作家でごはん!伝言板

リクエスト。

五月公英。

愛知県東部の某所。
かつて、バラバラ殺人だの焼身自殺だのといった陰惨な事件が相次いだせいで、「あの地域は呪われている」とウワサされる田舎町に、犬も転ぶと言われる急坂がある。<犬転び坂>という。
この、田園地帯から山すそを西へとのびる砂利だらけの坂を転びながら上りきって右に折れると、猫もすべるといわれる<猫すべり橋>のたもとに出る。
全長十メートルほどのコンクリート製で手すりすらない。初夏から秋にかけ、全体をナメクジの群れが覆うことがる。下はパワーショベルでざっくりえぐられたような谷川。大雨が降った後には淀みに大きな鯉やナマズの死骸が浮く。
つるつるの面に靴底をすべらせつつ橋を渡り、数か月前に首吊りがあった雑木林沿いを行けば湿気った墓場に当たる。
ここまで来ると、もう、卒塔婆や墓石が林立する向こうに二階建ての粗末な民家が見えている。
私の自宅である。
近所を通りかかった際には気がねなく立ち寄り給え。
いまだ耳に入れたこともない恐ろしい話を手土産にして。