと思っていました……先ほどまではね。
――と、言うと、さっきの電話が…… 
――そう、ちょっと事情が変わってきました。
 半田は、もちろん警視庁から尾行がつくが、と前置きしたうえで、この二人が今日、この町に立ち回る情報があることを打ち明けた。そして、浩二たちがこのあと銀行から預金を引き出し、訪ねてくる剛志に渡す予定であることを確かめると、嫌なことを言い出した。
――女はなぜ弟さんについてこんな町までやってくるんでしょうかね。いや、もちろん、これから話すことはあくまで、この男が弟さんと仮定したうえでのことですがね。
 浩二に問いかけているようだが、彼の中ではすでにシナリオができ上がっていることは、その口ぶりから明らかだった。
――六百万円という金に大変興味がある。そう、弟さんが受け取った金は、この女に渡るんじゃないですか。例えば、借金があるとか、脅迫されているとかね。
『脅迫』という言葉に、浩二はびくっとするが、予想もしていなかった展開に声も出ない。
――そこでですよ。私にひとつ提案があるんですが、
 そうもったいをつけると、半田はこの無理難題を押し付けてきたのだった。

 結局、肝心なことを剛志に確認できないまま、車は大宮の繁華街に入ってきた。東口のロータリーに少しの間なら車を停めておけるスペースがあることを知っていたので、浩二はそこに車を向けた。忘年会シーズンを迎え、週末の夜の街は混雑を呈していた。雨が来ているようで、フロントガラスにぽつぽつと水滴があたり始めた。
 ロータリーに入ると二台分の停車スペースを見付けて車を停めた。後ろを着く車も浩二の真後ろで車を停めた。半田刑事を先頭に三人の男がぱらぱらと車を降りた。
「ちょっと、剛志と二人で話す時間をくれないか」
 浩二は、首を後に捻じ曲げ香織に言った。
「あまり時間、ないけど」
「五分だけ」
 首を戻し、ルームミラーに映る香織と目を合わせる。しばらく睨み合っていたが香織の強い目力に負けたように浩二の方が先に視線をはずす。
「わかった。五分ね。これ、念のため、私が持って出てるね」
 香織はそう言うと、剛志のデイパックを肩にかけ、車のドアを開けた。
 ドアの閉まる音を聞いて浩二は大きく息をついた。エンジンを切るとシートに体を凭せかける。
「何の話?」
 剛志の問いかけを無視して、香織の様子をじっと見ていた。舗道には盛り場方面から駅へ向かう酔客がひきもきらない。香織はすれ違う人波から守るようにバッグを体の前で抱えている。
 香織から少し離れて立っていた半田がこちらを見て手振りで訊いてくる。浩二は大きく頷きを返した。半田が隣の男に何か言うと、二人の男が香織に近づき話しかけた。そのうちの一人が警察手帳のようなものをかざしている。もう一方の男が彼女の持っているバッグに手をかけ何か言っている。香織は、必死な様子で浩二たちの車を指差して抗っているが、二人の男は彼女の両脇から手をかけ、すっと入ってきた車の方へ連れて行く。それに気付いた剛志が「あっ」と声を上げ、助手席のドアハンドルに手をかけたが、浩二がそれを押しとどめる。
「刑事だ。彼女はもう逃げられない。亭主も今頃はつかまってる」
 剛志は大きく目を剥いて浩二を見つめる。
「こーにぃ……」あとの言葉が続かない。
「最初からわかっていた。ただ、お前が仲間じゃないかと、それが心配で」
 半田がやってきた。浩二は助手席側の窓を半分開けた。
「大塚剛志さんですね。大宮署まで同行願います」
「すみません、三十分、いや二十分でいいです。弟と話す時間をもらえませんか。必ずまたここに戻ってきます」
 半田は腕時計を確認すると、「いいでしょう」と頷き、もとの舗道に戻って行った。浩二はエンジンをかけ、車を駅前のロータリーから出した。
 フロントガラスにあたる雨の粒が流れ始めた。浩二はワイパーのスイッチを入れた。
「剛志、正直に話してくれ。あの女の仲間なのか?」
「違う!」間髪入れずに剛志は否定した。
「あいつの旦那に金を借りたんだ。二百万円」
「いつ?」
「二年前」
「それが、六百万になったというのか?」
「うん。正確には五百万ちょっと。最初の三か月は毎月十万ずつ返していたんだけど、その後、金策がつかなくなって、ずっと待ってもらってた」
「そんなべらぼうな金利、違法だというくらい分かるだろう」
「なんとなく、やばい金利だとは思ってたよ。でも契約書に判捺してしまったし。おととい、村上に呼ばれて、俺の仕事手伝いながら返していかないかって言われたのよ。あいつらが何やってるのか知ってたから俺は断ったよ。そしたら、もう一日も待てない、すぐに返済しろってわけさ」
 浩二は剛志のあまりの無知さにあきれたが、とりあえず、彼が仲間でないと知り、少しほっとした。
 雨の音が車内にも聞こえてくるようになった。傘を持たない女性たちのグループが駅までの道を走っている。交差点の青信号を右折したときだった。胸のポケットに入れていた携帯電話が鳴った。車を路肩に寄せ、電話をとる。母からだった。剛志はまだここにいる、と答えると、代わってくれと言う。剛志に電話を渡してから、再び車を出した。
 一方的に母が話しているようで、剛志は、時々ああ、とか、うん、とか言うだけだ。
――二百万円か。浩二は頭の中で計算を始めた。
 貸金業法による上限金利は、二十%。遅延利息の上限も同じだから、まるまる二年分としても利息は八十万円。実際には三十万円返済しているし、遅延利息もその分減るわけだから、残りの返済総額は二百五十万円以下になる。しかし彼らが貸金業者でない可能性も大きい。その場合、上限金利は十五%で遅延利息はその一・五倍だが、返済総額に大差はないだろう。
「うん、ありがとう。考えとくよ」
 剛志の電話が終わりそうだったので、今晩はそっちに泊まる、と言伝を頼んだ。
「何を、考えとくんだ」
 剛志から携帯電話を受け取りながら浩二は訊いた。
「母さんがさ、一緒に住まないかって。こっちで仕事を探して」
 大した興味もなさそうにボソっと剛志が答える。
 母の気持ちはわからないこともないが浩二は素直に賛成できない。今のままの剛志では、早晩こちらに泣きついてくるのは明らかだ。不機嫌な芳江の顔がちらつく。そんな心の内を顔に出したつもりはなかったが、剛志がすかさず付け加えた。
「考えとくって、一応言ったけど、まあ無理。あんな田舎で仕事見つかるわけないし、これ以上、母さんに負担をかけるわけにはいかないのは、俺だって自覚してるよ。住んでる世界が違うもん。俺の生きてきた場所でこれからも生きていくしかないさ」
いじけたようなその言い方に腹が立ったが、浩二はこのときとばかりさっきの自分の考えを口に出した。
「ざっと計算してみたけどな。お前の返さなきゃならん金額は二百五十万にもならんはずだ。あの金のうち三百五十万以上は残る。それを元に、今度こそやり直してみたらどうだ。真面目にやるんなら、俺だって、兄貴だって応援するぞ」
 ずいぶん思い切って熱い言葉をかけたつもりだった。けれども剛志は、余計なお世話だと言わんばかりに、おざなりの「ありがとう」を返しただけで、すぐに繁華街の賑やかな街灯りに視線を移した。
 車は再び駅前のロータリーに戻ってきた。
 前に停まっている車から半田が降り、首をすくめてやってくる。
 ドアを開けようとする剛志に「ちょっと待て」と声をかけ、ドアポケットからメモ帳とペンを取り出して、急いで書き付けたものを剛志に渡した。
「俺の携帯番号」
 剛志はちらっと目をやると無造作にそれをズボンのポケットに押し込んだ。
「それじゃ、母さんによろしく」
 また会おうな、とも、電話するよ、とも言わず剛志は去った。
 浩二も頷いただけで、剛志を送り出し、彼が半田と一緒に前の白いセダンに駆け込むのを見送っていた。
 車が動き出すと浩二もその後を着ける。
 駅前ロータリーを出て、しばらくは同じ方向に進む。
 車道に映る街灯りが雨の跳ね返りの中で躍っている。
 浩二は、前の車の後部座席に乗っている剛志の頭に目を据えていた。剛志が今にも振り返るのではないかと期待した。
 いくつかの交差点を過ぎたあと、前の車は左折のウインカーを点滅させながら赤信号で停まった。
 実家へはこの道を直進だった。
 浩二の助け舟にぷいと横を向いた剛志の無表情な顔が脳裏をよぎる。
「くそっ」一瞬の逡巡のあと、浩二は左折レーンに車を寄せた。

