作家でごはん!鍛練場

『電球』

小次郎著

ご意見、ご指摘、ご感想よろしくお願いします。

 登校中、賢(さとし)を見つけた。賢の電球は相変わらず、三つとも消えていた。
 二年前、世界中で異変が起きた。人々の各々の頭上に三つ電球が浮かんだのだ。その電球が三つとも光っている人もいれば、三つとも消えている人もいる。もちろん、一つだけ光っている人も、二つだけ光っている人もいた。異変の四日後、研究者によって気分の明るさによって電球が点灯する数が変わると、公表された。とても明るい時は、三つの電球が光り、とても暗い時は、三つの電球が消える。
 僕は自分が暗いやつだと思われるのが嫌だった。経験上、暗い気持ちでいるだけで、誰かに攻撃されたり嫌われたりするからだ。僕はどん底の暗さの時にも、無理に明るく振る舞っていた。すると、本来なら電球が三つとも消えるはずの状況なのに、一つは光ってくれた。努力して、できるだけ光る電球の数を僕は増やしているというのに、賢のやつはいつも一つも電球がついていない、苛々させられた。
「賢、相変わらず暗いな、元気だせよ」
「ほっといてくれ」
 そう言って、賢はいつものように下を向く。
「好きな子にふられたら暗くなるのは分かるけど、もう二年以上前の事だろ。いい加減、あの子の事は忘れろよ」
「お前には分からない」
 賢を励まし続けていたら、高校に着いた。
「じゃあな、賢」
 廊下で別れた、賢とはクラスが違うのだ。
 授業が終わる度、休み時間に僕はいつも賢のいるクラスに向かった。励ます為だ。
「僕は明るくなれないし、これでいいと思っているんだ」
「駄目だよ、明るくならなくちゃ」
「あ、明るくね」
 賢が呟いた。





 ガンになった。余命一年と医者から宣告された。友達の賢にこの事を知らせたら、もっと暗い気持ちにさせてしまうと思った。でも、知らせなくちゃいけない。下校中、賢に僕が余命一年である事を知らせた。その瞬間、賢の頭上の電球が三つとも光った。
「どうして、電球が光るんだ」
「嫌だったんだ、お前の事が。暗くて何が悪い? 暗いのはいけないって、明るさを強要してくるお前が正直うざかった。その上、お前は自分が暗い時にも明るく振る舞うだろ? そういう所もうざい、いや、うざさを通り過ぎて本当の暗さを感じる。暗い時に明るく振る舞おうとする発想が暗いんだ。お前が早死にしてくれて嬉しいよ」
 自分の頭上を見る。電球の光が全て消えていた。

電球 ©小次郎

執筆の狙い

ご意見、ご指摘、ご感想よろしくお願いします。

小次郎

114.153.230.136

感想と意見

佐藤

読ませていただきました。
まさにSF(すこし・ふしぎ)の世界ですね。

同調圧力への不快感が端的に示されているのが面白かったです。
いろいろ「なんだよありえねーよ!」と突っ込みたくなってしまうのですが、
この手の話にそれをしてしまうとまさに術中という感じで少々悔しいです笑

明るいが、文字通り「明るい」。
ありがちと言えばありがちですが、自分には思いつきそうもありません。
童話が持つ風刺であるかのようで素晴らしいと思います。


ただ、それだけに、ラストが惜しいです。
冒頭より「僕」の言葉の端々にディストピア感が忍び込まされています。
であるならば、ラストの賢の饒舌はもったいない。
極限まで削り込んだ言葉、一発で切り捨ててくれたら、
ある意味での爽快感を味わえたのではないかな、と思いました。

2017-01-10 12:05

126.36.64.124

志賀高原プリンスホテル

> ガンになった。余命一年と医者から宣告された。

はじめました。この一文から始めたほうがインパクトがあるのではないかと思いました。なぜなら現実世界ではあまり視点の注がれない非現実感がこの1文で克明に描かれているからです。

前半の賢の会話は、主観的な意見になりますが、感情のやりとりがあっただけで、登場人物の行動につながっていないのではないかと思いました。現実の世界であれ架空のせかいであれ、どうやら大衆にウケている小説は会話のあとに登場人物が人生の岐路に立ったり、複雑の選択の手助けとして有人からの助言を思い出したり、たまに無視して予想外の環境に行ったりします。ここの会話で見受けられたのは、感情の爆発が存在しただけで、それぞれの登場人物の魂の本質(本当に大切なもの)が不透明で見えてこないなとも感じました。もっと人物を際だたせるような、まるでこちらの価値観を総崩れにさせるような斬新な思想を言葉に込めれば素晴らしいものにしあがるのではないかと思いました。

もうすこしセピア色(斜陽)の友情を描いてみてはいかがでしょうか?

