作家でごはん!鍛練場

『ナツノツメ』

雪おかか著

自分の書きたいものを書きました。至らない点も多いと思うので辛口な評価をお願いしたいです。また、「何も感じなかった。」等でも構わないので、この文章を読んで何を感じたのか教えて頂けると嬉しいです。よろしくお願いします。

ナツノツメ

朝起きる度に、夢から醒めてしまった事実だけが私の上にぽつんと乗っている。それは少しの安堵であり、憂鬱である。がばっと胸元にかかっていたタオルケットをめくると、寝る前に塗ったマニキュアが小さくこびりついているのが見えて、私は心を占める憂鬱の割合が多くなるのを感じた。
もう一度寝転がるのも立ち上がるのも億劫で、座ったままぼんやりと視線を放り投げていたら携帯のアラームが鳴った。最初に好きなメロディを設定したはずなのに、今では聞くだけで胸の辺りがむかむかしてくる。私は慣れた手つきでアラームを止めて、誰にも聞かれないため息をついた。
毎朝気怠いことは変わらないのに、確実に時間は流れている。私は少しずつ疲れ、彼は少しずつ私から興味を失っていき、夏は少しずつ終わろうとしていく。

「ごめん、別れたい」
待ち合わせ場所に着いた時に届いたメールは、いつものものではなかった。付き合い初めから彼が時間通りに来ることはなかったから、今日も遅れて来るんだろうなとは思っていたけれど、まさかこんな内容のメールが送られてくるとは夢にも思わなかった。綺麗に塗り直した爪を意識してしまうとだめだった。力を抜いたつもりはなかったのに、携帯はするりと私の手から離れた。
予感がなかったわけじゃなかった。今日のデートが最後になってもいいように覚悟を決めたはずだった。だけど、こんなのってない。彼が来るはずだった北口から少し離れた場所で、私は言葉にならない虚無感に苛まれていた。
涙は出なかったけど、彼のために費やした時間のためになら泣いてもいいと思った。そこにあるのは後悔でも怒りでもない。ただ私の努力を認め、慰めることができるのは私しかいなかった。

落とした携帯を拾いあげると、彼がくれた絶妙に可愛くないハート型の飾りがついたストラップが欠けていることに気がついた。
「タイミングばっちし」
私はもう一度しゃがみこんで欠けたハートの破片を拾う。それはもはや原型もわからないガラスのかけらでしかなかった。だけど私はそれを軽くはたいて鞄に無造作に入れた。こんなものを持って帰ってどうするのか自分でもわからない。駅のゴミ箱に捨てたって誰にも咎められないはずなのに、私にはそれがどうしてもできなかった。
さっき通ってきたばかりの改札を抜けると、また携帯がブルブルと揺れた。私はそれに気がつかないふりをして、綺麗にセットした髪をほどいて家に帰った。今までで1番うまくまとまった私の髪は、誰に見つめられることもなくぱさりと肩に落ちた。
電車の中から見える綺麗な街並みも、好きだった近所の川沿いの道も私に何も与えてくれない。彼と付き合っていた間、世界が輝いて見えることはなかった。だけど今私は確かに世界が色を失ったことを実感している。

風にのるようにして家に帰った私は、冷たい炭酸を冷蔵庫から出し、おろし立てのワンピースを脱いでから、彼のメールに返信しなくてはと思った。携帯を見て2度目の通知がショッピングモールの宣伝を知らせるものだと気づいた時、初めて私は少し泣いた。
「わかった、今までありがとう。」
滲む視界で何かを振り払うように私は文字を打つ。今更素っ気ないやつだと思われたってなんの苦でもないはずなのに、送るギリギリまで絵文字をつけようか悩んだ。結局、振られたくらいで傷つく女だと思われたくなくて、簡潔で絵文字のついていない文面を送った。