       (了)

はぐれ草 (87枚) ©越まろ

執筆の狙い

 以前、投稿した「山茶花、三つ四つ」に「弟」の章を書き加えたものです。
 二、三の賞に応募しましたが、かんばしくありません。
 どんな点に大きな問題があるのか、忌憚のないご意見をお願いします。

越まろ

121.109.240.168

感想と意見

きさと

そうでないと絶対に駄目なわけではないですが、作者が最初から最後まで(過去に)「作り上げた」ものを読むより、読むのと同じ時刻に、同じタイミングに話が展開されていくさまを読む方が、私は楽しいです。
テレビ番組は生放送の方がハラハラして面白いことがよくあるように、頑に作者の決めた筋道に沿って進むよりは、作者さえも予想していなかったハプニングが、小説にも起こっていいと思います。しかしこれは決して、面白おかしく書けとか、荒唐無稽にしろとかいうことではありません。物語の進行の仕方は、たまに登場人物たちに任せきってもいいだろう、ということです。

2017-03-20 10:12

202.213.147.209

こんばんは、水です。四時通過なんてすごい!と思って参考に読んでいました。
自分はミステリや青春ものばかり読んでいて、こういう昼ドラチックな話をあまり読まないのでわからないのですが、読んでいて物足りなさを感じます。

お話づくりの基本的な話で、もうよくご存じかもしれませんが、やはり主人公に目的と立場を明確にしてあげたほうがいいんじゃないでしょうか?
例えば、主人公は弟を「見限る」か「全力で更生させる」かの判断を結局曖昧にしています。警官や弟のいうまま、受動的に行動しているだけです(母親も)
なので、主人公の立場をはっきりさせるとドラマ的には面白くなると思います。「見限る」話にするならすり寄ってくる弟を全力で拒絶して母親と対立しなければならなくなりますし、更生させる話にするのであれば弟をぶん殴るくらいの勢いが必要になるでしょう。
また、そういうわかりやすい結末を排除して「駄目になってしまった弟と別れる悲しさ」をテーマにするのであれば、幼少期の描写や将来を語る場面を挿入し、主人公の心理描写をもっと増やすことが有効と思われます。

とても印象的なシーンがいくつもあるので、テーマを明確化して(曖昧な表現ですみませんの)それに沿って構成のを変更すればとても面白い話になる気がします。
素人考えですが、思うところあればご意見いただけると、私の勉強にもなりますので嬉しいです。

2017-03-20 18:55

180.197.180.55

hir

 拝読しました。
 サスペンス調で面白かったのですが、読後の感想は、警察が優秀なのか、犯人が間抜けなのか、の二択になってしまいました。
 警察がドラマの妨げになっている気がします。警察抜きで構成されてはどうでしょう。
 弟から事情を聞いた経理課長の主人公が貸金業者に赴いて交渉、頼れる兄を演出するとか。

2017-03-20 21:07

210.149.159.38

卯月

拝読。

かなり良く描けてると思います。腕はあると思いました。
文章力、こういったエンタメ作品としては読みやすくいいんじゃないでしょうか。
構成力、良いと思いました。

ただ、作者さん狙いで書いていらっしゃる以前の投稿「山茶花、三つ四つ」を、私読んだのかどうか記憶になく。何分、1カ月以上の記憶が残らない体質なので(笑
以前の作を読んでいたらまた評価も変わっていたかもしれませんが、本作に対する感想。公募という事で若干辛口ごめんなさい。

20年前に家出をした剛志に対する浩二の心境・確執―母親、死んだ父親、浩二の兄も含めた―そういったものを描きたかったのだろうということは分かるのですが、構成としてミステリータッチをとっていらっしゃるので、後半そっちの方が勝ち過ぎて、結局全体としては中途半端な印象。

( 2.弟)の前半部分で浩二が半田刑事に別室に呼び出され20分も書類を書くのに時間がかかったとの記述があるのですが、ここらへんで読者はこれはメインの伏線だよねとわかる訳で、そうすると細かなことまでは解らないまでもおおよその結末は予測可能ではないかと思います。
この部分ミステリー的を目指すのであれば、もう少しほのめかし被害者しても良いのでは。小出しに出していく手法もありかなと。多分作者さんは最後に謎解きを持ってきて大団円ジエンド。その気持ちはわかるのですが。やはりミステリーとしても中途半端かなーと。

それとお話の本筋とは関係ないのですが、警察がたとえ関係者だとしても一般市民である浩二に対しこういった捜査協力を依頼するのかどうか? 私警察と蛇とゴキブリは嫌いなので良くはわからないのですが。

色々書きましたけど面白かったです。

益もない事しか申し上げられませんが、御寛恕下さい。
御健筆を心より祈念申し上げます。ってか

2017-03-20 22:03

183.176.74.78

大丘 忍

 出来の悪い子ほど可愛いとよく言われます。高校卒業後に家を飛び出し、以後は音信不通の三男に対する母の気持ち。その母親から金を騙し取ろうとする振込み詐欺まがいの行動。三男と知って金を渡そうとするのですから詐欺とはいえないかもしれませんが、その詐欺に、詐欺常習の共犯者の女がからんでいる。
 小説の構想としては面白いのですが、小説としては、振込み詐欺に重点を置いて、もう少し警察小説らしく、あるいは推理小説らしく書けばもっと面白かったのではなかろうかと思います。
 同棲しており、女が妊娠したので、という理由で母親から金を引き出すのですが、その女が詐欺の一味であることが簡単に見抜かれてしまっております。ここは折角のストーリー展開ですから、もう少し推理小説風、サスペンス風に描けば面白いと感じられるのではないかと思いました。
 このサイトでは最近は滅多に見られない本格的小説を堪能し、楽しく読ませて頂きました。

2017-03-21 09:42

221.242.58.46

越まろ

きさと様、早速ご感想をいただきありがとうございます。

 なにか、とても大切なアドバイスをいただいていると思うのですが、それを確かに理解できているかといえば、自信がありません。時間的に言って、拙作の冒頭だけを見て、決めつけられたか、斜め読みでのご解釈と推察いたします。 
 たしかに、書いているうちに人物が勝手に動き出し、作者の予想もしない展開を生む、ということはよく聴く話ですが、言うは易しで、残念ながらまだ、そんな体験をしたことがありません。いや、これからもないと思います。最初から最後まで決めたプロットに中で作中人物に演じてもらうという創作姿勢ですので、考えついたプロットに面白みがなければそこでアウト。悲しいかな、そんな繰り返しで、年を重ねています。そんなんじゃ、無駄な努力をしなさんな、ということになりますが、そこは意地。もう少し頑張ってみます。
 ありがとうございました。

2017-03-21 09:58

121.109.240.168

越まろ

水様、お読みいただきありがとうございました。

 こんなどうしようもない肉親がいるとき、どう対応するだろう、物語のプロットを考えるうえで、ずいぶん考えました。
 たいがいの母はどんな息子であっても無償の愛で迎えるだろう、私もすぐに母にはこのタイプを設定しましたが、難しいのは兄です。「全力で更生させる」熱血漢の兄は端から考えませんでした。兄には兄で自分の家庭があり、それを乱されたくない。決して弟への愛情が希薄というわけではないのですが、このほうが身近によくいるタイプだと思いました。おまけに子供時代のちょっとした失敗で弟にいまでも負い目がある、こうすることで彼の葛藤もより複雑になる。ラストは、いったんは見限ろうとしたものの、結局そうはできなかった。これは家族としての絆のせいでもありますが、ふがいない兄としての汚名挽回も心の内にはあったように読んでいただきたいと考えました。どうしようもない弟を際立たせる舞台として、このようなサスペンス絡みの設定にしましたが、あまり成功していなかったようです。あくまでテーマの方を押し出してもっと書き込む必要があったかもしれません。
 貴重なご指摘ありがとうございました。