2017-01-10 14:40

153.202.82.217

かわむら信号機

拝読いたしました。

面白かったです。

>その瞬間、賢の頭上の電球が三つとも光った。

読んでてピコーン!って音が聞こえました。
性格や感情も、エネルギー保存の法則みたいに総量が決まっていて、どっかで明るければどこかで暗いトコロテンなんだな、と妙に納得。

ありがとうございました。

2017-01-11 07:15

153.200.171.8

小次郎

佐藤様

ありがとうございます。

おほめ頂き嬉しく思います。

やはり、賢の台詞、饒舌すぎましたか。投稿前に、他の人に読んでもらったところ、ラストの台詞説明的というご指摘をうけました。
そこで、その台詞とラストの設定を変えたものを作って、比べてみたら、ここで投稿したものの方が完成度が高かったです。
でも、そこでくじけずにもっと練っていればよかったです。

2017-01-11 11:46

114.153.230.136

小次郎

志賀高原プリンス様

ありがとうございます。

確かに、ガンになった。という所から始めた方がインパクトがありますね。ですが、掌編で時系列にそわず、物語を構成するのは私の力量では難しいです。
斬新な思想を言葉に込めれば、素晴らしいものに仕上がるという、ご意見、なるほど、と、思いました。
セピア色の友情ですか、難しそうです。書ければいいんですけどね。

2017-01-11 11:56

114.153.230.136

小次郎

かわむら信号機様

ありがとうございます。

面白かったですか、よかったです。

ピコーンと鳴ってくれてよかった、励みにします。

2017-01-11 12:04

114.153.230.136

小次郎

都合により、今以降返信が遅れます。

2017-01-11 12:07

114.153.230.136

晴れて名無し

開口一番おもしろかったと言いたいです、短編として見事に出来上がっているではありませんか。指摘なんてとんでもない、この調子だと、文書の細かい部分はそのうち改善されるでしょうね。少なくとも私はそう思って読み終えました。
最後の一行はずっしりきます。ヘビーに全部持っていきます。賢は「僕」が死ぬことをよろこび、「僕」は賢によろこばれて真っ暗ですからね。

……ご意見、ご指摘とありましたがこの筆者の方は自分でお気づきになる感じがします。文豪、芥川龍之介の短編をたくさん読んでみるのがよいでしょう。あっと言わされます。

2017-01-11 21:53

113.159.214.242

的野ひと

 拝読しました。おもしろかったです。

>各々の頭上に三つ電球が浮かんだのだ。
 この絵を思い浮かべると、バカバカしくてたまりません。すごいですね。
 しかし、逆に待っているのはこの悲しい結末と。この逆転も良かったです。

 細かい話をすれば、ちょっとだらだらした印象はありました。
 落語なら
>その瞬間、賢の頭上の電球が三つとも光った。
 で終わってもオチてるので、皆さんが批判されている最後のセリフは無くても良さそうだと思います。そういうつもりの作品なら、前半の「僕」の性格の説明もバッサリ切ったら良いと思います。
 私には、この作品はこの落語的な意味でおもしろく感じられました。

 しかし、
>暗い時に明るく振る舞おうとする発想が暗いんだ。
 という独自の主張を、説明的だとご友人に指摘されながらもわざわざ言わせるぐらいですから、ここに力を入れたいんだと思います。
 それなら、「僕」の普通に暗い人以上の暗さが、前半部分で強く印象づけられないといけないと思いますが、私にはそういう印象はありませんでした。この長さでは難しそうだなと思ったりもします。

2017-01-12 00:15

202.213.176.47

でしょ

一行目から二行目への接続からさっそくキライ。
こんな感じを簡潔な文章とか簡素な語り口とかって安易に許してしまうのはただの無責任だと思うつまり文章あるいは語り口ヘタクソ。
みんなが面白い面白いって口々に言ってるから読んでみたけど、あたしはその面白さも全然わからなかった。
ナンセンス? ブラック? シニカル? それともSF? 何でもいいんだけどあたしはこのおハナシはおハナシとしての作用みたいなものがそもそも曖昧な気がしてるんだけどそれこそがこのおハナシのナンセンスであったりブラックであったりシニカルだったりってその持ち味であって面白さなんだって読み手書き手双方で納得したがるならそんなのドルヲタがドルヲタ同士ばっかの隠語に閉じこもってるようなもので例えば”読書”ってものから提供されるべき開かれた明るさとか振る舞いとかそんなものから肝心な何かが逸脱してる気がする。
「あ、明るくね」って台詞が果たして適切なのか馬鹿なあたしにはわからなかったし、尚且つそれが終わりの章を導く何らかになるらしいっていうその効果もあたしにはわからなかった。”ガンになった”から始めろってハナシはあたしはダサいと思うしこのおハナシをあたし以上にわかってないんだと思うし最後に僕の電球が全て消えていることがオチ的効果だと思っているんだとしたらやっぱりこのおハナシは誰よりも書き手自身が方向音痴みたいになってる気がしてしまう。
ブラックでもシニカルでもSFでもおハナシに突き通るべき磁性みたいなモノは少なくとも読み手に対して提供するべきだとあたしは思うから掌編だからってことにこの度の全てを預けたがるんならこれは書き手の怠慢にほかならないとあたしは大して感心しなかったことお伝えしときますよ所詮失礼なだけですから気にしなければいいです簡単なことです。