私は彼と過ごした日々を思い出そうとはしなかった。感傷に浸って落ち込めば、落ちるところまで落ちる予感がした。それと同様に、私は彼を無理に忘れようともしなかった。ただ何をする気にもなれず、まだ太陽が高い位置にある青い空をぼんやりと眺めている。彼との関係の終わりは夢から醒めた時と似ていた。少しの安堵と憂鬱。気怠さが私を包んで離さない。
思い出したように口に含んだ炭酸は、喉を湿らし私の中に流れ込む。こんな時でも炭酸は目がさめるほど美味しかった。私はそのまま寝転んで、マニキュアをしていたことも忘れて伸びた爪を少し噛んだ。炭酸の爽やかな甘みは鉄の味に変わって消えた。

ナツノツメ ©雪おかか

執筆の狙い

自分の書きたいものを書きました。至らない点も多いと思うので辛口な評価をお願いしたいです。また、「何も感じなかった。」等でも構わないので、この文章を読んで何を感じたのか教えて頂けると嬉しいです。よろしくお願いします。

雪おかか

182.250.245.39

感想と意見

はな

偉そうなことを言える立場ではないですが、思った事を素直に書きます。
違った思いまたは想いで執筆にあたっておられましたらすみません。
自分の気持ち次第で、世界は変わって見えるのに、世界そのものは何も変わらないこと。
その気持ちすらもひた隠しにして感情とは違う行動をとれるということ。
その下手をすれば無限ループで、それでも何も変わらない、例えば自分が死んだところでびくともしない。そんな世界について感じました。

2017-01-12 17:51

114.150.233.34

アフリカ

拝読しました

唐突に突き付けられる終わりは
納得出来そうで出来なくて
悔しいのに哀しくて
心に苦いなにかを詰め込まれてしまいますよね

辛口な評価をお願いしたいですとの事なので感じた事を出してみます。

御作は私の回想なのですが……私が語る時に私ではなくなっている。上手く伝えられないのですがへんに気取ったり無理に大人びた言葉を使ったり、それでいて急に素の自分で語る場面も混ざっていて「ブレてるな……」と感じました。
例えば「憂鬱である」と、語る私が「予感がなかったわけじゃなかった。」と、途端に幼い顔を見せる……とか……私の年齢自体も読んでいてイメージ出来なかった……です。
それと、これは余計な一言の部類に完全になると思うのですが……後半以降の言葉の選び方がどこかで見たことあるよな……とか、良く良く使うよねこんな感じとか……オリジナルの表現からはかなり逸脱した誰かの模倣に寄り掛かっているかも?です。

と、頑張って辛口で出してみましたが
自分が感じたことを素直に書き出しているように感じて僕自身もフラれた時はこんなんだ!( ̄□ ̄;)!!!と思いました。

ありがとうございました

オマケです
https://youtu.be/QmuSK5vuiIs

2017-01-12 18:37

49.104.28.3

雪おかか

はな 様

感想ありがとうございます。

正直書いている間は特に深いことは考えずに書いていました…。主人公の悲しさと悔しさをギリギリまで押し殺す自虐性(?)のようなものが書きたかったんです。

書きたいものが完璧に書けたわけではないですが、私の思いとはな様の思いは違って当然だと思いますし、書いた意図を読み取れ!などと言うつもりは全くないです。

はな様が感じてくださった思いがマイナスのものなのかそうでないのかがわからず申し訳ないのですが、この文章を読んで何かしら感じてくださりそれを感想として書いてくださったことが嬉しいです。

拙い返信ですみません。
ありがとうございました。

2017-01-12 18:37

175.108.5.193

雪おかか

アフリカ 様

お久しぶりです。と言っても絶対に伝わらないと思うのですが、前回初めて作品を投稿した際に感想を書いてくださったので、懐かしいなぁと思ってこんな返信にしてしまいました。

私が語る時のブレについては目から鱗というか確かに!と思いました。主人公がどうという前に私の背伸びが露見しているようでお恥ずかしいです…。落ち着いた雰囲気を気取ってはいるけど、中身は惨めなくらい子ども…みたいな深みをもたせたいのですが難しいですね。