2017-03-21 11:46

121.109.240.168

越まろ

hir様、お読みいただきありがとうございます。

 サスペンスに重きを置く読み方をすれば、おっしゃることごもっともと思います。もともと、厄介者の肉親に対する家族の愛の温度差とそれがどのように変化していくかをテーマに書き出したものなので、そのテーマを押し出すにはサスペンス調は余計だったかもしれません。特に警察の対応については未知な部分もあり、多分、熟知している人から見れば笑われる出来でしょう。いっそ、警察を抜きにしてという、hir様の案は面白そうですね。でも、兄にそこまで活躍させてしまうと、今、私が設定している兄のキャラを大幅に変更しなければならないようで、それはそれで難題です。
 貴重なご意見ありがとうございました。

2017-03-21 20:56

121.109.240.168

GM91

拝読しました。
率直に申し上げて、加筆された2.弟 の存在が作品全体を中途半端にしてしまっていると感じました。
1.だけの時はそれなりにまとまりがあるように読めたのですが、2.で終わってしまうとなにかもっと長い話の途中で切れているような印象を受けます。

TERUに指摘されたタイトルの件がまだ少し尾を引いているようにも見えますが、このタイトルで加筆するならば3.4.とつなげていって浩二や剛志の物語を描き切ってしまえば読み応えのなる作品に仕上がるんじゃないかなと思いました。

2017-03-21 21:15

202.215.168.236

99

高校まで住んでいた家は、この田舎町には勿体ないほどの立派な構えの家だった。でしょうか?

2017-03-21 22:45

121.82.247.83

さかあ

なんだか設定だけに終始しているようで、これだけの分量を割いて「弟ははぐれ草なんですよ」と説明されても、こちらとしては「ああそうですか」という読後感しか持たないんですよね。

2017-03-21 23:48

49.98.158.192

越まろ

卯月様、いつも丁寧にお読みいただき感謝しております。

>20年前に家出をした剛志に対する浩二の心境・確執―母親、死んだ父親、浩二の兄も含めた―そういったものを描きたかったのだろうということは分かるのですが、構成としてミステリータッチをとっていらっしゃるので、後半そっちの方が勝ち過ぎて、結局全体としては中途半端な印象。

私が危惧していましたことをズバリとご指摘くださいました。以前「山茶花」を完成させた時から、現れた弟は家族の期待を裏切る厄介者で、という設定が頭の中にあり、それをプロットするうえで、事件を絡ませてミステリー仕立てにしました。重い話をストレートに運んでも息がつまるのではと思ったからです。もちろん、テーマを重視した話ですので、その塩梅には気を配ったつもりですが。
 謎の方は意外性を狙うというものではなく、読者にある程度予想がついても、葛藤する浩二の心理の揺れを描く要素として使いました。そういうわけで、ミステリーとして読まれると物足りないものになっていると思います。
 でも結局、後半のミステリーに力が入り過ぎて、ご指摘のような印象を与えてしまったようです。
 警察の対応の件、ご指摘の点や、今の時代こんな強引なやり方で被疑者を確保できるのか、という点もわかっていながら、主題はそっちじゃないからと甘えた部分があると思います。公募に出す作にこんな考えじゃまずいですよね。

 貴重なご指摘ありがとうございました。

2017-03-22 09:06

121.109.240.168

越まろ

大丘忍様、お読みいただきありがとうございました。

 大丘様も、本作ミステリーとして読まれましたようで、ご指摘もごもっともとうなだれるしかありません。
大方の皆様から、中途半端とご意見をいただいて、今は、もっとストレートにテーマを掘り下げるべきだったと思っております。
先輩はますます御健筆のご様子ですが、当方は年一回の北日本30枚が精いっぱいの体たらくで、せっかく若いみなさんからさまざまな刺激をいただきく機会がありながら、それを生かせず、もどかしい日々を送っています。
 とはいいながら、もう一鞭入れて頑張ってみます。どうぞご叱咤ください。

2017-03-22 19:10

121.109.240.168

味噌

読ませていただきました。
 
落ち着いた文章、物語の動かし方、特に前半は文句のつけようがないくらい秀逸でした。北日本で予選通過の名前を発見するたびに喜び、同時期にここで触れ合った者として感嘆以外の言葉を捜せません。
 
でも今作は確かに練り込み不足でしたね。主人公に感情移入できても、まったく共感できないんです。
なぜ共感できないのか。それは対極の位置にいる弟と香織に魅力がないからに尽きるでしょう。卑屈で甘ったれのうえ、犯罪の動機にも正当性が感じられないからです。少年のときの枷も、枷のうちに入らないぐらいの小さな傷でしかありません。
父と弟の確執に決定的なドラマを創り、犯罪に、違う意味で母を絡めて正当性を持たせるべきでしたね。
 
例えば、弟も香織もじつは主人公とは異父兄弟で、そのため父親から冷遇されていたとか。そして弟は苦労する妹香織の存在を知り、父親と喧嘩して家を飛び出す(相変わらずベタですみません^^)。
 
現状では弟の失踪原因が薄っぺらい印象を受けるし、借金の理由もそうですが軽すぎてドラマが見えません。とにかく隠された深みが足りないんです。
 
父親が生きているとしたらどうでしょう。
父を死なせないで頑固なまま存命させていれば、主人公が母と父、弟との板挟みになってもっと葛藤が生まれたような気もします。
いずれせよ主人公がさほど葛藤せず、板挟み状態にもならないので読み応えが薄まっている。物語を追うあまり肝心の人物設定を練り込めなかったせいだと思います。
 
感想を書くたびに言いたい放題でごめんなさい。
もっと上を!
では、またいつか。

2017-03-22 21:30

153.203.224.138

ポキ星人

 森友学園の問題は登場キャラの個性の強さや経緯の異常さが目をひくのですが、報道を見ているうちに、そもそも一連の経緯のうち何を本当に問題とすべきなのか、わからなくなってしまうことが私にはあります。もしも、森友学園の問題って何なのか私がふいに聞かれたら、理事長が変人だという問題だと即答してしまいそうな気がします。キャラの個性や経緯の異常さが問題を作ってきたはずですが、同時にそのキャラや経緯の特異さが私の目を問題からそらせているのです。

 この作品ですが、家出中の弟が、うそをついて親から借金する(というより大金をもらう)話のはずです。その兄が主人公なら、そういう弟にどう対処するのかが作品の根幹であって、とくにこの期に及んで老母にうそをつくことを兄としてどう考えて、母と弟とにそれぞれどんな対応をするかが大事なのだと思います。
 しかし、弟より悪い人がでてきて、警察がでてきて、警察から協力要請にもとづく主人公の行動があるので、弟のいまだ反省しないあり方、この家族の課題というのがなんだったのか、よくわからなくなる、そこに注目しなくなる、という効果が発生していると思います。この話の大事なところは詐欺師と戦うことなのでしょうか。おそらくそう即答したくなるように書かれていますが、たぶんそれは本当の問題じゃないです。
 そもそも「家出して長年音信不通だった弟が母に嘘をついて身勝手な借金をする話」を書くうえで、詐欺師も警察も必要ありません。それらを出すことによって、たんに問題がすり替えられているのだと思います。
 いや最初から詐欺師と戦う話をしたかったのだ、というなら、それは弟が戦うのが本筋なので、今度はそこをすり替えているといえます。兄が代わりに戦ったことを弟にどう突きつけるのか、という話が今度は浮上するはずです。

 ですから私は、この物語の大筋に乗っかって、その範囲で改良策を検討するのは、あの理事長の人物評で時間をつぶすのに等しいものだと思います。どう描くか以前に何を書くべきだったか書きたかったのかを考えることをしないと仕方がないと私は思います。

