作家でごはん!鍛練場

『女はきっとクレオパトラのように』

日乃万里永著

久しぶりの投稿になります。

一月の終わりに引っ越しをしたもので、最近までバタバタと落ち着かず、この頃ようやく執筆の時間がとれるようになりました。

っとどうでもよい話をすみません。

以前このサイトでアップしたものを、ご意見をもとに書き直してみました。
ご意見ご感想など、どうぞよろしくお願いいたします。

――はあ……。
 真羽が深い溜息を吐くと、向かいの席で弁当を食べる寧々が、
「どうしたの? 真羽。嫌いな食べ物でも入ってた?」
 ミートボールを口に運んだ。
「ううん。違う」
 真羽は力なく首を横に振った。
 寧々は真羽と背格好が似ており、ショートヘアが良く似合う。真羽は高校生になっても、中学の時と変わらずに長い髪を一つに結んでいるが、大人っぽい雰囲気の彼女を羨ましく思う。もし自分も、彼女のようにショートにしたら、ただでさえ童顔なのに更に子どもっぽく見られそうで出来ない。
「具合でも悪いの?」
 寧々が心配そうに顔を覗き込む。
「いや、そういうわけじゃなくて」
 真羽はこの際彼女に、相談に乗ってもらおうと思った。

 幼馴染の直人と付き合うようになって二か月ほど過ぎた――。
 先日、駅前に新しく出来たメロンパン専門店で、香ばしく甘い香りに待ちきれない思いで行列に並んでいると直人が、
「そういえば友哉、彼女出来たって」
 ふいに、思い出したかのように言った。だが真羽の顔から一瞬笑顔が消えたことを、彼はきっと見逃さなかった。
「気になる?」
「え?」
「いや、なんとなく」
「良かったじゃん、友哉」
「同級生だってさ」
「そっか。なんか浮かれてる顔が浮かぶね」
「今度、グループデートしようなんて言ってたよ」
「へえー。いいね」
 真羽は、素直に喜べない自分がいることに、心の端がずきずきと痛んだ。
 直人と友哉とは、幼稚園が同じだった。
 母親同士が仲良くなったのをきっかけに、母親に連れられて互いの家を行き来するようになり、顔を合わせるごとに親しくなっていった。
 そして中学卒業を迎える頃、思いがけず直人から告白されたのだ。高校も離れ離れになり、もう今まで以上に会えなくなると思うと、真羽は直人とこのまま別れたくなくて、ずっと一緒にいたいと思い、告白を受け入れた。
 だが、直人と付き合うようになったというのに、どうしても時折、彼の横に友哉の姿を探してしまうのだ。
 昔から直人の横にはいつも友哉がいて、それが当たり前の風景だったから、いないことが不自然に思えたりする。
 直人と街を歩いていても、友哉が関心を示しそうな物を見ると、友哉だったらどんなリアクションをするだろうとつい思ってしまう。
 始めのうちは、条件反射だろうと思っていたが、しだいに違うことに気付いた。
 いつしか、直人にない部分を、そこにいない友哉に求めようとしていたのだ。
 友哉に彼女が出来たことを素直に喜べないのは、直人がいながらも、友哉のことを心のどこかで求めているからだ。
 友哉といるといつも笑ってばかりいた。時間を忘れるほど楽しいひと時を過ごせたのは、彼だけだった。
――最低だ、私。
 真羽は自分が自分で嫌になった。
 きっと勘のいい直人には、真羽の気持ちなど、とうにお見通しなのではないかと思った。
 メロンパンは、美味しいはずなのに、味を楽しむ余裕もなかった――。
 
「そっかあ」
 寧々は箸を置き、腕組みをして椅子にもたれかかった。
 軽蔑されてしかるべきなのに、彼女はそういった態度ではなく、こんな自分のために真剣に答えを出そうとしてくれている。
「ほんと酷いよね……私」
 項垂れると、背後で毒々しい声が聞こえた。
「わかってんじゃん」
「え?」
 振り返ると、椅子に大きくのけ反り、人を思い切り見下したような眼差しを向けるクラスメイトがいた。
「成見っ」
 彼は入学当初から、なにかと悪態ばかりついてくるヤツで、もうすでに犬猿の仲であった。しかもよりによって真後ろの席だ。
「あんたには関係ないでしょ。ってか、聞いてたの?」
「あんなでかい声でしゃべってたら、聞きたくなくても聞こえるんだよ」
「そんなに大きい声じゃなかったでしょ。どうせ成見が聞き耳たててたんじゃない、面白がって」
「面白がってたわけじゃねえけど。あ、いや、面白かったな。ある意味で」
「なによ」
「なんか、かわいそーだなーと思って」
「かわいそうって、なによ」
「おまえそんなんじゃ、一生結婚なんて出来ないよな」
「余計なお世話だよっ」
 真羽は興奮気味に、ふんっと鼻息荒く前に向き直った。
向かいで呆れ顔の寧々は、
「仲良いね~」
 紙パックのいちごミルクに手を伸ばし、一口飲むと、
「だけどさ、成見の言うことも間違いじゃないかもね」
 優しい言葉を掛けてくれるどころか、追い打ちを掛けて来た。
「え? 寧々ちゃんまでそういうの? ま、まあ自分でもわかってるけど」
 彼女は、言うことは言う。
「真羽はさ、誰と付き合っても、その人にない部分をほかの人に求めちゃうんじゃないの? そうやっていつまでも、一人じゃ満たされないっていうか」
「え? そんなつもりないんだけど……」
 そう言いながら真羽は、段々自信がなくなって来た。


 夏休みを過ぎると、早速、文化祭の準備に取り掛かることになった。
 真羽のクラスは喫茶店をやることになり、それだけではつまらないので、ハロウィンの時期ということもあり、“コスプレ喫茶”になった。
 クラスの話し合いで、当日までの準備や役割分担など、細かい内容を取り決める中、真羽は頭の中で、
――コスプレ衣装かあ、後で寧々ちゃんと、なんか適当に買いに行かなきゃ。
 などと考えていると、後ろの席の成見が小声で呟いた。
「おまえさ、コスプレなににすんの?」
 振り向くと、なんだかニヤニヤしている。
「なによ、また変なこと考えてるんでしょ」
「またってなんだよ」
「だってどうせ、ろくでもないことしか考えてないんでしょ」
「ろくでもないってなー。ま、そうかもしんないけど」
 真羽が呆れて体の向きを変えようすると、
「ちょっと待てよ」
 成見が呼び止める。
「なによ」
「おまえにぴったりのコスプレがあるんだよ」
「は?」
 どうせしょうもないものに決まっている。真羽が次の言葉を期待せず待っていると、
「クレオパトラだよ」 
 きっとまたどうしょうもないことを言うかと思ったら、まさかの発言に真羽は一瞬戸惑った。だが成見のことだ、きっと裏があるに違いないと真羽は眉を顰め、警戒した。
「からかってんの?」
成見は黙って首を振った。
「違うよ。別に褒めたわけじゃねえし」
「え? だってクレオパトラっていったら」
「あ、世界三代美女ってやつ? それって違うんじゃないかって最近言われてるよ。単に男の扱いが上手かったんじゃないかってさ。なんたって二人の男を手玉に取ったんだからな」
 そのことは、真羽も最近のテレビなどを観てなんとなく知っていた。世に知れ渡っている事柄が必ずしも真実ではないということなど、数多くあるという。
 だが通常クレオパトラと言えば、誰でも褒め言葉と受け取るだろう。
――やっぱり、疑っといて正解だった。
 そう思うが、成見が言った、“二人の男を……。”という点はおおいに引っ掛かる。
「……そういうこと」
「っそ」
「だけど、別に私、手玉になんか取ってないでしょ」
「そっか? また別のやつになにか言われたって言ってなかったか?」
「また、話聞いてたの? 成見っ」
 少し大きめの声が出てしまい、何人かが振り向く。
 以前、寧々に話していたことをまた聞かれていたのだ。これからはもっと警戒しなければいけないとあらためて思う。
 真羽は声を潜めた。
「あんた、どんだけ人の話を盗み聞きしてんのよ」
「だから、聞きたくなくても聞こえてくるんだよ」
「嘘ばっかり、また聞き耳立ててたくせに」
 成見は答えずニヤニヤしている。
 だが、本当に手玉に取っているわけではないが、成見の言う、“別のやつになにか言われた”ことはあった――。