後半の言葉選びについてですが、やけにしっくり書けたなと思ったのはオリジナリティにかけるからだったのかと愕然としました…。もう少し研究します。

辛口な感想と言いながら良いところを探して感想を書いてくださって嬉しいです。

うまくお返事できなくて申し訳ないです。
ありがとうございました。

2017-01-12 18:52

175.108.5.193

でしょ

まだそんなにカキモノ書いたことないでしょ?
書き出しは小説っぽいもの書こうとしてるのわかるし最初の一文なんて普通に小説的だし可愛いしつまり”書きたい”っていう愛情がちゃんとあるのわかります。
イントロ終わって彼のこと出てきた瞬間から語りばっかに傾いちゃってヤバい気したけどあなたなりに”小説的”踏ん張り意識してるのもちゃんとわかった。
ショッピングモールの宣伝泣きこそがこの度のあなたの小説だと思うんだな上手下手とかそんなケチ臭いこと抜きにして書きたいあなたっていう気持ちにこそ上出来って軍配をもたらしてくれるものだと勝手に思ってます。
気怠さから気怠さへと帰結して、それは当たり前のことなのかもなんだけどそれにしてもそれを書いたっていう仕組みとか出来映えっていうその感触をあなたはちゃんと感じたはずだからそんな楽しさを忘れないうちにもう一歩上手になれる自分をさっさと欲しがるべきだと思う。
炭酸はいらなかったかもね安かったかもねなんて言ってしまうけどこれから散々そういう下手に出会うんだろうしそういう一つ一つが理由になっていくのが例えば”書く”っていう感触に違いないと個人的には思っていたりもするからあなたばかりではなくあたしももっと頑丈になりたいとか常から思ったりもするわけです。
ありきたりな題材とかディスられても凹んだらダメですよそこに人間がいるなら書くべきは題材で語られるばっかじゃないってそんな逞しさくらいあたしたちはちゃんと貫かないと退屈で窒息しちまうはずなんだから気にしないでもっとくっさいことじゃんじゃん考えることオススメしときますよわかってますともお節介ですとも。

おつかれさまでした。

2017-01-12 19:54

122.131.211.113

でしょ

いけね、アフリカンの真似すんの忘れたっ


オマケ
https://www.youtube.com/watch?v=0G3_kG5FFfQ

こっちのが素直じゃんかよ、と言っとく

2017-01-12 19:56

122.131.211.113

雪おかか

でしょ 様

書きたくて書いたものとして読んでいただけて嬉しいです。うまく言えないのがもどかしいのですが、私の中で小説はまだ小説でなくてはならないものではないのが悔しいです。

でも頭でっかちな小説よりも書きたくて書いた小説のが好きなので、下手くそなりにもう少し踏ん張ってみようと思います。

ありきたりな題材だと言われたことがあるので、書きたいものがあるなら胸張って書け!と言ってもらえたようで、背中を押してもらえて(勘違いだとしても)嬉しかったです。

最後になりますがでしょ様の描く女の人がめんどくさくてとても好きです。とか私もくっさいこと言ってますね。またどこかでお会いしたいです。

読んでくださってありがとうございました。

2017-01-12 20:33

175.108.5.193

堕落居士

とても読みやすく、また先を読み進めたいという気持ちにさせてくれる話でした。
文章に関してはテンポが良くてソツがなく、引っ掛かりを感じることはなかったです。
私個人は気になるところが全くありませんでした。
だからこそ、もっと長いものが読みたい、また、この主人公がこれからどんな出来事を経験し、どうなっていくのかを知りたかったです。
結局のところ、小説というものは一定のボリュームを持った、起承転結(という形に拘る必要は必ずしもないのかもしれませんが)の変化を備えた完結した一つの物語でなければ商品として成立しないと思いますので。
本作を読んだ範囲内ではスタイルにおいてほとんど問題らしい問題を見つけることがなかったわけですが、長く書けばそれだけしくじってしまう可能性が増すわけで、長いものを書いているにも関わらず最後までしくじらずに走り切ることができたならば、それは才能と呼ぶことができると思います。
それを試してみることは有益なことだと思いますし、それによって才能の有無をある程度判定することができることを考えると、とてもスリリングな試みになるのではないかと思います。
もし長いものを書き上げた暁には、ここへ投稿する前に公募へお出しすることをお勧めします。
作風から文藝賞あたりいかがでしょうか?(生意気言ってすみません)