2017-03-23 00:54

180.12.49.217

ドリーマー

こんにちは。作品、拝読しました。

なんだか前半と後半で別の話を読んでいるような印象を受けました。
先に執筆の狙いを読んだところ、「弟」の章を書き加えた、とあったので、剛志と父親との確執や、家出してからの暮らしぶりが描かれるのだろう、と思ったのです。
その上でこの結末を迎えたなら、『また会おうな、とも、電話するよ、とも言わず』に去った剛志の心情を、剛志の二十年間を知らない浩二は分からなくても、知っている読者は想像できると思うのです。

ところで浩二には子供がいるのでしょうか。もしいるのなら、自分に反抗して息子に家を出て行かれた父親の気持ちを、浩二も父として想像することができるでしょう。中学生くらいの子供がいてもおかしくない年なので、思春期で親に反抗的な息子でもいたら、剛志に息子の姿を重ね、剛志の身になって考えることができるかもしれません。
浩二視点だけでは剛志の心情を描き切れませんが、こういうアプローチの仕方もあるのでは、と思いました。

後半はもう少しミステリー色を抑えてもいいような気がします。
『昨日あなたがお帰りになったあと警視庁から捜査協力要請が』来たのがどうも都合が良すぎるように思え、その後はミステリー小説の謎解きのような展開が続くので、兄弟のやり取りが霞んでしまうんですね。
前半は丁寧に描かれているだけに勿体なく思えました。

自分のことは棚に上げて勝手なことを書きましたが、少しでも参考になれば幸いです。
それでは、失礼しました。

2017-03-23 02:17

116.67.216.94

越まろ

GM91様、お読みいただきありがとうございます。

 タイトルトラウマからは完全に脱出しているものと自分では思っていたのですがGM91からそう言われますと、たしかに心の中に山茶花イメージを無理やり払拭するようなストーリーに持って行こうという意図があったのかもしれません。
 テーマをとことん追い詰めるならば、おっしゃるように浩二と剛志の物語を描き切る必要があったと思います。たとえば東野圭吾の「手紙」のようにですね。
 ご指摘ありがとうございました。

2017-03-23 07:56

121.109.240.168

越まろ

99様、ごめんなさい。理解できません。

2017-03-23 07:57

121.109.240.168

越まろ

さかあ様、お読みいただきありがとうございます。

 おっしゃっていることをよく考えてみます。

2017-03-23 07:59

121.109.240.168

越まろ

味噌様、お読みいただきありがとうございます。
 いつも北日本応援くださっているとのこと、本当にありがとうございます。
 ところで、私の物覚えの悪さのせいかもしれませんけど「味噌」というHNには心当たりがないのですが、当時は別のHNだったのでしょうか。

さて、
>今作は確かに練り込み不足でしたね。主人公に感情移入できても、まったく共感できないんです。
なぜ共感できないのか。それは対極の位置にいる弟と香織に魅力がないからに尽きるでしょう。卑屈で甘ったれのうえ、犯罪の動機にも正当性が感じられないからです。

 味噌様はこういっておられますが、私にはちょっと異論があります。
 弟と香織に魅力を持たせなければ、良い小説にならないのでしょうか。
 私は、今作を考えるにあたり、どうしようもない厄介者の身内を持ったとき、その家族はどこまで肉親の愛情を持って接することができるだろうか、ということをテーマにプロットを構築しました。当然、弟は一片の同情もいだかせないようなキャラに設定しました。皆さんの言うように後半、ミステリーに力点が移っていたため、しっかりテーマを追い詰められなかったのですが、この設定でも十分読者の共感を得る物語を書くことができると思います。
 先もGM91さんの返信にちょっと触れましたが、最近読んだ本に東野圭吾の「手紙」があります。兄と弟の物語です。殺人で服役中の兄のために弟の人生がことあるごとに行く手を遮らる。一旦はそんな兄を見放したものの、最後には肉親の愛情がそれを乗り越える、というストーリーです。読みながら私は自作を思い出しました。「手紙」では兄が殺人を犯した理由が、貧しい家庭で大学に行く弟の金の工面、という何とも日本的でベタなものなのですが、味噌様はじめ、多くの人がきっとこういう設定を望んでいるわけで、それがベストセラーの一つの要件になるのだろうなと味噌様の感想を見て思いました。
 弟の失踪原因や借金の理由が軽すぎるという指摘も、弟のキャラ設定、しいてはテーマの根源に起因するするものと理解します。

>主人公がさほど葛藤せず、板挟み状態にもならないので読み応えが薄まっている。物語を追うあまり肝心の人物設定を練り込めなかったせいだと思います。

 このご指摘についてはまったくおっしゃる通りで、こんな弟でも兄として救いの手を差し伸べる必要があるのか、その葛藤こそが私が書こうとしたものだったはずで、自分ではミステリー要素を入れた中でそこそこ読み手に伝わるものができたと考えていました。甘かったです。
 貴重なご意見を、いろいろ改善案を含めてご提案いただき、感謝しております。ありがとうございました。
 

2017-03-23 09:34

121.109.240.168

味噌

古いHNはきむらです。その後も、相変わらず駄作ばかり書いています。越まろさんの活躍に奮起して北日本に応募してみましたが、結果は二年連続で一次落ちの体たらくでした^^
書きつつたまに覗き、懐かしい人の作品に感想を入れています。思いつきで投稿することもありますが、どうにも公募と同じで質の低さは変わらないようです。
 
疑問点に自分なりの回答をさせていただきましたが、どうかそれを真に受けないでください(^^)
ただ読み手としての回答なので客観的な意味で何らかの参考にして頂ければ幸いです。
 
>弟と香織に魅力を持たせなければ、良い小説にならないのでしょうか。
私は、今作を考えるにあたり、どうしようもない厄介者の身内を持ったとき、その家族はどこまで肉親の愛情を持って接することができるだろうか、ということをテーマにプロットを構築しました。当然、弟は一片の同情もいだかせないようなキャラに設定しました。皆さんの言うように後半、ミステリーに力点が移っていたため、しっかりテーマを追い詰められなかったのですが、この設定でも十分読者の共感を得る物語を書くことができると思います。
 
・現状でも越まろさんなら良い小説にできると思いますが、二人に魅力を持たせれば、より良い小説に変わる気がします。
今作、二人の詐欺の動機は単に目先の金のためです。ですが、もし二人にほんとうに魅力があるなら他人のための詐欺になったのではないでしょうか。人の命を救うためにやむなく犯罪に手を染めるのと、遊興費欲しさに詐欺をするのでは深みが違うはずです。
百歩譲ってどうしようもない厄介者だとしても、その原因となる父との確執に読み手の同情心を呼び起こす理があれば、また見方が変わったかもしれません。
 
そしてそれを主人公が知ったなら、どう心を動かし、どう折り合いをつけるでしょう(共感はここですね)。
振りかざした正義が正義とは限らないのが人間たる所以です。まして主人公自身も何らかの形で弟を追い込んでしまっています。枷を負う身なのです。
対極の者を能なしにしてしまうと着地にどのような選択があるのか。自ずと限られてしまうのではないでしょうか。選考委員も、そういった意味でいくら文章が上手くとも、ストーリー性があったとしても、キャラが平凡だと判断したような気がします。
 
主人公に人に言えない傷があり、弟たちに正当性があるなら、おそらくどう決着するのだろうと読み手は主人公の立場になって一緒に悩んだと思います。
今作、主人公は早い段階で見抜き、それほど悩まなかった。そのため読み手も短絡的なものだと決めつけて読み進めました。だから越まろさんに言いたかったのは、単純に悪を悪と決めつけたストーリーにしないでほしいことでした。
 