 うだるほどの暑さが続いた夏休み後半、夕方リビングで本を読みながら涼んでいると、玄関の呼び鈴が鳴った。
 応対に出た母が、しばらくして一人の客を招いた。
「友哉!」
 彼は、「よう、久しぶりだな」と返し、「なんか、ちょっと懐かしいな」と幼い頃によく訪れていたリビングを見渡した。 
「あまり、変わってないでしょ」
 昔、友哉が訪ねて来ていた頃と、家具の配置などはほとんど変わっていなかった。家電が少し新しくなったのと、カーテンの柄が変わったくらいだ。
 母が冷たい飲み物を運んで来ながら、
「一番変わったのは、友くんね。三人の中で一番小さかったのに、こんなに大きくなっちゃって」
 友哉を見上げ、「まあ、座って頂戴。ゆっくりしていってね」と声を掛けた。
「あ、すぐに失礼しますから」
 彼は、テーブルの前に座り、持参して来た手土産を母に手渡した。
「これ、母からの土産物です」
「あら、わざわざありがとう」
 母は袋の表を見て、
「今年は、東北のほうへ出掛けたの?」
 尋ねると友哉は、
「はい、親戚の家を訪ねがてら、観光を……」
 と答え、その時に訪れた名所や、その時々のエピソードなど語り出した。
 時折ユーモアを交えるので、母がその度に楽し気に笑った。
 母は昔から友哉びいきだ――。
 今も、直人が訪ねて来た時より、若干声の調子が高い。
 それにしても、友哉の母は今でもよく訪ねて来るが、友哉が来ることなど珍しい。
 彼の話が一区切りついたところで、
「ねえ、友哉がわざわざ訪ねて来てくれるなんて、珍しいね」
 率直に問うと、
「ああ、暇だったから。それに母さん夏バテでまいってたし」
「そうなんだ」
 真羽はその言葉通り受け取ったが、久しぶりに顔が見られて素直に嬉しかった。
 電話のベルが鳴り、母が、「ちょっと失礼するわね」と席を外すと、友哉は麦茶を口に含み、こちらを向いた。
「この間、直人に会ったよ」
「あ、そうなんだ」
「のろけられてさー。まいったよ」
 真羽は苦笑いするしかなかった。
「そんなこと言って、友哉だって彼女、出来たんでしょ」
「ああ、まあ……。でも別れた」
「え? なんで?」
 直人からも聞いていなかった情報に驚く。
「うーん。なんとなく、気が合わなかったっていうか」
「グループデートしようとか言ってたって」
「あん時はな」
「残念、どんな子に会えるか、楽しみにしてたのに」
「しかたないよ。もう済んだことだし。ま、そんなわけでおれは今、フリーだから」
「でも、友哉なら、またすぐに彼女が出来るんじゃないの?」
「う~ん。どうかな」
 彼はふうっと大きく息を吐き、「直人から聞いたの、のろけ話だけじゃなかったよ」と、一瞬真顔になった。
「え?」
 戸惑っていると、母が呑気に戻って来た。
「ねえ、友くん、今日お夕飯うちで食べていかない?」
「あ、いえ、すぐ帰るつもりなんで、お構いなく」
 友哉が断るが、母の強引さは昔に比べて更に拍車が掛かっており、彼も最後には断り切れず押し切られた。
 その日の夕食は、いつもよりかなり賑やかだった。
 そうして帰り際、友哉にちょっと話したいことがあると言われ、玄関の外まで見送ると、
「夕飯、ほんと美味かったよ。おばさんによろしく」
 そう言って、先ほどからずっと母を魅了し続けていた笑顔を見せた。相変わらずのおばさんキラーだ。
「うん、伝えとく。でもそんなこと言ったら、おかあさんまた、舞い上がっちゃうよ」
「うちのお袋、手抜きばっかするからさ~。久しぶりにちゃんとした夕食食べたって感じがしたよ」
「だって、友哉のお母さん、お仕事大変なんでしょう」
 友哉の母親は、毎日遅くまで働いている。
「まあね。でも休みの日だって、あまり変わんねーよ」
「文句言っちゃだめだよ。食べさせてもらってるんでしょ」
「う……んまあ、そうだけど」
「それに、そのおかげでそんなに大きくなったんじゃない。さっきお母さんも言ってたけど、本当に友哉は一番チビだったのに、今じゃ直人より背が高いなんて、本当にあの頃は考えられなかったよね」
「ああ、まあ、それだけでも直人に勝てて良かったよ」
 そう言うと急に彼は表情を変えた。
「あのさ」
「ん?」
「今日ここに来たのは、本当は真羽に訊きたいことがあったからなんだ」
「なに?」
 友哉はしばし黙り込んだ後、口を開いた。
「直人がさ、本当は自信がないって言ってた」
「え?」
「おまえの気持ちが、時々わからなくなるって」
 友哉に言われ、ようやく直人の気持ちがわかった。やはりそう思っていたのだ。
「そう……」
 真羽はなにも言えなかった。
「それを直人にさ、おれのせいだって言われた」
「え?」
「思い過ごしだって言い返したけど、ちょっと気になってさ」
「私、えっと」
 言葉が続かない。
「おれ、おまえと直人が付き合うって聞いた時、直人が相手じゃ、敵わねえなって諦めてた。でも、もしあいつが言うことが本当なら、おまえに確かめたいと思ったんだ」
「…………」
 友哉の言葉に、返す言葉が浮かばなかった。頭の中が混乱し、整理出来ない。
「私、今はなにも言えない……ごめん」
「そっか」
 友哉は呟くと、「じゃ、いつか答えを聞かせてくれよな」と言い残し帰って行った。
 
 そんなことがあり、寧々にその時のことを話したのだが、またもや成見に聞かれていたのだ。
 なにも手玉に取っているわけではない。
 ただ二人の間で心は揺れ、いつまでも定まらず悶々としている状態だった――。


「なにこれ?」
「代わりに応募しといたから」
 教室に入るなり、成見が渡して来たプリントを見て、真羽は一気に頭に血が上った。
「冗談でしょ。やめてよ」
 それは、“南高のクレオパトラを探せ!”といういわゆるミスコンのようなもので、“自薦、他薦、思い込み、なんでもあり”と書かれていた。しかも実行委員長は成見だ。
 普段、クラスの係や委員会などは面倒くさがってやりたがらないくせに、今回はノリノリで実行委員に立候補していたが、こういうことかと呆れる。
「今すぐ取り消して」
詰め寄ると、
「えー。面倒くせーよ」
 人の気も知らず、彼は不服そうに口を尖らせた。
「ちょっと、いい加減にしてよ」
 切れ気味に怒ると、成見はふっと笑った。
「なにが可笑しいのよ」
 まったくこの男は、なにを考えているのかわからない。
「いい機会だと思わねえの?]
「なにが?」
「おまえだって、いつまでもウジウジ悩んでたってしょうがないだろ?」
「だからなによ?」
「男のことだよ」
「あんたには関係ないでしょ。ってかこれとなんの関係があるのよ」
「おまえなんもわかってねーな」
「わかるわけないでしょ」
 とにかく頭に来るだけで、話にならない。
「呼べばいいーんだよ」
「え?」
「自分はこういう人間だって、正直に明かしちまえばいいんだよ」
「…………」
「つまり、おまえが選べないなら、向こうに選ばせるしかないだろ?」
急に返す言葉がなくなる。
 黙り込んでいると成見は、
「な、いいチャンスだろ? おれに感謝しろよ」
随分調子に乗っている。成見に関しては、こちらのことを考えているというより、面白がっているとしか思えない。
 だが彼の言うように、なにかのきっかけにはなりそうだった。
 真羽にしても、このままではいけないことはわかっていた――。
 成見はこちらの顔を覗き込みながら言った。
「やっぱ、取り消すか?」
 嫌な男だ。真羽はきつく睨み、
「そこまで言っといてなによ。いいよ。出てあげる。きっとそんな企画、誰も出ようなんて人いないだろうから、かわいそうだから出てあげる」
 まあ、真羽にしても頭から反対しているのではない。ただ承諾を得ずに勝手に応募されていたのが気に入らなかっただけだ。
 それにクレオパトラの格好にも興味がないわけではなかった。また、このことでなにかが変われるなら、試してみたいという気持ちもあった。
 成見は平然と、
「ああ、心配しなくても、もう十人以上応募来てるし」
 などと言って、鞄からリストを取り出した。
「え? もう?」
 見ると、同学年で可愛いと評判の女子や、美人で有名な上級生など何人か名を連ねていた。「なんで? 募集広告だって、まだ出してないでしょ?」まったくありえない。
 成見は鼻で笑って、
「そんなもん、あらかじめこっちから先に声掛けとくのに決まってんだろ。じゃないと企画通らねーじゃん」
 当然のように言った。
 そういうものだろうかと真羽は一応納得したが、あらためてリストに目を通し、
――これは、優勝はナシだなあ。
 出場する前から負けが見えた。


 校庭脇の樹木が、少しずつ葉を落とし始めた文化祭当日。
 快晴の下、多くの出店も賑わい、真羽のクラスの“コスプレ喫茶”も大盛況だった。
 真羽はクラスの手伝いもそこそこに、午後から行われるコンテストの準備に掛かりきりだった。
 衣装は、袖のない白のワンピースを買い、寧々に手伝ってもらいながら、胸の辺りに煌びやかな独特の装飾を施した。
 髪型は、この日のためにストレートパーマをあて、真っ直ぐに切りそろえた。メイクは、クラスの中でその道に詳しい友だちが、率先して塗りたくってくれた。
 会場へ向かうと、既に十人以上の出場者が集まっていた。総勢二十名ほどが立候補したのだ。
 皆それぞれ工夫を懲らした衣装に、瞼を黒く染める独特のメイクをしている。これだけ揃うと少し異様でさえある。
 この時代になぜクレオパトラ? という感じもするが、流行を無視したところがかえって新鮮なのだと成見は言う。ただのこじつけだろうが……。
 出場者はほとんど成見が声を掛けた面々だが、中には、本人はその気はなくて周りから強引に推薦された掘り出しものなどもいて、この高校で一、ニを争う美少女が顔を揃えることになった。
 ちなみに成見に言わせると、「おまえは“思い込み”枠な」だそうだ。
 付き添いで来てくれた寧々が小声で囁いた。
「ねえ、みんなすごくない? 真羽、ちょっと雰囲気押されてるよ」
 確かに、中にはかなり際どく校則ぎりぎりの、かなり露出多めの衣装を身に着けている強者もいる。
 真羽は自分の胸元に目をやった。
「いいよ。もともと自信ないし」
「パット入れちゃう?」
「ええ~。いいよそこまでしなくても」
「目立ってなんぼだよ」
「そんなので目立ちたくないよ」
「あはは」 
 その時、舞台裏からすっと成見が現れた。彼はこちらに気付くとふっと鼻で笑った。
「おまえ、ずいぶん気合い入ってんな」
「は? 誰かさんに勝手に応募されたんだからしかたないでしょ」
「周り、見てみろよ。おまえもうちょっと露出多めにしたほうがいいんじゃねえか? やる気がないふりしてっけど本当は、おまえだって実は優勝狙ってんだろ?」
「狙えるわけないでしょっ」
 そんなことくらい百も承知だ。
 成見は、あまりこちらをからかう余裕はないようで、プログラムに目を落とすと、「おまえさ、もう一度、鏡見てみたほうがいいぞ」と言い残し、いそがしそうに走って行った。
 むかつきながら真羽は、鞄から手鏡を取り出した。
 見ると、口紅が少しはみ出している。先ほど寧々と話している時、話しながら口元に手をやる癖があるので、少し指が触れてしまったようだ。
――もしかして、これを直せと教えてくれた?
 だが成見なら、面白がってそのままにしておくだろう。と思いつつあまり深いことは考えず、コットンで軽く拭き取り、ファンデーションを塗り直した。
 ふと、視線を感じて振り向くと、こちらをキッと睨みつける女生徒がいた。
 隣のクラスから出場した、“自称他薦”の子だ。打ち合わせの時、「成見く~ん」と体をくねらせていたから、きっと先ほど彼と話していたのが気に入らなかったのだろう。
 成見に関心があるなどと、真羽には考えられなかった。
 外見はそれほど悪くはないが、特別目立つわけでもない。それに性格に難があり過ぎる。
――あんなのと付き合ったら、大変だ。
 彼に彼女がいるという話は聞いたことがないが、まったく興味はなかった。いや、逆にいるなら会ってみたい程だ。どれほど寛容で、仏の心を持ち合わせていることかと。
――まあ、あんなやつのことはどうでもいい。
 真羽は逆に、その女生徒を睨み返してやった。