2017-01-12 18:47

122.131.211.113

カジ・りん坊

 みんなが面白いと言っているので、そのままにしておけばいいかな?と思ったのですが、ぼくもでしょさんの意見に賛成で、どうにも話として成り立っていない感じでした。
 頭の上に電球が三個とか、気持ちの明るさ暗さを明かりに置き換えている表現は面白いと思うのですが、もう一ひねり出来そうな感じなのです。

 そんな細かいことはどうでもいいと思われるかも知れませんが、最後の決めコメント『自分の頭上を見る。電球の光が全て消えていた』とあるのですが、それって『ガンになった。余命一年と医者から宣告された』時点で消えてないだろうか?と心配になってしまうのであります。
 友達に話をしたら『もっと暗い気持ちにさせてしまうと思った』ぐらいの話ですから、本人にしてみればかなりツライ話だと思うのです。

 それでも『僕はどん底の暗さの時にも、無理に明るく振る舞っていた。すると、本来なら電球が三つとも消えるはずの状況なのに、一つは光ってくれた』というのであれば、その状況で話をされて『賢の頭上の電球が三つとも光った』となるだろうか?そんな時でさえ『電球を一つ光らせている』なんてと、気が気ではない思いがしないだろうか?

 本当に重箱の隅をつつくような解釈で申し訳ないのですが、最後の最後、詰の段階でこれで本当にいいのかな?とは思いました。

 最後少しブラックなので、さらに続けて書いてみてもいいのかな?と思いました。
 死の宣告に絡めて〆てみてもいいのかな?と思いました。

2017-01-13 00:01

219.47.7.95

アフリカ

拝読しました

僕は好きです!

フンフン(。-_-。)♪と読ませる前半中盤
ウンウン(;´Д`)´д`);´Д`)と悩ませる終盤
そして……
ヤな感じだよ……と萎えさせるオチも読んでいて正に電球が点滅を繰り返してしまう構造に、上手いな~と唸ってしまいました。

文章的にもそつない感じ。

楽しめました。

どうしても何か見付けるなら、頭の上に電球が突如現れるよりも頭蓋骨の形状がソケットのように窪んで人類はそれに電球を突っ込むようになった。脳波のような微弱電流に反応するそれは気分を表すように明かりを灯す。電球を嵌めれば気持ちが露呈するために自分に嘘を付きたい人々は次第にそれを外していく。最後には誰も電球を使わない。全ての調和のためには見えない圧力に支配されている方が幸せ……みたいなスピンオフ。あったら良いな~と出してみたけど原作は越えないね。

やっぱり僕は御作。
好きですね!

ありがとうございました

2017-01-13 18:20

49.106.211.23

小次郎

晴れて名無し様

ありがとうございます。

私なんて、まだまだですよ。こんなに褒められるとは思いもよりませんでした。
機会があれば芥川龍之介よませていただきます。

2017-01-18 11:47

114.153.230.136

小次郎

的野ひと様

ありがとうございます。

ええ、
暗い時に明るく振る舞おうとする発想が暗いんだ。
という所に力を入れました。

実はこの作品公募で落選しました。公募のルールで、五ページ以内という制限がありました。
五ページ以内で、主人公の暗さを書くのは難しいです。
でも、五ページという制限がなくても、暗さを書くのは難しそうです。

前半部分で、暗さを強く印象づけないといけないという、貴重なご指摘、ありがとうございます。気づかされました。

2017-01-18 11:56

114.153.230.136

小次郎

でしょ様

ありがとうございます。

文章の接続駄目でしたか。でも、作家でごはん外での文章の感想で、シンプルなのがよいと言われました。万人うけする文章を書きたいんですが、私では難しそうです。

肝心な何かが逸脱している気がするとのこと。
磁性を提供すべきとのこと。
これも、難しい。私には高度な課題ですが、前向きに頑張りたいと思います。

「あ、明るくね」って台詞、オチに絡めると、面白いと思ったんですが、不発だったようです。

そして、オチですが、もっと工夫した方がよかったですね。

怠慢とのご指摘。
頑張りたいんですけどね。

2017-01-18 12:07

114.153.230.136

小次郎

カジ・りん坊様

ありがとうございます。

重箱の隅をつつかれるの大歓迎です。

ガンを宣告された時以上に、賢のラストの台詞がショックだったという事を伝えたかったのですが、説明不足だったようです。

確かに、賢の電球三つとも光るのはおかしいかもしれません。一つか二つにしとけばよかったかも、と思いました。

ラスト、もっと工夫が必要でしたね。

2017-01-18 12:12

114.153.230.136

小次郎

アフリカ様

ありがとうございます。

ストーリーを褒めていただいただけではなく、文章もそつがないと書いていただき嬉しいです。

書いていただいたスピンオフのネタ、面白そうだと思いました。

2017-01-18 12:16

114.153.230.136

ご利用のブラウザの言語モードを「日本語(ja, ja-JP)」に設定して頂くことで書き込みが可能です(テクニカルサポート)。

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