参考にならなくてすみません。
いつかまたお会いできる日を楽しみにしています。

2017-03-23 17:58

153.203.224.138

麻生

拝読しました。
この前半の部分、前に読んだ記憶がありますが、そのときは感想入れたでしょうか。私も一日前のことは覚えないことにしているので、よくわからないのですが、でも、東野圭吾の「手紙」のことはどなたかの感想で書いた気がします。御作だったのかな、と。
 読んでの感想は、私も同じでしたね。「母」の章はよかったと思いますが、『弟』はだいぶテンションが下がる感じです。
 他の方の感想を読んで、お二人のには特に共感しました。1つ目は、HIRさんの、刑事は不要で、警察抜きでいいのではないか、というもの。私も諸手を挙げて賛成です。本作が、特に『弟』部分がもたついた感じを受けるのですが、それは半田刑事が登場する場面がちっとも面白くないし、必要な気がしないからです。というか、面白くないのはいいとしても、物語の流れを阻害しているように思えるのは、私としては問題と思いました。つまり刑事は何をしているのか、よくわからない、という印象を受けるのです。しかも最後は兄と弟を逃がしてしまう。警察の大失態になるのじゃないでしょうか。弟は重要な参考人のはず、なのに二人だけにするものでしょうか。本当に逃げてしまったら、首が飛ぶのじゃないでしょうか。とにかく半田刑事は感心しませんでした。
 刑事を助演級にしないで、あくまで背景として、主体は家族としたほうが話の精度は凝縮されるように思うのです。
 なお、読んでいてわからなかったのが、女の件。すでに容疑者として目をつけられているのなら、わざわざ恋人を名乗って親に会いに行くのを待つこともなく、しかも車の尾行もなく、あっさり逮捕できるはずと思われますが、どうでしょうか。弟を騙すのが初めてのわけないでしょうし、他の証拠は当然あるはずなので。でないと、警視庁が動くわけもないですし。
 もちろん警察抜きでも、女は偽装したまま母親に会うことができますし、家を出たとたんに女の逮捕を目撃することも可能です。つまり女のことは簡単に背景として書いたとしても、というか、その方が衝撃的な気がします。
 そういうもたもた感がぬぐえませんでした。
 もう一つは、味噌さんのコメントです。対極の位置にいる弟と香織に魅力がない、という部分でしょうか。もっとも香織だけではなく、兄ももう少し魅力的であってほしいのですが、それは置いても香織の薄っぺらさは頂けません。しかも、弟も薄いです。弟の場合は、どうして薄いかといえば、ほとんど何もわからないからです。暗示というには、情報が少なくて、感情移入できるまでには至っていないのです。
 つまり、母の章の母は理解できます。特に、弟が最初に名乗ったというあたりは秀逸です。母の気持ち、わかります。活きた母です。しかし、弟は何もわからないので、判断しようがないのです。味噌さんの言われたように、「卑屈で甘ったれ」というのでは、主役級にはなれません。なぜ卑屈か、なぜ甘ったれか、それが納得できれば別ですが、何も知らないと同じなので、そこまで私の心は動きませんでした。つまり、あの半田刑事が邪魔していて、弟の出番が、実際のところが隠されてしまっているのです。事実を隠すことはありでしょうが、それも限度がありますし、弟の本当の感情を隠してしまうのはまずいと私は思います。具体的に何をして生きているのか、本当に子供はいないのか、その程度は明確にしてほしいのです。弟は書かれていない、というのが私の感想です。
 なお、補足ですが、兄が職業がら簡単に弟がどれほど騙されたか計算する部分、ここはとてもよかったです。兄のキャラの面目躍如という感じでした。弟にもそういう場面がほしかったです。
 それにしても、この枚数を書かれたこと、それは何といってもすごいです。書いてこそ何ぼというのが私の持論ですので、どんなに貶されても、書いたが勝ちと思っています。これからも頑張って下さい。それでは。辛口失礼しました。

2017-03-23 21:06

218.226.59.222

越まろ

 ポギ星人様、お読みいただきありがとうございました。

 まことに時宜をとらえた的確なご指摘をいただき、感動を覚えました。
昨日も、暇人の私は一日中国会中継を見ていまして、いよいよ、問題が昭恵夫人の100万円に軸足を移し、どんなバラエティー番組もかなわない視聴率を取れるコンテンツとなっていることを痛感しました。そもそもの発端は例のコンニャク問題でしょうか。
 朝日新聞の読者投稿時事川柳にこんなにがありました。
 籠池よ主も悪よと鴻池

 この川柳が頭を離れず、理事長がすぐに越後屋に見えてしまうのです。
 純文かエンタメか。目指すものが定まらない今の私がそのまま出たような作品でした。それを懇切丁寧に教えてくださった皆様に感謝です。
 ありがとうございました。

2017-03-24 07:58

121.109.240.168

越まろ

ドリーマー様、お久しぶりです。感想ありがとうございます。

 本当にみなさんのご意見を伺ってみないとわからないものですね。
 自分では、後半ミステリーに少し力点を置き過ぎたかなとは思っていたものの、テーマからそれることなくそこそこのものに仕上がっていると思っていました。それだから、懲りずに小改稿をしながら三つも公募に出しました。全く結果が出ないので、はじめてこれはずいぶん思い違いをしているのではないかと気づき、ここにアップしてみたという次第です。
 みなさんから後半部分のまずさを突かれ、自分の勝手さを思い知らされております。

 私は、ときどき亡くなったダモさん(宮ノ川顕さん)のブログを覗いていますが、ドリーマーさんへの返信を書いていて、たしか、ダモさんがドリーマーさんが書いた徳川慶喜の話を取り上げていたな、と思い出し、ちょっと苦労しましたがやっと見つけていま、読み直してきました。

>小説というのは、全ての出来事や会話、語句が、ある一点を示していなければならない。
一点とは、物語の核心である。
つまり骨の髄だ。骨格とは、物語を支える構造であり、また髄(核心)を内包するものである。
書き手は、もっともっと、主人公の気持ちの奥深くへ入っていかなければならない。(中略)そして、『それを中心に』、書くべきことの選択と集中を行わなければならない。
それができれば、自然と夾雑物は排除され、砂の一粒一粒が、骨を繋ぐ筋や軟骨となるだろう。

 今一度、この金言を噛みしめなければと思っています。なにせ、先見の明をもっていた人の言葉ですから。

 ありがとうございました。
 

2017-03-24 09:25

121.109.240.168

でしょ

ミステリーミステリーってみんなが口々に言ってるけどそれがどの部分についてなのかあたしにはわからないんですけど、ミステリーって例えば誰かが死んで誰が殺したんだよって疑いをはぐらかしまくるそれを面白いといいたがるみたいな軽くディスりも交えながらの極端発言しておきますけどそれにしても言葉選びとかもう少し気を遣って欲しいものですよね意味とか全然どうでもいいですつまりすわりの良し悪しとかハマリ云々とかってざっくばらんな感覚ばっかにおいてつまりコレをミステリー要素とかってしたり顔(想像の域を出ない想像に過ぎませんから腹立てないこと)でやりとりするそんなマヌケさの行ったり来たりこそに所詮本気度裏切る書き手読み手の何らかが隠されてるんじゃないですか? なんてまた性格悪いこと言ってるあたしは一応全部読ませていただいての発言ですから軽々しくあしらわれる覚えはありませんので書き手としての心掛けをもって嫌いになってみてほしいですあたしは多分あなたの性格こそがつまんないんだと断言してしまうんです何せつまらないですよ八十何枚? まいっか。
スジもキャラも前半も後半も加筆も修正も公募三回とか別にどうでもいいです所詮つまんないのはあなたっていう欲求のあり方だってあたしは思ってるんですねだからここをこうしたほうがいいとかもっとこうするべきとか散々言われてるみたいですけどどうせ手を変え品を変えその割りに落ち着くとこは案外似通って所詮つまんないってオチになるのに決まってらってあたしは思うんです。
あたしはきさとさんの意見に当たり前みたいに同意、っていうかそれに反発覚える時点であなたは何に向かって書いてるのかポキさんじゃないけどあたしはそれとは違う意味においてあなたの方向音痴な書きたがり精神みたいなものにダメ印三十丸くれちゃいます煮詰めてしょっぱくなるだけなら捨てちまえやり直しっていうのがこの度のあなたの作品どころか書きたがるあなたそのものに対して下す結論であって興味の惹かれなさっていう告白でさえありますねならばなぜこんな面倒な便りを寄こしているのかと言えば、気の毒、に過ぎる有り様にこそムクムクと興味を誘われてしまったからに違いないんですこの作品は作為こそが痛々しくて楽しめない素人感てんこもりなんですよかわいそうにってあたしは。
キャラクターによる自動書記を見下すなら、アタマで考えてプロットを最大限に生かしたいなら自分で撒いたネタやら設定やら最大限に活かせって思うよね面白がれって思うよねつまんないんだよ威張り散らすわりには使いこなし方ショボいんだよそれはあなたってアタマが考え出したことって自分で白状してるんだから腹立てるのとか勘弁してよねお門違いってそういうことじゃんか? 序盤の母ちゃんのジメジメ設定どうしたの? 何か目的あったんじゃないの? ただムードで独りぼっち母ちゃんに仕立てたかっただけ? 雰囲気勝負? 二十年ぶりも何もありゃしないさっさと帰りたがる馬鹿息子にむしゃぶりつくような狂態あたしなら思いつかずにいられないけどタバコ臭いとか冷静に名探偵振り発揮とかってハラ痛い有り様じゃんか何せ六百万だよなめんなっつうのちょっとは抱きついたって泣きついたって文句言わせないよ誰が産んだと思ってんの育てたと思ってんのおまえが何思おうがあたしはジメジメと愛情育んだんだよ六百万かあちゃんだっつうのそのオンナなんなのナメんなふざけんなってたたきに裸足で突撃くらい厭わないっつうのオンナもオンナじゃんかさっさとタバコぷかぷかさせるなら「っていうかヤバくない? あんたたちの母さんヤバくない? マジ引くっつうのあたし食われるかと思ったじゃんおっかねえなー思いつめるってさあたしああいうのマジ勘弁わかるでしょ? 嗤いこらえんの拷問級でしょそれで六百万だってハラ痛いっつうの」ってぷかぷかってさってふざけてごめんねっていうか全然ふざけてんじゃなくて、あなたは人間なんて所詮そんな性質さえ当たり前にもってんじゃんってこと創作っていう理由やら意志やらってどうやらキレイゴトっぽい見栄ばっかに包んでポイしてる感がなんだかひどいんですよつまんないんですよそれってつまり感度の問題感性の問題向き不向きってことでもいいかもって個人的にはね。言いすぎかもかよだからって純だのエンタメだの言ってんのあなただからね。