 出場者全員が野外ステージ上に並ぶと、にわかに観客がどよめいた。
 クレオパトラが二十名近く並ぶことなど、滅多に、というかそうそうないだろう。
 一人一人簡単な紹介をした後、個々のアピールタイムとなった。
 各々、なにか特技を一つ披露するのだが、得意のダンスを踊る者や歌を歌う者、中には手品をやってみせる者もいた。
 真羽は特にこれと言った特技がなく、事前に、見せるものがなにもないと成見に文句を言ったところ、ほかにもそういう者はいたようで、そういう者たちは取り敢えず、ものまねか早口言葉をやって場を盛り上げろとのことで、早口言葉を選んでいた。
 真羽の番になり、早口言葉をいくつか言わせられたが、案の定、途中でつまづいて会場の笑いを誘ってしまった。
 まあ盛り上がったからよいかと、出番を終えるやさっさとステージ裏に下がると、そこにはこちらの顔を見て吹き出す成見がいて、思い切り足を踏んづけてやった。
 発表まで少し時間があり、真羽は客席を見渡し、ある人物たちを探した。
 ステージ上からでもすぐにわかった。直人と友哉である。事前に二人を誘ったのだ。二人は周りから頭一つ分くらい抜き出ていた。
 先ほどは、ステージ上から目が合うと、二人はこちらに向かって手を振ってくれた。  
 教室に向かう前に、ひと言話したいと思っていると、友哉が先にこちらに気付いてくれた。直人も後から気付き、二人でこちらにやって来た。
 友哉が笑顔で、
「真羽、驚いたよ。すごく似合ってる」
 例えお世辞でも嬉しいひと言だった。是非とも成見に聞かせてやりたいと思った。直人は、
「おまえ、あんなに滑舌悪かったか?」
――真っ先に言うことはそれ? 
 と拍子抜けするが、彼はそういう人だ。
「二人とも、来てくれてありがとう」 
 礼を言うと友哉が、
「今日は来て良かったよ。真羽のそんな姿、まさか見られると思わなかった」
 彼の言葉には微塵も嫌味がない。やはり誰かさんとは大違いだ。 
「本当は、出るつもりじゃなかったんだけどね。クラスメイトにいっや~なやつがいて、勝手に応募されたからしかたなく」
 それは一応事実だ。
「いっや~なやつって、真羽いじめられてんのか?」
 友哉が心配してくれる。真羽が答えようとすると、
「呼んだ?」
 背後で、宿敵成見の声がした。
「な、成見、なんでここに?」
 タイミングがよすぎる。真羽はもしかしてと、
「あんたまた、立ち聞きしてたんでしょ」
 もういつものことで、呆れ果てて怒る気にもなれない。
 成見は半笑いで、
「いつものことだろ」
 悪びれずに認めた。
 真羽は直人と友哉に向かい、
「これがその、いっや~なやつ」
 と紹介した。そんな紹介のしかたにも関わらず、成見は気にもせず、
「どうも、初めまして」
 普通に挨拶するが、向かいにいる二人は少々警戒している、まあ当たり前だろう。
 成見はこの状況を勝手に楽しんでいる様子で、自ら名を名乗り、互いの自己紹介を終えると、
「ではお二人とも、南校の文化祭、どうぞ楽しんで行ってくださいね。彼女の結果も踏まえて」
 と言い残し、飄々と去って行った。
 友哉が益々心配げに、
「真羽、おまえ大丈夫か?」
 立ち去る成見の後姿に、不安げな表情を浮かべた。
「あいつ、いつもなにかと絡んでくるのよね。こっちの反応を楽しんでるっていうか」
「もし困ってんなら、おれがひと言言ってやろうか?」
 友哉の申し出につい、「じゃあお願い」と言いたくなるが、一応それほどでもないので、「今のところ、大丈夫。ありがとう」と言っておく。すると直人が、
「いや、真羽だって負けてねえじゃん。むしろおまえのほうが、言いたいこと言ってんじゃねえの?」
 鋭い。確かに成見に対しては、言いたい放題ではある。
「もうね、あんなやつ、相手にしなきゃいいんだけど、どうしても言い返したくなるの」
「真羽ってさ、あんな言いかたすることあるんだな。知らなかったよ」
「相手に依るよ。特にあいつはね」
「なんか今日は、真羽のいろんな一面が見られたっつうか。いろんな意味で、来て良かったよ」
「直人……」
 彼はもう、なぜ真羽がこの場に二人を呼んだのか、気付いているのではないかと思った。直人だけでなく、一緒に友哉も誘った時点で。更にこの格好……。
 真羽は二人に言わなければならないことがあった。
 もうとっくに答えは出ていたのに、認めたくなくて、結論を先延ばしにしていたのだ。
「二人とも、今日は本当に、来てくれてありがとう。本当はね、勝手に応募されたからしかたなく、なんて言っちゃったけど、コンテストに出ようと思ったのは、きっかけが欲しかったからなの」
「きっかけ?」
 友哉は、なにも感じていない様子だ。
「うん……。実はね、今日二人を呼んだのは、伝えたいことがあったからなんだ」
「なに?」
 尋ねる友哉に対し、直人はなにも言わずこちらを見つめている。
「私ね、ずっと昔からいつも三人一緒だったから、いつの間にかもう、自分でも気づかないうちにそれが当たり前になってたみたいなの」
 友哉も押し黙り、次の言葉を待っている様子だ。
 真羽は今の格好が一番自分に相応しい、最悪な姿だと思っていた。この仮面の力を借りなければ、素直になれないことさえ最悪だ。だが、この姿だからこそ、二人に胸の内を明かせる。
「私ね、二人のことが好きなの。どちらか一人を選べないくらい、二人のことが、好きなの。だから、ごめん、こんないい加減な私で、本当にごめんなさい」
 友哉は複雑な表情で、
「なんか……。告られてんのか振られたのかわかんねえな」
 呟いて、直人のほうを見た。彼は別段驚きもしない様子で、
「そういうこと……か。まあ、友哉の言う通りだな」 
 こちらに向ける眼差しは、もう以前のものではない気がした。真羽は直人に向かい、
「ごめんね」
 再びそう告げると彼は、
「別に、謝ることじゃねえよ」
 その目を見て真羽は、彼は多分、こちらから別れを切り出すのを、ずっと待っていてくれたのだと思った。
 こちらを傷つけないように……彼はそういう人だ。
 その時、コンテストの係員が現れた。
「もうすぐ発表だから、早く戻って来て」
「あ、ごめん。すぐ行く」
 真羽は二人に、「じゃあ、行くね」と断ると友哉が、
「優勝出来るといいな」
 また、誰かさんなら絶対に言わないことを言ってくれた。彼だけだろう。そんな風に言ってくれるのは。
「ありがと」
 背を向けたとたん、急に心もとなくなった。
 二人の存在は安らぎであり、なにより落ち着ける場所だった。両方を欲しがったために、結局どちらも得ることは出来なかった。
 もしかして幼い頃、二人に出会った時から、こうなると決まっていたのだろうか……。
 だが、もし幼馴染でなかったら、こうして二人から告白されることなどなかったのかもしれない。
 真羽にはもう、後ろを振り返ることは出来なかった。