2017-01-12 21:40

126.83.127.91

雪おかか

堕落居士 様

私にはもったいないほどの感想をいただいてびっくりしています。それと同時に嬉しくて3度も読んでしまいました。ありがとうございます。

テンポがよく引っかからない文章を書くのが自分のなかでの目標だったので、堕落居士様の中では成功していたようでほっとしています。

お恥ずかしい話なのですが、長編小説を書いたことがなくいつも構成の段階で力尽きてしまうことが多いので、そこが今後の課題かなと…。

また、ここで公募を勧めていただけるとは思っていなかったです。(正直なところもっとボロクソに叩かれると思っていたので…。)ここで満足することもできますが、やっぱりまだ書きたいものがあるので、もう少し頑張ってみることにします。

ありがとうございました。

2017-01-12 22:02

175.108.5.193

the134340th

とても短い話でしたが、面白かったです。私も1000文字、2000文字程度の文字数しかかけないのですが、一度公募ように書いた小説は、とても苦しく、作品としてもゴムを引き延ばしたような作品でいい出来だったとは思いませんでした。
もっと雪様の作品を読みたいと感じました。
感情の表現が色をついていて、私にはないものを感じたからです。

作品の出来は最初の出だしで決まると指南書で読みましたが、この点は雪様がいい著者だからでしょうか。非常に面白い出だしだと思いました。
短い作品でもきちんと起承転結があって、(バランスはともかく)よかったと思います。

私もここで投稿して、指摘された点を学び、一つ言えるとしたら
テーマがよくわからないな、という点でした。
暗い話で、不意に終わって、救われない話でも、何か訴えかけるテーマがあれば、作品がガラリと変わると思います。
ただこの点は私にもできてないのですが。偉そうに言ってすいません。

次の投稿をお待ちしています。

2017-01-13 19:43

153.222.90.253

ラピス

語るべき言葉を持っておられる作者だなと感じました。意思の力というか。
ご自分の感情を細やかに表現する努力が見受けられます。ただ主人公と作者が時にオーバーラップしますので、ご注意を。
二度目のメールが宣伝だったその辺り、小説になっていました。もう少し長い話を読みたいものです。

では失礼します。

2017-01-13 22:50

49.104.23.168

かろ

 彼からだと思っていたメールが、どっかの宣伝メールってのがすごくよかったです!!!

2017-01-14 00:59

223.135.80.65

野足夏南

拝読しました。
冒頭が良かったです。それ以外も自分にとって心地好い言葉遣いで、もしかしたら似たようなものに影響を受けてるのかな、なんて勝手に考えていました。
平凡な題材で書くことは決して物語の放棄ではないです。そこに人が描けていればそれは物語で、小説なのだと思います。

個人的には髪を下ろす場面が好きです。「誰に見つめられることもなく」という表現が寂しさを端的に表現されていて素敵でした。

2017-01-14 09:27

1.66.105.95

雪おかか

the134340th 様

もっと読みたいと思っていただけて嬉しいです。書きたいものが大体この長さなのも影響しているのか、長編を書くとなると大変ですよね。

出だしについては私も重きを置いていて、するっと内容に入ることができるよう心がけているので指摘していただけて嬉しかったです。
(バランスにまでは意識がいかなかったので反省です…。)

テーマがわかりにくいというのは新しい発見で、確かに一本通った芯みたいなものがあればいいなと読み返していて思いました。

実際にここで学んだことを交えつつアドバイスをくださって、とても親切な方に感想をいただけて本当に感謝しかありません。

ありがとうございました。
また投稿した際にのぞいていただけるような作品を作りたいです。

2017-01-14 13:10

175.108.5.193

雪おかか

ラピス 様

語るべき言葉をもっているというのは初めていただいた言葉で、なぜかとてもぐっときてしまいました。

作者と主人公がオーバーラップするというのは意図していることではあるのですが、小説である限りもう少し行き過ぎない配慮が必要だなと感じました。

痛々しさを手懐けるべく善処します。ありがとうございました。

2017-01-14 13:17

175.108.5.193

雪おかか

かろ 様

私もその箇所が1番好きです!!!!