”母一人が暮らす家はどこか寒々しく、どうしても足が遠のいてしまうのであった。”

勝手にコピペごめんだよねだってあまりにも”ザ・ごはん”なんだもんさってこれってほんと適当過ぎみたいなコピペポイントだから油断しないほうがいいと思うよあなたはこういう表現を小説的と思いたいのかなってあたしはとことん疑わしくてさ甘えてんなーってうらやましくてさ表現ってこれで許されんのかそっかそっかってつまり甚だ可笑しくて物足りなくて。
言ってること意味わかんないなら別にいいです。
でも言っとくよ、あなたの筆は軽い。

”いつものことだが母は心の内を見せまいとするかのように固く唇を引き結んでいた。”

”浩二が線香をあげていると、台所からやってきた母が、浩二の後ろに座り、「明日はお花を買ってこなきゃ」と独りごちた。”

”浩二は自分の言った言葉が、無理して煙草をやめなくていいよ、という意味で伝わっていることに気付き、可笑しかった。”

ランダムにいやったらしコピぺですもう遠慮なしですごめんなさいねっていいながらこのコピペに意味も意志も共通する理由も根拠もなんにもないですただただ退屈とかヘタクソとか軽いなあとかごはんだなあとかってそんなおもいつきばっかくれる感じばっかは似通ってるかもねとかそんな感じで適当コピペです結構残酷。


あなたはあなたのためばっかに書いてる。
それでいいんだけどよくないもんばっかがはみ出してるふうにあたしには見えてつまり、ちっさいんですよあなたの書きっぷりは。ショボい。
真面目でショボいっていうのははっきりいって洒落にならないと思うんです多分かなり先輩だと思うんですけど生意気いっときますよそんなの関係ないと思うんだし。
求めて望んでしがみついて、結果窮屈になるならつまんなくなるなら多分そこまでなんだろなってあたし自身にさえ思いますよしかもあなたにはそんな気配がかなり濃厚だしそれをちゃんと恐れる覚悟があるのか、あたしはあなたの作品より感想返しの文章を読んでいてとても疑わしく思ったんですあなた自身こそを。
あなたは上手くなれない。
現時点であたしはそう思うんですあなたの発想には感性には表現力には魅力が無いですそれはあなたばっかが理由だからですつまりつまらない。


さてどうしよう。
おつかれさまでした。

2017-03-24 23:04

125.196.156.54

なべ

はじめまして越まろ様。
拝読しました。

率直に面白かったです。地力を感じました。
登場人物等の描写も丁寧で、彼ら一人一人の人物像が容易に想像できました。

公募での結果が芳しくないということで自分なりに考えた理由を挙げさせてもらいます。

主人公浩二の行動が現実的過ぎるのではないでしょうか。

僕が浩二の立場であれば、間違いなく浩二のように考え、浩二のように行動します。
母親の愚直な愛情に歯痒い思いをしながら、弟にはハッキリとした態度を取れず、家族から貴重なお金と愛情を奪い去ろうとした女の裁きを警察にいわれるまま、全てを任せてしまう。
少し情けないですが、妻子あるサラリーマンなら当然の選択です。誰もがそうすると思います。

ただし、先ほど話に出てきた東野圭吾ならそうは描きません。必ず誰もが考える選択の真逆、若しくは斜め上を描くと思います。それがプロ作家というものではないのでしょうか。

越まろ様は登場人物を練り込むあまり、話の展開まで現実に縛られてしまっているように感じられました。
二人を半田に引き渡す前にもっと浩二はもっとやるべきことがあったのではないのでしょうか。それが結果的に裏目に出て、二人が逃げてしまったり、兄弟の溝が決定的なものになってしまったり、母親を更に傷つけてしまうことになったとしてもです。

小説を描くにあたってリアリティーは必要ですがリアルである必要はないというのが僕の持論です。読者の感情をもっと揺さぶることを心掛けてみてはどうでしょうか。

以上です。少し辛口でしたが、久しぶりに鍛練場を覗き、越まろ様の作品を読ませて頂き大変刺激を受けました。

僕も今年は数年ぶりに作品を仕上げて公募に挑戦してみたいと思います。携帯から乱筆失礼しました。
お互いに頑張りましょう。

2017-03-24 23:35

182.250.241.18

瀬上

越まろさま
読ませていただきました。

「早々と」で始まる第二段落、すうっと読めて目に浮かびますのに、読み手の第一印象になる冒頭の段落、もう一工夫というか、なんとなくぎこちなくリズムもあまりよくない気がしました。

 山茶花、夫婦の三男坊への愛の象徴ですよね、残すなら第二章でなんらかの言及が欲しいです。

 長兄について。必要な存在なのかな。主人公と剛志の二人兄弟のほうが描きやすいように感じました。威厳のある長兄がにらみを利かすためには、基本母と同居しているのに遠方に転勤とかいう設定のほうがいいかもしれないです。

 剛志の造形。ほんとに20年間音信不通なのなら、逆に気骨がありますよね。切羽詰まって母に泣きついたり、まして騙したりしないと思う。ダメな奴として描くなら、父に内緒で母は援助をつづけ、父亡きあと、大きく無心してきた息子に、夫という防波堤を失った母がむしりとられそうになり、警察やら兄やらが気づくみたいなほうが説得力があるかもしれません。

 妊娠は狂言だったという流れ、面白いです。警察がらみではなく、母の直感だけで気づく方が感動的ではないでしょうか。

 着想のよさなのでしょう。わたしも息子がありますので、泣きつかれたら、なんとしてでも助けてやりたくなる母心、共感できます。そう設定するのならこうしたらとか、いろいろ妄想してしまいました。北日本、おととしパスして、去年むりやり絞り出したのですが、またぞろ二次どまりで、なんかなあと書けなくなっておりましたが、越まろさまの前向きなご姿勢に勇気をいただき、一歩踏み出せそうな気がいたします。

 

 

2017-03-25 01:05

36.2.182.79

鈴原

こんにちは。拝読しました。
前半の「母」はすばらしいなと思いました。
作者様は読ませる力量があると思うし、この部分では参考にしたいなあと思いました。

後半の「弟」はストーリーに工夫を凝らす作者様の意図が伺えたのですが、だんだんテンションが下がってゆくし、とても残念な印象があります。
とても良くないと思ったのは後半中心のキャラクターであるはずの「剛志」に魅力がないことで、
ストーリー全体が死んじゃった感じがしました。
(前半の「母」のキャラクターは少しは魅力があるのに)