 結果は始めから決まっていたようなものだったが、案の定、有力視されていた美少女たちが優勝を争うというもので、真羽など、ほか数名は始めから選外という感じだった。
 ただの盛り上げ役に過ぎなかったが、真羽は出場したことに後悔はなかった。
 これからはただ、前を向いて行くしかない。それだけだった。
 ステージを降りた後、教室に向かおうと思ったが、なんとなく気が抜けてしまい、近くのベンチに腰を落とした。
 二人はもう、帰ってしまったようで、結果発表の時に姿は見当たらなかった。
 ふうっと大きく溜息を吐くと、
「おまえ、同時に二人も振っちまうなんて、もったいねえな」
 成見だった。また聞いていたのだろう。だがもう怒る気力もない。
「成見、お願いだからあっち行って」
 目も合わせず、手だけ振って追い返す。
「なんだ。元気ねえな」
「当たり前でしょ」
「あの二人ならすぐに可愛い彼女が出来るよ。心配すんな」
「ちょっと、どっちの心配してんのよ」
 拍子抜けして顔を上げると、
「ほら、これ」 
 成見が目の前に祝儀袋を差し出した。
「え? なにこれ」
 参加賞でもあったのだろうか? と首を傾げる。
「特別賞だよ」
「え? なんの?」
 なにか特別なことをした覚えはない。
「実行委員長の、おれ様からの特別賞だよ」
 どういう風の吹き回しだ? と思いながら真羽は取り敢えずそれを受け取った。
 コンテストの入賞者には金一封が授与されていたが、まさか予算が余ったのだろうかと思いながら、成見のすることだけに、一応疑いつつ中を覗くと、一枚の紙切れが入っていた。
「なにこれ?」
 取り出すと、ちゃんとした紙ではなく、なにかのプリントから空白の一部を切り取ったような切れ端で、見ると誰かの連絡先らしき物が書いてあった。
「これって、だれの?」
「おれ様の」
 先ほどから、いちいちおれに様をつけるのがいちいち気に障る。
「どういうこと?」
 顔を上げると成見は、
「おまえがいろいろ悩んでばっかいるから、おれ様が相談に乗ってやろうと思ったんだよ」
「いらない」
 真羽が突き返すと、
「バカだなおまえは、おれ様が人に連絡先渡すなんてな、滅多にないことなんだぜ?」
 バカはそっちだと言いたい。こんなことでなにが嬉しいというのか。真羽は紙切れをギュッと握り潰した。
「だから、いらないってば。どうせ私をからかって楽しんでるだけでしょ」
 成見に関しては好意だと思えず、裏があって当然だと思っている。彼はつまらなそうに、
「好きにしろよ。その辺に捨てとけば」
 くるっと背を向け、さっさと行ってしまった。
「なによあいつ」
 そのまま背中に向かって潰した紙切れをぶつけてやろうと思って……やめた。
 ほんの僅かだが、握り潰した時の成見の顔が、一瞬陰った気がするのだ。
 それまでへらへら笑っていたのに、その時だけは違っていた。
――いたずらしてやろ。
 真羽は思い直し、一応捨てるのを止めた。
 成見は普段一人でいることが多く、クラスメイトとは必要以上の会話をすることもない。その彼が連絡先を教えてくれたのだから、“滅多にない”は本当かもしれない。これはある意味貴重なことなのだろう。
 真羽は紙切れを広げ、手のひらで伸ばした。
――本当に、なんなの? あいつ。
 真羽はふと、クレオパトラに関わった男たちに、シーザー、アントニウスがいるが、もう一人、クレオパトラを死に追いやった人物がいたことを思い出した。
――確か、オクタビアヌス。
 史実では、やさ男だとか、お人よしでぱっとしなかったとか、または反対に残忍だったなどいろいろ言われているが、クレオパトラが振り向かなかった男であることは確かだ。
――しょうがないな。これからも、適当にあしらってやるか。
 いつしか成見のせいで、こちらの気分が変わっていることに気付いた。
 真羽は新たな目標が出来た気がして、勢いよく立ち上がった。


 風が冷たさを増し、吐く息が白く濁る頃、校内では風邪が流行り、クラスメイトの欠席が目立ち始めていた。
 成見が、五日も学校を休んでいた――。
 月曜からずっとだ。風邪が長引いているらしい。
 真羽はきっと、二、三日で登校して来るだろうと思っていたが、あまりに長いので少しばかり心配になり、今日になって、連絡しようかどうか迷った。
 文化祭で連絡先をもらったが、一応登録したものの、実はいまだになにもしていなかった……。
 なんとなく、素直に送ってしまうと、変に負けた気がして、そんな気になれなかったのだ。
 成見はこちらがあのまま処分したと思ったのか、そのことについてなにも言って来なかった。
 だが普段、あんなに目障りなヤツが急に何日もいないと、少し気になったりするもので、ぎりぎりまで迷って、やはり連絡してしまった。
 悩みぬいた末にひと言、「大丈夫?」とだけ送ったが、すぐに返事は来なかった。
 まあ、そのうち来るかと放課後まで待ってみたが、うんともすんとも言って来なかった。
 返事を期待していたわけではないが、時間が経つごとに、段々不安にもなって来た。
 帰り支度をしていると、寧々が顔を覗き込んで来た。
「真羽、どうした?」
「ん?」
「元気ないじゃん。もしかして風邪ひいた?」
「いや、大丈夫」
「じゃあなにか、心配事でもあるの?」
「別に、なにもないよ」
 答えるが、寧々は納得していない様子で、
「もしかして、成見のことでも心配してた?」
 なぜだかお見通しだった。
「なんで? そんなわけないじゃん」
 図星ではあるが、一応否定すると、 
「だって真羽さ、このところずっと、元気なかったじゃん。それって成見がいなかったからじゃないの?」
「え? そんな風に見えた?」
「そうだよ。いつも成見と言い合ってるから、なんかあいつがいないと、調子でないんじゃないの?」
「いやいやいや違うって。これが普通の私だってば。あいつがいる時はただ、喧嘩して怒鳴ってるからなんだか元気に見えちゃうだけだって。本来私は大人しくて、いつもこんな感じなの」 
「そ~お?」
 寧々は疑わし気に目を細めた。
「そうなの!」
 少し強めに言い切り、鞄を手に取った。「帰ろ、寧々ちゃん」呼び掛けると彼女は成見の机に向かい、ごそごそと中の物を取り出した。
「ちょっと、寧々ちゃん、なにやってるの?」
 寧々は数枚のプリントを手に取ると、
「職員室行って来る」
 すたすたと歩きだした。
「ちょっと待ってよ、なんで?」
 追い掛けながら問うと、
「これ、成見に届けに行こうと思って。宿題とか提出物が結構溜まってたし、今から先生に住所、訊きに行かなきゃ」
「え? なんで寧々ちゃんが? わざわざそんなことしなくったって」
「真羽も一緒に行くんだよ」
「え? なんで私が?」
 寧々は急に立ち止まった。
「クラスメイトだもん。力になるのは当然でしょう」
 正論だが、寧々の場合、なにか違う気がした。
「そんなの、私たちがやらなくたって、成見の近くに住む子にやってもらえばいいじゃない。あるいは先生が」
 こちらも一応正論のつもりだった。寧々は正面に向き直り、
「あのさ真羽、本当は成見のこと心配なんでしょ。わかってるんだよこっちは、会いに行けばいいじゃん。顔を見れば安心するでしょ」
「だから違うって」
 あくまでも否定を貫く。
「じゃあさ、私に付き合ってくれない? それならいいでしょ」
「え?」
「私が成見に会いに行くから、真羽はそれに付き合ってよ」
 寧々はどうしても、行かせたいらしい。
 真羽は戸惑っていたが、だが本当のことを言えば、実はそれがありがたかった――。
 やはり返事がないのは気になるし、今どうしているのかも若干気に掛かる。それにこの五日間、少し物足りないというか、張り合いがないというか、寧々が言うように元気がないと言われれば、認めたくないがそうかもしれなかった。
「じゃあ、寧々ちゃんの頼みなら、しかたないよ。わかった」
 渋々承知したふりをしたが、寧々はくすっと笑った。
 
 成見の家は、市の中央寄りにある、高層マンションの一室だった。
 担任は成見に、直接確認の電話を入れてから住所を伝えてくれたので、彼はこちらの訪問を拒まなかったようだった。
 成見の見舞いに行くというと担任は、丁度彼のところへ行こうとしていた矢先だったようで、「それは助かる」と言い、ほかのプリント類も渡してきた。
 彼の両親は仕事で家におらず、家にいるのは成見一人きりだと言う。 
 彼の家に向かう途中、寧々に、
「成見って、兄弟とかいるのかな?」
 問うと、
「さあ、どうなんだろうね」
 寧々は首を傾げた。
 成見の家族について真羽はなにも知らなかった。
 多分寧々のように、ほかのクラスメイトにも、彼のことを知る人物はいないのではないかと思った。
 彼は人のことに関しては首を突っ込みたがるが、自分の事に関してはなにも語らない。
 唯一、将来なにになりたいのかと尋ねると、「探偵しかねえじゃん」と、本気か冗談かわからないがそう答え、真羽は寧々と顔を見合わせ、「なるほど」と頷き合ったくらいだ。
 彼に関してはそれくらいで、今まで特別関心を抱いたことはないが、この日初めて、彼の両親が共働きだと言うことを知り、彼の住まいを知った。
――敵陣、見つけたり。
 という感じだ。
 七階でエレベーターを降り、ドアの前に立つと、プレートには苗字のみ印字されており、家族構成はわからなかった。
 呼び鈴を鳴らそうとすると寧々が、
「あ、ごめん、急に用事を思い出した」
 などと言い出した。
「え? 嘘でしょ」
「ほんとごめん。うっかりしてた」
 寧々は両手を合わせ、「じゃ、後はよろしく」とプリントの入った袋を手渡し、あっという間にいなくなってしまった。
「ちょっと、待ってよ」
 追い掛けようとするとガチャッとドアノブが回る音がして、成見が顔を出した。
「なんだ、玄関先でうるせえな」
 ただでさえ細い目を更に細めている。真羽は瞬間湯沸かし器のように、
「なによ。せっかく来てあげたのに、その態度はないでしょ」
 病人だということを忘れて噛み付いた。
「だから、声がでけーんだよ。近所迷惑なんだよ。こっち入れ」
 成見は真羽の腕を引き寄せた。
「ちょっと」
 されるがままに玄関に足を踏み入れると、バタンとドアが閉まった。
 真羽は、自分でも少し声が大き過ぎたかもしれないと反省しつつ、それにしてもその言いかたには不満を感じ、持参した袋を突き出した。
「はいこれ、わざわざ届けてあげたんだから、お礼くらい言いなさいよ。それと後で寧々ちゃんにもね」
 成見の態度に、心配して損したとさえ思う。彼は袋を受け取ると、
「一応ありがたいと思ってるよ。だけどお前、玄関先で騒ぎ過ぎなんだよ」
 非常識だったとは思うが、注意するにも言いかたというものがある。むっとしていると、
「それにさ、おまえおっせえよ」
 またまた怒りを抱かせる言葉を吐いた。この男はどれだけ人を怒らせたいのか。
「はあ? 学校からどれだけ掛かると思ってんの? 場所だってなかなかわからなかったのに」
「ちげーよ」
「なにがよ」
「渡してからどんだけ経ってんだよ」
「は?」
 言っている意味がわからない。だが“渡してから”という言葉に、なんとなくあれのことかと思う。
「連絡先のこと?」
「もういいよ。入れ」
 否定しないということは、そうなのだろうか。彼はこちらからの連絡を待っていたというのか。この、成見が……。
「待ってたの? 私からの……」
「だから、もういいんだよ。うるせえ、早く入れ」
 成見は目を反らし、さっと背を向けた。
 意外に思いながら真羽は、彼がこちらからの連絡を待っていたことに、やはり悪い気はしなかった。
「じゃあ、ちょっとお邪魔するね」
 玄関を上がり、上下スウェット姿で猫背気味に歩く成見に付いて行くと、リビングは、まるでモデル住宅のように、さっぱりしていた――。
 必要な物以外、無駄は一切ないといった感じだ。
 真羽の家には、テーブルの中央に母がアレンジした生花が飾られていたり、棚には写真立てがいくつか飾られていたりするが、この家にはそういったものがなにもない。殺風景というか、生活感がない。
「さっぱりしてるね。ごちゃごちゃした私の家とは大違い」
 そう言うと、
「適当に、座れよ」
 彼はソファーを指差し、カウンターキッチンの向こう側に回った。
 真羽が腰を下ろすと、彼はしばらくして冷蔵庫から冷えた缶コーヒーを持って来て、目の前のテーブルに置いた。
「こんなもんしか、ねーけど」
「あ、ありがと」
 成見でも一応こんなことするんだ、と変なところに感心する。
 彼はカウンタ―前の椅子に座り、持っていた缶のプルタブを引いた。
 しんと静まり返った部屋に、成見がコーヒーを飲む音だけが響く。真羽は今頃になって、二人きりだということを意識した。
 なにか話し掛けようと思いながら、やはり彼の家族のことが気になった。
「ねえ、成見って兄弟いるの?」
「兄貴が一人」
「へえ、そうなんだ。学生?」
「っそ」
「ふうん、仲良いの?」
「いいわけねえじゃん」
「あ、そう」
 なんとなくそんな気がした。この家にないものが、そのまま成見にはない気がするのだ。
 それは余計な物だし、いらないかもしれないが、それは知らぬ間に心の隙間を埋めてくれるものでもある。
 彼が連絡を待っていたのは、その無駄なものを、彼が無意識に欲しがっていたのではないかと思った――。
 