素直な感想にほっこりしました。
ありがとうございました。

2017-01-14 13:21

175.108.5.193

雪おかか

野足夏南 様

冒頭が良いと言っていただけるとやはりガッツポーズしてしまいますね。心地よい言葉遣いというのは、私の憧れなのでそう言っていただけるととても嬉しいです。

平凡な題材の中で人間を生かすことに書きがいのようなものを感じる反面、はっとするような独創性や奇抜な題材に惹かれる気持ちもあり…なんとも難しいです。逃げではないと思いたいのですが、新しいものにも挑戦してみたいです。

髪をおろすシーンは私もすごく気に入っているので、挙げていただいて嬉しかったです。

読んでいただきありがとうございました。

2017-01-14 13:30

175.108.5.193

アトム

拝読しました。

女性らしい繊細な心理描写が書けるひとですね。描写力、実に上手い。
上の方も仰っていますが、物語のなかの切り取りにすぎないのが残念です。
因果(物語、ストーリ)を読んで来ての場面であれば、文章の上手さがより一層際立ったでしょうに。
いずれにしても、このサイトでは久方ぶりに上手い文章を読ませていただきました。

(今の時代、キーを叩けば誰でも文章を紡げるからといって、文章も小説もそんなに簡単に書けるものじゃない)と、人気女性作家が、文庫の解説で書いていました。ごはんには、毎回小説の体をなしていないものを投稿し、でたらめな感想をもらい悦に入っている者がいますが、雪おかかさんはそれらの者と一線をひかなければいけない文章力をお持ちです。ごはんレベルではないと。

例えば恋愛小説。(こんな恋愛もあったのか・・・)というような物語が書けないと巷では認められないのでは?。公募は新鮮を求めているようです。
エンタメは物語作りが全てです。雪おかさんの文章力を活かして面白い小説を書いて下さい(公募に向けて)

>1番うまくまとまった      一番
>携帯を見て2度目の通知     二度目

ありがとうございました。

2017-01-14 22:45

126.85.62.83

雪おかか

アトム 様

描写力についてお褒めいただいて恐縮です。文章力について感想をいただくことが多いのですが、私は文章がうまい方ではないと思っています。ただ違和感を抱かれるような文章では最後まで読んでいただけないと思っているので、そこが良かったと言ってくださるのならそれは胸を張って嬉しいと言えます。(とっても嬉しいです!!)

物語のワンシーンにすぎないというのは、私にとって永遠の課題であり毎回ついて回る悩みのタネでもあります。起承転結を書くことが苦手な点を置いておくとしても、これ以上のことを書きたいと思えない自分の未熟さというのは自覚しています…。

まだ公募は早いと思うのですが、最初から最後まで絶対に書きたいと思える素敵な題材を見つけるべく精進していきます。

ご指摘、ご感想ありがとうございました。

2017-01-15 14:05

175.108.5.193

的野ひと

 拝読しました。おもしろかったです。

>何を感じたのか教えて
 ひたすら切なかったです。別れたのだということを感じさせるできごとが何度も何度も起こり、そのたびに切なさがありました。

>彼がくれた絶妙に可愛くないハート型の飾りがついたストラップが欠けていることに気がついた。
>「タイミングばっちし」
 という部分が好きです。ハートが欠けるなんてごくありきたりな隠喩ですが、ありきたりであることによって気取らない風になって、良かった気がします。そして、それを受けた皮肉なセリフが、心境にぴったりでした。

 また、すでに何度か挙げられていますが、
>携帯を見て2度目の通知がショッピングモールの宣伝を知らせるものだと気づいた時、初めて私は少し泣いた。
 という記述は確かに良かったです。期待を外される悲しさ。

