・悪役のさじ加減

ゆみ

時代小説を書いていますが、行き詰ってしまったのでお尋ねします。

はじめの設定の時から、悪役をどのくらい悪く見せるべきか考えていました。
いろいろ調べてみると、時代劇の悪代官のような奴はめったにいないようですし、第一不自然です。
かといって物語の性質上、敵対勢力として悪役の存在は不可欠なものです。
他のトピックで「それなりに理由がある」「悪いことをしてやろうと思ってする人は少ない」などと書かれているのをみました。
それはそのとうりだと思いますし、人の心の動きには今も昔も大差はないと考えています。

私が書こうとしているのは藩の重役です。権力に群がるという意味で某政治家などは参考になりますか? 
悪役なりの大義があれば、わざとらしくなく見えるものなんでしょうか?

推理小説の連続殺人犯など、ときどき「これはありえない」と違和感を感じることがあります。架空の世界と分かっていても、です。
それを考えてみると実際に自分が書くことはとても難しい。
自分では「ご都合主義にならないように」と思いつつも、おもしろくするために悪役に「よけいなワル」をさせてしまいそうになったり・・・・・・
誘惑もあります。

キャラが確定していないまま「とりあえず」と書き始めてしまった私が悪いのですが、皆さんは私の行き詰まりをどう思われますか?
解決方や考え違いな点などありましたら教えてください。


アキタ

 史実としては「時代劇の悪代官のような奴はめったにいない」のでしょうけれども、時代劇としてはそれで成り立ってきたわけですから、別に臆することなく「おもしろくするため」に徹してやるべきだと思います。
 今肝心なのは、とにかく最後まで物語を書き切ってしまうことだと思います。直すのはそれからいくらでも出来ます。


黒猫

物語上都合の良い「時代劇の悪代官のような悪役」を、御都合主義的に見せないための理由付けとして、ちょっと考えてみました。
とにもかくにも、金銭欲を代表格とする物欲と、社会的立場をともなう自己保身からくる偽証行為があれば、悪役の行動動機としては必要十分なんじゃないかな、とか思ったり。
国家や企業の上層部が犯す犯罪行為のサンプルなら、人並みにニュースを見ていれば毎日のように観察できます。


ゆみ

アキタさん、黒猫さん、ご意見ありがとうございます。

アキタさん、私自身「書ききってしまいたい!!」という気持ちと、「少しは自分なりに納得したい」という気持ちの狭間でゆれている部分がありました。
その日の気分で「今日は書いてしまえ!!」と書いては次の日「これはやりすぎじゃないか?」と迷う繰り返しの日々。
そこでこちらに相談したところ、アキタさんに「最後まで書きなさい」と思いもかけないアドバイスを頂いて少し楽になりました。
「おもしろくするために徹する」というのも嬉しい助言です。

黒猫さん、考えてくださってありがとうございます。
やはり動機づけがキチンと「悪」なりに出来ていれば不自然にはならないのですね? 私が推理小説で感じた違和感もそれが原因のひとつでした。でもそこでまた考えてしまうのですが、自分が、あるいは読者が納得出来る動機だと「ありがち」な悪人になってしまいそうです。
しかし常人には理解しがたい動機では「こんなのいないでしょ?」と嘘っぽくなってしまいそうです。特に時代小説で時代背景を考えるとあんまりエキセントリックとでも言いますか・・・・・・。

そこでまたまた質問なのですが、動機は単純で分かりやすい、あるいは納得できるものにしたとすると、やはり見せ方や切り口で勝負しないとだめでしょうか? 
「露骨に悪人」「いい人そうでも悪いやつ」「仕方なく悪いことをする人」「小悪党」「骨の髄まで悪」「悪だけど憎めない」など表現はいろいろですが、大別するとそんなにパターンはないようです。
「どこかで読んだことのある悪役、悪人」にしないためには、悪役のキャラを練りに練ってからストーリーを作るべきだったんでしょうか?


三毛猫

 悪役は、主役を引き立てるために書きます。(または自分の思いのため?)
 悪役に主人公が目指すことと逆のことをやらせたり、その敵役を倒すことにより主人公が何かを得るってかんじですかね?
 私は悪役を作るときは、「何のために存在するか」って考えて書いてます。悪役にも存在意義はありますから。まぁ、人権はないけどね。<―誰かの台詞。
 そんな事すでに考えてるよっ! って、内容でしたらごめんなさい。


アキタ

 「どこかで読んだキャラ」となってしまうことを恐れる必要はないと思います。
 むしろ「どこかで読んだキャラ」を使って、「今までに読んだことのない物語」を書くことが出来れば、大成功というものでしょう。
 面白いものというのは、何度読んでも面白いものですから、「どこかで読んだ」というのは全く問題にならないと思うのです。
 どっちみち我々が書くものは、「どこかで読んだキャラ」であり「どこかで読んだ物語」のはずなのです。
 
 私の場合、主人公が何に立ち向かっていくのか? 全体の構成としてどのようなものになるのかという視点で発想します。
 悪役は、テーマや主役をくっきりと浮かび上がらせるために存在するわけですから。

 私自身は、あまり徹底的な悪役は苦手で、どこかが間抜けだったり善人だったりする悪役になっちゃう傾向にありますね。そこが問題点なのかも。


ごんべえ

 ディーン・R・クーンツ著『ベストセラー小説の書き方』によると、悪役の動機に限らず、動機は複合的にした方が、より深みとリアリティが増すようです。

 例えば、金に対する執着が強い者が、その性格のために金を奪う……なぜ、金に対する執着が強いのか? 幼い頃極貧生活を強いられていた等、さらに因果関係を深めるといった具合。
 仮に江戸時代であれば、参勤交代のために、地方の大名たちは財を保つのが困難であったようなので、私利を求めるには、どうしても農民たちに無理強いをさせる必要がありそうです。これを悪とするなら、なぜ、この当人は財を築きたかったのか……反幕府の思想があり、謀反を企んでいた等があげられると思います。
 具体的には、最初にあげた本を一読されるのが良いと思われます。


ゆみ

みなさん、たくさんのご意見ありがとうございます。

私にとっては主人公よりも難しい悪役の設定。
「おもしろければいい」=「新鮮な内容のおもしろさ」と頑なに思いすぎていたのかも、という気がしました。
もちろん、だからといって「同じ材料を使って目先の違う料理をしよう」ということではありません。

動機、存在理由、意義、主人公と決定的に何が違って対立するのか・・・・・・ひとつづつ考えれば、私にも少しは分かってきそうな気がしました。

アキタさん、私はアキタさんの言葉に妙に励まされたというか、転びそうな石をどけてもらったというか、とにかく書き続けることができそうです。
三毛猫さん、ごんべえさんもありがたく読ませていただきました。

とりあえず今まで書いたところで中断し、悪役について、もう一度練り直してから続きを書こうと思います。

実は初めて長編に挑んでいるので、いろいろと悩みや疑問は尽きません。
今後ともよろしくお願いします。
ありがとうございました。

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