 友哉から連絡があったのは、年が明けて間もなく経ってからだった。話したいことがあるという。
 待ち合せは昔、よく三人で遊んだ公園だった。
 友哉と並んで腰を下ろし辺りを見渡すと、頬を差すような冷たい風が吹き付ける中で、子どもたちの姿はまばらだった。
 幼い頃真羽は、今日のような寒い日には家の中で遊ぶことが多かった。直人や友哉と、ゲームを楽しんだ記憶がふと蘇る。
 友哉は今、なにを思っているのかわからないが、真羽と同じように、懐かし気に公園を見渡していた。
「懐かしいな、ここ、久しぶりに来たよ」
「そうだね。もう、なかなかここに来る機会もないしね」
「ごめんな、寒いのにこんなとこ呼び出して」
 真羽は首を横に振り、
「ううん。また会えて良かったと思ってる」
 そう言うと、彼はこちらを見て微笑んだ。だがすぐにその笑みは消えた。
「実はさ、おまえに振られてからずっとすっきりしなくてさ、それでも忘れようと思って前の彼女と会ったりもしてたんだけど、なんか、うまく気持ち切り替えられなくてさ」
「友哉……」
 彼はそこまで言うと、呼吸を整えるかのように深く息を吐いた。
「それで、よく考えたんだけど、おれってさ、一応振られたわけじゃないんじゃないかって思ったんだよ。」
「え?」
「あん時おまえ、両方好きだって言ってたたよな。それって前向きにとらえてもいいんじゃないかって思ってさ。まあ、どちらも選べないって言ってたのがずっと引っ掛かってたけど、それって、いっそおれが、受け入れたらいいことなんじゃないかって思ったんだ」
「え? 友哉」
「おまえが直人のこと好きなのはわかってる。そしておれのせいで二人が別れたことも。直人はさ、真羽が違う相手を想ってることを知って、それ以上付き合うなんて出来なかったみたいだけど、おれはさ、それでも構わないって思ったんだ。そう思えるまでちょっと、時間が掛かったけど。でもおれは、直人も好きなおまえごと、受け止めようと思ったんだ」
「友哉、本気で言ってるの?」
「本気だよ」
 真羽は信じられなかった。かつて成見が言っていたことを思い出す。二人に選ばせればいいと言っていたことを。
 真羽はそんなことは初めから無理だと諦めていたが、友哉は受け入れてくれると言っているのだ。直人を想う自分ごと、受け止めてくれると言っている。
 真羽は戸惑い、すぐに返事は出来なかったが、申し出を断る理由など、探しても見つからなかった。


 休日、友哉の家に呼ばれた真羽は、彼とともにレンタルビデオを観ていた。
 だいたいいつも、外で会うことが多かったが、この日は彼の両親が日帰りで温泉に行っており、彼の姉は、彼氏とデートとだということで、たまには家で会わないかと誘われたのだ.
 
 友哉の家には、幼い頃よく訪れていた――。
 母は、遠くに出掛ける用事があると、真羽を友哉の母に預けることが多かった。一人っ子の真羽にとって、友哉とその姉と一緒に過ごすことは、自分にないものを満たしてくれる唯一の時間だった。
 あの頃は、小柄な友哉を弟に見立てていたことを思い出す。
 友哉の家は、成見の家とは違い生活感に溢れていた。少し物が溢れ気味なところは真羽の家と変わらない。
 
 借りて来たビデオは冒険ファンタジーで、途中、笑いあり涙ありで十分楽しめるものだったが、一人で観る時より友哉と観るほうが、途中同じところで笑ったり泣いたり、感情を共有出来、満足度が全然違った。
 ただ一つ不満なのは、すぐ手を伸ばせる場所に、彼がいないことだった。
 友哉はデートで並んで街を歩く時、こちらから手を繋がないと、彼のほうから触れて来ることはない。
 そのことで以前、なぜ自分から手も繋ごうとしないのかたずねると、「止めらんなくなるから」と答えた。
 大事にしてくれているのはわかるが、真羽にとっては少し物足りなかった。 
 映画が終わり、一度洗面所を借りに行った真羽は、戻って来るや、思い切って友哉のすぐ隣に座った。
 じっと反応をうかがうと、彼は少しお尻を向こうにずらした。
 彼の優しさは十分伝わるが、こんな時やはり直人を思い出してしまう。
 彼は一切躊躇いがなかった。どうしても比較してしまう。だがそういう友哉もやはり好きなのだ。
 真羽は友哉の優しさを黙って受け止めることにした。
 するとふいに友哉の手がこちらに伸びて来た――。
――え?
「真羽……やっぱおれ」
 腕を引き寄せられ、ゆっくりと、彼の顔が近づいて来た。
 黙って目を閉じると、躊躇いがちに唇が重なった。
 だが、不意打ちに戸惑いながらもその時、真羽の頭に浮かんだのは、あろうことか直人ではなく成見だった――。
 
 友哉と付き合うことになったと寧々に告げた時、例のごとく成見も聞いていたようで、それ以来、彼は一切、今までのように戯れに絡んで来なくなったのだ。
 それどころかあの、「成見く~ん」と腰をくねらせていた女生徒と付き合い出した。
 下校時、「一緒に帰ろ」と誘いに来た彼女と、彼は親し気に帰って行った。しかも彼女の腰に手を回して。
 翌朝、真羽は一応、
「彼女出来たんだ。良かったね」
 と祝いの言葉を贈った。だが成見は、
「あいつだけじゃねえよ」
 といやらしく笑った。
「やだ、最低」
 汚い物を見るように見下げると、
「おまえほどじゃねえよ」
 そう言って、成見はそっぽを向いた。
 その言葉にむかついて言い返そうとすると、彼は教室から出て行ってしまった。
 その時の光景が頭に浮かんだのだ――。
 友哉といながら、ほかのことを考えてしまう自分に真羽はまた、心底自分が情けなくなった。
 なぜ今、成見のことなど思い出したりするのか。そして、成見が彼女の腰に手を回した時、なぜ一瞬でも胸の痛みを覚えたのか。
 これではまったく直人の時と同じだ――。
 目の前に愛すべき人がいるのに、なぜ違う人のことばかり想うのか。
 あまりの情けなさに、友哉に申しわけなくて、自分を殴りたくなる。
 だがもっと最悪なことがあった……。
 友哉との口づけの後、真羽は更に絶望を感じてしまったのだ――。
 なぜか心が、ときめかなかった……。
 直人の時は、友哉を想いつつも身体が反応したのに、今はなにも感じなかった。
 いったい、なぜなのか……。
「ごめん、友哉」
 真羽は彼から、ゆっくり身体を離した。
「おれのほうこそ、ごめん」
 謝られるが、
「違うの、友哉が悪いんじゃないの」
「…………?」
「私やっぱり、誰にも愛される資格なんてないみたい」
「真羽?」
 真羽は立ち上がり、そのまま家を飛び出して行った。
 