 それから、
>少しの安堵と憂鬱。気怠さが私を包んで離さない。
 これも、しっくりきました。

 あと、タイトルが好きです。硬質なカタカナと硬質な音がきまってます。

 辛口をお求めということであえて申し上げますと、
>駅のゴミ箱に捨てたって誰にも咎められないはずなのに、私にはそれがどうしてもできなかった。
 という部分は前半がちょっとよくわからなかったです。「誰にも咎められない」みたいな外聞は今気にしてなかったじゃないかって。単に「こんなもの捨てれば良いのに、どうしても捨てられなかった」などとしなかったことが、うまくはたらいていない気がします。

>だけど今私は確かに世界が色を失ったことを実感している。
>風にのるようにして家に帰った私は、
 色を失った直後に急に爽やかな、どちらかといえば明るい直喩が登場したのですが、謎でした。すごく引っかかりました。意図が知りたいです。

 それから、
>私は彼と過ごした日々を思い出そうとはしなかった。感傷に浸って落ち込めば、落ちるところまで落ちる予感がした。それと同様に、私は彼を無理に忘れようともしなかった。
 という部分は不足を感じました。まず、何が同様なのか(「同時に」?)。次に、なぜ忘れないのか。別れてすぐ好きな人を忘れたくないのは当たり前と言えば当たり前なのかもしれないでしょうが、対句的な構造になっているのに、前半部分にだけ理由が述べられているので不足を感じるんだと思います。

 喩を中心とした力の入っている表現がたくさんあって、それぞれがすごく輝いていると思うんです(いちいち挙げませんが、この作品には大好きな表現がたくさんあります)。が、あえて言えば、話の流れで自然と登場したり、他の表現に呼応して登場したようなあまり力の入っていない部分が綿密でないのかなという気がします。失礼な言い方ですみません。

 次作も期待しています。

2017-01-15 16:59

202.213.176.47

雪おかか

的野ひと 様

面白いと言っていただけて光栄です。言い回しも気に入っていただけたところがあるみたいで、本当に嬉しいです。

すみません、個人的な事情につき感想をいただいたのに返信が遅くなってしまった上に気の利いた返しも思いつかず…。

ただ一文一文噛みしめるように目を通し、気づかされる点が多々ありました。本能の赴くまま筆を走らせている節があるので、もっと構成をきちんと決めてから綿密に書き上げたいです。

感想いただきましてありがとうございます。次回も読んでいただけるような小説を書けるよう精進します。

2017-01-17 00:23

175.108.5.193

ポキ星人

 良く書けていると思いますが、何について良く書けているのか、が問題なのだと思います。
 私は、作品中の彼からのお別れのメールを、就活先の企業からの採用お断りのメールに変えても、この作品はほとんど直す必要もなく成立してしまいそうだ、と思いました。この作品は「私の失恋」を書いているようで、実際にはその一部(重要な一部ですが)である「相手から求められない私」だけを丁寧に書いている(書けている)ものだと感じたのです。
 たとえば2通目のメールが宣伝メールだったので泣ける、というのをみんなほめてますし私もうまいと思いますが、「私を求めるのが宣伝メールだけであること」、「この宣伝メールが求めている宛先の私とは、消費者という無個性で替えの利く存在に過ぎないこと」を示すから泣けるので、これも「求められない私」についての記述とみることができます。その他の記述も、同様に説明できるものが多く、そこをはみ出して、「求められない私」ではくくれない記述であると確かに感じられる部分が薄いのです。
 「失恋」を「不採用」と共通する範囲で書いたために輪郭がはっきりして、それが文体と合ったのはよかったのだと思いますが、話が小さくなったし分量も少なくなってしまった(字数も減ったのですが、触れるべきところを素通りしたために読者の体感としても短くなった)のだと思います。作者が今後もっと長いものを書きたいのであれば、素材を選ぶとか構成を考えることも大事でしょうが、選んだ素材の全体に目配りして記述することが必要なのではないかと感じました。