全体は作のレベルが高いのですが、「この作品を選ぼう」というほどの何かが足りないように思いました。定番のストーリーというか。

今回、前の感想を読んだのですが、きさと様のアドバイスが御作の欠けた点をよく指摘しているように思いました。

2017-03-25 09:59

49.253.101.235

越まろ

味噌様、再訪ありがとうございます。

 そうですか、木村さんでしたか。懐かしいです。
 木村さんの作品で、クリスマスのサンタの話が印象に残っていたんですけど、殆ど忘れていまして、ひょっとしてどこかに残っていないかと探しましたら出てきました。(私はごはんで出会った印象的な作品を、感想のやり取りを含め、保存しているんです)
「イブの奇跡」でしたね。読み直してみますと、木村さんが今作にくれた感想の意味がよくわかります。

 さて、今作で私が書こうとしたキャラ設定では、一定程度上手く書いても、読者の共感を生むまでのもににはならない、それでは、どうすれば、という点に木村さんはじめ、大方の皆さんのアドバイスは集中しているわけですが、私も頑固者で、一定程度には程遠い今作をキャラ設定を変えずにいかにすれば、なんちゃら賞の最終に残れるものにもっていけるか、そんなことをまだ考えています。二十年も経って現れたはぐれものの弟、見るからに世の中に流されてただ生きて来ただけの男、見限りたい、でも、兄として、それではあまりに。そんな葛藤です。弟のちょっとした言動や、過去の苦労話に活路を見出し、気持ちが大きく動かされる、そういう方法もあったのでしょうが、それも排除して今回は書いてみました。ミステリー要素を織り込んだためテーマのつきつめが甘くなってしまったことはよくわかりましたので、もう一度分解してプロットからやり直してみようと思っています。
 折角いろいろアドバイスをいただきながら、こんなご返事で申し訳ありません。木村さんのご健闘もお祈りします。

2017-03-25 11:04

121.109.240.168

跳ね鳥

こんにちは、拝読いたしました。

越まろさんには約七年前に大学生の文芸部に所属していた時代に、鍛錬場で一度お世話になりましたので、懐かしくお答えかけさせて頂きます。(おそらくご記憶ではないと存じますが、薬用植物研究室の短編作品で、アドバイスの後、部誌に載せました)一言のみになりますが、感想を残させて頂きます。失礼いたします。

大変読みやすく、丹念に刈り取られた見事な庭のような文章で風格がありました。ただ、ストーリーの起伏やドラマ性に少しばかり物足りないものを感じます。作風で意図なさっているものと思いますが、若干予定調和的に見える可能性もあります。


読ませて頂きありがとうございます。勉強になります。良い読書時間をありがとうございました。読めて良かったです。

2017-03-25 15:15

114.165.246.50

越まろ

麻生様、お読みいただきありがとうございました。

 前作もお読みくだっさったようですが、「手紙」のことに言及されていたら覚えているはずですので、多分感想はいただいていないと思います。

 皆さんから、弟の章の不出来を指摘され、自分ではこれほどとは思っていなかっただけに勉強になりました。
 ミステリー要素を絡ませたために必然的に半田刑事のシーンを多くしたのですが、結構気に入って書いていました。「主体は家族」、もちろん忘れていたわけじゃないのですが、しらずしらずに力点が他の方に移り、本題の方は薄くなっていたようです。
 弟については、世の中に流されていい加減な生き方をしてきた男と、キャラ設定しましたので、仕事の方も長続きせず、いまは運転助手みたいなもので何とか生活しています。女に子供が出来たというのももちろん嘘で、母から金を引き出すために香織というとんでもない女の口車に乗り、こんな芝居に加担しました。ほんと、どうしようもない男です。こんな一片の同情にも値しない男を弟キャラに設定したことで、物語に共感を覚えることができない、というのが、味噌さん、麻生さんはじめ多くの人の感想だと思います。
 でも、上の味噌さんの返信に書きましたように、この弟キャラのままで書きようがあるのではないかと、皆様の感想をいただいたうえでも、なお思っています。兄が弟の借金の計算を頭でするところを評価していただき嬉しいです。
ありがとうございました。
 麻生さんの作品「壊れる」を読ませていただきました。よかったですよ。感想を入れてあります。
  

2017-03-26 09:27

121.109.240.168

越まろ

でしょ様

 まあまあ、すごいですね。
 私がきさとさんやさかあさんの言っていることをさっぱり理解していないところから具体的にわからせてやろうとこのように百万言を弄して面罵に及んだのでしょうが作品のつまらなさについては百万言だろうが千万言だろうが聞く耳を持ちますがこと人格攻撃に至っては残念ながらまともに対応する気が失せます。ごめんなさい。

2017-03-26 09:34

121.109.240.168

でしょ

人格攻撃? 何言ってんのしかもあたしみたいの相手に何貧弱なこと言ってんのこっちはもっと下種なこと散々言われてるっつうのどんな鼻の高さなんだかアホらしくて笑っちゃうじゃんかあたしの言ってること満更でもないことになっちゃうらしくてすまんなって謝ってあげようか? 言葉笠に着てんのどっちだよ笑わせんなっつうの。
書いてるのあんたでしょ? この作品がつまんないのは書いてるあんたのせいだってあたしは言ってるの何かヘンなこと言ってる? まさかのコピペ犯とか告白するつもりなのかなおっかないなああんたが言ってることってそういうことだよ逃げ足ばっか鍛えてるみたいじゃんかウケる。

人格攻撃? 笑わせんなっつうの。





っていうか、あなたのとこいじめちゃったからこいつはイカンと思ってあたしもそろそろって慌ててあげたんだよつまらん動機をさんきゅうでしたおかげであたしこそ片っ端から評判悪いですだからってそれがどうしたも時には流儀かもですからやっぱあんたってつまんないと思うよおつかれでした。

2017-03-26 10:48

125.198.111.218

越まろ

なべ様、お読みいただきありがとうございました。

 とても興味深いご指摘でした。どこにでもいるような主人公が、普通に悩み、葛藤し、決断する。そんな過程を物語にしたのですが、それでは小説として面白くない。リアリティは必要だがリアルである必要はない、ですか。話の展開=主人公の行動になると思いますが、やはり、どこかで、予定調和ではない思い切った行動を起こさせることが、読者を惹き込む力になり、それがはまれば、おおきなカタルシスをを生む。たしかにそうですね。思い返せば、何度も同じことを言われている気がします。もう一度頭に叩き込んでおきます。
ありがとうございます。
 なべさんも頑張ってください。

2017-03-26 15:40

121.109.240.168

越まろ

瀬上様、お読みいただきありがとうございます。

 こうして知っている方々と久々に交流できることはこの鍛錬場ならではです。

 弟の造形について、「ほんとに20年間音信不通なのなら、逆に気骨がありますよね」と言われ、はっとしました。まったくそんな考えは及びもしなかったです。作の中では父への反発心としたのですが、それだけの反発心があれば、ひょっとしたら、自分の事業でも起こして成功していたかもしれませんね。うん、これは新しい気付きです。ありがとうございます。
 母心については、特別なものではなく、一般によく言われていることですし、わが家内を見ていても息子がちゃらんぽらんやっているときにずいぶん甘いなと思ったことがよくありましたので、そう苦労せずに表現できました。
 この母心をさらに使って、二章でも瀬上さんのおっしゃるような展開、面白そうです。
 こんな不出来な作品でしたが、瀬上さんのやる気を喚起するのに少しでもお役に立てたのなら嬉しいです。
 頑張りましょう。

2017-03-26 16:03

121.109.240.168

越まろ

 鈴原様、お読みいただきありがとうございました。

 後半の章、おっしゃる通り、ストーリーに工夫を凝らしたんですが空回りしたようです。
問題は弟のキャラ設定なんですが、鈴原さんもキャラに魅力が必要だという派なのですね。多くの方にそう言われ、私の考えを開陳して抗弁してきたのですが、なにか、もう土俵際まで押し込まれているような気分です。これにより「ストーリー全体が死んじゃった」とダメを押されちゃいよいよ考えを改めなければならないようです。