 その日の夜、携帯に友哉からの電話が鳴った。応答すると、
「おれだけど、真羽、今日は本当にごめんな」
 友哉は優しい。謝らなければならないのはこちらのほうだ。
「ううん。私が悪いの。友哉はなんにも悪くない」
「あのさ……。やっぱりおれじゃ、だめってことかな」
 声が暗く沈んでいる。
「違うの、友哉がだめなんじゃなくて私がだめなの。私が友哉に相応しくないの。それに、きっと誰と付き合っても、私やっぱり同じことを繰り返しそうな気がする。こんな私なんてもう、誰とも付き合えないってわかったの。だから……だから、ごめん」
 胸のうちを語ると友哉は、
「あいつのこと?」
「え?」
「直人のことならおまえ、もうそんなこと言わねえだろ。だからあの、成見ってやつのこと?」
 まさか友哉が成見の名前を出すとは思わなかった。
「なんで、あいつのことなんか」
「いや、直人がさ、あいつ、もしかしたらやばいかもって言ってたんだ」
「え?」
「真羽があんなに自分をさらけ出せる相手が、いたんだって」
「いや、あいつはただ、面白半分にからかって来るからしかたなく相手にしてるだけで、別になんでもないから」
「真羽……おまえもっと素直になったほうがいい。おまえは無意識に探してるんだよ。一番自分に相応しい相手を……。まあおれも、あの成見ってやつはどうかと思うけど」
「そうでしょう? 成見はありえないよ。絶対に違う」
 真羽が断言すると友哉は、
「だけどおまえさ、あんまり自分を責めんなよ。まずはなんでも、自分の思うようにようにやってみろよ。おれだって、一時でもおまえと付き合えて良かったと思ってる。これでやっと踏ん切りがついたし。もしあのまま諦めてたら、今頃後悔してたと思う。人間なんてさ、結局心には逆らえないんだよ。だからもっと、なんでも割り切って考えろよ。悪いなんて思わずにさ。自分の思うようにやれよ、丸ごと自分を認めちまえばいいんだよ」
「友哉……」
「それにおれたち、べつに別れたってこれきりじゃないよな。だからこれからは、友だちとして会ってくれよな。直人もそれを望んでる」
「友哉……ごめん」
 電話を切ると、とたんに涙が零れ落ちた。やはり友哉が好きだ。それなのになぜ……。
 真羽はその日、涙が溢れて止まらなかった。


 友哉と別れた翌日、寧々に胸のうちを打ち明けると彼女は、
「ふうん。そうだったんだ。いい人だね。友哉って人」
 机の上に両肘をのせ、頬杖をついた。
「そうなの。いい人なの。最高にいい人なの。だから私は最低なの~」
 机に突っ伏すと、彼女は真羽の頭を撫でながら、
「しょうがないよ。だって心は騙せないからね」
 そう言った。
「…………?」
 顔を上げると、
「真羽、頭と心は違うんだよ。真羽は自分を最低だっていうけどさ。その彼の言うように、心にはどうしたって逆らえないの。そしてそれが一番正直なの。真羽が自分のこと最低だって思うのは、それがいけないことだと思ってるからでしょ。だけどしかたないんだよ。そんなに人って、清く正しくなんて生きられないもんなんだから」
 寧々の言葉が、真羽の胸に痛く突き刺さる。
「だって、寧々ちゃん……」
「真羽が一所懸命頭で否定してもね。結局、認めちゃうしかないんだよ」
「そんなこと言ったら、一生一人の人を愛せないじゃない」
 泣きつくと、
「そんなの、人間ならあたりまえじゃない。私だってさ、彼がいるけど、テレビとかで格好いい俳優がいたら、やっぱいいなあって思うもん」
「俳優はいいよ。遠い世界の人だもん。でも、私は……」
「同じだよ。私も彼と一緒にいたって、たとえ俳優じゃなくても、身近にいるほかの男の人のことだって、平気で考えたりするもん」
「寧々ちゃんも?」
「そ。だけど彼のことはやっぱ好きだからさ。心の中でごめんって謝って、それで終わり」
「それで、いいの?」
「しょうがないじゃん」
 微笑む彼女は、真羽より数倍大人に見えた。
  
 
 あのまま友哉と付き合っていれば、きっと渡すはずだった、バレンタインの日が訪れた――。
 今年は、寧々が友チョコ交換しようと言うので、久しぶりに手作りした。
 登校し、暖房の利いた教室で一息ついてマフラーをほどくと寧々が、「おはよう、真羽」と、早速小さな紙袋を差し出してきた。
「はい、これ。私が作ったの、食べてみて!」
「わあ! ありがとう」
 受け取って、自分の鞄から寧々に渡すチョコを取り出すと、彼女は礼を言って受け取りながら、
「それ、なに?」
 鞄の奥を指差した。
「ああ、これはなんとなく、作り過ぎたから」
 実はもう一つ、用意して来たのだ。  
 真羽は、友哉や寧々の言うように、少し自分の心を見つめ直し、頭で考えるのではなく心に、抗わず素直に従ってみようかと思った。
 それでもし、なにかが変わるのならと……。
 真羽が、自分の心のままに振舞おうと決めた時、浮かんだのはどうしても成見のことだった。
 この気持ちがなんなのかはっきりわからない。だが、気になるのは事実だ。
 彼に彼女がいることは知っているが、真羽なりに、なんらかの意思表示がしたいと思った――。
 だが、そうしたところでなにが変わるかもわからず、なにも変わらないかも知れない。が、なにもしないよりましだと思った――。
 ちなみに、友哉と別れたことは、寧々が大声で、「真羽って彼氏と別れたんだって~」と成見に伝えたので、彼は知っている。
 だが彼の態度はそれで変わることなど一切なかったが――。
 寧々は声を弾ませて、
「もしかして、それ、成見の?」
 直球を投げ掛けて来た。
 どうも彼女には、真羽の心を見透かされているらしい。だが真羽は絶対に打ち明けようとは思っていない。
 彼女は先日、成見の家の前で急に帰った時も、翌日、「どうだった?」と興味深々に尋ねて来た。彼女はやはり、わざと先に帰ったのだ。
 真羽は、素直に本当のことなど言えず、
「ちょっと、成見は関係ないでしょ」
 取り敢えず文句を言った。
「え? 違うの?」
 なんだか寧々が、いつの間にか成見化しているような気がした。からかわれると過剰に反応する真羽を、完全に面白がっている気がする。
 “あく”が強い成見は、人に伝染するのだろうか。
「違うに決まってるでしょ! 本当にちょっと多く作り過ぎたから、もう一つ用意しただけで……」
「じゃあ、誰にあげるの?」
「それは……」
 寧々は後ろの席にいる成見に向かい、
「成見、真羽がチョコくれるって!」
 やはり面白がっている。
「寧々ちゃん、だから違うって」
 後ろで成見は、
「もう、ここにあんだけど」
 その言葉に振り向くと、机の上にそれらしい箱が置いてあった。寧々はつまらなそうに、
「ああ、彼女ね。でもバレンタインなんて、いくつもらったっていいじゃない」
「いらねえよ、そんなに」
「なんで? 真羽の手作りだよ」
「そんなもん、毒が入ってんに決まってんだろ」
「ちょっと、なんてこと言うのよ」
 この発言には真羽もさすがに切れた。
「いいよ、寧々ちゃん、もうやめて」
 そして袋を取り出し、思い切って中を開け、中身を取り出した。
 これ以上、いたずらにからかわれるのは嫌だった。向かいの寧々は、
「ちょっと真羽、なにしてるの?」
 驚いた様子で目を見開いている。
「毒なんて入ってないって、証明してやるの」
 腹立ちながら、怒りに任せて一口齧る。手作りのブラウニーであった。すると寧々は手を伸ばし、
「じゃあ私にも、頂戴!」
 口を大きく開けて一口で食べ切ってしまった。
「どう? 味は」
 一応試食して来てはいるものの、やはり人に食べてもらう際には緊張する。
「うん。美味しい!」
 寧々は、「もう一個頂戴ね」と今度は少し齧って、
「甘さ控えめだね。それにちょっとビターな感じ?」
 感想をくれた。
「ねっ。毒の味なんかしないでしょ」
 後ろの成見に聞こえるように言うと彼は、
「ばーか、後からきく毒もあるんだよ」
 憎たらしいことばかり言うので、もはやあんなやつにあげようなどとは思わなくなった。
 結局、寧々と二人で食べ切り、成見の口に入ることはなかった――。
 意思表示なんて、彼女がいる成見に対しては所詮、もう無理なのだ。
 真羽はもう、この想いは永遠に封印することにした。
 
 
 その週の金曜。下校時に真羽が帰宅しようとすると、なぜか携帯が違っていた。
「あれ? これ私のじゃない」
 寧々に告げると、
「え? なんで?」
 真羽が彼女に携帯を渡すと、彼女は勝手に画面を操作し、
「これ……成見のだ」
 不思議そうな顔をした。
「なんでだろう。間違えたのかな。でもそんなはずないんだけど」
 確かめようにも、彼はとっくに帰宅してしまっていた。
「電話、掛けてみたら?」
 寧々が言い、真羽は、「うん、そうしてみる」と受け取った。
 躊躇いつつも画面を操作してみると、アドレスには真羽と、ほか数人だけだった。そこになぜか、例の彼女の名前はなかった。
 自分の携帯の番号に掛けてみると、すぐに留守電に切り替わった。用件を入れて少し待つがしばらくしてもなんの反応もない。
 不安になり、もう一度掛けてみると、
「はい」
 応答があった。やはり成見の声だった。
「あ、成見? それ私の携帯でしょ。間違えてるよ、気付かなかった?」
 彼は少しして、
「ああ……どうする?」
 と訊いて来た。
「すぐにでも取り換えたいの。今どこにいるの?」
「家」
「え~」
「週明けでもいいぞ」
「やだ。絶対やだ」
 自分の携帯が二日も手元にないなんて、考えられなかった。
「じゃあ、交換しに来れば?」
「そっちが、届けに来てよ。間違えたの、そっちでしょ」
「だっておれ、困んね~もん」
「ああ~。もう」真羽は苛々しながら、「じゃあ行くから、待ってなさいよ」
 真羽は寧々に断り、成見の家に行くと言った。
 彼女はなぜかニヤニヤしながら、
「いってらっしゃ~い」
 と呑気に手を振った。
 