 ここで何が書かれなかったのかを考えるためにもうしばらく作品を検討してみます。
 たとえば冒頭部は文体で読まされるのですが、論理的にみると実は、気候上の理由を除けば、彼が私から興味を失っているから憂鬱だ、ということだけしか書いていません(初読時は、いやお前がその男に飽きたんだろ、と思ったんですが、文章としてはそう書いているわけでもない)。「だけ」というのは、デート当日の朝であるのに、相手に対する思慕があるのか、相手との仲を続けたいのか、続けたいなら今日はどうしようとしているのか、という類の、私から彼への方向の思いが書いていない(構成上、後に書くやり方はありそうですが、後を読んでもよくわからない。直接の心理描写を避けるとしても、心理を暗示する行動がどこにあるか見つからない)ということです。
 その後の一行空けてメールが来る部分では、>夢にも思わなかった と>予感がなかったわけじゃなかった が近接して出てくるんでなんだこれはと思いますが、どうも「もしかしたら今日のデートでお別れかもしれないという予感はあったが、まさか会いもせずにメールでお別れを言われるとは思わなかった」ということのようです。こうやって要約するだけで明らかな通り、普通に考えれば「彼」の人間性とか態度について、反発する感情があるはずなのです。なのに>こんなのってない とどうとでも取れる(たんに不運を嘆いているかのようにも見える)一言でそこを通り過ぎて、終わったという事実をどう受け止めるのか、という話にスライドしていくので、はぐらかされた感じがします。これもひとつのやり方なのかもしれませんが、私個人としては疑問で、とにかくもこれで一層「優良企業の就職面接に落ちた話」と似てしまったとだけは言っておきたいと思います。
 彼からもらったアクセサリーが壊れるのが悪いとは言いませんが、相手とよりを戻そうとする心の動きが「私」にあった、という想定を作者がしていたなら、「彼」にあげようとして持ってきたものが無駄になったとか、以前借りていて返していないものが部屋にあるとか、もっと「うざくて痛い」方向も書けたと思います。

 >涙は出なかったけど、彼のために費やした時間のためになら泣いてもいいと思った。そこにあるのは後悔でも怒りでもない。ただ私の努力を認め、慰めることができるのは私しかいなかった。 という基調で書きたいのはわかるし、その面白さ独自性もあるとは感じます。ですが、こういう感情を基調にしても、相手への思いは別途あるものだと思います。相手への感情を書かないで、上記引用のみがあると、こいつ自分のことだけ考えてる、ということになってしまうわけですが、それを作者は突き放してるのか、本気で同情しているのか私としては判断がつきませんでした。
 突き放し路線だとすると、筆者としては、「失恋」=「不採用」に矮小化できてしまうような「私」の恋愛観の貧しさ、男が「私」を必要としてくれるのが「私」の恋愛であって、相手の存在を熱望する狂おしさとも相手のために何かしてあげたいという自己中心性からの脱却とも無縁であるという「私」のつまらなさ、ということを書くのだろうと思います。するとやっぱり作者は「私」が「彼」をどう思うかという想定をして、そのうえで「私」のつまらなさを書くことになると思うのです(彼への思いを直接書かないにしても)。
 同情路線なら、彼への思いがあるのに意地張ってるという感じでしょうし、どっちにしても相手への思いを重視しない恋愛ものってのもどうなんだろうとは思います。

 ただ、恋愛小説では、舞台設定さえ外れていなければ、書かれていない感情は読者が自分の経験とか憧れとかで自発的に想像して埋めてくれるということが生じやすいし、読者としてはそれをするのが楽しいのだという一面もあります。そうなると感情を書かないことがそれほど悪く見えないということはあります。このことの評価は難しいのですが、それでも筆者としては書かないでうまくやるという方法は練習にはならないようには思います。

2017-01-17 01:19

180.12.49.217

五月公英

はじめまして。

私としては、『悪童日記』(アゴタクリストフ)のノリで、阿鼻叫喚の様を努めて淡々と綴った<怒涛の恋愛話>を読みたいのですが。
そういったものを、女性作家様に書いていただきたい。

https://www.youtube.com/watch?v=GG2Ay13J9TQ


失礼しました。

2017-01-19 00:57

60.38.194.185

ご利用のブラウザの言語モードを「日本語(ja, ja-JP)」に設定して頂くことで書き込みが可能です(テクニカルサポート)。

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3,000字以内