 忌憚のないご意見ありがとうございました。

2017-03-27 10:21

121.109.240.168

越まろ

跳ね鳥様、お久しぶりです。

 御作うっすらと覚えていますが、そうですか、少しはお役に立てたようでうれしいです。

 ストーリーの起伏やドラマ性が足りないというご指摘は、やっぱり主人公の行動力に起因するものだと理解しています。
他の方のご指摘にもありましたが、ごく普通の主人公に普通の行動をとらせたためにリアルだけど、小説として面白みのないものになったのでしょう。私の作風がこんふうに固まってしまっているようで、これを打破するのはなかなか難しいようです。
 その点、跳ね鳥さんはこれからです。御作の感想への返信でちょっと見ましたけど、文学賞へも挑戦しているようですね。ここの常連さんで名だたる文学賞を受賞して注目されている方もいます。跳ね鳥さんも是非頑張ってください。

2017-03-27 10:23

121.109.240.168

ちくわ

こんにちは。
作品読ませていただきました。

第一章はうまく行っています。
純文学の賞ならば実に申し分のない出来なんじゃなかろうか。
これだけでほとんど全ての要素を加味していると思います。
さすがじゃなって思いました。

ただ、どなたも言われてるように二章を足すと正直に言ってあきまへん。
それどころかあれほど良かった一章をも浸食しているカタチにすらなっています。
無い方がいいす。

んじゃなんでそうなのかというとじゃね、一章はやや暗い内省的な主人公の一人称が効果を及ぼしてるのに対し、二章はそれでは収まらなくなってしまってるんじゃと思うのじゃな。
サスペンスから色々と動きのある二章は三人称でなければ対応できない造りになってるように感じました。
登場人物の多くが彼らの背景無しにはペラすぎるんじゃな。
あまりにも分かりやすすぎてキャラが薄い。というか仕事していませんよね、せっかく出てきたのに。
これって一章は純文、二章はエンタメなんじゃなかろうか。
そうしてエンタメに振るならばこの作品は枚数も足りなすぎならば、読者を楽しませる芸も薄すぎと言わざるを得ない。一直線で棒のようじゃ。
しかもボキ星人さんが言われていますが(ちくわはかの人のファンなんじゃよ)、視点がブレ過ぎてる。
二兎を追っていると言ってもいいのかな。
実は半田は主人公にはそう言ったけれど、実は剛志をメインに追っていた。とか、なんだかんだあったんだけど香織はまじで妊娠してて、純愛のために組織を抜けるために金が要るのだった。とか、剛志はすでにニューハーフになってて家を出たのも兄への思慕に耐えられなかったからだとかね(いや、これは冗談なんだけど、それくらい振り切る覚悟が無きゃだめなんじゃなかろうかってことじゃ)、要はもうちょっと捻らないとつまんないんじゃなかろうかね。

ただ、いろいろ試してみる価値はあります。(笑)

今回はアドバイスしてくれる人の意見がすごくタメになりました。
書くことが無くなるくらいにじゃね。
ここはいいとこじゃなって思いましたよ。

2017-03-27 23:15

125.202.7.88

越まろ

ちくわ様、お読みいただきありがとうございます。

 十人が十人とも二章の不出来を言う本作、いったい私は何度も何を推敲していたのだろうと考え込んでしまいます。こんなはずでは、と思いながら三度も公募に出したのがいまさらながら恥ずかしい。

 二章の構想を頭に浮かべたとき、現れて来る弟は母や兄の期待を裏切るどうしようもない男で、そんな弟にどこまで踏み込むべきなのか、自分の家庭や世間体、経済的打算を考えて悩む主人公、こんな画が浮かんだのですが、ここまでは決して間違っていなかったはずです。それが、どこで途を間違えたのか、しゃしゃり出て来た半田刑事を呪いたい気分です。
 少しエンタメ要素を加えて、重い話を読みやすくとは考えましたが、あくまで一章の流れを受け継ぐものなので、ちくわさんの魅力的な提案を受け入れるわけにもいかず、あくまで本来の線で行くしかないわけですが、もう、ここは、一度すっかりあきらめて、新しいものに頭を向けよ、ということですよね。

 本当に久しぶりの鍛錬場でしたが、こうやって感想のやりとりは鍛錬になりますし、多分、加わらなくても見ているだけでためになる、というのがここのいいところですね。
 ありがとうございました。

2017-03-28 13:44

121.109.240.168

内田花

こんばんは。お久しぶりです。

作品、読ませていただきました。
「1、母」は、さすがですね。主人公の暗い心情と口数の少ない母親のやり取りが、破綻のない文章で描かれていて、最後が「ありがとう」ですもんね。
しぐさや表情がこまやかに書かれているし、最終に残られるのも当然かなと思います。
すばらしい!

しかし、越まろさんともあろうお方が、これほど明瞭に作を壊してしまわれたことにちょっとびっくりしています。
1章と2章は、読み心地がまったく別物ですね。
ちくわさんも言うてでしたが、純文とエンタメやくらいに感じました。
1章を生かすのなら、こんなにどんでん返しのどんでん返し(?)をする必要なく、刑事もいらんし、ただ弟がどういう生き方をして来たかで、越まろさんなら十分引っ張れると思いましたけど。

2章のどんでん返しは、いろいろと考えられたのだろうなと思いました。
でも、浩二の視点ですべてに「解説」がつけられている感じがして、読み手の目で事の成り行きが理解しにくいのです。
いや、わかりやすいのですが……、なんていうかキャラや背景があってストーリーが進んでいるんではなく、悪い女がいて刑事が現れてこうなったーーみたいな唐突感があるというか。ページ数の加減ですかね? なんかキャラが誰も薄い感じで、リアル感がない気がしましたが。
それにしても弟の描き方は本当に難しいですね。善いやつか悪いやつか、あほたれかただの根性なしか・・・。過去語りでしか弟を見せられないので、詐欺師の女を連れてくるところから現在を見せられると、なかなか好感度を上げることができませんでした。いっそ女と共謀して詐欺をしてて、立ち直るために自首するくらいでも良かったかもですね。

まあ、いつも弟というのは気がかりなヤツですけど(苦笑)

久しぶりに読ませていただいたので、思うが侭に書いてしまいました。すみません。言いたい放題で、失礼しました!
しかし本当に筆力の確かな作というのは、するすると読み終えるもんだなと改めて思いました。
私もずっと書いてないのですが、勉強させていただきました。
ありがとうございました。また、読ませていただきたいです。では。

2017-03-30 02:45

182.168.88.21

越まろ

 内田 花様、お久しぶりです。
 お読みいただきありがとうございます。

  二章についてはもう皆様から同じことを言われ、最初の内は少し頑張って抗弁していたものの、もう刀尽き矢折れ状態です。
 小説全体の流れを壊していることは理解しましたが、二章単独で見て面白かったという読者が少しはいてくれるかと期待していたのですが、これもなく、エンタメとしてもダメ出しされたようです。
もともと全くのエンタメを書く能力はなく、純文的なテーマ小説の中に小さな謎を含ませて読み手を引っ張ることに活路を求める作風ですので、中央の公募なんかでは相手にされないようです。

 お口ぶりからみますと、花さんも弟がいらっしゃるようですね。この小説も、内藤やす子の歌「弟よ」に出てくる弟のキャラをイメージしました。私も弟がいるんですが、幸い私よりはるかにまともな生き方をしているようです。作中小学生の時、弟にケガさせてしまうシーンがありますが、これは実体験で、いまだに兄貴としての不甲斐なさを引きづっています。とはいいましても、いつかは小説の中にこれを利用してやろうという抜け目なさも持ち合わせておりまして、北日本のときは、30枚の制約のせいで入れることができませんでしたが、今回それを果たすことができ、二章への伏線としても機能していると自分では思っています。
 花さんは、しばらく書いていないご様子ですが、私も最近は年に一作、北日本がやっと、という体たらくです。花さんも是非そこからまた始めてはいかがでしょう。
 ありがとうございました。

2017-03-30 10:17

121.109.240.168

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