 成見の住むマンションに辿り着き、玄関の呼び鈴を鳴らすと、彼は面倒くさそうに現れた。
「あ、成見、携帯交換して!」
 携帯を差し出すと、
「ああ、部屋にある」
 この男はどこまで人を苛立たせるのかわからない。
「ちょっと、さっき伝えたでしょ。普通、用意しておくもんだと思うけどっ」
 大声で怒鳴ると、
「だからさ、おまえ声がでかいんだって」
成見は、真羽の背後にある玄関の戸を閉めた。 
 勢いにまかせてまた大声を出してしまったと少し反省するが、だがここへ来させたのは成見のほうだ。
「さっさと持って来てよ」
 彼は、「しょうがねえなあ」と文句を言いながら部屋に携帯を取りに行った。
「ほら」
 ぶっきらぼうに渡され、さっさと交換し終えると、
「なんで間違えたの?」
「しらねえよ」
「へ?」
 わけがわからない。
 だが、思い返すと寧々の行動は怪しかった。あまり確かめる様子もなく成見のだと言った気もする。
――もしかして、寧々ちゃんが?
 理解出来ないが、まあ用事は済んだ。
「じゃあ、帰る」
 真羽が回れ右をして玄関を開けると、
「ちょい待て、そのまま帰んのかよ」
 成見の言葉に、一応振り返る。
「だって、用事済んだし」
「なあ、おまえさ、あのバレンタイン、おれに渡そうとしてなかったか?」
 振り向くと、成見は壁にもたれかかり、超がつくほどの上から目線でこちらを見つめていた。
「そんなわけないでしょ」
 やはり帰ろうと思い、さっさと背を向けると、
「じゃあ、なんでおれ好みの味にしたんだよ」
「は?」
「あいつが言ってたのって、おれ様の嗜好ドストライクじゃん」
「あいつって、寧々ちゃん?」
「ああ」 
「そんなの、寧々ちゃんの好みに決まってるでしょ。本当に、なに言ってんの?」
 しかたなくまた振り返ると、
「おれ、あいつに訊いたんだよ。おまえの好みの味かって。そしたらさ、全然違うって言ってたよ」
 そこまで周りを固められると言葉に詰まる――。
 本当は……先日、この家に来て彼にコーヒーをもらった時、無糖でかなり苦味がきつかったが、彼は表情も変えずに飲んでいた。それを見て、普段から苦さに慣れ親しんでいるのだろうと思った。
 そして家に来る途中、寧々と一緒に、一応お見舞いにと果物を買って行ったのだが、
「まあ、おれあんま甘ったるいの苦手だし。このくらいが丁度いいな」
 と言っていたのを思い出し、彼の好みの味に仕上げたのだ。
 確かに、彼の嗜好に合わせて作ったことは認める。 
 だが絶対に成見の前で認めたくはない。
「違う。成見の勝手な思い込みだよ。だいたい彼女がいる人に、なんでチョコあげたりするのよ」
 ごまかすと、
「おまえ、なんか誤解してんじゃねえの。おれ、彼女なんかいたっけ?」
 とんでもないことを言い出す。
「いるじゃない。バレンタインだってもらってたし、一緒に帰ってたし、この間なんて、お弁当まで届けてもらってたし」
 成見ははあっと息を吐いた。
「それってさ、おまえの言うようにしてりゃ、全部彼女なわけ?」
「そうでしょ。それに腰に手、回してたじゃない」
「あいつは、ただのおれのファンなんだよ」
 またまた頭に来ることを言う。
「あんた、彼女の気持ち、もてあそんでるの? 最低」
「だからさ、その彼女がいると思ってるおまえが、おれにチョコなんて渡そうとしてたんだろ。おまえ、自分のほうが最悪だってわかんねえの?」
「だから、違うって言ってるでしょ」
「相変わらず素直じゃねえな。まあ、素直な女なんて興味ねえけど」
「もういい。今度は本当に帰る」
 もう話にならないと思い、再び背を向けると、
「え?」
 いきなり、成見が後ろから手を回してきた。真羽は驚いて、
「ちょっと、なにしてんのよ」
 腕を引き離そうとすると、抗えない強さで体の向きを変えられ、あろうことかいきなり唇を塞がれた。
「ちょっ、な、なにすんのよ」
 手の甲で唇を拭う。
「じゃあなんで、来たんだよ」
「だから、携帯返してもらうためでしょ」
「おまえ、おれがこの家に一人だって知ってるよな。それでも来たってことは、そのつもりなんだって、普通思うだろ」
「ばか、一応あんたを信用してるからに決まってるでしょ。この間だってなにもなかったし」
「この間は、弱ってたんだよ」
「クラスメイトでしょ。もう、いい加減にしてよ」
 きつく睨みつけ、帰ろうとすると、
「おまえ、おれが好きでもない女に、今みたいなこと、すると思うか?」
 その言葉に、真羽は動きを止めた。 
 振り返り、成見を見上げる。
「どういう意味よ」
「そういう意味だよ」
 成見は間髪入れず腕を掴み、そのまま真羽を奥に引き入れた。
「ちょっと、待ってよ」
 抗うが、力では叶わない。
 真羽は頭が混乱しながらも、なぜか足は動きを止めようとしなかった。
 靴を履いたままだ。それでも彼は構わず先を行く。
「ちょっと、本当に……待って成見、お願い」 
 声を落とすと、ようやく彼は立ち止まった。
「往生際が悪いな」
「嫌いなのよ。成見なんて」
「そっか……」
 彼は呟くと、急に手の力を緩めた。「じゃあ、帰れよ」掴んでいた腕を離される。
 本当に成見は、やることが滅茶苦茶だ。
 真羽は下を向いたまま、黙り込んでしまった。
「悪かったな。嫌いなら、なにもしねえよ」
 成見はそのまま近くの壁にもたれた。
 このまま帰ってもいいのだが、真羽の頭と心はすっかり混乱していた。
 先ほどの口づけは、直人とも友哉とも違っていた。
 口づけられた瞬間、頭が真っ白になり、なにも考えられなかった。驚いたせいもあるが、なにかが違っていた。
「嫌いなの。大嫌いなの成見なんて」
 半ば自分に言い聞かせるように繰り返す。
「わかったよ。もういいから、帰れよ」
 成見は不機嫌そうにこちらを見ている。
「わかった。帰る」
 真羽はそのまま玄関へと戻って行った。
 頭はそれを指令する。それなのに足は、速度を増さない。心が勝手に行動を制御する。
――帰らなきゃ。あんなやつ、好きでもなんでもないんだから。
 心に言い聞かせる。それなのに……。
――なんで、こんなに、苦しくなるのよ。
 真羽は立ち止まり、動けなくなってしまった。
 どうしていいかわからずにいると、
「なんだ? 忘れ物なら、もう、なんもねえはずだけど」
 成見の低い声が廊下に響く。
 最低なやつなのに、その声に身体が勝手に反応する。
――私、どうかしてる。
 成見が、すぐ後ろに歩み寄って来た。
「どうした?」
 先ほどとは違い、口調が穏やかだ。そんなギャップに戸惑う。
 その時ふと、友哉の言葉を思い出した。自分の心に正直になれと。
 寧々が言った、頭と心は違うと。
――自分の、心に……。
 頭を空っぽにし、制御を外したとたん、真羽は躊躇いもなく振り返っていた。そして次の瞬間、自分のほうから成見に抱き付いていた。
「おまえ……なんで?」
 嫌いだと散々言われておいて、急に抱き付かれたら彼だって戸惑うのは当然だ。
 真羽自身、この行為に対し、頭が混乱しているのだから。
「嫌いなんだろ、おれのことなんて」
 成見は抱き付かれたままの姿勢で呆れているようだ。
 真羽はひと言、心のままに、
「嫌いなやつに、こんなことしないよ」
 と呟いた。見上げれば、目の前に成見がいる。
「そっか」
 彼は少し体を離し、また唇を重ねて来た。今度は深く、痺れるほどに。
 だが、彼がその先に進もうとした時、真羽は顔を上げた。
「ちょっと待って」
「ん?」
「この先は、もう少し待って」
「はあ?」
 成見は鳩が豆鉄砲くらったような顔で、あんぐりと口を開けた。
「だって私まだ、成見のこと、良く知らないし」
 ようやく自分の気持ちに気付いたばかりで、真羽の中でまだ戸惑いが残っていたのだ。少し体を離し、「ごめんね」謝ると彼は、あからさまに肩を落とし、
「なんだよ、しょうがねえなあ」
 取り敢えず今は、我慢してくれたようだった。
 真羽は、この先もっと、彼を知りたいと心から思った。
 

 この頃次第に暖かくなり、厚いコートもいらなくなった。春めいた暖色系のコーディネートに身を包んだ真羽は、成見と街中を歩きながら、そっと腕に手を絡ませた。
 彼はされるがまま、真羽に歩調を合わせてくれる。
 彼と付き合ってみると、意外と紳士的であることがわかった。
 成見は車道側を歩きながら、真羽がなにかにぶつかりそうになると、さっと引き寄せてくれたりする。“おれ様”というわりには、レディファーストで、店に入る時や、乗り物に乗る時などは、先を譲ってくれる。
 たとえ付き合ったとしても、今までのように自己中心的で横柄なのかと思ったが、そこは違っていた。
 それでも一応、成見は成見なわけで、
「なあ、いつ、おれんちに来るんだよ」
 としつこい。
「だーかーらー。まだ心の準備が出来てないの。もう少し待ってって言ってるでしょ!」
「待てねーよ」
「もう、成見のバカ、エッチ、アホ、変態」
「はいはい、うるせーな」
 会う度に繰り返されるやりとりだ。
 真羽は、こういうことだけは、慎重に時期を選びたかった。
 
 寧々は、やはりあの時わざと携帯を取り換えたのだと白状した。
「やっぱこうなると思ったんだ。自分の気持ちに気付いてないのが、当の本人だけなんて、もどかしくって見てられなかったからさ」
 と言った。
「だけど寧々ちゃん、私一歩間違えたらあの時成見になにされたかわかんないんだよ?」
 攻めると、
「成見が本当にヤバイやつだったら、あんなことしないって。だって、待ってくれたでしょ?」
「まあ、そうだけど」
「ああ見えてあいつ、そんなに悪いやつじゃないよ」
 寧々のほうが、成見をよく知っていた。
 
 クレオパトラは、性格の異なる二人の男性を愛した――。
 もし彼女がオクタビアヌスをも愛したとしたら、未来はどうなっていただろうかと思う。
 人は多分、いろんなタイプの異性と付き合うことが出来るのだと真羽は思う。
 中には一生ただ一人を愛し抜く人もいるかもしれないが、少なくとも真羽は違った。
 それを不実だと自分を責めたこともあったが、今ではそれも、必要な経験だったのだと思える。
 
 クレオパトラは、同時に二人の男を愛したわけではないが、真羽はたまたま同時期に二人を好きになってしまっただけで、結局同じことかもしれないと前向きに考えることにした。
 だが今は成見と付き合っていても、この先どうなるかなんてわからない。
 ただ、今は彼の世界を鮮やかに彩りたいと思った。
 それになぜか成見に対しては、真羽が裏でなにを想おうと、罪悪感だけは感じない。
 それに、彼にないものを、ほかの誰かに求めてもしかたがないと、もう諦めている。
 
 今度、成見を家に招待してみようかとも思っている。母がどんな反応をするかわからないが、自分が選んだ人だ、堂々と胸を張って紹介したい。
 真羽はただ、今は彼が自分に求めるものを精一杯与えたいと思った。
 いまはただ、それだけだった。

 
  



 

女はきっとクレオパトラのように ©日乃万里永

執筆の狙い

久しぶりの投稿になります。

一月の終わりに引っ越しをしたもので、最近までバタバタと落ち着かず、この頃ようやく執筆の時間がとれるようになりました。

っとどうでもよい話をすみません。

以前このサイトでアップしたものを、ご意見をもとに書き直してみました。
ご意見ご感想など、どうぞよろしくお願いいたします。

日乃万里永

220.211.135.58

感想と意見

黒とかげ

拝読させていただきました。

自分を棚に上げて厳しいことを書かせていただきます。

文章について
 ・もっともっと主人公の心理描写が必要だと感じました。恋愛小説はいかに主人公に共感させるのが
  鍵なので、心理的な描写が少ないと物語が面白くなくなってしまいます。
  恋愛小説の筋書きのパターンはある程度決まっている面もあるので心理面での描写の
  優劣がそのまま小説の出来になるのではと自分は思います。

物語について
 ・最初に直人君と付き合わせたのは、重大な失策だったと思います。同じ男の間で揺れ動くのでも、彼氏を振ってまで
  揺れ動くのと、彼氏が初めからいない状態で揺れ動くのでは、読者の主人公を見る目がまったく違うと思います。
  正直な所、自分は主人公とは友達になりたくありません。頭空っぽの阿呆だとしか思えません。
  作者様はこの主人公と友達になれますか?
  とはいえ自分は女性向けの恋愛小説に詳しくないので、この主人公がスタンダードなのかも知れません。
  その場合は自分の意見は無視してください。

以上です。 お互い文章書きとしてがんばりましょう。

2017-03-17 22:55

124.86.172.187

五月公英

こんにちは。

男脳で読んではいけない類の典型的な作品ではありますが……
もっと、もっと、ヒロインをいじめてください。
これではのろけてるだけですもの。
冒頭から、LINEやインスタを駆使して少女マンガに見あたらない残虐なエピソード展開し、酷いめにあわせてやりましょう。
少女向けラブコメを読んでいる女性読者を引き込みたいのなら、ぜひとも鬼になってください。

で、これ↓腐った男脳で考えた女子高生のキャラ設定なんですけど、よかったら使ってください。

主人公は、親類の経営する100均ショップでバイトをしている高二女子。 
中肉中背。思ったことはズバズバ口に出す。
天性の間の悪さが災いして周囲の反感を招くことがある。
チャンスをピンチに変える特殊能力を有している。 
去年からファッションやメイクに興味を持ちはじめた。
中三のくそ生意気な妹がいる。 
週末はほぼバイト。
チャラい彼(同年で他校の高校生)とつい一週間前まで仲良くしていたのだが、ある猟奇殺人事件がきっかっけで……。 
初恋は小五。相手は隣家のイケメン中学生。彼とは家族ぐるみのつきあいで、一緒に初詣や海水浴、お祭りに出かけ、庭先でのバーベキューにも度々招待された。恋人か本当のお兄ちゃんになってほしいと願っていたのだが、彼とおなじ中学に進学した矢先に起った猟奇殺人事件がきっかけで……。 
中学生のころ、同級でトーク仲間のクール系男子に想いを寄せていたけれど告白できないまま卒業したため未練があり、LINEやインスタでつながっていた。友人関係のまま長期戦に持ち込むつもりでいたのだが、先月起った猟奇殺人事件がきっかけで……。 
趣味はインスタ更新と100均のアイテムを使ったアクセ造り。できたブツを友達にプレゼントするのだが、素材がチープで造りが雑なために迷惑がられている。たまに女性向け恋愛シミュレーションと美容サイトにあるヘアーシミュレーションで遊ぶ。 
口ぐせは「どうなってんの?」と「気のせい、気のせい」と「こちらこそ、お世話になります」
熱しやすく冷めにくいタチなので、いつも気になる男がダブっている。 
公園のハトを「目つきがエロい」と言って怖がる。
どういうわけか電動歯ブラシのバッテリーの消耗が激しい。
へそをいじっていると、お腹がゴロゴロ鳴り出して屁が止まらなくなる、という持病がある。
中学生のころ、テスト明けの午後に自転車を居眠り運転していて電柱を下りてきた作業員の背中に激突し、黄色いヘルメット姿のおっさんもろともドブ川に転落したことがある。
幼少時、家の脇にのびる土手の上に妹と並んでしゃがみ、おしっこをしていた。六歳のある日、放尿中に突然起こった地震でバランスをくずして高低差三メートルほどの斜面を妹もろともお尻丸出しの状態で転がり落ちた。
現在、言葉を話すスズメ<モコちゃん>を飼っている。ときどき恋愛相談にのってもらうのだが、そのたびにネガティブ極まる説教をくらってヘコむはめに。
特技は、気になる男子の未来が見えること。ただし、最長で七秒先が限界。
別の特技は瞬間移動。ピンチになるとさっと移動するのだが、その距離が最長で二メートル。
まだある。男の顔を見つめるだけで心が読める。ただし、八十五歳以上に限る。

そんな感じです。
失礼しました。

2017-03-17 23:56

124.97.219.14

日乃万里永

黒トカゲ様
 
 お読みくださいましてありがとうございました。

「文章について・もっともっと主人公の心理描写が必要だと感じました。恋愛小説はいかに主人公に共感させるのが鍵なので、心理的な描写が少ないと物語が面白くなくなってしまいます。
 恋愛小説の筋書きのパターンはある程度決まっている面もあるので心理面での描写の優劣がそのまま小説の出来になるのではと自分は思います。」

 心理描写ですね、確かに少なかったかもしれません。
 もう少し増やしてみようと思います。

「物語について・最初に直人君と付き合わせたのは、重大な失策だったと思います。同じ男の間で揺れ動くのでも、彼氏を振ってまで揺れ動くのと、彼氏が初めからいない状態で揺れ動くのでは、読者の主人公を見る目がまったく違うと思います。正直な所、自分は主人公とは友達になりたくありません。頭空っぽの阿呆だとしか思えません。作者様はこの主人公と友達になれますか?」

 ご意見を伺って、自作を甘やかせていたことに気付きました。
 以前の投稿でもご指摘を受けていたのに、まだまだ分かっていなかったようです……。
 随分はしょったのですが、肝心な部分がそのままだったという。
 主人公を、あまりにも良い子、というか鈍感にし過ぎたようです、もっと開き直らせたほうが良いかもしれません。

 ご感想下さいまして、ありがとうございました。

 

2017-03-18 09:56

220.211.135.58

日乃万里永

 五月公英様

 お読みくださいましてありがとうございました。

「男脳で読んではいけない類の典型的な作品ではありますが……もっと、もっと、ヒロインをいじめてください。これではのろけてるだけですもの。」

 この作品は、どこにアップしても評価が低く、書き直してみたりしたのですが、なんだか根本的なことが間違っていたようです。
 黒トカゲ様と五月様のご指摘でやっと気づくという……。
 こんなに鈍感だから、いつまでもダメなんでしょうね……。

「冒頭から、LINEやインスタを駆使して少女マンガに見あたらない残虐なエピソード展開し、酷いめにあわせてやりましょう。少女向けラブコメを読んでいる女性読者を引き込みたいのなら、ぜひとも鬼になってください。」
  
 そうですね、物語は困難に立ち向かってなんぼですよね。
 
 五月様の設定、大変参考になりました。
 どれだけ猟奇殺人事件に遭遇するんだろうって。
 ひとつひとつの設定が可笑しくて、笑ってしまいました。
 口癖、まるで私自身です。聞いてました?
 設定主人公よりも五月様こそ、見えない相手がよく見えるのでは……。

 心がほっこりしました。
 ご感想くださいましてありがとうございました。
 
 あ、携帯じゃなくてラインですね。またやってしまいました。
 

2017-03-18 10:09

220.211.135.58

ご利用のブラウザの言語モードを「日本語(ja, ja-JP)」に設定して頂くことで書き込みが可能です(テクニカルサポート)。

:
:
:
3,000字以内